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【そんなタイトルで】アナザー カンピオーネ1【大丈夫か?】
[80]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 20:54:15 ID:???
ジョアンはこの20日間、3つの努力をしていた。
一つは可能な限り少年に話しかける事。
置かれている状況についてはともかくとして、今の少年の状況で社会復帰は不可能と思われた。
それは少年が周囲を緩やかに拒絶し、コミュニケーションの一切を絶っているからだ。
ジョアンは少年に一言だけでも喋って欲しかった。
少年のためにも、自分のためにも。
一つは少年と散歩をする事。
黙っていると、少年は一日中椅子に座っている有様で、全く身体を動かさない。
省41
[81]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 20:55:15 ID:???
今日 今まで出かけていたのも、日用品の買い出しだけでなく図書館で調べ物をしていたのだった。
この日ジョアンは遂に、幾つも存在した疑問について、ある程度の解答を導き出した。
…にも関らず、ジョアンが浮かべている表情は、沈痛という表現が相応しかった。
それは 導かれた答えが、少年にとってあまりに残酷だったせいだ。
ジョアンはグラスを2つ取り出し、買ってきたオレンジジュースを注いだ。
一方を少年の手に包ませ、飲みなさいと声をかけた。
省34
[82]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 20:56:37 ID:???
さらにニシュではセルビア以外の民族もそれなりに暮らしているが、土地柄か温和な人間が多く、
民族間では憎しみ合うどころか協力し合う、理想的な民族融和都市であった。
このような都市、チーム同士という背景で、乱闘が起こる事は通常考えらない。
よしんば小競り合いが起こったとして、スタジアム全体に波及するなど有り得なかった。
ジョアン(即ちあの乱闘は本来なら起こり得なかったという事…
何者かによって起こされた、乱闘に見せかけた殺人だった可能性が考えられる。
省22
[83]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 20:57:45 ID:???
セルビアの一田舎であるニシュで起こされた大がかりな事件。
民族間のトラブルでなければ、民族内のトラブルである。
それは突き詰めると、民族主義者と そうでない者とのトラブルだと想像がついた。
セルビアで政治を主導している民族主義者にとって、民族主義でない者は裏切者という考えらしい。
誇張でないとするならば、この国の政治団体が如何に過激かは想像に難くなかった。
だがそこまでである。
少年の一家が命を狙われ、奪われた理由については何も分からなかった。
省29
[84]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 20:59:06 ID:???
この国を国家として成り立たせていた、たった一つの心臓が失われた事をジョアンは知った。
潜在化している地域格差、ソビエトとの関係悪化、抑圧される民族主義者。
抑え付けられてきた問題が噴出した時、この国は国足る事が出来るだろうか?
どれほどマシな過程を通ろうとも、分裂は免れない事は明白だった。
ジョアン(この流れは止まらない…いや、導かれると言っても過言ではないか…。
10年先か、15年先か…この国はきっと大きく揺れ、破滅を迎える。
省33
[85]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 21:00:07 ID:???
ジョアン(………)
顔を上げる力も出ない。 未来に太陽が見えないのは自分も同じだと気付いた。
溜息と自嘲が重なり、視界が闇に包まれていた。 その時だ。
ガタッ…
近くで木が擦れる音がした。
ジョアンが顔を上げると、その視界に人影があった。
少年だ、少年が椅子から立ち上がったのだ。
ジョアン(おお…。)
これまで自らの意志という物を見せる事のなかった少年が突如として立ち上がった。
一瞬何が起こったのかジョアンには分からなかった。
省3
[86]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 21:01:17 ID:???
ジョアン「ど…どうしたのかね?」
少年「……」
その問い掛けに少年からの応えはなかった。
ジョアンは怪訝そうに少年を見つめていたが、やがて気がついた。
少年の視線の先は、自分ではなく窓であった。
ジョアンは立ち上がって窓の下の光景を確認した。
この時の歓喜と驚きは、これまで体験した事もないほどの光で満ちていた。
そう、窓の下で繰り広げられている光景は子供達のストリートサッカーだったのだ。
ジョアン「サ…サッカー、もしかしてサッカーがしたいのか?」
省4
[87]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 21:04:45 ID:???
1-10)Alcyone
ポン・・・・・・
ポン・・・・・・
静けさの中、ボールを蹴る音が周囲に響き渡っている。
日が落ちてから既に3〜4時間は経過しており、誰もが家で団欒を楽しんでいる時間…
ジョアンと少年は、こんな夜中に人目を避けてサッカーを楽しんでいた。
ジョアン「すまんな、本当は昼間に大人数でやるのがキミにとって一番なのだが。
少年「大丈夫…!」
フルフルと首を横に振りながら少年は答えてくれた。
省9
[88]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 21:05:51 ID:???
………。
二人とも20日間まともに運動をしていなかった為、思うように身体は動かなかった。
ぎこちなくパスを出し合うだけの遊び…けれどこのパスには少年の生きる意志が感じられるように思えた。
それだけでジョアンにとってはロベルトを失って以来、これほど喜びを感じた日は無かった。
ジョアン(考えてみれば記憶を失っているんだ。“好き”という感情だけは残っていたが、
サッカーの技術や思考力は失われたと考えるのが当然の話だな。
省36
[89]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 21:07:23 ID:???
いつの間にか満面の笑みを湛えていた少年の顔を見て、ジョアンは目を潤ませた。
…と、視界がぼやけ 少年が出してくれたパスを見失ってしまった。
トン…!
トン……トン…
トラップのタイミングを損ない、弾かれたボールが転がっていく。
ジョアン「やっ、すまんすまん。」
少年「ボクが取ってくる…!」
そう言ってジョアンを制し、少はがボールを取りに走って行った。
ジョアンは少年の言葉に笑顔で頷き…そして少しだけ夜空を仰いだ。
省19
[90]アナカン ◆w2ifIqEU72
:2010/10/27(水) 21:08:29 ID:???
ジョアン(……)
少年「おじさん…!」
少年の呼ぶ声にジョアンは意識を引き戻された。 見ると、少年が手招きをしている。
何のつもりか直ぐには解らなかったが、やがてそれが「かかってきなさい」だと理解した。
一対一をしようと言っているのだ。
ジョアン「よし、行くよ。」
微笑みながら少年へと向かっていくジョアン。
その微笑みは数秒の後に驚愕へと変わる。
シュシュッ……パッ…!
…トン…! ダダダッ…!
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0ch BBS 2007-01-24