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【希望は】鈴仙奮闘記42【魔界より】
[80]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 14:48:23 ID:??? そんなある日。スラム街のアウトローとして、時には悪い事もして食いつないで来たにとりと友人達だったが、 上層都市の住民からの偏見、締め付けに耐え兼ねてた彼らはついに、テロ行為を決意する。 良心の呵責よりも、失敗した場合の処罰を恐れて反対するにとりだったが、 これまで色々と生活を世話してくれた恩義もあるため、断り切れずに加担する事を約束してしまった。 エスパダス「良いかニトリ。作戦はこうだ。俺達はまず、クソ憎らしいヒューガーの社長がお成りになる、 社長杯の決勝戦を狙って爆弾を仕掛け、周囲を荒らしまわる。 その隙に、光学迷彩スーツを着込んだお前が、コッソリ社長を暗殺するんだ」 にとり「ひゅ、ひゅぃぃ!? む、無理無理! 暗殺とか普通に殺人罪で逮捕じゃん!? せめて尻子玉を引っこ抜くとか、そんくらいならやるけどさぁ……」 エスパダス「抜かれたら、気力をすとんと失ってしまうとか言うアレか。……まあ、それでも良いが」 妖怪の癖にビビリ屋で、ある程度は常識人な彼女は正直抜けたかったし、 実際の所約束を反故にする事は幾らでも出来るのだが、妙に律儀な所がある故か、そんな発想は無かった。 ――何はともあれ、かくして冒頭に星が経験した通り、華々しいヒューガー社長杯の最中、テロ行為及び、 それに乗じた社長・日向小次郎の尻子玉抜き計画が動き出した、のだが……。 ***** 〜ネオアステカスタジアム・通路〜 星「に、にとりさん……一体何を……?」 にとり「ぅ……こ、ここは見逃してくれよう」
[81]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 14:50:14 ID:??? 彼女の尻子玉抜き計画は早くも頓挫しつつあった。にとりは社長がどこに居るのか知らなかった。 「昔配下だったんなら、場所くらい分かるだろ」というエスパダス達の雑な意見を碌に反芻せず、 にとりは土壇場になって困っており――そんな時、星と再会してしまったのである。 星「ダメですよ! それより、会えてよかった。私と一緒に避難しましょう!」 にとり「あ、いや。そのだね。そーいう事じゃあ無くってだな……」 生真面目な星は、宝塔を探しに来たという主目的すら忘れてにとりを連れ出そうとするが、 実行犯側の彼女は当然、ここで逃げ帰る訳にはいかない。 どうしたもんかと色々と言い訳を考えていたところ――。 エスパダス「金持ちの残党が居やがったな! 殺せー!」 アステカ戦士達「「「「「おうっ!!」」」」」 ダダダダッ……! にとり「(うわーっ。面倒な事になりそうだ)」 更に間の悪い事に、残党狩りに出たにとりの仲間達も星の下へ駆け寄ってくる。 仲裁する程の甲斐性も無いにとりは、再度光学迷彩を張り直して状況を伺う事を決め込んだ。
[82]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 14:51:38 ID:??? 星「……あ、貴方達は。一体何故、こうした行為に出るのですか! 貴方達の主張は聞こえてきました。確かに、貴方達のおっしゃる事は分かる。 ですが……こんな暴力や恐怖では何も解決しない。穏便に話し合いをすべきです……!!」 にとりの判断は正解である。星も星で意固地な部分があるため、テロリスト達が武器を手に襲い掛かっても、 命乞いをする事も、逃げる事もなく、こうして食ってかかってしまうのだから。 そして当然、温和な彼女の意見は彼らの心に響かない。 エスパダス「ハン! 何が話し合いだ、何が穏便にだ! そんなモンは所詮、 金を背景にテメエらが自分の都合を押し付けてるだけじゃねえか! 俺達から搾取した金でやるサッカーは楽しいか? アーン?」 星「……ッ!」 そして彼らは逆に、星が内心で負い目に感じつつ、しかし何も出来ていない部分を攻めてくる。 星は言い淀み……。しかし、諦めずに対話を続けようとする。 星「私だって、現状を良しとは思っていません。ですが人間は――いえ、人間でなかろうと ――互いに互いを分かり合える生物であると、私は信じています。私達は、必ず友になれると」 エスパダス「友だと? 金づるって意味ならトモダチになってやっても良いがな。脳味噌お花畑のお嬢様よ!」 星「……でしたら」
[83]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 14:52:58 ID:??? 彼らの挑発に惑わされず、星はおもむろに鞄を開いた。そこには、新品同然のサッカーボールがあった。 星はこれを彼らに差し出して。 星「――このサッカーボールは使い古しですが。これが、私と貴方達との友情の証になればと思います。 貧困に負けず、サッカーという素晴らしいスポーツを通じて、互いに分かり合える事が――」 エスパダス「……………ッ!」 にとり「(は、はあ??? こいつ、バカじゃないの……!?)」 ……彼女は、彼らに対する最も最悪な対応を、完全なる善意で行った。 エスパダスは怒る事すら忘れて顔面を真っ赤にしており、 傍観しているにとりは、そんな彼の心情を良く理解しており、 その上で彼の逆鱗に触れた星の態度を前に、顔面蒼白になる。 エスパダス「……ああ、思い出した。前にも似たような事があったんでな」 スッ……グシャッ。 ――ペッ! 彼は一瞬だけ冷静にそう呟くと、ポケットから使い古されて空気が抜けたボールを取り出し、それに唾を吐きかける。 そして激昂する。 エスパダス「このボールはてめえの国の金持ちが俺たちに恵んでいった物だ! 盗んででさえ用具が手に入らなかった俺たちに、新品同様だったボールを使い古しだと言って 恵んでいったんだ!ご丁寧に”貧しさに負けずに頑張って下さい”とほざきながらな!」
[84]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 14:56:17 ID:??? 星「……ッ! ご、ごめん、なさい……!」 星はその瞬間、自らの過ちを悟った。……とどのつまり、これが星の弱点。 彼女は常に財産に、仲間に、環境に恵まれていたが故に。 彼らのような恵まれぬ者達を憐みこそすれ、根本を理解する事が出来なかったのだ。 そして、気付いた頃にはもう遅すぎた。 エスパダス「……テメエは社長よりも先に血祭りに挙げてやる。おい、ガルシア」 ガルシア「さらば金持ち! さよなら現世!!」 ガルシアと呼ばれた、彼の仲間の一人は、その大柄な体躯で飛び出して、 細身で長身な星の身体に覆いかぶろうとする。 エスパダス「殺しはするな。その代わり、暫くサッカーを出来ない身体にしてやれ!」 にとり「(ひゅ、ひゅぃっ!? あいつら、幾らなんでもキレ過ぎだよっ!? どどど、どーしよう!? これって私が止めるべき!? でもでも、あいつ等は一応アレでも私の生活を助けてくれた盟友だし……!?)」 星「……ッ!」 虎の妖怪でもある星は体術に長けており、ルチャの技巧と体躯を活かしたパワーに溢れる ガルシアの攻撃を受けたとしても、致命傷になる事はないだろう。 しかし、エスパダス達に自身の弱さを突かれた星は、立ちすくんで動く事が出来ないでいた。 にとりも、同郷の仲間を助けてやりたい気持ちはあったが、 肝心な所で気弱になる性格も相まって、盟友である彼らの暴走を止められない。
[85]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 14:58:11 ID:??? エスパーニャ「おいトラマル、あまりに遅いから様子を見に来た……って、ええっ!?」 ドオオオオオオオンッ……! ――そんな折に駆けつけたエスパーニャは、思わず仰天し言葉を失ってしまった。 ただし。それは星がガルシアの攻撃に倒れたからでは無かった。 ブロロロロロ…… 鼠耳の少女「……やれやれ。なんとか間に合ったみたいだね」 スタジアムの通路の壁を破壊し、巨大な怪物バイクが、彼の目の前に立ちふさがったからである。 バイクの乗り手はライダースーツを着込んだ妙齢の女性で、後ろに乗り合わせた鼠耳の少女はほっと溜息をついている。 妙齢の女性「寅丸よ。貴女の理想主義は誠に尊いものです。しかし貴女は、現実に対して臆病すぎる。 故に、貴方は理想と現実との間で揺れ動き――ついには、何も成す事が出来ない。 それは実に空虚であり、風旙之論(ふうはんのろん)であるッ!」 星「ナズーリン!? それに。そんな……!? 貴女は……………!!」 エスパダス「なんだァ……?」 運転手の女性は、エスパダス達すら思わず尻込みするまでの気迫で星を叱責し。しかしその瞬間。表情を和らげて、 妙齢の女性「……これまで一人で、よく頑張ったわね、星。 きっと私がメキシコに派遣されたのも、こうした因果を導く為だったのでしょう」 そう優しく、彼女を慰める。 星「――聖。幻想郷からかくも離れたこの地で、よもや貴女と再開できるとは……!!」 ――聖白蓮は、薄く金色に輝く紫の長髪を掻き分けると。彼女に向かってもう一度微笑みかけた。
[86]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 15:01:40 ID:??? …と、言ったところで一旦ここまでです。星をメキシコに派遣させたのは日向の絡みもありましたが、 それ以上に富裕層の日本人がサッカーボールをあげるシーンを、星で再現したかった事がありました(爆) 文章パートはもう少し圧縮して、目標として次の更新(目標今夜)でメキシコ編終了、魔界に出発だ! ……と、いう感じにしたいと思っています。
[87]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 16:26:02 ID:??? ***** 〜アンダーメキシコシティ・スラム街〜 ナズーリン「鼠妖怪の本性か、清潔な街ってのが嫌いでね。私にはこっちの方が合ってるのさ。 それに毎日毎日、ご主人の事を一々心配してやるのもバカバカしいし。 こうして一人で暮らしている時の方が、却ってせいせいするよ」 白蓮「無縁塚に居を構えている貴女らしいわね。……ですが、嘘はいけませんよ。 本当は、貴女は星の事を心配している。上層都市のチームメイトから虐めにあっていないか。 忘れ物をしていないか。宝塔を落としていないか。……違いますか?」 ナズーリン「……ハハッ。やはり貴女には敵わないか」 ナズーリンは、星ともにとりとも離れ。プレート下のスラム街でも更に治安の悪い地区に住んでいた。 この地区には上層部に繋がる通路があり、当初彼女は星を探しに上層部へと向かおうとしたが。 最近彗星の如く現れ、地区の治安を向上させている女主人が居ると聞き、 その正体が主人である星が師と仰ぐ超人・聖白蓮であると知ったため。彼女は白蓮の補佐をする事を決意していた。 白蓮「……ですが、ちょっと意外でした。命蓮寺からも距離を置く貴女が、私の手伝いを優先してくれるなんて」 ナズーリン「あまりに見てられなかったからさ。それに、このあたりは本当に性質の悪い連中が多い。 厳重な治安組織の居る上層都市住まいのご主人は勿論、 にとりが居る地区はまだマシな連中が多いから、心配していないけれど。 貴女はいつ、命を狙われてもおかしく無いのだから。 ……もしも貴女に危害が加われば、それこそ、ご主人様は私を許してはくれまい」 白蓮「ありがとう。でもお蔭で、貴女の力には本当に助かっています」
[88]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 16:27:03 ID:??? 白蓮は屈託の無い笑みを浮かべそう話す。 彼女は本来、全幻想郷選抜代表として選任され、監督である紫の命令によって、 メキシコへとサッカー留学に来たのだったが……これは行動派の彼女のこと。 この町に渦巻くあまりに酷い格差に憤ると、内定していた上層都市の名門チームへの加入を拒み、 スラム街に居を構え、自ら行動を起こして一人一人の住民の救済を行っているという事だった。 白蓮「命蓮寺を代表する者として、来たる大会では全力を尽くしますし、サッカーの修行は怠りません。 ですが――それにかまけて行動を起こす事を躊躇っていては、それは誠に空虚なものです。 仮に困難な理想であったとしても。やる前から諦めていては、何事も始まりません」 そう強く語る彼女の法力により、住民の生活は確実に改善されている。 しかし当然、外部からやって来て街を変えようとする女を嫌う者は絶えない。 ナズーリンは情報を集め、白蓮の身を守る為にあらゆる手を尽くして来たのである。 ナズーリン「私こそ感謝したい。貴女から直々に、サッカーの訓練を付けて貰えた事は僥倖だった。 お蔭で、ドリブルとタックルについては、世界でも通用する腕前になった気がする」 白蓮「私が教えられるのは、貴女の小柄な体躯を活かすための身のこなし。 それと、相手からボールを奪う為の体術の基礎くらいですから。でもそれが、貴女の血肉となるのなら。 私こそ、貴女に感謝しなくてはなりません。なんでも感謝です」 ナズーリンは報酬を受け取らなかったが。 代わりに幻想郷――いや、世界でも有数のサッカー選手でもある白蓮から、訓練を受けていた。 そのため、彼女の実力はメキメキと上達し。一芸だけではあるが、世界でも通用し得る選手へと成長を遂げてもいた。
[89]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 16:28:08 ID:??? ナズーリン「……む」 ナズーリンがそうやって、白蓮との談笑を愉しんでいた時。 彼女が斥候として命を与えた配下の鼠から、気になる報告を受けた。 ナズーリン「聖。どうやら、上層部の方で大規模なテロがあったそうだ。 社長杯――あの日向小次郎が主催する大会に、ここアンダーメキシコシティの住民が乱入したらしい」 白蓮「確かに、彼らの生活はまだまだ苦しい。ですがまさか、このような行動に出るなんて……!」 白蓮は嘆きつつ、口惜しさを隠せないでいた。彼女は確かに、力を用いて問題を解決する事もあった。 しかしそれは、他に手段が無い為であって、決して暴力による支配を肯定している訳ではない。 そしてそんな中、ナズーリンの斥候は更なる情報を彼女達に与える。 ナズーリン「む。こ、これは……! ご主人様の宝塔では無いか! ――お前達、これをどこで!?」 妖力で知能を与えた鼠達から事情を聴きとるナズーリン。鼠達によると、この宝塔はテロの起きたスタジアムで拾ったらしく。 今まさに、星自身もテロリスト達から避難をしている最中であるとのことだった。 白蓮「行くしか、ありませんね」 ナズーリン「ああ。しかし、どうしようか。ここには、上層都市に行く為の隠し通路はある。 しかし、歩いて行っては時間がかかる。かと言って飛ぶのも、外界に与える影響からして望ましくない」 白蓮「その心配はありませんよ、ナズーリン。何故なら私には、――この子が、居ますからね」 そして、決意した白蓮の行動は気持ちが良い位に早い。彼女は即座に立ち上がると、 決して広いとは言えない住居の奥に消え――。
[90]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/14(日) 16:29:26 ID:??? ブオン。ブロロロ……ッ! 白蓮「さあ、行きましょうナズーリン。星を助けてあげないと!」 ナズーリン「ば、バイク……!? それもこの大きさ……1200ccクラスの大型じゃないか!?」 白蓮「ええ。なんでも、その。”ぶいまっくす”とか言う名前らしくて。結構乗り心地が良いんですよ。コレ」 ナズーリン「(殆どレーシング用の、モンスターバイクじゃないか……!)」 白蓮「さあ、ナズーリンも後ろに乗ってください。しっかりと私の腰に腕を回してね」 ナズーリン「え、ええっと……ちょっと勇気がってどううひゃぁぁぁぁっ!?」 ガシッ! ブロロンッ! ドゴオオオオオオオオオッ! ――そのまま、ナズーリンを片手で掴んで後部座席に乗せると、フルスピードで住居の戸を轢き破ってしまう。 ナズーリン「(ああ、聖。貴女はまさしく超人だ。それこそあの、豊聡耳神子にも比肩する程の……! 私のような凡庸な妖怪には、貴女のそのペースにはついていけないよ……!?)」 同じく高い理想を掲げながらも、優柔不断に思い悩む星と即断即決で行動に移せる白蓮。 この二人の違いについて思いを馳せながら、時速200km超で突進するバイクの後部座席で、 ナズーリンは意識を失いつつあった――。
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0ch BBS 2007-01-24