キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】

1 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/28(日) 15:26:09 ID:???

本作は恋愛SLG『みつめてナイト』を基にした二次創作です。

騎士の時代が終わりつつある南欧は架空の小国、ドルファン王国。
戦火の迫るこの国に傭兵として降り立った東洋人、森崎有三の体験する
波乱万丈の三年間を描きます。


2 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/28(日) 15:27:12 ID:???

◆注意事項◆【最重要】
本作は二次・三次創作であり、原作の設定等とは大きく異なる描写があります。
本作では展開次第では主人公以外の登場人物全員に「死亡する可能性」があります。
また主人公を含めた登場人物全員に「極めて悲惨な境遇に陥る可能性」があります。
ヒロインや仲間も含めて例外や救済措置はありませんし、またその可能性は決して低くありません。
キャラクターの死や不幸を扱う作品が苦手な方は充分にご注意下さい。
また本作では世界観上、サッカーを行いません。

本作には特殊なローカルルールが多数存在します。
テンプレート、および外部サイトに用意いたしましたルール詳細をよくお読みになった上でご参加下さい。
特に【最重要】【重要】と書かれた項目には必ず目を通し、概要をご理解いただいた上で
ご参加下さいますようお願いいたします。


3 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/28(日) 15:29:42 ID:???
◆基本ルール(抜粋版)◆

本ルールの詳細は以下のURLからご覧いただけます。
また本ルールに記載のない一切の事項はGMが都度裁定を行い、必要であると認めた場合は
適宜ルールの追加・改訂を行います。

ttp://www39.atpages.jp/msaki/rule.htm


※また本スレッドより、一部ルールの改訂を行います。

! numnumプラグインを使用する判定において、特に別記がない限り 「00は100として」 扱います。
これは個々の判定方法において00の扱いが分かれていたものを統一するものです。

改訂は以上です。

4 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/28(日) 15:30:42 ID:???

▲本作の特徴【最重要】

本作では、単純な先行票決や不特定多数参加による多数決は原則として行いません。
本作において、参加者の皆様は「投票者」ではなく「プレイヤー」と位置づけさせていただきます。
このスレッドで行われるのは「キャラクターを演じ、物語を創作するゲーム」です。
物語の進行に関わる選択は「投票」ではなく「ロールプレイ」。
AやBや、ただ一文字のレスで参加できるシステムはこのスレッドにはありません。
どれに何票入ろうと、どれだけ早くレスをしようと、ここでは意味がありません。
採用されるのは優れた回答、それだけです。

・具体的には?
本作では選択肢を選んでいただく際、必ず「何か」を付記していただきます。
これは本作を形作る上での絶対条件であり、これを満たさない回答は例外なく無効として扱います。
「何か」は「なぜその選択肢を選ぶのか」という「理由」であったり、また「台詞」や「手法」といった
その選択肢を最大限に活かすための一手であったりと、様々です。
作中の状況、キャラの心情、ゲームシステムの分析……諸々の条件から「あなたの物語」を提示して下さい。
その中で「その時点での森崎の人物像と齟齬を来さず、最も優れた一つないし複数の回答」が採用され、
物語が展開していきます。

分析、経験、浪漫、共感、理屈、計算、打算、こじつけ、詭弁強弁…なんでも構いません。
じっくりと練り込んだ発想や戦略、言葉の力を見せて下さい。
そうしてGMと共に物語を創り上げていって下さい。
それがこのゲームに参加する、プレイヤーとなるということです。

5 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/28(日) 15:31:43 ID:???

▲コテトリ必須【最重要】

本スレッドは「名無し投稿禁止」とさせていただきます。
参加される方はハンドルネームもしくはトリップ、あるいはその両方をつけて投稿して下さい。
GMは名無し発言に対しては一切レスをいたしません。
ゲーム中の選択や判定としても無効として扱います。
本作における参加者とは「読者」でも「投票者」でもなく、「プレイヤー」の皆様です。
物語の創作者である皆様を個人として識別し、継続的に遊んでいただくための仕様となります。
どうぞご理解いただきますよう、宜しくお願い申し上げます。

ハンドルネームとはいわゆる「森崎名無しさん」ではない、参加者個人を識別できる名前のことです。
またトリップとは、書き込みの際に「名前欄に # を先頭とした文字列を入れる」と生成される
暗号のようなものです。森崎板では主に各外伝スレッドのGMの皆様が使っていらっしゃいます。
本作ではプレイヤーの皆様方全員にこのどちらか、あるいは両方を使って参加していただきます。
ハンドルネームのみでのご参加も歓迎いたしますが、万が一騙りなどのトラブルが発生したときのため、
初回投稿の際のみで構いませんのでトリップをつけていただくようお願いいたします。

また、トリップキー(名前欄に入れる # 以下の文字列)はご自身で厳重に管理されるようお願いいたします。
キー漏れ、キー忘れ等によるプレイヤーデータの移譲は原則として認められません。
スレッド別に名前/トリップ管理の可能な専用ブラウザの導入を強く推奨いたします。
(GMはJane Styleを使用しています)
捨てトリップ(その発言のみで使用されるトリップ)の使用は禁止いたしませんが、
本作のシステム上、著しい不利を生じることをご認識の上でお願いいたします。

6 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/28(日) 15:32:45 ID:???

▲CPとEP 【最重要】

本作ではプレイヤーの皆様方それぞれに、二種類のポイントが付与されます。
これを「CP(クリエイトポイント)」と「EP(エントリーポイント)」と呼びます。
本作のゲームシステム上、最も重要な項目となりますのでよくご理解いただきますようお願いいたします。

◎概要
これらのポイントを得る条件は「ゲームに参加していただくこと」です。
CPは選択レスがGMによって採用された場合などに付与されます。
EPは選択やカード・ダイス引きを通じてゲームに参加していただいた場合に付与されます。

得たポイントは様々な用途に使用できます。
ダイス目への数値加算、カードの引き直し、自由選択肢の創設、GMへのゲームヒントの要求など、
物語の進行上で有利になること尽くめです。
稼いだポイントを積極的に使うもよし、ここぞという場面で一気に放出するもよし。
皆様の判断でゲームを盛り上げて下さいませ。


7 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/28(日) 15:34:31 ID:???

▲禁止事項 【最重要】

他のプレイヤーに対する攻撃的・否定的な発言や乱暴な言動、他者を不快にするような言動はおやめ下さい。
そうした発言やゲーム進行を著しく阻害する行為が確認された場合、参加をご遠慮いただくことがあります。



◎各種参照用資料

ルール詳細
ttp://www39.atpages.jp/msaki/rule.htm

獲得EP/CP一覧(随時更新)
ttp://www39.atpages.jp/msaki/points.htm


南欧略図
ttp://www39.atpages.jp/msaki/europe.png
ドルファン国略図
ttp://www39.atpages.jp/msaki/dolphin.jpg


******

テンプレートは以上です。
一年目の九月も大詰め、物語はようやく1/6を過ぎた頃ということで想定以上に
先が長くなっておりますが、本スレッドも皆様にお楽しみいただければ幸いです。

8 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/10/28(日) 17:06:57 ID:???

森崎
[ダメージロール  6 + 1 ]


9 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/28(日) 18:33:46 ID:???
***

・イニシアチブ処理
森崎 25+4
サム 28+3 先攻!


サム
・命中処理
17+39=56 命中!
・ダメージ処理
0+13=13

森崎
・命中処理
-17+27+30=40 命中!
・ダメージ処理
17+7 *0.7=16

サムの攻撃は命中し13ダメージ!
森崎の攻撃は命中し16ダメージ!

スキル『牽制打』使用により森崎のガッツが10減少!


***

10 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/28(日) 18:34:48 ID:???

森崎有三
ガッツ:24
ATK:192 DEF:198 SPD:128 ini:25

発動中パッシブスキル:
受身/個人戦闘時、DEF値を+10する。

アクティブスキル:
(名称/消費ガッツ/効果)
牽制打/10/そのターンの攻撃ダメージを70%とし、命中値を+30する。
スマッシュ/10/攻撃の最終ダメージを150%として計算する。
シールドワーク/ 0/攻撃ダメージを必中で5、防御ダメージを50%にする。

vs

地廻りのサム
ガッツ:10
ATK:128 DEF:175 SPD:145 ini:28

発動中スキル:
蛇の操棍/SPD値を5プラス、攻撃ダメージを1d6プラスする。

******


【ターン4】
・行動選択
攻撃、各種スキルの内から『10/28 21:00』までに、どれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願い致します。

11 :◆W1prVEUMOs :2012/10/28(日) 18:47:35 ID:???
この差ならあとはシールドワーク二回で終わり
サムが連続で18出しても届かない

12 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/10/28(日) 18:55:25 ID:???
牽制打 敵のダイスの引きに賭けます。
敵のダイスは数値減らす事は可能でしょうか?

13 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/10/28(日) 18:56:38 ID:???
これはシールドワーク×2しない理由がないなー。シールドワークに一票。

14 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/10/28(日) 19:00:13 ID:???
ダイスのダメージも半分になるの?

15 :◆W1prVEUMOs :2012/10/28(日) 19:05:36 ID:???
>>14
>>9
> 森崎
> ・ダメージ処理
> 17+7 *0.7=16
牽制打の攻撃ダメージを70%がダメージロールを足した数字にかかってるので
ダイスのダメージも半分になると思いますよ

16 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/10/28(日) 19:17:22 ID:???
>>15
あっそうですね。
じゃあシールドワーク×2に変更します。決まりですね。

17 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/10/28(日) 19:42:25 ID:???
いや、我々の意見が一致したからどうというシステムではないですがw
まあ、最近の能動的PLの数からするとまず動かないですかね。

18 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/10/28(日) 19:52:40 ID:???
投票が決まりって訳じゃなくて勝負が決まりじゃないかなと思ったんです。
相手のガッツも無いですからおそらく隠してるスキルも使えないでしょうしね。

19 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/10/28(日) 19:54:57 ID:???
あー、なるほど…。申し訳ない、当方の阿呆な早とちりでした。
仰るとおり、これで決まりだと思います。隠してるスキルというのは既に発動済みの「蛇の操棍」のことかと。
でも、今後の敵は「ガッツが減った状態でも使える隠し技(シールドワークみたいに消費ゼロ)」とかもあるかもしれませんね。

20 :◆9OlIjdgJmY :2012/10/28(日) 20:47:35 ID:???
シールドワークで
新技を使ういい機会ということで。

スキル取得を考えるとバランスよく各ステ鍛えるのが一番ですかね?

21 :◆W1prVEUMOs :2012/10/28(日) 21:15:21 ID:???
とりあえずSPDの低さを痛感しました…

22 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/29(月) 00:27:24 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>10の選択については……

>>11 ◆W1prVEUMOs様、>>13 傍観者  ◆YtAW.M29KM様、>>16 さら ◆KYCgbi9lqI様、
>>20 ◆9OlIjdgJmY様、皆様の案を採用させていただきます!

仰る通り、シールドワークを二回で勝利確定ですね。
ということで、ターン5については省略させていただきます。
皆様それぞれにCP3、更にターン5の省略補填分としてCP2ずつを進呈いたします。

>>11
前ターンで残りガッツを10まで減らせたのが効きましたね。
そうでなければ若干運が絡むところでした。

>>13
はい、これで封殺ですね。

>>12,14-16
はい、シールドワークは防御側の最終ダメージを50%とします。
返答が遅れまして申し訳ありません。
◆W1prVEUMOs様、補足いただきましてありがとうございます。

23 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/29(月) 00:30:07 ID:???
>>19
はい、今回から敵が条件によって発動してくるスキルの数を表示するようにいたしました。
消費ガッツその他の条件については詳細を伏せますが、あまりトリッキーなトリガではなく、
概ねのパターンに従って発動してきます。
とはいえ本作にはロールバック他の回避手段がありませんので、理不尽な自爆技や即死などの
極端な初見殺しはしないよう調整を心がけております。
……ガッツ不足の場合は如何ともし難いですが。

>>20
そうですね、各パラメータの複合によって取得できるスキルは有効なものが多くなっています。
一つのパラメータだけを上げるのにも一長一短はありますので、戦略次第ですね。
ただ攻撃力と命中はEP/CPの補正をつけることが可能ですが、回避と被ダメージには
ポイントが使えませんので、DEF値が低すぎると一発のラッキーパンチに対処できない点には
くれぐれもご注意下さい。

>>21
ガッツ制限のある戦いというのも苦戦の印象を強めているかもしれませんね。
スキルでのゴリ押しが難しいので、サムのようなSPD特化型には有利な条件となっています。


******

レス返しのみになりますが、戦闘での勝利が確定したところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
次回はサムとの決着描写から若干のエピローグを挟みまして
10月ターンの開始となります。

夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

24 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 18:52:35 ID:???
***

棍という武器、同じ長柄の槍や矛に比べて確かに軽く、一撃での必殺性には欠ける。
遠目の間合いからの打撃を旨とする故に、多対多の混戦にもあまり向かぬ。
しかしながら、それは重武装の鎧兜に身を固めたいくさ場における話である。
硬い樫材を樹脂で塗り固め、頭と尻に鉄製の冠を据え付けて補強したそれは、
ただ振り回すだけでも遠心力と重量で、素肌に当たれば人の骨を砕くに充分だった。
まして熟練者の技は一撃よく急所を穿ち、人体を効率的に破壊せしめる。
サム・バーストンという男、棍を使うに熟達の二文字が相応しく、そして対する森崎は
胸甲と円盾、かろうじて鉄板入りの脛当てに革の腰当てという軽装であった。

「……ッ!」

ふ、と呼吸の音は棍の軌道が変わる前触れである。
真横、左からの薙ぎに円盾で対応した森崎が、その衝撃に逆らわず右側へと飛ぶ。
追撃は棍を返しての右斜め上段、振り下ろし。
身を捻って正対しつつバックステップ気味に距離を取れば、すかさず突きが飛んでくる。
正確に水月を狙ったそれを剣先で弾こうとする森崎。
が、その刃は虚しく空を切る。
一瞬早く、サムが棍を引いたのである。

「ちィ……!」

舌打ちする間もあればこそ、森崎が右の半身を引いて身体の軸をずらす。
刹那、顎のあった場所を貫いたのは二段目の突きであった。
伸びきった棍が、しかし体の流れた森崎を追うように、真横へと払われる。
顔面を正面から襲われるかたちとなった森崎が、咄嗟に刃を寝かせて剣を翳す。

25 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 18:54:03 ID:???
「く……!」

衝撃が殺しきれない。
剣の腹が額を直撃する寸前、森崎が空いた手を剣に添えてようやく棍の軌道を上方へと逸らした。
が、それで終わらぬのが棒術の厄介な点である。
棍を使う者にとってみれば、先端を上に流されるという力は即ち、梃子の要領で棍の尻を
正面へと向ける遠心力に他ならぬ。
するりと持ち手をずらしたサムが、その流れに沿って棍を跳ね上げた。
森崎の腹、更には顎を真下から砕かんとする一撃。
受けは間に合わぬと判断、森崎が思い切りよく真後ろに飛ぶ。
円弧を描いた棍は、僅かに森崎の鼻先を掠めるに留まった。

「……」
「やるじゃねえか、東洋人」

彼我の距離が空き、流れるような連撃が途切れる。
口を開いたのはサムである。

「三ヶ月」
「……?」
「このドルファンに来てたった三ヶ月で、すっかり有名人だよ、お前さん。
 ……外人ってのは、これだからな」

細い目の奥の瞳をゆらりゆらりと動かして森崎の隙を伺いながらの、湿った声音。
不思議と周囲の歓声にかき消されることもなく耳に飛び込んでくる。

「初めはボルキアの連中だ」

問わず語りは、低く、重い。

26 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 18:55:08 ID:???
「戦災に巻き込まれた哀れな難民でござい、なんてお題目で俺たちの街に巣を作りやがった。
 まず掠め取られたのは物乞い共の縄張りとガキの遊び場よ。
 雨風をしのいだ連中が次に掻っ攫ったのが、仕事さ」

棍の先は森崎の目から喉を辿り、八の字を描くように胴を嘗め回しながら揺れる。

「俺らじゃあ食うにも困るような安いカネで請負仕事を端から持って行きやがった。
 野菜くずと腐れ肉で生きてるような奴らさ。台帳に乗らねえ連中には取り立てられる税もねえ」
「……何が言いてえんだ」

ぼそりと漏らした森崎に、サムがくつくつと嗤う。

「仕事もなく呑んだくれる親父に弟の薬代……俺も兄貴も、そりゃあ苦労したって話よ」
「恨み言なら神父にでも聞いてもらいな」
「お前さんに聞かせてるんだよ、東洋人。何せお前らはボルキア人どもに輪をかけてタチが悪い」
「……あァ? 言いがかりも大概にしろよ、蛇野郎」

薄い唇をねらりと舐めて湿らせたサムの言葉に、森崎が刹那、対峙も忘れて胡乱げな顔をする。

「俺以外の東洋人なんざ、街中にゃ殆ど見かけねえぞ」

実際、森崎がこのドルファンでしっかりと認識したのは陽子くらいのものであった。
港湾に足を伸ばせばちらほらと黒い髪の男たちもいるにはいたが、ドルファンは中継港である。
長居することもない彼らが、安い歓楽街のあるシーエアー地区を越えてくることは極めて珍しい。

「ひゃは、そいつぁお前……」

ゆらゆらと揺れる棍の狙いが、森崎の膝から足元へと降り、また這いずるように登ってくる。

「随分と、この街の明るい方ばかり歩いてると見える。流れの傭兵とも思えねえ」
「……どういう意味だ」
「裏町の路地をちょいと曲がりゃあ、すぐに分かることさ」

27 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 18:56:09 ID:???
森崎が慎重に問うのへ直接は答えようとせず、サムが薄笑いを浮かべた。
楽しげな色のどこにも見えぬ、凄惨な笑みだった。

「そりゃあ、俺らだってヤクは扱ってるさ。けどな、仕切るのはアルビア廻りの極上品よ。
 そいつを軍の馴染みや金持ちの旦那方にちぃーっとずつ卸してただけでな。
 くたばったお袋の麦粥にかけて、見境なく広めるような真似はしてこなかったんだぜ。
 ……だが、よ」

ふしる、とタイミングの測りづらい呼吸は、やはりのっぺりと冷たい長虫を思い起こさせる。

「お前ら東洋人が持ち込んだのは、ありゃ何だ。半年保たずにアタマがイカれるようなシャブ、
 あんなもん悪魔だって扱わねえ。そいつをシベリアのアカどもと組んで、船一杯仕入れてきちゃよ。
 よりにもよってガキども相手にバラ撒きやがるだ? ひゃは、お前ら血の代わりに何が流れてんだ」

粘質の饒舌は、しかし森崎の耳にしか届かない。
怒号のような歓声が、睨み合う二人を押し包んでいる。
少し離れて立つ審判役の男にすら、その声は聞こえていないだろう。

「安いシャブだ、ガキは売女と楽しむだろうさ。染まった女どもは客に勧める。港やヤマの人足だ」
「……」
「目抜き通りはあと何年もしねえ内にシャブ漬けで溢れるだろうぜ。
 行きずりのガイジンには知ったことじゃあねえだろうがよ……腐れ外道が」

吐き捨てたサムに、森崎がしばしの沈黙の後、ぼそりと応える。

「……知らねえよ、実際」

言葉と共に踏み出すのには、苛立ちの色も濃い。
まるであずかり知らぬ事柄で責め立てられたところで、返す言葉も思うところもありはしなかった。
一歩目、止まらず二歩、三歩を詰める。

「ダラダラネチネチ、ワケのわかんねえこと言いやがって……!」

28 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 18:57:11 ID:???
剣は下段、円盾を高く翳しての接近である。
正中線上の急所を庇いつつ間合いを潰す狙いは、サムにとて明らかなことは承知の上だった。
案の定、サムの迎撃は向かって左、盾側に回りつつ森崎の胴を真横に薙ぐ打ち払い。
円の縁を沿うように回ることで距離を確保しながら己が体を軸に遠心力で痛撃を齎さんとする、
淀みのない体捌きである。
厳しい鍛錬によって躰に染みついた、半ば無意識の洗練された動きだっただろうか。
が、その挙動は洗練されていたが故に、いささか淀みがなさすぎた。

「喧嘩だ、つったのはお前だろうが……!」
「!?」

森崎が翳した円盾は、棍の一撃を防ぐためのそれではない。
サムの体捌き、迎撃の軌道を読みきった森崎が選んだのは、盾による打撃であった。
相対するサム自身が踏み込むよりも更に一瞬早くその進行方向へ飛び出した森崎が、
腕ごと円盾を振りぬく。
重い衝撃は、二つ。

「ぐ……!」
「がぁ……ッ!」

腕に伝わる、盾の向こうのサムの顔面がひしゃげる感覚。
そして、サムの振るった棍が相討ちで森崎の胸を横から叩いた、その衝撃である。
互い、ほぼ同時の打撃。
しかし連打へと至ったのは、森崎であった。
予め読んでいた間合いの差である。
サムの打撃は、森崎が先ほどまで立っていた位置を薙ぐのに最適化されている。
想定外に距離を潰した森崎を打ったのは、棍の根本であった。
故に、骨を砕き臓腑を潰すには至らぬ程度には、軽い。

29 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 18:58:12 ID:???
「おおぉ……ッ!」

漏れる声は、胸郭に響く激痛を、食い縛った奥歯の隙間から吐き出したものである。
振り抜いた腕を、引き戻す。
戻して振り上げ、円盾の鉄で補強された縁取りを、ひしゃげ血を噴くサムの顔面に向けて、叩き落とした。

「―――」

蛇が、沈む。
からりと、棍がその手から離れて転がるのに遅れること、僅か。
膝から崩れ、うつ伏せに倒れたその姿を見やって、審判役の男が片手を上げる。
宣言は、高らかに。

「そこまでッ! 勝者、ユーゾー・モリサキ!!」

デュラン二十六年度収穫祭、剣術大会の優勝者が決まった瞬間である。
歓声が、爆発した。


******

30 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 18:59:12 ID:???
******


※称号が『気のいい剣術大会王者』になりました。

スキル『剣術大会優勝』を獲得しました。
種別:特殊
消費ガッツ:-
効果:剣術値を20、評価値を15プラスする。


******


※称号が『気のいい傭兵団のエース』になりました。

スキル『赤騎士候補』を獲得しました。
種別:パッシブ
消費ガッツ:-
効果:全人物に対する発言力、全ヒロインの好感度が一段階アップする。


******

31 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 19:00:13 ID:???

夜の催事場に、篝火は赤々と燃えている。
揺らめく炎に照らされる少女は二人。
一人は瞳に憧れの色を浮かべ、もう一人は視線を合わせようとせずに虚空を睨んでいる。
顔の僅かに赤いのは、指摘すればきっと篝火のせいだと言うのだろう。
楽しげな曲が流れ、笑顔の人々が輪になって踊るその広場の片隅で森崎の眼前に立つのは、
ロリィ・コールウェルとレズリー・ロピカーナである。

「踊っていただけますか?」
「うん!」
「アタシはいい」

周囲のいたるところで見受けられるのと同じ仕草、同じ言葉で手を差し伸べた森崎が、
両極端の即答に苦笑する。

「俺、何か作法間違えたか?」
「ううん、大丈夫だよ、お兄ちゃん!」
「……二人で行ってくれば」

早い者勝ちだと言わんばかりに森崎の手を握ったロリィの頭越し、枇杷茶のスカーフを指先で弄る
レズリーに目線を向ければ、返ってくるのはぶっきらぼうな声音だった。
あくまでも森崎と目を合わせようとしないその態度に、ちくりと悪戯心を刺激された森崎が
口の端で笑みを作りながら、訊く。

「恥ずかしいのか?」
「なっ……!?」
「わあ、お姉ちゃん照れちゃってるんだ〜」
「ロ、ロリィまで……! そ、恥ずかしいとか、そんなんじゃ、」

しどろもどろなレズリーの言葉を、しかし最後まで聞かずにロリィが遮る。

32 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 19:01:13 ID:???
「じゃあ、ロリィがお手本見せてあげるね。ほら、全然平気でしょ、ってしてあげる!」
「ちょ、ちょっと……」
「それじゃ、お兄ちゃん。お相手お願いしま〜す!」
「おう」

頷いてロリィの手をとった森崎が、そっとその華奢な肩を守るように空いた手を回し、
篝火を囲む輪の中へと入っていく。

「えへへ、ロリィ、踊りは得意なんだよ」
「お、実は俺、こっちの踊りはあんまりよく知らねえんだ。よろしく頼むぜ」
「あ……」

背後の、何かを言いかけたような声は勿論、聞こえていた。


***

33 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 19:02:14 ID:???

「はい、次はお姉ちゃんの番!」
「う……」

満面の笑みで、捧げ持った森崎の手をレズリーへと差し出すロリィ。
困惑と躊躇を絵に描いたように眉尻を下げたレズリーが、差し出された手を見やり、
森崎の方へちらりとだけ目をやって、またロリィへと視線を戻す。

「うぅ……」
「……」

されるがままの森崎は、しかし真っ直ぐにレズリーを見つめている。
言葉は、かけない。
時には沈黙が何よりも強い圧力になると承知していた。
にこにこと向けられるロリィの笑顔と、周囲にさざめく人の波。
篝火を囲う踊りの輪は笛に弦楽器、鼓の音に引かれて動くからくり仕掛けのよう。
差し出される手、行き交う人の笑い声。
揺らめく炎に揺れる影、真っ直ぐに向けられる視線。
綯い交ぜになったそれらと、のしかかるような沈黙が、

「……ええい! わかったよ!」

とうとう、少女を動かした。
少女の一歩目がため息ではなく、己を奮い立たせるような言葉であったことに
我知らず微笑みながら、森崎がうやうやしくレズリーの前に歩み出て、頭を垂れる。


34 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 19:03:16 ID:???

「では、改めて」
「……」

差し出したのは無骨な手。
おずおずと伸びるのは、白くたおやかな指。

「踊っていただけますか、お嬢さん?」
「……あとで、やっぱりやめときゃよかった、なんて泣き言いうなよ」

言葉と共に、手と手が、触れた。



******

35 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 19:04:41 ID:Bm8R2SZk


*D26.10月
フレーバーテキスト


*ドロー

今月の巻頭特集は → ! card


スペード→ 日常「燐光石と悪代官」
ハート→ 情報「ダナン造反疑惑」
ダイヤ→ 情報「ヴァン=トルキア継承戦争」
クラブ→ 歴史「ハンガリア革命戦争」
JOKER→ 視点「神父は嗤う」

※ ! と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。
 このドローでの分岐は順不同です。JOKERを除いてカード序列による有利・不利は特にありません。

36 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/10/30(火) 19:18:12 ID:???
今月の巻頭特集は →  ハート8

37 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 19:54:39 ID:???
******


◎ダナン造反疑惑

D26年、九月十日。
ドルファン王室会議は、その構成員たる五家評議会の一部変更を内外に発表する。
長年参位であったベルシス家を除名し、新たにピクシス分家を参位の地位とするものであった。

ドルファンという国家の中枢、最高意思決定機関である王室会議の五家とは元来、

・『上位』ドルファン王家

それに次ぐ『次席』に

・東部の港湾都市モナークを所領とするピクシス本家

そして『参位』の地位に

・西部カタローネ地方の交易都市エローを治めるエリータス家
・北部国境の都市ダナンを統治するベルシス家
・中部ウエールの大部分を管理するカイニス家

というドルファンの五大都市の主たる貴族によって構成されるものであった。
この中からベルシス家を除名し、宮廷貴族化していたピクシス分家を参位とする発表は
その力の均衡を崩す、明らかな横紙破りである。
しかしその決定を疑問視する声が他家から上がることは、遂になかった。
この国の実情を知る者であればそれを不思議に思うことはない。
何となれば、しばしば傀儡と揶揄される現王デュランに替わり国政の一切を取り仕切っているのが
次席たるピクシス本家当主、アナベル・ピクシスであるのは周知の事実だったのである。

38 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 19:56:56 ID:???
ある者は畏怖を込めて、またある者は憎悪混じりに『怪老』と呼ぶその老人こそが、
このドルファンという国家の事実上の最高権力者である。
その怪老と長年にわたって対立し、唯一の政敵と呼べる存在であったのがこの度除名された
ベルシス家当主、ゼノス・ベルシスである。
現王の王位継承争いに端を発する長らくの暗闘に終止符を打つ一手、それ自体を
疑問視する者がいないのはそういった理由であった。
しかし、政治に敏感な人々の興味を引いたのは、その除名理由である。

「ベルシス家に叛意あり」。

当主ゼノス・ベルシスによる、王家への叛意を挙げたその一文は、様々な憶測を生んだ。
国境都市ダナンを統治し『ドルファンの盾』を自認してきたベルシス家当主による造反疑惑は
先のヴァルファ侵攻に際しての無血開城と相まって、首都城塞市民に格好の話題を提供したのである。

ここで、もしも、という言葉を使おう。
もしも、荒唐無稽な噂の海の中に敢えて一滴の真相を放り込むことで虚実の境をぼやけさせ、
放埒で無責任な邪推の中でそれらすべてが真実味を失っていくことこそが発表の真意だったとするならば、
『怪老』と呼ばれる政治家の老練は、おそるべきものと言えたであろう。


(※情報『続・ダナン造反疑惑』がオープンされました)

******

39 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 20:03:24 ID:???
******

*D26.10月
訓練選択

『今月は何をするの?』

森崎有三
称号:気のいい傭兵団のエース

個人パラメータ

現在のガッツ:95
剣術:146 馬術:66 体術:62 魅力:78 評価:84
ATK:212 DEF:218 SPD:128 ini:25

部隊パラメータ
兵数:289 騎馬:103 練度:15

所属隊員:
トニーニョ(威圧Lv2)
ネイ(鼓舞Lv1)
ジェトーリオ(撹乱Lv1)
カルツ(針鼠Lv1)
レヴィン(破壊Lv1)

40 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/30(火) 20:05:12 ID:Bm8R2SZk
剣術・馬術・体術・魅力・礼法・墓守・休憩・部隊訓練・陳情の中から『二種類』選んで下さい。
同じ訓練を二つ選んでも構いません。

陳情を選ぶ際は何を陳情するのかを付記して下さい。
また「剣術・馬術・体術」を選んだ場合は所属する隊員の中から共に訓練する相手を
一人だけ選ぶことができます。誰と訓練をするのかも付記して下さい。
隊員の所持スキルの強化・変化や、イベントによる森崎自身の称号取得が起こる可能性があります。

その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願い致します。
期限は『10/30 24:00』です。

******

今月の訓練所イベントはあっさりしているのでひとまず後回し、
といったところで本日の更新はこれまでとさせていただきます。
遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

41 :◆W1prVEUMOs :2012/10/30(火) 20:49:39 ID:???
馬術・体術
SPDを上げつつATKとDEFもカバーしたいです

42 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/10/30(火) 21:30:04 ID:???
休養 部隊訓練
ガッツは余分にもって置きたいなと思います。部隊訓練は隊長になったのでどんなものなのか観てみたいです。

43 :◆9OlIjdgJmY :2012/10/30(火) 22:49:51 ID:???
馬術 休養
馬術はレヴィンと

ステのバランスとガッツ維持のため。

44 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 19:54:24 ID:???
***

*D26.10月
訓練所イベント



「―――以上が、許商会との先月分の取引概要です。詳細は後ほど書面でご覧下さい。
 では次に、本日の報告に移らせていただきます」

やわらかく秋の日差しが差し込む隊長室。
殺風景な部屋の中に響く淀みのない口調は、内務担当のカイル・マクライオンである。

「編成部より、先のダナン派兵で大きな被害を被った騎士大隊の再編成を行うとのことです」
「……大きな被害、ってーと」

背中に暖かな日を浴びながら執務机に頬杖をついて報告を聞いていた森崎が問いただす。
返答は即座に返ってきた。

「右翼第四大隊、および本隊の第二大隊です。両大隊の損耗率は過半数を超えており、
 部隊としての機能維持は困難であるとの見解から、第四大隊を一時解体し第二大隊へ異動、
 また現存各大隊より中隊規模で第二大隊へ補填するとのことです」
「そらまた……場当たりつーか、なんつーか」
「第四大隊は当面、欠番扱いとなる見込みです。以上で本日の報告を終わります」

森崎の呆れたような感想には口を差し挟むことなく、カイルが手元の資料を閉じる。

45 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 19:55:38 ID:???
「サマになってきたじゃねーか、カイル」
「あ、いえ、その、……あ、ありがとうございますっ」
「……何で仕事から一歩外れるとそうなるんだ、お前?」

苦笑を抑えきれぬ森崎の前で、カイルが少年のような顔を紅潮させている。
こと与えられた任務については完璧に近い仕事ぶりである。
酒保商人との交渉や傭兵大隊の予算管理、軍部との連絡、書類雑務といったものは
既に大方をこの童顔の青年が取り仕切っていた。
管理業務に慣れぬ森崎が丸投げした結果であったが、この形で上手く回っているのだから
問題はなかろう、などと当の森崎は呑気に考えている。

「優秀だよな。よく気がつくし、読み書きも金勘定もできる」
「や、やめてくださいっ」

あわあわと、顔の前で手を振る仕草。
先ほどまで理路整然と報告をまとめていたのと同一人物であるとはとても思えない。

「地元じゃ手代だったんだろ? 何で傭兵なんかに応募しようと思ったんだ」
「テダイ?」
「おっとスマン、商人の手伝い、だ」

怪訝そうな表情を浮かべるカイルに、森崎が訂正する。
うっかりすると慣れた言葉が口をついて出てくるあたり、精神的な弛緩があるのかもしれなかった。
いかんいかん、気を引き締めねば、と内心で反省する森崎を前にして、カイルが口を開く。

「あ、はい。その……えっと」

もじもじと、足先で「の」の字を書くカイル。
急かしても余計に萎縮するか、赤面してまともに言葉が出なくなるかであると分かっていた。
森崎はぼんやりと飾り柱の木目が何に似ているか、などと考えながら待っている。

46 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 19:56:41 ID:???
「その、ぼ、僕はセサの生まれなんです」
「セサ……ああ、トルキアの端っこにある」
「は、はい、そのセサ公国です」

セサ公国。
古トルキア帝国末期、帝国の大貴族であった某公爵が所領の独立を認められた国家である。
面積はドルファン王国の半分程度。
トルキア半島の北西端に位置する、小国家であった。

「セサは、その、土地が良くないですし、対岸のイングランドに睨まれてちゃんとした港もないですから、
 えっと……つまり、すごく貧しい国なんです」
「あー……ま、わかるぜ」

遠い故郷を一瞬だけ思い出して、森崎が頷く。
産業がなく、交易の拠点ともなれない土地は、必然貧しい。

「それに、その、独立したっていっても、今でもトルキア……ヴァン=トルキアの下にいるようなもので、
 税も高いですし、僕の家も暮らし向きは、全然楽じゃなくって」
「おいおい、独立なんざ百年以上も前の昔話だろうよ。まだ影響が残ってるってのか?」
「はい……」

首肯したカイルの顔には笑みが浮かんでいる。
楽しげな笑みではない。
眉尻を下げ、口角だけを上げた、困ったような表情。
それは、諦念である。
泣いても喚いても変わらぬ、厳然たる現実を前にして諦念という鎖に縛り上げられた心の、
人の内側から滲み出すような、顔であった。

47 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:02:28 ID:???
「ヴァン=トルキアからの荷がなければ、小麦も塩も手に入りません。
 石材も木材も、布だってセサの国の中で賄うには全然足りません。
 どれだけ高くたって、僕らはそれを買うしかないんです。止められたら、飢えて死ぬだけです」

セサという国の人間は、きっと皆、こうやって笑うのだろう。

「トルキアに人を出せと言われたら、セサの男たちは駆り出されます。
 それが戦でも、麦の刈り入れでも、安い賃金でいいように使われます。
 だけど、仕方ないんです。……女たちよりは、幾分ましですから」
「……」
「僕たちは、そうやってトルキアからお金を落としてもらって、そのお金で
 トルキアの小麦を買います。何も残らないけど、今日を生きていくことはできます」

静かに言ったカイルが、

「……あ」

森崎の神妙な顔に気づいて、再び頬を紅潮させる。

「す、すいません! ぼ、僕、つい変な話を……!」
「いや、聞いたのは俺だからよ」
「あの、それで、手伝いをさせてもらっていたお店の人が亡くなって、それで、
 は、母を食べさせていかなきゃいけなくって、どうせ外に出稼ぎに行くならって」

慌てたように言うカイルを手で制して、森崎が口を開く。

「実入りのいい仕事が、これだったってか」
「は、はい!」

こくこくと、何度も頷くカイル。

48 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:03:45 ID:???
「おっ母さんのためなら、か。孝行息子だな、お前」
「母は、女手ひとつで僕を育ててくれましたから……当然です」

そう言うカイルの栃色の瞳には、心からの慈しみが溢れている。
先ほどまでの乾いた笑みとは打って変わったその目に、森崎がカイルを招き寄せると、
いくさ働きには到底向かぬ細い肩をぽんと叩いた。

「なるほどな……ま、俺も頼りにしてるからよ、給金は弾むぜ」
「あ、ありがとうございます! 僕、一生懸命働きますっ!」

深々と礼をした拍子、秋の日に照らされて、さらさらとした栗毛が輝いた。


******

49 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:04:46 ID:???

//部隊訓練


「―――おい、そこ! そうだ、赤毛のお前だ、ちょっと横見てみろ!
 ……分かったか、前に出すぎてんだよ! 狙い撃ちにされてえのか!」

森崎の怒声が響き渡るのは、広大な運動場である。

「だああ、違う違う! 盾の隊列を崩すんじゃねえ! テメエが守るのは隣の奴だっての!
 逆隣の奴がテメエを守るんだよ! 一箇所でも穴開けたらそこから崩れるんだ、忘れんな!」

九月に入隊した新兵の内、歴戦を重ねた者はほんの数えるほどである。
その他のほとんどは初陣どころか軍事教練など受けたこともない、素人の集団だった。
それも力自慢の荒くれ者揃い、話を聞かぬ列を作らぬ合図を覚えぬ、放っておけばそちらこちらで
喧嘩を始める始末である。
彼らを一人前には届かずとも、少なくとも軍事単位として行動ができるまでにまとめ上げるのが、
隊長として森崎の成し遂げねばならぬ難題であった。

「そこの馬鹿! テメエ、今の太鼓は『止まれ』だ! よし分かった、そんなに走りたきゃ
 今から日が暮れるまでに外周10回、ほら好きなだけ走れ! ……あァ!?
 ……おう、いい度胸だ、なら胸を貸してやる、遠慮しねえでかかってこい!」

教練開始から一週間。
新兵たちの意識改革には、まだ暫くの時間がかかりそうだった。


※部隊練度が20上がりました。
ガッツが30減少しました。

******

50 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:06:12 ID:???

//休養


「くぁ……ちくしょう、久々の休みだってのに、メシを食いに出る気力もねえぞ……」
『うわあ……』

寝台の上に突っ伏した森崎の姿は、さながら馬車に轢き潰された蛙である。
体の芯に鉛でも詰め込まれたような倦怠感に、身を起こすのすら億劫だった。

「人にあれこれ言うってのは、自分の体を苛めるよりよっぽど堪えるな……」
『大変だねえ、隊長さんも』
「他人事だと思いやがって……くそう」
『そんなことないけどさ。まだ若いんだから、シャキッとしなよ、キミ』

呆れたようにどんよりとした顔の前へ舞い降りたピコが、鼻歌交じりに前髪を弄り回して遊ぶのを
追い払おうとする手にも力がない。
ぼんやりと小さな相方の悪戯を見る森崎の瞼が、その重さに負けたように次第に垂れ下がっていく。

「ハラ……へった……な」

もごもごとした呟きは、すぐに小さな寝息に変わった。
こうして森崎は、貴重な一日を寝て過ごしたのである。


※ガッツが100回復しました。

現在のガッツ:165
剣術:146 馬術:66 体術:62 魅力:78 評価:84
ATK:212 DEF:218 SPD:128 ini:25

******

51 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:07:21 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
ご覧の通り、コピペの順番を間違えてイベントテキストが先になってしまいました!
本来、このレスが>>44の前に入ります。
お恥ずかしい限りです……。

気を取り直しまして。
それでは早速、>>39-40の選択については……

>>42 さら ◆KYCgbi9lqI様の案を採用させていただきます!
そろそろガッツが黄色信号ですからね。
また部隊訓練もこの辺りで消費と上昇値を見ておいた方が戦略も立てやすくなるでしょう。
CP3を進呈いたします。


>>41
今のパラメータは剣術が突出していますからね。
バランスを取っていくのもいいと思います。
ただ、個人訓練の場合は「誰と訓練するか」も付記していただければ幸いです。
初回の訓練からはちょっと手順の変わった部分でして、混乱させてしまって申し訳ないのですが、
何卒よろしくお願いいたします。

>>43
レヴィンとの訓練を選ばれたのはちょっと意外……と思いましたが、カルツも先月で
お披露目が終わっていますし、順番からいけば彼ですよね。

52 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:08:26 ID:???
******


*D26.10月 「気のいい傭兵団のエース」森崎有三
メインイベント

『才気』


マルタギニア海の沿岸は、欧州の中でも温暖な気候で知られている。
その一端に連なるドルファンも例外ではなく、冬の雨は多いものの、雪が降ることは
十数年に一度という程度である。
とはいえ無論、常夏というわけにはいかない。
夏が過ぎれば短い秋と長い冬が待っていることに変わりはなかった。

「うぅ、さすがに朝晩は冷えるようになってきたな……」
『……爺むさいよ、その姿勢。ていうかそんなカッコしてるからでしょ』

ピコが白い目を向けるのは背を丸め、腕で体を抱くようにして歩く森崎有三である。
言われた森崎はといえば、半袖の麻シャツから剥き出しの腕を擦りながら相方から目を逸らしている。

『風邪ひいたって知らないんだからね』
「へいへい、っと……いっくし!」
『ほら、言わんこっちゃない。……あれ?』

呆れたようなピコが、ふと何かに目を留める。
つられて目をやった森崎が、眉根を顰めた。

「……何してんだ、あれ」
『さあ……事故かな』

53 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:09:27 ID:???
ひそひそと言い交わす森崎の行く手にあったのは、まるで道を塞ぐように横付けされた馬車である。
兵舎のあるシーエアー地区からフェンネル地区の訓練場に続く閑静な道のこと、
何か近隣に用があって停まっているわけでもあるまいと思いながら見やった馬車は、
近くで見ればひどく豪奢なものだった。
全体を純白に塗られた車体は、森崎もよく目にする粗末な乗合馬車とは比べ物にならない。
精緻な計算のもとに施された彫刻が白い車体を彩り、まるで羽ばたく鳥のようにその全体像を錯覚させる。
金の縁取りはよもや真物かと思わせる重厚な煌めきを陽の下に晒していた。
引く馬も見事な体格の芦毛が二頭。
肉付きといい毛艶といい、一級品の素材を最高の厩舎が磨き上げていることは明らかだった。
無駄に嘶くこともなく、どっしりと構えたその威容は軍馬を扱う森崎から見ても文句のつけようがない。

「羨ましいぜ、実際。一頭くれねえかなあ」
『さもしいよ!』

言いながら、道幅のほとんどを埋めるように停車しているその馬車の脇を抜けようとした森崎の背に、
低い声が刺さる。

「―――やらねえよ馬鹿野郎」
「うわっ!?」

突然の声に、思わず飛び上がる森崎。
いかに油断していたとはいえ、森崎はいくさを生業とする男である。
背後に誰かがいれば、大抵は察知できるつもりでいた。
しかし今、声の主は全く気配を感じさせなかったのだった。

「誰だ!?」

反射的に身構えながら振り返った森崎の目に映ったのは、

「……おん、な?」
「オイ手前ぇ、いま一瞬迷っただろ」

54 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:10:27 ID:???
乱暴に言い放って森崎を睨む、その姿はよくよく見れば確かに女性である。
灰色がかった銀髪を長く伸ばした顔立ちは、むしろ美人といってもいい。
しかし、森崎が迷ったのも無理はなかった。
獰猛とすら言えるような目で森崎を睨みつける彼女の出で立ちはといえば、
糊のきいた純白のカッターシャツに黒のベスト、胸元にはベルベットでできた臙脂のリボンタイ。
そして何より、その足を覆うのはスカートではなく、すっきりとしたラインの黒のパンツであった。

「あ? 女がこんな格好してちゃ悪いのか?」
「いや……悪いってんじゃ、ねえけどよ」

戸惑う森崎が言葉を濁す。
苛立たしげに踏み鳴らす足元も、丹念に磨き上げられた黒の革靴だった。
有り体に言って、富裕な家のバトラーであると主張するような服装である。
が、森崎の知識の中にある限りでは、女性のバトラーや家令など聞いたことがない。

「……」
「……チッ、まあいい」

困惑が顔に浮かんだのが見て取れたのか、女性が露骨に舌打ちして首を振る。
しかし次に出た言葉は、胸を撫で下ろした森崎を再び驚愕させるのに充分であった。

「ユーゾー・モリサキってのは、お前だな」
「なにィ!?」

名指しである。
いかな先月の収穫祭で名が売れたとはいえ、全くの見知らぬ他人からその名が出るとは思わなかった。

「お、俺ってそんなに有名人なのか?」
「は? 何言ってんだ、手前ぇ」

思わず訊いてしまった森崎が、一刀両断にされる。
猛禽類を思わせる灰色の鋭い目が、心底から呆れ返ったように森崎を射貫いていた。

55 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:11:28 ID:???
「……じゃあ、どうして俺の名前を」
「用があって捜してたんだよ。っと、勘違いすんじゃねえぞ」
「……?」
「用があるのはオレじゃない。……あっちだ」

すげなく言った女性が、す、と滑るように歩むと、馬車の扉に正対する。

「お嬢さん、間違いないみたいだぜ」

声は、馬車の中にかけられたものである。
僅かな間を置いて、くぐもった声が返ってくる。

「……そう。開けなさい」
「へいよ、っと」

気の入らぬ声音とは裏腹に、馬車の扉を開けようとする女性の仕草は洗練されている。
隙がない、と言い換えるのが正しいのかもしれない。
背後を取られたのに気づけなかったことを思い出し、渋面を作る森崎の目の前で
軋みひとつ立てずに扉が開いていく。
純白の扉の中は落ち着いた赤を基調とした布張りである。
垂れ下がる壁掛けの複雑な文様、美しい茜色は更紗だろうか。

「―――」

その、小さな赤い世界を睥睨するように座る女がいる。
纏うのは蒼。
どこか、ソフィアやハンナの通う学園の制服を思い起こさせる意匠である。
見慣れぬ仕立てだが、ゆったりと身体を包みながらもその動作を阻害しないよう
細心の注意が払われた、いかにも一品物といった完成度の高さがそこにあった。
膝丈のスカートの下から伸びる足の白さに森崎の目が釘付けになったのは、馬車の車高で
ちょうど目線の正面近くになったからばかりではあるまい。
少女の、脚である。

56 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:12:30 ID:???
ハリに満ちた、どこまでもしなやかな肉付きは成熟した女のそれではあり得ない。
一目、その魅力に心奪われ、二目、その鍛え方に瞠目する。
神のたわむれに描いた曲線の如きふくらはぎから純白の三つ折靴下に隠された踵の腱へと至る
筋に秘められるのは、少女というものが元来持つ、微かな熱と沈み込むようなやわらかさではない。
そこにあるのは、凝集された力の結晶である。
無理やりに鍛え上げた醜い塊ではない、匠の手で研ぎ上げられた刀の如き筋肉が、
理想的な長さと太さを併せ持つ脛骨にふわりと覆いかぶさっている。
腿が見たい、と思った。
ごく自然な心の動きに、一切の邪念はない。
そこにあるのはただ武芸を志す者として完成された肉体という概念を目にしたい、
そういう純粋な感情で、

「……」

見上げた先で、悠然と笑む少女と目が合っていた。
少女が、森崎を見下ろしたまま、言う。

「気は済みまして?」
「……はい」

こくこくと、壊れた水飲み人形のように頷く森崎に同情を寄せる者は、この場にはいなかった。

「聞いていたのとは少し違うようですが……とにかく、モリサキさん、ですわね」
「あ、ああ……」

少女の口からも、やはり森崎の名が出る。
居心地の悪さに曖昧に頷いた森崎に、少女が席を立つこともないまま口を開いた。

「単刀直入に伺います。ハンナ・ショースキーは御存知ですわね」
「え……?」

57 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/01(木) 20:13:38 ID:dUOJLR82
今度こそ、森崎が困惑する。
自分の次は、ハンナ。
話の流れも、相手の意図もまったく読めないのを不気味に思った森崎が―――


*選択

A「さ、さあ……」 とぼけてみる。

B「知ってるといえば、知ってるが……」 一応、答えてみる。

C「綺麗な、脚だな」 欲望に忠実になってみる。(必要CP:5)


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/2 1:00』です。


******

ようやく最後のヒロイン候補登場、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。


58 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/11/01(木) 20:42:38 ID:???
こっちの素性を完全に知られてる以上、嘘をつく理由が何もない。
あと別スレで学んだけど、【権力持ってる相手と対立するならちゃんと準備してから】だよ。
思いつきで対立するとひどい目にあう…まあ流されるだけでもひどい目にあうけどw

59 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/11/01(木) 20:47:52 ID:???
…しまった、投票忘れてた。投票はBです。

60 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/01(木) 23:21:54 ID:???
B向こうはこちらの事を把握してますから、隠す必要はないかなと思います。
森崎ならハンナのライバルだなぐらいの事は気付くのではないかと思います。

61 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/06(火) 19:06:00 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>57の選択については……

>>60 さら ◆KYCgbi9lqI様のご回答を採用させていただきます!
そうですね、状況的に相手が誰なのかは察知してもおかしくありません、ということで
その辺りを本編に反映させていただきました。
CP3を進呈いたします。


>>58-59
はい、この相手はともかく、本当に危険な相手にノリや思いつきで喧嘩を売っていくのは
猛獣に徒手空拳で挑むようなものですね。
そういった行動に対してご都合主義的フォローは入りづらいので、気をつけたいところです。
勿論、状況を見て戦力差を判断し、それを埋める策を用意した上で挑むのであれば別ですけど。
負けられない戦いは、負けないようにして勝ちましょう!

62 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/06(火) 19:07:01 ID:???
***

B「知ってるといえば、知ってるが……」


誤魔化しても無駄だと判断し、森崎が答える。
調べをつけた上で問うているのは、単なる枕詞か、それとも何かを試しているのか。
そもそも名指しでこちらを捜しあてたという相手だ。
組織力、資金力には疑問を差し挟む余地がない。
言葉を濁したのは相手の意図が読めないからだが、しかし森崎の返答に馬車の中の少女は
小さく首肯しただけで悠然とした笑みのまま、眉筋ひとつ動かさない。
埒が明かない、と内心で舌打ちした森崎が、一石を投じるべく口を開く。

「そういうあんたは……リンダ・ザクロイド、か?」
「あら、わたくしをご存知でしたの」

少女の、成熟した女性を思わせるような切れ長の目がぴくりと動く。
やはり少女はリンダ・ザクロイド。
ハンナが唯一勝てないという、国内最速の女で間違いないらしい。
投じた石の、水面に起こした波紋を確認して森崎が首を振る。

「いいや、俺はハンナからそんな奴がいるって名前を聞いていただけだ」

思わせぶりに、ちらりと目線を送る。
少女、リンダは先を促すような視線を返してきた。
幾ばくかの興味を引くことには成功したらしい。

63 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/06(火) 19:08:02 ID:???
「ただザクロイドといやあ、この国の燐光石市場を仕切ってる大商人だ。
 外様の俺でもそこかしこで聞く名前だからな、さすがに引っかかってたんだよ」
「……」

一瞬、リンダの表情が曇ったように見えた。
大商人、と森崎が口にした刹那のことである。
ほんの僅かに下がった眉尻は、しかし森崎が目を凝らして確かめるより早く、元に戻ってしまう。
気にはなったが、しかしおくびにも出さず言葉を続ける森崎。

「そこへ、そのすげえ馬車ン中からお嬢様が出てきて唐突にハンナのことを訊かれたわけだ。
 そんな金持ちの心当たりはあんたしかいなかった、ってことさ、リンダお嬢さん」
「……」

言い終え、肩をすくめてみせた森崎をじっと見ていたリンダが、す、と手を動かす。
どこから取り出したのか、白い指に摘まれていたのは豪奢な扇である。
薄紫の絹張りにレースの装飾、縁を彩る毛皮の純白は白貂だろうか。
それ自体がひとつの作品と呼べるような扇が、リンダの口元を隠すように広げられる。

「多少の目端は効くようですわね。無礼な物言いには目を瞑りましょう」
「そりゃどうも。……で、何の用だい」

扇で口元を隠されれば、表情は途端に読めなくなる。
なるほど上流階級かと感心しながら森崎が問い返すと、リンダが目を細めて言う。
もとより細く切れ長の瞳が下弦の月のように弧を描くその様は、銀色の長い髪も相まって、
どこか伝説に謳われる狐を連想させる。

「ハンナ・ショースキーに今の練習を指示したのは貴方、ということですが」
「……」

蒼を纏う狐が、断言する。
どこから調べたのか見当もつかないが、あるいはハンナ自らが聞かれるままに答えた可能性もあるか、
などと考えていた森崎の沈黙をどう捉えたのか、リンダの瞳が僅かに気色ばんだように見えた。

64 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/06(火) 19:09:02 ID:???
「あの娘、貴方の言葉を真に受けてそればかり練習してましてよ。
 毎日毎日、体力任せの追い込みばかりで技術を磨く気配もありません」

言葉にするうち苛立ちが増してきたのか、リンダの声音は次第に厳しいものになっていく。

「飾らずに言いますわ―――あのままでは、わたくしと勝負になりませんの」

傲然とすら呼べる言葉を、しかしリンダ・ザクロイドという少女は一片の迷いも驕りもなく言い放つ。
彼女の口から出るとき、それは単なる事実なのであろう。
そんな風に、耳にした者すべてに思わせる響きがあった。

「歯がゆくてよ、ユーゾー・モリサキ」

しかしまた同時に少女の目は、そんな事実の存在を許せぬとばかりに激しい炎を宿している。
ぎり、と手にした扇の骨が軋む音が聞こえた。

「わたくしは、わたくしを超えようとするものにその全力を要求します。
 そうでなければならないと、わたくしはこの世の条理を差配しますわ、モリサキ」

リンダの瞳は、その名を呼びながらも既に森崎を見てはいない。
その目から燃え上がった炎が銀色の髪を伝い白い喉を焼いて漏れいづるような、それは言葉である。
少女が、ついには赤い布張りの椅子から腰を浮かしかけたとき。

「お嬢」

短く声をかけたのは、それまでじっと馬車の扉の脇に立っていた黒服の女性である。
効果は覿面だった。

「……失礼、つい取り乱してしまいましたわ」

65 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/06(火) 19:12:09 ID:6O72Var6
冷水を浴びせかけられたように、はっと女性を見やったリンダが、すぐに表情を消す。
代わりに浮かんだのは、元通りの悠然とした笑みである。
その変遷を見やって小さく息をついた森崎が、ゆっくりと二呼吸ほどを置いてから口を開いた。

「……で、結局あんたは何が言いたいんだい。用がないなら仕事に行きたいんだが」
「モリサキさん。貴方、責任持ってあの娘をしつけ直してくれませんこと?」

明快な即答だった。
対する森崎はといえば―――



*選択

A「わかった、引き受けよう」 安請け合いする。

B「気にはかけておくさ」 やや肯定的に答える。

C「こう見えて忙しい身なんだ」 否定的に答える。

D「心配しなくても、あいつはいつも全力だぜ」 話をそらす。

E「報酬でも出るのか?」 即物的に答える。


66 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/06(火) 19:14:28 ID:6O72Var6
森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/6 24:00』です。


******

妙な部分でレスが切れてしまい失礼いたしました、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

67 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/06(火) 23:22:45 ID:???
Bハンナにアドバイスしたのはハンナがあまりにも酷い練習や心構えをしてたからだ。
一応アドバイスした以上多少気には懸けるが正式なコーチになるつもりはないし出来ない。
それに自分は傭兵だと付け加えたいです。

68 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/07(水) 00:55:02 ID:???
投票機会を逃してしまいましたけど
「それは人にものを頼む態度じゃねえだろ」とか
「ハンナの知らないところでアンタが敵に塩を送っちゃダメだろ」とか
いろいろツッコミどころが多いお嬢さんだと思いましたw

69 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/09(金) 19:58:03 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>65-66の選択については……

>>67 さら ◆KYCgbi9lqI様のご回答を採用させていただきます!
そうですね、素人が正式なコーチになると安請け合いしたところで、本作の世界には
ネットもなければ陸上の教本が売っている本屋さんもありませんからね……。
台詞の付け加え、多少アレンジしつつ本編に組み込ませていただきました。
CP3を進呈いたします。


>>68
ツッコミどころ、山ほど搭載してますねw
まあ、たぶん頼みごとをしているという意識はないんですよあの人。
一般的なラインからエキセントリックな方向に踏み出しているという意味では、
ヒロインズよりもむしろ傭兵たちの方に近いメンタルの持ち主かもしれません。

70 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/09(金) 19:59:40 ID:???
***

B「気にはかけておくさ」 やや肯定的に答える。


明言も確約もする気はないと言下に匂わせながら、さりとて正面から否定することもしない。
我ながら煮え切らぬ態度だ、と内心で苦笑する森崎の、しかしそれは偽りなく本心に近い。
自分には専門的な技術も知識もない、何よりそれに割ける時間がない。
しかしハンナのことを頭から無視することもまた、できなかった。
できる限りのことはしてやりたいと思うが、できることはもうやってしまったと、森崎は考えている。
それはつまり、後は遠くから見守るだけということに等しい。

「……」

すわ激昂するかと見上げた馬車の中の少女は、しかし意外にも静かに森崎を見ていた。
手にした扇が、二度、三度と開かれては閉じる。
絹の擦れる微かな音が、爽やかな朝の空気に混じってひどく長閑に響いた。
四度目に開いた扇で口元を隠して、リンダがようやく声を出す。

「貴方は、傭兵でしたわね」
「ああ、俺は傭兵でね」
「わかりましたわ」

短いやり取りは、しかし必要十分な重みをもって双方を首肯させた。

「時間を取らせてしまいましたわね」
「この程度なら構わんさ。半日がかりで練習に付き合わされたわけじゃねえ」

71 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/09(金) 20:00:45 ID:???
諧謔は、しかし少女には通じなかった。
眉筋一つ動かさぬまま、リンダが問う。

「祭典には、おいでになって?」
「ああ、そのつもりだが」
「では、その折にまたお目にかかりますわ。月桂の冠を戴く者として」
「剛毅な話だ」

月桂冠といえば、古来より各種競技の優勝者にのみ贈られる栄光の証だった。
紫水晶色の瞳を細めた笑みは、己が勝利を微塵も疑わぬ自信と自負とに満ちている。
しばらくそうして森崎を見つめていたリンダが、やがて満足したように視線を移した。
はたりと、扇が畳まれる。
それが合図であったかのように動いたのは、黒服の女である。

「ジーン。いいわ、出して」
「へいへい、お嬢様。閉めますよ」

ジーンと呼ばれた女が投げやりな言葉とは裏腹に洗練された所作で馬車の扉を閉めると、
赤の世界が、蒼を纏う少女と共に、白の装飾の向こうへと消える。
外鍵をかけると、御者台に乗り込んだのはジーンであった。
慣れた仕草で手綱をとって、微動だにしない芦毛の馬たちの尻をひと撫で。

「さ、仕事に戻るぜ、お前たち。……どいてくんな!」

愛おしむように口にした前半は、手綱の先にいる馬たちに。
乱暴に言い放った後半は勿論、馬車の傍に立つ森崎に告げたものである。

72 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/09(金) 20:01:45 ID:???
「そらっ!」

掛け声一閃、堂々たる体躯の馬たちが統制の取れた動作で歩み出す。
引かれた馬車の車輪が、石畳を噛んでごとりと鳴った。
美しい純白の車体は、見る間に遠ざかっていく。

『さ、仕事に戻るよ、キミ』
「……ああ」

ふわりと肩に降りてきた相方の、ジーンの声真似をしてみせたのに答える森崎は
狐に摘まれたような顔で歩き出すのだった。


******


※称号が『親切な傭兵団のエース』になりました。
 人物称号の変動のため、スキルの獲得はありません。


******

73 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/09(金) 20:02:47 ID:???
***

数日後のことである。

「よう、乗ってかねえか」

疲れた体を引きずるように歩く森崎にそんな声がかけられたのは、傾いた陽ももう幾ばくかで
城壁にかかろうかという、セリナ運河沿いの道端であった。

「んあ……?」
「おいおいおい、傭兵団の隊長さんがそんな間抜け面してんじゃねえよ。オレだよ、オレ」

振り返った森崎の眼前にあったのは、人の顔ではない。
灰白色の長い鼻面、つぶらでありながら理知的な瞳、そして奇妙に饐えた臭い。

「……馬?」
「こっちだ、こっち」

芦毛の馬面が、ふるると湯気の出るような鼻息を森崎に吹きかけた、その斜め上方。
手綱を伝って視線を移せば、森崎の背より高い位置に腰掛けて親指で自らを指していたのは
長い銀髪に鋭い眼差し、そして男装に身を固めた麗人だった。
乗っているのは、やはり先日と同じ白い馬車の御者台である。

「……ああ。確か……ジーン、とかいったか」
「うわ」
「何だよ」
「オレ、お前に名乗った覚えねえぞ」

鷹のような目が細められ、じとりと森崎を睨む。
心なしか上体も森崎から遠ざかるように反らされているように見えた。
森崎が、ほとんど反射的に取り繕う。

74 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/09(金) 20:03:59 ID:???
「いや……こないだ、お前ンとこのお嬢さんがそう呼んでただろ、それで」
「うへえ」
「だから、何だよ!」
「お前、女の名前だけは一度聞いたら忘れない方のヤツか?」
「あのな……こっちは疲れてんだよ、喧嘩なら他所に売ってくれ。じゃあな」

ため息をついて片手を上げた森崎が、踵を返す。
途端、慌てたような声が背中に降ってきた。

「ああ、待て待て! 悪かったよ!」
「……」

森崎と並ぶように、芦毛の馬体が一歩進む。
うんざりしたように見上げる森崎に、ジーンが取り成すように口の端を上げた。

「兵舎に帰るんだろ? 疲れてんなら余計にさ、途中まで乗っけてやるから」
「いや、メシ食いにキャラウェイ通りまで寄ってくつもりだが……」
「ならそこまで送るからよ! ほれ、ここ座りな」

ばんばんと、ジーンが掌で叩いたのは板張りの御者台である。
己の隣を示す彼女に、森崎は―――


75 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/09(金) 20:05:45 ID:c7UWe0nE

*選択

A 「……わーったよ」

B 「いや、それは悪いだろ」

C 「なら客席に乗せてくれ」


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/9 24:00』です。


******


本作のジーンはヒロイン候補ではありません、念のためw
といったところ、本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

76 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/09(金) 21:34:13 ID:???
【ピココール】
彼女の目的はなんだと思う?深い意味があると思う?

77 :ピコ ◆ALIENo70zA :2012/11/09(金) 22:26:06 ID:???
>>76
うーん…まあ、親切で言ってくれてるわけじゃあないだろうねえ。
そんなに悪い人には見えないけど、知り合いってほどの仲でもないしね。


78 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/09(金) 22:59:55 ID:???

まあリンダ関係でなんかあるんでしょうが、警戒するようなとこでもないと思うので。

こっちがヒロインじゃないんだ、残念w

79 :◆W1prVEUMOs :2012/11/09(金) 23:17:33 ID:JLVj1x3Q

ヤバそうなの以外は積極的に巻き込まれるてみる

80 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/09(金) 23:21:04 ID:???
B少しは警戒した方が良いかもね。

81 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:12:29 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>75の選択については……

>>78 ◆9OlIjdgJmY様のご回答を採用させていただきます!
はい、まだリンダシナリオの導入ですし、いきなり罠選択肢というわけではありませんね。
変わったばかりの人物称号が揺れることはあるかもしれませんけど。
CP3を進呈いたします。

ジーンはシナリオプロットも用意しておりませんが、事件も何もなしでただ一緒に出かけて
ワイワイするとかお酒を呑むとか喧嘩するとかそれなりの関係になってみるとか、だけでよければ
チャレンジで可能ということにしておきますw

……あれ、もしかしてそっちの方が需要あるんじゃ……
そのうちGMは考えるのをやめた。


>>79
そうですね、親虎のいびきが聞こえるような穴でなければ積極的に入っていくのもいいと思います。
中盤以降はヤバげな選択も次第に増えてくるかもしれませんが……!

>>80
今回は特段の危険はありませんでしたが、引っ掛かりを覚えたらピココールというのは
極めて確かな攻略手段だと思います。
ロールバックのない本作では転ばぬ先の杖が重要ですからね。


82 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:13:30 ID:???
***

A「……わーったよ」


ジーンの強引な誘いに、半ば諦めるように森崎が肩をすくめる。
途端、ジーンがにかりと笑う。

「よっしゃ! じゃ、そっちから上がってこいよ」

その笑みは、しっかりと化粧をすれば男たちを一網打尽にできるような整った顔立ちを崩すような、
どちらかと言えば男臭い笑い方ではあったが、ジーンという女にはそれが妙に似合っている。
決して男装のせいばかりではない、彼女らしさというものに近いのだろう、などと考えながら
森崎が踏み板から御者台に上がる。

「ほいよ、っと……結構高いんだな」
「そりゃ周りが見えねえと危ないからな」

言われ、改めて周りを見回す森崎。
なるほど確かに、高い視点からの世界はいつもより遥かに広く感じられる。

「アトレ、スオウ、ちょっと余計な荷物を載せるぜ。我慢してくれよな」
「ちぇ、ひでえ言われようだぜ」
「はは、まあこいつらにとっちゃお前一人なんざ軽いもんだけどな」

言って前方、ふるりと長い尾を揺らす馬たちを見やったジーンの目は、
ほとんど慈愛と呼んでも差し支えないような優しさを湛えている。

83 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:15:11 ID:???
「……へえ」
「あ? どうかしたか」
「いや、なんでもねえよ」
「変な奴だな。……出すぞ、落ちんなよ」

右の一頭、アトレと呼ばれた方はそんな目線を知ってか知らずか、耳をくるりと動かして歯を剥いた。
左のスオウは我関せずとばかりに鼻を鳴らしている。
ジーンが手綱を軽く揺らすと、そんな二頭がぴたりと揃って歩を進めるのだった。


***


がたごとと、車輪が石畳を噛むたびに体が揺れる。
高級な馬車の面目躍如というべきか、乗合馬車とは比べ物にならないほど微かな揺れではあったが、
それでもまったくの静謐というわけにはいかない。
直接乗馬するときのように縦に揺られる感覚ではなく、微妙に一定でない加速が体を前後に揺らす。
睡魔を誘うようなリズムである。

「……」

訓練による披露が泥のようにこびりついた身体には、まさに甘美な毒であった。
こくりと、つい船を漕ぎそうになる森崎。

「うわ、おいばか寄っかかんな」
「……ああ、すまん」

御者台は本来、一人用の仕事場である。
見栄のためか、それとも他に何か実用性があるのか、比較的大きなスペースを取ってあるこの馬車のこと、
ひどく狭苦しいということはないものの、二人が並んで座ればどうしても互いの体温を感じるような
距離にならざるを得ない。
微かな温もりがまた森崎を微睡みへと誘おうとしたとき、ジーンが口を開いた。

84 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:16:12 ID:???
「この間は済まなかったな」
「……この間?」

僅かな間を置いたのは、小さな欠伸を噛み殺したせいである。

「ああ、どっかの男装美人が出会い頭に因縁つけてきたことか」
「うちのお嬢がいきなり突拍子もないこと言い出して、だ。ぶっ飛ばされてえのかこの野郎」

ぶっきらぼうに言い放ちながらも、ジーンの口元は上がっている。
どうやら今日は機嫌がいいようだった。

「というかお前、朝弱い方のヤツか?」
「あァ?」

唐突な言葉に、ジーンが怪訝な顔をする。
先ほどの意趣返しだと気づかれる前に、森崎が先を促した。

「で、こないだがどうしたって」
「ああ。や、悪気はねえんだ、お嬢には」
「だろうな」

適当な相槌。
しかし半ばまではその通りであろうとも思っている。
リンダという少女の瞳や言葉に、悪意や嘲弄の響きはなかった。

「ただ、まあ……どうにも言葉が足りねえ。それでよく相手を怒らせちまってな」
「はは」

思わず失笑する。
直截すぎる物言いは、森崎自身が経験したことである。

85 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:17:23 ID:???
「なまじ頭が回りすぎるんだな。だから二手、三手先だけ見て話をしちまう。
 次の手を選ぶ余地がねえなら、口にする意味もねえとか考えてんだ」
「……」

がたん、と車体が揺れた。
前を行く馬、アトレとスオウはぶるりと尻を振るのみで、特に気にした風もない。

「あのお嬢さん、困ったことに相手もそれができて当たり前だと思っててな」
「難しいだろうな」
「難しいよ。だが前置きも説明も斟酌もねえ。先回りして次の選択肢だけ相手に放り投げる悪い癖が、
 いくら言っても治らねえ。お嬢にとっちゃチェスか何かと同じ括りなんだ、相手と話すってのは」
「……そりゃもう、会話じゃねーだろ」
「じゃねえな、実際」

苦い笑みが、声音にまで滲んでいる。

「お前もこの間、無茶な頼みごとを押し付けられたと思っただろ。勝手なこと言いやがって、とか」
「まあな」
「お嬢としちゃな、ありゃ交渉のテーブルを用意したつもりなんだ」
「……はァ?」

さすがに看過できず、疑念を漏らす森崎。
先日の一件は指示や命令、強要の類ではあっても交渉と呼べるものではないと、記憶が告げていた。
ジーンがちらりと森崎を見て、薄い唇を歪める。

「まあ、言いたいことはわかるぜ。……つーか、いつものことだからな」
「……」
「お嬢……いや、ザクロイドの人間が生きてるのは、打算と腹芸と算盤勘定が服着て歩いて、
 年がら年中互いの足を引っ張り合ってるような世界でよ」

冷たい風は、歩くよりも強く森崎の顔に吹き付ける。
肩に伝わる微かな温もりだけが、救いだった。

86 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:18:24 ID:???
「ま、そんな連中の常識じゃ、無理も無茶もまず単に様子見でふっかけてるだけ、
 鵜呑みにする奴が馬鹿ってなもんでよ。袖にするフリされるフリ、段々と見返りをチラつかせて、
 ようやくそこから話が始まるってわけだ」
「……」

ふん、と息をつく森崎。
言葉を返すことはない。

「あん時、お前があっさり話を蹴ったのも……蹴ったんだよな? まあ当然だとは言ってたぜ。
 今の時点で、しかもあの要求でザクロイドが用意できる対価は、お前の立場じゃ大した益がねえ。
 実は交渉の材料がありませんでしたの、なんて笑ってやがったよ」
「……何だそりゃ」
「ま、そんな顔すんなって」

森崎の渋い顔に、ジーンが破顔する。

「直感だか計算だか知らねえが、あれで顔繋ぎの印象は悪くなかったってことみたいだぜ。
 俺としちゃ、単に面倒を避けただけって札に銀貨一枚だがよ」

悪戯っぽく言うジーンに、森崎は―――

87 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:21:19 ID:/ZNkLYhM

*選択

A「……さてね」 煙に巻く。

B「俺の勘も捨てたもんじゃねえな」 勘だという。

C「ま、そんなとこだろうとは思ってたよ」 計算だと主張する。

D「大当たりだ。ほれ、持ってけ」 銀貨を取り出す。


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/10 24:00』です。


******


こんな感じで10月はあっさり目に過ぎていきます、といったところで
まだ早い時間ではありますが、本日の更新はこれまでとさせていただきます。
お付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

88 :◆W1prVEUMOs :2012/11/10(土) 15:20:27 ID:x6/rndoU

勘ピューターのスキルがゲット出来れば有利かもと思い

89 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/10(土) 21:14:57 ID:???
B傭兵が最後に頼るのは勘と言うか嗅覚ですからね。

90 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/10(土) 23:59:09 ID:???
A まあ実際、勘でも計算でもなく、正直な心情喋っただけですし。

91 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:26:17 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>87の選択については……

>>90 ◆9OlIjdgJmY様のご回答を採用させていただきます!
ですよねー、ということでズバッと斬っていただきましたw
CP3を進呈いたします。


>>88
スキル名:勘ピューター Lv1
種別:パッシブ
消費ガッツ:-
効果:行動判定の際に! numnumダイスを振り80以上が出れば結果が一段階良くなる。
69以下の場合は結果が一段階悪化する。この判定にはCP/EPによる数値加減ができない。
成功時に経験値が加算され、一定値が貯まるとLvアップする。
イベントで『ミスター』と呼ばれる偉大な人物に会うことができれば更なる強化も……!?

……勘をスキルにするのは、やってみると難しいものですねw
しかしながら面白いご提案ありがとうございます。
CP1を進呈いたします。


>>89
はい、危機察知能力は経験に裏付けされた勘、とでもいうべきものですしね。
実際のプレイ上においても、難しい局面で最後にモノを言うのはプレイヤーの皆様の
冴え渡る勘働き、という部分はあります。

92 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:27:43 ID:???
***

A「……さてね」 煙に巻く。


言った森崎の、しかしそれは偽らざる本音である。
結果的にどう評されているにせよ、あの時点で相手方の事情を汲み取って話をしていたわけではない。
さりとて直感と呼べるような閃きに従ったわけでもなく、ただ当然と思える対応をしただけである。
あさっての方を向きながら空惚ける森崎に、今度はジーンが渋い顔をする番だった。

「何だそりゃ」
「はは」

笑った森崎が、ぐ、と背を伸ばす。
凝り固まった筋が伸びていく感覚を楽しみながら、だしぬけに口を開く。

「で、俺はどこに連れてかれてるんだ?」
「お、気づいてたのか」
「当たり前だ」

がたごとと、馬車が揺れる。

「わざわざ城の北側を回りやがって、キャラウェイ通りなんざとうに通り過ぎてるだろ。
 もうマリーゴールド近くまで来てるじゃねえか」
「お前、この春にドルファンに来たんだろ? よく分かるな」
「そりゃな……」

と、辺りを見渡した森崎の目に映るのは、閑静な、というよりは独特の静謐に包まれた邸宅街である。
道の両脇にはどこまでも高く続く塀、点在する緑は手入れの行き届いた生垣だった。
猥雑なシーエアーや庶民の家々が立ち並ぶフェンネル、牧歌的なカミツレではありえない光景であり、
かといって城央近くの喧騒や人通りもないとなれば、いかに新参者の森崎といえど迷う余地がない。

93 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:29:03 ID:???
「そもそも、お前が俺なんかを送ってくれる理由、ないだろ」
「まあな」

長い銀髪を夕陽の朱に染めながら、ジーンはどこまでも悪びれない。
口笛すら吹き始めたその横顔に、森崎が小さくため息をついた。
肩から伝わる体温は、それでも秋の夕暮れどきには心地いい。


***


純白の馬車がようやくその足を止めたのは、とある広大な敷地の片隅である。
国立公園の一角のような光景に、森崎がジーンに尋ねる。

「……ここは?」

一体どれほどの広さを持つのだろうか。
面積では森崎たちが日々の鍛錬を行なっている訓練所に勝るとも劣らないように見える。
決定的に違うのは、その質である。
荒れ放題の訓練所とは違い、この敷地には小石一つ見当たらない。
一面に広がった芝生は丁寧に刈り込まれ、整然とその背を揃えていた。

「ここか? ま、ザクロイドが持ってる運動場だ」
「なにィ!?」

愕然とジーンを見やる森崎。
嘘や冗談を言っている顔ではなかった。

「デカいことはいいことだ、ってのがお館様の信条でな」
「それにしたって……」

94 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:31:17 ID:???
見渡す限りの芝生は、夕暮れの下で奇妙な紫色へとその姿を染め変えている。
紫の絨毯は遥か視界の果てまで続くようにすら思えた。

「ハデなことはいいことだ、ってご主人様の信条が出てねえだけマシさ」
「……?」

そう言ったジーンの声音は、どこか苦々しいものを含んでいるように聞こえた。
しかし森崎が何かを聞き返すよりも早く、ジーンがそのなめらかな曲線を描く顎で遠くの方を指す。

「ほら、あっちだ」
「……あれは、リンダ……か?」

陽は既に落ちかけている。
薄暗い視界の中、言われてみれば動く影がかろうじて幾つか見える。
目を凝らせば、件の少女であるようにも思えた。

「……よくは見えねえが、そうなのか?」
「ここからじゃ遠いか。よし、もう少し近づくぞ」

言うが早いか、ジーンは手綱を手近な樹に括りつけると芝生の縁を沿うように歩き始める。

「何やってんだ、置いてくぞ」
「おい、俺には何がなんだか……」
「しっ、ここから先は大声出すなよ。お前に気づかれると話がややこしくなるからな」
「はァ!?」

胡乱げな森崎の態度を気にすることもなく、ジーンが先に歩いていく。
仕方なくその後を追いながら、森崎が問う。

「……で、何がしたいんだ、お前は」

言われた通りに声を潜めるあたりが人の好さというものであっただろうか。

95 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:33:04 ID:???
「一度、見といてほしかったんだよ」
「あ?」
「天才ってやつを、さ」

何を、と問いを重ねようとした森崎の耳に、そのとき飛び込んできたのは男の声である。
森崎の無論知らない、しかし妙に耳に馴染んだ声音。
怒号だった。
それも、感情に任せたものではない。
相手の精神にどう響き、どう動かすことができるかを計算し尽くした大喝。

「……教練か」
「ああ」

聞き覚えがあるのも当然である。
それは森崎自身もまた毎日のように発している種類の声だった。
叩き込む、という言葉の意味を、身体のみならず精神にも浸透させるための大音声。
あるときは限界に近い疲労から半ば強引に奮い立たせ、あるときは無駄な反骨心や自尊心を打ち砕いて
無意識のレベルにまで機械的な反復を刷り込む、ほとんど人格の改造に近いそれは、
日常に生きる人をいくさという非日常へと適応させるための儀式である。
人が己で定めた枷を打ち壊し、環境が厳格に要求する新たな枠をその首に嵌めてやって初めて、
多くの人間は情動の外側で人を殺せるようになる。
裏を返せば、そうでなければ大多数の人は、人の外側に出られない。

「―――、―――ッ! ―――!!」

そして今、人をそうでないものに変えるための声音をその身に受けているのは、一人の少女である。

96 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:36:02 ID:???
暮れゆく空の色を写し取って紫色から群青色へと変わりゆく芝生の中に、
ぽっかりと穴の開いたように赤土のトラックがある。
その赤土とほとんど変わらない色に染まって倒れ伏すのが、リンダ・ザクロイドだった。
細い身に纏った薄い練習着も、そこから伸びる白く長い手足も、後ろできつくまとめられた長い髪も、
そのすべてが土に汚れて酷い有様である。
流れ出す汗は土を泥に変え、べったりと全身に貼り付けている。
負けいくさで踏み躙られ、打ち棄てられた屍の如き、それは姿だった。
怒号が、響いた。
鞭に打たれたように屍がゆらりと立ち上がり、怒号の方を向く。
少女の側に立つのは、数人の男たちである。
いずれも一目、鍛錬に鍛錬を重ねたことが分かる体つきをしていた。
彼らの顔には、一切の緩みも余裕もない。
厳しい顔つきで何かを話し合うと、中の一人が少女に向けて声をかける。
少女が、頷いた。
その拍子にほつれた前髪を伝って垂れた汗の、沈みゆく陽に照り映えるのが、
不思議と森崎の目に映った。

「―――」

少女の表情にも、先日森崎が見たような悠然とした笑みは、どこにもない。
息を切らし苦痛に歪み、それでも俯かず、射殺すような目をぎらぎらと光らせて、
気高さを放り捨て優雅さの欠片もなく、それでもただ、真摯に。
少女は、立っていた。

「……」
「あれが、リンダ・ザクロイドって女だ」

ジーンが、ぼそりと告げた。
その視線は横に立つ森崎には向けられず、真っ直ぐに少女を見据えている。

97 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:37:03 ID:???
「他人の事情に斟酌しねえ。世間知の中で変に賢しくなっちまっていかすかねえ。
 手前勝手に相手を振り回して省みねえ。嫌な女さ」

女、とジーンは口にした。
おそらくは一回り以上も歳の離れた少女を、女と評してジーンは続ける。

「それでもオレは目が離せねえ。どうしたって、あのお嬢さんから目が離せねえ。
 恩じゃねえ。義理でもねえ。ただ見ていてえから目が離せねえ」
「……」
「ほとんど惚れちまってんのかもな、ハハッ」

最後は冗談めかして言葉を切ったジーンに、しかし森崎は愛想笑いを返さない。
ジーンが、やがて森崎を横目でちらりと見やり、固めた拳で軽くその胸を叩く。

「今日、お前を連れてきたのに深い意味はねえよ。ま、嫁の自慢みてえなもんだと思ってくれや。
 お前がこの先、あのハンナってのとどう関わっていくかも知らねえしな。……けどよ」

間は、呼吸一つ分。

「お前とはこれっきりになる気がしねえんだよ。いつか『こっち側』にくる目だって、
 まあ、なくはねえと睨んでる。……俺の、当てにならねえ勘だがな」

今度こそ曇りなく、にかりと笑ってジーンがそう言うと、トラックの方へと目を戻す。

「……おっと、最後に通しで走るみたいだな。折角だ、しっかり見てってくれ」

無理やりに連れてきておいて折角だも何もないものだ、と苦笑しながら、しかし森崎の目は
スタートラインへと歩む少女に吸い寄せられていく。
競技者というものは、とその背を見ながら、森崎は思う。
競技者というものは誰しも、その戦場に立つとき、同じ空気を纏うのだろうか、と。
少女の後ろ姿はそれほどに、ハンナのそれと重なって見えたのだった。


98 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:39:06 ID:???
******


エントリーNo.1
リンダ・ザクロイド
基礎値:122
特性:不明
スキル:女王の威風(一位をキープしている際、ダイスを10プラスする)
PBスコア:947(D25.11 スポーツの祭典 本戦)


***

99 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:40:07 ID:GHuJRN6Y
***


*スタート
セクションスコア1= 122*{1+(! numnum/100)}

*コーナー1
セクションスコア2= 122*{1+(! numnum +【女王の威風10】/100)}

*バックストレート1
セクションスコア3= 122*{1+(! numnum +【女王の威風10】/100)}

*バックストレート2
セクションスコア4= 122*{1+(! numnum +【女王の威風10】/100)}

*コーナー2
セクションスコア5= 122*{1+(! numnum +【女王の威風10】/100)}

*ホームストレート
セクションスコア6= 122*{1+(! numnum +【女王の威風10】/100)}


※★ごとにそれぞれ、 ! と numnum の間のスペースを消して数値を出して下さい。
00は100として扱います。

***

100 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/13(火) 19:43:50 ID:???

*スタート
セクションスコア1= 122*{1+( 56 /100)}


101 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:44:03 ID:???
******

本当は 122*[1+{(! numnum +【女王の威風10】)/100}]
と表記すべきですが、何だかわかりづらいですね…といったところで、
一旦ここまでとさせていただきます。

102 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:45:04 ID:???
>>100
と、割り込みになってしまって申し訳ありません!
ドローありがとうございます。

103 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/11/13(火) 19:51:02 ID:???

*コーナー1
セクションスコア2= 122*{1+( 25  +【女王の威風10】/100)}



104 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/13(火) 20:17:36 ID:???

*バックストレート1
セクションスコア3= 122*{1+( 87  +【女王の威風10】/100)}


105 :◆W1prVEUMOs :2012/11/13(火) 20:56:14 ID:???

*バックストレート2
セクションスコア4= 122*{1+( 55  +【女王の威風10】/100)}


106 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/13(火) 21:25:10 ID:???

*コーナー2
セクションスコア5= 122*{1+( 42  +【女王の威風10】/100)}


107 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/13(火) 22:44:50 ID:???

*ホームストレート
セクションスコア6= 122*{1+( 67  +【女王の威風10】/100)}



108 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/19(月) 19:17:48 ID:???
皆様、ドローありがとうございます。
私事ながら多忙のため更新間隔が開きがちになってしまっており申し訳ありません…。

***

*スタート
セクションスコア1= 122*{1+( 56 /100)} =190

*コーナー1
セクションスコア2= 122*{1+( 25  +【女王の威風10】/100)} =164

*バックストレート1
セクションスコア3= 122*{1+( 87  +【女王の威風10】/100)} =240

*バックストレート2
セクションスコア4= 122*{1+( 55  +【女王の威風10】/100)} =201

*コーナー2
セクションスコア5= 122*{1+( 42  +【女王の威風10】/100)} =185

*ホームストレート
セクションスコア6= 122*{1+( 67  +【女王の威風10】/100)} =215


スコア合計:1195

***

109 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/19(月) 19:18:49 ID:???

ひとが走る姿を美しいと感じたのは、森崎有三の人生で初めてのことである。
その足で大地を踏みしめ駆け行く、それはヒトという生物の極みの体現であると、
少女の疾走は雄弁に物語っていた。
全身、ただそれを成すためだけに神の手によって配されたような骨格が、筋肉が、腱が、
精緻に制御され厳密に駆動し、質量を大気の中に振り捨てるように加速していく。

(これ、は……)

ジーンが、無理やりにでもこれを見せようとした気持ちが、今なら理解できる。
そこにあるのは打算や計算ではない。
その本質は、彼女自身の言葉通り、子供じみた自慢なのだ。
こんなにも綺麗な宝物を私は持っていると、秘めやかに、しかし誇らしく語るときの、
あの高揚を味わいたかったのだ。
むべなるかな、と森崎は思う。
いま薄闇の中、夜に融けるように走る少女は、至宝だ。
遠ざかっていく、赤土にまみれながらなお白い背を、大きな弧を描いて戻ってくる躍動する肉体を、
たとえば自分だけが目にしてしまったとして、堪えることができようか。

「……遠いな、ハンナ」

ぽつりと口をついたのは、真白き背を追う少女の名である。
彼女の前を往く者は、掛け値なしの才気だ。
差は歴然、このままでは勝負にならぬと豪語されたその言は、何の誇張もなく正しい。
走れば走るほどに差の開く、終わりのない競争のようにすら、思える。


110 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/19(月) 19:19:49 ID:8W8eRwNs
しかし。
しかし、勝ちたい、と。
ハンナは言ったのだ。
一敗地に塗れ、苦渋辛酸を舐めながら、少女の牙は折れてはいなかった。
それを愚かしいと嘲うことは、森崎にはできない。
抗うことをつまらぬ意地と断じ、敗北を諦念の内に肯んじるのなら、今の森崎はここにはいない。
ならば。
ならば森崎にできることは、眼前の勝者、圧倒的な優越者から目を離さぬことだ。
この奇貨を糧とし、巡り来る機会に備えることだけだった。

(優れていること、秀でていること、何でもいい……探せ、盗め!)

俄に鋭く目を細める森崎の、リンダ・ザクロイドに見たものは―――


*選択

A コーナーを抜けた瞬間の加速だ。

B 後半の安定したペースだ。


※リンダの走りからハンナのスキル習得のヒントを得ます。
 獲得したヒントはストックされ、次回のコーチ機会にハンナがスキルを習得します。

森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/19 24:00』です。


111 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/19(月) 19:20:56 ID:???
******

一応これが10月最後の選択となります、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
お付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

112 :◆W1prVEUMOs :2012/11/19(月) 19:36:40 ID:???
ハンナは持久力に不安があるのでBで相殺したいです

113 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/19(月) 21:12:23 ID:???
Aハンナはスタートそこそこ良かったので、ここを改善出来て前半部分を食いつければ後半勝負出来るかも知れないかなと思います。

114 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/19(月) 22:16:27 ID:???
A リンダに先行されるとスキル発動されるので、前半優先で。

115 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:25:58 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>110の選択については……

>>114 ◆9OlIjdgJmY様のご回答を採用させていただきます!
お三方とも納得の理由だったのですが、中でもまったくその通り、というシンプルなお答えでした。
リンダの現スキルは発動すると手がつけられなくなっていくタイプですからね。
CP3を進呈いたします。


>>112
はい、それもハンナのウィークポイントですからね。
ご覧のとおり圧倒的な実力差を徐々にスキルで埋めていくというのが基本線になりますので、
どの段階でどの長所を伸ばし、あるいは短所を潰していくかは思案のしどころです。

>>113
そうですね、スタートにはプラスのスキルがありますので、まずは離されずに食いつくことが重要です。
現時点で勝利するにはちょっとどころではない奇跡が必要になってしまうかもしれませんが、
ビジョンを持った成長計画があれば後々になって活きてくるでしょう。


116 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:27:37 ID:???
***

A コーナーを抜けた瞬間の加速だ。


リンダの疾走をしっかりと瞼に焼き付けながら、森崎が最初に感じ取ったのはそれである。
無数の情報の中から最初に拾い上げられたものには、何らかの意味がある。
そう考える程度には、森崎は自身の嗅覚を信頼している。

(スタートから……第一コーナー。ここは、そうハンナと変わらねえ。問題は……)

いま眼前に近づいてくる実際のリンダをしっかりと頭に納めながら、同時に森崎の瞳の奥では
記憶の中のリンダの走りが幾度も繰り返されている。
思考し、分析し、導いた回答を徹底的に反復して体に覚え込ませる、それは森崎がこれまで
自らに課してきた鍛錬の手法、ほとんど癖ともいえるような作業だった。

(そう、コーナーを抜けた後、そこから……)

地力の違いがあるとはいえ、カーブの処理自体は素人目にはそれほどの差異があるように思えない。
しかしその後の結果が、決定的に異なっている。
落とした速度を取り戻せないハンナと比べ、リンダはむしろ縮めた撥条を弾くように加速していく。
その差が、どこから生まれるのか。

(重ねろ……)

先月に見たハンナの走りと、まさにいま眼前に得たリンダの走り。
二つを記憶の中で近づけていく。
少女二人の躍動はやがて同じ色となり同じリズムとなり、近づいては遠ざかり、遠ざかっては近づいて、
交錯し行き違い、戻っては離れ、しかし次第にそれらの波は薄れていき、遂に重なったとき―――。

「……ここだ! この瞬間だ!」

117 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:29:18 ID:???
思わず声を上げた森崎を、隣のジーンがぎょっとしたように見やる。
気にしている暇はなかった。
掴んだはずのイメージは、しかしその刹那を頂点として霞のように消えていく。
そうなる前に、それらをかき集め具体化し、刻みつけなければならなかった。

「体重移動……ここ、この左足、それと連動して腰から前傾する……のか?」
「お、おい……?」

ぶつぶつと何事かを呟く森崎を、ジーンは不気味そうに見ていたが、声をかけても
無反応なことに呆れたのか、すぐに何も言わなくなった。

「ああ……ここの鍛え方が足りねえのか。だから、ハンナは……なるほど、そういう……」
「……」
「うん、そうだな間違いねえ。……よし、わかった! はは、畜生てこずらせやがって!」
「……何だか知らねえが、おめでとさん」
「ん? おお、ジーン。悪いな、聞いてなかった」
「だろうよ」

呆れたように言うジーンに、森崎は怪訝そうな顔を向けるのだった。


******


陸上スキル『バックストレート・アクセル』をストックします。
次回のコーチ機会にハンナがスキルを習得します。

効果:バックストレート1のダイスを20プラスする。
この効果は『逆境』と名のつくスキルの発動条件に影響を与えない。


******

118 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:30:20 ID:???
******

「……ところで、俺はどうやって帰りゃいいんだ」
「おう、そのことだがよ」

まるでリンダがゴールラインを越えるのを待っていたように、辺りを朱に包んでいた陽の欠片は
城壁の描く稜線の向こうへとすっかり消えてしまっている。
明かりもない屋外のこと、すぐ近くにいるはずのジーンの顔もよく見えない。
声だけが、無闇に明るく響いた。

「そもそも俺は、お嬢の迎えってことで車を回してたんだった。
 ってわけで、帰りはお前のことは送れないぜ。悪く思うなよ」
「なにィ!? ってまあ、そらそうだろうな……悪くは思うけどな!」

どうせこんなことだろう、と予想はしていたものの、しかし実際に言われてみると秋の夜風は身に染みる。
渋面を作った森崎の背を、ジーンの掌がばしんと叩いた。

「ははは、んな顔すんなよ、色男!」
「見えてねえだろ!」
「だいたい分かるぜ」
「ああ、そうかい……」

不毛な会話を打ち切って踵を返そうとした森崎を、しかしジーンが腕を掴んで引き止める。

「まあ、待てって」
「……?」
「もう一台、うちらの馬車を回してある。ま、お嬢専用のこいつほどじゃねえが、
 ザクロイドの御用車だ、乗り心地もなかなかだぜ」
「マジか……」
「大マジよ。しかも今度は御者台じゃなくて客席に座れるぜ」

ぽん、と叩かれた腕がじんわりと温かい。

119 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:31:23 ID:???
「お前が初めていい女に見えてきたよ……」
「そりゃどうも。って見えてねえだろ」
「見えてたら思わず求愛してたかもしれねえ。夜で良かったぜ」
「はは、地獄に堕ちやがれ」

軽快に言い合って、しかしふと森崎が首を捻る。

「……でもよ、よく考えたらこの事態そのものがお前のせいだよな」
「悪ぃ、悪ぃ」

言葉とは裏腹に、声音はどこまでも軽い。
にやりと口角を上げた表情までが闇の向こうにはっきりと見えるようだった。

「詫びってんじゃねえが、今日の晩メシ代はどこで食うにせよ、ザクロイドの厩務係にツケといて構わねえからよ」
「ぐ、それで水に流しちまいそうな自分が情けないぜ……」
『そうと決まればさっさと帰って、美味しいもの、食べよ』
「お前、タダ飯の話になったら出てくるのかよ!」

今までどこをふらついていたものか、唐突に頭上から声を降らせた相方に、森崎が思わず答えてしまう。

「……? ヘンなヤツだな……ま、いいや。車は向こう、話は通してあるからよ」
「あ、ああ……」
「じゃあな、縁があったらまた会おうぜ」

バツの悪さに口を濁した森崎を胡乱げに見ながら、しかし快活に言ってジーンはあっさりと去っていく。
本来の仕事、リンダの元へと戻るのだろう。
ため息を漏らせば、息は微かに白い。
決戦は、来月。
宵闇に沈む広い芝生はそのまま何かを暗示しているように思えて、森崎は振り払うように天を仰いだ。
輝きはじめた星の下、家路は、遠い。


120 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:32:24 ID:???



   『才気』(了)



******

121 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:34:41 ID:No1EE1CQ

*D26.11月
フレーバーテキスト


*ドロー


今月の巻頭特集は → ! card


スペード・ハート・ダイヤ・クラブ→ 日常「悪代官とシベリア特使」
JOKER→ 事件「やみにうごめく・1」


※ ! と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。


******

そしてようやくメインキャラが出揃う十一月(敵除く)、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

122 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/20(火) 19:04:31 ID:???
今月の巻頭特集は →  ダイヤA

123 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:46:42 ID:???
>>122
ドローありがとうございます。

ダイヤ→ 日常「悪代官とシベリア特使」

******

◎日常「悪代官とシベリア特使」


小鳥の囀りも爽やかな晩秋の朝。
日課の新聞に目を通す森崎が、見出しを声に出して読み上げる。

「輸出入顧問オーリマン卿、シベリアからの燐光石輸入拒否を明言……か。
 この国、燐光石がえらい高いからな」
『そうだねえ……まあ、この宿舎では支給品だからあんまり関係ないけどね』

燐光石とは欧州全土で照明に使われている物質である。
化学反応により生じる独特の白色光は炎より格段に明るく、また熱をほとんど発しないため
富裕層から一般家庭まで、幅広く使われている生活必需品であった。
時間効率を考えれば蝋燭や油による照明よりも安価であることも普及の決め手となったが、
ここドルファンにおいてはそれらとほぼ同等の価格帯で高止まりしている。

「ま、この手の話はどっかの強欲商人が市場を独占してるってのがお定まりだけどな」
『ふうん……どこの強欲商人?』
「ザクロイド財閥」

何気なく口にする森崎に、ピコが目を丸くする。

124 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:47:43 ID:???
『ザクロイド……って、リンダのお家のザクロイド?』
「そのザクロイドだな。山師だったディムス・ザクロイドが鉱山で一発当てた成り上がりの新興財閥」
『そのディムスって人は、リンダの?』
「爺さんにあたる、らしいな。何年か前に死んでる」
『ふうん……』

それ以上踏み込むことを避けたのか、座っていた森崎の肩からふわりと浮いたピコが、
しかしにやりと笑って森崎の目の前で止まる。

『でもさ、ならそのお爺さんって、きっとこのナントカ卿とアレ、やってたんだろうね』
「ああ、アレな」

新聞から顔を上げてピコと目を見交わした森崎がにやりと笑い、せーの、の呼吸で口を開く。

「―――越後屋、そちも悪よのう」
『いえいえ、お代官様ほどではございませぬ』


******


数日後のことである。
やはり朝の日課として新聞を読んでいた森崎が、奇妙な唸り声を上げた。

「ふ〜む……」
『何なに、なにか面白いことでも載ってた?』
「この顔が面白そうに見えるのかよ、お前には」

眉根を寄せた森崎が新聞から顔を上げてピコを睨む。

125 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:48:43 ID:???
「シベリアの特使が来たんだとよ」
『シベリアか……あんまりいい思い出はないね……』

かつて加わった幾つかの激戦や惨劇を思い起こしたように表情を暗くしたピコが、
しかしすぐに不思議そうな顔で尋ねる。

『でも、なんで? このドルファンはシベリアからすっごく遠いじゃない』
「燐光石だよ」
『燐光石……? あ、そういえばこないだ、そんな話してたね。すごく高いって』
「その流れよ」

頷いて、森崎が語り聞かせるように話を始めた。

「そもそもドルファンで高い燐光石が売れてるのは、安いシベリア産の輸入を拒否してるからだ」
『かんぜーがメチャクチャとか?』
「それ以前だな。そもそも一切の輸入を禁止してる」
『へえ、ダイタンだねえ。まあでも、安いのがなければ、高いのを買うしかないもんねえ』
「ああ。で、国内産の供給はザクロイド財閥が独占してるから、濡れ手で粟の大儲けってわけだ」
『それってやっぱり……』

ピコが、数日前に演じてみせた膝つき合わせの寸劇を仕草で示す。

「まあ、そうだ。誰が見たって強欲商人と御代官様だわな」
『うわあ……』
「そいつを突き上げようってのが今回の特使様よ。燐光石の輸入自由化を要求、ってなもんだ」

ぱん、と紙面を手の甲で叩く森崎。

126 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:49:50 ID:???
『それで、どうなったの? シベリアっていうと……』
「お得意の軍隊チラつかせたゴリ押しは厳しいな。何せここは南欧の果てだ」
『じゃあ?』
「このドルファンの輸出入を仕切ってる顧問のオーリマン卿って貴族が特使と話し合った。
 結果として、一旦は突っぱねたらしいな。……とはいえ、ここはマルタギニア貿易の中継で食ってる国だ。
 お得意さんの意向を丸っきり無視するってわけにもいかねえんだろ。
 石炭と鉄鉱石は自由化の方向、だとさ。そっちはあんまり俺らには関係ねえけどな」
『何いってんの。鉄が安くなったら武器の値段も下がるでしょ!』
「そこら辺はよ、カイルと陽子さんたちが考えることで……」
『キミ、隊長でしょ!』
「うへえ」

肩をすくめてみせる森崎を、小さな相方は憤懣やるかたない様子で睨んでいたが
しばらくして無益を悟ったか、そよ風のようなため息をついて森崎の肩に戻る。

『……ところで、記事はそれで終わり?』
「どれどれ……いや、続きがあるな。シベリア側は返礼の一環として、文化交流を提案……?
 来月にも国立サーカス団を派遣するとのこと、だとよ」
『アメとムチだね』
「ま、痛み分け、適当な落としどころってやつだな。シベリアの特使も流石といやあ流石だが、
 このオーリマン卿ってのもなかなかの食わせもんみたいだぜ」
『それはだって、貿易で食べてる国の、その貿易の一番偉い人でしょ?』
「ま、確かにその位置にボンクラが置かれてるならこの国は終わりだわな」

うんうん、と頷くピコに、森崎が紙面の片隅を指さす。

「そういや、お前好みっぽい事件も載ってるぜ」
『何なに、えーと……”王女行方不明騒ぎ”? わ、ゴシップの予感!』
「楽しそうでよかったよ」

紙面に目を向けたまま、ひらひらと器用に飛び回るピコ。

127 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:51:07 ID:???
『でも残念、無事に見つかったみたい』
「残念てこたねえだろ……」
『この国のお姫様はかなり庶民派って話だけど、家の人に黙って買い物にでも行ったのかな?』
「んなわけあるか! そりゃ庶民派っつーかただの庶民だ」
『えー』

口を尖らせるピコを無視して、森崎は再び新聞に目を落とすのであった。


******

128 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:52:07 ID:???

*D26.11月 「親切な傭兵団のエース」森崎有三
訓練所イベント


「―――騎士団は王室会議に対し、ダナンへの第二次派兵を上申。
 しかし王室会議側はこれを却下する方向のようです」

薄暗い部屋の中、淡々と続くのはカイルの定期報告である。
思案げにそれを聞く森崎の背後、窓の外には曇り空が広がっていた。
温もりの代わりにがたがたと風に震える音を伝えてくる窓を背に、森崎が腕を組む。

「先月ようやく再編が終わったばかりで、もう派兵ってか。そりゃ却下もされるだろうな」
「はい。ピクシス卿が先の戦いの折、騎士団の練度の低さが露呈したことを問題視しているようで、
 当面は外交による折衝をヴァルファと続けていく方針のようです」
「エリータスは騎士団の意見を推さなかったのか? 騎士の取りまとめ役だろ」

エリータス、という名を口にするときの微かな苦味を噛み潰すようにしながら、森崎が尋ねる。
ドルファン西部の都市エローを所領とするエリータス家は代々部門の家柄である。
特に先代当主ラージン・エリータスは数十年空位であった聖騎士を叙勲するほどの英傑であった。

「エリータス卿夫人はピクシス卿に賛同の意を表したそうです」
「いつものこと……か」
「はい。騎士団の一部にはその件で不満の声も上がっている……模様ですが、これは
 ルーカス大佐の個人的な意見として扱うようにとのことです」

真面目な顔で書類に目を落としていたカイルの口元に、僅かに苦笑が浮かぶ。

「立ち回りの参考にしろってか……食えねえおっさんだよ、まったく。
 ま、どの道俺らは決まったことに口を挟める立場じゃねえがな」
「……」

129 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:53:08 ID:???
森崎の軽口には無言を貫いた賢明なカイルが、はらりと書類をめくると
次の話題に移ろうとする。

「それと、もう一点―――」

と言いかけた、そのとき。

「―――邪魔するぞ」

静かな、しかし有無を言わせぬ圧力を持った声音と共に、無造作に扉が開かれた。
執務机に座る森崎の正面である。

「……何だ、お前ら。誰の許しがあってここまで入ってきた」

そこに立っていたのは、男が三人。
外套に脚絆、どちらかと言えば旅支度に近い軽装ではあるものの、剣を帯びた男たちである。
油断なく男たちを睨みながら、森崎は机の下に隠れた手で愛剣の柄を探ろうとする。
一瞬の緊張感を引き裂いたのは、カイルの高い声であった。

「あなた方は……! そんな、着任は来月という話で伺って、」
「……?」

それを聞いた森崎が、険しい顔の表面に疑念の色を浮かべる。
言葉通りに聞けば、カイルは闖入者たちを知っているらしい。
カイルにちらりと目をやって一歩進み出たのは、中央にいた男である。

「先乗りだ。部隊を預かる者として、現地の状況を確認しておくのは当然だからな」

130 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:55:53 ID:???
低く落ち着いた、しかし聞く者に奇妙に違和感を抱かせるような声音。
そしてまた穏やかという印象からは程遠い、それは男である。
浅黒い肌に、焼け焦げた薪のような巻き髪は西洋圏出身の特色だ。
精悍、と呼ぶに相応しい顔つきの中、異質なのは瞳である。
薄い灰色の瞳には、およそ揺らぎというものがない。
感情、衝動、意思、欲求、そういった人というものを構成する一切が、そこには存在しないように見えた。
精巧な硝子細工が眼窩に嵌っているような、そんな印象を与える目を正面から見据えながら
森崎が身振りでカイルに話を促す。
はっとしたように背筋を伸ばし、カイルが口を開いた。
どこまでも職務に忠実な青年である。

「……先ほど申し上げようとしていたのは、彼らの件です」
「……」
「ドルファン陸軍編成部はこの度、外国人傭兵大隊の増設を決定しました」

カイルの選んだその単語に、森崎が片眉をぴくりと上げる。

「増設……? 増員、じゃなくてか」
「申し遅れた」

カイルが何かを答えようとするより早く、正面の男が言う。
その声に、森崎はようやく違和感の正体を感じ取る。
眼前の男の言葉には、人としてあるべき感情が篭っていないのだ。
瞳と同じ、細工物から発せられる音の塊。
嵐の夜に風の鳴る、あるいは瀑布の落ちゆく怒涛のような、声ではなく音としか言えぬ、
そんな音がどうしてか意味を持ったが如き、それは言葉なのだった。

「ドルファン陸軍、外国人傭兵『第二』大隊長、カルロス・サンターナだ。
 我が傭兵団三百名、十二月一日付の着任となる」
「第二、大隊……」

森崎の呟きを引き取るように、カイルが続ける。

131 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:57:10 ID:???
「はい、隊長。我々、第一次徴募による旧大隊は第一大隊と呼称が変更されます。
 編成その他に変更はありません。詳しくは後ほど書面に目を通していただくつもりでしたが……」
「一足早くご挨拶に来ていただいたってわけか」
「……あァ?」

森崎の言葉に含まれた棘にいち早く反応したのは、正面の男ではない。
その向かって右後方、赤銅色の肌を持つ偉丈夫であった。
正面の男の瞳が硝子細工だとすれば、この男の目は飢えた獣のそれである。
混血なのか、薄い金色の髪を無造作に伸ばしたその下から睨みつける表情たるや
気の弱い者であればその場で卒倒しかねない、凶悪な代物であった。
そんな男が筋骨隆々たる肩を怒らせ、ずいと進み出て森崎を睨めつける。

「おう、東洋人。隊長だか何だか知らねえが、あんまりナメた口を利くんじゃあねえぞ」
「……」
「名高いヴァルファの将を討ち取ったとかいう面ァ、一応見に来てやったがよ……」

唸り声を上げる獣のような男が、牙を剥いた獣のような顔で笑った。

「ハン、何かの間違いだったんじゃねえのか?」

あからさまな侮蔑混じりの言葉に、森崎は―――

132 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 20:01:08 ID:8a1flvAQ

*選択

A 「上等切んなら名ァ名乗れ、赤犬野郎」 言い値で喧嘩を買う。(必要CP:2)

B 「なあ第二大隊長さん、躾はきちんとしておいてくれよ」 こちらのペースで喧嘩を買う。

C 「さて、俺だけの力で成し遂げたことではないからな」 事を荒立てないようにする。

D 「……それで、その第二大隊が今日は何の用件だ」 完全に無視する。


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/23 1:00』です。


******


訓練所パートの主要人物もこれで概ね揃い踏み、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
お付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

133 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/11/22(木) 20:34:54 ID:???
B
森崎は臆病者ではないけど、バカでもない、ということで。
ある意味では向こうの隊長の器を問う、ということでもあるかなー。

134 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/22(木) 22:50:39 ID:???
D
ただのバカ犬に喧嘩を買うのは宜しくない
相手は隊長でもないし、無視して話を進めれば大人しくなるはず
カルロスが隊長なら信用もできるし

135 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/22(木) 23:25:19 ID:???
C実際森崎一人で倒した訳ではないですから。
それにどんな形であれ喧嘩を買えばカルロス隊長の面子を潰すのではないかと思います。

136 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:42:59 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>132の選択については……

>>135 さら ◆KYCgbi9lqI様のご回答を採用させていただきます!
なるほど、相手の面子を考慮するというのは想定の外でした。
言われてみれば確かに、ということで内部的に礼法値が上がりつつCP3を進呈いたします。


>>133
はい、お互い小手調べといった意味も含めての初顔合わせになっていますね。
ちなみに人物称号によってはCのような選択肢がCP必須、もしくは出現しなくなってきます。

>>134
そうですね。大人しくなるか…はともかく、同じレベルでやりあう必要はない場面でしょう。
サンターナについては訓練所パートでは重要な位置づけになってきますので、今後をお楽しみに、
といったところです。

137 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:43:59 ID:???
***

C 「さて、俺だけの力で成し遂げたことではないからな」


森崎がそう告げたのは、紛れもない事実であった。
ヴァルファ八騎将、『疾風』ネクセラリアを打倒し得たのはヤングの負わせた傷ありきであることなど、
森崎自身が一番よく分かっていた。
それ以前に一騎討ちに持ち込めたのは部隊全体が最後の最後まで恐慌も来さず戦い抜いたゆえである。
そういった諸々を無視して一人の手柄であると吹聴する狭量、貪欲、あるいは鈍磨を森崎有三という男は
持ちあわせていなかったし、また同時に眼前の狂犬じみた男の安い挑発を買い支えるつもりもない。
どういう意図かは分からなかったが、不用意に騒ぎを起こせばわざわざこちらを訪ねてきたという
第二大隊長となる予定のサンターナという男の顔を潰すことにもなろう。

「……っだと、テメエ」

しかし、あくまで冷静に返答した、その態度の意味するところが相手に伝わることはなかった。
淡々とした回答が小馬鹿にしているようにでも映ったのだろうか。
むしろ勘に障ったらしい男の顔から、侮蔑の笑みが消えた。
赤銅色の肌はほとんど熱した鉄の色に近いところまで赤く染まっている。
視線が、その凶悪さを増して森崎を睨みつけた。

「……」

森崎とて、怯懦から男の挑発を受け流したわけではない。
殺気の籠もった視線の一つや二つで慄いていては戦場に立つことも、数百の荒くれどもを
まとめ上げることもできはしなかった。
無言で、しかし殺気を押し返すが如く力を込めて、男の目を見返す。
一触即発の空気が、漂った。

「……ま、まあまあ! 二人とも!」

138 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:45:00 ID:???
割って入ったのは、それまで後ろに控えていた三人目の男である。
高い、少年のような声だった。
サンターナと名乗った中央の男や、詰め寄っている屈強な男に比べればやや小柄な体格。
白い肌に小麦色の長い髪、そして声音に相応しい少年のような顔は、いかにも女性受けの良さそうな
柔和で整った目鼻立ちである。

「ちょっとザガロさん、何やってんですか! やめてくださいよ、もう」

ザガロと呼ばれたのは赤銅色の肌の男だった。
吹けば飛ぶような体格差、近づくことすら危うく感じるような殺気を物ともせず、
少年が男の視線を塞ぐように立つ。

「邪魔だ、どけバビントン!」
「どきません! 団長も黙ってないで止めて下さいってば! 喧嘩しに来たんじゃないでしょう」

バビントンと呼ばれた少年が中央の男、サンターナに助けを求めるように声をかける。
サンターナはといえば、先刻森崎への事務的な報告を終えた瞬間と一切変わらぬ姿勢、
一切動かさぬ表情のまま事の推移をただ見つめていただけである。
沈思する哲学者のようにも、芝居倉庫に置き去りにされた人形のようにも見える男が、
バビントンの声にちらりと目線だけを動かした。

「……そこまでにしておけ、ザガロ」

やはり何の感情も浮かべぬ声で、それだけを告げる。
しかし効果は絶大であった。

「……チッ」

渋々、といった体ではあったが、名を呼ばれた男は森崎から目を逸らし、一歩を引いたのである。
これには森崎も内心、瞠目を禁じ得なかった。

139 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:46:01 ID:???
腕力で物事の優劣を判断する類の人間にとって、先に目を逸らすこと、後ろに退くことは
ほとんどあり得ないと言っていい。
どちらも敗北、恭順を示す行為だからである。
それをさせるということはつまり、サンターナという男の言葉は、ザガロという
全方位から暴力の臭い紛々たる男に一時の屈辱を許容させるほどの影響力、あるいは
強制力を持つということを意味するのだった。

「伊達じゃねえ、ってか」
「……?」

森崎の呟きに不思議そうな顔で振り返ったのは、紅顔の美少年である。
ザガロを抑える必要がなくなった安堵からか、それとも生来の性質なのだろうか、
見る者を和ませるような柔らかい雰囲気を漂わせている。

「あ、すいませんどうも、うちの団員が失礼しまして」
「いや……」
「申し遅れました、僕、エセキエル・バビントンといいます。
 傭兵団『エル・ディオス・ケ・デベセール・オディアド』の副団長を努めさせていただいています」
「そうか、俺は……って、副団長!?」

どこまでも角の立たぬ少年の言に、思わず聞き流してしまいそうになった。

「はい。まあ、このドルファンでは団ごと丸抱えで第二大隊ってことになりますから、
 言うなれば副隊長……ですかね。それが何か?」
「あ、いや……」

小姓か従卒だと思った、とはとても口に出せない。
してみればバビントンという少年、いや男に額面通りの評価を下してはならないのだろう。
何と言ったものかと口ごもる森崎に、サンターナが進み出ると口を開く。

140 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:47:02 ID:???
「我々と貴殿らは独立した指揮、訓練系統となる。混乱を避けるよう通達を徹底してくれ。
 詳細は後ほど、このバビントンと詰めてもらおう。話は以上だ。失礼する」

低く静かな、しかしやはり凪いだ水面の如き抑揚のない声で事務的にそう告げると、
サンターナは一片の躊躇も見せずに踵を返した。
予め段取りを決められた役者のようなその所作に、森崎はただ眉根を寄せることしかできない。
ちらりとカイルに目配せをして扉を開かせるのが精一杯だった。

「ケッ……東洋人はおとなしくカバヤキでも作ってろってんだ」
「バビントンさんってば! あ、あはは、お騒がせしました〜」

サンターナに続いて踵を返しながらぼそりと捨て台詞を残すザガロの背を、
バビントンが慌てて押していく。
突然の闖入者たちがようやく退出しようとした、そのときである。

「何だ、どうした!?」
「……騒がしいが、何かあったのかモリサキ」

隊長室に、新たな影が飛び込んでくる。
ネイとトニーニョ、そしてネイの背後にはジェトーリオ。
ちょうど部屋から出て行こうとしていた第二大隊の面々と鉢合わせる格好となった彼らが、
ぎょっとしたように立ち止まると、声を上げる。

「な……、”エル・ニーニョ”……!?」
「後ろのは”城焼き”ザガロじゃねえか……! どうしてテメエらがここに……!?」
「あ、バビントン、久しぶりだね〜」

三者三様の態度に、しかし応えたのはザガロ一人である。
正鵠を期するならば、何かを言いかけたバビントンを制するように、ザガロが口を開いたのだった。

141 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:49:46 ID:???
「ハン、誰かと思えば……お尋ね者どもか!」

空気が、凍る。

「……!」
「ンだとォ……!?」
「……」

表情を固くするトニーニョ。
ほとんど飛び掛からんばかりの姿勢で肩を怒らせるネイ。
にやにやとした笑顔を崩さず、しかしすう、とネイの背後から立ち居地を変えるジェトーリオ。
ネイが前に出た瞬間フォローに入れる位置取りだと、これまで彼らを見てきた森崎には一目瞭然である。
一気に緊迫の度合いを増した情勢に、森崎が割って入るべく立ち上がろうとする。

「まさかこんな海の果てに身を隠していたとはな! そりゃあ、向こうには戻れねえだろうがよ!」
「ちょ、ザガロさん、その辺で! 彼ら、たぶん第一大隊として雇われてるんですから! 団長も!」
「……そこをどいてもらおう」
「だ、団長〜!?」

制止しようとするバビントンの声はもはや悲鳴に近い。
ほんの二言、三言であったが言葉を交わした森崎にも分かる。
サンターナという男、おそらくは眼前のトニーニョたちに一切の興味がないのだろう。
それでただ純粋に、道を開けろと言っているに違いない。
しかし今の状況では、どう聞いても挑発の一環である。

「おい、テメエ……!」
「よせ、ネイ」

激昂しかけたネイを森崎よりも一瞬早く抑えたのは、トニーニョである。

142 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:50:47 ID:???
「彼らはこの隊長室から出て行くところだった。モリサキもカイルも、無事にそこにいる。
 そして俺たちには事情が分からない。……いま乱闘騒ぎを起こせば、困るのはモリサキだろう」
「ぐっ……!」

トニーニョの表情は、相変わらず固い。
固いが、しかし声音には他を圧して息を飲み込ませる力があった。
ネイが接ぎ穂を失った刹那を見計らったように、ジェトーリオがその肩に手をかけて脇に寄せる。

「ほらほらネイくん、お客様がお帰りだよ〜。ちょっと場所を開けてあげようねえ」
「触んな! 雨降りそうなんだから洗濯物を増やすんじゃねえ!」
「うぅ〜ん、ネイくんのいけずう」

しなを作ったジェトーリオが、ちらりと一瞬だけバビントンの方へと目線を送る。
僅かに頷いたバビントンがザガロを促し、急いで退出しようとする。
サンターナはといえば、ネイが進路を開けるのとほぼ同時に無言で出ていってしまっていた。

「ほら、ザガロさん。帰りますよ、まだやることいっぱいあるんですから!」
「ハーッハッハァ! 安心しなお尋ね者ども、俺らははした金目当てに通報したりはしねえからよ!
 ま、次の戦場までの命かもしれねえが、せいぜい頑張って欧州の隅っこでこそこそ生き永らえな!」
「ザガロさん! いいから! 早く行きましょう!」
「チッ……引っ張るんじゃねえよ、バビントン」

それから嵐が去るまでの数十秒、何事も起こらなかったのは僥倖といえるだろう。
ぎい、と扉が閉まる音とほぼ同時。
執務机に詰め寄ったのはネイである。

「どういうことだ、モリサキ! どうしてアイツらがここにいる!」
「……」

さて何から話したものか、としばし黙考した森崎が―――

143 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:53:33 ID:SyarAx66

*選択

A「新設される第二大隊の連中だ」 無難に説明する。

B「あいつら、西洋圏では有名なのか」 彼らの素性を尋ねる。

C「お尋ね者ってどういうことだ」 問いただしてみる。


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/27 24:00』です。


******


どうやらこの世界、ブラジルはポルトガル語圏ではないようです。
イベリア半島はなくてもスペイン語はある不思議な世界……。
といったところで、本日の更新はこれまでとさせていただきます。
遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

144 :◆W1prVEUMOs :2012/11/27(火) 23:48:08 ID:???

これから関わることになるなら知っておいて損はないので
Cは上手くいけば(ネイの)スキルゲットの可能性があるけどリスクも高いパターンぽい

145 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/27(火) 23:50:48 ID:???
A傭兵団ごと雇われたってのが気になるので教える情報は正確な方が良いかなと思います。

146 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:08:04 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>143の選択については……

>>144 ◆W1prVEUMOs様のご回答を採用させていただきます!
Cはご指摘の通り、ハイリスク・ハイリターン系の選択でした。
ちなみに部隊員のスキルLvは基本的に訓練時にしか上がりませんが、イベントの成功などで
上昇確率を大幅に底上げすることが可能です。
CP3を進呈いたします。


>>145
作中でも触れますが、傭兵の雇用は傭兵団丸ごと、というのがこの時代の基本です。
そうでないと質も安定しませんし、何よりドルファンがしているように衣食住から武具までの
手厚い面倒を雇用側が見なくてはいけなくなってしまうので、余計な手間がかかるのです。
その点、傭兵団ですと基本的にお金だけ払えば(戦勝報酬に領土や官位などを要求されることもありますが)
後は自給自足が原則ですので楽ちんですね。


147 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:09:11 ID:???
***

B「あいつら、西洋圏では有名なのか」


結局、森崎が尋ねたのは第二大隊の面々についてである。
お尋ね者、という言葉が気にならぬといえば嘘にはなるが、ここで過去を問い詰めて
何が始まるわけでもない。
傭兵という稼業、そもそも故郷に身の置き場がない者が流れ流れて辿り着く職という側面もある。
森崎自身とて脛に傷の一つや二つ、ないではなかった。
故に意義の薄い詮索よりは、いま目の前にある課題に注力しようと思考を切り替えている。

「あ、ああ……」
「エル・ディオス・ケ・デベセール・オディアド……西洋圏屈指の傭兵団と言われている」

バツが悪そうなネイに先んじて、淡々と述べたのはトニーニョである。
仏頂面は常の厳格を取り戻し、動揺は少なくともその表情には見て取れない。

「向こうの有力な傭兵団の殆どはこの欧州から海を渡った者たちによるものだが、
 彼らは西洋圏出身者だけで構成された傭兵団だ。規模は戦士が三、四百。
 その他の団員を含めれば千に近いだろう。団長はカルロス・サンターナ」
「―――通称”エル・ニーニョ”。神の子、って意味だね〜」

トニーニョの言葉を引き継いでジェトーリオが言う。

「神の子……か」
「誰が言い出したものかは知らんがな。幾多の戦場を渡り歩きながら、これまで一度も
 負け戦に参じたことがないという噂だ」
「ま、奇跡的に強いのか、奇跡的に運がいいのかは微妙なとこだけどね〜」

茶化すようなジェトーリオに、森崎がにやりと笑う。

148 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:10:23 ID:???
「奇跡の常勝軍団がドルファン側で参戦……か。そりゃ頼もしいこった」
「参戦……するのか、やはり」
「ああ、正式には来月の頭からって話だ。……だな、カイル?」
「あ、えと、は……はい!」

目まぐるしい状況の推移に棒立ちとなっていたカイルが、森崎の問いに首肯した。
トニーニョたちの目が向けられるのを待って、先を続ける。

「編成部より、十二月一日付で外国人傭兵大隊に第二大隊を新設すると通達がありました」
「なにィ!? 新設だと!?」

大きな目を更に大きく見開いたネイに、カイルが生真面目に頷く。

「はい。員数は三百。指揮系統は我々第一大隊とは完全に独立したものとなります。
 モリサキ隊長にも命令権はありません」
「同格……ってわけか」

噛み締めるように呟く森崎。

「第二次徴募は我々のようにスィーズランド経由で個人の傭兵を集めるのではなく、
 西洋圏から傭兵団の丸抱えという条件で大規模な増員を企図したようです」
「つっても、俺らみたいな流しだけ集める方が珍しいからな」

森崎の言葉は、この外国人傭兵大隊の特異さを端的に示している。
原則として戦時の傭兵はその一団ごと国家、あるいは領主との契約によって雇用される。
規模はそれこそ数人単位からヴァルファのような数千人といった巨大傭兵団まで様々ではあったが、
個人を大量に雇い入れるのは余程頭数が足りず、質を問わずに数をかき集めたい場合か、
もしくは経験豊富な傭兵団と契約できるだけの経済的な余裕がないかのどちらかである。
しかし森崎の見るところ、このドルファンにおける事情はそのどちらでもない。
貿易港を抱えるドルファンの懐具合は悪くないように見受けられるし、イリハでその弱体化を
露呈したとはいえ、戦前の騎士団は無駄な自信に満ち溢れていたはずだ。
であれば、何故か。

149 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:11:53 ID:???
考えを巡らせることは何度かあったが、答えが出たことはない。
たとえば相手がヴァルファであると判明していた場合、その威名に契約を躊躇う傭兵団は多いだろう。
契約後でも勝てぬ相手とわかれば中小の傭兵団は違約金を払って契約を解消したかもしれないが、
しかしプロキアがヴァルファの雇用を発表したのはドルファンが傭兵を徴募した後だった。
辻褄が、合わぬ。
と、そこまでを考えて、森崎は益体もない思考を打ち切る。
いま考えるべきことは他にいくらでもあった。

「まあ、最初から同じ釜の飯を食ってる連中なら再訓練の必要もないってわけだ。
 上も俺たち寄せ集め部隊の扱いづらさに懲りたのかね」
「……」

冗談めかす森崎にカイルはただ困ったように目を伏せるばかりだった。
肩をすくめて先を促す。

「騎士団は再編成中で慣熟にまだ時間が必要であること、またダナンの早期奪還について
 王室会議の背中を押す意図もある、と」
「例によってルーカスのおっさんのオフレコ分析か」
「はい。報告は以上です」
「……ってわけだが」

トニーニョたちに向き直る森崎。

「さっきの様子だと、団長の他にも知った顔があるみたいだったな」
「あー……」

問われ、ネイが渋面を作る。

「まあ、俺らは向こうでも傭兵やってたんだがよ。そんときに、何度かな」
「一応、味方ではあったんだけどね〜」

150 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:13:03 ID:???
ネイの表情、そしてジェトーリオの一応、という言葉の選び方。
あまりいい感情を持っていないことは明らかだった。
代表するようにトニーニョが続ける。

「とにかく身内大事の意識が強い連中でな……それが強みでもあるのだろうが、
 裏を返せば、それ以外は味方であろうと省みようとしないということにもなる」
「目の前のピンチなんか、平気で無視するからね〜」

ジェトーリオの声音にも珍しく苦いものが混じっている。

「それと、特にあのザガロ……赤い肌の彼はね、ちょっと手段を選ばないとこがあるから」
「確か、”城焼き”……とか言ってたな」

出会い頭にネイが口にしていたのは、あの狂犬じみた男の異名であっただろうか。

「イカれてんだ、アイツぁ」

吐き捨てるように言うのはネイだった。

「糧食を断つために街を焼く、村を焼く……そのくらいはどこだってやらあ。
 けどよ……城ごと蒸し焼きにしちまうのはあの野郎くらいだろうぜ」
「……」

確かに、と森崎は内心で考える。
遥か遠い故郷には山城、それも木造の城が多く、籠城に対し時には火攻めも有効とされた。
しかしこの欧州では一部の堅固な要塞を除けば、広大な城塞都市という形態が一般的である。
籠城といっても城単体ではなく、石造りの街そのものを拠点として抵抗するのが常であった。
油を撒いて火をつけたところで大規模な延焼は望めず、位置づけとしては主に心理面での圧迫という
搦め手の戦術に留まっているはずだった。

151 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:14:04 ID:???
「ああ、向こう……西洋圏じゃあよ」

森崎の難しい顔をどう受け止めたか、ネイが付け加えるように言う。

「こっちと違って山と森が多いからな。城っても石積みのは珍しいんだ」
「なるほどな。……それで”城焼き”か」

納得する。
西洋圏での城攻めは比較的故郷のそれに近いのだろう。

「一度だけ、アイツが焼いた砦に入ったことがある。……今でもたまに夢にみるぜ」
「まあねえ、あれは強烈だったねえ」
「……」

焼かれた街はいつだって悲惨なものだ。
逃げ場のない砦ともなれば、その惨憺たる有様は想像に難くない。
記憶の底から、ツンとした異臭が鼻の奥に蘇ってくるような気がして森崎が話題を変えようとする。

「……で、あのバビントンってのはどんな奴なんだ。子供みたいに見えたが」
「あー、あれは……」
「まあ、そこの彼みたいなものだね〜」

と、ジェトーリオが指さしたのは扉の側に直立していたカイルである。
目を白黒させるカイルに手を振って、

「可愛い顔して結構えげつないんだよね。なにせ副団長だし」
「おお、そうだ。それ、本当だったのか」
「マジもマジ、大マジよ」

森崎が訝しげに訊くのへ、応えたのはネイだった。

152 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:15:04 ID:???
「あの傭兵団の実質的な仕切り役はあの坊やだって話だぜ。……坊やつっても、俺らと
 大して歳は変わんねえらしいけどな」
「なにィ」
「団長のカルロス・サンターナが戦略と指揮を、副団長のバビントンが参謀役として
 戦術と実務を担当しているらしい。本人の剣の腕も相当なものだと聞いたことがある」
「ほう……人は見かけによらないってわけだ」

感心したように頷く森崎。

「ま、俺らの知ってることは大体こんなもんだ」
「そうか。助かった」
「ああ……で、よ」

ふと声を落とし、森崎から視線を離して、ネイが言う。

「……聞かねえのか」
「何をだ」
「そりゃあ、その……」

口ごもるネイに、森崎が苦笑する。
ザガロが口にした『お尋ね者ども』の件を気にしているのだろう。
ネイの背後ではトニーニョが眉間の皺をいつにも増して深く刻み、ジェトーリオはそんな二人を見て
お手上げとでもいうように小さく肩をすくめ、森崎に目配せをしている。
ネイに気付かれないように顎の先だけで頷いて、森崎が口を開いた。

「ワケありなのは誰だって同じだ」
「え……」

予想外の言葉だったのか、ネイが弾かれたように森崎を見る。
何事もないように軽く、森崎が続けた。

153 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:16:23 ID:???
「この因果な商売、お互いつまらねえ詮索はご法度、ってな。聞いたことねえか」
「……そういや、最初に会った時もそんな事言ってたっけ」
「はは、よく覚えてるじゃねえかよ」

小さな笑いは、話を打ち切る合図だった。

「ま、どうしても言いたいってんなら聞いておくぜ」
「……いや、今はやめとくよ」

首を振るネイ。
その背後、ちらりとジェトーリオが視線を動かした理由は、森崎にも理解できる。
今は、と。
ネイはそう言ったのだった。

「……」

ふと、森崎が肩越しに窓の外を見る。
がたがたと窓を揺らす風は収まる気配もない。
曇天は更に厚く、今にも冷たい雨を降らせようとしているように思えるのだった。


******

154 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:17:23 ID:???
*D26.11月 訓練選択

『今月は何をするの?』

森崎有三
称号:親切な傭兵団のエース

個人パラメータ
現在のガッツ:165
剣術:146 馬術:66 体術:62 魅力:78 評価:84
ATK:212 DEF:218 SPD:128 ini:25

部隊パラメータ
兵数:289 騎馬:103 練度:35

所属隊員:
トニーニョ(威圧Lv2)
ネイ(鼓舞Lv1)
ジェトーリオ(撹乱Lv1)
カルツ(針鼠Lv1)
レヴィン(破壊Lv1)

剣術・馬術・体術・魅力・礼法・墓守・休養・部隊訓練・陳情の中から『二種類』選んで下さい。
同じ訓練を二つ選んでも構いません。

陳情を選ぶ際は何を陳情するのかを付記して下さい。
また「剣術・馬術・体術」を選んだ場合は所属する隊員の中から共に訓練する相手を
一人だけ選ぶことができます。誰と訓練をするのかも付記して下さい。
隊員の所持スキルの強化・変化や、イベントによる森崎自身の称号取得が起こる可能性があります。

その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願い致します。
期限は『11/29 24:00』です。

155 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:19:28 ID:u5P3LaeY
******

カリブ海には入植した欧州人が建造した普通の城塞も沢山あります、
といったところで本日の更新はこれまでとさせていただきます。
お付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

156 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/29(木) 18:52:10 ID:???
馬術レヴィン体術トニーニョ
SPDの数値が低いので上げる事を考えました。この組み合わせなら攻撃力と守備力もバランスよくあげられると思います。

157 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/29(木) 21:28:21 ID:???
馬術レヴィン体術トニーニョ
SPDの数値が低いので上げる事を考えました。この組み合わせなら攻撃力と守備力もバランスよくあげられると思います。
レヴィンとは一度は喋った方が良いかなと思います。トニーニョとは喋らなきゃいけない事が多いと思います。

158 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/29(木) 22:35:16 ID:???
魅力 馬術トニーニョ
関係性の微妙なキャラも増えましたし、ここらで魅力上げておこうかなと。
実質副隊長のトニーニョともいろいろ話しておいたほうが良さそうかと。

159 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/30(金) 20:45:22 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>154の選択については……

>>157 さら ◆KYCgbi9lqI様のご回答を採用させていただきます!
そうですね。ちょっとSPDが低めになってきていますので、このままですと場合によっては
格下に思わぬ苦戦を強いられることにもなりかねませんでした。
CP3を進呈いたします。


>>158
実は対面の判定については、高い評価値による内部的な自動成功がまだ続いている状態です。
おかげで適当な話の切れ目で更新することができずに困ったことも何度かありますw
初対面に近ければ近いほど評価値の参照度が高く、深い関係になると魅力値がものを言う傾向にありますので
一部のキャラについてはそろそろ判定が出てきそうですね。


160 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/30(金) 20:46:39 ID:Dc/RyHNA
******

*訓練ダイス

※訓練は前後半に分かれています。
★マークごとにお一人づつ、!と numnumの間のスペースを消してダイスを引いてください。
目標値【50】に対しプラスマイナス30以内で成功、プラス31以上で大成功、マイナス31以下で失敗となります。
大成功時は成果が1.5倍、失敗時は0.5倍となります。


前半(馬術)1
! numnum + ! numnum + ! numnum =

前半(馬術)2
! numnum + ! numnum + ! numnum =

後半(体術)1
! numnum + ! numnum + ! numnum =

後半(体術)2
! numnum + ! numnum + ! numnum =


***

161 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/30(金) 20:50:16 ID:???

前半(馬術)1
41  +  51  +  57 =



162 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/30(金) 20:50:18 ID:???

前半(馬術)1
22  +  25  +  01 =

163 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/30(金) 20:56:29 ID:???

前半(馬術)2
18  +  24  +  65 =


164 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/30(金) 21:01:58 ID:???
【数値加算】
>>163の左の数値をEP5使って5増やします。

165 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/30(金) 21:14:06 ID:???

後半(体術)1
10  +  20  +  28 =


166 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/30(金) 21:16:35 ID:???
ありゃりゃ
EP10使って左の数値を10増やします

167 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/30(金) 21:21:04 ID:???
【数値加算】
>>164の左の数値をEP10で10増やします
記入漏れすみません

168 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/30(金) 21:42:07 ID:???
【代理消費】
>>167のEPを9代理消費します。

169 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/11/30(金) 21:44:41 ID:???

後半(体術)2
75  +  31  +  89 =


170 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/11/30(金) 21:45:53 ID:???
【数値加算】
>>169の左端の数字をEP5使って5増やします

171 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/05(水) 17:52:23 ID:???
***

皆様、ダイスロールありがとうございます。
それぞれEP1を進呈いたします。


*訓練結果

前半(馬術)1
41  +  51  + 57 = 大成功0 成功3 失敗0

前半(馬術)2
23  +  24  + 65 = 大成功0 成功3 失敗0

→大成功0 成功6 失敗0


後半(体術)1
20  +  20  + 28 = 大成功0 成功3 失敗0

後半(体術)2
80  +  31  + 89 = 大成功1 成功2 失敗0

→大成功1 成功5 失敗0


******

172 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/05(水) 17:53:24 ID:???

//馬術(レヴィン)


枯葉舞う林に響く重低音は、馬の呼吸と蹄の音である。
手綱を繰る森崎の視界を時折白く染めるのは轡を食む馬の、熱い吐息が湯気になったものだった。

『だいぶ様になってきたじゃない』
「ま、これだけやってモノにならねえってわけにも……よっ、と」

軽く手綱を揺すり、愛馬を小さく跳ねさせる森崎。
突き出していた木の根が瞬く間に馬体の下に消えた。

『わ、すご〜い』
「へへん、どんなもんだ」
『前はジャンプさせるたびに舌噛みそうになってたもんねえ』
「いつの話だよ!」

肩の上でぷらぷらと足を揺らす小さな相方に向けた怒声も、しかし実際には呟くような声だった。
軍馬は周囲の騒音や怒号に慣れるよう訓練されているとはいえ、やはり敏感な動物である。
突然の大声に驚いて振り落とされてはかなわない。

『でも慢心は禁物だからね、もっと上手い人はいくらでもいるんだし』
「また偉そうに……」
『たとえば、あの人とか』

と、ピコがその舞い落ちる枯葉よりも小さな手で指さしたのは前方、梢の向こうに見え隠れする影である。
森崎と同じように騎乗したその後ろ姿は、どこか線が細く儚げに見える。
しかしその手綱捌きは流麗の一言に尽きた。
傭兵大隊の馬は基本的に軍部からの貸与であり、特に一般隊員に割り当てられる馬は質が高いとは言い難い。
だが、前方の男にかかれば駄馬も一流に変わるのである。

173 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/05(水) 17:54:25 ID:???
「ステファン・レヴィン……」

森崎の呟いた、それが男の名であった。

『ちょっと、何考えてるのかわかんないとこあるけど……実力は確かな人だよね』
「ああ、そうだな……」

優秀な人材なのは、疑いようがない。
剣術、馬術、更には槍や弓術も見事にこなす。
口数は少ないが物腰柔らかく、勉学礼節にも綻びがない。
ほぼ完璧といっていいその白皙の男の周囲には、しかし人の集まる光景が見られることはない。
それは決して妬みや嫉みといったものが原因ではないように、森崎には思えた。
虫が好かぬ、というものともまた違う。
何となれば、森崎自身もレヴィンという男にどこか得体の知れぬものを感じていたのである。

「……」

初対面のときに感じた殺気と虚無を無秩序に撒き散らすことこそなかったが、
しかし柔和で儚い微笑の奥には何か隠された襞がある。
その直感に間違いはないと、森崎はほとんど確信に近いものを持っていた。
そしてまた誰もがそれを感じるからこそ、彼を敬して遠ざける。
不気味なのは、レヴィンほどの才を持つ者であれば己のそういう部分を周囲に隠し通すことなど
容易であろうにもかかわらず、それをしないということだった。
そこには意図があり、目的がある。

「近づくな……ってか」
『……?』
「いや、なんでもねえよ。……っと」

じっとその後ろ姿を見つめていた森崎の視線に気づいたか、前方の影がすう、と肩越しにこちらを振り返った。
同時、早足で駆けていたその速度が緩む。
瞬く間に影に追いつきそうになって、森崎が慌てて手綱を引いた。

174 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/05(水) 17:55:27 ID:9I9BpGWk

*チェック

(馬術)判定

目標値【34】 → ! numnum

※ ! と numnum の間のスペースを消して数値を出して下さい。
難易度【ターン係数80+容易20】−(馬術66)を目標値とし、目標値以上の値が出れば成功。
00が出た場合は難易度にかかわらず成功となります。
結果によって展開が分岐します。

成功→ 無難にレヴィンと並ぶことができた。
失敗→ 反応が遅い。レヴィンを追い越してしまう。

175 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/12/05(水) 18:32:41 ID:???
目標値【34】 →  91

176 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/06(木) 19:08:48 ID:???
***

成功→ 無難にレヴィンと並ぶことができた。


「よう、レヴィン」

片手を上げて挨拶をしながら、森崎がレヴィンの馬と轡を並べたところで愛馬を静止させようとする。
意図を読み取ってくれたのか、それとも単なる気紛れか、計ったようにぴたりと鼻先を揃えて止まってくれたのは
僥倖というべきだろう。

「これは隊長。さすがのお手並みですね」
「いや、まだまだこいつに遊ばれてるよ」

ぽん、と愛馬の首を叩いて森崎が首を振る。

「早いとこ格好をつけなきゃならないんだろうが、何しろ鞍の上ってのはまだ馴染まなくてな。
 その点、お前は随分と手慣れた風じゃねえか」

実際、技術の素地が違う。
前歴不明ということだったが、どこかの軍や傭兵団で訓練を受けたものだろうか。
そんな風に考えていた森崎に、レヴィンが些か予想外の答えを返す。

「幼い頃、基礎を叩きこまれましたので」
「ほう……?」

幼い頃、ときた。
それはつまり、極めて裕福な市民階級か、それともある程度以上の騎士、貴族の子弟であると
告げているも同然だった。
うっかりと口を滑らせるような男ではないだろう。
とすればこれは、踏み込んでも構わないという合図だろうか。

177 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/06(木) 19:10:47 ID:???
迷う森崎を前に、

「騎士の家に生まれたんですよ」

あっさりと、レヴィンが続けた。

「父が若い頃、リヴォニアで功績を挙げて取り立てられたんです」
「リヴォニア……ああ、お前はスウェーデンの出身だったな」

リヴォニアは北欧、バルト海の東側に位置する地域である。
港を求めて西進したシベリアに対し、北欧の雄スウェーデン他の諸国が交戦してこれを打ち破ったのは
時を遡ること二、三十年前の話であった。

「騎士の出なら、まあ文武に通じてるってのも納得ではあるが……」

含みをもたせたのは、無論この先を続けて構わないのかという意思確認だった。
しかしレヴィンの口元に張り付いた薄い微笑は、僅かな乱れを見せることもない。
澱みのように穏やかに、汚泥のように柔らかく、何らの葛藤も見せずに頷くと、言う。

「もう、ありませんから」
「え……?」

咄嗟には言葉の意味を図りかね、接ぎ穂を失った森崎にレヴィンがゆっくりと瞬きをして、繰り返す。

「もう、ありません。レヴィン騎士爵家は、既にスウェーデン王国には存在しないんです。
 それで僕は浪々の身となりました」
「それは……」

あまりにも屈託なく。
どこまでも淡々と。

「壊されてしまったんです。そこにあった家も、そこにいた人も。だから、もうありません」

178 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/06(木) 19:13:25 ID:sLHyRKsM
まるでのどかな昼下がりの、茶飲み話のように何気なく、微笑みながらそれを言う。
しかし、たとえば凪いだ海が船を抱いて離さぬように、底なし沼の足に絡めば抜けないように、
男の瞳は、静かに腐っている。

「お前は」

森崎がその瞳に告げる―――


*選択

A「逃げてきたのか」

B「復讐したいのか」

C「死にたいのか」

D「生き延びたんだな」


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『12/6 24:00』です。


******

戦争に敗れた共産主義シベリアは南進政策に切り替えました、
といったところで本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

179 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/12/06(木) 19:45:34 ID:???
D

Aは地雷、Bは本人の本望、Cが多分本心…と来て、一番心に響くのはDではあるまいか。
心が腐っている人間にはまず大前提(生きてる)を確認させて前向きにさせたほうがいいと思うんだよね。
ピココールとかするべきなのかもしれないけど、戦争関係を傍観してた私はポイントの手持ちが少ないので(笑)

180 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/12/06(木) 19:53:55 ID:???
【ピココール】
こういう明らかに心が壊れてる様に見えるレヴィンにはBCDのどれが彼の心に響くと思う?

181 :ピコ ◆ALIENo70zA :2012/12/06(木) 20:50:35 ID:???
>>180
心に響く…うーん、彼とはまだ付き合いが浅いからねえ…。
まあ、普段は近寄らないでねっていう空気バリバリの彼がなぜかぺらぺら語り出してることだし、
こっちがどう答えるかはある程度予測されてるって思った方がいいかもしれないね。
その上で意表をつくか、言ってほしそうなことを言ってあげるかはキミ次第だよ。

182 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/12/06(木) 21:18:23 ID:???
C【ピココール】を踏まえてBと悩んだんですがレヴィンの言って欲しい言葉ってこれかなって思いました。

183 :◆9OlIjdgJmY :2012/12/06(木) 23:23:18 ID:???

自分の生に執着してなさそうなので、釘を刺す意味も込めて。
隊長として、部下の(緩やかな)自殺は止めるべきでしょう。
隊に危険が及ぶかもしれないし。

184 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/12/07(金) 19:25:51 ID:???
レヴィンがこんなに喋るとは思ってなかったんですが、魅力と評価が高いからですか?

185 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 14:23:12 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>178の選択については……

>>182 さら ◆KYCgbi9lqI様のご回答を採用させていただきます!
そうですね、レヴィンの誘導に従えばその二択になるでしょう。
また>>184への返答となりますが、この饒舌は判定を挟んでいるわけではなく、レヴィンなりの計算ですね。
森崎が親切なお節介焼きということは既に新規部隊員にも知れ渡っていますので、それを踏まえた
一種の牽制といったところでしょうか。
しかし森崎の周囲が実は既に面倒な人物ばかりで、対応に慣れていることまでは知られていないようです。
CP3を進呈いたします。


また>>179 傍観者  ◆YtAW.M29KM様、>>183 ◆9OlIjdgJmY様のご回答につきましても
方法論、方向性として非常に鋭いものですので、次点としてそれぞれCP1を進呈いたします。
この後の展開でも少し触れていますが、レヴィンはまたもや厄介な背景持ちですので、
声が届くようこちらを向かせるにはまだもう少し手間と時間がかかるかもしれません。
なんというか、どいつもこいつもカルツの漢らしさを見習ってほしいものですw

186 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 14:24:15 ID:???
***

C「死にたいのか」


そういうものを、いくつも見てきた。
望んでいくさ場に身を置く者の中には、少なからずいる。
生き死にへの関わり方という、人の最奥が朽ちてしまったものたちだ。
自決を大いなる罪と信仰が定めるこの欧州において、傭兵という職は彼らの前に蠱惑的な煌めきを放つ。
そこには、彼らの何より望むものが淡々と存在しているからだ。
彼らにとって死の危険は恐怖でも不運でも、あるいは一部の狂人がそう感じるような快楽でも愉悦でもない。
それはただ、招く手だ。
己をあるべき姿に戻してくれる、原初の扉への誘いだ。
そして今、森崎の眼前に立つ男の瞳は、そういうものたちと同じ色をしている。
だから森崎は、もう一度その言葉を繰り返した。

「お前は、死にたいのか」

責める意図はない。
それはいわば、確認だった。
森崎自身の信仰において、自死は生理的な忌避の対象でこそあれ、最も救われぬ罪であるという認識はない。
遥か遠い故郷を思えば、それは時に賞賛の対象ですらあり得た。
この欧州でいくさ場に飛び交う矢や刃や銃弾をその道具としようとする彼らの動機は、それら極東の世に語られる
美事の正逆ではあっただろうが、しかしそのことを叱責できるほどには、森崎は欧州の人ではなかった。
それでも部隊を預かる者として生きる意志のない者は懸案事項であり、その把握は必須といっていい。
彼らの精神はある局面では非常に有効に機能するが、しかし別の局面では隊を極めて大きな危険に晒す可能性もあった。
レヴィンの返答は、

「ふふ……、ははは」

失笑である。
北欧特有の、色の薄い白皙の美貌が歪むような、暗く静かな笑い方だった。

187 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 14:25:52 ID:???
鼻白む森崎を前にひとしきり笑ったレヴィンが、小さく首を振って鞍上、手綱を握り直す。

「すみません、つい……。本当に面白いことをおっしゃいますね、隊長は」
「おかしいか」
「ええ、とても」

木漏れ日が、撫でるようにレヴィンの頬を照らした。

「ご質問にお答えしましょう。―――いいえ、そして、はい、隊長」
「……」

人を近づけぬ微笑が、その口元に戻っていた。
長い指が僅かに動くと、それだけで何かの意思を伝えたものか、レヴィンの馬がゆっくりと歩き出す。
森崎もその後を追うべく、馬の腹を軽く蹴る。

「僕は、僕のたいせつなものを壊した何もかもを恨み、憎悪しながら生きています」

どんな顔をしながらその言葉を口にしているのか、森崎にはわからない。
見えるのは、並足にゆったりと揺られるレヴィンの背だけだった。

「彼と彼らには苦痛に満ちた死を。希望という希望に見放された破滅を与えてやりたいと、常に願っています」
「……」

彼、とレヴィンは言った。
それはつまり、仇を特定できているということだろうか。
そしてまた彼らというからには、その仇には協力者が存在するというのか。
断片的な情報から類推する森崎に、レヴィンがゆらゆらと揺れながら続ける。

188 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 14:27:00 ID:???
「咎人はありとあらゆる責め苦の中で息絶えるべきだと。そうでなければならないと。
 大罪には相応の罰が与えられるべきだと、信じています」

馬蹄が枯れ葉を踏む音が、さくりさくりと響いている。
もうすぐに、林を抜ける。

「僕はそれまで、彼と彼らに罰を与えるまで、死ぬわけにはいきません。
 ですから先程の問いに対する答えはいいえ、僕は死にたいわけではない」

木枯らしは、しかし肌を刺すほどに冷たくはない。
ただ、どこまでも乾いている。

「ですが、僕の願いが叶うとき、本当に仇を討ったそのとき、必然僕は生きてはいないでしょう。
 そうでなくてはならない。だって、僕の仇は罰を受けて死んでいなくてはいけないのですから」

梢の向こうには、荒涼とした平野が広がっている。
白くぼんやりとした陽光と、乾いた風と、土埃だけがそこにある。

「ですから、先程の答えに対する答えは、はい」

林の中の影を抜けて、レヴィンが振り返る。
光の下、色の薄い金髪をきらきらと光り輝かせながら、微笑んで。

「―――ステファン・レヴィン。それが、僕の仇の名です」



※ガッツが20減少。
馬術が24上がりました。

189 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 14:28:00 ID:8d1tYT6E
******


*スキルアップチェック

レヴィンとの関係が一定値に達したため、スキルが強化される可能性があります。
目標値は対象キャラクターとの関係によって増減します。

目標値【95】 → ! numnum

※ ! と numnum の間のスペースを消して数値を出して下さい。
目標値以上の値が出れば成功しスキルが強化されます。
また同時にパッシブスキルを獲得します。

成功→ 破壊Lv2/破滅Lv1
(破壊Lv2:使用ターン、所属部隊の攻撃で発生した死亡判定について、目標値を+20する)
(破滅Lv1:パッシブ。自身の死亡判定について目標値が+10される)


******

190 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/12/08(土) 14:42:42 ID:???
目標値【95】 →  25
これはまだ知り合って間もないからかな。

191 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 15:03:00 ID:???
>>190
そうですね。スキル上昇目標値は基本的に100以上からスタートして減算されていきます。

******


スキルは強化されませんでした。


******


※称号が『親切なジョッキー』になりました。

スキル『ギャロップ』を獲得しました。
種別:部隊パッシブ
消費ガッツ:-
効果:指揮下の騎兵および弓騎兵の移動力を+1する。


******


※称号が『親切な弓取り』になりました。

複合スキル『剛弓』を獲得しました。
種別:部隊アクティブ
消費ガッツ:5
効果:使用ターン、指揮下の弓兵の射程を+1する。


******

192 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 15:04:04 ID:???

//体術(トニーニョ)


「……こちらの班の訓練経過だが、少し計画より遅れ気味だ。詳細は書面でカイルに回しておくが、
 一部の隊員は班を組み替えた方が効率的だろう」

屋内鍛錬場の片隅、報告をまとめる低い声はトニーニョのものである。
短く刈り込んだ頭に仏頂面の強面はいつも通りに見える。
このところは奇妙な言動やぼんやりと遠くを見つめるような仕草も鳴りを潜めていた。
しかし。

「……」
「……聞いているのか、モリサキ」
「あ、ああ」

常に不機嫌そうな顔をじっと見つめていた森崎だったが、実のところ報告など右から左へ抜けている。
それが如実に現れた生返事に、

 ―――弛んでいるぞ、モリサキ。そんなことでは隊長として示しがつかんだろう。
 大体お前はいつもそうやって、

「なら、いいが」

小言は返ってこない。
何かを噛んだ歯車が、それでも異音を立てながら回り続けるような居心地の悪さに森崎がばりばりと頭を掻く。

「あー、もう!」
「……? どうした、モリサキ」

怪訝そうな顔をするトニーニョの眼前、森崎がだしぬけに外套と上着を脱ぎ捨てる。

193 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 15:05:22 ID:???
「おい、モリサキ……」
「今日は時間、あるだろ。久しぶりに組手でもやらねえか」
「なにィ……?」

唐突な提案である。
渋面に刻まれた皺を更に深くしたトニーニョだったが、己を見据える森崎の目に冗談の色がないことを
見て取ったか、やがてため息をつくと頷いた。

「……いいだろう。相手になってやる」


***


向かい合う二人は、互いに盾だけを持ち、利き腕は無手である。
戦場での密着戦を想定した訓練のこと、骨を折る、関節を外す、目を潰す、急所を突くなどの行為は
寸止めが原則ではあったが、その他に決まりごとはない。
遠くからはざわざわと声が聞こえる。
広い屋内鍛錬場の壁際には荒くれどもが寿司詰めになっていた。
隊長である森崎と、事実上隊のナンバー2と目されるトニーニョとの組手である。
準備を始めた時点で衆目を集めるのは必至であった。
邪魔にならぬよう、という名目で人垣にかなりの距離を置かせたのは森崎だったが、そんな指示を出している間に
外で訓練していた隊員までが呼び戻され、結局ほとんど大隊総員で二人を取り囲むような様相を呈していた。

「こりゃ、恥ずかしい真似はできねえな」
「……もとより全力でやらねば訓練の意味がないだろう」

交わす言葉は低く、遠い人垣には届かない。
にやりと笑って、森崎が左の腕に括りつけた円盾を翳すように構えた。
対するトニーニョは長身を活かすように、拳を固めた両の腕を前に突き出す構え。
広い間合いでの迎撃を主眼としたスタンスであった。

194 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 15:06:25 ID:???
「……」

迂闊に飛び込めば右の拳の振り下ろし、あるいは左の盾で動きと視界を封じての前蹴りも考えられる。
上背と体格に劣るということは、即ちリーチと体重で勝負に大きなハンデがつくということだ。
投げ、打ち、その両面で不利は否めない。
じり、と摺り足で間合いを測りつつ、森崎が戦友の隙を伺う。



*****

195 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 15:08:15 ID:???

◎個人戦闘


森崎有三
ガッツ:145
ATK:108 DEF:218 SPD:152 Ini:30

発動中パッシブスキル:
受身/個人戦闘時、DEF値を+10する。

アクティブスキル:
(名称/消費ガッツ/効果)
牽制打/10/そのターンの攻撃ダメージを70%とし、命中値を+30する。
スマッシュ/10/攻撃の最終ダメージを150%として計算する。
シールドワーク/ 0/攻撃ダメージを必中で5、防御ダメージを50%にする。

VS

トニーニョ
ガッツ:160
ATK:112 DEF:236 SPD:147 Ini:29

発動中パッシブスキル:
威圧 Lv2(個人戦闘)/個人戦闘時、相手のATK値を-10、自身のATK値を+10する。

アクティブスキル:なし


※両名とも武装していないためATK値が半減しています。

196 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 15:09:16 ID:???

◆この個人戦闘は変則ルールが適用されます。
 勝負は5ターンで終了し、消費ガッツの少ない方が勝利となります。
 消費したガッツは戦闘後に全快します。


******


【ターン1】
・行動選択
攻撃、スキルの内から『12/8 17:00』までに、どれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願い致します。

197 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/12/08(土) 15:46:20 ID:???
シールドワーク

このルール、実はシールドワークだけやってればいいんじゃないかという外道殺法。
まあ実際のところ数字がよくわかってないから、5点だとこっちが削れるほうが多いかもしれないけど。

198 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 15:57:26 ID:???
>>197
トニーニョが5回全部命中、かつ10以上を出し続けて一回でも12が出たら…!
…いえ、ご指摘通りほぼ勝ち確定です。

ということで5ターン全部シールドワーク、という選択の場合はその旨を記載していただければ、
あとはGMが5ターン分トニーニョのダイスを振ります。
選択スキップされたターンのCP/EPは前回のサム戦同様、まとめて補填させていただく形になります。
今回はそれぞれ3+4点ずつのボーナスゲーム状態!
奮ってご参加下さい! (半泣きで

199 :◆W1prVEUMOs :2012/12/08(土) 15:58:11 ID:???
ガッツ消費量の少ない方が勝ちだからシールドワークか通常攻撃しか取れないですもんね
ステータス的に互いの攻撃はダイスロール分しかダメージ通らないのでシールドワークで安定

200 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 15:58:49 ID:8d1tYT6E
また上記変更に伴い、ターン1の選択期限を19:00に延長させていただきます。
何卒宜しくお願い申し上げます。

201 :◆W1prVEUMOs :2012/12/08(土) 16:02:56 ID:???
トニーニョの出目次第で通常攻撃にかける場面も出てくるので
勝利確定するまでシールドワークを単独で選びたいと思います

202 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/12/08(土) 16:27:09 ID:???
勝利が怪しくなるまでシールドワークでお願いします。

203 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/12/08(土) 16:28:56 ID:???
すいません。シールドワーク単独でお願いします。

204 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 19:34:21 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>195-196の選択については……

>>197 傍観者  ◆YtAW.M29KM様、>>201 ◆W1prVEUMOs様、>>203 さら ◆KYCgbi9lqI様、
お三方のご回答を採用させていただきます!
皆様、慎重ですね…敗北の確率は計算する気も起きないくらいですがw
それぞれCP3を進呈いたします。

205 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 19:36:17 ID:8d1tYT6E
***

・ダイスロール

森崎 
スキル使用『シールドワーク』
必中、ダメージ5

★マークごとに一人づつ、! と dice、numnum の間のスペースを消して
森崎の行動ダイスを引いてください。


森崎
[イニシアチブロール ! dice]


トニーニョ
[イニシアチブロール  3 ]
[命中ロール  45 ]
[ダメージロール  1 + 3 ]


***

206 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/12/08(土) 19:45:52 ID:???

森崎
[イニシアチブロール  3 ]


外道殺法が採用されてしまった…。悪く思うな、トニーニョ。

207 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 22:27:24 ID:???
***

・イニシアチブ処理
森崎 30+3 先攻!
トニーニョ 29+3 

森崎
・命中処理
スキル必中
・ダメージ処理
スキル固定 5

トニーニョ
・命中処理
-5+45=40 命中!
・ダメージ処理
0+4 /2


森崎の攻撃は命中、ダメージ5
トニーニョの攻撃は命中、ダメージ2

***

208 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 22:28:55 ID:???
森崎有三
消費ガッツ:2
ATK:108 DEF:218 SPD:152 Ini:30

発動中パッシブスキル:
受身/個人戦闘時、DEF値を+10する。

アクティブスキル:
(名称/消費ガッツ/効果)
牽制打/10/そのターンの攻撃ダメージを70%とし、命中値を+30する。
スマッシュ/10/攻撃の最終ダメージを150%として計算する。
シールドワーク/ 0/攻撃ダメージを必中で5、防御ダメージを50%にする。

VS

トニーニョ
消費ガッツ:5
ATK:112 DEF:236 SPD:147 Ini:29

発動中パッシブスキル:
威圧 Lv2(個人戦闘)/個人戦闘時、相手のATK値を-10、自身のATK値を+10する。

アクティブスキル:なし


******

…えー、ターン1での被ダメージが2。
残り4ターンでの最大値が24、つまり5ターンでの最大値で26。
森崎が5ターンで与えるのは25点ということで、次ターンのトニーニョが
ダメージロールで9以下を出した時点で勝利が確定します。


209 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/08(土) 22:35:56 ID:8d1tYT6E
【ターン2】
・行動選択
攻撃、スキルの内から『12/8 23:30』までに、どれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願い致します。

また今回の選択については特別措置として、ターン1からシールドワークを選択していた方は
自動的にこのターンも同様の選択をされたものとして扱わせていただきます。

210 :◆9OlIjdgJmY :2012/12/08(土) 23:29:23 ID:???
じゃあ攻撃で。
訓練でずっと盾かざしてるのも消極的かなと

211 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/09(日) 13:55:27 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>208の選択については……

『ターン1より継続でシールドワークを選択』された皆様の案を採用させていただきます!
堅実に、ということですね。
それぞれCP3を進呈いたします。


>>210
実戦想定の訓練ですから、淡々と最善手で勝利しても評価が下がったりはしませんのでご安心下さい。
シールドワークも盾を翳すというか、盾で打撃しにいくといった方向性の技ですので見た目も…たぶん大丈夫ですw


またこのターン、トニーニョが命中できないかダメージロールで9以下を出した時点で勝利が確定します。
その場合は残りの3ターンをスキップし、残りターン数*1のCP/EP補填を行います。
対象となるのはターン1からこのターンまでにエントリーしていただいた全プレイヤー様となります。

212 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/09(日) 13:56:52 ID:O6wYuSsg
・ダイスロール

森崎 
スキル使用『シールドワーク』
必中、ダメージ5

★マークごとに一人づつ、! と dice、numnum の間のスペースを消して
森崎の行動ダイスを引いてください。


森崎
[イニシアチブロール ! dice]


[イニシアチブロール  1 ]
[命中ロール  81 ]
[ダメージロール  1 + 1 ]


213 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/09(日) 13:57:56 ID:???
******

終戦ですが、一応イニシアチブロールをどうぞ、といったところで一旦ここまでとさせていただきます。

214 :森崎名無しさん:2012/12/09(日) 14:02:16 ID:???
森崎
[イニシアチブロール  1 ]

215 :◆W1prVEUMOs :2012/12/09(日) 14:03:20 ID:???
おっと失敗
森崎
[イニシアチブロール  3 ]

216 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/12/09(日) 21:35:33 ID:???
模擬戦だとシールドワークが有るか無いかで難易度全然違うね。

217 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/19(水) 20:27:30 ID:???
私事多忙にてまとまった時間が取れず、プレイヤーの皆様にはご迷惑をお掛けしております。
申し訳ありません。
この状態が続くようであれば、各種処理を少し簡略化するようなルール改変も考慮いたします。

>>216
そうですね、この形式ですとシールドワーク不所持・ポイント不使用の場合は運試しに近いものがあります。
武器あり・敵スキルありの状態ならまた違うんですけどね。

218 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/19(水) 20:30:08 ID:???
***

・イニシアチブ処理
森崎 30+3 先攻
トニーニョ 29+1


森崎
・命中処理
必中
・ダメージ処理
5

トニーニョ
・命中処理
-5+81 =76 命中!
・ダメージ処理
0+2 /2


森崎の攻撃は命中、ダメージ5
トニーニョの攻撃は命中、ダメージ2


森崎
消費ガッツ:4

トニーニョ
消費ガッツ:10


***

219 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/19(水) 20:32:47 ID:???


勝利確定のため、3,4,5ターンの処理をスキップします。


******


リーチとウエイトの不利は、こと乱戦中の刺突や斬撃において然程の問題とはならない。
しかし一対一の無手ともなれば、それは勝負の趨勢を担う重要な鍵である。
実戦を想定した演習で互いに革の胸甲や脛当てに身を固めてはいるものの、掴まれれば力負けは否めない。
まして引き倒されて馬乗りになられようものなら、それでほぼ終わりである。
故に、森崎が最大の警戒を払うのは腕や足を取られてのタックルであった。

(さて……よーく見とけよ)

厚い装甲や体格の差を、どうやって埋めるか。
その道筋を、遠巻きに観戦する新兵たちにも見せてやらねばならなかった。
森崎の選んだ手段は、正々堂々と正面からぶつかり合うことでは、無論ない。

「くっ……迂遠な手を!」
「騎士でも相手にしてるつもりかよ、トニーニョ!」

重く、しかし膝をつくには至らぬ打撃を腹に受けてよろめきながら、トニーニョが拳を振るう。
ぶうん、と唸りを上げるその軌道に、既に森崎はいない。
バックステップから右へと回り込んだ森崎が飛び込もうとする、そのタイミングに合わせるように
トニーニョの膝が突き出される。
低い姿勢をとった森崎の顔面に突き刺さると見えた、その膝を受け止めたのは硬い音。
森崎の翳した円盾である。

「おら……よっと!」
「ちぃ……ッ!」

220 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/19(水) 20:33:48 ID:???
受けた盾が、その打撃にかち上げられるように真上に向いた。
膝で動きを止めた森崎の頭を両側から抱えようと目論んでいたトニーニョの腕が、戸惑ったように止まる。
そこには掴みやすい頭ではなく、半径が大きく力の込め難い盾がある。
加えて、

「ぐ……!」

迫る盾に塞がれた視界の向こう、下腹部に奔る激痛があった。
肋の下から垂直に臓腑を抉るような打撃は、森崎の肘である。

「―――おおォッ!」

咄嗟に両手を握り固め、振り下ろす。
拳の腹は当然の如くに森崎の盾を打ち、しかしトニーニョはそれで構わぬとばかりに、
むしろ自ら前方へと倒れ込むようにしながら己が拳を振り抜いた。
セオリーであれば足を取りに来る、それを真上から叩き潰すことで寝技の攻防に持ち込もうという打撃。
だが、

「前から言おうと思ってたんだけどよ……」
「……ッ!」

その意図を読んでいたように、森崎がするりと脇へ体を逸らし、そのまま飛び退くと距離を取る。
構えはやはり、高く盾を翳しての防御主体。
相手の得意な戦術には決して付き合わぬという意思表示のようでもあった。
その構えを見たトニーニョが、顔をしかめる。

「……お前の悪い癖だぜ、それ」
「……」

221 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/19(水) 20:34:48 ID:???
森崎の選択は即ち徹底した一撃離脱と、左腕に据え付けた円盾を最大限に活用した戦術である。
そも盾とは敵の刃を受け、流すためだけのものではない。
先手を打って盾を置くならば、それは敵の視界を塞ぎ動線を遮断し、また剣筋を制限する牽制、ひいては
相手の体勢そのものを誘導する遮蔽物であり、そしてまた有効に振るえば一撃よく敵の骨を砕く
鈍器ともなる代物である。
無手の訓練とはいえ、森崎に拳で決着をつけねばならぬという発想はなかった。
与えられた条件の中で最適の筋を選択することは理の当然、既に骨の髄まで染み渡っているといっても過言ではない。

「それ、とは」

渋面に刻んだ皺を更に深くしながら尋ねるトニーニョに、森崎が答える。

「坊ちゃん剣術」
「……」

トニーニョが、口を引き結んで黙り込んだ。
眼前、まるで石造りの達磨像のような仏頂面を見やりながら森崎は思う。
トニーニョの剣術、そして体捌きは洗練された、無駄のない型だ。
独学ではあり得ない、いずれ名のある流派の門下でしっかりと教え込まれ、弛みない反復練習で身に刻んだ
正統のそれは、おそらくこの隊全体を見渡しても一、二を争う腕前だろう。
しかし、と。
森崎は己が思考に反駁を挟む。

「真っ直ぐ過ぎんだよ」
「……」
「姑息さがねえ、小狡さがねえ、小賢しさがねえ、小手先の誤魔化しがねえ。
 どうしたって綺麗で素直で、そんで人はみんなそういうもんだと、どっかで思ってる。……なあ、トニーニョ」

仏頂面は、動かない。

「だってのにお前、そんなに真っ直ぐなお前の底には、何がある。何がお前を曲げようとする」

222 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/19(水) 20:36:08 ID:WCf7mlug
森崎の声は、ほとんど囁くように漏れ出して、トニーニョを取り囲む。
正面から見据えられ、声に縛られ、しかしそれでもトニーニョは、口を開かない。
歩を詰めたのは、森崎だった。


*選択

A「ヤング隊長が死んだのは、お前のせいか」

B「お前たち三人、西洋圏で何があった」

C「悪夢なんざ……忘れちまっちゃ、いけねえのかよ」


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『12/20 1:00』です。


******

よもや10日も空いてしまうとは、何たる体たらく…といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

223 :◆W1prVEUMOs :2012/12/19(水) 22:27:27 ID:???

ヤングの死を引きずらないようにトニーニョのせいではないとはっきりさせておく
脛の傷は詮索しないのでBは選ばない
Cは忘れようとしても忘れられないほど深ければお前に何が分かるんだ状態だから

224 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/12/20(木) 00:12:57 ID:???
Aヤングが死んでから様子が明らかにおかしいですから。

225 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/01/18(金) 18:34:08 ID:???
年末年始は忙しいから仕方ないかな。

226 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/01/18(金) 20:39:54 ID:???
申し訳ありません。
現在、転職に伴う生活環境の変動で色々とてんてこ舞い中です…。
そろそろ時間の使い方なども安定してくるとは思いますので、プレイヤーの皆様におかれましては
どうか今しばらくお待ちいただければ幸いです。

一応、生存報告まで。

227 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/02/07(木) 14:07:19 ID:???
皆様、ご無沙汰しております。
大変長らくお待たせいたしました。
『異邦人モリサキ』、ようやくながら再開させていただきます。

ただその前に、ご報告をひとつ。
率直な話、現状では以前の更新頻度を取り戻すことは極めて困難な見通しであるため、
完結を目指す上でシステム面におけるいくつかの対処を考えております。
その先駆けとしまして、ルール改訂をさせていただきます。

228 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/02/07(木) 14:09:14 ID:???
※※※


『ルール改訂 (13.2/7 ver1.10)について』


・隊員イベントの分離

現状の訓練選択と、所属隊員のイベントを分離します。
具体的には一連の訓練判定が完了した後、イベント発生させる隊員を選択する形式とさせていただきます。
フローとしては

『訓練内容選択』→『訓練判定』→『訓練結果』→『隊員選択』→『隊員イベント』

となります。
また訓練結果の詳細な描写については当面、原則として割愛させていだきます。
これは更新頻度の向上を目指すため、また隊員イベントと一部内容が重複する事象が予想されるためです。
悪しからずご理解いただきますよう、お願い申し上げます。


・選択できる訓練内容の一部変更

『休養』を選択した場合、訓練期間の前後半が一度に消費されるようにします。
回復量は現状の二倍(ガッツ200回復)となりますが、同時に他の訓練を行うことはできません。
またこの月は隊員イベントが発生しなくなります。

また訓練内容から『墓守』『礼法』を削除します。
現状のゲーム内容、選択傾向から当該項目が選択される可能性が極めて低く、また効果面でも期待値が低いためです。

その他の訓練(剣術・馬術・体術・魅力・部隊訓練・陳情)についてはこれまでと変動はありません。


229 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/02/07(木) 14:11:12 ID:???

・時節イベントをメインイベントに統合

時節イベントは基本的に各ヒロインとのメインイベントに統合します。
ただし戦争イベントと時期が重なった場合はメインイベントが進行しないため、個別のイベントとして発生させることもあり得ます。
これは現状でも五月祭・夏至祭などがメインイベント上で発生しており、線引きが事実上曖昧になっていることに加えて
今後のシナリオ進行でこれらのイベントと物語全体のトーンが大きく乖離する可能性が懸念されるための調整です。


※※※


ルール改訂はひとまず、以上となります。
ひとえにGMの力不足によるものではございますが、
皆様何卒ご理解の程、宜しくお願い申し上げます。


それでは早速、>>222の選択については……

>>223 ◆W1prVEUMOs様、>>224 さら ◆KYCgbi9lqI様、お二方の案を採用させていただきます!
トニーニョの問題はわりと根が深く、一朝一夕には解決することができないので厄介ですね。
真面目なタイプだけに思い詰めると非常に面倒なことになるという典型です。
それぞれCP3を進呈いたします。

230 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/02/07(木) 14:12:47 ID:???
***

A「ヤング隊長が死んだのは、お前のせいか」


「そうだ」

沈黙が、あるいは否定が返ってくるものだと思っていた。
そう返してほしいと、願っていた。
しかしトニーニョの即答は明快にして一徹。
眉間に皺を刻み、渋面に灰色の眼差しは険しく、しかし声音には迷いなく言い切られたそれを、
森崎は僅かな憤りと共に受け止める。

「まだ、そんなことを……!」
「時が経とうと、事実は変わらん。ヤング・マジョラムは死んだ。隊の多くも。
 そうして副長を拝命していた俺がこうして生き延びている」

それはつまり、眼前の坊主頭が実のところ、あの夏の日の鞍上から何一つとして変われていないという証左だった。
同じ場所をぐるぐると巡るばかりで一歩も進んでいない。
何をしている、という歯がゆさと、何をさせている、という自己嫌悪。
綯い交ぜになった熱を抱えて、森崎は間合いを詰める。
目には見えぬ、しかし触れれば肌を焦がす熱に気圧されたか、対するトニーニョが、じり、と退いた。

「あのとき、あのいくさ場で、お前に……いや、俺たちに何ができた!」
「……何かだ。悲劇へと至らぬ何かだ」
「答えになってねえよ、馬鹿野郎!」

絞り出すように告げたトニーニョに怒鳴り返して、更に一歩。

「お前が、俺が、今こうしてここにいる! それがお前の後悔か!? 俺も生きてちゃいけなかったか!」
「それは……」
「そんな答えも出せねえくせに……っ!」

231 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/02/07(木) 14:13:59 ID:???
踏み込んだのは既に上背に勝るトニーニョの間合いの内である。
しかし長身の体勢は半端に体を引いたのけぞるような後傾、腰の入らぬ拳を無造作に外側に捌いて、森崎が懐に入る。
迎撃のつもりだろうか、かち上げられようとした膝はしかし明らかに遅い。
その拙い対応が、森崎の内に燃える火に油を注いだ。
森崎は今、何をしたわけでもない。心の底に憤りを覚えただけである。
それを隠さずに迫ったという、ただそれだけのことに平静を乱されるトニーニョを、森崎は許容できない。
鍛錬に引き締まった長身が、瞬間、紙人形が如く頼りなく見えた。
振り払うように、森崎が動く。
左の腕に据え付けた円盾をトニーニョの胸に押し付けるようにしながら、空いた手で不用意に浮いた腿を掴んだ。

「……!」

重心を制した森崎に、トニーニョの長身が為す術もなく回転する。
まるで宙返りでもするようにぐるりと綺麗な弧を描き、そのまま仰向けに地面へと叩きつけられた。
同時、盾越しに乗せられた森崎の全体重が、トニーニョの胸郭を圧迫する。

「が……ッ!」

鍛え抜かれた筋肉の鎧が、踏み固められた地面と木製の盾とに挟まれて軋む。
肋骨がその剛性の限界を超える寸前、森崎が盾を引いた。

「……」

勝負がついたのは、明らかだった。
痙攣するように身を丸めて咳き込むトニーニョを見下ろして、森崎が告げる。

232 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/02/07(木) 14:19:00 ID:nri0YbEU

*選択


A「あれは、誰のせいでもねえ。周りに迷惑、かけんじゃねえよ」 矛を収める。

B「罰が欲しくて迷子の真似か!」 迷いを責める。

C「……お前、何を怖がってんだ」 掘り下げる。


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『2/9 9:00』です。


******

といったところで、短いですが本日の更新はこれまでとさせていただきます。
私事にてプレイヤーの皆様にご迷惑をお掛けしておりますこと、
改めて深くお詫び申し上げます。

久々のお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

233 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/02/08(金) 22:04:19 ID:???
【ピココール】
今掘り下げた方が良いのか、後で掘り下げる方が良いのか、どう思う?
久々なんで、ここは慎重に。

234 :ピコ ◆ALIENo70zA :2013/02/08(金) 23:52:56 ID:uLee/Ydg
>>233
そうだねえ…前に話をしたときも結局全然、何にも、伝わってなかったわけで…。
また問題を先送りにしても何も解決しない、っていうのは確かかもね。
どうも昔のことも絡んでるみたいだし、この場で全部解決するわけじゃないにしても
手がかりくらいは掴んでおきたい、かも?

235 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2013/02/08(金) 23:56:59 ID:???
C

Aは論外として、Bは…個人的心情でもあるんだけど「迷うことは悪くない」と思うんだよね。
迷って迷って悩んで悩んで答えが出ることってあると思うから。大事なのは「正しく迷う」ことでしょ。
というわけで、その迷いを掘り下げるのが良いと思うのですわ。

236 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/02/09(土) 00:01:45 ID:???
C【ピココール】を踏まえトニーニョの過去に少しでも踏み込んだ方が良いと思いました。

237 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/03/16(土) 11:00:51 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
どうにか月一更新から脱却したい今日このごろです!
それでは早速、>>232の選択については……

>>235 傍観者  ◆YtAW.M29KM様、>>236 さら ◆KYCgbi9lqI様、お二方の案を採用させていただきます!
それぞれCP3を進呈いたします。

>>235
はい、「迷う」ことと「真剣に問題と向き合う」ことは決して遠い位置にあるわけではありませんからね。
その二つが交差できるような道筋を見つけてあげられればと思います。
独りで間違えた迷い方をしてしまうと出口が見えませんし、挙句に「迷わない」と「考えない」が
どこかでイコールになってしまったりすることも、ままありますからね。

>>236
良いタイミングでのピココール、ありがとうございました。
もしAが選択されていたら、もう少し面倒な道筋になっていたかもしれません。

238 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/03/16(土) 11:01:53 ID:???

C「……お前、何を怖がってんだ」

***


「……ッ!!」

その一言がトニーニョに齎した効果は激甚というに相応しいものであった。
地に伏したまま森崎を見上げようとする、険しい顔は変わらぬ。
しかしその表情の意味は、常の懊悩に満ちてみえる渋面では、既にない。
もとより白く、日に焼けて僅かに赤い肌は今や蒼白を通り越し、濁った血の皮の下に澱み溜まるが如く黝い。
見開かれた瞳はふるふると焦点の定まらぬまま眼前の森崎を、あるいはその存在する空間を写そうと彷徨っている。
怒りではない。煩悶ではない。真実を射貫かれた痛みでも、恥辱でも苦衷でもない。
小さく、小さく首を振りながら微かに後ずさりを試みる男の、その顔に浮かんでいたのは、
森崎が言ってのけた通りの、恐怖である。

「……、」

薄い唇が、荒い呼吸の中で何事かを紡ごうと開かれる。
しかしトニーニョの言葉は、声にならぬ。
欠けた歯車を、あるいは磨り減った石臼を無理矢理に回すような、手応えのない掠れた音だけが、森崎に届く。
森崎が、手を伸ばす。
触れれば砂となって消えてしまいそうな音の塊を拾い上げるように。
手を伸ばして、問いかける。

「何だ。何が言いたい。聞くぞ、俺は聞くぞ、トニーニョ」
「……、……、」

しかしトニーニョは森崎の、その立ち姿の影の中でただ首を振り、その影だけを見上げ慄き、
やはり声にならぬ何事かをほとんど悲鳴のように呟きながら、伸ばされた手を、払いのけた。

239 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/03/16(土) 11:02:53 ID:???
「おい、トニ―――」

やがてゆらりと立ち上がり、己に背を向けたトニーニョに駆け寄ろうとした森崎が、足を止める。
その耳に、音が聞こえていた。
火にくべられた詩篇の、灰となって崩れるような音は無論、トニーニョの唇の間から漏れる音だった。
声ならぬ声の中、ただ一言だけ形をなして森崎が聞いたそれは、

「……オル、ヘス。……もう、ゆるして、くれ……」

それきり、言葉は震える音になり、音は遠ざかっていく。
ふらりふらりとよろめきながら、勝負がついたと近づいてこようとする荒くれどもを、
ほとんど身を預けるようにしながらかき分けて、トニーニョは鍛錬場を出ていこうとする。
決然たる意思もなく、確固たる意志もなく、幽鬼の如き形相でただその場から離れようとする背は、
逃亡者の、それだった。



※ガッツが20減少。
体術が26上がりました。


******


トニーニョがスキル『オルヘスの亡霊』を獲得しました。

種別:パッシブ
消費ガッツ:-
効果:このスキルが効果を発揮する限り、トニーニョを訓練時に誘うことができない。


******

240 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/03/16(土) 11:03:58 ID:???
******


※称号が『親切な拳士』になりました。

スキル『体捌き』を獲得しました。
種別:パッシブ
消費ガッツ:-
効果:SPD値を常時+10する。


******


現在のガッツ:125
剣術:146 馬術:90 体術:88 魅力:78 評価:84
ATK:236 DEF:244 SPD:188 ini:37


******

241 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/03/16(土) 11:04:59 ID:???

*D26.11月 「親切な拳士」森崎有三
メインイベント


『Get Ready』

.

242 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/03/16(土) 11:05:59 ID:???

十一月十日、快晴。
突き抜けるような青空と身の引き締まるような肌寒さの同居する、晩秋の一日であった。

「うー……こう冷えてくると、ホットワインが恋しくなるな。温いやつを、きゅーっと……」
『ほらほら、出店を覗くのは後にしてよね! いい席、取られちゃうでしょ』
「ちぇ」

舌打ちした森崎が立つのは、フェンネル運動競技公園の一角である。
遮蔽物なく開けた平地を吹き抜ける風は、爽やかに冷えている。
かじかむ指先を擦り合わせながら周りを見渡した森崎が、しみじみと呟いた。

「しっかし、まだ昼前だってのに大した人出だな」
『なんたって、お祭りだからね』
「祭り、ねえ……まあ、祭典と名がついちゃあいるがよ」

ひとりごちた森崎を、何人もの人間が追い抜いていく。
中心街の大通りとも見紛うような人のうねりは、急くように一点へと吸い込まれていく。

『ほら、早く!』
「へいへい」

促された森崎の足もまた、人波と同じ場所を目指している。
行く先、聳え立つ石白色の威容は、古式ゆかしいオリンピア様式を模したものである。
南トルキアの誇る貿易都市ドルファンがその財と文化を結集したそれこそは、ドルファン王立運動競技場。
スタジアムと呼び習わされるその堂々たる建築がこの連日、首都城塞の紛れも無い主役であった。

スポーツの祭典、四日目。
マラソンと並ぶ競技の華、六アルパン短距離走の王者を決める一日が、始まる。


***

243 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/03/16(土) 11:07:00 ID:???

「おいおいおい、何つー広さだよ! てか俺ら、今どこにいるんだ!?」
『うわー……話には聞いてたけど、実際に入ってみるとスゴイねえ……』

スタジアムに入るやいなや思わず声を上げた森崎を、しかし殊更に咎める者はいない。
周囲の半分は森崎と同じように目を丸くしていたし、残りの半分はそんな彼らをにやにやと見守っている。
この反応そのものが、つまりは一つの名物なのだろう。
無理もない、と言えた。
巨大な楕円を描くフィールドとトラックを取り囲み、半ばまでが観客で埋まっているすり鉢状の客席は
文字通りの見渡す限り、どこまでもどこまでも続いているようにすら思える。
果てしなく広い石造りの白は晩秋の陽光を照り返して目を晦ませ、しかし見下ろせば遥か眼下にあるはずの
フィールドの赤土色は圧倒的な存在感をもって迫ってくるように感じられるのだった。
行き交う人、席を埋める人、そしてフィールドで汗を流し戦う者たち。
それらの声と喧騒、思い思いの歌や歓声や、人の生きる音と熱とがその空間に籠り、反響していた。
空を切り取る無数の飾り柱はまるで檻のようにその音を閉じ込め、森崎の耳朶に終わりなく捻り入れようとする。

「すげえ! うるせえ! でけえ! くそ……すげえな!」

音に負けじと叫び返すような森崎の口元は、知らず笑んでいる。

『収容人数、一万二千人だってさ』
「いちまんにせん!? 軍が丸ごと入るじゃねえか! 何考えてこんなモン作ったんだ!?」
『決まってるじゃない』
「あ?」

ふわりと舞ったピコが、はぐれることのないように森崎の耳元に降り立つと言う。

『今日、この日のためだよ!』
「……だな!」

244 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/03/16(土) 11:08:10 ID:???
素直に頷くよりなかった。
それほどに、この場の熱気は凄まじい。
欧州に流れ着いて早幾年、スポーツという概念に対する熱狂をこうも直截に感じたのは、森崎にとって初の経験であった。

「こんなとこで、あいつらは勝負するのか……」

ことによれば、それは戦場の耳目を一身に集めたイリハ会戦の一騎討ちにも匹敵するものかもしれない。
少女たちの顔を思い浮かべながらしみじみと呟いた森崎の肩を、ぽんと叩く小さな手があった。

「ん? どうした」
『ねえ、あれって……』

叩くだけでは足りぬとばかりに耳たぶを引っ張ってそちらを向かせようとする相方を煩わしげに払いながら
振り向いた森崎の目に写ったのは、人波をかき分ける褐色の優男である。

「ネイ? あいつも来てたのか」

賑やかなところの好きな男だ。
顔を出していても不思議はない、と考えた森崎が声をかけようとする。

「おーい、ネイ!」

と、こちらに気づいたネイが―――

245 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/03/16(土) 11:09:11 ID:???

*ドロー

お祭り男 → ! card


※ ! と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。
結果によって展開が分岐します。

スペード→ 「森崎! ……一人か?」 ネイはしきりに後ろを振り返りながら近づいてくる。
ハート→ 「おんや、隊長さんかい」 珍しい。カルツと一緒のようだ。
ダイヤ・クラブ→ 「だーれ? ネイの知り合い?」 いつも通り女の子たちを引き連れている。
JOKER→ 「……ッ!」 驚いたように踵を返そうとする……!


246 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/03/16(土) 11:10:16 ID:JwemOyYA
******

といったところで、一旦ここまでとさせていただきます。

247 :森崎名無しさん:2013/03/16(土) 11:13:36 ID:???
お祭り男 →! card


248 :森崎名無しさん:2013/03/16(土) 11:14:47 ID:???
お祭り男 → ハート2


249 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/03/16(土) 11:19:46 ID:???
お祭り男 →  ダイヤ5

250 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/03/16(土) 11:21:17 ID:???
【リドロー】
お祭り男 →  ダイヤ3

251 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/03/16(土) 11:35:54 ID:???
誰かもう一回引いて貰えないかな?

252 :◆W1prVEUMOs :2013/03/16(土) 11:48:22 ID:???
【リドロー】
お祭り男 →  クラブK

253 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/03/16(土) 12:00:27 ID:???
【リドロー】
お祭り男 →  ハート5 もう一回。

254 :傍観者=出先でパスワード忘れた:2013/03/16(土) 13:23:29 ID:???
ハートでたし、スペードは無理に狙わなくていいかな?

255 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/03/16(土) 13:51:35 ID:???
スペードは出したいけど、ハートが出たし良いかなとは僕は思います。

256 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/27(土) 10:10:20 ID:???
***

ハート→ 「おんや、隊長さんかい」 珍しい。カルツと一緒のようだ。


「……カルツ?」
「なんじゃい、その顔は」

ネイの横にどっしりと存在感を示しているのは、果たしてオースティニア出身の傭兵、ヘルマン・カルツである。
色味の薄い麻の上下はいかにも質実剛健を旨とするこの男らしいが、洒脱に決めた褐色の優男の傍に立つ姿には
どうにも違和感が拭えない。
思わず怪訝そうな表情を浮かべた森崎に、カルツが軽く眉を寄せた。
言い訳をするほどのことでもない、と森崎が素直な言葉を口にする。

「いや、休みの日のネイの横に、ジェトーリオ以外の野郎がいるなんて珍しくてよ」
「おい、ヘンな名前出すなよモリサキ! そこら辺から涌いて出るかもしれないだろ!」
「成る程のう」

ほとんど反射的に抗議したネイを無視して、カルツが得心したように頷く。

「ま、ワシもたまたま、そこで会ってのう。独りやいう話やき、どうせなら一緒に観んかと誘ったんじゃ」
「独り? ……そりゃまた」

驚いたようにネイを見やると、優男はバツが悪そうに目を逸らして足元の小石を蹴る真似をしてみせる。

「うるさいなあ。俺だって百発百中ってわけにはいかない日もあるんだよ」
『要はフラレたんだね』
「へえ。約束がなけりゃナンパでもしてるのかと思ったぜ」
「お前は俺をなんだと思ってるんだよ! ……ま、しようと思ってたけど」

ぼそりと付け加えたネイが横目でカルツを見やる。

257 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/27(土) 10:12:02 ID:tXNS8Ias
「良さげな女のコ探してる内に、おっさんに捕まったってわけさ」
「やちもないのう」

カルツの殆ど首の見えぬまでに筋肉の盛り上がった肩をすくめる様は、積まれた岩塊がごろりと転がるようである。

「で? お前もナンパか?」
「ほう。隊長さんも若いのう」
「一緒にすんな! 俺は―――」


*選択

A 「知り合いが大会に出るんだ」 無難に答える。
B 「教え子が大会に出るんだ」 少しだけハンナに肩入れしてみる。
C 「気になるお嬢様がいてな」 まさかのリンダ推しである。
D 「頼まれたから顔を出しただけさ」 クールに答える。


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『4/27 17:00』です。



******

一旦ここまで。
大変お待たせいたしました。
月一更新にすらなっていない体たらくでお詫びのしようもありませんが、
再開させていただきます。

258 :◆W1prVEUMOs :2013/04/27(土) 10:19:50 ID:???

天才に勝ちたいと願うハンナの手助けをしたい

259 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/04/27(土) 12:09:45 ID:???
B素人とはいえコーチをした以上、ささやかながらでも応援してやらないとね。

260 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 11:50:07 ID:???
皆様、久々の選択にご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>257の選択については……

>>258 ◆W1prVEUMOs様、>>259 さら ◆KYCgbi9lqI様、お二方の案を採用させていただきます!
それぞれCP3を進呈いたします。


>>258
はい、現状での実力差はかなり開いていますが、それでも願わなければ差を詰めることはできません。
その支えになってあげて下さいませ。

>>259
森崎の応援する側には、決勝前に何らかのイベントが発生するかも……?
まずは予選に勝ってもらわないといけませんが。

261 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 11:51:08 ID:???
***

B 「教え子が大会に出るんだ」 少しだけハンナに肩入れしてみる。


「ま、お前のこった、知り合いが出てるとかそんなとこ……って、教え子ォ!?」
「はっはっは! 流石は隊長さんちや」

目を丸くしたネイと裏腹に呵々大笑したのはカルツであった。

「隊をまとめるゆう者ン、そんくらいの甲斐性がなくてはのう」
「そういう問題か? ……ま、いいけどよ。休みにヨロシクやってんのはお互い様だしな」

一瞬天を仰いだネイが、気を取り直したように森崎へと向き直る。

「で、可愛いのか?」
「ぐっ!? ……何で女だって決め付けるんだよ」

事も無げに言い放つネイに、顔色を変えたのは森崎だった。

『……そのロコツなリアクション、もう答えてるようなものだと思うよ』

呆れたようなピコの声にも反応する余裕がない。
そんな森崎に大きな黒い目をぱちぱちと瞬かせたネイが、カルツと目を見交わして言う。

「何でって、そりゃあお前。今日は短距離走が目玉の日だけどよ」
「おう。男性の部はもう、予選始まっちょるからのう。教え子が出るゆうなら、こがいなところで
 油売っとる暇なんぞありゃせんじゃろ」
「なにィ!?」

言われてみれば、遥か眼下のトラックでは幾人もの選手が定位置については駆け出し、
その度に周囲からは怒号のような歓声が響いている。

262 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 11:52:08 ID:???

「女性の部の予選はもう少し後だからな。関係あるとすりゃそっちだろ」
「ぐぬぬ……」
『……キミ、全然時間とか気にしてなかったよね。遅刻してたら大変だったよ』

小さな相方の呆れたような声が耳の後ろから伝わってくる。

「ま、間に合ったからいいんだよ!」
「……?」

思わず言い返した森崎に向けられたのは、ネイの怪訝そうな顔である。

「くぁ……」
『久々にやったねえ、こういうの』
「変なヤツだな。……ま、いいか。とりあえず前の方で席、探そうぜ。ついでにモリサキのお目当ても」
「ほうじゃのう。こがい遠くては隊長さんの子飼いもよう見えんきに」
「そういうんじゃねえよ! って、おい、聞いてるのかお前ら! 待てってば!」

にやにやと薄笑いを浮かべながら階段を下り始める二人の背を、森崎は慌てて追いかけるのだった。


******

263 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 11:53:09 ID:???

「さあて、そろそろ女性の部だな」
「まずは予選じゃのう」
「結局お前らと並んで観る羽目になるんだな……」

森崎たちが陣取ったのはすり鉢状に設置された観客席でも前列の、トラックにも程近い一席である。
この辺り既に大混雑で、さすがに席など取れなかろうと諦めていた森崎に救いの手を差し伸べたのは
見も知らぬ一般客であった。

「いやー、しかしお前って知らん内に結構有名人だったのな、モリサキ」
「イリハや剣術大会で活躍した傭兵隊長やち言われたと思うたら、すんぐに席が空いたきにねえ」
「……まあ、ありがてえ話だけどよ」

当の森崎はといえば、照れくさいやら実感が湧かぬやらで複雑な顔である。
周囲の視線はいまだにちくちくと森崎の横顔を刺激している。

『ほらほら、そんな顔してたらせっかく譲ってくれた人に申し訳ないでしょ! 笑って応える!』
「……」

肩に乗ったピコの言葉に、森崎はふうと溜息ひとつ。
呼気とともに感情を押し流して、気分を切り替える。
トラックに目をやれば、いよいよ最初の出場選手たちが控え室から出てくる頃合いだった。
思い思いに体を伸ばし、心身ともに最後の調整を始める彼女たちを見やりながら、ネイが言う。

「まあ、知り合いが出てるってんなら今更言うまでもないかも知れないけどよ、今日の競技についちゃ
 このネイ様が一応ひと通り解説させてもらうぜ」
「へえ……お前、スポーツ詳しいのか」
「意外やねあ」
「この日のためにちょっと勉強してきたんだよ! ……まさかモリサキとおっさん相手に披露することになるとは
 思わなかったけどな……とほほ」

264 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 11:54:09 ID:???
そういうことか、と肩をすくめて目を見交わす森崎とカルツ。
気のない様子にネイが食って掛かる。

「馬鹿野郎、陰での地道な努力とマメなフットワークがここぞってときに実を結ぶんだよ!」
「……そういうとこ、尊敬するぜ。実際」
「ワシにはわからん世界じゃのう」
「くっそォ……」

力説にも薄い反応に、ぐったりと肩を落とすネイ。

「もう解説してやんないぞ……」
『あ〜あ、拗ねちゃった』
「おい、悪かったって。機嫌直して、いっちょご披露願うぜネイさんよ」
「ほうじゃ、隊長さんと違うてワシは素人やき。詳しいもんがおると助かるぜよ」
「……そうか?」

口々にフォローする二人に、ネイが疑いの目を向けながらも口を開こうとする。

「まあ、そこまで言うなら……せっかく勉強してきたんだしな」
「おう、頼まあ」
「……んじゃ、簡単に行くぜ」

言ったネイが、トラックを見下ろして身振りを交えながら話し出す。

「まず、この競技は予選と決勝の二回に分けて行われて、優勝者を決めるんだ。
 決勝も今日やるけど、今から始まるのは予選だな」
「ふんふん」

頷く森崎。
実際のところ、ハンナにコーチをしたとはいえ競技や大会については素人同然である。

265 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 11:56:05 ID:???
「予選は全八組に分かれて行われる。それぞれの組で一等になった選手だけが決勝に進めるんだ」
「ほいたら、強いもん同士が予選で当たったら運が悪いゆうことになるがか」
「そこんとこは、過去の実績なんかに応じて組み分けされてるみたいだぜ。
 ま、去年の一位と二位が予選で潰し合ったりしちゃ盛り上がらねえしな」

なるほど、と頷いた森崎が内心で胸を撫で下ろす。
リンダもハンナも、子供の部では実績を残していると言っていた。
ならばいきなり予選から当たる心配はないだろう。
そんな思考がそもそも勝利を信じきっている者のそれであるかどうか、森崎は深く考えることをやめて
ネイの解説に耳を戻す。

「決勝は八人で、もちろん一発勝負だ。泣いても笑ってもここで決まり。
 勝てば英雄扱いだが、負ければ来年までリベンジの機会はないぜ」
「スポーツの世界ゆうがも、えっころ厳しいのう」
「で、肝心の競技だけどな」

と、ネイが再び身振りを交えて語り始める。


******

266 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 11:57:07 ID:???
******

※システムメッセージ※

競技はミニゲーム形式で行われます。
6つのセクションで判定を行いながらスコアを稼いでいくシステムで、ゴール時点で最もスコアが高い
(=タイムがいい)選手が優勝となります。

それぞれのセクションは

1.スタート
2.コーナー1
3.バックストレート1
4.バックストレート2
5.コーナー2
6.ホームストレート

という名称となっており、セクションごとの基本スコア判定式は

セクションスコア=基礎値*{1+(! numnum/100)}

※端数切り捨て。またダイスの00は100として扱う。

となっています。
またここに各種スキルの補正が加わります。
スキルによるダイス値の補正には上下限を定めません。
補正値は0以下、もしくは100以上となる場合があります。
つまりダイスの目によって基礎値の1.01〜2.00倍、スキルによって
それ以上もしくは以下のスコアが出ることになります。
それぞれのセクションスコアがすべて加算されることで、最終的なスコアとなります。

******

267 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 11:58:08 ID:???

「……てなわけだ」
「ふうむ、聞いておいてえかったちや。分かると分からんとでは身の入り方が違うきにねえ」
「ま、そう言ってもらえると解説した甲斐があるってもんだぜ」

得意げに胸を張る褐色の優男に、森崎も内心で感謝を贈る。

(おさらいしてくれて助かったぜ)
『……キミ、すっかり忘れてたね?』
「おっ、始まるぜ」

相方の小さな手が耳たぶを引っ張る感触を指先で払う森崎の眼前、選手たちがトラックの端に集合していく。

「予選一組か。さて、どんなもんかな」
『まあ、ハンナの話からするとお互い以外は目に入ってないみたいだったけどね』

スタートラインに立ち並んだ選手が見据えるのは楕円を描くトラックの対岸、六アルパン先のゴールライン。
その瞬間の栄光を目指して、自らの脚にすべてを賭けた女たちの戦いが始まる。
係員の持つ白旗が、雲ひとつない青空に向けて高々と掲げられ―――振り下ろされた。


******

268 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 11:59:15 ID:???

ここまでの予選結果


予選一組
一位:ピエラ・ディリービオ(スコア699 基礎値85)

予選ニ組
一位:スザンナ・ラバネッリ(スコア772 基礎値87)

予選三組
一位:シルヴィ・プティ(スコア771 基礎値82)

予選四組
一位:テレーザ・タッキナルディ(スコア694 基礎値81)

予選五組
一位:デボラ・タルデッリ(スコア885 基礎値83)

予選六組
一位:ナタリー・リザラズ(スコア796 基礎値84)


※事前にGM側で各6回のダイスを振った結果です。
 ここまでの予選一位であるタルデッリ選手にはスキル『ディフェンディングチャンピオン』が付与されます。
 レース後半(バックストレート2・コーナー2・ホームストレート)でダイスにプラス15の補正が加わります。

******

269 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 12:00:15 ID:???

「やっぱ去年の優勝者は違うな……別格の走りってやつだ」
「ほうじゃのう、ワシら傭兵隊の男どもの中に入ってもええ勝負になるゆうがは大したもんぜよ」
「……」

ネイとカルツが褒めるのは予選五組に出場したタルデッリという名の選手である。
事前の予習を欠かさなかったネイによれば、彼女は昨年度大会の優勝者であるという。
その実績に違わぬ見事なレース運びで、ここまでの予選を通じて圧倒的なタイムを残している。

「ん? どうしたモリサキ、微妙な顔して」
「いや……なんでもねえ」

言った森崎の脳裏を過ぎるのは、疾走する二つの影である。
ひとつは、ハンナ。
彼女の走りは、練習を見た限りでは今のトップ選手にも殆ど遜色ない。
森崎のアドバイスによって改善された部分も含めれば、八割方の勝利は望めるだろう。
しかし、と。
森崎は思う。
もう一つの影は、次元が違う。
そのことを、改めて思い知らされていたのである。
リンダ・ザクロイドの速さは、昨年度の優勝者ですら一蹴する。
それほどの差が、あった。

『何考えてるかはわかるけどさ……勝負は時の運っていうじゃない。キミにできるのは精一杯応援するくらいだよ』
「……かもな」

小さく頷いた森崎の声は、周囲の歓声にかき消されてネイやカルツには届かなかったようだった。

270 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 12:01:24 ID:???
「しかしモリサキ、お前の教え子とやらはいつ出てくるんだ? もう二組しか残って……おっ」
「次が出てきたのう。……と」
「……? どうした、おっさん」
「ネイちゃんよ、どうやらお目当てが来たらしいねや」
「なにィ? どうしておっさんにそんなことが分かるんだよ」
「見てみい。これまでと目ぇが違うきに」
「……なるほどな」

一見して納得するネイの様子も、それ以前の会話も、森崎に通じているかどうかは怪しい。
彼の耳目が誰に集中しているのか、誰の目にも明らかだった。
予選第七組。
エントリーの中に、その名があった。

「ハンナ……頑張れよ」

見つめる先に、少女は立っている。


******

271 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 12:02:25 ID:???
******


エントリーNo.1
ハンナ・ショースキー
基礎値:98
スキル:
『スタート得意』:スタートでのダイスを10プラス。
『逆境でのド根性』:ダイスが30以下だった場合、次のセクションでのダイスに30プラス。
『カーブが苦手』:コーナー1でのダイスが10ダウン。
『持久力に不安』:バックストレート2のダイスが10ダウン。


エントリーNo.2
ヨセン・モブコ
基礎値:71
スキル:なし

エントリーNo.3
ヨセン・モブーナ
基礎値:65
スキル:なし

エントリーNo.4
ヨセン・モブエル
基礎値:80
スキル:なし

272 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 12:03:32 ID:???
エントリーNo.5
ヨセン・モブリウス
基礎値:77
スキル:なし

エントリーNo.6
ヨセン・モブクレーブ
基礎値:68
スキル:なし

エントリーNo.7
ヨセン・モブレフスカヤ
基礎値:74
スキル:なし

エントリーNo.8
ヨセン・モブディナン
基礎値:70
スキル:なし


******

273 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 12:05:15 ID:???
******

※予選は判定をゴールまで一気に行います。
 決勝ではセクションごとに判定を行います。
 ★ごとにそれぞれ、 ! と numnum の間のスペースを消して数値を出して下さい。

 なお、ハンナのスキル『逆境でのド根性』の効果はEP/CPによる補正後、
 および他スキルによる補正前のダイス値に対して判定が行われます。


*スタート
ハンナ セクションスコア1= 98*{1+(! numnum【+10】/100)}

モブコ  セクションスコア1= 71*{1+(! numnum/100)}
モブーナ  セクションスコア1= 65*{1+(! numnum/100)}
モブエル  セクションスコア1= 80*{1+(! numnum/100)}
モブリウス  セクションスコア1= 77*{1+(! numnum/100)}
モブクレーブ  セクションスコア1= 68*{1+(! numnum/100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア1= 74*{1+(! numnum/100)}
モブディナン  セクションスコア1= 70*{1+(! numnum/100)}

*コーナー1
ハンナ セクションスコア2= 98*{1+(! numnum【−10】/100)}

モブコ  セクションスコア2= 71*{1+(! numnum/100)}
モブーナ  セクションスコ2= 65*{1+(! numnum/100)}
モブエル  セクションスコア2= 80*{1+(! numnum/100)}
モブリウス  セクションスコア2= 77*{1+(! numnum/100)}
モブクレーブ  セクションスコア2= 68*{1+(! numnum/100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア2= 74*{1+(! numnum/100)}
モブディナン  セクションスコア2= 70*{1+(! numnum/100)}


274 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 12:06:16 ID:???

*バックストレート1
ハンナ セクションスコア3= 98*{1+(! numnum/100)}

モブコ  セクションスコア3= 71*{1+(! numnum/100)}
モブーナ  セクションスコア3= 65*{1+(! numnum/100)}
モブエル  セクションスコア3= 80*{1+(! numnum/100)}
モブリウス  セクションスコア3= 77*{1+(! numnum/100)}
モブクレーブ  セクションスコア3= 68*{1+(! numnum/100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア3= 74*{1+(! numnum/100)}
モブディナン  セクションスコア3= 70*{1+(! numnum/100)}

*バックストレート2
ハンナ セクションスコア4= 98*{1+(! numnum【-10】/100)}

モブコ  セクションスコア4= 71*{1+(! numnum/100)}
モブーナ  セクションスコア4= 65*{1+(! numnum/100)}
モブエル  セクションスコア4= 80*{1+(! numnum/100)}
モブリウス  セクションスコア4= 77*{1+(! numnum/100)}
モブクレーブ  セクションスコア4= 68*{1+(! numnum/100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア4= 74*{1+(! numnum/100)}
モブディナン  セクションスコア4= 70*{1+(! numnum/100)}



275 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/29(月) 12:07:55 ID:KB8+eeos

*コーナー2
ハンナ セクションスコア5= 98*{1+(! numnum/100)}

モブコ  セクションスコア5= 71*{1+(! numnum/100)}
モブーナ  セクションスコア5= 65*{1+(! numnum/100)}
モブエル  セクションスコア5= 80*{1+(! numnum/100)}
モブリウス  セクションスコア5= 77*{1+(! numnum/100)}
モブクレーブ  セクションスコア5= 68*{1+(! numnum/100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア5= 74*{1+(! numnum/100)}
モブディナン  セクションスコア5= 70*{1+(! numnum/100)}

*ホームストレート
ハンナ セクションスコア6= 98*{1+(! numnum/100)}

モブコ  セクションスコア6= 71*{1+(! numnum/100)}
モブーナ  セクションスコア6= 65*{1+(! numnum/100)}
モブエル  セクションスコア6= 80*{1+(! numnum/100)}
モブリウス  セクションスコア6= 77*{1+(! numnum/100)}
モブクレーブ  セクションスコア6= 68*{1+(! numnum/100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア6= 74*{1+(! numnum/100)}
モブディナン  セクションスコア6= 70*{1+(! numnum/100)}


******

一旦ここまでとさせていただきます。
予選で負けるとわりと展開に困るので、確率的には稀ですが皆様よろしくお願いいたしますw


276 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/04/29(月) 12:27:41 ID:???

*スタート
ハンナ セクションスコア1= 98*{1+( 76 【+10】/100)}


277 :◆W1prVEUMOs :2013/04/29(月) 12:29:44 ID:kgsaB6Oc

モブコ  セクションスコア1= 71*{1+( 76 /100)}
モブーナ  セクションスコア1= 65*{1+( 10 /100)}
モブエル  セクションスコア1= 80*{1+( 59 /100)}
モブリウス  セクションスコア1= 77*{1+( 49 /100)}
モブクレーブ  セクションスコア1= 68*{1+( 22 /100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア1= 74*{1+( 68 /100)}
モブディナン  セクションスコア1= 70*{1+( 15 /100)}


278 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/04/29(月) 13:26:14 ID:???

*バックストレート1
ハンナ セクションスコア3= 98*{1+( 74 /100)}


279 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/04/29(月) 16:39:29 ID:???

モブコ  セクションスコア3= 71*{1+( 17 /100)}
モブーナ  セクションスコア3= 65*{1+( 94 /100)}
モブエル  セクションスコア3= 80*{1+( 79 /100)}
モブリウス  セクションスコア3= 77*{1+( 82 /100)}
モブクレーブ  セクションスコア3= 68*{1+( 35 /100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア3= 74*{1+( 91 /100)}
モブディナン  セクションスコア3= 70*{1+( 70 /100)}


280 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/04/29(月) 22:33:02 ID:???

*バックストレート2
ハンナ セクションスコア4= 98*{1+( 44 【-10】/100)}


281 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/04/30(火) 08:44:20 ID:???

モブコ  セクションスコア4= 71*{1+( 66 /100)}
モブーナ  セクションスコア4= 65*{1+( 99 /100)}
モブエル  セクションスコア4= 80*{1+( 70 /100)}
モブリウス  セクションスコア4= 77*{1+( 87 /100)}
モブクレーブ  セクションスコア4= 68*{1+( 40 /100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア4= 74*{1+( 37 /100)}
モブディナン  セクションスコア4= 70*{1+( 62 /100)}


282 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/04/30(火) 15:36:43 ID:???

*コーナー2
ハンナ セクションスコア5= 98*{1+( 25 /100)}


283 :さら ◆KYCgbi9lqI :2013/04/30(火) 22:35:31 ID:???

モブコ  セクションスコア5= 71*{1+( 80 /100)}
モブーナ  セクションスコア5= 65*{1+( 51 /100)}
モブエル  セクションスコア5= 80*{1+( 03 /100)}
モブリウス  セクションスコア5= 77*{1+( 99 /100)}
モブクレーブ  セクションスコア5= 68*{1+( 70 /100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア5= 74*{1+( 80 /100)}
モブディナン  セクションスコア5= 70*{1+( 25 /100)}


284 :◆W1prVEUMOs :2013/04/30(火) 22:43:52 ID:???

*ホームストレート
ハンナ セクションスコア6= 98*{1+( 99 /100)}


285 :◆W1prVEUMOs :2013/04/30(火) 23:01:30 ID:???

モブコ  セクションスコア6= 71*{1+( 30 /100)}
モブーナ  セクションスコア6= 65*{1+( 36 /100)}
モブエル  セクションスコア6= 80*{1+( 93 /100)}
モブリウス  セクションスコア6= 77*{1+( 10 /100)}
モブクレーブ  セクションスコア6= 68*{1+( 68 /100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア6= 74*{1+( 97 /100)}
モブディナン  セクションスコア6= 70*{1+( 08 /100)}


286 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/30(火) 23:36:36 ID:???
皆様、ありがとうございました!
やはり現状で長々とした連続判定はなかなか厳しいですね。
見通しの甘さを反省しつつ、次回以降の参考とさせていただきます。

さて、コーナー1がスキップされていますが(見辛くて申し訳ありません…)、
該当部分はGM側でさくっと振ってしまいますね。


*コーナー1
ハンナ セクションスコア2= 98*{1+( 93 【−10】/100)}

モブコ  セクションスコア2= 71*{1+( 80 /100)}
モブーナ  セクションスコ2= 65*{1+( 12 /100)}
モブエル  セクションスコア2= 80*{1+( 23 /100)}
モブリウス  セクションスコア2= 77*{1+( 06 /100)}
モブクレーブ  セクションスコア2= 68*{1+( 45 /100)}
モブレフスカヤ  セクションスコア2= 74*{1+( 86 /100)}
モブディナン  セクションスコア2= 70*{1+( 91 /100)}


287 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2013/04/30(火) 23:37:36 ID:???
******

といったところで、本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

288 :森崎名無しさん:2015/07/05(日) 11:26:43 ID:???
思うところあって読み返したのですが
無茶苦茶楽しかった連載時を思い出しました。
連載再開というのは現実的でないのかもと思いますが
とにかく楽しませてもらったことに感謝。ありがとうございます。

289 :#ab:2015/07/07(火) 23:03:46 ID:???
再開して欲しいね。

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