キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【影の役者】鈴仙奮闘記30【天才の相棒】

1 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/06/29(月) 22:01:33 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、
東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで師匠を超えるために努力する物語です。
他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆
【レイセンガ】鈴仙奮闘記29【タダシイヨ】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1432654054/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html

☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠、八意永琳に並ぶ選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。

全幻想郷代表選抜大会で活躍し、代表メンバーの一員となる事を夢見てきた鈴仙はある日、
自身が『プロジェクト・カウンターハクレイ』のキャプテン候補に選ばれている事を知る。
それは霊夢や紫達幻想郷に敵対し、以て幻想郷の価値観を覆すという壮大な計画。
更に鈴仙は、全幻想郷代表の下部組織、『リアル・幻想・セブン』の一員として、
乱心した八雲紫と幻想郷を救って欲しいと紫の式・八雲藍から懇願された。

幻想郷を変える為に戦うか、幻想郷を守るために戦うか。そう思い悩む鈴仙の心の隙を突く悪しき者もいた。
それは『プロジェクト・カウンターハクレイ』と『リアル・幻想・セブン』との争いに乗じ漁夫の利を狙う第三勢力。
聖徳ホウリューズの一員にして、『ハイパーカンピオーネ』計画の一翼を担う天性の詐欺師・岬太郎だった。

試合開始前、岬は鈴仙と同じFWの相棒・因幡佳歩の疑心を巧みに利用し、チーム内における不和を演出する。
それは鈴仙により破られ失敗に終わってしまうが、しかし、それでも尚聖徳ホウリューズは強かった。
観客扇動に一芸特化選手、特殊戦術の使用。あらゆる手に苦しめられるルナティックスだったが、
前半終了間際にパスカルが覚醒して1点をもぎ取り、試合は1−1の同点に。
そして迎える後半戦。影の役者がひしめく全幻想郷選抜大会を勝ち抜くのは一体――。

532 :森崎名無しさん:2015/08/03(月) 20:17:25 ID:???
乙です

ドイツ戦はできそうにないかも

533 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:42:27 ID:mVCLQ89E
こんばんは、更新します。
>>532
乙ありがとうございます。
ドイツ戦は結構厳しい塩梅になってますし、浮き球アップなど他のメニューも良いかもですね。

A:このままパスワークで試合を終わらせる。(確実に試合が終了します)

鈴仙「(……私としたら、このままゴールも決めて試合終了と行きたいところだけど。
――でも、無理して攻めるリスクを皆に強いる訳にもいかない。だから、ここは――)
……パスカル君。ボールを回しましょう」

バシッ……ポムッ。

パスカル「……そうか。賢明だな、レイセン。――それっ、エイリンさん!」

バシッ……。

実況「――そして、ボールを奪ったルナティックスはこのままパスワークに。
これ以上の得点よりも、手堅く今の点差を堅守したい意図でしょうか!
そして聖徳ホウリューズもパスカットに向かいますが、今の立て続けの失点で士気が削がれたのか、
中々上手く攻め入る事ができません! そして時間が経過していき……!」


――ピッ、ピッ。……ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

神子「………………」


永遠亭ルナティックス 3 − 2 聖徳ホウリューズ  試合終了!

534 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:44:35 ID:mVCLQ89E

実況「試合終了〜〜〜〜〜!! 3−2で永遠亭ルナティックスが聖徳ホウリューズを下しました!
試合開始から後半の半ばまで、聖徳ホウリューズ優勢な展開が続きましたが、
鈴仙選手が佳歩選手、てゐ選手と協力した新必殺シュートを編みだし同点に追いついてからは、
試合の趨勢は大きくルナティックスに偏り……そして今、辛うじてではありましたが、勝利を掴みました!」

鈴仙「(……苦しい戦いだったわ。試合前の盤外戦術、特殊な戦略に一芸特化選手。
それを潜り抜けたと思ったら、勝負運に見放された上に強力な新選手。
――何というか、ここで勝てたのが奇跡みたい。……というか、今も何だか釈然としないわ。
あれだけ勝ちに拘っていた筈の聖徳ホウリューズが、いざ負ける段になっても……あんなに、静かなんて)」

神子「………………負けたか」

布都「申し訳ございません、太子様! 我が不甲斐ないばかりに!
こうなったら、我は 投扇興 しますぞ!!」

こころ(喜)「はぁーあ。やっぱり太子はダメだなぁ。やっぱり私みたいなエースが傍に居ないと」

鈴仙「(……いや、静か……でもないか。だとすると、流石に考えすぎかなぁ……)」

――今回の勝利は、鈴仙にとってもっとも大きく得難いもの……である筈だった。
眼前に聳える幾つもの困難を乗り越え、仲間と結束を固め合った末の勝利。
それは本来どうしようも無く劇的で、達成感を覚えざるを得ない。
にも関わらず、今の鈴仙はどうしても心から、この勝利を喜べない。
目の前の困難はあくまで目くらましで、どこか地中深くに真の試練が待ちわびているような。
そんな感触を拭いきれないでいた。

535 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:48:32 ID:mVCLQ89E
永琳「――ウドンゲ。あんたの考える事。多分正解よ」

鈴仙「えっ? 師匠? というかどうしてナチュラルに私の思考を読んでるんですか?」

永琳「それは貴女の脳内に埋め込んであるICチップでね……」

鈴仙「い、何時もの電極じゃないんですか!?」

永琳「……悪かったわね。同じネタを使い回して。
――兎に角、そうやって聖徳ホウリューズへの警戒を怠らないのは正解よ。
試合中にあんたが言った通り。……聖徳ホウリューズは、『ここで終わるチーム』じゃあないからね」

鈴仙「…………?」

そして、そんな鈴仙を諭してくれたのは永琳だった。
彼女は鈴仙を軽く労いつつ、可愛らしい冗談を飛ばしながらも、鈴仙に適当な警告を送る。
鈴仙はポカンとした表情で永琳の発言をかみ砕こうとしていたが。



          ―――ドガァァァァアアアアアアアアアアアアアアンッ!



――その思考は、妖怪の山モリヤスタジアムの外壁を大きく開けた爆音により遮られた。

536 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:50:54 ID:???
てゐ「な、なにィ!? いや、『なんだと〜!』的な意味じゃなくって、『これは何?』的な意味でね!?」

岬「……!(――な、何だ今の爆音は……? こんなの、僕が知ってる計画に無かったぞ……!)」

神子「(……始まったか。延長戦まで長引かなくて、結果的に良かったかな)」

中山「(これは……もしや。俺達は最初から、ハメられていたという事だったのか……!?)」

鈴仙「な、な、な……何が起きたってのよ!?」

佳歩「れ、鈴仙さま……ケホッ、コホッ。大丈夫ですかぁ……?」

――鈴仙が我に帰った時、フィールドは荒野と化していた。
瓦礫の山が地面を抉り、爆炎が天然芝を焼き焦がす。
佳歩の助けを借りて起き上がると、全身には擦り傷が出来ていた。

屠自古「な……何だ。何が起きている……?」

布都「……た、太子様ー!? お助けくだされー!」

こころ(楽)「………………あつい」

537 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:52:48 ID:???
パスカル「聖徳ホウリューズの選手も、今の状況を分かって無いみたいだな……。
――すまんレイセン、人間の俺の目には周囲は砂埃しか見えないんだが。
君の瞳だったら、遠くの視界がクッキリ見えたりはしないか?」

鈴仙「えーっ。そ、そんな事言われても……。狂気の瞳はメガネじゃないんだし。
私の視力なんて、精々が2、300メートル先の文字が読める程度よ」

パスカル「自分で聞いといて難だが……レイセンってそう言えば妖怪だったんだな。それも、かなり位の高い」

鈴仙「正確には玉兎だけどね。まぁ、位が高いのは間違いじゃないけど……。
――って、まぁ、要するに。私の見れる限りで周囲を視れば良いのよね?」

鈴仙はパスカルと会話を交わすと、一瞬で戦場と化したスタジアム。
先ほど壁に穴が開いた先を見ると――。


上級妖怪A「グルル……」

上級妖怪B「……コー、ホー……」

上級妖怪C「グオゴゴゴ……」

鈴仙「……妖怪が居るわ。それも、あからさまなヒト型じゃない。話が通じ無さそうな化け物が、うようよと」

538 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:54:20 ID:???
観客A「きゃ、きゃぁぁぁーーー!?」

観客B「こ、怖い妖怪がスタジアムにーー!?」

観客C「俺達下級妖怪じゃあ話になんねぇ、逃げよう!」

カグヤファンB「カグロットォォォオオオオーーー!?」

観客D「ああ! 腹筋が少し強いだけで心優しい少年の、カグヤファンBくんが恐怖のあまり泣いてしまった!」

実況「う、うわああーっ! これはどうした事でしょう!!
永遠亭ルナティックスと聖徳ホウリューズとの試合が終わってみたは良いものの、
突如、謎の妖怪軍団が妖怪の山モリヤスタジアムに乱入してきました!
彼らには理性が無く、手当り次第人間を襲っている模様!
只今、天狗警備隊が応戦しておりますが、数が多く戦況は劣勢!
こ、このままではこのスタジアムはおわ……うわぁぁぁっ!」


――ドゴオオオオオオオオオオオオオオンッ!


鈴仙「う、うっひゃぁぁぁあっ! また爆発したーーっ!」

ウサギB「……何て事でしょう。信じられません! こんなの、データに無かった……!!」

つかさ「……鈴仙さま。このままじゃあ、確実に死者か……そうで無いにしても、けが人が出ます!」

539 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:58:02 ID:???
輝夜「ぶっちゃけえーりんに任せたら、この程度の妖怪なんとかなりそうだけどね!」

永琳「――そうね。何とかするだけなら……ね」

妹紅「どうしたのさ。そんな渋った言い方をして」

慧音「……恐らく、薬師殿はこう言いたいのだろう。自分が妖怪を駆逐するのは簡単だ。
しかし、そうしたら今度は、自分達が新たな脅威となるのが恐ろしいのだろう」

てゐ「人間ってのは、自分より強いヤツが大嫌いだからねぇ。
この場を解決できても、次はお師匠様が畏怖の対象になっちゃう」

永琳「臆病な話だけど。……そうなった時、私は輝夜を無血で守り切れる自身は無いもの。
姫を守るために、姫が望まぬ殺しをしてしまうかもしれない。……それは、ハッキリ言って嫌だから」

パスカル「お、おいおい……! じゃあ、この場は我慢して、今みたいな『異変』を察知した、
博麗の巫女とやらに全権を委任するしかない、とか言うのか!? まだ来ていないのに!?」

永遠亭ルナティックスのメンバーも、この状況に少なからず混乱していた。
現状を解決するだけならば、永琳や輝夜など、強大過ぎる力を持つ者は多く居る。
しかし、彼女達はこれまで人間に害を為さぬ者として、ひっそりと竹林の奥で過ごして来た。
一度強力な魔力や武力を見せてもなお、人間達は同じ目で永遠亭へと来てくれるだろうか。
そうした理由から、彼女達は彼女達で動けないでいた。

中山「……もしかしたら。これが豊聡耳神子の真の狙いなのかもしれない」

鈴仙「……?」

中山「彼女達は本当は、試合の勝ち負けなんてどうでも良かったんだ。
彼女達に必要なのはひたすら、こっちの意識を試合に逸らし、時間を稼ぐ事一点だったんだ。
……天邪鬼あたりをけしかけて起こしたであろう、今回の『異変もどき』の解決。
それこそが、奴の目的だった……そうは考えられないか?」

540 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 01:06:31 ID:???
そんな時中山は、一つの仮説を立てた。
果たして彼の宣言通り、慌てふためく聖徳ホウリューズメンバーの中で、
豊聡耳神子だけは帯刀した七星剣の鞘を抜いて、強力な一つ目の妖怪を一閃で斬り伏せていた。

神子「――さあ、人間達よ! ここは我らに任せて逃げるんだ!」

鈴仙「……確かに、途端に生き生きしてるわね、アイツ」

中山「先ほど永琳さんが恐れた、力への恐怖が自分に向く事への不安。
彼女――豊聡耳神子には、そうした不安が一切無いのだろう。
だから、今の機会をむしろ自身の人里での株を上げるチャンスとまで思っている。
いや、俺が言いたいのはそうじゃない。
……彼女は、恐らく仲間にも秘密で、今回の騒ぎを別に仕込んでいたのではないか?
そして、博麗の巫女や八雲紫をも出し抜き、自身が秩序の一角を担うべき存在であると。
洗脳でも無く直接に、人心に刷り込ませようとしているのではないか?」

鈴仙「そ、そんな事……あり得るの? 今現に、彼女の腹心の部下だってケガしてるのに……?」

中山「――彼女なら、やりかねないさ……。
真の目的の為ならば、親友や恋人すら道具として切り捨てかねない彼女なら」

鈴仙「…………」

中山が推測する、神子の恐るべき意図に鈴仙は黙り込む。
そして中山は……そんな鈴仙の気持ちを汲んでか、あるいは始めからこう提案しようと思っていたからか。
彼女の肩を優しくつかみ、こう切り出した。

中山「――永琳さん一人、鈴仙さん一人、あるいは俺一人では、
豊聡耳神子の思惑――試合結果を度外視して、自身の主張をアピールする――がまかり通ってしまうだろう。
そして、八雲紫だとか博麗の巫女だとか、こうした秩序は今現れない。現れるまでの間に、犠牲者が増える可能性がある。

……だから。俺達は――互いに結束して、この『異変』を解決しなくてはいけない。……違うか?」

541 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 01:10:30 ID:???
…と、言ったところで今日の更新はここまでです。
この唐突なNPCシーンを明日くらいまで挟んで、
明後日くらいにはウサギBの命名イベントをしたいと思っていますので、
名前案を考えて下されば幸いです。

<現在出ている名前案>(>>421さんより)
・因幡 霞(かすみ)
・因幡 椿(つばき)
・因幡 風音(かざね)
・因幡 鈴音(すずね)

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

542 :森崎名無しさん:2015/08/04(火) 01:15:03 ID:???
>神子「――さあ、人間達よ! ここは我らに任せて逃げるんだ!」
なんという死亡フラグ・・・
これぶっちゃけここで死ぬなり退場してくれた方が人にあがめられる英雄とかになれるんじゃね?

身を挺して人を守って死んだ英雄・・・うん!生き残って悪事ばれるよりもはるかにマシなラストじゃないか!(外道)

543 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:35:35 ID:???
こんばんは、今日も無判定ですが更新していきます。
>>542
割と現金な感じになってしまいましたねw
ただ、これも多分考えあっての行動……だと思います。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
鈴仙「私達の……結束……?」

中山「そうだ」

中山は力強く頷いた。

中山「一人の力には限界がある。それが、例えどんなに凄い人物であってもだ。
一方、仲間達が結束すると、それぞれの力は……まさしく無限大になる。
鈴仙さん達が後半に放ったシュート――『真実の友情』――を見て、俺は改めてそう思った。
だから――こういう局面ってのは、皆が力を合わせて、困難を乗り越えていくべきなんだと思う」

鈴仙「皆が力を合わせて……って。――なんか、ヘンな感じねぇ。
幻想郷の異変解決って、色んな奴がやったりするけれど、大体皆が単独行動だから。
……私らのトコには二人組で来られたけど」

中山「え、そうなのか? ……それは失礼。まぁ、サッカーと同じで、やればなんとかなるさ。
良いじゃないか、自機が5人も6人も同時に出て来るシューティングゲームも、お祭り感覚で楽しそうだ」

結束して、スタジアムを襲撃した妖怪軍団を退治しよう。
中山の提案は、鈴仙にとって何故か突拍子も無い提案のように思えたが。
そんな不安は、彼の快活な笑顔を見ている内に忘れてしまいそうだった。

鈴仙「……うん。分かった、中山さん。私も……やってみる」

――だから、鈴仙は素直に中山の提案に頷く事ができた。
自分は何時までたっても、中山さんには敵わないなぁ……。
交戦中ながら、鈴仙は暢気にもそんな事を考えていた。

544 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:37:36 ID:???
……そして。

鈴仙「――撃ち抜け夢幻の弾丸、『マインドエクスプロージョン』!」

バギュウンッ!

上級妖怪A「グワーーーーッ!」

布都「はーっはっは! 括目するが良い、我の風水の力! 炎符・『太乙真火』ッ!」

ゴオオオッ……!

上級妖怪B「……ググ……!」

カグヤファンB「お前が戦う意志を魅せなければ、俺はこのスタジアムを破壊し尽すだけだぁ!」

ギュピピッ! デデーンッ!

上級妖怪C「もうだめだぁ……おしまいだぁ……!」

中山「いいぞ皆! 後少しで敵の本陣だ!!」

――中山の号令の下、奇妙な連合軍はスタジアムの荒くれ妖怪達を蹴散らしていく。
最初こそ鈴仙や妹紅、慧音などルナティックスメンバーを中心とした部隊は、
いつの間にか聖徳ホウリューズの神子以外の幹部選手や、
観戦に来ていた腕に自信がある人妖をも巻き込んで、さながら一個小隊のように成長していた。

545 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:40:37 ID:t0A8o8nc
鈴仙が狂気の瞳で周囲をかく乱しつつ、空を飛ぶ妖怪を銃撃で迎え撃ち、
布都が自慢の風水で数多の雑魚妖怪を焼き払う。
その中、有志で現れた腹筋の強い少年が腹筋パワーで敵にトドメを刺していくなど、
彼らの連携は急造とは思えない程に発達していた。

鈴仙「……うーん。やっぱり中山さんが居ると安心しちゃうなぁ。
パスカル君と比べると話しづらいイメージだけど。何というか、頼れるリーダーっぽいっていうか……」

輝夜「頼れるリーダーって私の事!? 良かったら私の靴を舐めても良いわよ!!」

屠自古「部外者だが。お前では無い事だけは分かったぞ……」

輝夜「ムギーッ! 貴様、私とイナバとの熱い絆を否定するか!?」

こころ(楽)「あのー。……みなさん、ケンカはやめ……」

観客A「おいお前等! じゃれあってるヒマがあるなら戦えーっ!」

こころ(哀)「……モブキャラにすら台詞を奪われる。どぉせ私達なんか……。
――おい貴様、今私達を笑ったな? ……笑うなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

バギュンッ! バギュンバギュンッ!

上級妖怪D「ギエエエエッ!? ワ、ワラッテナーイ!?」

546 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:41:56 ID:t0A8o8nc

永琳「……これだけ居れば、私も有志として混ざれるかしら」

神子「――おや。私を気遣って来ていただけるとは有り難い。
だが残念な事に前線は私一人で間に合っている。貴殿は是非、目立たない裏方で後方支援を――」

永琳「――良く言うわ。貴女が仕掛けたんでしょうが、この騒ぎ」

神子「……さて。どうかな」



大丸「う、うおおおっ! 神子様ばんざー……うわっ、何をする、離せい!!」

慧音「――生憎と私は、生徒一人一人の命に向き合って、教育させて貰っているんだ!
神風特攻とは感心しないぞ!」

カグヤファンR「とるっ!」

バッ! グシャッ!

慧音「! そうこう言ってる間に、カグヤファンR君の頭が首にめり込んでしまった!
くそっ、仇は取らせて貰うぞ!」

547 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:42:58 ID:t0A8o8nc
ウサギB「次、右側頭部に攻撃が来る可能性78%! 左に避け……」

来生「やだぷーっ♪」

タッ! ……スカッ。

ウサギB「ま、またデータから外れちゃったぁ! 一体何なの、この人!?」

来生「シュレッダーの三毛猫ってあるだろ。つまり俺がルールって事さ!」

ウサギB「三種類も毛を生やさなくっても良いし、それ以前に色々違ってるってば!
……もーう。世の中にはCちゃん以上におかしい子が居るものなのね……」



高杉「こ、こいつらの命はやるから、俺だけは助けーーひえっ!」

妹紅「何を言ってるんだ。他人の命だって大事にしなさい!
無駄に捨てて良い命ってのは――輝夜と、この私だけさ!
そらっ、永遠に尽きぬ閃光、須臾の狭間で弾け飛べ。『インペリシャブルシューティング』!」

バギュンッ! バチバチバチッ……ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

観客B「す、すげぇ……。妖怪達が一網打尽だ。よし、俺も頑張るぞ!」

548 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:44:58 ID:???
――鈴仙だけが、理想的な部隊を形成出来ている訳では無かった。
全ての人妖(神子本人は微妙だが)が、種族、立場、感情などの垣根が無いかの如く理想的に動いていた。
つまり、中山指揮下の軍隊は、圧倒的劣勢ながらも、非常に高い士気を持続させていたのだ。

鈴仙「――さあ。追い詰めたわよ鬼人正邪! 嘘を吐き人妖を騙し、
そうやって今のようなクーデターまがいのテロを成し遂げた!」

正邪「ケッ、そうだよ! 全ては下剋上の為に仕込んだのさ!!」

神子「だが、貴様の覇道ももはやここまで。我が千年王国の礎となるが良い!」

カグヤファンB「カグロットォォーーーーーーーーッ!!」

バギッ! ズシャッ! バシュウッ! ドゴオオオッ!

正邪「や、やられた〜〜〜! くそっ、これで勝ったと思うなよーーーー!」

……そんな中、この襲撃の黒幕だった小物っぽい天邪鬼が一瞬にしてボコボコにされるのは、もはや必然。
切れ目無く回避不可能な銃弾、剣戟、殴打の弾幕に、反則アイテム無しの下級妖怪が叶う筈もなく。
果たして鬼人正邪と名乗った人騒がせ妖怪は、あっけなくしょっ引かれたのだった。

***

佳歩「み、みなさん凄いです!」

ウサギC「わたしが出てればぶっちゃけしゅんころだったけど、ひざにやをうけてしまってな……」

ウサギD「ほ、ホント!? 大丈夫Cちゃんっ!? そういえば膝小僧にばんそうこうがあるよっ!」

ウサギB「それは昨日かけっこして転んだ時の傷でしょ……」

つかさ「何はともあれ、けが人は無かったようでして。スタジアムは倒壊してしましたが……皆さん無事で何よりです」

549 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:55:29 ID:???
戦闘を終えた鈴仙達を出迎えてくれたのは、
戦闘に参加できないウサギ達や聖徳ホウリューズの人間メンバー。
そして非力な観客達で作られた、応援団の人妖たちだった。
彼女達は戦いで軽傷を負った鈴仙達に応急手当を施すばかりか、
中にはスタジアム近くの住処へ戻り、食糧や薬を提供してくれる妖怪もいた。

パスカル「しかし、ナカヤマは凄いよな。前線で指揮を出すにとどまらず、
下級妖怪相手には札と剣術で応戦してたじゃないか。俺と同じ人間とは思えないぜ」

中山「はは。あの程度の護身術、人里の人間では出来る方がごまんといるよ」

慧音「ここには生憎居ないが。聖殿がここに来ていたら感動していただろうな……。
これこそが、真の人妖の平等である、と」

布都「なーにを言っておる。悪しき妖怪は皆滅ぼすべしじゃ!
……ま。今日我を助けてくれた奴は見逃してやらん事もないが、な」

観客B「よし! 後は皆で呑みにでも行くかー!」

一同「「「「おーう!!」」」」

鈴仙「(これで……終わりよね。私の感じてた違和感ってのはこれで。
中山さんのリーダーシップのお蔭で観客が怪我する事もなく、
神子がでしゃばって、発言力を伸ばす事もなく終わったし……今度こそ、ハッピーエンド、よね?)」

試合前のアウェー感や敵意はどこへやら、
結集して妖怪を退治した一同は、完全に和やかなムードを形成していた。
雨降って地固まるとは良く言うが、今回の事件も結局はそうした話だったのだろうか。
聖徳ホウリューズの野望は、この敗北と最後の計画の失敗により、完全に打ち砕かれたのだろうか。

――結論から言えば、その答えはノーであった。

550 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:59:08 ID:???
……と、言ったところで中途半端になりましたが、力尽きたので、今日の更新はここまでにさせてください(汗)
明日の更新で、一旦弛緩しかけていたムードを再び引き締め、
準決勝第二試合、そして決勝へのモチベーションにしていければ……と考えています。
ウサギBの名前案については、近日投票しますので、また色々と考えてくだされば幸いです。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

551 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 01:09:10 ID:???
乙でした
腹筋とはいったい……うごごご!!
そう言えばブ○リーは腹パンでやれてたし弱点の克服の為に鍛えてる可能性が微レ存

552 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 18:35:25 ID:???
乙なのです

色々ツッコミ所満載ですが、あえて一つだけ
なんで来生敵に回っているんだオイ(汗)

553 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 18:53:43 ID:???
え?

554 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 19:50:59 ID:???
敵に回ってる描写どこ?ど俺の読解力が低いのかそんな描写なかったぞ

555 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 20:06:28 ID:???
ウサギBの所かな?来生が言う事を聞かないのを勘違いしたんじゃないかな。

556 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 20:18:16 ID:???
あ、ウサギBちゃんが来生に指示出してたんですね
ウサギBちゃんと来生が戦っていると勘違いしてました

557 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 22:59:26 ID:???
すみません、今日は職場の付き合いがあり、かなり酔ってしまったので、
更新をお休みさせていただきます。
コメント等につきましても、明日まとめて返信したいです。

558 : :2015/08/07(金) 01:39:04 ID:???
こんばんは、今日も判定なしですが更新していきたいです。
>>551
乙ありがとうございます。
腹筋をプルプルさせる→空気が振動する→衝撃波になる
という、普通の高校生でも頑張れば出来そうな技ですね。
>>552
乙ありがとうございます。
>>553-555で指摘しただいたとおり、これは観客席にいた来生君が
ニュータイプの力を活かして妖怪を退治している感じでした。

559 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/07(金) 01:40:22 ID:???

スッ……。

紫「……皆様、今の一部始終は全て観させて頂きましたわ」

すっかり一件落着の空気が定着して来たスタジアムの上空に裂け目が生まれ、
そこから美しい金色の少女が現れた。

来生「お、お前は………!」

ウサギB「……ゴクリ」

来生「誰だ!!??」

ウサギB「知らないのに勿体ぶらないでくださいっ! あの方は八雲紫さんですよ。
この幻想郷を作った、とてもとても凄い妖怪です!」

ウサギC「ほへー。はじめてきいた。がいじん? うた?」

ウサギB「Cちゃんは知ってようね!?」

紫「………フフ。仲がお宜しいようで」

幻想郷の管理者にして賢者でもある少女は、
地上での間の抜けたやりとりにも気を咎める事なく、儚げな笑みを浮かべている。
しかし、今大会の主催者でありながら、最近姿を見せていなかった彼女の唐突な出現に、
集まった一同は少なからず驚きを隠せないでいた。(ウサギCとかは例外)

560 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/07(金) 01:42:15 ID:???
輝夜「どうしてアンタがここに居るのよ。今は秋だし、そろそろ冬眠の時期でしょ。
越冬に向けて、エサを巣穴に溜め込んでなくても良いの?」

皮肉たっぷりな笑顔を浮かべながら、輝夜が紫を嘲る。
しかしそれすらにも紫は、他と同じような有象無象と相対するかのように応じない。

神子「――まぁ、そう喧嘩腰になる事もあるまい。
幻想郷を統べる大妖怪殿が手ずからスタジアムに顔を出したという事は、
きっと何か意図があっての事では無いかな? ここは穏健に、話を聞いては如何かな」

輝夜「あん? ここに来て急にイキイキして来たわね。さっき負けたクセに」

永琳「……ですが姫様。豊聡耳神子もそうですが――何より、八雲紫の余裕が気になります。
ここはまず、話を聞きましょう」

輝夜「ち。永琳がそう言うならしょうがないわね」

鈴仙「(何だか、嫌な予感がする。それも、試合後に感じたものとは桁外れな……)」

どよめき落ち着かない空気を一旦鎮めたのは神子だった。
彼女は輝夜を筆頭にざわつく観衆を制し、妖しげに空に溶け込んだ紫を促す。
紫はそれに満足した様子で頷き、重々しくその口を開いた。


紫「……私は今、大変驚いています」

561 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/07(金) 01:53:10 ID:???
その静かな様子は、まさしく賢者と称するに相応しいと言えた。少なくとも、傍で聞いている鈴仙の実感としては、
前々から聞いていた彼女の力が減退しているという話は、全くの嘘であるようにも見える。

紫「……貴方がたは、只今結集して、凶悪な妖怪の群れを退治しました。
一部は例外としても。多くの力なき人間や妖怪が結束し、自分達よりも強い妖怪に立ち向かい、そして勝利しました」

彼女は更に続ける。
観衆はその妖しさに、何時しか神子が制するまでも無く静まっていた。

紫「これは、今までの幻想郷では考えられなかった事です。
強い力を持った一人の巫女……あるいはそれに準じた力を持った人間や妖怪達。
いわば『特別な』力を持った者のみに許されていた、異変の解決。
――それが今や、こうして萃められた、名もなき人々でも可能である事が明らかになってしまった。
人間や弱い妖怪達は、こうして、『希望』を持ってしまった。
……その希望が、いずれ自らの破滅を齎す事とも知らずに」

鈴仙「……(――希望を持って……「しまった」。嫌な言い方ね)」

中山「……!(もしや彼女の真意とは……、そういう事だったのか!)」

そして紫の発言が本旨に近づくにつれ、鈴仙の嫌な予感は増していき、紫の意図を読み取った中山は冷や汗を垂らす。
そんな二人の様子を汲み取ったかのように、彼女は饒舌に語り出し。

紫「――幻想郷は、非常に脆いバランスの元に成り立っています。
全てを受け入れるとは言っても、危険な要素は排除しなくてはなりません。
それは『異変』解決と同じように権威的で。しかし、排除については徹底的に。

――そして、多くの人妖が見守る中で、彼女はとうとう『彼』へと、宣戦を布告した。

紫「……ですから。今の一件を根拠に、私は異変解決を依頼するわ。
幻想郷の弱き人妖に『希望』という病毒を与え、その理を破綻させんとする一人の人間。
――すなわち、中山政男の退治を……ね」

562 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/07(金) 01:56:49 ID:???
『中山さんは危険である』というこれまでの紫の主張が、
『今回の下剋上騒ぎは、中山の指揮で解決した』という事実により都合よく実証された!
……と、言ったところで今日の更新はここまでにしようと思います。
皆様、本日もお疲れ様でした。

563 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 08:29:37 ID:???
うどんげのせいじゃな

564 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 08:46:23 ID:???
なんもかんもうどんげがわるい!
よってここはしゅじんこーをこうたいするべきね!(氷精並感)

565 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 17:03:34 ID:???
真の黒幕はれーせんに違いないゾ

566 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 17:47:17 ID:???
>妖に『希望』という病毒を与え、その理を破綻させんとする一人の人間。

紫「幻想郷は私が守る!」

ヨモツヘグリアームズ!
冥界!ヨミ!ヨミ!



真面目な話中山(だいたいうどんのせい)は過程は違えど(無意識的に)結果的にやろうとしていることは
天邪鬼と同じようなことだから仕方ない

いや、下剋上だらけで戦いだらけの生活とかめっちゃうらやましいやなんでもありません
戦いはよくないよね!

567 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 17:56:39 ID:???
中山「妖怪がいきなり襲ってきたから正当防衛したら、終わった後にやってきた奴に退治すると言われた」

言っていることは真っ当だが、当事者にとってはたまったものではないですねこれ

568 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 18:33:41 ID:???
中山でこれだともしこの世界に妖怪凹れる他の外伝の人間連中が紛れ込んだらゆかりん発狂死しそうだな。
具体的には岩見軍団

569 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 18:46:06 ID:???
ドーモ、妖怪サン
妖怪スレイヤーです

570 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 19:24:18 ID:???
ヨウカイスレイヤーさんの正体はハクレイの巫女ではないのか?

571 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:00:43 ID:???
こんばんは、今日もあまり時間が取れず、無判定パートが続きますが更新していきます。
>>563-565
なんもかんも中山のせいだ!あと主人公は霊夢だろ!…ってのが紫の主張ですね。
>>566-567
中山さんは紫達によって仕組まれた罠に掛かった感じです。
>>568
岩見軍団だったら逆に幻想郷の統治者になれそうですね…。

572 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:01:53 ID:???
霊夢「……なるほど。こうなる事まで、全てはアンタの仕組んだストーリーだった訳ね、紫」

紫が中山への断罪を宣言した直後。そんな紫に追いついたかのように、今度は霊夢が空から現れた。
殆ど訳が分からぬまま現状を傍観していた鈴仙は、藁にも縋るような想いで霊夢に助けを求めるも。

鈴仙「あっ、れ、霊夢! 何とかしてよ。なんか、八雲紫が中山さんを退治するとか言ってるんだけど……!」

霊夢「――無理よ。『アレ』を見ちゃった以上、私だって、紫と同じような結論になっちゃうもの。
打ち出の小槌も反則アイテムも無しに、単に人望だけで、あれだけの人妖を動かすなんて。
神子や正邪が途轍も無く可愛らしく見える程の力だわ」

紫「そうでしょう、霊夢? 分かってくれて嬉しいわ」

鈴仙「そ、そんな……!」

鈴仙の期待に反して、霊夢は博麗の巫女としての職務を全うする気でいた。
つまり、彼女もまた、中山政男は確かに幻想郷の秩序に大きな風穴を空ける存在であると認識していた。

霊夢「……まぁ。建前づくりとしては、随分と大袈裟だとは思うけどね」

紫「建前? 何のことかしら。私には表も裏も無い、清らかな乙女なのだけれど」

とはいえ、鈴仙から見ても霊夢と紫とは完全に一枚岩であるようには見えなかった。
少なくとも、霊夢は何らかの事情を知っているように思える。
霊夢はひとり言のようにこう呟いた。

霊夢「アンタは前々から、この大会を通じてサッカーで幻想郷に悪影響を与える中山政男。
あと、その影響を色濃く受けた鈴仙とかを退治しなさいと再三再四私に指示して来た。
だけど、私は何となく乗り気で無かった。
……だから、今みたいな状況を上手くでっち上げて、体よく中山政男の危険性を私に実証したいと。
そう思っていたんじゃないのかしら?」

573 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:03:32 ID:???
紫「………フフ」

霊夢の独白に紫は嗤う。それは肯定も否定もしていないように思えた。

霊夢「――そうか。だからアンタは神子達を。聖徳ホウリューズへの締め付けを敢えて行わなかったのね。
無論そこには、一回退治された神子達の危険度は中山政男よりも低いから……という安心もあったのでしょうけど。
真の狙いはそこじゃない。適度に連中へ恩を売っておいて、ここぞの場面で自分の手駒にする為……とかだったんじゃないの?」

神子「おいおい、それは酷い言い草だな博麗の巫女よ。
それじゃあまるで私達が、プライドも無く強者の間を飛び回り寄生する、コウモリ野郎みたいじゃないか」

輝夜「いや、それはその通りでしょ」

永琳「……貴女達は元から、今日の試合の勝敗には大して興味が無かったのね。
勝利に徹するようでいて、時に隙のある作戦を選択したのは――今回の計画にかこつけて、
裏切りの可能性がある者を平和裏にお払い箱にする意図もあったのかしら?」

岬「……!(……もしそうだとしたら、僕をすぐに消耗させた挙句に反則プレーを要求した事にも、
反則後の僕の印象操作について冷淡だった事にも、説明が付く。
――豊聡耳神子にとって、八雲紫というバックアップを得ている以上。
試合中のああした行動は、彼女にとって単なる厄介払いの為の茶番に過ぎなかった、という事か……。
だとしたら、詐欺師としても完敗だ。僕は、小手先の技術に囚われて、大局を見切れていなかった……)」

更に霊夢が指摘した可能性――豊聡耳神子と八雲紫は裏である程度手を結んでいた――についても、
紫は霊夢の疑問に答える代わりに、曖昧な笑みを浮かべたままこう話しだす。

紫「……豊聡耳神子の企てる【ハイパー・カンピオーネ】計画については知っていたわ。
しかし、彼女の計画には時間が掛かる。ならば、時間も資源も限られた中、優先順位は自ずと低くなってしまいます。
現在は目下の、かつ大きな危機に対して動かねばなりませんわ」

霊夢「……その答え方。殆ど肯定してるようなもんじゃない」

574 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:04:50 ID:???
霊夢は皮肉るが、仮に紫の意図が彼女の予期した通りであるならば、今回の事態を説明するのは容易である。
中山を吊し上げる為の一連の騒ぎを神子が主導したとすれば、それは紫に恩を売る結果となるからだ。
更に紫としても、自ら手を汚さず危険因子を排除する為の錦の御旗を作れる上、
将来の危険因子たる可能性がある神子達の情報を得られるのだから、決して損な話ではなく。
紫と神子とが、彼女らの部下すらもあずかり知らぬ場所でこうした交渉を進めていても、何らおかしくはない。

紫「さて。話が逸れてしまったけれど……中山政男君?」

中山「……僕は、貴女に殺されるのでしょうか」

周囲の疑念が高まる中、紫は本題とばかりに中山に向き合った。
人形のような美しさ、愛らしさの中に禍々しさと狂気を孕んだ瞳に心が吸い込まれそうになる。
しかしそれでも、中山は弱弱しくもハッキリと言葉を紡いだ。

紫「殺しはしませんわ。力に訴えて君の首をこの場で捻る事は簡単ですけど、
それは即ち、私が貴方の持つ力に屈した事の証左となってしまう。
だから、この幻想郷の理に則って、貴方が正しく『退治』される事。……それがまず第一に必要となります」

中山「そうですか。では、もし僕が幻想郷の理どおり『退治』されれば、問題は無いと」

紫「――いいえ。私はそれだけを望んでいる訳では無くってよ。
具体的には、退治の後、速やかに幻想郷から外界へと帰還される事。そして……」

スッ……。

そこで初めて、紫は霊夢と中山以外の人物に視線を向けた。
彼女の目線は中山を通り過ぎ、しかし輝夜や永琳、神子程奥には行かず。
……その中間に居た、長い兎耳を付けた少女の場所で止まった。

575 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:07:11 ID:???
鈴仙「…………!」

最初は取り乱していた鈴仙も、この期に及んでは少しだけ順応できていた。
事前に藍や永琳から、紫の計画や悪意などについて聞き及んでいたから、覚悟があったのかもしれない。
ともかく、鈴仙を見据えて、彼女は虚ろにこう言い放った。

紫「私が退治を望むのは、正確には中山政男だけでは無い。
鈴仙・優曇華院・イナバ。貴女もまた、幻想郷の理に従って、博麗の巫女により退治されるべきと考えます。
何故なら貴女もまた、中山政男の共犯。
なにせ貴女は、彼の持つ『希望』による影響を一心に受け、それを幻想郷中へとバラ撒いた張本人だからね」

鈴仙「……そう、ですか」

紫「あら。思ったより反応が薄いわね。誰から事前に話を聞いていたのかしら」

この言葉を聞いて、紫は藍と自分の密会――力が減退した紫を救うための計画――が
発覚してしまったのではないかと強い畏れを抱いた。
アレは紫に決して聞かれてはならない、と藍も強く念を押していたのだから。
しかしそれは杞憂だったようで、紫はなんてね、と悪戯っぽく呟くと、これ以上の追及は行わない。
ただし、彼女は代わりに鈴仙の耳元へと近寄り、こう甘い言葉を吐いた。

紫「……貴女はここで諦めて、『退治』されれば良いの。そうしたら、誰も何も傷つく事は無い。
中山政男は帰り、貴女は元の生活に戻るだけ。……何も、辛い事は無いのよ」

鈴仙「…………」

576 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:10:02 ID:???
霊夢「退治と言っても、弾幕ごっこでも弾幕アクションでも無いわ。これは形式的な……いわば儀式。
『幻想郷を破壊し得る力を持った中山政男は、その部下共々博麗の巫女にやられました。
その後、皆で宴会をやりました。結局、中山政男も案外大した事なく、幻想郷はいつもの幻想郷のままでした。』
……そんな、いつものストーリーを。いつもの世界を繰り返す為にも必要な茶番を。
――鈴仙。アンタと中山君は演じてくれれば、それで良いのよ。
紫にハメられて悔しい気持ちは分かるけど、……私だって、これ以上良い方法は無いと思うし」

霊夢もまた、普段のさばさばとした口調は鳴りを潜め、
紫の提案する儀式への参加こそが最善ではないかと提案してくれた。
恐らくそれは紫の策略をも度外視して、
どうすれば鈴仙が一番傷つかずに済むかを、霊夢なりに考えてくれた上での結論ではないかと思った。

鈴仙「(八雲紫は言った。この場で霊夢により『退治』される事を決めれば良いと。
そうすれば、辛い事はなにも無くなると)」

鈴仙もまた、考えていた。どうする事が、自分にとっての最善なのか。
これまで、【プロジェクト・カウンターハクレイ】や【リアル・幻想・セブン】への参加などの話こそあったが、
それらは全て、中山や鈴仙を排斥しようとする紫と戦う為の選択だった。

鈴仙「(……だけど。私は本当に戦わなくちゃいけないの?
私は本当に信じられる仲間を得て。師匠にも並び立ち得る選手になりつつあって。
その上で――私は一体、何を望もうというの?)」

今ここで、現実に紫と相対して。
あらゆる手段で――そこに姑息が紛れていても――幻想郷全体の為に尽くそうとする紫に、本当に対立すべきなのか。
鈴仙は強い疑問を覚えるようになった。

中山「鈴仙さん。言わなくても分かってると思うが……自分自身が、一番良いと思う選択をするんだぞ。
俺や永琳さん。あるいは輝夜さんなんかに囚われなくても良い。自分の意志がどうあるかに従って……!」

577 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:24:17 ID:HvKIT762
紫「――静かに。これ以上貴女の思想が。……希望の力が感染しては堪らないわ」

中山「ぐっ……!」

鈴仙「(希望……それだけ取り出すと良い言葉だけど。
希望を得る為には多くの困難に立ち向かわないといけないし、
強い希望を持っていると、その分感じる絶望だって大きくなってしまう。
だから、八雲紫が病毒のように扱うのも、あながち間違いじゃないのかも)」

不意に鈴仙の眼前に現れた、新たなる選択肢……紫とは戦わないこと。
その魅力的な内容に、鈴仙は思わずこれまでの記憶すら忘れてのめり込みそうになる。
しかし同時に鈴仙は、中山が最後に放った言葉も思い出していた。

『自分の意志がどうあるかに従って』。――鈴仙は、紫にこう返答した。

鈴仙「私は……」

A:それでも希望を諦めない。異変の主犯として、自分は霊夢に立ち向かう!
B:もう辛い想いはしたくない。このまま退治され、穏やかな生活を取り戻す。

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票し……



鈴仙「……投票なんて、しなくたっていいわよ。こんなの、決まり切ってるんだからさ」


――投票なんかあっても無くても関係ない。
他者の意志なんかに左右されずとも、左右されたとしても。
鈴仙がこの場で出すべき答えは決まっていた。

578 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:30:16 ID:???




鈴仙「――私は。……傷ついたって良い! それでも、中山さんが私に教えてくれた希望を諦めたくない!
茶番以下の口裏合わせなんてまっぴら御免よ。 ――私は、幻想郷を破壊する異変の主犯として、最後まで戦う!
その先待ち受けているのが悪夢だったとしても、それでも……それでも! 私は行くしかないんだから……!!」

579 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:36:21 ID:???
――と、言ったところで今日の更新はここまでです。
長引いた試合後イベントですが、明日には終わらせてからウサギBの命名イベント。
明後日以降は紅魔スカーレットムーンズVS博麗連合戦へと繋いで行こうと思います。
……つまり、命名イベント以降は暫くNPCシーンが続く事になります(汗)

<現在出ている名前案>(>>421さんより)
・因幡 霞(かすみ)
・因幡 椿(つばき)
・因幡 風音(かざね)
・因幡 鈴音(すずね)

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

580 :森崎名無しさん:2015/08/08(土) 07:55:37 ID:???
乙ロット!

とうとう鈴仙も言いたいこと言ったな!
これからが本当の異変だ・・・!覚悟しろ!

581 :森崎名無しさん:2015/08/08(土) 10:20:19 ID:???
どっかで見たことあると思ったらこれ今やってるキン肉マンだ
希望が友情パワーで紫があやつそのまんまだ

582 :森崎名無しさん:2015/08/08(土) 11:02:29 ID:???
惑わされるなーッ
惑わされるなと言っておるーっ

583 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:27:10 ID:???
こんばんは、遅くなりましたが今日も更新します。
>>580
乙ロットありがとうございます。
ここから決勝戦までは、この勢いのままハイテンションで進めていきたいですね。
>>581-582
今やってるキン肉マンは分かりませんが、
希望がどうこうってあたりは、最近クリアしたダンガンロンパの影響を受けてるかもです(汗)

584 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:28:14 ID:???
紫「何を言ってるのか、ちょっと良く分からなかったわね」

紫はおどけたように、しかしその視線は先程の数倍も冷たく、鈴仙を睨みつける。
中山すらも怯んでしまいそうな程おぞましいその眼は、
怖がりの鈴仙にとって卒倒失禁レベルの怖さがあったが……それでも、もう退けなかった。
いや、退きたくないという強い気持ちがあった。

鈴仙「――私は、戦うって言ったのよ!
中山さんに導いて貰った道を、これからも自分の力で切り開くために……!」

霊夢「いや……。無理しなくて良いってば。足ガクガクに震えてるし」

鈴仙「む、武者震いだってば!」

本当は、自分の足が無意識に震えている事にすら気づいていなかった。
霊夢にすら心配される異常事態にも堪えず、鈴仙はびしっと人差し指を立てて、紫にこう宣言する。

鈴仙「……中山さんは勿論、私だって、今みたいな言いくるめで納得するもんですか。
もしも私や中山さんが間違ってるって言うんなら、正々堂々とサッカーで勝ってから言ってよね!」

紫「…………」

紫は黙っていた。笑顔はもはや顔だけだった。

霊夢「……でもさ、紫。それも一理あるんじゃないの。
というか、こんな騒ぎが出るまでは、『サッカーでの私達の勝利をもって異変の解決とする』
みたいな話だった気がするし。……だから、今日は一旦退い―――」

585 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:33:29 ID:???
紫「だったら、中山政男の代わりに、貴女を排除しようかしら」

鈴仙「は、話を最後まで……!」

スッ……ブウン。
――バババババババババババババババババババババッ!

鈴仙「……え?」

気付くと、紫は霊夢の諫言をも制して、鈴仙の周囲に多重の弾幕を巡らせていた。

紫「――中山政男は確かに貴女の言う通り。
私達はより正式な手順を踏み、退治するべきかもしれないわね。
その方がより良い『見せしめ』となるのだから。

けれど……考えてみれば貴女の場合は別。
サッカーでしか戦う術を知らない彼と違って、弾幕ごっこでも格闘技一般でも、
貴女の力を正当に較べ合う手段は沢山あるんだもの。
だったら――今この場で、貴女を排除しておいても、決して悪くは無い筈よね?」

一秒間に3353発。
粒弾小弾中弾大弾特大弾。くない弾ナイフ弾楔弾札弾星弾月弾銃弾ウイルス弾。
幻想郷の内外から揃えられた弾丸が鈴仙の周囲に壁を作っている。
普段の弾幕ごっことは違う点は二つあって、そこには一切の抜け道が無い点と、
一発一発が鈴仙の肉体を焼き切る程の威力が籠められていた点だった。

紫は長くて白い指を打ち鳴らそうとしていた。彼女は今そこで鈴仙を亡き者にしようと考えている。

鈴仙「(……私はあくまでも、中山さんのオマケにすぎない。
だから、中山さんを退治するタイミングは善処こそすれ、私なんかは、ある程度はどうなっても良いと。
そういう事かしら。……だとしたら、舐められたものね)」

586 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:38:41 ID:???
紫「大丈夫よ。1フレーム単位で正確な動きさえ出来れば抜けられる穴があるから、
この弾幕は完全なる不可能弾幕じゃない。……命名決闘法違反じゃありませんわ」

紫はこの時、少なからず逆上していたのかもしれない。
霊夢の制止すら聞かずに、彼女は残酷な笑みを浮かべて弾を放つタイミングを見計らっていたが。
……結果的は間の抜けた事に、彼女は『第三者』による襲撃を見逃してしまう事となった。



???「……スピア・ザ・グングニルッ!」


バギュルルルルルルルルルルルルッ……ズバァァッ!!

バンッ! バリバリバリバリ……バシュウウウウウッ!!!



紫「!?」


鈴仙と紫とを隔てるように、天空から一陣の紅光が刺した。
その一撃は少なくとも紫にとっては然したる威力では無かったらしいが、
しかし弾幕の壁を打ち破るには充分な制度と破壊力があった。

587 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:39:46 ID:???
鈴仙「(や、やっぱり怖い……! ――って、あれ?)」

意識を失いそうな緊迫感の中、鈴仙はその隙に気付く。
眼前には弾幕は無く、代わりに紅い槍が地面に突き刺さっていたのだから、気付かない方がおかしいとも言える。

紫「――貴女も私を裏切る気かしら。
私は、貴女方のような妖怪の為に、こうして危険因子を取り除こうと奮闘しているというのに……」

紫は心底哀しむように空を仰いで呟く。
果たして、その先には槍を投げ放った張本人が不敵な笑みを湛えていた。
彼女は腕を組みながら、尊大な態度でこうも言い放った。

レミリア「何を言うか八雲の大妖。私は貴殿に協力してやろうと思っていたのに。
折角の準決勝戦の会場が、バラバラになってた事への腹いせに、ね」

鈴仙「あ。……れ、レミリアさん!?」

そこに居たのは、幻想郷では間違い無く高名な妖怪の一つである吸血鬼。
紅魔館の当主であるレミリア・スカーレット本人で間違いが無かった。
彼女は外見相応の好奇心旺盛な瞳を輝かせながら地上へと降りて行き、紫に対してこう話す。

レミリア「大体の話は聞かせて貰った。そして、その上で私は貴殿に宣言しようじゃないか」

紫「……私の行為が姑息である、とでも? もしくは、鈴仙を排斥しない為の陳情かしら?」

レミリア「どっちでも無いわね。私は姑息であっても全力を尽くしての行為ならば否定はしないし、
どっかの自称賢者ならともかく、この私までもがあんな頭の緩い兎風情を助け出す義理も無い」

鈴仙「(頭の緩い兎……どーせ私なんか……)」

588 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:41:05 ID:???
紫「だったら何か。その中身をお聞かせ頂きたいわね。
協力と言っていたけれど。もしや貴女が私に代わって、この鈴仙を排除してくれるとでも?」

紫は嘲るように招かれる第三者へと尋ねた。レミリアはハハハと笑って、紫にこう答えた。

レミリア「さすがは妖怪の賢者ね! その通り。私が代わりに鈴仙を。アイツらを退治してやるって言ってんのよ」

霊夢「………………は?」

突拍子も無い発言に、いよいよ場は凍り付く。
それも、これまでの緊張感を引き継いだものでは無い、単純な混乱によって。
ただし幸いな事に、今のレミリアの発言を解説してくれる人物も追いついた。

パチュリー「……はぁ。要するにレミィは拗ねてるだけなのよ。
準決勝戦第二試合そっちのけで、あんた達が鈴仙やら中山政男を吊し上げてるから。
当の鈴仙達にしろ、私達そっちのけで、異変を解決するだの霊夢に挑むだの言ってるしねぇ」

咲夜「ただでさえ人一倍プライドの高いお嬢様ですし……」

美鈴「あはは、困ったものですねぇ」

陸「ハヒーッ! 貴様らか弱い人間である朕に荷物持ちさせんなアルー!」

フラン「zzz……」(←昼なので陸におぶさって寝ている)

佳歩「あ! 紅魔スカーレットムーンズの人達です!」

小悪魔「あらどうも。ご無沙汰してます」

……とはいえ、彼女達にはあくまで解説役であり、今目下で繰り広げられている
レミリアと紫との静かな対立を止めるまでには至らない。
鈴仙がビビり、霊夢が辟易としている中、二人は未だ話し続けていた。

589 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:42:16 ID:???
レミリア「……大体、気にくわないのよ。自分こそが幻想郷の秩序を守る存在だ。
だから自分がか弱い妖怪達を調子に乗った人間から守ってやろう、的な考えがさ。
だってさ。人間の創り上げた希望に対する敵ってのは、希望を台無しにする、絶望的な理不尽や恐怖。
――すなわち、私達妖怪そのものじゃない。だから、私達にも鈴仙を退治する権利があるって訳よ」

紫「……霊夢や私に代わって、貴女が『希望』を退治してくれると。だとしたら、それは随分な思い上がりね。
暴力を振るうしか能が無い吸血鬼風情に、中山政男の希望を打ち砕けるとは、私には思えないわ」

レミリア「私だけだったらそうかもね。
でも、私には優秀な妹やら自称賢者やらメイドやら門番やら中国人やらが居るのよ。
相手が希望の力で結束しているとしたら、私達はいわば、絶望の力で結束した軍団。
条件は敵と大体一緒だと思うし、むしろ我らの方が敵役に相応しい気すらするけれど?」

霊夢「……はぁ。長々と喋っちゃって。でも、大体言いたい事は分かったわ」

永遠に終わりそうに無い紫とレミリアの口論に割って入ったのは霊夢だった。

霊夢「要するにレミリア。アンタは私や紫に対して、『鈴仙の敵役ぶるなら、まずは自分達を倒してからにしろ!』
……って、言いたい訳でしょ。それには私も同意だから、心配しなくて良いわよ。
今回の件だって、紫が勝手に突っ走ったのもあるしね」

紫「あら。その点については私だって反対はしていませんわ。
ただ単に、『紅魔スカーレットムーンズは、永遠亭ルナティックスに対立する器ではない』と主張していただけですし」

レミリア「あんですってぇー!? やる前から決めつけないでよね、バーカ!」

咲夜「お嬢様、口調がブレイクしております」

レミリア「おっと……コホン。――ならば、準決勝戦はきちんと執り行われると。
そして我々が勝った場合は、先ほどの異変解決がどうとかも含めて、
全て我々の思い通りにしても良いと。そういう認識で良かったかしら?」

590 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:44:08 ID:???
紫「更なる絶望で、中山政男の希望に蓋をすると言うのなら、それは止めませんわ。……出来るならば、だけど」

パチュリー「――試合が恙なく行われるのは、嬉しい知らせだけど。
……こんなボロボロのスタジアムじゃあ、もう試合なんてできないわね。
フィールド中に穴は開いてるし、観客席は瓦礫の山だし……。
今からでも、人里のサッカーコートにでも移動すれば良かった?」

紫「いいえ。それには及びませんわ。……この程度の事なら、それっ」

ブウウン。パァァァァァァァァァアアアアアアアッ……!

パスカル「うわっ、凄い! スタジアムがまるで、巻き戻し映像のように元の姿に戻って行くぞ!」

ウサギD「ど、どんな仕組みなんですか!?」

慧音「……八雲紫の得意とする、『境界操作能力』の応用かな。
例えば、『過去』と『現在』の境界を曖昧にし、過去に健在だったスタジアムの光景を復元させたとか」

妹紅「永琳とか輝夜とかと付き合っていると忘れがちだけど。あれも中々におかしい能力だよなぁ……」

鈴仙「(……本当に。ほんっと〜〜〜〜に。八雲紫って力を失いつつあるのよね。
これで本気じゃないとしたら、一体どれだけチート級な妖怪なのよぉ……!)」

紫「……疲れたから、私は別の場所で状況を静観させて頂く事にするわ。
――霊夢。後は頼んだわよ。全ては、私達が愛する幻想郷の為に……」

ブウウン……スッ。

霊夢「あっ、行っちゃった。――全く、紫にも困ったものねぇ。
……しょうがない。私もめんどいけど、試合準備にでも行きますか」

タッ、タッ……。

591 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:45:48 ID:???
――紫が去り、少しずつではあったが、事態はとりあえずの収束を迎えようとしていた。
試合後の下剋上騒ぎは中山によって解決され、
その後の紫による中山糾弾は鈴仙の主張によって退けられ、
鈴仙への報復は、午後からの準決勝第二試合を控えたレミリアによって防がれた。
――そして、今、紆余曲折を経て準決勝第二試合は始まろうとしている。

レミリア「おい、頭の緩い兎妖怪さん」

鈴仙「……私、ですよねぇ」

レミリア「別に、バカにして言った訳じゃないけどね。頭が緩い方が、柔軟に物事を考えられる訳だしさ」

最後に、鈴仙の命を結果的に救ってくれたレミリアは鈴仙に声を掛ける。
先ほど自分達を退治する、と言った割にその口調は非常に親しげだった。

鈴仙「あの、さっきはありがとうございます。もしも、あの槍が無かったら……」

レミリア「あの槍が無かったところで、きっと誰かが助けに来てたよ。私は関係ない。
ただ単純に、面白くないから喧嘩を売っただけよ」

鈴仙「それって、自分が無視されてた事……だったり?」

レミリア「ま、それが9割ね」

鈴仙「思ったより多い!?」

レミリア「当たり前じゃない。私を誰だと思ってる、って話よ。……っと、着いちゃったわね。私のチームの控室」

鈴仙「ええ。その……観客席で応援してます。紅魔スカーレットムーンズ」

レミリア「ええ、ありがとう」

592 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:48:13 ID:???

鈴仙はスタジアムのフィールドから控室までレミリアを見送った。
途中の彼女は上機嫌な様子で、鈴仙もそこまで会話に困らなかった。
そして結局、鈴仙は思い至る事が出来なかった。

中山「(……俺のせいで、鈴仙さんは命を失いかけた。
鈴仙さんは、それでも俺の教えてくれた希望を諦めないと言ってくれたけれど。
俺だけが傷つくならそれで良い。
だが、俺は。他者をそんな目に遭わせてまで、この場所に居ても良いのだろうか……?)」


――今回の一件は、あの中山の強靭な精神にすら、僅かならぬ罅を入れていたという事実に。

593 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:59:05 ID:fbshiDjU
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
明日はウサギBの命名イベントから開始します。
流れとしては、現在出ている名前(下記)+次の更新時(明日夕方ごろ)までに出ている名前+自由選択枠(要4票)
で3票決の投票をし、必要に応じて決戦投票をする……と言う流れを考えています。
なので、皆様につきましては、積極的に名前案を考えて頂ければ幸いです。

(現在出ている名前案)
・因幡 霞(かすみ)
・因幡 椿(つばき)
・因幡 風音(かざね)
・因幡 鈴音(すずね)

(参考:ウサギBの特徴)※私がパッと思いついたもの、考えているものを抜粋
・基本的には真面目な性格(外見的にも真面目なイメージ(?))
・主にウサギCへツッコミを行う
・ややデータマン気質
・新聞記者(射命丸)に憧れている
・データマンをこじらせた結果(?)、スパイとしての能力が高い
・サッカー能力はオールラウンド型だが、パスが上手い


それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

594 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 03:15:56 ID:???
乙です
紫がどうみてもいろんな意味でハードウェア

595 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 19:35:57 ID:???
乙なのです

紫さん、こうみえて鈴仙さんチートクラスの強さですよ!
ただ周りがそれ以上に規格外すぎるだけです!

596 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 19:39:58 ID:fbshiDjU
こんばんは、今日はウサギBの命名イベントをしようと思います。
>>594
乙ありがとうございます。
ハードウェアは良く分かりませんが、多分似たキャラは居るかと思いますw

597 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 19:45:19 ID:fbshiDjU
>>595
乙ありがとうございます。
原作的に鈴仙は地味に強キャラだと思いますが、『地味に強キャラ』の域からは抜けられないイメージですね…。

【命名イベント・ウサギB】

ウサギB「……あっ、鈴仙さま、お疲れ様です」

鈴仙「ありがと。……何だか大変な事になっちゃったわね」

レミリアとの会話を終えた鈴仙は、続く準決勝第二試合。
紅魔スカーレットムーンズ対博麗連合2015の観客席で仲間達と合流した。
一番通路側に座っていたウサギBは、そんな鈴仙にタオルとスポーツドリンクを用意してくれていた。

ウサギB「あと、これが今大会における紅魔スカーレットムーンズの分析データです。
やっぱり、私達と練習試合をした時と比べて、チーム力が格段に成長しているみたいでした」

しかもそれに加えて、ウサギBは独自の分析データに基づき作られたレジュメを鈴仙に手渡してくれる。
新聞記者に憧れていて、情報収集を得意とするウサギBだったが、
こうして思えば、職業人的な気配りや手回しにも長けているのも彼女である。
守矢みらくるずへのスパイ工作で大きな成果を挙げてくれた事もあり、
鈴仙はウサギBに参謀として全幅の信頼を寄せていた。

鈴仙「……でも、凄い分析量ね、ホントに。どうやって、ここまで調べているの?」

ウサギB「えっと。それはまあ、色々とコネやらツテを使いまして」

鈴仙「(どんなツテなんだろ……)」

――ただ、その周到過ぎる仕事には恐ろしい裏がありそうではあるが。

598 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 19:47:19 ID:fbshiDjU
ウサギB「……ところで、鈴仙さま。一つお願いがあるんです」

鈴仙「え、お願い?」

だから、そんな一人でも何とかしてくれそうなウサギBにお願い事があると聞いた時、
鈴仙は少し驚いた。

ウサギB「はい。……とは言っても、大した事では無いんですけど。
仕事をするにあたって、私にも個としての名前が欲しいんです。
これまでは何とかなったけど、やっぱり、手を広げる際には、名前という信頼が必要って事もあって」

鈴仙「い、いや……別に良いけど。凄い理由ね」

ウサギB「私は今でこそ、探偵やスパイみたいな事しかやってないですけど。
将来は、自分の名前の新聞を世に出したいって思ってるんです。
天狗や人間のためだけじゃない。もっと色んな人や妖怪の為になる新聞を、作ってみたいんです。
そして。そのためにはやっぱり、私の、私としての『名前』が必要になるんです」

ウサギBは切実な瞳で鈴仙にそう訴えかける。その言葉に嘘は無いように思えた。

鈴仙「なるほど。あんたの新聞やデータに懸ける気持ちは分かったわ。
――でも、私なんかで良いの? 貴女の名付け親になるなんて……」

ウサギB「はい。鈴仙さまのお蔭で私は自分に自信を持てるようになりましたし。
それに、データだけでは測れない事象が世の中には沢山あるって事を、教えてくださいました」

額まで綺麗に切りそろえられた真っ直ぐな短髪を揺らして、
純朴そうながらも知性の煌めきを秘めた瞳を鈴仙へと向けるウサギB。
元気そうなイメージの佳歩と外見的な年齢はさして変わらないが、
ウサギBからは、どちらかと言えばインドアな雰囲気を感じる。

599 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 19:49:59 ID:fbshiDjU
ウサギB「てゐ様や佳歩ちゃん。それとお師匠様にも相談したんですけど、三人とも、
やっぱり鈴仙さまに決めて貰ったら良いんじゃないかって。ですから……お願いできますか?」

鈴仙「(師匠まで、そんな事仰ってたのね……。そうなると、ますます責任重大ね)」

輝夜「(アレ? 私は……?)」

――名前を付ける理由こそ、これまでの佳歩やつかさの時とは異なり特殊だが、
しかし彼女が名前に懸ける想いの強さは一緒である。
だからこそ、鈴仙は安易に名付けられないと思って真剣にウサギBに相応しい名前を考える。
そして、その結果考え付いたのは――。



***ウサギBの名前を選択してください***

A:因幡 霞(かすみ)
B:因幡 椿(つばき)
C:因幡 風音(かざね)
D:因幡 鈴音(すずね)
E:レミリア「私の解釈では、ウサギBは『可能性の獣』なのよね。きゅうけつ獣ごっこ」
  鈴仙「『仮現獣性』〈ヴァリアブラ・ベスティア〉、ね」
F:ここは敢えて『ウサギB』という名前にしてはどうか。
G:その他 *4票決

先に【3】票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。
本日21時30分時点で未決でしたら、2票以上入ったもので決戦投票を行います。

600 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 19:56:22 ID:llsy47lI
A
全然関係ないですが忍びなれども忍ばない忍者の桃色(知性派の裏番)が同じ名前だったりします

601 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 19:58:51 ID:i6qqoJjA
G 因幡 李白

602 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 20:00:18 ID:rjGDeExw
A

603 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 20:09:43 ID:3f1t0lLo
A

604 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 21:37:38 ID:???
ハードウェアはキャラじゃないです
頭が固い、融通が利かない、決まった動きしているみたいだからそう思っただけです

分かりにくくてすみませんでした

605 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/10(月) 01:04:51 ID:LKJ+kdew
すみません、本当はスカーレットムーンズ戦の開始まで行きたかったのですが、力尽きました(汗)
ほんの少し+無判定となり恐縮ですが、命名イベントの最後だけ先に更新します。
>>600
検索して知りましたが、戦隊ヒーローものはネタを出すのが大変だなぁと思いましたw
>>604
ああ、こちらこそすみません。そういう意味だったんですね。
あまり最近のアニメとかに詳しくないので、そうしたキャラが居るのかと思ってしまってました(汗)

606 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/10(月) 01:06:09 ID:???
A:因幡 霞(かすみ)

鈴仙「……かすみって、どうかしら? 霞って書いて」

ウサぎB「霞……ですか。綺麗な名前ですね」

鈴仙「カスミソウの花には清らかな心とか、親切とか花言葉があるらしくてね。
それが、いつも個性的な皆を纏めてくれるBちゃんにもぴったりかと思って。
それに、私達はこれまでBちゃんのデータ収集や工作活動のお蔭で、ここまでやって来れた。
試合でも、鮮やかな活躍は無くとも、オールラウンドな能力と技巧的なパスで、いつも私達の戦略の穴を埋めてくれていた。

……丁度、花束を作るには綺麗な花の周囲を彩るカスミソウが欠かせないように。
Bちゃん。――いえ。霞ちゃん。……貴女は、私達にとって欠かせない存在なのだから」

ウサギB「鈴仙さま。――そこまで、私の事を考えて下さって……」

鈴仙が考えた名前を、ウサギBは気に入ってくれたようだった。
鈴仙自身も、霞という文字のイメージと、ウサギBのイメージとで強い繋がりがあると思った。

鈴仙「後は、佳歩やつかさと同じに、因幡の姓を与えましょうか。
あなたも、私とてゐの姉妹みたいなもんだからね」

607 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/10(月) 01:07:24 ID:???

ウサギB「……はい。ありがとうございます、鈴仙さま。
さっそく、他の仲間にも報告して来ようと思います!
――とは言っても、もうすぐ試合ですから、もうちょっとは我慢ですけどね」

永遠亭の妖怪ウサギにとって、上司から名前を貰う事は大変名誉な事だ。
そんな名誉な事があっても、即座にはしゃぎ回らずに居たのは、
ウサギB……いや、霞がしっかり者である事の証左であろう。

霞「……えへへっ」

ただし、その代わり、この時の霞は――年相応に嬉しそうな笑顔を鈴仙に見せてくれていた。


*ウサギBが名前を貰い、「因幡 霞(いなば 霞)」になりました!
 以降は「ウサギB」ではなく、「因幡 霞」(もしくは霞)と表記します。

608 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/10(月) 01:14:50 ID:???
…と、これだけですが今日の更新はここまでです。
明日から暫くNPC戦となってしまいますが、決勝戦前の最後の大試合という事で、
決勝戦へのモチベーションアップになれば良いなと思っています。

それでは皆さま、本日もお疲れ様でした。

609 :森崎名無しさん:2015/08/10(月) 01:18:00 ID:???
乙なのです

まさか佳歩ちゃんに続いて霞ちゃんが採用されるとは……
感無量なのです

そういえば博麗チームを見るのは初めてですね
さすがに霊夢さん達もお嬢様相手に手札を隠しては勝てまい……
そうだといいなあ(願望)

610 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:31:13 ID:???
こんばんは、準決勝第二試合を始めていきます。
>>609
乙と名前の提案ありがとうございます!
今回の準決勝第二試合は、本スレのブラジルVSドイツ戦みたいな立ち位置を考えています。
なので戦力の大体全ては、この試合で分かるようにしたいと思っています。

611 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:32:21 ID:YRgTZCP+
〜大会15日目・午後・固定イベント〜
【決勝トーナメント・準決勝第二試合 博麗連合VS紅魔スカーレットムーンズ】
−妖怪の山モリヤスタジアム・観客席−

岬「……はあ」

――騒がしさが戻りつつある守矢スタジアム。
鈴仙がウサギBに名前を付けようとしていた時、
あの後聖徳ホウリューズから放り出されたような恰好となってしまった岬太郎は、大きく溜息を吐いていた。

岬「(――僕は最初、豊聡耳神子に勝負を挑んだ心算でいた。
だけど結果として、それは用済みになった僕を放り出す為に、彼女が仕組んだ茶番に過ぎなかった。
八雲紫に恩を売れた聖徳ホウリューズは、幻想郷中でも最強の後ろ盾を得る事に成功し。
そしてきっと、これからはヒューガーとの連携も深めて、少しずつ、自分の力を強めていくつもりなんだろう。
……現在進行中の、【ハイパーカンピオーネ】計画を、より盤石とするために)」

岬はこの幻想郷で初めて、詐欺師として大きく敗北した。
不運や偶然と言った外的要因は関係なく、完全に自らの能力を出し切って、それで負けたのである。
人生で初めて味わったこの挫折は、岬の合理的な思考に、ある程度の支障を生じさせていた。

岬「(ふう。……考えれば考える程、思考が後ろ向きになる。こんな屈辱は生まれて初めてだ。
――けれど。今は気持ちを切り替えて、試合でも見るしかないか……)」

とはいえ、合理的な思考が出来ない状態で泥沼に嵌る程、岬は愚かな少年では無い。
彼は気を取り直して、眼前で今始まりつつある試合に意識を集中する事にした。

612 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:33:54 ID:YRgTZCP+
−モリヤスタジアム・フィールド−

実況「さあ……午前中の試合後にはちょっとしたトラブルもありましたが無事に解決し、
予定通り今、午後の試合が始まろうとしています!
そしてこの午後の試合こそが、今大会でも1、2を争う超ビッグカード!
由緒正しき名門・紅魔スカーレットムーンズ対、今大会最強チームの博麗連合2015の準決勝戦!!
午前中の試合も見ごたえあるものでしたが、この試合は恐らくそれ以上!!
里の評論家の中には、この試合を事実上の決勝戦と評する者すら居る位です!!」

観客「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「レミリアお嬢様ー! 勝ってくれー!」「博麗が勝つだろう」「魔理沙ー! またあのシュート見せてー!」

霊夢「……観客達も逞しいなぁ。午前中にあれだけ騒ぎがあったのに、もう戻って来てるし」

魔理沙「(午前中、何か騒ぎがあったのか……?
くそっ。練習に精一杯で、異変に構ってられないなんて、主人公として屈辱だぜ……)」

針妙丸「え? 試合の後何かあったの?」

天子「何よ! 異変だったら私も混ぜなさいよね!」

衣玖「総領娘様が混じると、話が余計に面倒になりそうですので止めて下さい」

小町「ねみぃ……(そういや最近練習ばっかりで仕事に行ってないなぁ。100日連続欠勤くらい?)」

アリス「(この大会で活躍して、私の知名度を上げる。そして友達を増やすのよ……!)」

萃香「うーい、酒はまだかー! 何ならメタノールでもいいぞー!」

中里「幻想郷にも慣れて来たでゴザるが。そう言えば紅魔館の吸血鬼と会うのは始めてでゴザったな。
(……ボインボインのセクシーヴァンパイアが居れば、もっと良かったのに……でゴザる)」

613 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:37:13 ID:YRgTZCP+
森崎「(レミリア・スカーレット。今大会得点王であり、『紅帝』の異名を持つナンバーワンFWだったか。
……漸く、この俺がキーパーをするに相応しい相手が出たみたいだな)」


実況「王者の風格で最終ラインの確認をしている博麗連合!
霊夢選手を中心に、大会がある度気まぐれで召集されるメンバーですが、
玄爺選手を除いては、どの選手もエース格の能力を誇る強者揃い!

ゴールキーパーの森崎有三選手は、当初は謎多きドリブラーとして考えられていましたが、
決勝トーナメント第一試合ではあの星熊勇儀選手を完封する程のファインセーブを見せた一流GK!

左サイドバックの比那名居天子選手は、オーバーラップからのシュートを得意とする攻撃的DF。
しかし天人特有の丈夫さを活かしたタックルやブロックは強烈で、格の違いを見せつけて来ました!

右サイドバックの中里正人選手も攻撃的ですが、こちらはドリブルによるボールキープを得意としております。
守備においても忍者らしい多彩な技を持っており、敵チームはあらゆる場面で彼に苦戦させられるでしょう。

センターバックの伊吹萃香選手については説明不要!
幻想郷でも屈指のGKでもありながらCBでもある彼女を抜いて、ボールをゴールへと届かせるのは困難が予想されます!」

ミッドフィルダー、左サイドハーフの永江衣玖選手は隠れた名脇役。
バランスの取れた突破能力・守備能力に加え、アシストに特化したパスは仕事人を想起させられます。

右サイドハーフのアリス・マーガトロイド選手は、一流のゲームメイカー。
華麗なパスと論理に裏打ちされた戦術眼に、紅魔スカーレットムーンズがどう立ち向かうかは見物です!

そして、そんなアリス選手をも抑えてトップ下に立つのが、我らが主人公・博麗霊夢選手!!
圧倒的な総合力と天性のカンを活かしたスーパーシューティングプレイヤーの凄さについては、もはや説明不要でしょう!
ドリブル、パス、シュート。タックル、パスカット、ブロック、クリア。全ての分野において最高レベルの才能を持っており、
取り分け天才的なドリブル突破と、高い浮き球への反応速度については他の追随を許しません!」

614 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:38:16 ID:YRgTZCP+

実況「博麗連合、今日の試合はブラジルタイプ……失礼、ハクレイタイプ風の4−3−3を採用しています。
ハクレイタイプでは、I番の選手をウイングに持って行き、中盤選手の飛び出しを活用するものですが、
今回は、ハクレイタイプの要の位置に、少名針妙丸選手を配置しております。

博麗連合への加入はつい最近の針妙丸選手ですが、ドリブルとシュートによる牽制役を期待されているのでしょう。
彼女がどれだけ敵陣をかき乱せるか。それがこの試合の結果にもつながって来るかもしれません!

左のフォワードは三途の川勤務の小野塚小町選手。平均的FWだった彼女は、今大会に向けてポストプレイを磨いた模様。
フットワークは重いですが、試合を決定づける大仕事をやってくれそうな。そんな貫録が漂います!!

そして、博麗連合を長年支える第二の主人公! センターフォワードの霧雨魔理沙選手は幻想郷屈指のストライカー!
一時は伸び悩みも指摘されましたが、それは全試合に見せた『ファイナルスパーク』の威力で雲散霧消!
この試合でも、持前のダイナミックなプレーを見せてくれる事を、大いに期待しております!」

魔理沙「…………」

霊夢「――魔理沙。分かってると思うけど」

魔理沙「『ファイナルスパーク』だろ? ――分かってるよ。撃たないよ……」

霊夢「あのシュートは、あんたのサッカー寿命……いや、もしかしたら命にとって危険すぎるもの。
だから今は魔法使いっぽく。如何に戦略的に相手に勝つかを考えてて……お願い、だからさ」

魔理沙「……うん。あの業突く張りの霊夢にお願いされちゃあ、断れないしな」

霊夢「……お願いね。本当に」

タッ……。

魔理沙「(……普段だったら、口喧嘩でも始める所だったのに。あの霊夢に気を遣われてるのか?
――だとしたら、私って本当に情けないな……)」

615 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:39:37 ID:YRgTZCP+
***


実況「博麗連合、霊夢選手と魔理沙選手が何やら打ち合わせをしており……!
そして、キャプテンの霊夢選手を除いて、それぞれの持ち場へと着いて行きました〜〜!!
後は紅魔スカーレットムーンズだけです!!」

レミリア「――クク。この試合に勝ち、ルナティックスとの決勝戦にも勝てば。
漸く、我らが幻想郷の王として君臨する事となりそうね……」

パチュリー「そう簡単に上手く行くとは思えないけどね。
大体、王になってもめんどくさいだけでしょ。何かビジョンとかある訳?」

レミリア「ないよ。なってから考える方が楽しいじゃない」

パチュリー「……レミィらしいわね。まぁ、そっちのが幻想郷っぽくて良いと思うけど」

咲夜「私はどうあろうとお嬢様を支えるだけですから、どうでも良いですわね」

美鈴「いや、どうでも良いってのはどうなんでしょうか、咲夜さん……」

陸「朕は金と女さえあれば良いアル」

フラン「(今日はできるかな。お姉様との連携技……)」

小悪魔「が、頑張りましょう、みなさん!」

616 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:40:52 ID:YRgTZCP+
実況「対する紅魔スカーレットムーンズもまた、各自の持ち場へと離れていきます!
今日の試合、スカーレットムーンズは中盤底に人数を割いた、トリプルボランチの4−3−3!

ゴールキーパーの陸大雷選手は、足技を得意とする異色のキーパーですが、その実力は本物!
博麗連合の並み居るシューターからも、そう易々とはゴールを奪われはしないでしょう!

今試合ディフェンスリーダーを務める十六夜咲夜選手も、大会に向けて得意のタックルを更に伸ばしました!
他の分野は勿論、タックルに長ける妖精メイド達への指揮の手腕も大いに期待できるでしょう!

左サイドバックについた紅美鈴選手! 彼女の跳ね返し能力には以前より定評がありますが、
強引なドリブルや強烈な必殺シュートなど、攻撃的サイドバックとしての活躍もあるでしょう!

中盤を支えるのは、紅魔館の動かない大図書館にして、賢者を自認するパチュリー・ノーレッジ選手!
霊夢選手にも匹敵する能力を持ちながら、30分しか戦えないハンデがあった彼女ですが、
今大会ではそれをほぼ克服しています。霊夢選手とのトップ下対決が今から楽しみだ〜〜!

そして、そんな彼女の後ろ、ボランチに居るのは縁の下の力持ち・小悪魔選手です。
自慢の『トップスピンパス』が、博麗連合の中盤にどこまで通用するかも見物でしょう!

スカーレットムーンズのツートップに立つのは勿論吸血鬼姉妹!
妹のフランドール・スカーレット選手は、元々強烈なプレイヤーでしたが、
姉との連携も強めており、妖怪の山FC戦では超強烈な必殺シュートを魅せてくれました。

そして姉のレミリア・スカーレット選手は、既に何度も説明したとおり、今大会屈指のストライカー!
現時点で準決勝を終えた鈴仙選手に並ぶ12ゴールを決めており、
この試合でも森崎選手に勝利しゴールを決める可能性も高い!

更に彼女はシュートだけでなく、ドリブルによる突破やパスによるゲームメイク。
タックルやクリアなどの守備能力でもそれぞれ一流の水準を見せている、正真正銘の名選手!!
今日の試合、純粋な勝ち負けは勿論ですが、
レミリア選手対魔理沙選手のストライカー対決も気になるところです!!」

617 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:46:27 ID:YRgTZCP+
実況「――さあ、レミリア選手が霊夢選手に向き合い、コイントスが始まった模様です!」

霊夢「……表。私達の先行ね」

レミリア「ふん。丁度良いハンデだな。実はこの結果も、私が運命を操って決めた事なのだよ」

霊夢「はいはい」

実況「コイントスの結果は……博麗連合が先攻! そしていよいよ! 幻想郷サッカー史に名を残す名勝負の火蓋が……!」

―――ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

実況「火蓋が、切って落とされました〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜! 博麗連合のキックオフで試合開始です!!」

−−@−− @森崎
−−A−− A玄爺
B−D−C B天子 D萃香 C中里
−−−−−
E−I−G E衣玖 I霊夢 Gアリス 
−−−−−
−−−J− J針妙丸  
F−H−− F小町 H魔理沙
博麗連合2014:4−3−3
紅魔スカーレットムーンズ:4−4−2
−H−−− Hフラン
−−−J− Jレミリア
−−I−− Iパチュリー
−−−−−
−FEG− E小悪魔
C−D−B C美鈴 D咲夜
−−A−−
−−@−− @陸

618 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:49:04 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
皆様、本日もお疲れ様でした。

619 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:40:15 ID:???
こんばんは、更新していきます。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
霊夢「さて、行きましょうか」

タッ……。
――ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

実況「博麗連合のキックオフで、ボールはいきなりトップ下の霊夢選手に! そして見て下さいこの大歓声!
ボールを持っただけで、観衆はスーパーシューティングプレイヤーに夢中となるのです!」

レミリア「そして、そんな観客共を絶望のドン底に突き落とすのが私ら妖怪の仕事ってね。……フラン、行くわよ」

フラン「うん、お姉様!」

タッ、タタタッ!!

フラン「ぶっ壊れちゃえ、『レーヴァティン』!」

レミリア「夜の恐怖に怯えろ、『ドラキュラクレイドル』!」

――ズザアアアアアアアッ、ゴオオオオオオオオオオオオオッ!
  ……バギュルルルルルッ、グワッシャアアアアアアアアアアンッ!

実況「そしてそんな霊夢選手にぶつかって行くのは、紅魔館の吸血鬼姉妹!
守備も一流なレミリア選手は言うまでも無く、パワーを活かした接触プレイに長けるフランドール選手にとっても、
タックルによるボールカットはむしろ得意分野!
二人とも自慢の必殺タックルを発動させて、まるで小さな竜巻の如く、霊夢選手を吹き飛ばしに向かいます!」

620 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:41:56 ID:???
鈴仙(観客席)「う、うひゃあ……凄いタックルね、こりゃあ。私だったら奪われてるかも」

てゐ(観客席)「でも、どうかねぇ。あの位だったらお師匠様だってやってるし。幾ら二人掛かりっても……」

パチュリー「(……駄目ね。この程度じゃあ、レミィは霊夢に勝てない)」

霊夢「……じゃま」

ガシィッ。 ……ポーーーーーーーーーンッ!

レミリア「……しまった。上だったか」

実況「ああ〜〜っと! レミリア選手達のタックルは霊夢選手に全く敵わない!
霊夢選手自慢の『ヒールリフト』で、フラン選手諸共あっさりと躱されてしまいます!」

魔理沙「(あの技。私が持ってたサッカー教則本をチラっと見ただけで、霊夢は一発でマスターしちまったんだよな。
……あれから大分経つけど、私はまだできないのに)」

パチュリー「……そこまでよ。ここから先は通さな――」

タッ、クルルルルル……シュパァァァァッ!!

パチュリー「!?(……ま、負けた。この私が、真正面から来て何の反応も出来なかった……!)」

霊夢「何か言った?」

実況「続けて霊夢選手、パチュリー選手を『華麗なドリブル』でアッサリと突破!
天才トップ下対決はまず、霊夢選手に軍配が上がりました!!
霊夢選手はわき目も振らず、その実力を誇示するように中央を進んで行きます!」

621 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:44:08 ID:???
鈴仙(観客席)「う、うひゃあ……凄いタックルね、こりゃあ。私だったら奪われてるかも」

てゐ(観客席)「でも、どうかねぇ。あの位だったらお師匠様だってやってるし。幾ら二人掛かりっても……」

パチュリー「(……駄目ね。この程度じゃあ、レミィは霊夢に勝てない)」

霊夢「……じゃま」

ガシィッ。 ……ポーーーーーーーーーンッ!

レミリア「……しまった。上だったか」

実況「ああ〜〜っと! レミリア選手達のタックルは霊夢選手に全く敵わない!
霊夢選手自慢の『ヒールリフト』で、フラン選手諸共あっさりと躱されてしまいます!」

魔理沙「(あの技。私が持ってたサッカー教則本をチラっと見ただけで、霊夢は一発でマスターしちまったんだよな。
……あれから大分経つけど、私はまだできないのに)」

パチュリー「……そこまでよ。ここから先は通さな――」

タッ、クルルルルル……シュパァァァァッ!!

パチュリー「!?(……ま、負けた。この私が、真正面から来て何の反応も出来なかった……!)」

霊夢「何か言った?」

実況「続けて霊夢選手、パチュリー選手を『華麗なドリブル』でアッサリと突破!
天才トップ下対決はまず、霊夢選手に軍配が上がりました!!
霊夢選手はわき目も振らず、その実力を誇示するように中央を進んで行きます!」

622 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:45:44 ID:???
小悪魔「そ、そんな! お嬢様と妹様が。パチュリー様があんな簡単に負けるなんて……!」

咲夜「……小悪魔。あんたも力を貸して。質で競ってもダメなら、数で押し切るのよ!」

メイドF「は、はい!」

メイドG「わかりましたぁ!」

霊夢「……後少し抜けばチャンスみたいね。魔理沙は追いついてる?」

魔理沙「馬鹿にすんな! すばしっこさだけはお前にも負けてないからな。そっちこそ、ここでトチるなよ!」

霊夢「はいはい。分かってるってば」

咲夜「……お友達と会話が弾んで何よりだけど。そんなに暢気で、果たして私のナイフを躱せるかしら?」

霊夢「試合中にナイフを使ったら反則でしょ?」

実況「霊夢選手、真っ直ぐ進んで次は咲夜選手、小悪魔選手とメイド妖精2名に囲まれましたが……!
しかし、それでも余裕の表情! 王者の威厳か、それとも危機意識が無いだけかは良く分かりませんが、
幻想郷屈指のタックラーである咲夜選手を前にしてもひるまずドリブルに向かう様子です!」

咲夜「随分と舐めて下さいますわね、この私にドリブル勝負を挑むなんて。
――だけど。貴女はもうすでに、この私が操る時間の中!」

スッ……。


咲夜「捻じれて曲がりなさい! 奇術・『幻惑ミスディレクション』!」


ズザアアアアアアアアアアアアアッ! ズバッ、ズバズバァァァァアアアアアアア!!

623 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:47:21 ID:???
小悪魔「で、出たぁ! 咲夜選手がこの大会に向けて開発した新技タックル!!
二段から三段に進化したハイスピードフェイントタックルは、まさに逃げ場の無い脚技の檻!
これが完璧に入ったぁ! 入りましたよ!!」

メイドF「それに加えて、僅かな逃げ道は……!」

メイドG「私達妖精メイド隊がキッチリ抑えてるからねー! フフフ……観念してね、博麗の巫女!!」

霊夢「…………」

……ピタリ。

咲夜「……?(動きが、止まった……! 逃げ場が無いから観念したのかしら? それとも……)」

ベストコンディションでの4人掛かりのタックルを受けても尚、霊夢の表情は虚ろなまでに平穏だった。
獲物を絡め取った筈の咲夜はこの時、動物的な嫌な予感を覚えていたにも関わらず、
彼女は自身の理性を信じ、タックルに向かう脚を止めなかったが――これが、彼女にとって致命傷となった。



霊夢「――『博麗幻影』」

スッ。 ……ブウウウン。 ――スカスカスカッ!

小悪魔「……あれ?」

咲夜「……! そ、そんな! 『幻惑ミスディレクション』が完璧に入ったのに……!」

メイドF・メイドG「ど、どうして巫女が消えてるのぉぉぉ!?」


咲夜が。小悪魔が。妖精メイド達が完璧に捉えたと思った――いや、思わされていた霊夢の影は、既にどこにも居なかった。

624 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:53:39 ID:???
霊夢「私は一歩も動いていないわ。あんた達が勝手に見当違いの方向にタックルしただけでしょ」

咲夜「……完敗ですわ(――私は博麗の巫女を舐めていたみたいね。
今の彼女は、普段の霊夢じゃなかった。私達の先に潜む『異変』を解決する為の機械……そんな目をしていた)」

パスカル(観客席)「な、なんだ……なんだよ、アレ! まるで次元が違いすぎる……!
まるで、エイリンさんの全力のドリブルが絶え間なく続いているような……!」

永琳(観客席)「――あれが博麗霊夢よ。覚えておきなさい」

中山(観客席)「(……だが。あの咲夜さんのタックルも、決して霊夢さんに負けている筈は無く。
むしろ他の仲間達の助力も含めれば互角以上にも見えたが。……しかし、結果として彼女は勝った。
そんな数値をひっくり返す、豪運とも違う、『何か』があると見るべきだろうな)」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

実況「早〜〜〜い! 早い早い早い! 霊夢選手、試合開始僅か1分!
完全なる単独行動、ドリブル中央突破のゴリ押しで、紅魔スカーレットムーンズの主力を圧倒し得点チャンス!
スカーレットムーンズの名誉の為に言っておけば、彼女達のボールカット能力は決して低くありません!
むしろタックルに関しては、咲夜選手やパチュリー選手を筆頭に、
全チームでも1、2を誇る強さを持つと言っても過言ではないでしょう。
要するに、それだけ霊夢選手の突破力が凄すぎたのです!!」

観客「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「れーいーむ!」「れーいーむ!」「そのまま決めろー!」「次は魔理沙だ!」「小町さんだったりして…寝てるけど」

魔理沙「流石だぜ、霊夢! さあ、私に高い球を! このまま景気づけに一発決めてやる!」

霊夢「やかましいわねぇ、本当に。針妙丸を大きくしたみたい。――ま、精々頑張りなさいな」


グワァッ、バシュウウウウウウウウウウウッ!

625 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 01:02:30 ID:???
実況「霊夢選手、そこから高い浮き球をCFの霧雨魔理沙選手へと放り出した〜〜!
そう! これが博麗連合の黄金パターン! 霊夢選手が運び、魔理沙選手が決める!
幻想郷最強のゴールデンコンビにより、博麗連合はまずは1点をもぎ取ってしまうのでしょうか!
魔理沙選手、大きくボールに向かって振りかぶって……!!」

魔理沙「……動くと撃つ。いや、撃つと動くだ!――星符・『ドラゴンメテオ』!」

グワァァァッ……! バギュウウウウウウウウウウウウウウウウンッ! ビイイイイイイイイ………………イイン!!

実況「そのまま、オーバーヘッドキックの体勢で『マスタースパーク』を放ちました!!
これは霧雨魔理沙選手が以前から得意とする必殺ダイレクト・『ドラゴンメテオ』!
爆音とレーザー音を鳴らしながら、まさしく隕石の如く紅魔スカーレットムーンズのゴールへと突き刺さり……!?
いや、ちょっと待ってください!! 地面から紫色の閃光が、隕石に向かって走り出しました〜〜〜!!」

カッ!

陸「こんな、妹君の『495年の波紋』にも劣るヘナチョコシュート、全然怖くないアルね!
……チェスト〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!! 『襲爪雷斬脚』〜〜〜〜〜〜!!」

バギュウン! ドンンッ! ……バチィィィッ!

魔理沙「……マジかよ。完璧に防がれちまった」

実況「紫色に光ったのは陸選手の右脚でした!
彼がメイド妖精や美鈴選手がクリアに向かう中颯爽と飛び出し、自慢の新必殺技!
『襲爪雷斬脚』で魔理沙選手のシュートを完璧にクリアしてみせました〜〜〜!
やはりこの大会、紅魔スカーレットムーンズも強くなっていた〜〜〜〜〜〜!!」


陸「――フン。朕の強化なぞ屁のカスレベルアル。他のヤツラの成長っぷりを見て、度肝抜かすなヨ」

霊夢「(小手調べで突っ込んでみたけど……予想通り。レミリアの奴。今回はかなり『ガチ』みたいね……)」

626 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 01:05:03 ID:???
…と、言ったところで今日の更新はここまでです。
皆様、本日もお疲れ様でした。

627 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:12:23 ID:???
鈴仙(観客席)「今飛び出したのって、陸だったっけ。ああまで凄いと、堪ったモンじゃないわねぇ……」

パスカル(観客席)「そうだな。単独でも恐らく、エイリンさんの『爆宙アポロ』をも防ぎうる威力はあった。
まして今回はメイリンさんやメイド妖精も居た分、さっきの『ドラゴンメテオ』は、間違い無く分が悪かったな」

霞(観客席)「分析データによると、魔理沙さんの高空シュートの最大火力は61。
単純比較はできませんが、星熊勇儀さんの『大江山嵐』や、
蘇我屠自古さんの『ガコウジサイクロン』にも若干劣っている印象ですね……」

輝夜(観客席)「それでも昔は、『幻想郷最強シュート!?』とか恐れられてたんだけどねぇ。
当時の私は魔理沙相手だったら普通のシュートでもゴール許してたから、良く分からないけど」

慧音(観客席)「……とはいえ。そうした事実は本人もきちんと把握済みか。落ち込んでいる様子が無い」

妹紅(観客席)「今のは霊夢と魔理沙的には、軽い小手調べだったのかも。 ……ほら、フィールドを見て」

慧音と妹紅の声に釣られてルナティックスメンバーがフィールドを覗く。
確かに、霊夢と魔理沙は今の一連の攻撃失敗を気にしている素振りも無かった。
想定の範囲内である、いやむしろ期待以上の結果だったと楽しげな風に、
二人は中盤でのボールの奪い合いに参加しようとしていた。


***

628 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:13:24 ID:???
ダダダダッ! シュッ、シュシュッ!

針妙丸「えーん! どうして病弱なのに私よりもすばしっこいのー!?」

パチュリー「私はトロいわよ。あんたがチョコマカしてるのを逆手に取ってるだけ。……それと」

――スッ。クルンッ! ……シュパァァァァァァァッ!

パチュリー「相手の隙を突いてタックルするのは良いけれど。技に溺れ過ぎているわ。
自分の技術に対してそうした高いプライドがあるから、いつまで経っても友達ができやしない」

アリス「と、ととと、友達は関係ないでしょう?!」

実況「陸選手がクリアしたボールは一旦パチュリー選手がフォロー!
パチュリー選手は巧みなドリブルで、針妙丸選手やアリス選手のタックルを捌いています!
今大会に向け、普段の『芸術的なドリブル』に加え、『華麗なドリブル』もマスターした彼女のドリブルはまさに至宝!
霊夢選手にも負けない足さばきで、試合の天秤をスカーレットムーンズ側へと傾けて行きます!」

魔理沙「だったら……私と霊夢が相手ならどうかな!」

タッ!

パチュリー「それは――勝率が余り良いとは言えないわね、降りよ。……小悪魔」

バシュッ……。

小悪魔「は、はい! 頑張りますっ!」

タッ、グワァァァァァッ……!

629 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:15:12 ID:???
実況「暫く中盤の乱戦を落ち着いて処理して来たパチュリー選手は、
霊夢選手と魔理沙選手の最接近を受けて一旦ボールを後ろに。
ボールを預かったのはボランチの小悪魔選手!
小悪魔選手はパチュリー選手に代わり、前線のレミリア選手目がけて脚を振り上げて……!」

小悪魔「――『トップスピンパス』です!」

実況「小悪魔選手、パス! ――伝家の宝刀・『トップスピンパス』だ〜〜〜〜!!」

バシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!ギュルルルルルルルルルルルルルルル!

衣玖「くっ……! こんなに凄いパス、私の管轄ではありませんね!」

実況「パスカットに出たのは……博麗連合の左サイドハーフの永江衣玖選手!
ですが、身軽な彼女を以てしても、ダイナミックに軌道を変える小悪魔選手のパスには追いつけない!
しかし、レミリア選手へとボールを渡す前に、博麗連合の忍者サイドバック・中里正人選手が飛び出します!」

中里「中の里の名誉に掛けて防いで見せよう! ぬうううんっ!」

ブンッ! ブウウウウ…………ウウウウ……ン!

中里「『縮地法』!」

                       バッ! ……パシッ!!

小悪魔「そ、そんな! 私の『トップスピンパス』が……!?」

実況「そして中里選手、パチュリー選手のパスにも引けを取らない威力の『トップスピンパス』を、
自慢の忍術で器用にカットしてしまいました!! ボールは再び博麗連合です!」

630 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:16:48 ID:???
小悪魔「すみません、パチュリー様。私が力不足だったばかりに……」

パチュリー「気にしないで。あそこまでのパスカット技術があるんだったら、
私が魔理沙達のタックルを掻い潜ってパスを出していた所で、きっと弾かれていたわ。
確率的には、決して分が悪い勝負では無かった」

中里「――そしてご婦人。理論はまさしく完璧のようでゴザるが……。
実戦では雑談をする一瞬の隙が命取りになると心得よ! 『分身ドリブル』!」

タッ、ギュウン! ブウウウウウンッ!

パチュリー「ご指摘ありがとう。だけどその内容は本で読んだ事があるわ。……火符・『アグニシャイン』」

タッ、ズザアアアアアアアアアアアアアアッ!ゴオオオオオオオオッ!
……バチイイッ、ポロッ。

中里「……むう。完璧に隙を突けたと思ったのでゴザるが。
理論もここまで敷き詰めれば盤石となるのか。……恐ろしや、でゴザる」

パチュリー「(とはいえ、彼に仕事をされちゃったわね。私を退けつつ、ボールを前に押し出すという大事な仕事を。
……まあ、霊夢達が前線に戻らない限り、まだ大丈夫だとは思うけど)」

実況「ボールを奪った右サイドバックの中里選手は、
そのままオーバーラップで果敢にボールを運びにいきましたが、
これはパチュリー選手により阻まれます!
ですがボールはこぼれ球となり前方へと向かい……右サイドハーフのアリス選手がフォローしました!」

631 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:18:05 ID:???
アリス「(紅魔の十六夜咲夜はパスカットにやや弱い筈。だったら……)針妙丸ちゃん。
ここから一気にワンツーで前線まで向かいましょ」

針妙丸「えー、いいけど大丈夫? アリスって確か、友達居ないんでしょ?」

アリス「少ないだけよ。私は群れるのが嫌いだからね。でもしょうがないわね、あんたがそこまで言うなら……」

針妙丸「まあアリスはパス霊夢の次に上手いから大丈夫だよね。やろっか!」

アリス「………(ど、どうしてそこで話を切るのよぉ……!
ここは孤独な私の魅力に惹かれ友達になろうとするが、私が一旦それをクールに断るような。
友情ドラマとかでも大事な、出会いの場面でしょうがぁ……!)」

パシッ、パシッ……。

メイドF「タックルしか練習してないから、取れな〜い!」

メイドG「な〜い!」

咲夜「……流石に、パスでは貴女には敵いませんわね」

実況「中里選手が弾いたボールをフォローしたアリス選手は、
得意の個人技ではなくここは敢えて、近くの針妙丸選手とワンツーで連携し、タックルに長けた紅魔の最終ラインを突破!」

実況「そしてアリス選手は最後に、バイタルエリアにて針妙丸選手へとグラウンダーのパスを渡しました!
針妙丸選手、陸選手と美鈴選手のみが守るゴールに向かって右脚を素早く振りかぶります!」

632 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:21:11 ID:???
針妙丸「――いっけぇぇぇっ、これが私の必殺シュート。妖剣・『輝針剣』だ!」

……グワァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ、バシュッ!
シュパァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ……!

美鈴「う、うひゃあっ! は、早すぎですこのシュート!
(――でも、お嬢様のシュートと比べて威力は大した事ない! これだったら、今の陸君なら……!)」

陸「ちぇっ、地上シュートとはめんどくさいアルね。でも、この程度……」

グッ。バッ!――バチイイイイッ!

陸「中国三千年の歴史を使うまでも無いネ!」

バッチイイイイッ!

実況「針妙丸選手が放ったシュートは……陸選手がパンチング!
やや我流っぽいきらいはありますが、一流のキーパーにも負けない反応速度でシュートを弾いてみせました。
大会前の練習試合ではパンチングが出来ず、必殺の『雷斬脚』を連発していた時代とは大違いです!!」

レミリア「(アイツ自身は謙遜してるけど、中国の奴は見違えるようになった。技術的にも、人間的にも。
……この辺り、あの中山やら最近の鈴仙が好きそうな、『努力』ってヤツなのかしらね)」

陸が針妙丸のシュートを危なげなく止めた時、レミリアがしたり顔で頷いていた。

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