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1- レス

【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】


[117]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:29:18 ID:???
思わず声を上げた森崎を、隣のジーンがぎょっとしたように見やる。
気にしている暇はなかった。
掴んだはずのイメージは、しかしその刹那を頂点として霞のように消えていく。
そうなる前に、それらをかき集め具体化し、刻みつけなければならなかった。

「体重移動……ここ、この左足、それと連動して腰から前傾する……のか?」
「お、おい……?」

ぶつぶつと何事かを呟く森崎を、ジーンは不気味そうに見ていたが、声をかけても
無反応なことに呆れたのか、すぐに何も言わなくなった。 省32

[118]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:30:20 ID:???
******

「……ところで、俺はどうやって帰りゃいいんだ」
「おう、そのことだがよ」

まるでリンダがゴールラインを越えるのを待っていたように、辺りを朱に包んでいた陽の欠片は
城壁の描く稜線の向こうへとすっかり消えてしまっている。
明かりもない屋外のこと、すぐ近くにいるはずのジーンの顔もよく見えない。
声だけが、無闇に明るく響いた。

「そもそも俺は、お嬢の迎えってことで車を回してたんだった。
 ってわけで、帰りはお前のことは送れないぜ。悪く思うなよ」 省36

[119]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:31:23 ID:???
「お前が初めていい女に見えてきたよ……」
「そりゃどうも。って見えてねえだろ」
「見えてたら思わず求愛してたかもしれねえ。夜で良かったぜ」
「はは、地獄に堕ちやがれ」

軽快に言い合って、しかしふと森崎が首を捻る。

「……でもよ、よく考えたらこの事態そのものがお前のせいだよな」
「悪ぃ、悪ぃ」

言葉とは裏腹に、声音はどこまでも軽い。
にやりと口角を上げた表情までが闇の向こうにはっきりと見えるようだった。
省43

[120]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:32:24 ID:???



   『才気』(了)



******

[121]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:34:41 ID:No1EE1CQ

*D26.11月
フレーバーテキスト


*ドロー


今月の巻頭特集は → ! card


スペード・ハート・ダイヤ・クラブ→ 日常「悪代官とシベリア特使」
JOKER→ 事件「やみにうごめく・1」


※ ! と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。


******

そしてようやくメインキャラが出揃う十一月(敵除く)、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。 省1

[122]さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/20(火) 19:04:31 ID:???
今月の巻頭特集は →  ダイヤA

[123]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:46:42 ID:???
>>122
ドローありがとうございます。

ダイヤ→ 日常「悪代官とシベリア特使」

******

◎日常「悪代官とシベリア特使」


小鳥の囀りも爽やかな晩秋の朝。
日課の新聞に目を通す森崎が、見出しを声に出して読み上げる。

「輸出入顧問オーリマン卿、シベリアからの燐光石輸入拒否を明言……か。
 この国、燐光石がえらい高いからな」
『そうだねえ……まあ、この宿舎では支給品だからあんまり関係ないけどね』
省27

[124]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:47:43 ID:???
『ザクロイド……って、リンダのお家のザクロイド?』
「そのザクロイドだな。山師だったディムス・ザクロイドが鉱山で一発当てた成り上がりの新興財閥」
『そのディムスって人は、リンダの?』
「爺さんにあたる、らしいな。何年か前に死んでる」
『ふうん……』

それ以上踏み込むことを避けたのか、座っていた森崎の肩からふわりと浮いたピコが、
しかしにやりと笑って森崎の目の前で止まる。

『でもさ、ならそのお爺さんって、きっとこのナントカ卿とアレ、やってたんだろうね』 省24

[125]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:48:43 ID:???
「シベリアの特使が来たんだとよ」
『シベリアか……あんまりいい思い出はないね……』

かつて加わった幾つかの激戦や惨劇を思い起こしたように表情を暗くしたピコが、
しかしすぐに不思議そうな顔で尋ねる。

『でも、なんで? このドルファンはシベリアからすっごく遠いじゃない』
「燐光石だよ」
『燐光石……? あ、そういえばこないだ、そんな話してたね。すごく高いって』
「その流れよ」

頷いて、森崎が語り聞かせるように話を始めた。
省33

[126]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:49:50 ID:???
『それで、どうなったの? シベリアっていうと……』
「お得意の軍隊チラつかせたゴリ押しは厳しいな。何せここは南欧の果てだ」
『じゃあ?』
「このドルファンの輸出入を仕切ってる顧問のオーリマン卿って貴族が特使と話し合った。
 結果として、一旦は突っぱねたらしいな。……とはいえ、ここはマルタギニア貿易の中継で食ってる国だ。
 お得意さんの意向を丸っきり無視するってわけにもいかねえんだろ。
 石炭と鉄鉱石は自由化の方向、だとさ。そっちはあんまり俺らには関係ねえけどな」 省54

[127]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:51:07 ID:???
『でも残念、無事に見つかったみたい』
「残念てこたねえだろ……」
『この国のお姫様はかなり庶民派って話だけど、家の人に黙って買い物にでも行ったのかな?』
「んなわけあるか! そりゃ庶民派っつーかただの庶民だ」
『えー』

口を尖らせるピコを無視して、森崎は再び新聞に目を落とすのであった。


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0ch BBS 2007-01-24