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【レイセンガ】鈴仙奮闘記29【タダシイヨ】


[954]鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/06/29(月) 00:10:27 ID:wP/RU7UA
岬「……それは。人間にとって最も苦痛なのが、変化だからですよ。妖怪はもっとかもしれないけれど」

布都「そうかな? 人間とは蓋し、変わりゆくもの。変化への指向こそが、人間を強くする一因と思っていたが」

岬「でも、人間だって別に好きで変化している訳じゃないでしょう。
できることなら、今のままの自分で居たい。だけど、それは社会が、環境が、自身の肉体が、精神がそれを許さない。
だから、仕方なく人間は変わろうとする。「努力は報われる」とか、「自分にはサッカーしかないから」だとか、
変化を許容し好むような言い訳をして、自分の本心を騙しながらね」

布都「変化して良くなる事よりも、今の惨めさに耐える方が良いと言うのか?」

布都は難しい事を考えるように細い首をちょこんと傾げる。流れるような銀髪がふわりと揺れた。
神子はそんな布都を諭す母親のように、彼女の銀髪を撫でつけてこう言った。

神子「――多くの人間は、私のように聡明では無いのだよ。悲しい事ながらね。だから、導いてやらねばならぬ」

神子の横顔には、今まで観客や敵チームの選手にも見せた事の無い、悲壮な使命感が漂っているように見えた。
彼女は布都の長い髪を梳かしながら、ハッキリと意志の籠った瞳でこう述べる。

神子「多くの人間は、いわば洞窟の壁に移った稚拙な絵を見て、それだけで現実を理解した風に、満足気に振る舞う。
実際は、真実の世界が放つ光を照らし返した、儚げな影を見ているだけに過ぎないのに。
……彼らが幸せならば、それで良いと君たちは思うか? 影だけを見て終える生涯に、意味はあるのか?」

神子の呼び掛けに答える者はいない。それを知っていたかのように彼女は続けた。

神子「……それで良いと認める事は、道を究めし仙人にとって。選ばれし賢人王にとっては恥ずべき行為だ。
何故なら、彼らは洞窟から大衆を引きずり出し、真実の光が溢れる世界に導ける能力を持つ、数少ない人間なのだから。
そう。聖徳王たる私には、諸君を始め人間達を導く使命がある」


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0ch BBS 2007-01-24