キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】

1 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/10/28(日) 15:26:09 ID:???

本作は恋愛SLG『みつめてナイト』を基にした二次創作です。

騎士の時代が終わりつつある南欧は架空の小国、ドルファン王国。
戦火の迫るこの国に傭兵として降り立った東洋人、森崎有三の体験する
波乱万丈の三年間を描きます。


80 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/09(金) 23:21:04 ID:???
B少しは警戒した方が良いかもね。

81 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:12:29 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>75の選択については……

>>78 ◆9OlIjdgJmY様のご回答を採用させていただきます!
はい、まだリンダシナリオの導入ですし、いきなり罠選択肢というわけではありませんね。
変わったばかりの人物称号が揺れることはあるかもしれませんけど。
CP3を進呈いたします。

ジーンはシナリオプロットも用意しておりませんが、事件も何もなしでただ一緒に出かけて
ワイワイするとかお酒を呑むとか喧嘩するとかそれなりの関係になってみるとか、だけでよければ
チャレンジで可能ということにしておきますw

……あれ、もしかしてそっちの方が需要あるんじゃ……
そのうちGMは考えるのをやめた。


>>79
そうですね、親虎のいびきが聞こえるような穴でなければ積極的に入っていくのもいいと思います。
中盤以降はヤバげな選択も次第に増えてくるかもしれませんが……!

>>80
今回は特段の危険はありませんでしたが、引っ掛かりを覚えたらピココールというのは
極めて確かな攻略手段だと思います。
ロールバックのない本作では転ばぬ先の杖が重要ですからね。


82 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:13:30 ID:???
***

A「……わーったよ」


ジーンの強引な誘いに、半ば諦めるように森崎が肩をすくめる。
途端、ジーンがにかりと笑う。

「よっしゃ! じゃ、そっちから上がってこいよ」

その笑みは、しっかりと化粧をすれば男たちを一網打尽にできるような整った顔立ちを崩すような、
どちらかと言えば男臭い笑い方ではあったが、ジーンという女にはそれが妙に似合っている。
決して男装のせいばかりではない、彼女らしさというものに近いのだろう、などと考えながら
森崎が踏み板から御者台に上がる。

「ほいよ、っと……結構高いんだな」
「そりゃ周りが見えねえと危ないからな」

言われ、改めて周りを見回す森崎。
なるほど確かに、高い視点からの世界はいつもより遥かに広く感じられる。

「アトレ、スオウ、ちょっと余計な荷物を載せるぜ。我慢してくれよな」
「ちぇ、ひでえ言われようだぜ」
「はは、まあこいつらにとっちゃお前一人なんざ軽いもんだけどな」

言って前方、ふるりと長い尾を揺らす馬たちを見やったジーンの目は、
ほとんど慈愛と呼んでも差し支えないような優しさを湛えている。

83 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:15:11 ID:???
「……へえ」
「あ? どうかしたか」
「いや、なんでもねえよ」
「変な奴だな。……出すぞ、落ちんなよ」

右の一頭、アトレと呼ばれた方はそんな目線を知ってか知らずか、耳をくるりと動かして歯を剥いた。
左のスオウは我関せずとばかりに鼻を鳴らしている。
ジーンが手綱を軽く揺らすと、そんな二頭がぴたりと揃って歩を進めるのだった。


***


がたごとと、車輪が石畳を噛むたびに体が揺れる。
高級な馬車の面目躍如というべきか、乗合馬車とは比べ物にならないほど微かな揺れではあったが、
それでもまったくの静謐というわけにはいかない。
直接乗馬するときのように縦に揺られる感覚ではなく、微妙に一定でない加速が体を前後に揺らす。
睡魔を誘うようなリズムである。

「……」

訓練による披露が泥のようにこびりついた身体には、まさに甘美な毒であった。
こくりと、つい船を漕ぎそうになる森崎。

「うわ、おいばか寄っかかんな」
「……ああ、すまん」

御者台は本来、一人用の仕事場である。
見栄のためか、それとも他に何か実用性があるのか、比較的大きなスペースを取ってあるこの馬車のこと、
ひどく狭苦しいということはないものの、二人が並んで座ればどうしても互いの体温を感じるような
距離にならざるを得ない。
微かな温もりがまた森崎を微睡みへと誘おうとしたとき、ジーンが口を開いた。

84 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:16:12 ID:???
「この間は済まなかったな」
「……この間?」

僅かな間を置いたのは、小さな欠伸を噛み殺したせいである。

「ああ、どっかの男装美人が出会い頭に因縁つけてきたことか」
「うちのお嬢がいきなり突拍子もないこと言い出して、だ。ぶっ飛ばされてえのかこの野郎」

ぶっきらぼうに言い放ちながらも、ジーンの口元は上がっている。
どうやら今日は機嫌がいいようだった。

「というかお前、朝弱い方のヤツか?」
「あァ?」

唐突な言葉に、ジーンが怪訝な顔をする。
先ほどの意趣返しだと気づかれる前に、森崎が先を促した。

「で、こないだがどうしたって」
「ああ。や、悪気はねえんだ、お嬢には」
「だろうな」

適当な相槌。
しかし半ばまではその通りであろうとも思っている。
リンダという少女の瞳や言葉に、悪意や嘲弄の響きはなかった。

「ただ、まあ……どうにも言葉が足りねえ。それでよく相手を怒らせちまってな」
「はは」

思わず失笑する。
直截すぎる物言いは、森崎自身が経験したことである。

85 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:17:23 ID:???
「なまじ頭が回りすぎるんだな。だから二手、三手先だけ見て話をしちまう。
 次の手を選ぶ余地がねえなら、口にする意味もねえとか考えてんだ」
「……」

がたん、と車体が揺れた。
前を行く馬、アトレとスオウはぶるりと尻を振るのみで、特に気にした風もない。

「あのお嬢さん、困ったことに相手もそれができて当たり前だと思っててな」
「難しいだろうな」
「難しいよ。だが前置きも説明も斟酌もねえ。先回りして次の選択肢だけ相手に放り投げる悪い癖が、
 いくら言っても治らねえ。お嬢にとっちゃチェスか何かと同じ括りなんだ、相手と話すってのは」
「……そりゃもう、会話じゃねーだろ」
「じゃねえな、実際」

苦い笑みが、声音にまで滲んでいる。

「お前もこの間、無茶な頼みごとを押し付けられたと思っただろ。勝手なこと言いやがって、とか」
「まあな」
「お嬢としちゃな、ありゃ交渉のテーブルを用意したつもりなんだ」
「……はァ?」

さすがに看過できず、疑念を漏らす森崎。
先日の一件は指示や命令、強要の類ではあっても交渉と呼べるものではないと、記憶が告げていた。
ジーンがちらりと森崎を見て、薄い唇を歪める。

「まあ、言いたいことはわかるぜ。……つーか、いつものことだからな」
「……」
「お嬢……いや、ザクロイドの人間が生きてるのは、打算と腹芸と算盤勘定が服着て歩いて、
 年がら年中互いの足を引っ張り合ってるような世界でよ」

冷たい風は、歩くよりも強く森崎の顔に吹き付ける。
肩に伝わる微かな温もりだけが、救いだった。

86 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:18:24 ID:???
「ま、そんな連中の常識じゃ、無理も無茶もまず単に様子見でふっかけてるだけ、
 鵜呑みにする奴が馬鹿ってなもんでよ。袖にするフリされるフリ、段々と見返りをチラつかせて、
 ようやくそこから話が始まるってわけだ」
「……」

ふん、と息をつく森崎。
言葉を返すことはない。

「あん時、お前があっさり話を蹴ったのも……蹴ったんだよな? まあ当然だとは言ってたぜ。
 今の時点で、しかもあの要求でザクロイドが用意できる対価は、お前の立場じゃ大した益がねえ。
 実は交渉の材料がありませんでしたの、なんて笑ってやがったよ」
「……何だそりゃ」
「ま、そんな顔すんなって」

森崎の渋い顔に、ジーンが破顔する。

「直感だか計算だか知らねえが、あれで顔繋ぎの印象は悪くなかったってことみたいだぜ。
 俺としちゃ、単に面倒を避けただけって札に銀貨一枚だがよ」

悪戯っぽく言うジーンに、森崎は―――

87 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/10(土) 13:21:19 ID:/ZNkLYhM

*選択

A「……さてね」 煙に巻く。

B「俺の勘も捨てたもんじゃねえな」 勘だという。

C「ま、そんなとこだろうとは思ってたよ」 計算だと主張する。

D「大当たりだ。ほれ、持ってけ」 銀貨を取り出す。


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/10 24:00』です。


******


こんな感じで10月はあっさり目に過ぎていきます、といったところで
まだ早い時間ではありますが、本日の更新はこれまでとさせていただきます。
お付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

88 :◆W1prVEUMOs :2012/11/10(土) 15:20:27 ID:x6/rndoU

勘ピューターのスキルがゲット出来れば有利かもと思い

89 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/10(土) 21:14:57 ID:???
B傭兵が最後に頼るのは勘と言うか嗅覚ですからね。

90 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/10(土) 23:59:09 ID:???
A まあ実際、勘でも計算でもなく、正直な心情喋っただけですし。

91 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:26:17 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>87の選択については……

>>90 ◆9OlIjdgJmY様のご回答を採用させていただきます!
ですよねー、ということでズバッと斬っていただきましたw
CP3を進呈いたします。


>>88
スキル名:勘ピューター Lv1
種別:パッシブ
消費ガッツ:-
効果:行動判定の際に! numnumダイスを振り80以上が出れば結果が一段階良くなる。
69以下の場合は結果が一段階悪化する。この判定にはCP/EPによる数値加減ができない。
成功時に経験値が加算され、一定値が貯まるとLvアップする。
イベントで『ミスター』と呼ばれる偉大な人物に会うことができれば更なる強化も……!?

……勘をスキルにするのは、やってみると難しいものですねw
しかしながら面白いご提案ありがとうございます。
CP1を進呈いたします。


>>89
はい、危機察知能力は経験に裏付けされた勘、とでもいうべきものですしね。
実際のプレイ上においても、難しい局面で最後にモノを言うのはプレイヤーの皆様の
冴え渡る勘働き、という部分はあります。

92 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:27:43 ID:???
***

A「……さてね」 煙に巻く。


言った森崎の、しかしそれは偽らざる本音である。
結果的にどう評されているにせよ、あの時点で相手方の事情を汲み取って話をしていたわけではない。
さりとて直感と呼べるような閃きに従ったわけでもなく、ただ当然と思える対応をしただけである。
あさっての方を向きながら空惚ける森崎に、今度はジーンが渋い顔をする番だった。

「何だそりゃ」
「はは」

笑った森崎が、ぐ、と背を伸ばす。
凝り固まった筋が伸びていく感覚を楽しみながら、だしぬけに口を開く。

「で、俺はどこに連れてかれてるんだ?」
「お、気づいてたのか」
「当たり前だ」

がたごとと、馬車が揺れる。

「わざわざ城の北側を回りやがって、キャラウェイ通りなんざとうに通り過ぎてるだろ。
 もうマリーゴールド近くまで来てるじゃねえか」
「お前、この春にドルファンに来たんだろ? よく分かるな」
「そりゃな……」

と、辺りを見渡した森崎の目に映るのは、閑静な、というよりは独特の静謐に包まれた邸宅街である。
道の両脇にはどこまでも高く続く塀、点在する緑は手入れの行き届いた生垣だった。
猥雑なシーエアーや庶民の家々が立ち並ぶフェンネル、牧歌的なカミツレではありえない光景であり、
かといって城央近くの喧騒や人通りもないとなれば、いかに新参者の森崎といえど迷う余地がない。

93 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:29:03 ID:???
「そもそも、お前が俺なんかを送ってくれる理由、ないだろ」
「まあな」

長い銀髪を夕陽の朱に染めながら、ジーンはどこまでも悪びれない。
口笛すら吹き始めたその横顔に、森崎が小さくため息をついた。
肩から伝わる体温は、それでも秋の夕暮れどきには心地いい。


***


純白の馬車がようやくその足を止めたのは、とある広大な敷地の片隅である。
国立公園の一角のような光景に、森崎がジーンに尋ねる。

「……ここは?」

一体どれほどの広さを持つのだろうか。
面積では森崎たちが日々の鍛錬を行なっている訓練所に勝るとも劣らないように見える。
決定的に違うのは、その質である。
荒れ放題の訓練所とは違い、この敷地には小石一つ見当たらない。
一面に広がった芝生は丁寧に刈り込まれ、整然とその背を揃えていた。

「ここか? ま、ザクロイドが持ってる運動場だ」
「なにィ!?」

愕然とジーンを見やる森崎。
嘘や冗談を言っている顔ではなかった。

「デカいことはいいことだ、ってのがお館様の信条でな」
「それにしたって……」

94 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:31:17 ID:???
見渡す限りの芝生は、夕暮れの下で奇妙な紫色へとその姿を染め変えている。
紫の絨毯は遥か視界の果てまで続くようにすら思えた。

「ハデなことはいいことだ、ってご主人様の信条が出てねえだけマシさ」
「……?」

そう言ったジーンの声音は、どこか苦々しいものを含んでいるように聞こえた。
しかし森崎が何かを聞き返すよりも早く、ジーンがそのなめらかな曲線を描く顎で遠くの方を指す。

「ほら、あっちだ」
「……あれは、リンダ……か?」

陽は既に落ちかけている。
薄暗い視界の中、言われてみれば動く影がかろうじて幾つか見える。
目を凝らせば、件の少女であるようにも思えた。

「……よくは見えねえが、そうなのか?」
「ここからじゃ遠いか。よし、もう少し近づくぞ」

言うが早いか、ジーンは手綱を手近な樹に括りつけると芝生の縁を沿うように歩き始める。

「何やってんだ、置いてくぞ」
「おい、俺には何がなんだか……」
「しっ、ここから先は大声出すなよ。お前に気づかれると話がややこしくなるからな」
「はァ!?」

胡乱げな森崎の態度を気にすることもなく、ジーンが先に歩いていく。
仕方なくその後を追いながら、森崎が問う。

「……で、何がしたいんだ、お前は」

言われた通りに声を潜めるあたりが人の好さというものであっただろうか。

95 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:33:04 ID:???
「一度、見といてほしかったんだよ」
「あ?」
「天才ってやつを、さ」

何を、と問いを重ねようとした森崎の耳に、そのとき飛び込んできたのは男の声である。
森崎の無論知らない、しかし妙に耳に馴染んだ声音。
怒号だった。
それも、感情に任せたものではない。
相手の精神にどう響き、どう動かすことができるかを計算し尽くした大喝。

「……教練か」
「ああ」

聞き覚えがあるのも当然である。
それは森崎自身もまた毎日のように発している種類の声だった。
叩き込む、という言葉の意味を、身体のみならず精神にも浸透させるための大音声。
あるときは限界に近い疲労から半ば強引に奮い立たせ、あるときは無駄な反骨心や自尊心を打ち砕いて
無意識のレベルにまで機械的な反復を刷り込む、ほとんど人格の改造に近いそれは、
日常に生きる人をいくさという非日常へと適応させるための儀式である。
人が己で定めた枷を打ち壊し、環境が厳格に要求する新たな枠をその首に嵌めてやって初めて、
多くの人間は情動の外側で人を殺せるようになる。
裏を返せば、そうでなければ大多数の人は、人の外側に出られない。

「―――、―――ッ! ―――!!」

そして今、人をそうでないものに変えるための声音をその身に受けているのは、一人の少女である。

96 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:36:02 ID:???
暮れゆく空の色を写し取って紫色から群青色へと変わりゆく芝生の中に、
ぽっかりと穴の開いたように赤土のトラックがある。
その赤土とほとんど変わらない色に染まって倒れ伏すのが、リンダ・ザクロイドだった。
細い身に纏った薄い練習着も、そこから伸びる白く長い手足も、後ろできつくまとめられた長い髪も、
そのすべてが土に汚れて酷い有様である。
流れ出す汗は土を泥に変え、べったりと全身に貼り付けている。
負けいくさで踏み躙られ、打ち棄てられた屍の如き、それは姿だった。
怒号が、響いた。
鞭に打たれたように屍がゆらりと立ち上がり、怒号の方を向く。
少女の側に立つのは、数人の男たちである。
いずれも一目、鍛錬に鍛錬を重ねたことが分かる体つきをしていた。
彼らの顔には、一切の緩みも余裕もない。
厳しい顔つきで何かを話し合うと、中の一人が少女に向けて声をかける。
少女が、頷いた。
その拍子にほつれた前髪を伝って垂れた汗の、沈みゆく陽に照り映えるのが、
不思議と森崎の目に映った。

「―――」

少女の表情にも、先日森崎が見たような悠然とした笑みは、どこにもない。
息を切らし苦痛に歪み、それでも俯かず、射殺すような目をぎらぎらと光らせて、
気高さを放り捨て優雅さの欠片もなく、それでもただ、真摯に。
少女は、立っていた。

「……」
「あれが、リンダ・ザクロイドって女だ」

ジーンが、ぼそりと告げた。
その視線は横に立つ森崎には向けられず、真っ直ぐに少女を見据えている。

97 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:37:03 ID:???
「他人の事情に斟酌しねえ。世間知の中で変に賢しくなっちまっていかすかねえ。
 手前勝手に相手を振り回して省みねえ。嫌な女さ」

女、とジーンは口にした。
おそらくは一回り以上も歳の離れた少女を、女と評してジーンは続ける。

「それでもオレは目が離せねえ。どうしたって、あのお嬢さんから目が離せねえ。
 恩じゃねえ。義理でもねえ。ただ見ていてえから目が離せねえ」
「……」
「ほとんど惚れちまってんのかもな、ハハッ」

最後は冗談めかして言葉を切ったジーンに、しかし森崎は愛想笑いを返さない。
ジーンが、やがて森崎を横目でちらりと見やり、固めた拳で軽くその胸を叩く。

「今日、お前を連れてきたのに深い意味はねえよ。ま、嫁の自慢みてえなもんだと思ってくれや。
 お前がこの先、あのハンナってのとどう関わっていくかも知らねえしな。……けどよ」

間は、呼吸一つ分。

「お前とはこれっきりになる気がしねえんだよ。いつか『こっち側』にくる目だって、
 まあ、なくはねえと睨んでる。……俺の、当てにならねえ勘だがな」

今度こそ曇りなく、にかりと笑ってジーンがそう言うと、トラックの方へと目を戻す。

「……おっと、最後に通しで走るみたいだな。折角だ、しっかり見てってくれ」

無理やりに連れてきておいて折角だも何もないものだ、と苦笑しながら、しかし森崎の目は
スタートラインへと歩む少女に吸い寄せられていく。
競技者というものは、とその背を見ながら、森崎は思う。
競技者というものは誰しも、その戦場に立つとき、同じ空気を纏うのだろうか、と。
少女の後ろ姿はそれほどに、ハンナのそれと重なって見えたのだった。


98 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:39:06 ID:???
******


エントリーNo.1
リンダ・ザクロイド
基礎値:122
特性:不明
スキル:女王の威風(一位をキープしている際、ダイスを10プラスする)
PBスコア:947(D25.11 スポーツの祭典 本戦)


***

99 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:40:07 ID:GHuJRN6Y
***


*スタート
セクションスコア1= 122*{1+(! numnum/100)}

*コーナー1
セクションスコア2= 122*{1+(! numnum +【女王の威風10】/100)}

*バックストレート1
セクションスコア3= 122*{1+(! numnum +【女王の威風10】/100)}

*バックストレート2
セクションスコア4= 122*{1+(! numnum +【女王の威風10】/100)}

*コーナー2
セクションスコア5= 122*{1+(! numnum +【女王の威風10】/100)}

*ホームストレート
セクションスコア6= 122*{1+(! numnum +【女王の威風10】/100)}


※★ごとにそれぞれ、 ! と numnum の間のスペースを消して数値を出して下さい。
00は100として扱います。

***

100 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/13(火) 19:43:50 ID:???

*スタート
セクションスコア1= 122*{1+( 56 /100)}


101 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:44:03 ID:???
******

本当は 122*[1+{(! numnum +【女王の威風10】)/100}]
と表記すべきですが、何だかわかりづらいですね…といったところで、
一旦ここまでとさせていただきます。

102 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/13(火) 19:45:04 ID:???
>>100
と、割り込みになってしまって申し訳ありません!
ドローありがとうございます。

103 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/11/13(火) 19:51:02 ID:???

*コーナー1
セクションスコア2= 122*{1+( 25  +【女王の威風10】/100)}



104 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/13(火) 20:17:36 ID:???

*バックストレート1
セクションスコア3= 122*{1+( 87  +【女王の威風10】/100)}


105 :◆W1prVEUMOs :2012/11/13(火) 20:56:14 ID:???

*バックストレート2
セクションスコア4= 122*{1+( 55  +【女王の威風10】/100)}


106 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/13(火) 21:25:10 ID:???

*コーナー2
セクションスコア5= 122*{1+( 42  +【女王の威風10】/100)}


107 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/13(火) 22:44:50 ID:???

*ホームストレート
セクションスコア6= 122*{1+( 67  +【女王の威風10】/100)}



108 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/19(月) 19:17:48 ID:???
皆様、ドローありがとうございます。
私事ながら多忙のため更新間隔が開きがちになってしまっており申し訳ありません…。

***

*スタート
セクションスコア1= 122*{1+( 56 /100)} =190

*コーナー1
セクションスコア2= 122*{1+( 25  +【女王の威風10】/100)} =164

*バックストレート1
セクションスコア3= 122*{1+( 87  +【女王の威風10】/100)} =240

*バックストレート2
セクションスコア4= 122*{1+( 55  +【女王の威風10】/100)} =201

*コーナー2
セクションスコア5= 122*{1+( 42  +【女王の威風10】/100)} =185

*ホームストレート
セクションスコア6= 122*{1+( 67  +【女王の威風10】/100)} =215


スコア合計:1195

***

109 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/19(月) 19:18:49 ID:???

ひとが走る姿を美しいと感じたのは、森崎有三の人生で初めてのことである。
その足で大地を踏みしめ駆け行く、それはヒトという生物の極みの体現であると、
少女の疾走は雄弁に物語っていた。
全身、ただそれを成すためだけに神の手によって配されたような骨格が、筋肉が、腱が、
精緻に制御され厳密に駆動し、質量を大気の中に振り捨てるように加速していく。

(これ、は……)

ジーンが、無理やりにでもこれを見せようとした気持ちが、今なら理解できる。
そこにあるのは打算や計算ではない。
その本質は、彼女自身の言葉通り、子供じみた自慢なのだ。
こんなにも綺麗な宝物を私は持っていると、秘めやかに、しかし誇らしく語るときの、
あの高揚を味わいたかったのだ。
むべなるかな、と森崎は思う。
いま薄闇の中、夜に融けるように走る少女は、至宝だ。
遠ざかっていく、赤土にまみれながらなお白い背を、大きな弧を描いて戻ってくる躍動する肉体を、
たとえば自分だけが目にしてしまったとして、堪えることができようか。

「……遠いな、ハンナ」

ぽつりと口をついたのは、真白き背を追う少女の名である。
彼女の前を往く者は、掛け値なしの才気だ。
差は歴然、このままでは勝負にならぬと豪語されたその言は、何の誇張もなく正しい。
走れば走るほどに差の開く、終わりのない競争のようにすら、思える。


110 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/19(月) 19:19:49 ID:8W8eRwNs
しかし。
しかし、勝ちたい、と。
ハンナは言ったのだ。
一敗地に塗れ、苦渋辛酸を舐めながら、少女の牙は折れてはいなかった。
それを愚かしいと嘲うことは、森崎にはできない。
抗うことをつまらぬ意地と断じ、敗北を諦念の内に肯んじるのなら、今の森崎はここにはいない。
ならば。
ならば森崎にできることは、眼前の勝者、圧倒的な優越者から目を離さぬことだ。
この奇貨を糧とし、巡り来る機会に備えることだけだった。

(優れていること、秀でていること、何でもいい……探せ、盗め!)

俄に鋭く目を細める森崎の、リンダ・ザクロイドに見たものは―――


*選択

A コーナーを抜けた瞬間の加速だ。

B 後半の安定したペースだ。


※リンダの走りからハンナのスキル習得のヒントを得ます。
 獲得したヒントはストックされ、次回のコーチ機会にハンナがスキルを習得します。

森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/19 24:00』です。


111 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/19(月) 19:20:56 ID:???
******

一応これが10月最後の選択となります、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
お付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

112 :◆W1prVEUMOs :2012/11/19(月) 19:36:40 ID:???
ハンナは持久力に不安があるのでBで相殺したいです

113 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/19(月) 21:12:23 ID:???
Aハンナはスタートそこそこ良かったので、ここを改善出来て前半部分を食いつければ後半勝負出来るかも知れないかなと思います。

114 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/19(月) 22:16:27 ID:???
A リンダに先行されるとスキル発動されるので、前半優先で。

115 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:25:58 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>110の選択については……

>>114 ◆9OlIjdgJmY様のご回答を採用させていただきます!
お三方とも納得の理由だったのですが、中でもまったくその通り、というシンプルなお答えでした。
リンダの現スキルは発動すると手がつけられなくなっていくタイプですからね。
CP3を進呈いたします。


>>112
はい、それもハンナのウィークポイントですからね。
ご覧のとおり圧倒的な実力差を徐々にスキルで埋めていくというのが基本線になりますので、
どの段階でどの長所を伸ばし、あるいは短所を潰していくかは思案のしどころです。

>>113
そうですね、スタートにはプラスのスキルがありますので、まずは離されずに食いつくことが重要です。
現時点で勝利するにはちょっとどころではない奇跡が必要になってしまうかもしれませんが、
ビジョンを持った成長計画があれば後々になって活きてくるでしょう。


116 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:27:37 ID:???
***

A コーナーを抜けた瞬間の加速だ。


リンダの疾走をしっかりと瞼に焼き付けながら、森崎が最初に感じ取ったのはそれである。
無数の情報の中から最初に拾い上げられたものには、何らかの意味がある。
そう考える程度には、森崎は自身の嗅覚を信頼している。

(スタートから……第一コーナー。ここは、そうハンナと変わらねえ。問題は……)

いま眼前に近づいてくる実際のリンダをしっかりと頭に納めながら、同時に森崎の瞳の奥では
記憶の中のリンダの走りが幾度も繰り返されている。
思考し、分析し、導いた回答を徹底的に反復して体に覚え込ませる、それは森崎がこれまで
自らに課してきた鍛錬の手法、ほとんど癖ともいえるような作業だった。

(そう、コーナーを抜けた後、そこから……)

地力の違いがあるとはいえ、カーブの処理自体は素人目にはそれほどの差異があるように思えない。
しかしその後の結果が、決定的に異なっている。
落とした速度を取り戻せないハンナと比べ、リンダはむしろ縮めた撥条を弾くように加速していく。
その差が、どこから生まれるのか。

(重ねろ……)

先月に見たハンナの走りと、まさにいま眼前に得たリンダの走り。
二つを記憶の中で近づけていく。
少女二人の躍動はやがて同じ色となり同じリズムとなり、近づいては遠ざかり、遠ざかっては近づいて、
交錯し行き違い、戻っては離れ、しかし次第にそれらの波は薄れていき、遂に重なったとき―――。

「……ここだ! この瞬間だ!」

117 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:29:18 ID:???
思わず声を上げた森崎を、隣のジーンがぎょっとしたように見やる。
気にしている暇はなかった。
掴んだはずのイメージは、しかしその刹那を頂点として霞のように消えていく。
そうなる前に、それらをかき集め具体化し、刻みつけなければならなかった。

「体重移動……ここ、この左足、それと連動して腰から前傾する……のか?」
「お、おい……?」

ぶつぶつと何事かを呟く森崎を、ジーンは不気味そうに見ていたが、声をかけても
無反応なことに呆れたのか、すぐに何も言わなくなった。

「ああ……ここの鍛え方が足りねえのか。だから、ハンナは……なるほど、そういう……」
「……」
「うん、そうだな間違いねえ。……よし、わかった! はは、畜生てこずらせやがって!」
「……何だか知らねえが、おめでとさん」
「ん? おお、ジーン。悪いな、聞いてなかった」
「だろうよ」

呆れたように言うジーンに、森崎は怪訝そうな顔を向けるのだった。


******


陸上スキル『バックストレート・アクセル』をストックします。
次回のコーチ機会にハンナがスキルを習得します。

効果:バックストレート1のダイスを20プラスする。
この効果は『逆境』と名のつくスキルの発動条件に影響を与えない。


******

118 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:30:20 ID:???
******

「……ところで、俺はどうやって帰りゃいいんだ」
「おう、そのことだがよ」

まるでリンダがゴールラインを越えるのを待っていたように、辺りを朱に包んでいた陽の欠片は
城壁の描く稜線の向こうへとすっかり消えてしまっている。
明かりもない屋外のこと、すぐ近くにいるはずのジーンの顔もよく見えない。
声だけが、無闇に明るく響いた。

「そもそも俺は、お嬢の迎えってことで車を回してたんだった。
 ってわけで、帰りはお前のことは送れないぜ。悪く思うなよ」
「なにィ!? ってまあ、そらそうだろうな……悪くは思うけどな!」

どうせこんなことだろう、と予想はしていたものの、しかし実際に言われてみると秋の夜風は身に染みる。
渋面を作った森崎の背を、ジーンの掌がばしんと叩いた。

「ははは、んな顔すんなよ、色男!」
「見えてねえだろ!」
「だいたい分かるぜ」
「ああ、そうかい……」

不毛な会話を打ち切って踵を返そうとした森崎を、しかしジーンが腕を掴んで引き止める。

「まあ、待てって」
「……?」
「もう一台、うちらの馬車を回してある。ま、お嬢専用のこいつほどじゃねえが、
 ザクロイドの御用車だ、乗り心地もなかなかだぜ」
「マジか……」
「大マジよ。しかも今度は御者台じゃなくて客席に座れるぜ」

ぽん、と叩かれた腕がじんわりと温かい。

119 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:31:23 ID:???
「お前が初めていい女に見えてきたよ……」
「そりゃどうも。って見えてねえだろ」
「見えてたら思わず求愛してたかもしれねえ。夜で良かったぜ」
「はは、地獄に堕ちやがれ」

軽快に言い合って、しかしふと森崎が首を捻る。

「……でもよ、よく考えたらこの事態そのものがお前のせいだよな」
「悪ぃ、悪ぃ」

言葉とは裏腹に、声音はどこまでも軽い。
にやりと口角を上げた表情までが闇の向こうにはっきりと見えるようだった。

「詫びってんじゃねえが、今日の晩メシ代はどこで食うにせよ、ザクロイドの厩務係にツケといて構わねえからよ」
「ぐ、それで水に流しちまいそうな自分が情けないぜ……」
『そうと決まればさっさと帰って、美味しいもの、食べよ』
「お前、タダ飯の話になったら出てくるのかよ!」

今までどこをふらついていたものか、唐突に頭上から声を降らせた相方に、森崎が思わず答えてしまう。

「……? ヘンなヤツだな……ま、いいや。車は向こう、話は通してあるからよ」
「あ、ああ……」
「じゃあな、縁があったらまた会おうぜ」

バツの悪さに口を濁した森崎を胡乱げに見ながら、しかし快活に言ってジーンはあっさりと去っていく。
本来の仕事、リンダの元へと戻るのだろう。
ため息を漏らせば、息は微かに白い。
決戦は、来月。
宵闇に沈む広い芝生はそのまま何かを暗示しているように思えて、森崎は振り払うように天を仰いだ。
輝きはじめた星の下、家路は、遠い。


120 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:32:24 ID:???



   『才気』(了)



******

121 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/20(火) 18:34:41 ID:No1EE1CQ

*D26.11月
フレーバーテキスト


*ドロー


今月の巻頭特集は → ! card


スペード・ハート・ダイヤ・クラブ→ 日常「悪代官とシベリア特使」
JOKER→ 事件「やみにうごめく・1」


※ ! と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。


******

そしてようやくメインキャラが出揃う十一月(敵除く)、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

122 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/20(火) 19:04:31 ID:???
今月の巻頭特集は →  ダイヤA

123 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:46:42 ID:???
>>122
ドローありがとうございます。

ダイヤ→ 日常「悪代官とシベリア特使」

******

◎日常「悪代官とシベリア特使」


小鳥の囀りも爽やかな晩秋の朝。
日課の新聞に目を通す森崎が、見出しを声に出して読み上げる。

「輸出入顧問オーリマン卿、シベリアからの燐光石輸入拒否を明言……か。
 この国、燐光石がえらい高いからな」
『そうだねえ……まあ、この宿舎では支給品だからあんまり関係ないけどね』

燐光石とは欧州全土で照明に使われている物質である。
化学反応により生じる独特の白色光は炎より格段に明るく、また熱をほとんど発しないため
富裕層から一般家庭まで、幅広く使われている生活必需品であった。
時間効率を考えれば蝋燭や油による照明よりも安価であることも普及の決め手となったが、
ここドルファンにおいてはそれらとほぼ同等の価格帯で高止まりしている。

「ま、この手の話はどっかの強欲商人が市場を独占してるってのがお定まりだけどな」
『ふうん……どこの強欲商人?』
「ザクロイド財閥」

何気なく口にする森崎に、ピコが目を丸くする。

124 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:47:43 ID:???
『ザクロイド……って、リンダのお家のザクロイド?』
「そのザクロイドだな。山師だったディムス・ザクロイドが鉱山で一発当てた成り上がりの新興財閥」
『そのディムスって人は、リンダの?』
「爺さんにあたる、らしいな。何年か前に死んでる」
『ふうん……』

それ以上踏み込むことを避けたのか、座っていた森崎の肩からふわりと浮いたピコが、
しかしにやりと笑って森崎の目の前で止まる。

『でもさ、ならそのお爺さんって、きっとこのナントカ卿とアレ、やってたんだろうね』
「ああ、アレな」

新聞から顔を上げてピコと目を見交わした森崎がにやりと笑い、せーの、の呼吸で口を開く。

「―――越後屋、そちも悪よのう」
『いえいえ、お代官様ほどではございませぬ』


******


数日後のことである。
やはり朝の日課として新聞を読んでいた森崎が、奇妙な唸り声を上げた。

「ふ〜む……」
『何なに、なにか面白いことでも載ってた?』
「この顔が面白そうに見えるのかよ、お前には」

眉根を寄せた森崎が新聞から顔を上げてピコを睨む。

125 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:48:43 ID:???
「シベリアの特使が来たんだとよ」
『シベリアか……あんまりいい思い出はないね……』

かつて加わった幾つかの激戦や惨劇を思い起こしたように表情を暗くしたピコが、
しかしすぐに不思議そうな顔で尋ねる。

『でも、なんで? このドルファンはシベリアからすっごく遠いじゃない』
「燐光石だよ」
『燐光石……? あ、そういえばこないだ、そんな話してたね。すごく高いって』
「その流れよ」

頷いて、森崎が語り聞かせるように話を始めた。

「そもそもドルファンで高い燐光石が売れてるのは、安いシベリア産の輸入を拒否してるからだ」
『かんぜーがメチャクチャとか?』
「それ以前だな。そもそも一切の輸入を禁止してる」
『へえ、ダイタンだねえ。まあでも、安いのがなければ、高いのを買うしかないもんねえ』
「ああ。で、国内産の供給はザクロイド財閥が独占してるから、濡れ手で粟の大儲けってわけだ」
『それってやっぱり……』

ピコが、数日前に演じてみせた膝つき合わせの寸劇を仕草で示す。

「まあ、そうだ。誰が見たって強欲商人と御代官様だわな」
『うわあ……』
「そいつを突き上げようってのが今回の特使様よ。燐光石の輸入自由化を要求、ってなもんだ」

ぱん、と紙面を手の甲で叩く森崎。

126 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:49:50 ID:???
『それで、どうなったの? シベリアっていうと……』
「お得意の軍隊チラつかせたゴリ押しは厳しいな。何せここは南欧の果てだ」
『じゃあ?』
「このドルファンの輸出入を仕切ってる顧問のオーリマン卿って貴族が特使と話し合った。
 結果として、一旦は突っぱねたらしいな。……とはいえ、ここはマルタギニア貿易の中継で食ってる国だ。
 お得意さんの意向を丸っきり無視するってわけにもいかねえんだろ。
 石炭と鉄鉱石は自由化の方向、だとさ。そっちはあんまり俺らには関係ねえけどな」
『何いってんの。鉄が安くなったら武器の値段も下がるでしょ!』
「そこら辺はよ、カイルと陽子さんたちが考えることで……」
『キミ、隊長でしょ!』
「うへえ」

肩をすくめてみせる森崎を、小さな相方は憤懣やるかたない様子で睨んでいたが
しばらくして無益を悟ったか、そよ風のようなため息をついて森崎の肩に戻る。

『……ところで、記事はそれで終わり?』
「どれどれ……いや、続きがあるな。シベリア側は返礼の一環として、文化交流を提案……?
 来月にも国立サーカス団を派遣するとのこと、だとよ」
『アメとムチだね』
「ま、痛み分け、適当な落としどころってやつだな。シベリアの特使も流石といやあ流石だが、
 このオーリマン卿ってのもなかなかの食わせもんみたいだぜ」
『それはだって、貿易で食べてる国の、その貿易の一番偉い人でしょ?』
「ま、確かにその位置にボンクラが置かれてるならこの国は終わりだわな」

うんうん、と頷くピコに、森崎が紙面の片隅を指さす。

「そういや、お前好みっぽい事件も載ってるぜ」
『何なに、えーと……”王女行方不明騒ぎ”? わ、ゴシップの予感!』
「楽しそうでよかったよ」

紙面に目を向けたまま、ひらひらと器用に飛び回るピコ。

127 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:51:07 ID:???
『でも残念、無事に見つかったみたい』
「残念てこたねえだろ……」
『この国のお姫様はかなり庶民派って話だけど、家の人に黙って買い物にでも行ったのかな?』
「んなわけあるか! そりゃ庶民派っつーかただの庶民だ」
『えー』

口を尖らせるピコを無視して、森崎は再び新聞に目を落とすのであった。


******

128 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:52:07 ID:???

*D26.11月 「親切な傭兵団のエース」森崎有三
訓練所イベント


「―――騎士団は王室会議に対し、ダナンへの第二次派兵を上申。
 しかし王室会議側はこれを却下する方向のようです」

薄暗い部屋の中、淡々と続くのはカイルの定期報告である。
思案げにそれを聞く森崎の背後、窓の外には曇り空が広がっていた。
温もりの代わりにがたがたと風に震える音を伝えてくる窓を背に、森崎が腕を組む。

「先月ようやく再編が終わったばかりで、もう派兵ってか。そりゃ却下もされるだろうな」
「はい。ピクシス卿が先の戦いの折、騎士団の練度の低さが露呈したことを問題視しているようで、
 当面は外交による折衝をヴァルファと続けていく方針のようです」
「エリータスは騎士団の意見を推さなかったのか? 騎士の取りまとめ役だろ」

エリータス、という名を口にするときの微かな苦味を噛み潰すようにしながら、森崎が尋ねる。
ドルファン西部の都市エローを所領とするエリータス家は代々部門の家柄である。
特に先代当主ラージン・エリータスは数十年空位であった聖騎士を叙勲するほどの英傑であった。

「エリータス卿夫人はピクシス卿に賛同の意を表したそうです」
「いつものこと……か」
「はい。騎士団の一部にはその件で不満の声も上がっている……模様ですが、これは
 ルーカス大佐の個人的な意見として扱うようにとのことです」

真面目な顔で書類に目を落としていたカイルの口元に、僅かに苦笑が浮かぶ。

「立ち回りの参考にしろってか……食えねえおっさんだよ、まったく。
 ま、どの道俺らは決まったことに口を挟める立場じゃねえがな」
「……」

129 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:53:08 ID:???
森崎の軽口には無言を貫いた賢明なカイルが、はらりと書類をめくると
次の話題に移ろうとする。

「それと、もう一点―――」

と言いかけた、そのとき。

「―――邪魔するぞ」

静かな、しかし有無を言わせぬ圧力を持った声音と共に、無造作に扉が開かれた。
執務机に座る森崎の正面である。

「……何だ、お前ら。誰の許しがあってここまで入ってきた」

そこに立っていたのは、男が三人。
外套に脚絆、どちらかと言えば旅支度に近い軽装ではあるものの、剣を帯びた男たちである。
油断なく男たちを睨みながら、森崎は机の下に隠れた手で愛剣の柄を探ろうとする。
一瞬の緊張感を引き裂いたのは、カイルの高い声であった。

「あなた方は……! そんな、着任は来月という話で伺って、」
「……?」

それを聞いた森崎が、険しい顔の表面に疑念の色を浮かべる。
言葉通りに聞けば、カイルは闖入者たちを知っているらしい。
カイルにちらりと目をやって一歩進み出たのは、中央にいた男である。

「先乗りだ。部隊を預かる者として、現地の状況を確認しておくのは当然だからな」

130 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:55:53 ID:???
低く落ち着いた、しかし聞く者に奇妙に違和感を抱かせるような声音。
そしてまた穏やかという印象からは程遠い、それは男である。
浅黒い肌に、焼け焦げた薪のような巻き髪は西洋圏出身の特色だ。
精悍、と呼ぶに相応しい顔つきの中、異質なのは瞳である。
薄い灰色の瞳には、およそ揺らぎというものがない。
感情、衝動、意思、欲求、そういった人というものを構成する一切が、そこには存在しないように見えた。
精巧な硝子細工が眼窩に嵌っているような、そんな印象を与える目を正面から見据えながら
森崎が身振りでカイルに話を促す。
はっとしたように背筋を伸ばし、カイルが口を開いた。
どこまでも職務に忠実な青年である。

「……先ほど申し上げようとしていたのは、彼らの件です」
「……」
「ドルファン陸軍編成部はこの度、外国人傭兵大隊の増設を決定しました」

カイルの選んだその単語に、森崎が片眉をぴくりと上げる。

「増設……? 増員、じゃなくてか」
「申し遅れた」

カイルが何かを答えようとするより早く、正面の男が言う。
その声に、森崎はようやく違和感の正体を感じ取る。
眼前の男の言葉には、人としてあるべき感情が篭っていないのだ。
瞳と同じ、細工物から発せられる音の塊。
嵐の夜に風の鳴る、あるいは瀑布の落ちゆく怒涛のような、声ではなく音としか言えぬ、
そんな音がどうしてか意味を持ったが如き、それは言葉なのだった。

「ドルファン陸軍、外国人傭兵『第二』大隊長、カルロス・サンターナだ。
 我が傭兵団三百名、十二月一日付の着任となる」
「第二、大隊……」

森崎の呟きを引き取るように、カイルが続ける。

131 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 19:57:10 ID:???
「はい、隊長。我々、第一次徴募による旧大隊は第一大隊と呼称が変更されます。
 編成その他に変更はありません。詳しくは後ほど書面に目を通していただくつもりでしたが……」
「一足早くご挨拶に来ていただいたってわけか」
「……あァ?」

森崎の言葉に含まれた棘にいち早く反応したのは、正面の男ではない。
その向かって右後方、赤銅色の肌を持つ偉丈夫であった。
正面の男の瞳が硝子細工だとすれば、この男の目は飢えた獣のそれである。
混血なのか、薄い金色の髪を無造作に伸ばしたその下から睨みつける表情たるや
気の弱い者であればその場で卒倒しかねない、凶悪な代物であった。
そんな男が筋骨隆々たる肩を怒らせ、ずいと進み出て森崎を睨めつける。

「おう、東洋人。隊長だか何だか知らねえが、あんまりナメた口を利くんじゃあねえぞ」
「……」
「名高いヴァルファの将を討ち取ったとかいう面ァ、一応見に来てやったがよ……」

唸り声を上げる獣のような男が、牙を剥いた獣のような顔で笑った。

「ハン、何かの間違いだったんじゃねえのか?」

あからさまな侮蔑混じりの言葉に、森崎は―――

132 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/22(木) 20:01:08 ID:8a1flvAQ

*選択

A 「上等切んなら名ァ名乗れ、赤犬野郎」 言い値で喧嘩を買う。(必要CP:2)

B 「なあ第二大隊長さん、躾はきちんとしておいてくれよ」 こちらのペースで喧嘩を買う。

C 「さて、俺だけの力で成し遂げたことではないからな」 事を荒立てないようにする。

D 「……それで、その第二大隊が今日は何の用件だ」 完全に無視する。


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/23 1:00』です。


******


訓練所パートの主要人物もこれで概ね揃い踏み、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
お付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

133 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/11/22(木) 20:34:54 ID:???
B
森崎は臆病者ではないけど、バカでもない、ということで。
ある意味では向こうの隊長の器を問う、ということでもあるかなー。

134 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/22(木) 22:50:39 ID:???
D
ただのバカ犬に喧嘩を買うのは宜しくない
相手は隊長でもないし、無視して話を進めれば大人しくなるはず
カルロスが隊長なら信用もできるし

135 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/22(木) 23:25:19 ID:???
C実際森崎一人で倒した訳ではないですから。
それにどんな形であれ喧嘩を買えばカルロス隊長の面子を潰すのではないかと思います。

136 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:42:59 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>132の選択については……

>>135 さら ◆KYCgbi9lqI様のご回答を採用させていただきます!
なるほど、相手の面子を考慮するというのは想定の外でした。
言われてみれば確かに、ということで内部的に礼法値が上がりつつCP3を進呈いたします。


>>133
はい、お互い小手調べといった意味も含めての初顔合わせになっていますね。
ちなみに人物称号によってはCのような選択肢がCP必須、もしくは出現しなくなってきます。

>>134
そうですね。大人しくなるか…はともかく、同じレベルでやりあう必要はない場面でしょう。
サンターナについては訓練所パートでは重要な位置づけになってきますので、今後をお楽しみに、
といったところです。

137 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:43:59 ID:???
***

C 「さて、俺だけの力で成し遂げたことではないからな」


森崎がそう告げたのは、紛れもない事実であった。
ヴァルファ八騎将、『疾風』ネクセラリアを打倒し得たのはヤングの負わせた傷ありきであることなど、
森崎自身が一番よく分かっていた。
それ以前に一騎討ちに持ち込めたのは部隊全体が最後の最後まで恐慌も来さず戦い抜いたゆえである。
そういった諸々を無視して一人の手柄であると吹聴する狭量、貪欲、あるいは鈍磨を森崎有三という男は
持ちあわせていなかったし、また同時に眼前の狂犬じみた男の安い挑発を買い支えるつもりもない。
どういう意図かは分からなかったが、不用意に騒ぎを起こせばわざわざこちらを訪ねてきたという
第二大隊長となる予定のサンターナという男の顔を潰すことにもなろう。

「……っだと、テメエ」

しかし、あくまで冷静に返答した、その態度の意味するところが相手に伝わることはなかった。
淡々とした回答が小馬鹿にしているようにでも映ったのだろうか。
むしろ勘に障ったらしい男の顔から、侮蔑の笑みが消えた。
赤銅色の肌はほとんど熱した鉄の色に近いところまで赤く染まっている。
視線が、その凶悪さを増して森崎を睨みつけた。

「……」

森崎とて、怯懦から男の挑発を受け流したわけではない。
殺気の籠もった視線の一つや二つで慄いていては戦場に立つことも、数百の荒くれどもを
まとめ上げることもできはしなかった。
無言で、しかし殺気を押し返すが如く力を込めて、男の目を見返す。
一触即発の空気が、漂った。

「……ま、まあまあ! 二人とも!」

138 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:45:00 ID:???
割って入ったのは、それまで後ろに控えていた三人目の男である。
高い、少年のような声だった。
サンターナと名乗った中央の男や、詰め寄っている屈強な男に比べればやや小柄な体格。
白い肌に小麦色の長い髪、そして声音に相応しい少年のような顔は、いかにも女性受けの良さそうな
柔和で整った目鼻立ちである。

「ちょっとザガロさん、何やってんですか! やめてくださいよ、もう」

ザガロと呼ばれたのは赤銅色の肌の男だった。
吹けば飛ぶような体格差、近づくことすら危うく感じるような殺気を物ともせず、
少年が男の視線を塞ぐように立つ。

「邪魔だ、どけバビントン!」
「どきません! 団長も黙ってないで止めて下さいってば! 喧嘩しに来たんじゃないでしょう」

バビントンと呼ばれた少年が中央の男、サンターナに助けを求めるように声をかける。
サンターナはといえば、先刻森崎への事務的な報告を終えた瞬間と一切変わらぬ姿勢、
一切動かさぬ表情のまま事の推移をただ見つめていただけである。
沈思する哲学者のようにも、芝居倉庫に置き去りにされた人形のようにも見える男が、
バビントンの声にちらりと目線だけを動かした。

「……そこまでにしておけ、ザガロ」

やはり何の感情も浮かべぬ声で、それだけを告げる。
しかし効果は絶大であった。

「……チッ」

渋々、といった体ではあったが、名を呼ばれた男は森崎から目を逸らし、一歩を引いたのである。
これには森崎も内心、瞠目を禁じ得なかった。

139 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:46:01 ID:???
腕力で物事の優劣を判断する類の人間にとって、先に目を逸らすこと、後ろに退くことは
ほとんどあり得ないと言っていい。
どちらも敗北、恭順を示す行為だからである。
それをさせるということはつまり、サンターナという男の言葉は、ザガロという
全方位から暴力の臭い紛々たる男に一時の屈辱を許容させるほどの影響力、あるいは
強制力を持つということを意味するのだった。

「伊達じゃねえ、ってか」
「……?」

森崎の呟きに不思議そうな顔で振り返ったのは、紅顔の美少年である。
ザガロを抑える必要がなくなった安堵からか、それとも生来の性質なのだろうか、
見る者を和ませるような柔らかい雰囲気を漂わせている。

「あ、すいませんどうも、うちの団員が失礼しまして」
「いや……」
「申し遅れました、僕、エセキエル・バビントンといいます。
 傭兵団『エル・ディオス・ケ・デベセール・オディアド』の副団長を努めさせていただいています」
「そうか、俺は……って、副団長!?」

どこまでも角の立たぬ少年の言に、思わず聞き流してしまいそうになった。

「はい。まあ、このドルファンでは団ごと丸抱えで第二大隊ってことになりますから、
 言うなれば副隊長……ですかね。それが何か?」
「あ、いや……」

小姓か従卒だと思った、とはとても口に出せない。
してみればバビントンという少年、いや男に額面通りの評価を下してはならないのだろう。
何と言ったものかと口ごもる森崎に、サンターナが進み出ると口を開く。

140 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:47:02 ID:???
「我々と貴殿らは独立した指揮、訓練系統となる。混乱を避けるよう通達を徹底してくれ。
 詳細は後ほど、このバビントンと詰めてもらおう。話は以上だ。失礼する」

低く静かな、しかしやはり凪いだ水面の如き抑揚のない声で事務的にそう告げると、
サンターナは一片の躊躇も見せずに踵を返した。
予め段取りを決められた役者のようなその所作に、森崎はただ眉根を寄せることしかできない。
ちらりとカイルに目配せをして扉を開かせるのが精一杯だった。

「ケッ……東洋人はおとなしくカバヤキでも作ってろってんだ」
「バビントンさんってば! あ、あはは、お騒がせしました〜」

サンターナに続いて踵を返しながらぼそりと捨て台詞を残すザガロの背を、
バビントンが慌てて押していく。
突然の闖入者たちがようやく退出しようとした、そのときである。

「何だ、どうした!?」
「……騒がしいが、何かあったのかモリサキ」

隊長室に、新たな影が飛び込んでくる。
ネイとトニーニョ、そしてネイの背後にはジェトーリオ。
ちょうど部屋から出て行こうとしていた第二大隊の面々と鉢合わせる格好となった彼らが、
ぎょっとしたように立ち止まると、声を上げる。

「な……、”エル・ニーニョ”……!?」
「後ろのは”城焼き”ザガロじゃねえか……! どうしてテメエらがここに……!?」
「あ、バビントン、久しぶりだね〜」

三者三様の態度に、しかし応えたのはザガロ一人である。
正鵠を期するならば、何かを言いかけたバビントンを制するように、ザガロが口を開いたのだった。

141 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:49:46 ID:???
「ハン、誰かと思えば……お尋ね者どもか!」

空気が、凍る。

「……!」
「ンだとォ……!?」
「……」

表情を固くするトニーニョ。
ほとんど飛び掛からんばかりの姿勢で肩を怒らせるネイ。
にやにやとした笑顔を崩さず、しかしすう、とネイの背後から立ち居地を変えるジェトーリオ。
ネイが前に出た瞬間フォローに入れる位置取りだと、これまで彼らを見てきた森崎には一目瞭然である。
一気に緊迫の度合いを増した情勢に、森崎が割って入るべく立ち上がろうとする。

「まさかこんな海の果てに身を隠していたとはな! そりゃあ、向こうには戻れねえだろうがよ!」
「ちょ、ザガロさん、その辺で! 彼ら、たぶん第一大隊として雇われてるんですから! 団長も!」
「……そこをどいてもらおう」
「だ、団長〜!?」

制止しようとするバビントンの声はもはや悲鳴に近い。
ほんの二言、三言であったが言葉を交わした森崎にも分かる。
サンターナという男、おそらくは眼前のトニーニョたちに一切の興味がないのだろう。
それでただ純粋に、道を開けろと言っているに違いない。
しかし今の状況では、どう聞いても挑発の一環である。

「おい、テメエ……!」
「よせ、ネイ」

激昂しかけたネイを森崎よりも一瞬早く抑えたのは、トニーニョである。

142 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:50:47 ID:???
「彼らはこの隊長室から出て行くところだった。モリサキもカイルも、無事にそこにいる。
 そして俺たちには事情が分からない。……いま乱闘騒ぎを起こせば、困るのはモリサキだろう」
「ぐっ……!」

トニーニョの表情は、相変わらず固い。
固いが、しかし声音には他を圧して息を飲み込ませる力があった。
ネイが接ぎ穂を失った刹那を見計らったように、ジェトーリオがその肩に手をかけて脇に寄せる。

「ほらほらネイくん、お客様がお帰りだよ〜。ちょっと場所を開けてあげようねえ」
「触んな! 雨降りそうなんだから洗濯物を増やすんじゃねえ!」
「うぅ〜ん、ネイくんのいけずう」

しなを作ったジェトーリオが、ちらりと一瞬だけバビントンの方へと目線を送る。
僅かに頷いたバビントンがザガロを促し、急いで退出しようとする。
サンターナはといえば、ネイが進路を開けるのとほぼ同時に無言で出ていってしまっていた。

「ほら、ザガロさん。帰りますよ、まだやることいっぱいあるんですから!」
「ハーッハッハァ! 安心しなお尋ね者ども、俺らははした金目当てに通報したりはしねえからよ!
 ま、次の戦場までの命かもしれねえが、せいぜい頑張って欧州の隅っこでこそこそ生き永らえな!」
「ザガロさん! いいから! 早く行きましょう!」
「チッ……引っ張るんじゃねえよ、バビントン」

それから嵐が去るまでの数十秒、何事も起こらなかったのは僥倖といえるだろう。
ぎい、と扉が閉まる音とほぼ同時。
執務机に詰め寄ったのはネイである。

「どういうことだ、モリサキ! どうしてアイツらがここにいる!」
「……」

さて何から話したものか、としばし黙考した森崎が―――

143 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/27(火) 18:53:33 ID:SyarAx66

*選択

A「新設される第二大隊の連中だ」 無難に説明する。

B「あいつら、西洋圏では有名なのか」 彼らの素性を尋ねる。

C「お尋ね者ってどういうことだ」 問いただしてみる。


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『11/27 24:00』です。


******


どうやらこの世界、ブラジルはポルトガル語圏ではないようです。
イベリア半島はなくてもスペイン語はある不思議な世界……。
といったところで、本日の更新はこれまでとさせていただきます。
遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

144 :◆W1prVEUMOs :2012/11/27(火) 23:48:08 ID:???

これから関わることになるなら知っておいて損はないので
Cは上手くいけば(ネイの)スキルゲットの可能性があるけどリスクも高いパターンぽい

145 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/27(火) 23:50:48 ID:???
A傭兵団ごと雇われたってのが気になるので教える情報は正確な方が良いかなと思います。

146 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:08:04 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>143の選択については……

>>144 ◆W1prVEUMOs様のご回答を採用させていただきます!
Cはご指摘の通り、ハイリスク・ハイリターン系の選択でした。
ちなみに部隊員のスキルLvは基本的に訓練時にしか上がりませんが、イベントの成功などで
上昇確率を大幅に底上げすることが可能です。
CP3を進呈いたします。


>>145
作中でも触れますが、傭兵の雇用は傭兵団丸ごと、というのがこの時代の基本です。
そうでないと質も安定しませんし、何よりドルファンがしているように衣食住から武具までの
手厚い面倒を雇用側が見なくてはいけなくなってしまうので、余計な手間がかかるのです。
その点、傭兵団ですと基本的にお金だけ払えば(戦勝報酬に領土や官位などを要求されることもありますが)
後は自給自足が原則ですので楽ちんですね。


147 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:09:11 ID:???
***

B「あいつら、西洋圏では有名なのか」


結局、森崎が尋ねたのは第二大隊の面々についてである。
お尋ね者、という言葉が気にならぬといえば嘘にはなるが、ここで過去を問い詰めて
何が始まるわけでもない。
傭兵という稼業、そもそも故郷に身の置き場がない者が流れ流れて辿り着く職という側面もある。
森崎自身とて脛に傷の一つや二つ、ないではなかった。
故に意義の薄い詮索よりは、いま目の前にある課題に注力しようと思考を切り替えている。

「あ、ああ……」
「エル・ディオス・ケ・デベセール・オディアド……西洋圏屈指の傭兵団と言われている」

バツが悪そうなネイに先んじて、淡々と述べたのはトニーニョである。
仏頂面は常の厳格を取り戻し、動揺は少なくともその表情には見て取れない。

「向こうの有力な傭兵団の殆どはこの欧州から海を渡った者たちによるものだが、
 彼らは西洋圏出身者だけで構成された傭兵団だ。規模は戦士が三、四百。
 その他の団員を含めれば千に近いだろう。団長はカルロス・サンターナ」
「―――通称”エル・ニーニョ”。神の子、って意味だね〜」

トニーニョの言葉を引き継いでジェトーリオが言う。

「神の子……か」
「誰が言い出したものかは知らんがな。幾多の戦場を渡り歩きながら、これまで一度も
 負け戦に参じたことがないという噂だ」
「ま、奇跡的に強いのか、奇跡的に運がいいのかは微妙なとこだけどね〜」

茶化すようなジェトーリオに、森崎がにやりと笑う。

148 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:10:23 ID:???
「奇跡の常勝軍団がドルファン側で参戦……か。そりゃ頼もしいこった」
「参戦……するのか、やはり」
「ああ、正式には来月の頭からって話だ。……だな、カイル?」
「あ、えと、は……はい!」

目まぐるしい状況の推移に棒立ちとなっていたカイルが、森崎の問いに首肯した。
トニーニョたちの目が向けられるのを待って、先を続ける。

「編成部より、十二月一日付で外国人傭兵大隊に第二大隊を新設すると通達がありました」
「なにィ!? 新設だと!?」

大きな目を更に大きく見開いたネイに、カイルが生真面目に頷く。

「はい。員数は三百。指揮系統は我々第一大隊とは完全に独立したものとなります。
 モリサキ隊長にも命令権はありません」
「同格……ってわけか」

噛み締めるように呟く森崎。

「第二次徴募は我々のようにスィーズランド経由で個人の傭兵を集めるのではなく、
 西洋圏から傭兵団の丸抱えという条件で大規模な増員を企図したようです」
「つっても、俺らみたいな流しだけ集める方が珍しいからな」

森崎の言葉は、この外国人傭兵大隊の特異さを端的に示している。
原則として戦時の傭兵はその一団ごと国家、あるいは領主との契約によって雇用される。
規模はそれこそ数人単位からヴァルファのような数千人といった巨大傭兵団まで様々ではあったが、
個人を大量に雇い入れるのは余程頭数が足りず、質を問わずに数をかき集めたい場合か、
もしくは経験豊富な傭兵団と契約できるだけの経済的な余裕がないかのどちらかである。
しかし森崎の見るところ、このドルファンにおける事情はそのどちらでもない。
貿易港を抱えるドルファンの懐具合は悪くないように見受けられるし、イリハでその弱体化を
露呈したとはいえ、戦前の騎士団は無駄な自信に満ち溢れていたはずだ。
であれば、何故か。

149 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:11:53 ID:???
考えを巡らせることは何度かあったが、答えが出たことはない。
たとえば相手がヴァルファであると判明していた場合、その威名に契約を躊躇う傭兵団は多いだろう。
契約後でも勝てぬ相手とわかれば中小の傭兵団は違約金を払って契約を解消したかもしれないが、
しかしプロキアがヴァルファの雇用を発表したのはドルファンが傭兵を徴募した後だった。
辻褄が、合わぬ。
と、そこまでを考えて、森崎は益体もない思考を打ち切る。
いま考えるべきことは他にいくらでもあった。

「まあ、最初から同じ釜の飯を食ってる連中なら再訓練の必要もないってわけだ。
 上も俺たち寄せ集め部隊の扱いづらさに懲りたのかね」
「……」

冗談めかす森崎にカイルはただ困ったように目を伏せるばかりだった。
肩をすくめて先を促す。

「騎士団は再編成中で慣熟にまだ時間が必要であること、またダナンの早期奪還について
 王室会議の背中を押す意図もある、と」
「例によってルーカスのおっさんのオフレコ分析か」
「はい。報告は以上です」
「……ってわけだが」

トニーニョたちに向き直る森崎。

「さっきの様子だと、団長の他にも知った顔があるみたいだったな」
「あー……」

問われ、ネイが渋面を作る。

「まあ、俺らは向こうでも傭兵やってたんだがよ。そんときに、何度かな」
「一応、味方ではあったんだけどね〜」

150 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:13:03 ID:???
ネイの表情、そしてジェトーリオの一応、という言葉の選び方。
あまりいい感情を持っていないことは明らかだった。
代表するようにトニーニョが続ける。

「とにかく身内大事の意識が強い連中でな……それが強みでもあるのだろうが、
 裏を返せば、それ以外は味方であろうと省みようとしないということにもなる」
「目の前のピンチなんか、平気で無視するからね〜」

ジェトーリオの声音にも珍しく苦いものが混じっている。

「それと、特にあのザガロ……赤い肌の彼はね、ちょっと手段を選ばないとこがあるから」
「確か、”城焼き”……とか言ってたな」

出会い頭にネイが口にしていたのは、あの狂犬じみた男の異名であっただろうか。

「イカれてんだ、アイツぁ」

吐き捨てるように言うのはネイだった。

「糧食を断つために街を焼く、村を焼く……そのくらいはどこだってやらあ。
 けどよ……城ごと蒸し焼きにしちまうのはあの野郎くらいだろうぜ」
「……」

確かに、と森崎は内心で考える。
遥か遠い故郷には山城、それも木造の城が多く、籠城に対し時には火攻めも有効とされた。
しかしこの欧州では一部の堅固な要塞を除けば、広大な城塞都市という形態が一般的である。
籠城といっても城単体ではなく、石造りの街そのものを拠点として抵抗するのが常であった。
油を撒いて火をつけたところで大規模な延焼は望めず、位置づけとしては主に心理面での圧迫という
搦め手の戦術に留まっているはずだった。

151 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:14:04 ID:???
「ああ、向こう……西洋圏じゃあよ」

森崎の難しい顔をどう受け止めたか、ネイが付け加えるように言う。

「こっちと違って山と森が多いからな。城っても石積みのは珍しいんだ」
「なるほどな。……それで”城焼き”か」

納得する。
西洋圏での城攻めは比較的故郷のそれに近いのだろう。

「一度だけ、アイツが焼いた砦に入ったことがある。……今でもたまに夢にみるぜ」
「まあねえ、あれは強烈だったねえ」
「……」

焼かれた街はいつだって悲惨なものだ。
逃げ場のない砦ともなれば、その惨憺たる有様は想像に難くない。
記憶の底から、ツンとした異臭が鼻の奥に蘇ってくるような気がして森崎が話題を変えようとする。

「……で、あのバビントンってのはどんな奴なんだ。子供みたいに見えたが」
「あー、あれは……」
「まあ、そこの彼みたいなものだね〜」

と、ジェトーリオが指さしたのは扉の側に直立していたカイルである。
目を白黒させるカイルに手を振って、

「可愛い顔して結構えげつないんだよね。なにせ副団長だし」
「おお、そうだ。それ、本当だったのか」
「マジもマジ、大マジよ」

森崎が訝しげに訊くのへ、応えたのはネイだった。

152 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:15:04 ID:???
「あの傭兵団の実質的な仕切り役はあの坊やだって話だぜ。……坊やつっても、俺らと
 大して歳は変わんねえらしいけどな」
「なにィ」
「団長のカルロス・サンターナが戦略と指揮を、副団長のバビントンが参謀役として
 戦術と実務を担当しているらしい。本人の剣の腕も相当なものだと聞いたことがある」
「ほう……人は見かけによらないってわけだ」

感心したように頷く森崎。

「ま、俺らの知ってることは大体こんなもんだ」
「そうか。助かった」
「ああ……で、よ」

ふと声を落とし、森崎から視線を離して、ネイが言う。

「……聞かねえのか」
「何をだ」
「そりゃあ、その……」

口ごもるネイに、森崎が苦笑する。
ザガロが口にした『お尋ね者ども』の件を気にしているのだろう。
ネイの背後ではトニーニョが眉間の皺をいつにも増して深く刻み、ジェトーリオはそんな二人を見て
お手上げとでもいうように小さく肩をすくめ、森崎に目配せをしている。
ネイに気付かれないように顎の先だけで頷いて、森崎が口を開いた。

「ワケありなのは誰だって同じだ」
「え……」

予想外の言葉だったのか、ネイが弾かれたように森崎を見る。
何事もないように軽く、森崎が続けた。

153 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:16:23 ID:???
「この因果な商売、お互いつまらねえ詮索はご法度、ってな。聞いたことねえか」
「……そういや、最初に会った時もそんな事言ってたっけ」
「はは、よく覚えてるじゃねえかよ」

小さな笑いは、話を打ち切る合図だった。

「ま、どうしても言いたいってんなら聞いておくぜ」
「……いや、今はやめとくよ」

首を振るネイ。
その背後、ちらりとジェトーリオが視線を動かした理由は、森崎にも理解できる。
今は、と。
ネイはそう言ったのだった。

「……」

ふと、森崎が肩越しに窓の外を見る。
がたがたと窓を揺らす風は収まる気配もない。
曇天は更に厚く、今にも冷たい雨を降らせようとしているように思えるのだった。


******

154 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:17:23 ID:???
*D26.11月 訓練選択

『今月は何をするの?』

森崎有三
称号:親切な傭兵団のエース

個人パラメータ
現在のガッツ:165
剣術:146 馬術:66 体術:62 魅力:78 評価:84
ATK:212 DEF:218 SPD:128 ini:25

部隊パラメータ
兵数:289 騎馬:103 練度:35

所属隊員:
トニーニョ(威圧Lv2)
ネイ(鼓舞Lv1)
ジェトーリオ(撹乱Lv1)
カルツ(針鼠Lv1)
レヴィン(破壊Lv1)

剣術・馬術・体術・魅力・礼法・墓守・休養・部隊訓練・陳情の中から『二種類』選んで下さい。
同じ訓練を二つ選んでも構いません。

陳情を選ぶ際は何を陳情するのかを付記して下さい。
また「剣術・馬術・体術」を選んだ場合は所属する隊員の中から共に訓練する相手を
一人だけ選ぶことができます。誰と訓練をするのかも付記して下さい。
隊員の所持スキルの強化・変化や、イベントによる森崎自身の称号取得が起こる可能性があります。

その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願い致します。
期限は『11/29 24:00』です。

155 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/29(木) 18:19:28 ID:u5P3LaeY
******

カリブ海には入植した欧州人が建造した普通の城塞も沢山あります、
といったところで本日の更新はこれまでとさせていただきます。
お付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

156 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/29(木) 18:52:10 ID:???
馬術レヴィン体術トニーニョ
SPDの数値が低いので上げる事を考えました。この組み合わせなら攻撃力と守備力もバランスよくあげられると思います。

157 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/29(木) 21:28:21 ID:???
馬術レヴィン体術トニーニョ
SPDの数値が低いので上げる事を考えました。この組み合わせなら攻撃力と守備力もバランスよくあげられると思います。
レヴィンとは一度は喋った方が良いかなと思います。トニーニョとは喋らなきゃいけない事が多いと思います。

158 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/29(木) 22:35:16 ID:???
魅力 馬術トニーニョ
関係性の微妙なキャラも増えましたし、ここらで魅力上げておこうかなと。
実質副隊長のトニーニョともいろいろ話しておいたほうが良さそうかと。

159 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/30(金) 20:45:22 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>154の選択については……

>>157 さら ◆KYCgbi9lqI様のご回答を採用させていただきます!
そうですね。ちょっとSPDが低めになってきていますので、このままですと場合によっては
格下に思わぬ苦戦を強いられることにもなりかねませんでした。
CP3を進呈いたします。


>>158
実は対面の判定については、高い評価値による内部的な自動成功がまだ続いている状態です。
おかげで適当な話の切れ目で更新することができずに困ったことも何度かありますw
初対面に近ければ近いほど評価値の参照度が高く、深い関係になると魅力値がものを言う傾向にありますので
一部のキャラについてはそろそろ判定が出てきそうですね。


160 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/11/30(金) 20:46:39 ID:Dc/RyHNA
******

*訓練ダイス

※訓練は前後半に分かれています。
★マークごとにお一人づつ、!と numnumの間のスペースを消してダイスを引いてください。
目標値【50】に対しプラスマイナス30以内で成功、プラス31以上で大成功、マイナス31以下で失敗となります。
大成功時は成果が1.5倍、失敗時は0.5倍となります。


前半(馬術)1
! numnum + ! numnum + ! numnum =

前半(馬術)2
! numnum + ! numnum + ! numnum =

後半(体術)1
! numnum + ! numnum + ! numnum =

後半(体術)2
! numnum + ! numnum + ! numnum =


***

161 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/30(金) 20:50:16 ID:???

前半(馬術)1
41  +  51  +  57 =



162 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/30(金) 20:50:18 ID:???

前半(馬術)1
22  +  25  +  01 =

163 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/30(金) 20:56:29 ID:???

前半(馬術)2
18  +  24  +  65 =


164 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/11/30(金) 21:01:58 ID:???
【数値加算】
>>163の左の数値をEP5使って5増やします。

165 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/30(金) 21:14:06 ID:???

後半(体術)1
10  +  20  +  28 =


166 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/30(金) 21:16:35 ID:???
ありゃりゃ
EP10使って左の数値を10増やします

167 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/11/30(金) 21:21:04 ID:???
【数値加算】
>>164の左の数値をEP10で10増やします
記入漏れすみません

168 :◆9OlIjdgJmY :2012/11/30(金) 21:42:07 ID:???
【代理消費】
>>167のEPを9代理消費します。

169 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/11/30(金) 21:44:41 ID:???

後半(体術)2
75  +  31  +  89 =


170 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/11/30(金) 21:45:53 ID:???
【数値加算】
>>169の左端の数字をEP5使って5増やします

171 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/05(水) 17:52:23 ID:???
***

皆様、ダイスロールありがとうございます。
それぞれEP1を進呈いたします。


*訓練結果

前半(馬術)1
41  +  51  + 57 = 大成功0 成功3 失敗0

前半(馬術)2
23  +  24  + 65 = 大成功0 成功3 失敗0

→大成功0 成功6 失敗0


後半(体術)1
20  +  20  + 28 = 大成功0 成功3 失敗0

後半(体術)2
80  +  31  + 89 = 大成功1 成功2 失敗0

→大成功1 成功5 失敗0


******

172 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/05(水) 17:53:24 ID:???

//馬術(レヴィン)


枯葉舞う林に響く重低音は、馬の呼吸と蹄の音である。
手綱を繰る森崎の視界を時折白く染めるのは轡を食む馬の、熱い吐息が湯気になったものだった。

『だいぶ様になってきたじゃない』
「ま、これだけやってモノにならねえってわけにも……よっ、と」

軽く手綱を揺すり、愛馬を小さく跳ねさせる森崎。
突き出していた木の根が瞬く間に馬体の下に消えた。

『わ、すご〜い』
「へへん、どんなもんだ」
『前はジャンプさせるたびに舌噛みそうになってたもんねえ』
「いつの話だよ!」

肩の上でぷらぷらと足を揺らす小さな相方に向けた怒声も、しかし実際には呟くような声だった。
軍馬は周囲の騒音や怒号に慣れるよう訓練されているとはいえ、やはり敏感な動物である。
突然の大声に驚いて振り落とされてはかなわない。

『でも慢心は禁物だからね、もっと上手い人はいくらでもいるんだし』
「また偉そうに……」
『たとえば、あの人とか』

と、ピコがその舞い落ちる枯葉よりも小さな手で指さしたのは前方、梢の向こうに見え隠れする影である。
森崎と同じように騎乗したその後ろ姿は、どこか線が細く儚げに見える。
しかしその手綱捌きは流麗の一言に尽きた。
傭兵大隊の馬は基本的に軍部からの貸与であり、特に一般隊員に割り当てられる馬は質が高いとは言い難い。
だが、前方の男にかかれば駄馬も一流に変わるのである。

173 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/05(水) 17:54:25 ID:???
「ステファン・レヴィン……」

森崎の呟いた、それが男の名であった。

『ちょっと、何考えてるのかわかんないとこあるけど……実力は確かな人だよね』
「ああ、そうだな……」

優秀な人材なのは、疑いようがない。
剣術、馬術、更には槍や弓術も見事にこなす。
口数は少ないが物腰柔らかく、勉学礼節にも綻びがない。
ほぼ完璧といっていいその白皙の男の周囲には、しかし人の集まる光景が見られることはない。
それは決して妬みや嫉みといったものが原因ではないように、森崎には思えた。
虫が好かぬ、というものともまた違う。
何となれば、森崎自身もレヴィンという男にどこか得体の知れぬものを感じていたのである。

「……」

初対面のときに感じた殺気と虚無を無秩序に撒き散らすことこそなかったが、
しかし柔和で儚い微笑の奥には何か隠された襞がある。
その直感に間違いはないと、森崎はほとんど確信に近いものを持っていた。
そしてまた誰もがそれを感じるからこそ、彼を敬して遠ざける。
不気味なのは、レヴィンほどの才を持つ者であれば己のそういう部分を周囲に隠し通すことなど
容易であろうにもかかわらず、それをしないということだった。
そこには意図があり、目的がある。

「近づくな……ってか」
『……?』
「いや、なんでもねえよ。……っと」

じっとその後ろ姿を見つめていた森崎の視線に気づいたか、前方の影がすう、と肩越しにこちらを振り返った。
同時、早足で駆けていたその速度が緩む。
瞬く間に影に追いつきそうになって、森崎が慌てて手綱を引いた。

174 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/05(水) 17:55:27 ID:9I9BpGWk

*チェック

(馬術)判定

目標値【34】 → ! numnum

※ ! と numnum の間のスペースを消して数値を出して下さい。
難易度【ターン係数80+容易20】−(馬術66)を目標値とし、目標値以上の値が出れば成功。
00が出た場合は難易度にかかわらず成功となります。
結果によって展開が分岐します。

成功→ 無難にレヴィンと並ぶことができた。
失敗→ 反応が遅い。レヴィンを追い越してしまう。

175 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/12/05(水) 18:32:41 ID:???
目標値【34】 →  91

176 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/06(木) 19:08:48 ID:???
***

成功→ 無難にレヴィンと並ぶことができた。


「よう、レヴィン」

片手を上げて挨拶をしながら、森崎がレヴィンの馬と轡を並べたところで愛馬を静止させようとする。
意図を読み取ってくれたのか、それとも単なる気紛れか、計ったようにぴたりと鼻先を揃えて止まってくれたのは
僥倖というべきだろう。

「これは隊長。さすがのお手並みですね」
「いや、まだまだこいつに遊ばれてるよ」

ぽん、と愛馬の首を叩いて森崎が首を振る。

「早いとこ格好をつけなきゃならないんだろうが、何しろ鞍の上ってのはまだ馴染まなくてな。
 その点、お前は随分と手慣れた風じゃねえか」

実際、技術の素地が違う。
前歴不明ということだったが、どこかの軍や傭兵団で訓練を受けたものだろうか。
そんな風に考えていた森崎に、レヴィンが些か予想外の答えを返す。

「幼い頃、基礎を叩きこまれましたので」
「ほう……?」

幼い頃、ときた。
それはつまり、極めて裕福な市民階級か、それともある程度以上の騎士、貴族の子弟であると
告げているも同然だった。
うっかりと口を滑らせるような男ではないだろう。
とすればこれは、踏み込んでも構わないという合図だろうか。

177 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/06(木) 19:10:47 ID:???
迷う森崎を前に、

「騎士の家に生まれたんですよ」

あっさりと、レヴィンが続けた。

「父が若い頃、リヴォニアで功績を挙げて取り立てられたんです」
「リヴォニア……ああ、お前はスウェーデンの出身だったな」

リヴォニアは北欧、バルト海の東側に位置する地域である。
港を求めて西進したシベリアに対し、北欧の雄スウェーデン他の諸国が交戦してこれを打ち破ったのは
時を遡ること二、三十年前の話であった。

「騎士の出なら、まあ文武に通じてるってのも納得ではあるが……」

含みをもたせたのは、無論この先を続けて構わないのかという意思確認だった。
しかしレヴィンの口元に張り付いた薄い微笑は、僅かな乱れを見せることもない。
澱みのように穏やかに、汚泥のように柔らかく、何らの葛藤も見せずに頷くと、言う。

「もう、ありませんから」
「え……?」

咄嗟には言葉の意味を図りかね、接ぎ穂を失った森崎にレヴィンがゆっくりと瞬きをして、繰り返す。

「もう、ありません。レヴィン騎士爵家は、既にスウェーデン王国には存在しないんです。
 それで僕は浪々の身となりました」
「それは……」

あまりにも屈託なく。
どこまでも淡々と。

「壊されてしまったんです。そこにあった家も、そこにいた人も。だから、もうありません」

178 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/12/06(木) 19:13:25 ID:sLHyRKsM
まるでのどかな昼下がりの、茶飲み話のように何気なく、微笑みながらそれを言う。
しかし、たとえば凪いだ海が船を抱いて離さぬように、底なし沼の足に絡めば抜けないように、
男の瞳は、静かに腐っている。

「お前は」

森崎がその瞳に告げる―――


*選択

A「逃げてきたのか」

B「復讐したいのか」

C「死にたいのか」

D「生き延びたんだな」


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『12/6 24:00』です。


******

戦争に敗れた共産主義シベリアは南進政策に切り替えました、
といったところで本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

179 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/12/06(木) 19:45:34 ID:???
D

Aは地雷、Bは本人の本望、Cが多分本心…と来て、一番心に響くのはDではあるまいか。
心が腐っている人間にはまず大前提(生きてる)を確認させて前向きにさせたほうがいいと思うんだよね。
ピココールとかするべきなのかもしれないけど、戦争関係を傍観してた私はポイントの手持ちが少ないので(笑)

180 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/12/06(木) 19:53:55 ID:???
【ピココール】
こういう明らかに心が壊れてる様に見えるレヴィンにはBCDのどれが彼の心に響くと思う?

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