キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【天ぷら】鈴仙奮闘記26【大好きです。】

1 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/06(金) 23:57:19 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、
東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。

内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで師匠を超えるために努力する物語です。
また、ストーリーやカードの展開次第で、いくつかのキャプテン森崎のキャラクターも、
それぞれの思惑を持ちながら、幻想郷の住人との交流を通じてサッカーを極めていくことになるでしょう。

他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆
【悩むな】鈴仙奮闘記25【斬れば分かる】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1420820255/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html

☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠、八意永琳に並ぶ選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。

選抜大会で活躍し、全幻想郷代表の一員となる事を目標として来た鈴仙はある日、
自身が『プロジェクト・カウンターハクレイ』のキャプテン候補に選ばれている事を知る。
それは霊夢や紫達幻想郷に敵対し、以て幻想郷の価値観を覆すという壮大な計画。
全幻想郷の一員として戦うか、それとも幻想郷を敵に回すか。 大会後の鈴仙には今、二つの選択肢が設けられていた。

全幻想郷代表選抜大会予選リーグ第3回戦・西行寺亡霊連合との試合を2−0で勝利した永遠亭ルナティックス。
予選リーグを全勝で終え、決勝トーナメントの一位通過が確定した鈴仙達だったが、鈴仙の表情は苦い。
鈴仙の友人にして西行寺亡霊連合のFW・魂魄妖夢の迷いと決意を知ってしまったからだ。
「ただ、強くなりたい」。それだけを願って、野心溢れる政治家・豊聡耳神子の軍門に入ろうとする妖夢の道は、
果たして本当に正しかったのか。鈴仙にも、妖夢本人にも分からぬ問いへの答えは見つからない。
――しかし、鈴仙には立ち止まって友を顧みる猶予すら与えられない。
鈴仙の成長による幻想郷の崩壊を怯える境界の妖怪。その式が今、主の命令を超えて、鈴仙に接触しようとしていた。

29 :森崎名無しさん:2015/02/07(土) 23:21:00 ID:???
新スレ乙です。
前スレの中西はインビジ以外全部?止めていて結構強敵だと感じ、描写も格好良かったのでファンになりました。
これからもどんどん素敵なキャラを書いて下さい。応援してます。

30 :森崎名無しさん:2015/02/07(土) 23:22:18 ID:???
その中西とレティは結局どっちが相撲で強いのかな

31 :森崎名無しさん:2015/02/07(土) 23:24:26 ID:???
曙じゃね

32 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 01:05:51 ID:???
こんばんは、遊んでたり本読んでたりでかなり遅くなりましたが、更新したいのでほんの少しだけ更新します。
>>21
新スレ乙っておいしいよねありがとうございます!
>>22
新スレ乙ありがとうございます!
文字数が足りなくて天ぷら要素が入りませんでした(泣)
今日初めて見た人&久しぶりに見た人でも興味を持って貰えるようなあらすじ作成を目指していますが、難しいですw
天ぷらにポン酢って初めて聞きました!おいしそうなので今度試してみます。
>>23
新スレの乙とスレタイ提案ありがとうございました!スレタイ勝手に弄っちゃってごめんなさい!
実はわかさぎあまり食べた事ないんですが、衣をつけたマリネは私も大好きです。
>>27
全日本の強さについては脳内では無く、是非現実世界で味わい、そして絶望して頂ければと思っています(暗黒微笑)
>>29
新スレの乙ありがとうございました。
中西についてはまだ謎が多いままですが、話の一部に絡むようなキャラにしたいと思っています。
キャラクターの描写については、日々四苦八苦しつつも、上手く書けるよう自分なりに努力していた部分なので、応援頂き大変うれしいです。

33 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 01:07:16 ID:???
実況「……試合結果は2−0で永遠亭ルナティックスの勝利!
当初は西行寺亡霊連合の堅守に圧倒されるかとも思いましたが、蓋を開けてみれば、
鈴仙選手を中心とする選手達の活躍により、またしても快勝を果たしました!

これで永遠亭ルナティックスは予選リーグの全三試合を終えて3勝0敗!
勝ち点や得失点差を考える間でも無く、ぶっちぎりでの予選リーグ1位突破となりました!!

対する西行寺亡霊連合は予選リーグ全三試合を終え、1勝2敗とパッとしない成績に終わりました。
一応可能性としては、現在1勝1敗の地霊殿サブタレイニアンローゼスが、
明日の雑魚妖怪チームとの試合に負けた場合かつ、得失点差にて西行寺チームを下回った場合、
西行寺亡霊連合の決勝トーナメント進出が確定しますが……!?」

幽々子「まぁ、そんな事ある筈無いわよねぇ。
風見幽香の攻撃力やレティ・ホワイトロックの守備力はともかく。
それ以外の選手において、雑魚妖怪チームは地底のチームに大きく水を開けられてるんだから」

改めて、試合の終了と決勝トーナメント進出の趨勢を告げる実況の声を、
今しがた敗北したばかりの西行寺亡霊連合のキャプテンである幽々子は、退屈そうに聞き流していた。
ホイッスルがなって暫くが経ち、観客席も実況台も、漸く少し冷静になって来た頃だった。

幽々子「ま。 ……それでも、そこそこ楽しかったかしらね」

できれば、もうちょっと引っ掻き回したかったけれど、と幽々子は付け加える。
特段大きな野望も無く、むしろそれをバカにする方が楽しい彼女にとっては、
今日の試合の負けは悔しかったとはいえ、それ以上にどうこうする気持ちは無かった。

幽々子「ああ、お腹空いちゃった。 今日の晩御飯は そば が良いかしら」

それよりも、今の幽々子にとっては今日の晩御飯のおかずの方が気がかりだった。
彼女は一度人としての生を終えつつも、人並み以上の食欲をなぜか兼ね備えていた。
幽々子は思いついた献立を作って貰うべく、住み込み庭師である妖夢の居る方向へと歩いて行く。
(何故庭師が料理まで作らなければならないのかについて、白玉楼に疑問に思う者はいなかった)

34 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 01:08:20 ID:???

幽々子「妖夢〜。 よ〜む〜〜〜?」

負けたショックで項垂れるルナサや、何か不安げな表情の橙、その他不甲斐なさそうな毛玉達を掻き分けて、
幽々子はこのフィールドが、まるで自宅であるかのようにのどかな様子で妖夢に飯炊きを命じようとする。
――しかし。そうやって幽々子がセンターサークル付近に来た時には、妖夢の姿はどこにも見当たらなかった。
普段なら、自分が呼んだらまるで子犬のように駆け寄ってくれる筈なのに、今日は姿すら見えないなんて。

鈴仙「はぁ……はぁ……!!」

幽々子が不思議そうに首を傾げていた時――彼女の眼前には長い兎耳を着けた細身の少女が、
血相を変えた様子でぜえぜえと息を切らしながら、妖夢の代わりに幽々子の元へと駆け寄って来た。
その少女は、幽々子が声を掛けるよりも早くに、辛うじてこう伝えた。


鈴仙「ゆ……幽々子さん。 妖夢は……! 妖夢は……試合終了直後、すぐにサッカーコートを出て行きました。
実況や観客は勿論、他の選手にすら殆ど気づかれない内に。 妖夢は……走り去っていきました……!
たった一言、幽々子さんに……『暫く家を空ける』とだけ、言い残して……」


妖夢の後を追っていたらしい少女は、後悔とも動揺ともつかない声と表情のままそう言って、
泣きそうな顔で、ペタリと地面にへたり込む。
彼女と妖夢との間で何があったのか。
幽々子には詳しくは分からないが、この兎耳の少女は妖夢に対して、何らかの後ろめたい感情を抱いているように見えた。
その少女を励ますつもりか、それとも自虐のつもりか。
幽々子は報告してくれた少女を抱きしめて、そっと礼を言ってあげる事にした。

幽々子「報告ありがとう。 そして……ごめんね。 貴女の大好きな妖夢を、こんなにも追い詰めてしまって」

そう言われた少女――名前を何と言っただろうか――は、泣きじゃくっていた。
少女と妖夢との間に何があったかを把握していないにも関わらず、
幽々子は、その少女は何一つ間違った事をしていないと何故か確信していた。

35 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 01:10:13 ID:???
――と、言ったところで今日の更新はここまでです。
明日は鈴仙と妖夢との決別シーンに触れつつ、藍とのイベントの導入から初めて行きたいと思います。

皆さま、本日もお疲れ様でした。

36 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 01:13:54 ID:???
乙です

>幽々子「ああ、お腹空いちゃった。 今日の晩御飯は そば が良いかしら」
それよりも、今の幽々子にとっては今日の晩御飯のおかずの方が気がかりだった。

まさかそばをおかずにご飯を食べる的なアレか!?
かつ丼重ねざるみたいな感じか!?
やばい、また腹が減ってきた

37 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 01:31:13 ID:???
乙ロット!

38 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 01:45:08 ID:???
乙ロットー!

力を求めて一人消える妖夢……一体どうなるとこやら

1 料理を作ってくれないことにゆゆ様激おこ強制的に連れもどされる
2 衣食住を失い、行き倒れてけーね先生に保護される
3 力に固執するあまり、ダークサイドに堕ちて闇のフォースに目覚める エピソード5 妖夢の帰還

4 武者修行中の中山さんに遭遇、中山さんがなんとかしてくれる。YNS!

個人的には1を期待

39 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 11:17:17 ID:t7VIDtr2
>>33
*幽々子様がそば以外に本日お召し上がりになるはずだった
料理(メインディッシュ): クッパ 704 人前
おかず: カップぬるぽ 943 人前  のり弁当 89 人前 
飲み物: 緑茶 805

は、従者の失踪により抜きになりました。


40 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 11:43:55 ID:???
ほとんど炭水化物じゃねーか!
ハイカーボネイトにもほどがあるわww

41 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 11:57:13 ID:???
そりゃ妖夢も失踪するわ

42 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 11:59:43 ID:???
妖夢失踪→矢車さんに拾われる こうですねわかります

43 :39=柳田幻想雄:2015/02/08(日) 13:27:43 ID:???
クッパのカロリーを612kcal(http://calorie.slism.jp/200055/参照)、
カップぬるぽのカロリーを364kcal(http://www.eiyoukeisan.com/calorie/gramphoto/kokurui/kappumen.html参照)、
のり弁当のカロリーを695kcal(http://matome.naver.jp/odai/2136592418843891601参照)とすると、
総合計カロリーは835955kcal!15-17歳の女性に必要な1日のカロリーの実に653倍である。
しかもこれはたった1食分のカロリーである。幽々子様がこの調子で1年間食べ続けたとすると、摂取カロリーはなんと約9億1537万kcal!
億単位のカロリーなど初めて見た。このうち3分の1を米で賄っているとすると、1年間に必要な米は205.7トン、
こしひかり10キロ3000円としても購入費は6171万円!
副食物を加えると億単位は確実だ。幻想郷は勿論、外から買うにしてもあっというまに白玉楼は金欠に陥ってしまうだろう。
(コメのカロリーはhttp://www.eiyoukeisan.com/calorie/gramphoto/kokurui/kome.html参照)

そうなると自力で生産するほかないが、これ程の量となると広大な農地が必要になるのは火を見るより明らかだ。
「09こめフォーラム基調講演」の『田んぼとお米−面積、生産量、水−』によると、
1886年(明治19年)の10アール当たり収穫量は200キロとある。
明治期ごろの社会となっている幻想郷の白玉楼も同等とすると、幽々子様の食欲を満たすために必要な水田面積は102.9ヘクタールとなる。
http://karusyoku.com/kouen/09kouen03.html参照)


44 :39=柳田幻想雄:2015/02/08(日) 13:30:35 ID:???
100ヘクタール超の水田!野菜畑や牧場も含めれば数百ヘクタールほどの面積が必要になるのは確実だ。
農作業は妖夢や楼内の亡霊達に頑張ってもらうしかないが、問題はこれ程の面積をどうやって確保するかだ。
それ程広くない幻想郷にこれだけの土地をただ1人の為によこせとなれば、また新たな異変となってしまうだろう。
本の描写からもそれほどの農地を白玉楼が所有している様子は見られない。
となると、ひょっとしたら白玉楼の地下は米などの穀物・野菜工場が何層にも広がっているのかもしれない。

……はっ!?
幽々子様がヒューガーへの力添えを決めたのは、この深刻な食糧問題を解決するためではなかろうか?
数十数百ヘクタールの野菜工場を運営するための機材や技術を得るには外界の協力が不可能だ。
工場を作らなくても、これ程の大量の種籾、肥料、農薬は外の世界でしか手に入らない。
妖夢を過労死させたくなければコンバインなどの機械も必要だ。
そうなればヒューガーの登場は白玉楼にとって渡りに船である。
妖夢にとっては日々の厳しい農作業から解放される救い神のように見えたであろう。


45 :39=柳田幻想雄:2015/02/08(日) 13:35:05 ID:???
訂正
外界への協力が不可能だ→外界からの協力が不可欠だ
です。

本来は妖夢の調理時間についても考察してみたかったが、
資料が見つからなかったため断念した。
しかしながら1日の殆どを料理にあてざるのを得ないのは明らかである。
世間からは庭師・剣客ではなく料理人として、妖夢の名は知られている事であろう。


46 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 13:38:43 ID:???
妖夢はハイパーカンピオーネじゃなくて完璧超人(あやつ派閥の方)に入ると良いと思う
多分あやつの好みのタイプだよ今の妖夢

47 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 16:58:23 ID:???
一度の負けで自害必須なんですがそれは
無量大数軍の異名つけるとしたらなんですかね、「完みょん」とか

48 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 19:45:08 ID:???
*****

鈴仙「あっちゃあ。 シュート、決まんなかったわね……」

パスカル「仕方が無いさ。 充分手ごたえはあったから、次以降の試合に期待するしかあるまい」

話を僅か数分前へとさかのぼる事にする。
試合終了のホイッスルが鳴った直後、鈴仙とパスカルは前線にて必殺のツインシュート
――『リフレクトバレット』が決まらなかった事について、残念そうに話しあっていた。
精度は問題無かったから、後は速度とパワーがどうとか、勝利の余韻はさておいて、そう反省会をしていた時である。

タタタタタッ……。

パスカルの頭越しに、銀色と白色の混じった何かが、両チームの選手達と交わる事も無く、弾丸のようにフィールドを走り去っていった。

妖夢「…………ッ!」

その影は、しっかりと確認するまでも無く妖夢だった。
目をぎゅっと瞑り、自分が僅かに残してきた何かへの未練を断ち切るよう、
他の西行寺亡霊連合のメンバーが気付くよりも早く、妖夢は人里サッカーコートの選手用の出口へと走っていた。

鈴仙「ちょ、ちょっと妖夢……!」

自分のチームの選手と遭わないように、妖夢はルナティックス側の出入り口へと向かっていた。
鈴仙はパスカルを放置して堪らず走り出した。
何か言うべき事がある訳でもない。兎に角、鈴仙は妖夢を追いかけずにはいられなかった。

タッ、タッ、タッ……!

妖夢「はぁ、はぁ……!」

鈴仙「見つけたわよ、妖夢……」

49 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 19:46:08 ID:???
――結果として、鈴仙は割と簡単に妖夢を見つけて呼び止める事が出来た。

チームメイトが気付くよりも先に飛び出したとは言っても、
ルナティックスのベンチの隣にある出入り口を抜けた時点で、補欠の名無しウサギからの証言は充分にあったし、
出入り口を抜けた時点で、試合終了後のサッカーコートの周囲には多くの観客が居る。

それこそ空でも飛んで行けば、鈴仙やその他の追っ手を容易に撒く事が出来たのだろうが、
どうやら今の妖夢には、そんな簡単な事すら思いつかなかったようだ。
妖夢の表情は純粋な驚きにより、明確にこわばっていた。

鈴仙「……そんなに、驚く事じゃあないわよ。 いくらあんたが俊足だからって、
空でも飛ばない限り、出入り口は限られるんだから。
それにまさか、人を切り捨ててでも逃げおおせようだなんて、流石に思わないでしょうし」

妖夢「……どうして」

息を切らしながら饒舌になる鈴仙に、妖夢は悲痛な面持ちで疑問を口にし。
そこから先は、まるで堰を切ったように、妖夢は半分泣きながら鈴仙に言い放った。

妖夢「――どうして、鈴仙は私にそうやって構い続けるの!?
前に言ったじゃない、私がどんな道を選んだって、鈴仙は私を応援してくれるって!
だったら、私なんてほっといてよ! 私は一人で強くなる。鈴仙は皆と一緒に強くなる。
どう頑張ったって、私と鈴仙との道はもう二度と交わる事なんてないんだから。
――だから、これ以上、私を惨めにしないでよ……!!」

それは、これまで鈴仙が聞いて来た中でも、一番悲痛で、かつ真実に迫った妖夢の言葉だった。
そして同時に、鈴仙は改めて、自分と妖夢の選ぶ道には大きな溝があるという事実に気付いた。

妖夢「……鈴仙が悪いんじゃないよ」

時間が経ったからか、それとも周囲の野次馬の視線が気になりだしたのか、
妖夢は声のトーンを落として、今度はぽつりぽつりと語り始めた。

50 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 19:47:11 ID:???
妖夢「……鈴仙があの時――あの特訓の時に、仮に私を引き留めていたとしても。
私はきっと、『ハイパーカンピオーネ』計画の一員になっていたと思う。 それが私の選んだ道だから。
だから、鈴仙はなんて後悔する必要ないし……むしろ、後悔なんて、死んでもして欲しくない。
だって、後悔や同情なんてされたら……私は永遠に、鈴仙と同じ位置に立つ事なんてできなくなる。
例え、私がどんな道を選んだとしても」

鈴仙「…………」

鈴仙は何も言えなかった。
自分が考えた言葉の全てが、妖夢を惨めにするだけにしかならないと思った。
いっそ妖夢を張り倒してやりたい気持ちだったが、英雄でも狂王でも無い、
根本はただの臆病な少女である鈴仙に、そんな主人公のような行動が出来る筈も無かった。

妖夢「……鈴仙、ありがとう。 何も言わずに居てくれて」

妖夢はそう言うと振り向き、サッカーコートを歩き去ろうとしていた。
彼女は最後に幽々子に対して家を空ける旨伝言してくれるよう鈴仙に依頼し。
最後に妖夢は――鈴仙に対して優しい声で、こう告げた。


妖夢「――鈴仙。図らずとも私と貴女は、また戦う事になると思う。
それは、たぶん貴女が思っているよりも、ずっと早い段階で。 だから――その時まで、さよなら」

51 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 19:50:12 ID:???
******


幽々子「……成程。 そんな事があったのね。 食事は中西君や幽霊達にお任せするとしても、
まさか妖夢が、そこまで思い詰めていただなんて……」

鈴仙「すみません、止められなくって……」

鈴仙からの一連の話を聞き受けた幽々子は、う〜んと彼女なりに難しい顔をして腕を組む。

幽々子「こう見えても、色々と私だって思うところはあるわ。
あの時こうすれば良かった、だとか、あの時ああじゃなかったら……とか。
だけどね。 そんな後悔やたられば程、人生においてムダな物は無いと思うの。
一度悪い事が起きたら人は、どうしてこうなったのか、どうすれば良かったのかを考えて次に繋げようとする。
それ自体は悪い事じゃないかもしれない。

だけど……そうやって突き詰めていけば、全ての行動が悪いように思えてきちゃう。
過去の反省が却ってその人を縛る枷となり、正しい行動を取る邪魔をしてしまうの。
ううん。ひょっとしたら……その人は、過去の正しかった行動すら間違いだったと、そう勘違いしてしまうかもしれない。
でも、それは正しくないと思うし。 何より、楽しく無いなぁ……って思わない?」

鈴仙は元々幽々子とはそこまでの付き合いは無かったが、
恐らく彼女がここまで長々と話をする事は珍しいのではないかと思った。
それだけ、彼女自身も鈴仙の分からない場所で妖夢について悩み、考えていたという事なのかもしれない。

幽々子「……ま、年寄の繰り言だったかもだけど。私があなたに言いたいことは妖夢とおんなじよ。
――あなたは、決して自分の選択について後悔してはいけない。
……それが一見、間違いだらけの結果だったように見えてしまっても、ね」

幽々子は鈴仙にそれだけ言って「中西く〜ん、ご飯作って〜」と、ふらふらとゴールの方向へと去って行ってしまった。
果たして幽々子はどうした気持ちで、あるいはどうした意図で、鈴仙にここまでを告げたのかは分からない。
しかし、鈴仙の中での妖夢への後悔や罪悪感は、幾許かは薄くなっているような気がした。

52 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 19:51:13 ID:???

鈴仙「(妖夢。 ……私はあなたを信じたい。 だから――また会う日まで。
そして――また、共に肩を並べて戦う日が来るまで、……さよなら)」

鈴仙はかつてのような穏やかな気持ちで、心の中で、妖夢との別れをする事が出来た。



藍「……お取込み中の所、失礼するよ」

――しかし、鈴仙が妖夢について顧みる事が出来たのはそこまでだった。
鈴仙の思考は、不意に後ろから呼び止められた声により中断させられる。

鈴仙「――貴女は……藍さん。 ……どうしたんですか」

鈴仙に声をかけた長身で金髪、青と白を基調とした導師服を来た美しい女性
――西行寺亡霊連合の助っ人トップ下・八雲藍は、感情の灯らぬ視線を鈴仙に向ける。
何故彼女が、永琳でも無く自分の元へ挨拶に来たのだろうか。
藍の事を知ってはいたが、しかし接点が少ない鈴仙は、訝しげに返事をした。
そうした鈴仙の態度は想定内だったらしい藍は、少しだけ穏やかな笑みを見せ、鈴仙にこう言った。

藍「……何。 大した話じゃあない。 ――ちょっと、これから散歩でもどうかと思ってね」

鈴仙「……へっ? 私が、藍さんと――散歩? 一体どうして……?」

鈴仙はこの時、藍の事をかなり警戒していた。
鈴仙は前に永琳と輝夜を通じて、『プロジェクト・カウンターハクレイ』の一員になる打診を受けている。
そしてその『プロジェクト・カウンターハクレイ』というのは、
サッカーを通じて、博麗の巫女と妖怪を中心とする幻想郷の在り方を変えようとする計画。
だとすれば、今の幻想郷を取り仕切っている境界の妖怪・八雲紫が警戒していてもおかしくはない。
だから、差し当たり紫の忠実な式である藍を刺客として、鈴仙に差し向けて来たのかもしれない。
鈴仙は素直に藍の怪しすぎる申し出に頷けなかったが。

53 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 19:52:14 ID:???

藍「……安心して欲しい。 今、私は紫様の式としてでは無く。
この幻想郷に住まう一匹の妖怪として、君に話をしたいと思っている。
――『プロジェクト・カウンターハクレイ』。『ハイパーカンピオーネ』。
これらの計画が動く中で、幻想郷はどうあるべきかについて、
『プロジェクト・カウンターハクレイ』のキャプテン候補でもある君に、私は話をしたいんだ」

鈴仙「――どうして、それを……!」

藍「……何故、私がそれを知っているのか。 そして、これを知った上で、私は君に何を話したいのか。
もしも君が私に着いて来てくれるのならば、私はその一切合財を説明してあげよう」

鈴仙「……卑怯ですよ。 そんな事言われたら……断るにも断れないじゃないですか」

藍「それは済まない。 だけど、どうしても私は君と話をしたい。
いや――正確には、話を通じて、君にお願いをしたい事があるんだ。 ――どうだろう、聞いてはくれないか」

ここまで言われて、また、ここまで事情のある相手に対して、鈴仙は断る訳にも行かなかった。
鈴仙は永琳と輝夜に「少し寄り道してから帰る」とだけ告げて、藍の誘いに乗る事にした。

54 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 19:54:19 ID:c+Lh/gaY
******

〜人里〜

秋風の涼しさの中、鈴仙と藍は、人里に走る細長い運河の土手を歩いていた。
道すがらには忙しなく人間や獣人、果ては妖怪とも思しき少女や妖精の姿も見える。
決して混み合う程では無いが、しかし寂れた様子も無い、いつも通りの人里の光景だった。

藍「ここは『柳の運河』とも呼ばれていてね。
ご覧、この並んで植わっている柳が風に揺れていて、夏でも随分と涼やかで良い通りなんだ。
――もっとも、夜はろくろ首が出るとかで、別の意味でも涼しい所だけどね」

鈴仙「その位知っていますよ。 私達だって、外界との接触を始めてからもう何年にもなります。
特に私達、永遠亭の妖怪ウサギは人里とも懇意にさせて頂いてるんですから……」

藍「――む。 それもそうか。 ……だったら、この一角にある豆腐屋は知っているか?
最近、粋の良いバイトが入ったとかで、油揚げの味も格段に良くなった」

鈴仙「えっ、それは知らない。 今度、姫様へのお土産に買って来てあげようかしら」

藍と鈴仙が歩き始めて暫くになるが、藍はこうして人里の名所や名店を歩き回って、
こうして鈴仙に場所の紹介や説明しかしていない。
これではまるで、藍が鈴仙を連れて観光デートをしているみたいではないか。

鈴仙「――あの。 ところで藍さん。 ――話したい事って……?」

藍「ああ……。 もうちょっと待って欲しい。 待ってほしいんだが……そうだな」

試合での疲労も相まって、鈴仙はさっさと藍の話したい事を聞きたかった。
そして、藍から初めてまともな投げかけがあったのが今この時だった。
藍はお勧めの豆腐屋の主人から油揚げ 271 個を買い付けながら、
まず、鈴仙に対してこう質問をした。

55 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 19:55:19 ID:c+Lh/gaY
藍「――では、まず一つだけ。 ……君は、今の幻想郷をどう思っている?
妖と人とが共存し、各地にはありのままの自然が残り、神々が集い憩う理想郷と思うかい?
それとも、妖怪は人間を飼い殺しにし、文明の恩恵は不当に剥奪され、弱者の努力は封殺されるディストピアと思うかい?

――いや、もちろん完全なユートピアなど、物語の中でしか存在しえない。そうした意味では前者はあり得ないか。
……だが、今の幻想郷が君にとって住みよい場所か。それとも、君にとって住みづらい場所か。
そういう観点ならば、ある程度ハッキリと明確に応えられるのではないかな?

私が話をする為には、もう少しだけ時間が掛かる。
だが、その話をする前提として、まずは――鈴仙。君の今の考えを教えて欲しい。
何、ここでどんな回答をしたところで、私は意地悪もしなければ、特段の便宜を図る事も無いよ。
あくまでアンケートだ。 そのつもりで答えて欲しい」

『今の幻想郷をどう思うか。良い場所と思うか、良くない場所と思うか』
藍は長々と語ったが、聞きたい事の要点は一行で纏められた。

鈴仙「(私は……どう、思っているのかしら。 今の幻想郷を)」

藍が聞いて来た事は、鈴仙にとって盲点だった。
これまで鈴仙は、『ハイパーカンピオーネ』だの『プロジェクト・カウンターハクレイ』だの、
幻想郷の今後を揺るがす計画についての話を散々……とまでは行かないが何度も聞いて来た。
しかし、結局自分は、幻想郷の今後について。今の幻想郷について、どう考えているのだろうか。

鈴仙「(私はかつて日向に、幻想郷は、生まれつき力の強い妖怪や才能のある人間が得をする…と語った事がある。
それは真実かもしれない。 でも、その時の質問と今の問いかけとはまったく別。
あの時は幻想郷での努力という概念に関する質問だったが、今回はそれも含めた、もっとスケールの大きい話。
だから、改めて考え直す必要はあると思うけれど――)」

56 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 19:59:38 ID:c+Lh/gaY
呑気なようでいて、いやに慎重な様子の藍を不思議に思いながら、
鈴仙はこれまで自分が幻想郷で見て来た風景を思い出しつつ――とりあえず藍の問いかけにこう答えた。

A:「いい場所だと思います。理想郷…とは言いすぎかもですが、掛け替えのない場所だと思います」
B:「どちらかと言えば、良い場所だと思います。細かい問題はあるけれど、今の在り方は変えるべきでないと思います」
C:「どちらかと言えば、良い場所とは言えません。より努力が報われる社会になるよう、今の在り方を変えるべきです」
D:「良い場所とは言えません。強い妖怪にとっては都合のいい場所ですが、多くの弱者は、まるで飼い殺しの豚のような扱いです」
E:その他 自由選択枠

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

*どの選択肢を選んでも、特別な有利不利は生じません。純粋な意見として回答ください。

>>36
乙ありがとうございます!私もラーメンライスならたまにやります。
>>37
乙ロットありがとうございます!
>>38
乙ロットありがとうございます! 4あたりはJOKERでありそうですねw
>ゆゆ様の食事について
実際どれだけ食べてるんでしょうねw
冥界の敷地は溢れかえる幽霊のお蔭で広いので、きっと広大な田んぼがあるのでしょう(適当)

57 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 20:00:36 ID:+uLoPlbk
B

58 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 20:01:34 ID:7e1bMKH6
C

59 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 20:01:40 ID:6FTyQjwI
Eいい場所なんだけど最近色々と狂ってきている場所

60 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 20:02:37 ID:36pgGb2Y


61 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 20:04:02 ID:???
Eつかさ「この世界も・・・俺が破壊してやる!」

62 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 20:04:03 ID:Jb7sfk5M


63 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 20:07:29 ID:???
個人的には逆質問したいな。式としてではなく、八雲藍個人として幻想郷のありかたをどう考えているのか。

64 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 20:10:14 ID:???
>>63 質問を質問で返すなァーッ!

65 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 20:14:45 ID:???
>>63
確かに逆に聞いてみたいよな
考えがあったからこそ鈴仙に質問したんだから

66 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 20:55:34 ID:c+Lh/gaY
C:「どちらかと言えば、良い場所とは言えません。より努力が報われる社会になるよう、今の在り方を変えるべきです」

「どちらかと言えば、良い場所とは言えません。より努力が報われる社会になるよう、今の在り方を変えるべきです」
鈴仙はこう答えた。素直に、かつ自分なりに色々と考えた結果だった。

鈴仙「……私は、地震や異常気象に悩まされた、人里に住む人間達と話をした事があります。
少し前、人里で宗教戦争という名目で、ストリートバトルが流行ってましたよね?」

藍「――ああ、そうだな。 あの時は巫女が出ていたが、私も裏方で色々と苦労をしたものだ」

鈴仙はふと藍の目の下に刻まれたくまが気になった。
化粧で誤魔化しているが、良く見ると藍の顔は本来の外見年齢――
鈴仙よりも少し年上、十代後半から二十代前半程度か――よりも五つは年上に見える。
しかし、鈴仙は敢えてその理由を深くは聞かない事にした。

鈴仙「……それから暫く後の新聞や人の噂で、ストリートバトル流行の原因は宗教家だけでなく、
人の感情を操る能力を持った面霊気の仕業だ――、って事が明らかになりましたけど。
あの時、みんなが戦いを渇望し、「ええじゃないか!」の声が止まなかったのは、たぶん、それだけじゃない……と思います」

藍は豆腐屋が巨大な袋に大量の油揚げを詰めている様子を見て満足しながら、鈴仙の話に相槌を打つ。
鈴仙は意を決して、結論までを一気にしゃべり切る事にした。

鈴仙「――あの時、人間は、疲れていたんだと思います。そして、確かに不満を持っていたんだと思います。
自分達はこんなに苦しんでいるのに、宗教家達は人気取りに明け暮れ具体的な救民は行わず、
莫大な力を持つ吸血鬼や天狗に鬼達は、その争いを楽しむだけ楽しんで、自分達はのうのうと暮らしている。
……だけど、人間が幾ら努力したところで、吸血鬼や天狗に適う事は永遠に無い。
それって、ちょっと歪んでいるんじゃないかと思います。 人間だって、妖精だって、弱い妖怪だって。
――誰もが、努力さえ積めば、望み通りの自分になれるような。 そんな風に、幻想郷の在り方は変わっていくべきです」

67 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 20:56:38 ID:c+Lh/gaY
藍「――成程。 確かに、そうした考え方もある……か」

藍は豆腐屋の店主に代金を払い、何かの妖術で大量の油揚げをどこかへ転送しながら、鈴仙の言う事に深く頷いた。

鈴仙「――あの。 藍さんはどう思うんですか?」

藍「私? ああ……私の考えか。 ――そうだな。 では……ちょっと、場所を変えようか」

藍は鈴仙の答えに突っ込む事も無く、更には自分の意見を話す事も無く豆腐屋を後にした。
そして再び、鈴仙と藍の人里散歩は続く。
鈴仙はそろそろ文句を言いたかったが、藍の意図が掴めない手前ここは我慢する事にした。


*****


藍「――この店は知っているかい? 人里で唯一の貸本屋・鈴奈庵だ。
怪しげな妖魔本の噂で有名だが、中には普通のサッカー教書もあるから、練習の効率化にも役立つぞ。
店番の女の子は年端もいかない少女だが、稀覯(レア)本には非常に詳しい。
来たら、面白いクエストを吹っ掛けられるかもしれないな」

鈴仙「――あの。 藍さんっ!」

鈴仙はもう我慢の限界だった。時間はもう昼過ぎ。かれこれ二時間は藍と人里を巡っていた事になる。
そして幻想郷の人里はそんなに広く無い。貸本屋を案内し終わった以上、残す観光スポットはもう無くなった筈だ。
鈴仙には藍の意図が全く掴めなかった。

鈴仙「もう。 私だって疲れてるってのに……どうして、何にも肝心な事を話さないんですか?
それとも、こうして時間を稼ぐのが何かの作戦だったとか何とか――!?」

68 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 20:57:43 ID:c+Lh/gaY

次に藍がまた話をそらし始めたら、鈴仙は本格的に帰ろうと思っていた。
しかし藍はここで漸く鈴仙に核心を話す準備が出来たらしい。
藍は貸本屋の傾いている看板を手で直しながら、

藍「――済まなかった。 少し結界を張っていたんだ」

と、独り言のように小声でつぶやいた。

鈴仙「結界……? どうしてまた、そんな……?」

鈴仙の問いに答える代わりに、とりあえず看板の傾きを直し終わった藍は――。

藍「………!!」

……ブウウッ――ビュウンッ!

鈴仙「きゃ、きゃあっ!?」

僅かに顔を顰めて念じ、鈴仙と自身とを別世界へと転送してみせた。
自分の身体が僅かに浮き上がる感覚を覚えながら、鈴仙の意識は一瞬だけブラックアウトした。

69 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 21:02:16 ID:c+Lh/gaY

〜亜空間〜

藍「――済まなかったな、色々と回りくどい事をしてしまって。 しかし、紫様の眼を掻い潜るには、こうまでするしか無かった」

鈴仙は藍色(あいいろ)の空間の中で目覚めた。
まるで夜の空か海のように穏やかな空間には、しかし一切の物体が存在しない。地面も、天井すらも存在しない。
ただ存在するのは、(おそらく)鈴仙と――眼前で鈴仙に対して詫びる九尾の狐。八雲藍との二人だけだった。

鈴仙「ここは……?」

藍「――私が作りだした亜空間。 ――紫様が得意とされる『スキマ』の中に似たような物かな。
もっとも、私如きの能力では、ああも便利に空間を引き裂いたりは出来ないが。
一応、会話や妖力の使用を隠匿する結界は人里中に張り巡らせたけれど、
念には念を入れて、更に私専用の空間にて話をさせて貰おう」

そこまで話す藍を見て、鈴仙は漸く彼女の意図が分かった気がした。
要するに、藍はどうしてもこの話を、鈴仙以外の誰かに聞かれたくは無いのだ。
いや、誰かと言うよりも、具体的には――。

藍「……一つ、頼みがある。 この話は、決して他言無用だ。 何故なら――」

鈴仙「何故なら――八雲紫が、耳ざとく貴女の行動を察知してしまうかもしれないから……でしょう?」

藍「……そうだ。 意外と、頭が回るんだな」

『意外ってどーゆー意味よ!』……と言ってやりたくもなったが、鈴仙は我慢した。
藍の方も、それなら話が早い、と言わんばかりに頭を振り。そして――。

藍「……ならば、私は君にお願いしよう。 鈴仙・優曇華院・イナバ」

70 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 21:05:14 ID:???

藍は勿体ぶった風に、一言一言を選びながら、鈴仙の顔をじっと見つめて告げる。
藍の機械のように冷静な表情が、この時怯えの色を帯びていた事に鈴仙は気付かなかった。

藍「(紫様――申し訳ございません。 私は始めて、私の意志で、貴女の命に背きます)」

藍の脳裏には、親友であった筈の幽々子を『裏切り者』と口汚く罵る、変わり果てた主の姿があった。
自分も後で、同じように言われるのだろうか。
いや、自分の場合、罵られるだけでは済まないかもしれない。
藍は少しだけ寂しく気持ちになりながらも、決意を籠めて――。


藍「鈴仙。私は君に……紫様考案の『リアル・幻想・セブン』計画の一員となって欲しい。
そして、その上で――紫様の計画を、打ち砕いてはくれまいか」

鈴仙「り、リアル・幻想・セブン……計画……!?」

――八雲藍は、土下座せん勢いで深々と頭を下げ、鈴仙に懇願した。

71 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 21:09:26 ID:???
E
幻想郷の社会構造って旧ソ連みたいに思えてきた。
有力者に対し無力(暴力、社会影響力、またそうした意見を発信できる場の不在)なこと
結界に覆われ外から隔絶した状況、スペルカードとサッカーがあるとはいえ、
未だに強い上意下達式体制、有力者は外の物品を手に入れられるのにそれ以外は
100年前の生活水準・・・
言うならば東方の登場人物は皆ノーメンクラトゥーラであって毎日呑気に過ごせているのであって
幻想郷全体としてはよくない状態だ。
改革を行わなければそのうち幻想郷社会が硬直して、うまくいかなくなるのではないか



72 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 21:10:00 ID:???
遅いよwwww

73 :71:2015/02/08(日) 21:16:23 ID:???
iPadで推敲しながら入力したら遅くなってしもーたwww
ま、ただの雑感なので気にしないでくださいw

74 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 21:17:04 ID:???
――と、いったところで一旦ここまでです。
リアル・幻想・セブン計画(RG7計画)は、鈴仙が第二部進む事が可能なルートの一つです。
これからまた時間を掛けて、藍の概要説明パートを行います。
取りあえず現時点で、

・RG7計画の概要、紫の企み、藍の思惑
・計画に乗った場合、大まかにどういったスケジュールになるのか
・この計画が幻想郷や他の計画(『プロジェクト・カウンターハクレイ』など)に与える影響について
・RG7メンバーの選抜について(監督とかコーチ陣とかの説明含む)
・藍が何故鈴仙にこのような申し出をしたかについて
・藍は幻想郷をどうしたいと思っているのか、今の幻想郷をどう思っているのか
・他にスポンサーなどはいるのか

……については、言及したいと思っています。
もしも↑の内容の他に、追加で聞いておきたい事があれば、コメント頂ければ対応いたします。
(答えられない質問や、曖昧にしか答えられない質問もあります)
22:30〜23:00頃から更新を再開したいと思います。

>>63,>>65
また後で言及しますが、今回の投票で行くと藍はBの方向で考えています。
>>71
非常に危ういバランスの下成り立っているとは、私も思いますね。

それでは、一旦失礼いたします。

75 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 21:19:15 ID:???
それはそうと新型のスカウターちょーだい

76 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 21:26:58 ID:???
一旦乙です

なぜ、いつから紫はそこまで変わってしまったのか
人里が荒れていることや、一部の宗教家の扇動について、なんら手は打たなかったのか、それとも打てなかったのか
そもそも藍は今のまま持つのか?(既にかなりやばそう)
鈴仙が紫のもとに潜り込んでも、警戒されまくりじゃないか?

この四つぐらいかな? とりあえす

77 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 21:32:21 ID:???
藍にとって辛辣な質問になってしまうかもしれません。それでも聞きたいことがあります。

鈴仙も妖夢も、悩んで苦しんで自分の信じる道を選んだ。
何故自分でRG7計画を内部から壊そうとしないのか?
はっきり言って他人任せじゃないのか?

78 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 21:45:46 ID:???
一旦乙
やはり藍自身の意志があったか。
乗る乗らない以前に結界の関係者から意志が出た時点で、幻想郷は変わるって事か

宗教家としてでなく、いわばルール調停者としての霊夢と普通で自由人の魔理沙をどうするか。
主と近くて繋がりがあり、また重大な存在を野放しにはしないと思うが、計画に組み込むのかな

79 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 21:50:01 ID:???
一反木綿→乙

誰も自分の事情全部説明せずに強力しろとかああなるべきだとか・・・
どいつもこいつも信用できないな!
最初から目的がはっきりしている太子様に同志妖夢と一緒に仕えるのが一番最高の選択だな(錯乱)

80 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 21:59:52 ID:???
ウラー!(ロシア並みの感想)

81 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 22:00:29 ID:???
忘れてはいけないのは、中山に変革を与えるきっかけになったのは森崎であり、今一番近くにいるのは霊夢だということ
努力嫌いの霊夢が、練習に励んでいる
小さいかもしれないけど、霊夢も確実に変革されているかもしれない

82 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 22:05:35 ID:???
レミリアとの会話を見る限り、霊夢はかなり話は通じると思う
いざとなったら霊夢に話つけた方がいいかもね
まず間違いなく紫にばれるから本当に最後だけど

83 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 22:11:09 ID:???
八雲紫って時点で一番メリットがないよね
わざわざ内部に潜入しなくても、外側から阻止できるもんね

84 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 22:24:04 ID:???
紫「私の思い通りに動いてくれない存在は邪魔なんだよ!」

85 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 22:25:10 ID:???
つーか、人里中に結界を張ってるっていうんじゃあ、話は聞こえなくても
紫に勘付かれるんじゃないか?

遅かれ早かればれるなら、最初から参加しない方がよさそうな

86 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 22:46:51 ID:???
幽々子様やさとりさんならいざ知らず、面識薄い藍のために一肌脱ぐのはなあ

87 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 22:53:56 ID:???
いやいや、藍しゃま一人の問題じゃないし
じゃなきゃ鈴仙に助けを求めたりしないでしょ

なぜ、鈴仙なのかもたぶん説明してくれるはず

88 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 22:55:05 ID:???
うん、とりあえず話を聞いてから決めても遅くはないはず

89 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 23:25:53 ID:???
鈴仙「『リアル・幻想・セブン』……?」

その単語を始めて聞いた鈴仙が感じたのは、『またヘンな単語が出て来たなぁ……』だった。
恐らくは、これまでの文脈からしてサッカーに関する話なのだろうが、それならなんでイレブンじゃなくってセブンなんだろうか。
単にカッコ良さげなゴロを当てはめただけじゃないのか。
あまりの突然さに、そんな暢気な感想しか出てこなかった鈴仙の代わりに、藍がこの計画の詳細について説明を始めた。

藍「君も知ってのとおり、今行われている大会は、全幻想郷代表メンバーの選抜大会でもある。
大会後に幻想郷にて行われる、世界各国の少年を招いたサッカー大会の為の。
……『リアル・幻想・セブン』とは、この全幻想郷代表メンバーの……強化要員だ」

鈴仙「えっ、強化要員……?」

藍「そう、強化要員。 あくまで、代表メンバー23名とは別枠に設けられた特別枠だ。
紫様の計画では、『リアル・幻想・セブン』はこのように扱われる。

@全幻想郷メンバー入りさせるには微妙な選手だが、そこそこの力を持つ選手をRG7に勧誘。
 『正規メンバーとの試合に勝てば、全幻想郷メンバーにしてやる』などの名目で強化させる。

A全幻想郷選抜メンバーの元に、強化されたRG7メンバーを送り込む。
 RG7メンバーは全幻想郷メンバーを圧倒する。
 そこで、監督である紫が全幻想郷メンバーに、『全幻想郷メンバーの弱い7人とRG7メンバーとを入れ替える』などゲキを飛ばす。

B全幻想郷メンバー、感化されて強くなる。
 RG7メンバーと全幻想郷メンバーとの再戦。全幻想郷メンバーは当然、RG7を圧倒する。

Cそして紫からタネ明かし。『RG7メンバーは、全幻想郷メンバーの強化要員である』と明かされる。
 以降、RG7メンバーはスタメンにタオルを配ったり、観客席でメモ取りなどをして貰う。
 まあ、一人くらいなら全幻想郷メンバーに入れてやってもいいけど。

90 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 23:32:12 ID:???

藍「……と、大まかに分けて4プロセスだ。先は強化要員と言ったが――簡単に言うと、RG7は噛ませ犬だ。
優秀な妖怪と才能ある極一部の人間で組まれた、全幻想郷選抜メンバーのな。
そして、鈴仙。 これだけは先に言っておくが。
――【これから先、君が大会で如何に活躍しようとも、君はこのRG7のメンバーとなる】だろう。
何故なら、紫様が一番警戒しているのが、鈴仙・優曇華院・イナバ。 貴女だからだ」

鈴仙「う、うそっ……!」

鈴仙はそう口を覆いながらも、何となく藍が言いたい事と紫の計画の全貌が見えて来た。
鈴仙の推測を補強するように、藍が追加で補足をしてくれる。

藍「そもそも、今回のサッカー大会も、外界の選手を招いての親善大会も。 これは全て、紫様の考えた策略。
つまり……サッカーという、人間や妖精でも努力が実り易く、平等なスポーツにおいても、
博麗の巫女や吸血鬼等上位の妖怪の持つ才能の方が重要であり、強いという事を証明するための。
いわば、この幻想郷の在り方を、再び強固なものとするための、壮大な儀式なんだ」

鈴仙「……そういう、事なのね。 だから私が幾ら活躍しようとも、誰が活躍しようとも。
既に最初っから、誰が選抜メンバーになるかってのは、大方決まっていたワケなのね!」

藍「紫様が作成中の、選抜メンバーリストを見るかね?」

藍はそう言って、一枚のわら半紙を取り出した。
そこには非常に達筆な字で、「博麗 霊夢」「レミリア・スカーレット」「伊吹 萃香」などの文字が書かれている。
それだけならまだ良かった。鈴仙がそのリストからもう少し下の方を見てみると――。

91 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 23:33:18 ID:???
鈴仙「『風見 幽香』『西行寺 幽々子』『聖 白蓮』……!
何よ。これってただ単純に、強力な妖怪だとか、一勢力の主とかの名前をテキトーに書いてるだけじゃないの?」

幽香や幽々子は確かに強力な選手だ。しかし、この大会という目線で見ると、彼女達はそこまで活躍はしていない。
実際に、チームも予選リーグ落ちしている。白蓮についても同じだった。
むしろ、先の試合ではあの萃香からゴールを奪ったらしい、星の名前が載っていない事に違和感を感じる。

藍「――このリストの一部は、大会のメンバー募集終了時には既に作成されていた。
ああ、このリストを新聞でひっぱ抜くのはよした方が良い。逆に君の存在が、この世からひっぱ抜かれるかもしれないから。
問題なのは、君はこのまま行くと、RG7のメンバーにならざるを得ない。 そういう事だ」

鈴仙「本心では、私という反乱分子を代表メンバーに入れたくない。
だけど、活躍した私をメンバーに入れないのは公正さを疑われる。 ……その為の、折衷案という事ですか」

「勿論、活躍しない場合は、普通にメンバーに入らないだろうけどな」と付け加えて、藍は首肯した。
鈴仙は力が抜けていくような気がした。自分が今まで頑張って来た事は何だったのだろうか。そんな気分になった。
なにせ、自分は最初から代表の捨て駒としか扱われない事が確定しているのだから。

藍「――これで前提は話した。 ここからが、話の本番だ」

確かに項垂れる鈴仙を見ながら、藍はそれを敢えて無視して続けた。

藍「……私が君に依頼したい事。 それは、この大会が終わった後、
紫様の言いなりにRG7のメンバーとなって欲しい事。
そしてその上で――『RG7メンバーで、全幻想郷代表メンバーを完全に破って欲しい』事。 ……それだけだ。」

鈴仙は最初、藍が言っている意味が良く分からなかった。
しかし、藍がこれまで鈴仙に説明した事を想いだして行くと、その意図を理解する事が出来た。
つまり。

92 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 23:34:23 ID:???
鈴仙「さっきの話で言うと、
B全幻想郷メンバー、感化されて強くなる。
 RG7メンバーと全幻想郷メンバーとの再戦。全幻想郷メンバーは当然、RG7を圧倒する。
――で。 全幻想郷メンバーを、もう一度返り討ちにしてしまえ! ……って事ですか!?」

藍は力強く頷いた。

藍「RG7のメンバー候補も何名か上がっている。
氷精、妖怪兎、落ち目の天狗に地底妖怪……具体的に誰とは決定しないが、どれもパッとしない面子だ。
紫様としては、如何に鈴仙が居ようとも、霊夢達がそれに負ける筈が無い事を確信されているのだろう。
……だがしかし、私は今日の試合のプレーで確信した。
もしも鈴仙。君が居るならば、もしかしたら弱小のメンバーでも、霊夢達すらも倒せるのかもしれない……とね」

鈴仙「……そして、私は。 そんなメンバーを率いて、チームの乗っ取りを図れ……と。 そういう事なんですね?」

藍「そうだ。 もしも肝入りの全幻想郷代表メンバーが、そのバックアップみたいなメンバーにやられたとしたら。
それは紫様が望まずともチーム解体の危機であり、そして、我々がつけ入る好機となる。
そして、そこから……私は、鈴仙に全幻想郷を導いて欲しいと思っている」

鈴仙「い、いや! チームの乗っ取りまでは分かりましたけど。
それで霊夢とかが居るんだったら、乗っ取りは絶対ムリですってば!?」

藍「……まあ、実際に全幻想郷を導くかどうかは別として、だ。
私は……紫様には、元の紫様に戻って貰いたい。 全てを受け入れ、そして愛する紫様に。
その為には……」

一人で話を進める中、鈴仙は疑問を覚えた。
これまでの話を聞く限り、藍から見た紫像はまるでゲームか何かの悪役だ。
鈴仙の計画を邪魔し、藍を酷使させ、自身の邪な計画の成就を目指す……。
鈴仙が知る八雲紫は、確かに胡散臭く禍々しい妖怪ではあったが、
しかし、こうも妄執的な計画を練るのだろうか。

93 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 23:34:57 ID:???
落ち目の天狗www

94 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 23:35:41 ID:???
鈴仙「……ちょっと待って。 元の紫様、って言っていたし、これまでの話でも気になっていたんだけど。
――今、八雲紫は……何か、病気だったりするのかしら……?」

鈴仙は肝心な事を聞いていなかったし、疑問にすら思わなかった。
何故、八雲紫はここまで鈴仙を敵視するのか。いや、敵視したは良いとして、
どうして今こうやって、藍にまで反逆されるような計画を練ろうとしているのか。
彼女の身に、いつ、何があったのだろうか。

藍自身も、この核心を突いた質問に答える事を忘れていた様子だった。
そもそも、なぜ彼女は焦るように矢継早に鈴仙に対して助けを求めたのか。
その答えが、この藍の返答に含まれているような気がした。
藍ははっとしたように、しかし深刻な表情になってこう答えた。

藍「境界の妖怪である紫様は今、その存在を否定され……消滅しようとしている。
――他ならぬ、幻想と現実との境界を越え。 それに飽きたらず、あらゆる境界を否定し続けて来た、ある大きな存在によって」

鈴仙「――大きな存在? 大宇宙の意志とか?」

藍「……そうだったら良かったのにな。
どれだけ大いなる存在であっても、対象が一人であれば、紫様が出るまでも無く、私でも充分に相手となれただろうに。
――違う。 紫様を蝕むのは、一人では無く群体だ。 頭を消そうが別の頭が生え、
それを粉々にしても、また別の群体がそれを復活させようと動く。 まるで、群れネズミのようだ」

そこまで言われて、鈴仙にはその正体が想像できなかった。
妖怪は精神を中心として成り立つ存在。
だからこそ、その存在を否定される事の方が、ナイフで腹を刺されるよりも痛手であるという理屈は分かる。
……しかし、そこまでに、あの八雲紫とその式を困惑させるべき存在など、この世にあるのだろうか。

藍「紫様を蝕んでいるのは、人間の集まりだ。 決して外宇宙の邪神でも、上位世界の管理者でも無い。
更に言ってしまえば、要塞でも戦車でもイージス艦でも無い。 ――普通の、どこにでもある、一般企業だ」

95 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 23:36:53 ID:???

ここまで言って、鈴仙は何となく紫を苦しめる元凶が分かったような気がした。
藍は一息置いて、鈴仙に対して真実を告げる。


藍「――オーバーテクノロジーとその流通によって、幻想と現実との境界を破壊する者達が居る。
その者達は、自分の身分をこう名乗っているよ。 即ち―――ヒューガー株式会社、とね」

96 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 23:40:00 ID:???
艦娘もオーバーテクノロジーみたいなもんだしな

97 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 23:42:03 ID:???
また話がややこしくなってきたな

にしても、決勝トーナメントでよほど大ぽかやらかせば話は別だけど、
現得点王の鈴仙をRG7とかつけてでも、はぶく時点で公平性疑われそうだけど

98 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 23:43:52 ID:???
――と、言ったところで今日の更新はここまでです。

<藍さまに答えて貰う事リスト>
済RG7計画の概要、紫の企み、藍の思惑
 →紫による霊夢達の噛ませ犬計画、藍はその計画をぶっ壊してチーム改革を図りたい

・計画に乗った場合、大まかにどういったスケジュールになるのか
 →基本は>>89参照。強化プログラムの内容は不明。

・RG7メンバーの選抜について(監督とかコーチ陣とかの説明含む)
 →一部候補が上がっている。(氷精とか妖怪兎とか地底妖怪とか)
   どうやって選ぶのかは不明

・なぜ、いつから紫はそこまで変わってしまったのか
 →ヒューガーの仕業?

・この計画が幻想郷や他の計画(『プロジェクト・カウンターハクレイ』など)に与える影響について
 →

・藍が何故鈴仙にこのような申し出をしたかについて
 →? ただ、先の試合での鈴仙の活躍を見て霊夢達を倒せる(計画をぶっ壊せる)と確信したらしい。

・藍は幻想郷をどうしたいと思っているのか、今の幻想郷をどう思っているのか
 →

・他にスポンサーなどはいるのか
 →

・人里が荒れていることや、一部の宗教家の扇動について、なんら手は打たなかったのか、それとも打てなかったのか
 →

99 :森崎名無しさん:2015/02/08(日) 23:52:05 ID:???
乙です

紫にとってのハッピーエンド
RG7でYRS(やっぱり霊夢はすごい!)を植え付けたうえで
外の世界のテクノロジーにより訓練した敵を粉砕
自分の力を取り戻しさらに確固たる幻想郷のピラミッドの再構築という
一石三鳥の狙い

日向(?)サイド(?)のハッピーエンド
テクノロジーの進行によって幻想郷を掌握
それにより利益を大幅に得る
・・・まだ不明な点が多すぎる

太子様御一行のハッピーエンド
太子様による太子様のための太子様のステキでそれはもう大変素晴らしい幻想郷の作成

ただRG7についてはぶっちゃけ藍がどっちにも参加できないから
参加できそうな奴に頼んだだけなんじゃ(禁句)

100 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/08(日) 23:52:25 ID:???
簡単にリストを作りましたが、いくつかのコメントについて別途補足します。

○そもそも藍は今のまま持つのか?(既にかなりやばそう)
 →一応藍自体の体力は大丈夫、という事にしておいてください。

○鈴仙が紫のもとに潜り込んでも、警戒されまくりじゃないか?
 →紫が鈴仙をRG7に置いておきたい、と思っているので大丈夫です。

○人里中に結界を張ってるなら、話は聞こえなくても紫に勘付かれるんじゃないか?
 →簡単にはバレないよう、念入りに結界を張りその痕跡を消した…と判断してください。
  とりあえず、話を受けても蹴っても、鈴仙に何かが起こる事はありません。

○現得点王の鈴仙をRG7とかつけてでも、はぶく時点で公平性が疑われるのでは?
 →その辺りはごもっともですので、描写を考えています。それでも疑わしくなると思いますが…

今回の計画の内容や、計画に乗るメリット・デメリットについては、
またスレ中やwikiにでも出来るだけ分かり易く纏めたいと思います。
あまり話が長引きすぎても私の頭がパンクしちゃいますので、明日くらいには上手く纏められたらな、と思っています。

それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

101 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 00:10:36 ID:???
乙ロットー!

鈴仙にとっては、
カウンターハクレイに入って幻想郷選抜を倒した場合と、幻想郷や紫たちに与える影響がどう違うのかが気になるね
あとリアル幻想郷の場合は確実にてゐやウサギ、妹紅とは別チームか

紫は直接ヒューガーをつぶす……とまではいかなくても、幻想郷から排除くらいはできそうだけど、無理だからこうなっているのかな?
にしても、それならなぜそこまで鈴仙を敵視するのか? 日向を敵視するなら分かるけど

氷精(チルノ)
妖怪兎(鈴仙)、
落ち目の天狗(文……選抜じゃないのか、意外。妖怪の山のお偉いさん達がねじ込みそうなものだけど)
地底妖怪(さとり?)

ふむ、このメンバーでも面白そうだけど……
個人的には佳歩やてゐ、けーね先生やもこたんの方が愛着あるなあ

まあ、なんにせよ全部聞いてからかな

にしても、またわくわくする展開ですね、期待しています
藍しゃまは救われて欲しいなあ

102 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 00:13:11 ID:???
乙ロットー!

文は案外たいしたことなくねって言われすぎたせいでこんなことに…

103 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 00:47:41 ID:???
乙でした
色々ルートが見えてきて薄々感じてたが、裏方のカンピオーネはどう選ぼうが最後の共通ルートで撃破っぽい感じだな。
逆に絶対に奴らをぶっ飛ばせられると考えると、それでいいかも

それとやはり永琳の弟子愛は宇宙より大きいな。鈴仙をRG7で終わるのを防ぎ、更なる成長を促している
鈴仙が紫の計画も潰すとすれば、対等に永琳もヒューガーも内部から破壊してくれるかもしれない。

104 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 01:13:36 ID:???
ヒューガーは社長の一言でぶっ壊れるっていうのがあるし...。
日向が自分で管理できなくなるまで組織を放置するわけないよなぁ。
メリットがないと会社をつぶすのはよっぽどのことがないとありえないから全面戦争か。

105 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 01:24:51 ID:???
ところで欄はまだ持つのかというのは体力のことではないのではないかと思ったんですが
多分紫にばれるのではないかという意味ではないのでしょうか?

106 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 17:23:04 ID:???
射命丸文 全幻想郷選抜大会までは代表レギュラークラス(?)でありながら、その後没落した凡手

107 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 18:28:24 ID:???
まあ、日向がいなくとも第二、第三の外界からの進出者が現れないとも限らないから、紫としては根本的に正したいのだろうけど。

日向「幻想郷で商売始めるぞおまえらー!」
ヒューガー一同「ははあー!」
紫「げ、幻想がなくなって、私もピンチ!」

日向「手始めにカッパどもと命蓮寺を抑えるぞ!」
ナズーリン「ヘルプミー鈴仙!」

鈴仙「不安だったけどみんなのおかげで勝てたよ!」
紫「ヒューガーをやっつけたのはいいけど、霊夢や魔理沙じゃなくて鈴仙!?
対した力を持たない妖怪ウサギのはずじゃあ……」
紫「はっ、中山! あいつが元凶! そして中山に影響を受けた鈴仙を中心に、幻想郷の秩序を乱そうとしている!」

紫「霊夢、鈴仙や中山をサッカーでこてんぱんにして、博麗の巫女が頂点だと示しなさい!」
霊夢「面倒ねえ……」
魔理沙「霊夢が練習している……だと?」

紫「決勝戦で破るだけじゃ不安ね。リアル幻想郷セブン! これで完璧に努力しても幻想郷の序列は破れないと分からせる必要がある!」
永琳・幽々子「ウチの子をいじめるなんて、頭にきました」
日向「よし、それなら一枚食わねえか?」

藍「紫様の目を覚ますには……リアル幻想郷7計画をぶち壊すしかない! カウンター博麗はヒューガーが絡んでいる以上危険だ!」
藍「鈴仙! リアル幻想郷7を率いて幻想郷選抜を破ってくれ!」

こんな感じ?
で、鈴仙が勝利して紫や幻想郷がどうなるかとか、絶対永琳は裏の裏まで考えているだろうって言うのはあるけど。


108 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 19:36:02 ID:???
それだと、永琳がヒューガーが手を貸してるのかが分からんな
時系列的にヒューガーイベの前に永琳は知り合ってる…手を貸す、ではなく偶々摘み取った感じか?

永琳としては鈴仙に成長してもらいたい。だが今の環境だとRG7メンバー程度で終わる事を想定
それなら外の世界との境界を曖昧にして、中山等の外の世界と幻想郷住人による鈴仙の成長させる。

つまり永琳にとっては、努力云々の社会を作ろう!ってのはただの舞台で、
鈴仙が舞台の中心で活躍させたかっただけー、てのがこのストーリーの発端?師匠恐るべし

109 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 19:37:20 ID:???
個人的に紫の提唱するRG7は気に食わんなあ
原作でのRJ7は年齢的にユースはそもそも無理だったから
選手たちの焚き付けにするってのも納得できたけど
こっちはただ単に当て馬にする気満々だし



110 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 19:48:10 ID:???
永琳がヒューガーに手を貸してるんじゃなくてやっぱり利用してるだけじゃないの
互いに利用価値があるから手を組んでるだけ

111 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 20:00:28 ID:???
>>109 しかも何気に一人くらいなら入れてやってもいいかも、というより一人は必ず
    入れる気だね。嘘はつかないようにして。RG7としては紫様のお蔭で私もまっとうな選手に慣れた
    という感想を抱くだろうね。部分的に嘘はついてないのだからなおさらタチが悪い

>>110 十中八九俺もそう思う。でもまだわからないことが多すぎる。
    RG7と紫の正体は大体わかった。一番身近な味方サイドみたいなのが一番謎なのが
    大きな不安要素。金がないという可能性も考えらが一応その気になれば解決手段はあるし
    お金関係ではないね。下界の技術も月未満らしいし技術面面というのも少し考えにくい。

紫が若干パラノイアじみてきてるね
紫だけにパラノイア、なんつって

112 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 20:14:17 ID:???
>>109
火野と浦辺意外は年齢の問題で出場資格ないんだよねー

113 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 21:06:37 ID:???
紫はやらかし魔だから、サポートがいないと破滅、とまではいかないだろうけど、
正直ただのやらかしにやらかしまくる気がする。
ツッコミ不在の悲しさよ……みんなボケにボケボケしてボケまくるのが幻想卿よ…………
妖夢は半人前どころか1/3か1/4人前になっちまうし
(代理人も報告もなし仕事すっぽかす奴に半人前は重すぎるわ)

まこっちゃん!速く来てくれー!かみそりちょっぷを秘技をおくれー!

114 :森崎名無しさん:2015/02/09(月) 21:18:31 ID:???
色々ややこしいけど、自分はえーりんとカグーヤの信頼にこたえたいな。
どんな道を選んでも応援はしてくれそうだけど、やはりキャプテンになってほしいのが本音だと思うの。

115 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/09(月) 23:51:48 ID:???
こんばんは、今日も更新していきます。
>>99さん、>>101さん、>>102さん、>>103さん。乙ありがとうございました!
コメントへの返信については、ネタバレになるかもですので、今回は控えさせていただきます。
ヒューガーにリアル・幻想・セブンに色々出て来てややこしいですが、少しでも分かり易く書ければと思います。

更新の前に、本文でどうしても書ききれなかった質問への回答をします。

・人里が荒れていることや、一部の宗教家の扇動について、なんら手は打たなかったのか、それとも打てなかったのか
 →霊夢が出ている以上、手を打つまでも無いと考えていた。
   紫は宗教家の騒ぎは一時の茶番であり、今後の幻想郷に大きな影響を与えないと思っていた。
   ただし、この時点で消耗していた紫は、人間達の不満まで思いを巡らせる事は出来ていなかった。
  (なんでもかんでも紫が出張して解決してたら霊夢の存在意義なくね? …となっちゃうから、というのもあります(汗))

・藍はまだ持つのか、というのは体力のことではなく、紫にばれるのではないか、という意味では?
 →そこについてはネタバレになるのでノーコメントですが、藍はかなり優秀な妖怪ですので、即座にバレたりはしません。

116 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/09(月) 23:56:02 ID:???
藍はまず結論を述べた。
ここ最近での紫の衰弱と乱心の原因は、ヒューガーにあると。

鈴仙「……イマイチ、また話が掴めなくなって来たわね。 どうして、あの集団が八雲紫の衰弱に影響があるのよ?
そもそも、原因が分かっていて、そこまで深刻だったら。 さっさと追い払うなり抹殺するなりすれば良いのに……」

鈴仙は思わず、ぶっきらぼうにそう藍に言い放つ。話の筋が、また見えなくなってしまった。

藍「……例えば、宵闇の妖怪・ルーミアが力を持っているのは、人間の暗闇に対する恐れが原因だ。
妖怪は人間の恐れを介して生まれ、そして力を増していく」

藍はそんな鈴仙の反応にも意を介さず、一つ一つゆっくりと説明していく。

藍「その観点で言うと、八雲紫という妖怪は数千年……いや、それ以上に渡り、最強の妖怪だった。
人間は知能を持ったその瞬間から、自分と他者との境界に恐れ、裕福と貧乏との境界に恐れ、
そして何より、生と死との境界に恐れを抱いた。

暗闇の恐怖は火を翳せば消えるのにも関わらず、世界と世界とを隔てる見えない境界への恐れは、
どう努力しても、どうあがいても消える物では無いからだ。
故に、八雲紫はその存在を規定された時から、生まれつき最強の妖怪だった」

鈴仙「……で、今も最強なんでしょう?
暗闇が蛍光灯に淘汰され、幽谷響(ヤマビコ)が科学で証明される現在でも尚、
人間は――いや、多くの知性あるモノは全て、何かしらの境界を恐れているもの」

藍「その通り。 かつては各地を跋扈していた妖怪が科学の火の下に否定され姿を消すか、
そうで無くとも多くの力を奪われた中――紫様は、殆ど全く力を喪ってはいなかった。
だからこそ、あのお方は溢れるお力を使い、外界とは境界で隔てられた世界――幻想郷を作り上げる事が出来た。
そして……つい数年前まで、あのお方は賢者として、この幻想郷を正しく楽しく導いて下さった。
――だがしかし、あのお方のテリトリーである境界は、ヒューガーの科学の火により、あっさりと否定されてしまった……」

117 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/09(月) 23:57:04 ID:???
鈴仙は思い出す。かつて永琳が鈴仙を守る為に夜を永遠とした異変の全貌を。
あの時鈴仙は確かに、八雲紫と邂逅していた。
永琳の下、色々と強がって見せてはいたが、彼女の放つ異様な印象は今でも覚えている。

おぞましいまでの白い肌に、狂気的に明るい金色の髪。
飢えや恐怖すら忘れて、何時までも見ていたくなるほど魅力的で麻薬的な愛らしい双眸。
そして今鈴仙の前方に居る藍をも遥かに凌ぐ妖力と知力に溢れた、すらっと細長い全身。

月の玉兎としてのエリート意識が抜けきっていなかった当時の鈴仙ですら、
あの地上の妖怪は文句なしに恐怖すべき存在だと本能的に感じていた。
鈴仙は再び疑問に思う。 例えヒューガーが八雲紫という幻想を脅かす存在だったとしても、
そう簡単に、彼女を追い詰める事が出来るのだろうか?
しかし、鈴仙が浮かんだある意味核心に近い問いは――。

藍「……すまない。 今はこれ以上思い出したくない。
私にとって、尊敬し愛すべき主が、日ごとに崩れ、歪み……そして、孤立していく姿を見るのは、
あの方から暴力を受ける以上に辛かった。
だから、現時点では、【紫様が乱心したのは、ヒューガーの科学により、存在が否定されたせい】……とだけ、言うのに留めさせて欲しい」

藍が今日一番に苦しそうな表情を見せた事により、遮られてしまった。

藍「――私の思惑は、結論として言うとこうだ。
【紫様がかつて愛した幻想郷を守りたい。しかし、幻想郷らしく全てを受け入れた上で、あるべき姿を見出したい】。
だから、私は君の努力を否定はしないし、それが博麗の巫女をも打ち負かすとしたら、それもまた受け入れるべきと思う。
……如何に紫様の退廃の原因とは言え、私は、必要ならば、ヒューガーをも受け入れたいと思う。

きっと、紫様を元気にしつつ、望んだ者全てが、それぞれの幸せを抱いて暮らせる道だって、探せばある筈だ。
今からでも、かつての紫様が望み作ろうとして来た幻想郷は――きっと、作れると私は信じている」

118 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/09(月) 23:58:04 ID:???

そこから藍が紡いだ言葉は、如何にも理想論。幻想的過ぎて聞く者が聞けば失笑ものだろう。
だがしかし、そんなベレー帽を被った酒飲みの妄想のような世界を、この式神は信じていた。
かつて、自分の主人がそれを信じていたから。たったそれだけの理由で。
そんな藍を、鈴仙は笑えただろうか? いや、鈴仙は目を丸くして紫を継ぐ藍の意志を聞き取るしか出来なかった。

藍「RG7メンバーと当初のメンバーとを合体して出来るであろう、
新・全幻想郷選抜は、そのまま大会を勝ち抜いて貰いたいが――優勝してもしなくても、私は良いと思う。
勿論、君たちが優勝に賭ける想いが強ければ、私は全力でバックアップしたいと思う」

そして、ここからは私の勘というか妄想というか願望だが――と、藍は前置きして告げる。

藍「……私は、鈴仙。 君ならば――紫様の冷え切った心をも溶かして。
そして、再び楽園とも呼ばれた幻想郷の姿を取り戻すきっかけを作れるんじゃあないか。
――私は、そう思って、君の力を借りたいと思ったんだ」

鈴仙「そんな事ないです。 私は、たった一人の友達の気持ちすら、ロクに分かってやれないんですから……」

鈴仙は、藍は自分を過大評価し過ぎていると思った。しかし藍は逆の事を思っていたようだ。

藍「――そうかな。 今日の試合でも、君は様々なコンビプレーを見せてくれた。
あれは、単なる努力じゃない。 互いと互いとを結びつける、絆というか、友情の力があってこそだ。
確かに、君よりも高い能力を持った選手は沢山いるし、君よりも凄まじい努力をしている選手だって、数は少ないがいる。
だがしかし、――あの、仲間同士を繋ぎ合わせる能力。 あれは、今の幻想郷では君以外に出来ないと思うよ。
……鈴仙。 私が言うのもヘンだが、君はもっと自分に自信を持った方が良い」

【これまで多くの人と繋がって来れた鈴仙ならば、紫の心をもきっと動かす事が出来る】。
藍はそんな期待と希望を籠めて、鈴仙にそう申し出たのだった。

119 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/10(火) 00:02:30 ID:???
藍「……無論、それで紫様が元通りになって、ヒューガーの攻撃も断ち切ってめでたしめでたし、
――とは、ゆめ思っていないさ。 君が指摘した問題――強い妖怪と弱い人間との格差――は、確かに問題だ。
これからでも、私は……いや、私と紫様は、少しでも上手く行くよう努力したいと思っている」

鈴仙「――それが、結局強い妖怪側の傲慢と取られる可能性は?」

藍「あるだろうね。 ……というより、端から私の考えは、【今の幻想郷は良い場所である】という前提に基づいている。
だから、妖怪が人間を支配する……という構造は、結局変わらないと思うし、変える必要すら無いというスタンスだ。
――ああ、偽善と呼んでくれても構わない。 私は今までさんざ綺麗事を言って来て結局は、
『自分が満足できる世界じゃないと嫌だ』……と、強者であるにも関わらず、子供のようにダダをこねているだけなのだから」

鈴仙「……」

鈴仙は、藍がダダをこねているようには思わなかった。
藍は彼女なりの道を信じて、その道を切り開こうと彼女なりに奮闘しているのだと思った。
つまりそれは、彼女は鈴仙や妖夢と同じ立場である事を意味していた。

藍「……幻想郷は全てを受け入れる。 ……それはそれは、残酷な話だ。
愛する人の死すら、時としては受け入れなくてはならないのだから。
――しかし、それならば……奇跡だらけでご都合主義の馬鹿げた物語だって、受け入れてくれるに違いないだろう?
失う事は恐いけれど。 私は……変わりゆく幻想郷すらも愛したい。 かつての紫様だったら、きっとそうしていただろうから……」

藍はここまで話して顔を俯き押し黙る。
ここでの鈴仙への宣言は、ある意味では自分自身への決意だったのかもしれない。
確かに、藍の言う事は完全には正しく無いのかもしれない。
しかし、少なくとも藍が、今の紫よりも正しく。そして強く、幻想郷を愛している事だけは真実だと思った。

120 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/10(火) 00:03:44 ID:yI2Yu/5M
藍「……さて。 話が何度も飛んでしまって済まない。 ここで少し、事務的な話をさせて貰おうか。
……現時点での、『リアル・幻想・セブン』プロジェクトの詳細について」

そこから先の藍の口ぶりは、先程までのゆっくりとしたものでは無く、どちらかというと式神らしい、機械的で事務的な話だった。

鈴仙はまず、RG7のメンバーについては、
【現在候補は上がっているが確定では無い】こと、
【もしかしたら、余った数枠は、鈴仙の裁量で選ぶ事が出来るかもしれない】こと、
【RG7メンバーで無くとも、ルナティックスが決勝まで進出した場合、
 ルナティックスメンバーは、RG7でなく選抜メンバーの方に引き抜かれる可能性も高い】こと等を聞かされた。

また、監督やコーチ陣については、
【基本的に全幻想郷選抜の監督やコーチと同じ。 強化プログラム中は1名の専属コーチが付く】らしい。
紫は監督役を買って出たとしても、誰がコーチとなるのかについては、その詳細は現時点では不明との事だった。

その次に、RG7計画に関する費用のスポンサーとしては、
【山の神様や天狗連中、稗田家やその周辺など、幻想郷で一定程度の力を持ち、かつ、現行の秩序を維持したい勢力】
……が付いているという。
(無論、それは紫の計画としてのRG7に乗る者であって、藍の極秘計画に乗る勢力は居ない)
ことを補足として聞いた。 ……が、これはあまり鈴仙にとっては有益な情報では無いと思った。

藍「……さて。 要領を得なかったかもしれないが、私が話すべき事は概ね話したつもりだ」

藍は最後に一息つくと、鈴仙にこう切り出した。

藍「――この空間が持つ時間も、人里に張り巡らせた結界が緩むのも、もう時間が無い。
もしも最後に、これだけは聞いておきたい!
……という事があれば、是非言ってほしい。 私だって、言い忘れている事があるかもしれないから」

121 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/10(火) 00:05:13 ID:yI2Yu/5M

鈴仙「そうですね……」

鈴仙は、藍の問いかけに対して改めて首を捻り、聞くべき事が無いか考える。
そして――鈴仙はこう答えた。

A:……ひとまずは、質問は大丈夫だ。
B:いや、もう少し聞きたい事がある。それは……。(自由選択枠)

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

*今回のイベントはあくまでイベントの概略についての説明ですので、あまり踏み込んだことについては聞けません。
 こちらが書き洩らしていたり、趣旨を勘違いしているような質問を補足する形で、Bを選んで頂ければ幸いです。
*NPCパートのことは鈴仙もおおむね知ってるつもりで質問してもいいということですか?
 というご質問について、質問して構いません。(見えない所で、ざっくりと藍がNPCシーンについて語ってくれたという体です)

122 :森崎名無しさん:2015/02/10(火) 00:06:44 ID:+zAHgN7A


123 :森崎名無しさん:2015/02/10(火) 00:07:26 ID:xCcmltso
B 藍のプロジェクトカウンターハクレイに対する考察を聞かせてほしい

124 :123:2015/02/10(火) 00:09:49 ID:???
とと、あくまで補足としてか。ならこんな踏み込んだことは訊けないかな。
けど他に訊きたいことがある人もいるかもしれないのでもう少し待ちます

125 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/02/10(火) 00:11:21 ID:yI2Yu/5M
――と、いったところで今日の更新はここまでです。
Bについては、Aより先に2票入った場合は物語の中で回答しますが、
1票だけの場合でもコメント返しにて軽く補完程度は出来れば、と思っています。

藍さんの思惑を三行で言うと、
・幻想郷は好きだし守りたい。ヒューガーや中山も受け入れたい。
・しかし、ヒューガーの科学により存在を否定された紫は乱心し、一種の偏執狂となっている。
・仲間が繋がり合う鈴仙のサッカーならば、紫を守りつつ、皆が幸せな幻想郷を作れるのではないか!?
…と、いう感じになると思います。

それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

126 :森崎名無しさん:2015/02/10(火) 00:13:41 ID:???
乙でしたー!
なるほど、はっきり言って藍しゃま命懸けだよなあ
師匠や、姫様の期待に応えたい思いはあるけど、心揺らぐわ……

127 :森崎名無しさん:2015/02/10(火) 00:16:50 ID:???
乙でした。
そうなると、藍にとって一番の敵はハイパーカンピオーネ?
とりあえず、仕事ほっぽって出て行った1/4人前をどう愛のささやきをしようか今のうちに考えとこう

128 :森崎名無しさん:2015/02/10(火) 00:17:40 ID:U/LWTDpk
Aこのことを永琳など一部の信用置ける人物に話してもいいか

129 :森崎名無しさん:2015/02/10(火) 00:20:11 ID:???
>藍はかなり優秀な妖怪ですので、即座にバレたりはしません。

あっ(察し)

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