キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【SSです】幻想でない軽業師

1 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/20(土) 21:45:02 ID:???
Act.1 その時の結末

後半16分。

45分ハーフ、現時点で5−3でのビハインドという劣勢。

佐野「ハァ……ハァ……!」

フランス国際Jrユース大会、準決勝。
全幻想郷Jrユース対、魔界Jrユース。
どこからどう見てもJrユースという年齢層には見えない選手たちを抱えながら、
両チームはぶつかりあっていた。

ぶつかり合った結果が、先に出したスコアである。
電光掲示板に映るその数字を見ながら、魔界Jrユースの――キャプテンですらない、一選手。
"彼"は、走り回る。
走り回る事しか、今の自分に出来る事は無いと知っているから。

佐野「(ふざけんな……! ふざけんなふざけんなふざけんな!!!!)」

叫びたい気持ちを、押し殺しながら"彼"はひた走る。
その脳裏に、ここまでの道程がフラッシュバックした。

ボール運び程度なら出来ると、幻想郷へと召喚され。
しかしながらゲームメイカーには到底足りないと勝手気ままに烙印を押され、あっさり現実へと送還。
かと思えば使い道はあると言われ、妖怪の賢者に送り込まれた先はサッカー未開の地、命蓮寺。
まるでサッカーの素人ながら、素質はある彼女たちと切磋琢磨をし、
召喚の根本となった賢者の傍らにいる天才に羨望の目を送り、そして要因となった魔王をめざし。

2 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/20(土) 21:46:38 ID:???
彼は走った、努力した、研磨した。
誰よりもとは言わない。
寝る間を惜しんでとも言わない。
自らに出来うる限りの努力を、修練を、『彼』に及ばないかもしれないが確かに"彼"は行ってきた。

反町「甘いぞ、佐野っ!!」
佐野「く、くそおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」

『彼』は目の前にいた。
ボールを持って、やや華麗にも思えるドリブルで"彼"を抜きにかかった。
短い期間で"彼"は鍛えた。
元々得意だったキープ力、少しはMFとしても使えるようになったパスの精度、そしてFWとして最低限と言えるシュート。
ドリブル以外は一線級とは到底言えない。
それでも、ドリブルしか出来ないと言われていた――そのドリブルすら他にもっと上手い選手がいた、
全日本Jrユースに選出された時とは違う。
FWとして、MFとして、攻撃能力だけは――少なくともどの代表チームでもレギュラークラス。
数合わせの、モブ同然ではなく一流から半一流クラスとも言える実力を手中に入れる事が出来る程の実力を得ていた。

ササッ

佐野「くそっ! くそっ!! くそっ!!!!」

しかしながら、やはりとも言うべきか、佐野の修練は『その場しのぎ』でしかなかった。
即ち、攻撃能力だけならば一線級である。
ただ、守備能力に関しては相変わらず下手糞もいい所だったのである。
それでも以前に比べればまだマシになったとはいえ、あくまでマシレベル。

やや華麗にも見えるドリブルを見せる『彼』は、そんな佐野をあっさりと抜き――。

3 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/20(土) 21:48:06 ID:???
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

反町「よし……! これで……決めるッ!!!」

佐野「あ、ああっ!!」

椛「くっ……全員、中央に寄るッス!! フリーで打たせては……!!」

反町「いっ……けェェェェェェェェ!!!」

バゴッ! ギュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

右足を振りかぶり、思い切りボールへと叩きつけた。

かつて、『彼』と同じチームに在籍し、しかしチームでは十把一絡げ。
その他大勢でしかなく、ベンチの肥やしとなるしかなかった少女は飛ぶ。

4 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/20(土) 21:51:02 ID:???
椛「(止めるッス!! ……ここで、ここで!! こんなバカみたいな距離で決められて!!!
   何のために自分はアソコを出たッスか!!!)」

ただのモブでは終わりたくなかった。
初期メンバーでいながら、周囲の者たちとはいつの間にか差が開き。
とうとう妖精風情にまで負けた、その身で終わりたくはなかった。

椛「止め……あああああああああああああああっ!!!!」

彼女は鍛え上げた。
木端妖怪にしては恵まれたフィジカルとスタミナ、そして決して恵まれた訳ではない才能。
基礎能力を上げ、多彩とは言わないまでも技も習得し。
この日、この時に向けて少女は鍛え上げた。

それでも、敵わない。

ドガァァァァッ!! バシュウッ!! ピィー!!!

佐野「…………椛、大丈夫か?」
椛「ゴ、ゴホッ……だ、大丈夫ッス……」

5 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/20(土) 21:52:21 ID:???
反町「よォーし!!」
リグル「ハッハァー!! でかした反町!(よしよし、これで反町もようやくハットトリックだね。
     私はまだ出来てないけど多分残り時間的に出来るだろうし、反町もようやく私の相棒らしくなってきた)」
魔理沙「(相変わらず……憎らしいキック力だこった。 だが、そんな奴を前にしても……前を見続けるのが私の意地だ)」

決めた選手は喜び、彼の元へと歩み寄る。
6−3、ダブルスコア。残り時間的にも、もはや決定的と言って差し支えないゴール。
逆に決められた側は――。

幽香「…………」
魅魔「(……魔理沙、辛けりゃ辞めりゃいい。
     ……だが、戻ってきて、それでいてそんな顔をしてるって事は、あんたはもう……完全に吹っ切れたんだろうね)」

絶大な力を持つ少女(?)は無表情のまま、その長い緑の髪を翻しゴールネットに突き刺さったボールを持ちセンターサークルへと運ぶ。
彼女の中にあるのは、ただ1つ――闘争本能のみ。
勝ち負け以上にある、ただ強者と思うがままに戦いたい素直な欲求に従ったまでの行為。

そして、そんな彼女の傍らに立つ少女(絶対違う)は、『彼』に歩み寄る少女に、胸をはせる。
少女の心境を――成長を感じ取った彼女は、安堵か、焦燥か、はたまた何とも言い尽くしがたい。
複雑な心持で、ただただそのまま立ち尽くしていた。

それらは、物語の本筋と言える少年・少女たちの事柄。


6 :森末(仮):2018/01/20(土) 21:54:15 ID:???
しかし、彼らにとってはどんな物語だったろう。

佐野「白蓮さん、ナズ、キャプテン、怪我してねーか?」
白蓮「え、ええ……しかし……なんとも……」
ムラサ「馬鹿げてるシュートだわ。 ……っていうかあれシュート? 私、津波が押し寄せてきたのかと思ったんだけど」
ナズーリン「数合わせになれればと思って入った程度だが……数合わせしてどうこう、レベルのシュートではないね」

"彼"はブロックに入った仲間たちに声をかけ、労う。
ディフェンスリーダーとして、共に恵まれない才能ながら切磋琢磨してきた白狼天狗を。
自分のような半端ものを、サッカー経験者として模倣とすべく必要としてくれた聖人を。
小ざっぱりとした性格で、海より広い心を持ちながらも根は熱い割とキャプテンシーを持ってる船長を。
逆に重箱の隅を突くような性格で、小姑かと思うようなねちっこさを持ちながらも――その実、誰よりも仲間の事を思う小さな小さな賢将を。

星「(あ、ああぁ……どうして……佐野くんは……聖は、あんなに頑張ってたのに!!)」
ぬえ「(あの男が活躍するのも面白くぬぇ……でも、あいつがまた負けてる所を見るのも面白くぬぇ!!)」

彼らを見て、ベンチから声ならぬ声を上げる者もいる。
誰よりも優しく、誰よりも臆病で、しかし誰よりも強い信念を持つ毘沙門天の代理。
天邪鬼で捻くれてて、それでも極端な寂しがりやで。彼に反発しながらも、彼と共にチームの為に闘うと決意した正体不明の獣。

誰もが、誰もが、"彼"の努力を知っていた。
知っていたが、それでも敵わなかった。


7 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/20(土) 21:55:38 ID:???
佐野「………………」

失望でも、絶望でも無い。
『彼』が絶対的な存在である事はわかっていた。わかっていた上で、挑んだ。
挑んで――それで、何が残ったのか。

佐野「ごめんな……また、俺は負けちまったよ」

疲弊した身体を起こし、まだ戦おうとする彼女たちを見つめて"彼"はそう呟いた。
最後まであきらめない――そういった事を美徳とする少女たちは、最後まで闘うだろう。
或いは、負けず嫌いという言葉では片づけられない――勝利に拘る、前線の少女たちは最後まで闘うのだろう。

佐野「………………」

しかしこの時、はっきりと、"彼"――佐野満という男の心はポッキリ折れていた。

………
……


余談である。
この時、"彼"を打ち負かした『彼』は、その後見事キャプテンとしてチームを優勝に導き。
大会MVPと得点王、両方を獲得した、という。

8 :森崎名無しさん:2018/01/20(土) 21:57:19 ID:???
えっ?本人?
それともファンを公言する某GM?
どっちにしても支援

9 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/20(土) 22:00:45 ID:???
はい、という事で昔この板で幻想のポイズンならびに11人の戦士たちならびに、
うっかり名前欄の痛恨のミスで出てしまったキャプ森in俺というスレをやっていた人です。

今更ながらですが、あの時終わらせた幻想のポイズンでの続編を書いてみたいと思い書いてみました。
自分にはマスタリング能力が無いと思い、このスレは原則SSで判定は無しでと考えています。
幻想のポイズンを終わらせた時から、続きはこういう展開になったらいいな、と思っていたのを書いていきたいと思っています。
更新はあんまり毎日とか自分で制限をしても辛いので、気が向いた時に出来ればなと思っています。

また、かなりサクサク物語を勧めるつもりです。
ダイジェスト風味で、1つお願いします。

またよろしくお願いします。

10 :森崎名無しさん:2018/01/20(土) 22:02:43 ID:???
おおっー!
お帰り!!

11 :森崎名無しさん:2018/01/20(土) 22:18:46 ID:???
おおおおおなんということだ、まさかあの続きが見られるとは…
最近読み返したばっかりだったんですよ、すごく好きな作品でした
俺inキャプ森もだったんですね、気付かなかった

12 :◆85KeWZMVkQ :2018/01/20(土) 23:49:38 ID:???
ポイズンスレファンを公言している某GMです。スレタイを見て、正直、夢でも見ているのではないかと思うくらい震えました。
丁度今も、もう何回目になるか分からぬ作品読み直しの途中でした。
何度読んでも、生き生きとしたキャラの描写に惹かれ、苦しい展開や熱い展開にドキドキワクワクしています。
私はいつも拙作で、67とか魔王とかブローリン君とかソリマチ卿とか言って展開をパロディしたりしてるので、
あまり説得力が無いかもしれませんが…反町や佐野達の結末については、読み返す度いつも思いを馳せていました。
これで良かったのか、どうすれば良かったのか…反町のその後を描いたifストーリーや、強くてニューゲーム的な妄想を良くしてます。

それだけに、作者さんが自らあの続きを書いて下さるのは本当に嬉しいですし、楽しみです。
ストーリー的には佐野vs魔王の戦いになるのでしょうか、期待しています。
あと、全く何も変わらず調子に乗ってるリグルに、懐かしさを覚えると同時に吹きましたw

13 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/21(日) 01:27:45 ID:???
>>10
恥ずかしながら戻ってまいりました
>>11
あちらも続きを書ければと思っていますが、まずはこちらを先にと思っています。
今度こそ完結させたいですね。
>>12
どうもありがとうございます。
私も、そちらのスレを読ませて頂いて、タイミングが会えば参加もさせていただいてます。
いつも私の考えや文章力では出来ない展開やお話を書かれるので、更新が楽しみです。
何より私が森崎板から離れなかったのは、そちらのスレの更新が途絶えなかった事にありますし、
何度もこちらのパロディをしていただけたのは純粋に嬉しかったです。
これからも楽しいお話を見せて戴ければ、と思います。

ちなみにそちらのお話で好きなキャラは妖夢とアリスさんです。

14 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/21(日) 01:30:31 ID:???
※おまけ 佐なんとかさん率いる(率いてない)魔界Jrユースと多分幻想郷Jrユースのフォーメーション図

魔界
−J−H− J魅魔 H幽香
−−−−−
−−G−− G佐野
E−I−F E神綺 I靈夢 F白蓮
−−D−− Dアリス
C−A−B Cナズーリン Aムラサ B椛
−−−−−
−−@−− @夢子

幻想郷
−J−F− J魔理沙 Fリグル
−−H−− H反町
−I−G− I霊夢 Gパルスィ
−−−−−
−E−D− E咲夜 Dヒューイ
C−A−B C穣子 Aレティ B妹紅
−−−−−
−−@−− @早苗

中盤は6:4で幻想郷有利といった感じですが、FWとDF(GKの性能含め)で幻想郷がかなり有利な感じです。
これでは、勝てませんね。次回は一気に飛んで幻想郷優勝の祝勝会からになる予定です。

15 :森崎名無しさん:2018/01/21(日) 01:34:13 ID:???
中盤有利なのは魔界じゃないんですか?

16 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/21(日) 01:46:14 ID:???
>>15
ボランチ&SHの差ですかね。
魔界の方は5人制ですが、正直な所アリスはボランチにするには守備力が軽すぎ。
神綺様もデータは過去スレでも出した事は多分なかったと思いますが、(高レベル過ぎる選手に比べれば)低い実力です。
白蓮さんは松山を競り合いに特化させたような感じ、佐野はドリブル一芸。
靈夢さん(霊夢さんのお姉ちゃん)はコインブラ並に強いですが、その分ガッツが無いというデメリットがあるため、
こちらも必殺パスシュートなどを多用出来ず実質ドリブル一芸に近い感じに実際に試合を動かしたらなっていたと思います。
(手元にある当時のデータを見ながら)

というか咲夜・ヒューイのダブルボランチ制度が強すぎますね……今見返しても。

17 :15:2018/01/21(日) 01:59:32 ID:???
あ、いやそうじゃなくて
>中盤は6:4で幻想郷有利といった感じですが、FWとDF(GKの性能含め)で幻想郷がかなり有利な感じです。

このですがってbutって意味じゃないのかなと

18 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/21(日) 02:08:32 ID:???
>>17
中盤は6:4で幻想郷有利といった感じですが、(それ以上に)FWとDF(GKの性能含め)で幻想郷がかなり有利な感じです。
っていう感じのつもりでした。
ギリギリ中盤はなんとか勝負になるけど、そこ以外がどうしようもないね……という感じです。

19 :◆ma4dP58NuI :2018/01/21(日) 23:18:52 ID:???
遅くなりましたが復帰ありがとうございます。
私も幻想のポイズンは何度も楽しませていただきました。
特に強くなった反町が全日本を思うままに屠るテストマッチは
何回読んだか分かりません。読むたびにカタルシスで満ち溢れて最高でした。

どうか無理せず、できるだけ長く執筆を続けてもらえれば幸いです。

20 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 00:13:22 ID:???
>>19
どうも復帰乙ありがとうございます。
テストマッチの時はボーナスゲーム状態でしたね。
無理ない範囲で楽しく書いていければなと思います。

それではこれから投下します。
昨日もでしたが久しぶりにSSを書きますので、文章が支離滅裂でしょうが読んで楽しんでいただければ幸いです。

21 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 00:14:47 ID:???
Act2.乙女心と秋の空

ドンチャンドンチャン ガヤガヤ

反町「(騒がしいなぁ……まあ、こっちの方がらしいと言えばらしいのかな?)」

フランス国際Jrユース大会。
幻想郷Jrユースとして参加をした、少年(1名)少女(と呼ぶには幾らか不自然な容姿の者も多数)達。
予選リーグを博麗霊夢、霧雨魔理沙、十六夜咲夜、ついでに魂魄妖夢という主力を欠きながらも突破し、
決勝トーナメントからは西ドイツJrユース、魔界Jrユースを彼女たちの帰還もあり突破(妖夢が活躍したとは言ってない)。
そして決勝――全日本Jrユースを相手に3−1で快勝。
見事優勝という栄誉を手に入れた彼女たちはフィールドでもその喜びを分かち合っていたのだが――。

しかしながら、それはそれ。

元来何かあれば宴会、という風土を持つ幻想郷である。
宿舎へと戻ってからの祝勝会は、それは大層派手なもので――。
幻想郷に来て幾月、それでもまだ一介の中学生感の残る反町一樹は、酒気を帯びる一同を遠巻きに見るしか出来なかった。

反町「……っていうか、いいんですかこれ? 外界だと法律違反ですよ……。
   最悪優勝取り消しとか」
輝夜「そこはほら……大人の力で、強引にうまいことやってる!」
反町「(それでいいのかなぁ……)」

常識的に考えて、年齢的に(一応Jrユースとして登録しているJrユースには見えない選手たちも擁するが)飲酒行為など一発アウト。
この場が外部に見られては優勝取り消しもあると反町は心配するが、
そこは色々と上手くやっているようである。
反町の不安を、こちらも日本酒を片手に上機嫌ながら払拭しつつ、
この幻想郷Jrユースを見事に率い優勝に導いた名将(?)。
――選手としては三流ながらも監督としてはそれなりに出来る蓬莱山輝夜はにっこりと笑みながら相槌を打つ。

22 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 00:16:28 ID:???
輝夜「それはそれとしてお疲れ様、反町くん。 大会MVPに得点王。
   憎き宿敵にも勝てた事だし、悲願を達成出来たって所かしら?」
反町「……ええ、まあ」

決勝戦。
反町はハットトリックとはいかないまでも、全日本Jrユース――後半から出場をした若林源三から決勝点を収め、
その印象的な活躍とゴール数から大会MVPと得点王の二冠を達成している。
Jrユース大会が始まる以前――もっと言えば、オータムスカイズへと、幻想郷へと移籍する以前から比べれば、
まかり間違っても自分では達成出来ないような実績である。
しかしながら、反町の表情はいまひとつ浮つかない。

反町「ただ……宿敵に勝てた……と言っても、俺は森崎には勝ててないんですよね」
輝夜「………………」

そう、反町一樹は森崎有三からゴールを奪ってはいない。
全日本Jrユースとの決勝戦、前半戦は0−0というロースコアゲームで試合を折り返した。
正しくは森崎が反町、魔理沙、リグルという幻想郷の誇る超火力シューターたちに対して常に全力のセービングを行い、
結果的に弱点であるスタミナの消耗を露呈させて後半からは退いただけである。
言ってしまえば、反町達幻想郷はその弱点を突いて森崎を交代に追いやった――それが故の勝利でも言えた。
ただ、反町自身は――全力であった森崎からゴールを奪えなかった、その事実に納得がいっていない。

反町「まだまだです。 俺も……こんな程度で、満足してはいられない」
輝夜「…………(既に全世界を見渡しても、彼以上の、純粋なストライカーはまずいない。
   それでいて、なおこの貪欲なまでの勝利への拘り。
   見るものが見れば持つ者への嫉妬を感じるのでしょうけど、だからこそ彼は強いんでしょうね……)」

ストライカーとしての反町の能力は、言うにも及ばず世界でも最高峰である。
かつて自身を虐げていた日向小次郎も目ではない。
西ドイツで皇帝の異名を持つカール=ハインツ=シュナイダーも敵ではない。
幻想郷で常にトップクラスのFWとしてサッカー界を牽引してきた、レミリア=スカーレット、霧雨魔理沙も足元に及ばない。
ことシュートにおいて、彼は既に頂点を極め――それでも、セービングにおいて頂点とも言える森崎からゴールを奪えなかった事を悔いる。
その貪欲さは美徳でもあり、そしてそれ以上に彼の『欠点』でもあった。

23 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 00:18:13 ID:???
輝夜「まあ……ひとまずこれで大会は終わりなのだし、しばらくはのんびりした方がいいわ」
反町「そうですね(そうだな、大会は終わるんだし。 これからは試合前に体力温存をする必要も無いんだ。
   久しぶりに朝から練習しても問題は無いんだな)」

のんびりする、という言葉を素直に受け止めた反町はそう考えつつ、
しかし次の輝夜の言葉で現実へと引き戻される。

輝夜「それに、今後どうするかも考えなきゃいけないんじゃないの?」
反町「え?」
輝夜「今までは幻想郷で……ほら、西ドイツのシェスターくんや西尾?くん……じゃなかった、カルツくんとか。
   後は紅魔館の三杉とか、ついでに魔界Jrの佐野くん?だっけ、とかも幻想郷にいたけど。
   ここから先は外の世界に戻るって選択肢も出てくるでしょ?」

思えば。
反町が当初、この幻想郷へとやってきたのは――新造チームを秋姉妹が作る、とし。
八雲紫がスキマを使って呼び出したのが最初である。
そこから秋姉妹と共に共同生活を行いつつ、橙、妖精トリオ、大妖精、にとり、椛、リグルを自チームに勧誘。
負ける事もありながらも仲間たちと切磋琢磨をし、更に仲間を増やし。
色々といざこざはありながらも、『弱小』だったチームを『名門』へと引っ張り上げたのは記憶に新しい。

ただ、そんな彼も――もとはといえば、やはり外の世界の人間である。
外に帰れば両親もいるし、学校もある。
いつまでも幻想郷にいる、という訳にはいかないのだが……。

反町「………………」
輝夜「ま、悩みなさい。 あんたをこの世界に呼んだのはあの八雲紫なんだもの。
   あんたがどんな選択をしようと、その道を選ぶ手助けくらいはしてくれるでしょ」
妹紅「おーい、輝夜ーっ!! 何してんの、ほらほら、かんぱーいっ!!」
輝夜「あー……はいはい、乾杯乾杯」

24 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 00:20:11 ID:???
このチームを率いたという事からか、それとも単純に年長者としての意見か。
そっと反町にそう呟きながら、相も変わらず熱血漢として賑やかな場を楽しむ妹紅に呼ばれた輝夜は、
苦笑をしながらも返事をし、妹紅の元へと歩んでいく。

反町「(妹紅さんも……変わったよなぁ)」

1人になった反町がそんな輝夜を見ながら視線を動かせば、満面の笑みで盃を交わす妹紅の姿。
思えば、妹紅も反町が出会った時からは考えられない程の変化をした。
かつては世捨て人同然の暮らしをし、クールで斜に構えた態度を取っていた妹紅。
それが反町と静葉の説得を契機にして反町達のチーム――『オータムスカイズ』へと加入。
人妖との関わりを大切にしながら周囲と共に過ごし、その中で心境にも変化があったのか、
やがては不倶戴天の敵としていた輝夜とも和解をし、今では先のように盃を交わすまでの仲となった。

反町「(妹紅さんだけじゃないよな……本当に、いろんな人と知り合った)」

過ごした月日は僅か数か月程度。
ただ、その中で反町は個性的ともいえる人々――もとい、妖怪、神様、その他諸々と知り合った。



25 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 00:21:48 ID:???
レティ「まいう〜♪」
ヒューイ「まいう〜!」
チルノ「あたいってば暴飲暴食ね!!」
大妖精「チ、チルノちゃん! あんまり食べ過ぎちゃまた後で気持ち悪くなっちゃうよ!」

視線を向ければ、立食形式のパーティーの中、お皿を持って徘徊をする妖怪と妖精の一味を見つける。
かつては先にあったフランス国際Jrユース大会で敵として相対しながらも、
さまざまな衝突がありながら加入し心強い味方として、時折天然な所も見せながら縦横無尽に活躍を見せた風見幽香。

そんな彼女と共に加入をし、幻想郷では希少価値のあるDFとしてオータムスカイズを支えたレティ。

妖精トリオとしてその他大勢のモブ同然の身から、反町と師弟関係を結び――。
その関係については未だに少し互いに距離を測りかねているものの、
彼女自身は既に妖精という枠組みからは外れた……一流と呼べるボランチへと成長を遂げたヒューイ。

そして、そんなヒューイらに忌み嫌われながらもオータムスカイズに入り、
強大なブロックと誰にも負けない根性でオータムスカイズゴールを守り続けたチルノと、
そのチルノを誘い、途中からやけに反町に対して腫れものを触るような態度になった大妖精。

26 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 00:23:26 ID:???
パルスィ「妬ましい……大会MVPまで取るオータムスカイズが妬ましい……パルパル……!!」
ヤマメ「パルスィもしっかり活躍してたじゃないか。 第三キーパーの身からすりゃパルスィだって相当羨ましいよ」
キスメ「……!」←でもヤマメちゃんもアルゼンチン戦で活躍してたじゃない、とヤマメの肩を叩いて励ますキスメ
妖夢「(そうなんですよね、ヤマメもなんだかんだで出番はあったんですよね……。
    私だけ出番が結局無いまま終わって……ど、どうしてこうなった……)」

更に視線を動かせば、そこにはギリギリと歯ぎしりをしながら恨み節を呟くパルスィの姿。
彼女との付き合いも、思えば弱小だった頃からである。
シュートをひたすらに伸ばし、幻想郷どころか世界でも屈指の実力者となった反町とは対照的に、
怪我に泣きながらもそのセンスをこの大会中に一気に開花させ、ドリブラーとして一躍有名人となった彼女。
今や彼らを弱小なFW、MFと揶揄する者はどこにもいないだろう。

そんなパルスィの傍らには、やはり妬ましパルパルズ時代からのチームメイトが寄り添っている。
大会では第三キーパーながらも、腐らず、自身が求められた場所で活躍をし、
『あの』天才達から無失点で試合を切り抜け、大虐殺試合の立役者となったヤマメ。
無口ながらも心優しい性格と桶の強度だけでブロック一芸を突き詰めたキスメ。

唯一、大会中一度も出番がなかった彼女らのチームメイト魂魄妖夢だけは真実浮かない顔をしていたが、
活躍する者もいればしない者もいるのがスポーツである。

パルスィ「妬ましい……才能がありながらそれを腐らせるあなたが妬ましい……」
妖夢「…………(みんな私に才能があるって言いますけど、本当なんでしょうか。
   知らない内にリグルにすら大きく水をあけられちゃいましたし……どうしてこうなった?)」
ヤマメ「妖夢はしゃーないよ……FWは激戦区も激戦区過ぎるし」
キスメ「…………」←ドンマイ、と妖夢の肩を叩いてる

パルスィは独特の口調で妖夢の事を励ますも、いまいち届かない。
才能とセンスはある、しかし芽が出ない半人前のFW――そう言われ続けた魂魄妖夢。
自分には才能がある、と自覚し無自覚にも傲慢さも少し見え隠れしていた彼女だったが、
彼女はこの大会で結局出番が無かった事に関し、大きく自信を失くしていたという。

27 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 00:24:49 ID:???
魔理沙「よ、食ってるかにとり?」
にとり「うん、魔理沙! いやぁ、このキューリは美味いねぇ!! 漬物とはまた違う味わいだよ!!
    作り方を穣子に教えさせて、毎日食べたいくらいだね!!」
魔理沙「そっちはどうだ妖精?」
妖精1「ん……ちゃんと食べてる。 それより人間、飲み過ぎじゃない?」
魔理沙「何言ってんだ、めでたい事なんだし飲まない方がおかしーだろ! ほら、お前も飲め飲め!!」
妖精1「わわわっ……」

また違う所では、にとりと妖精1の師弟コンビに、魔理沙が絡んでいた。
ある意味、反町とは対極の位置に存在する霧雨魔理沙。
彼女もまた反町が大会MVPと得点王を両取りした事に思う所が少なからずあるのだろうが、
それでも純粋にこの宴会を楽しみ盛り上げていた。
妖精1の持つ空のグラスに並々と麦酒を注ぐと、妖精1はそれに小さく感謝の言葉を言いながらちびり……と舐めるように飲む。

にとり「妖精1も食べるかい? このキューリはいい、本当にいい!!
    絶妙な酸っぱさと後を引く甘さの見事なハーモニーがだね……!!」
魔理沙「にとりみたいにキューリだけで一皿とはいかねーだろ……何か取ってきてやろーか?」
妖精1「だ、大丈夫。 まだお皿に料理残ってるから」

28 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 00:26:38 ID:???
キューリのピクルスに感激し通しのにとりは上機嫌でそれを頬張る。ポリポリといい音が鳴る。
そんなにとりの様子を見ながら、妖精1は苦笑しつつももう一度ちびりとお酒を入れた。
この大会、FWはほぼ反町、魔理沙、リグルの三者で固定。
MFについても霊夢、咲夜、ヒューイの三者がほぼ確定であった中――DFに関しては、流動的であった。
咲夜やヒューイがDFの位置につく事もあれば、本職はFWであった紅魔館の門番――。
紅美鈴がそのクリアーの強さを買われて起用された事もある。
そんな中でも、にとりと妖精1、両者は全試合とまでは言わないまでも、それなりには試合出場の機会を得た。
特ににとりにしては自身の出番があった云々以上に、妖精1がそれなりに見どころのある選手だと認められた事が嬉しい。

にとり「かぱぱ! 妖精1のマンツーマンディフェンスは誰にもない、希少な才能だからね!
    ようやく認められて、本当に良かったよ!」
妖精1「……でも、まだまだヒューイには負けてる。 ヒューイは全試合に出て、ずっと活躍してたから」
魔理沙「…………ま、今は喜んでいいんじゃねーか? 前に比べりゃずっとよくなったんだろ?」
にとり「そうだよ妖精1! この大会を機に、お前はいずれは幻想郷を代表するマンマーカーになるんだよ!
    その為にも、また猛特訓しないとね!」
妖精1「ま、またあの変な機械とかつけるの!?」

かつて亀裂が入り修復は不可能かと思われた師弟関係。
しかしながらその思いのたけを妖精1はにとりにぶつけ、ぶつかり合い、やがては和解をした。
才能があると惚れ込んでおきながらまるで面倒を見ていなかったにとりは、
幻想郷にいた頃、大会前の大事な期間を費やし全てを妖精1を鍛え上げる為だけに捧げたのである。

結果、妖精1はその実力を大きく向上させ、先に述べた通り一目置かれる存在にはなった。
だが、まだまだこの程度では満足できていないのはにとり、妖精1、両者ともに同じである。

魔理沙「ま、頑張りな。 熱心な師匠がいてくれるってのはそれだけありがたいことだぜ」
にとり「えへへへ〜、そう? そうかな? ほら妖精1、魔理沙もこう言ってる事だし、頑張るよ!」
妖精1「う、うん……(ヒューイにまだ負けてるのは本当だしね。 ……それにしても、サンタナはどうしてるかなぁ?)」
魔理沙「(……これから伸びる余地があるってのは羨ましい限りだぜ。
     私は……。 私は、考えるだけだ。 こっからどうするのか、どうやるのか、何を為すのか。
     一から出直しだ……なあ、魅魔様)」

29 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 00:28:23 ID:???
一旦ここまでです。

30 :森崎名無しさん:2018/01/22(月) 00:53:15 ID:???
一旦乙です。反町…お前まだシュート力を上げたりないと言うのか…

31 :森崎名無しさん:2018/01/22(月) 01:32:39 ID:???
ああ、懐かしい面々の楽しそうな場面が見れて凄く嬉しい
それはそうと後半だけで3失点とこっそり炎上してるバヤシさん憐れ
彼にもちょっとだけで良いから幸せが訪れますように

32 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 23:56:20 ID:???
>>30
乙ありです。
打てば入るというレベルになるまではもう満足しないんじゃないですかね……(遠い目)
>>31
私も書いてて懐かしいと同時に楽しいです
バヤシさんについては、彼とさとり様のその後とかもかけていけたらと思います。

今日は更新は無しですが当時のデータとかを載せてみたいなと思います。
散々文中でも反町・魔理沙・リグルのFW3人が強い強いと言っていますが実際どれくらい強いかご覧ください。
ちなみに数値はわかりやすいように、本編準拠の76を限界値とするやり方に合わせています。

33 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 23:57:29 ID:???
名前   ド パ シ タ カ ブ せ 高低 ガッツ 総合
反町   73 71 77 72 70 70 70 3/3  880/880 503
魔理沙  74 75 74 75 72 72 74 2/2  900/900 516
リグル  73 74 73 73 70 70 73 3/3  750/750 506

   反町
やや華麗なドリブル(1/4でドリブル力+2)
メイア・ルア(1/4でドリブル力+4)
トリカブトパス(パス力+3)消費ガッツ80
トクシックチャドクガ(パス力+3で高速ワンツー)消費ガッツ80×2 要リグル
猛烈なシュート・ヘディング(シュート・高シュート時1/2で+3)
ポイゾナスドライブ(シュート力+7、吹っ飛び係数5)消費ガッツ200
オータムドライブ(シュート力+9、吹っ飛び係数5)消費ガッツ250
ポイゾナススパーク(シュート力+13、吹っ飛び係数1、要魔理沙)消費ガッツ300×2
コブラバイト(近シュート力+4)消費ガッツ120
ポイゾナスオーバー(低シュート力+5)消費ガッツ250
スベスベマンジュウガニカット(1/4でパスカット力+2)
ポイゾナスタックル(1/2でタックル力+2)
ネオポイゾナスタックル(1/4でタックル力+3)
スキル・ポイゾナスセンス(自身のシュートがキーパーに届いた場合。
    1/2の確率で以降のキーパーと自分の判定時、キーパーのセービング力に−2の補正)
スキル・パス+2
フラグ・ドリブル(7)・パス・タックル(6)・せりあい

34 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/22(月) 23:59:24 ID:???
   魔理沙
強引なドリブル(1/2でドリブル力+2、吹っ飛び係数2)
マジックミサイル(パス力/空パス力+2、吹っ飛び係数3)消費ガッツ60
スターダストミサイル(パス力/空パス力+3、吹っ飛び係数2)消費ガッツ80
東方コンビ(パス力+3でワンツー、要霊夢)消費ガッツ80×2
マスタースパーク(シュート力+6、吹っ飛び係数2)消費ガッツ200
ファイナルスパーク(シュート力+10、吹っ飛び係数2)消費ガッツ300
マスター封印(シュート力+11、吹っ飛び係数2、要霊夢)消費ガッツ250×2
ファイナルポイゾナス(シュート力+13、吹っ飛び係数1、要反町)消費ガッツ300×2
スターダストレヴァリエ(低シュート力+2、吹っ飛び係数5)消費ガッツ120
シュート・ザ・ムーン(高シュート力+2、吹っ飛び係数4)消費ガッツ120
ドラゴンメテオ(高シュート力+6、吹っ飛び係数2)消費ガッツ300
東方ツイン(低シュート力+3、要霊夢)消費ガッツ120×2
アースライトレイ(1/2でタックル力+3、吹っ飛び係数2)
カウンタースパーク(1/4でブロック力+10、ブロックに成功した場合敵シュート力+10で打ち返し)
マジックナパーム(高トラップ力+1)消費ガッツ80
スキル・キャスケットオブスター(味方のパスを受ける際、1/4で完全フリー補正付与。自身のアシスト時、1/2で相手に+1の補正)
フラグ・タックル

35 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 00:00:39 ID:???
   リグル
リグルーレット(1/2でドリブル力+3)
トクシックチャドクガ(パス力+3で高速ワンツー)消費ガッツ80×2 要反町
バグストーム(空トラップ/パス力+1)消費ガッツ80
リトルバグストーム(空トラップ/パス力+2)消費ガッツ100
地上の流星(シュート力+3)消費ガッツ120
地上の彗星(シュート力+8)消費ガッツ250
ドライブスコーピオン(高シュート力+7、吹っ飛び係数3、発動は反町)消費ガッツ200×2
リグルキック(空シュート力+4、吹っ飛び係数3)消費ガッツ200
ネオリグルキック(空シュート力+6、吹っ飛び係数3)消費ガッツ250
ライトニングリグルキック(空シュート力+8、吹っ飛び係数3)消費ガッツ300
リグルタックル(1/4でタックル力+3)
スキル・エースの自覚(自分が点に絡んでいない時のみ発動。
           誰かが点を入れた直後から発動、自身が点に絡むまで全能力+1)
スキル・ドリブル+1
スキル・パス+2
スキル・タックル+1
フラグ・ドリブル・タックル・パスカット・ブロック

36 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 00:06:56 ID:???
……はい、ご覧のとおり、限界値76を超えて反町のシュート力は77で設定していました。
信じられますか?これでも当時はまだシュート力を上げたいって言われてたんですよ。
ドリブルはまあそこそこ。タックルも可もなく不可もなくですが、
とにかくシュートだけはバカみたいに強いです、魔王呼ばわりされますねこれは。
Jrユース時点で日向のライトニングタイガークラスです。それを250消費で打てます。
おまけに1/2でキーパーまで届けば−2補正をかけるスキルまで持ってます。
言ってみれば一度打った後は1/2でストラットのオムニゾーンが発動するようなものです。
……化け物ですね、今改めて見ても。何度も言いますがJrユース時点です。

魔理沙も普通に強いです。というか互換対象である日向以上です。MLvの有無も、スキルで相殺しています。
あまりイメージにないと思いますが、パスが実は相当上手いです。
ドリブルも出来る、ポストプレイで楔になれる、シュートも当然高火力(反町には及ばない)。
普通に一流レベルです……比べる相手が悪い。

リグルも見劣りするかもしれませんが、やっぱり強いです。
ライトニングリグルはネオタイガークラス。来生がネオタイガー打てる全日本とかどう考えても強い。
おまけに来生よりもガッツがありますし、反町の言う事なら(それなりに)聞いてくれます。
スキルも点に絡んでいない場合は常に全能力+1と強力です。
パスカットブロックは出来ませんが、FWとして必要な能力は全て高水準。

そりゃこんな3人いたら……いくらバヤシさんでも3失点です。
バヤシさんの強化点はさとりとの練習でラストフォート会得くらいですので。。。


それでは、お披露目した所でここまで。
明日は多分更新できます。

37 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 00:59:02 ID:???
ストラットと1しか基礎値が違わないのか、もっと引き離せるように鍛えなきゃ(感覚麻痺)

みたいな考えが普通だったと思うと、凄い時代でしたね…

38 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 01:24:40 ID:???
撃てば入る。
それは所詮射之射というもの、好漢いまだ不射之射を知らぬと見える。
ムッとした反町を導いて、老隠者は、そこから二百歩ばかり離れた絶壁の上まで連れて来る。
脚下は文字通りの屏風のごとき壁立千仭、遥か真下に糸のような細さに見える渓流を
ちょっと覗いただけでたちまち眩暈を感ずるほどの高さである。
その断崖から半ば宙に乗出した危石の上につかつかと老人は駈上り、振返ふりかえって反町に言う。
「どうじゃ。この石の上で先刻のシュートを今一度見せてくれぬか」
今更引込もならぬ。老人と入代りに反町がその石をふんだ時、石は微かにグラリと揺ゆらいだ。
強しいて気を励はげましてシュートしようとすると、ちょうど崖の端から小石が一つ転がり落ちた。
その行方を目で追うた時、覚えず反町は石上に伏した。
脚はワナワナと顫え、汗は流れて踵にまで至った。
老人が笑いながら手を差し伸のべて反町を石から下し、自ら代ってこれに乗ると、
「ではシュートというものをお目にかけようかな」と言った。
まだ動悸がおさまらず蒼ざめた顔をしてはいたが、反町はすぐに気が付いて言った。
「しかし、ボールはどうなさる? ボールは?」
老人はボールを持っていなかったのである。
「ボール?」 と老人は笑う。
「ボールの要いる中はまだ射之射じゃ。不射之射には、ボールもスパイクもいらぬ」
ちょうど彼等らの真上、極めて遠い所を一人の若林が悠々とSGGK伝説を描いていた。
その胡麻粒ほどに小さく見える姿をしばらく見上げていた老人が、やがて、
見えざるボールを無形の形に構え、満月のごとくに引絞ってバシィと放てば、見よ、
若林はとめるとも言えずSGGKからジュストのごとくにザルGKへと落ちて来るではないか。
反町は慄然とした。
今にして始めてシュートの深淵を覗き得た心地であった。

39 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 01:41:05 ID:???
FW陣強過ぎる…たぶんMF以降も凄いことになってるんだろうなぁ
最大火力は魔理沙とのコンビ技で威力90、センスが発動すれば92か
0封の森崎が凄すぎる

40 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 02:27:07 ID:???
詳しく見てないけど反町は今でも自分は少しでも気を緩めたら弱者になると思ってるんだろうな
現状世界最強のシューターでも、もっとシュート鍛えなきゃ(使命感)
って考える過剰な程の向上心は疲れないのと思っちまうな

41 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 06:28:21 ID:???
でも、一流FWというには足りない能力が多いから
まだまだ鍛える余地はありそうだし、本人もあると思っているんだろう
個人的にはもう少しドリブルを鍛えるべきだと思うが


>>38
中国古典の列子かな?

42 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 12:19:25 ID:???
森崎は最初から超化
早田で反町をマーク、空手でリグルの空中戦封じて、
魔理沙は松山に頑張ってもらうか日向DF起用くらいしか対策思い浮かばん
そうまでしたところで霊夢とパルスィがドリブルで突っ込んでくるっていうね

43 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 17:49:35 ID:???
>>38 満月のごとく引き絞るって何をどう引き絞るんだww

44 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 20:12:54 ID:???
>>37
今だから言いますけど、殆どのチームにはキックオフシュートが最適解だったと思います。
完全フリー補正+2が乗った上でポイゾナスセンスが乗ったら大体敵はいません。

>>38
大前さんかな?(すっとぼけ)

>>39
MF陣は霊夢・咲夜・ヒューイ・パルスィ(ドリブル一芸)・パチュリー(後悔させないよさん互換)がいますからね……。
唯一弱点はDFなのでしょうが……FW・MFで稼げる優位性がJrユースレベルだと半端ではないですね。

>>40
疲れる事は無いのでしょう。何せ主人公キャラですので……。
というのは冗談としても、純粋に森崎からゴールを奪えなかったのが悔しいだけだと思います。

>>41
一流FWの定義をどうするかですね。
突破力マークの引付決定力と定義するなら魔理沙が幻想郷No.1でしょう。
シュナイダーや出てませんけどカルロスもその条件に当てはまります。
ただ純粋なストライカーとしてなら反町が群を抜きすぎてますね……抜きすぎてます。
ドリブルまで上がってたら、正直ゲームにならないですね……(多分当時何度も思った事)

>>42
反町リグル魔理沙体勢の何が強いって3人揃ってる事なんですよね……。
反町並のシュートを打つFWはいます(WY編のストラットクラスですが)
リグルくらいのシュートを打てる選手もいます、魔理沙並のFWだっています。
ただ3人揃ってるっていうチームは、本編では多分いなかったと思います。
強いて言えばカルロス、ザガロにコインブラをFWに上げたブラジルより少し下くらいの性能かと思いますね。

ちょっとだけ更新します。

45 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 20:14:18 ID:???
(>>28の続きから)

咲夜「美鈴、お疲れ様。 思ったよりはあなたも出番があったわね」
美鈴「は、はぁ……といってもFWじゃなくてDFとしての方が主でしたけどね、アハハ」
咲夜「正直な所、FWにコンバートをしてもイマイチだったのだし……本格的にDF転向を考えてみたら?
   クリアー一芸とはいえ、何度もお嬢様やフランドール様の得点機会を阻んだのだし」
美鈴「うぐっ……」
咲夜「?」
パチュリー「(……咲夜はどうしてこうなったのかしら)」

一方では、紅魔館から参戦をした3者が優雅に歓談をしていた。
幻想郷の誇るトップボランチにして、この大会(というか一時帰省の際の謎の人物との遭遇により)大きく成長を遂げた十六夜咲夜。
GKとしては役立たず、FWにコンバートしても結果は出ず、
しかし持前のフィジカルと拳法を応用したクリアーだけは他の追随を許さない紅美鈴。
もやしの貴公女として幻想郷の切り札的存在となっていたパチュリー=ノーレッジ(活躍したとは言ってない)。

彼女たちはこの激しいレギュラー争いが繰り広げられる幻想郷Jrユース内において、
一定以上の地位と実績を積んでいた為、表情は決して暗くなかった。
暗くなかったのだが――咲夜の一言により、美鈴は少しばかり呻く。

美鈴「(そうなんですよね……私思いっきりお嬢様とフランドール様の活躍機会奪っちゃったんですよね……)」

今大会、美鈴が起用をされた際に求められた役割はポストプレイヤーの無力化。
イタリアへと派遣された洩矢諏訪子、西ドイツの誇るポストプレイヤーマンフレート=マーガス。
両者に対する切り札として、DFの位置で出場を続けた。

そして、その両チームへと派遣されていたのが――美鈴の雇い主である、
レミリア=スカーレットとフランドール=スカーレットの姉妹である。

46 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 20:15:52 ID:???
万全を期し、全力で挑む事こそが礼儀、手を抜く事など逆に無礼であるとはいえ、だ。
結果的にはストライカーである2人の活躍機会を奪った事に変わりはなく、
活躍出来たとはいえど美鈴の心中は複雑であった。

そこを銀のナイフでグサグサと突き刺すように言葉を投げかけるのが、我らがKY長である。

パチュリー「……まあ、そこまで重く考えなくても大丈夫でしょ」
美鈴「そ、そうでしょうか?」

流石に見かねたのか、パチュリーが美鈴を慰める。
主君であるレミリアの友人であるパチュリーがそう言うのなら……と、
美鈴としても少しばかりは気持ちが晴れた。

パチュリー「……主君の気持ちを踏みにじりながらものうのうとやれているのもいるんだし、それに比べれば」
美鈴「……そうですね」

否、完全に晴れた。

レミリア=スカーレット――暴君のように思えるが、割と心は広い。
少なくとも、今パチュリーが言ったように、自身の気持ちを大事に思っていた従者に踏みにじられようと、
その従者をなおも手元に置き、必殺シュートの特訓をつける程度には(なお、そのシュートは従者本人には恥ずかしがられる模様)。

咲夜「(……このローストビーフ美味しいわね。 製法が違うのかしら?
    後でレシピとかを聞ければいいのだけれど……)」

ちなみに、当の従者は2人の視線を気にする事なく料理に舌鼓を打っていたという。

47 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 20:17:14 ID:???
こうして活躍出来た者たちもいれば、当然出来なかった者もいる。
選手兼コーチのパチュリーを含めれば総勢25名。
途中、霊夢ら4名の離脱があったとはいえ、出番すらなかった者すらいた。

うどんげ「私たちまで食べていいのかなぁ……後で料金とか請求されるんじゃ……」
てゐ「気にせず食ってりゃえーウサ。 誰もうどんちゃんの事なんて見てないよ」
うどんげ「ひ、酷いっ!!」

一応、本当に一応、出場機会こそあったものの。
いい所はまるで無し、小さな活躍はしても大きく印象に残る事はまるでない。
極端に役立たずだった訳ではないが、かといって存在感は微塵も感じる事もなかった鈴仙=優曇華院=イナバ。
彼女は自分もこんな豪華な食事を食べていいものかとキョドっていたものの、
傍らにいる少女の言うように誰もうどんげには注目をしていなかった。

憤慨するうどんげをいなしながら、少女――因幡てゐは小さく溜息を吐く。

てゐ「(私の出番が無いとは思ってたし、うどんちゃんも活躍するとは微塵も思わなかったけどさぁ……。
    流石にアルゼンチンがあそこまでの大敗をする、ってのは痛かったなぁ……)」

この大会が終われば自分たちは幻想郷へと戻る。
一時的に海外のチームへと派遣されている選手たちも、元いた勢力へと戻ってゆく事になるだろう。
そうなった時、果たして自分たちのいる――永遠亭の評判はどうなるか。
うどんげ、てゐの活躍が無かったというのはてゐ自身にしても予想の範疇、というか十中八九そうなるだろうと予期していた事だ。
問題点は永遠亭の誇るエース――八意永琳の所属したアルゼンチンが、まさかの大虐殺をされたという事である。

てゐ「(他の国はそこそこやれてただけに、とんでもなくいてーウサ……。
    アルゼンチンに派遣されたのは1人だけ、なんてのも言い訳にしては弱すぎる。
    永遠亭の評判は大暴落……いや、評判が大暴落するだけなら、今までの幻想郷サッカー界としては問題ねーんだけど……。
    帰った後の展開、それにここまでの幻想郷サッカー界の流れを見るに……。
    これ、すっげー痛手になりそうウサ……)」

48 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 20:19:17 ID:???
お空「うにゅ……(全然活躍できなかったなぁ。 お燐の為にも頑張りたかったのに……。
   それに……あの意地悪な人間が凄く活躍して! くそー……もっともっと強くなりたい!)」
メディスン「…………(何の為にわざわざ外の世界までやってきたんだろ)」

部屋の隅で誰とも言葉を交わさず静かに食事をとる者もいた。
地霊殿のストライカー、霊烏路空。
オータムスカイズ所属のMF、メディスン=メランコリー。
彼女たちも活躍出来た、とは言えない部類の選手たちであった。

お空は一応アルゼンチン戦でゴールを決めはしたものの、それは大虐殺試合の中での1つでしかない。
ある意味印象に残らないという点では、うどんげよりも下だったかもしれない。
この幻想郷Jrユースの選考会に残りながら、無念の途中離脱を果たした親友――火焔猫燐に対して、
面目が立たないという心情は理解できるものだった。

メディスンに至っては、そもそも出場機会すら与えられなかった。
敵の体力を削る接触プレイに、エースキラーの極意。
恵まれた才能を持ちながらも、しかし基礎能力で大きく劣る彼女に終ぞ大会では出番が来なかった。

メディスン「(幽香は今頃どうしてるんだろ……そういえば、なんで髪の毛が伸びたのかも教えてくれなかったなぁ)」

彼女の脳裏によぎるのは、常に彼女を気にかけてくれた風見幽香の事であった。
全幻想郷Jrユースの一員として選出され、戦っていた筈の彼女。
誰よりも焦がれ、会いたい相手は、敵対したチームの大事な友人であり。
このチームに対する未練や愛着は微塵程も無かったという。

49 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 20:21:13 ID:???
短いですが一旦ここまで。

50 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 20:58:34 ID:???
一旦乙です
今更だけど章タイトルでちょっとうるっときた……

51 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:47:42 ID:???
>>50
乙ありです。
ここから章タイトル回収です。ちょっとだけまた投下します。

52 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:49:04 ID:???
反町「(……改めて見ると個性的な面子だなぁ、本当)」

手の中にある杯(中身は酒ではなくジュースにしてもらった)を傾けながら、内心そう思う反町。
実際、全日本にも負けずとも劣らない個性的な面々ばかりだ。
彼女らとの思い出を肴に、しみじみと杯の中(何度も言うがジュース)を啜る反町だったが……。

穣子「反町、飲んでる!?」
反町「おぶふっ!」
リグル「ひえぇ……」
静葉「穣子、そんな急に叩いちゃ駄目でしょ。 ……はい、ハンカチ」

途端、背中を強くたたかれ思い切り口の中身を吐き出す。
中身は綺麗な飛沫となり、いつの間にか目の前にいた蟲の妖怪の顔面を直撃した。
思わず咳き込む反町は手渡されたハンカチでひとまずは目の前にいる少女の顔を拭き……。
続いて裏面を使って自身の口元を拭う。

反町「な、何するんだよ穣子」
穣子「1人でこんな所でボケーッと突っ立ってんのが悪い! 何やってんのよ、優勝の立役者が」

そこまでやってようやく落ち着いてから……反町は振り返り、文句を垂れた。
そこにいるのは――豊穣の女神、秋穣子。
悪びれた様子もなく、快活な笑みを浮かべてそう言い放つ様はいっそ清々しい。
ただ、当の本人が悪気が無く、言葉の通り祝勝会にも関わらず1人でいる反町を見かねて声をかけたというのは事実だろう。
それくらいの事は、決して浅くない関係である反町には理解が出来た。
出来たが、それについて素直に感謝するというのも微妙に気恥ずかしい。
反町はそんな感情を誤魔化すかのように、もう一度口元を拭った。

反町「ありがとうございます静葉さん」
静葉「いいえ。 それより服にはつかなかったかしら? 染みになったりすると大変だから……」
反町「大丈夫です。 ……リグルも悪いな」
リグル「……甘い。 これ美味しいね」
反町「(えぇ……)」

53 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:50:50 ID:???
そのまま、借りていたハンカチを穣子の姉である秋静葉へと返し、
そしてオータムスカイズで常にツートップを張り続けた相棒――リグル=ナイトバグの具合を心配する。
因みに、リグル自身は思った以上に顔にかかったジュースが甘かった為、喜んでいたという。
甘い水は蛍の大好物だからね。仕方ないね。

穣子「にしたってなんでこんな端っこにいんのよ。 あんたがキャプテンで大会MVPまで取ったんだから、
   もっと堂々とど真ん中にデーンと立ってなさいよ」
反町「なんの用事もないのにど真ん中に立つ訳いかないだろ……それに、ここが落ち着くんだよ。
   みんなが騒いでるのを見るだけでも結構楽しいし」
静葉「まぁ……それはわかるわ。 (正直あまり触れたくない人とかもいるし)」
リグル「反町の飲んでた奴どこにあるの?」
反町「さあ? 適当に取ってきた奴だからどこにあるかまでは……」
リグル「ちょっと探してくる!」

駆け出すリグルを見やりながら、反町は彼女たちとの事について考える。
弱小チームだったオータムスカイズを名門へと導いたのは、反町自身の力によるところが大きいと大多数の者は考える。
しかしながら、当の本人は――当然ながらそんな事はあまり考えておらず、
むしろ周囲の者たちの支えと努力があったからこそと考えていた。

反町「(リグルも、昔はシュートしか出来なかったうえ……そのシュートの威力もお世辞にも高いとは言えなかったもんなぁ)」

オータムスカイズの中で、誰が一番成長を遂げたのか。
その質問に対する幻想郷のサッカー通の答えは、大きく二分に分けられる。
1つは、先立って話題に上っていたヒューイ。
名無し妖精の身ながら驚異的なセンスと試合を通しての成長、そして練習の成果により、
フィジカル面に大きな不安こそ残るものの攻撃面もそこそここなす、ボール狩りに長けたボランチとして既に幻想郷を代表する存在である。

そしてもう1つは、リグル=ナイトバグである。
反町の回想通り、当初は空中シュート一芸――かつ、そのシュートの威力もとても高いとは言えない弱小FW。
そこからまずは空中シュートにおいて才覚を発揮、高低どちらでも打てる強力なダイレクトシュートを武器に反町とツートップを組み、
更には何故か無駄に回るドリブル技を開発。ポストプレイもこなし、今や幻想郷全土を見渡してもトップクラスの万能型のCFWだ。

54 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:52:15 ID:???
反町「(静葉さんも……)」

オータムスカイズを誰よりも思っていたのは誰か。
これについても意見は分かれるだろうが、恐らく、1番強くチームを強く思っていたのは秋静葉に違いない。
まだチームの人員自体が足りない頃は、その微笑みを持ってして仲間を勧誘し、
チームが結成してからは中盤の要としてチームを牽引した。

途中、風見幽香が加入をした際にはいざこざがあったものの……。
それも、全てはチームを思っての行動である。
そりゃ誰だってジャイアンがいきなりチームに入れてくれと言って来たら警戒する。
まさか映画版のジャイアンだとは誰も思わない。

反町「(穣子も…………)」

オータムスカイズで反町と最も近しいのは誰か。
――やはりこれも意見が分かれるが……その答えは秋穣子だろう。
日常生活では、反町をはじめとしたメンバー達の食事の用意などの家事を一手に引き受け。
それでサッカーに手を抜く事なく、むしろ熱心に練習には精を出し。

そして時には反町の事を勝気で前向きな姉として引っ張り――。
また時として――その勝気さの裏に潜む弱さも、反町に見せた事もあった。
反町自身、誰よりも自身の心中を理解してくれていると考えているのは穣子である。
数か月という短い期間。しかし、それ以上に濃い関係性が2人にはあったのだ。

55 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:55:15 ID:???
反町「(もしも俺が帰るとすれば……オータムスカイズはどうなるんだ?)」

先ほど、輝夜と話した反町の今後の身の振り方。
もしも外の世界に帰るとなった場合――オータムスカイズはどうなるのだろう、と夢想をする。
自分1人が抜けた所で大丈夫だろう、と安易に考えられる程には、反町は卑屈でもなければ責任感が無い訳でもない。
キャプテンであり、エースストライカーである。その程度の自覚はある。
ただ、だからといっていつまでも幻想郷にいていいものか……という思いもいくばくかはある。
全日本というチームに対して、東邦学園という居場所に対しては未練も決して無かったが、
やはり外の世界にも友人や両親は残してきている。
常識的に考えれば、少なくとも両親を安心させる為にも、一度は帰郷しなければならないだろう。

反町「(それに将来を考えればやっぱり高校くらいは出ておかないと……。
    将来……いや、幻想郷で将来を過ごすなら外の世界での学歴は意味無いのか?
    高校を出るってなっても3年はかかる訳だし、その間チームを離れるっていうのも問題だし。
    そもそも高校はどうしよう。 東邦……いや、うーん……別に今更日向は怖くない、けど。
    かといって好き好んであいつが牛耳ってる所で過ごすっていうのもなぁ。
    ただ、他校を受験するのは……そもそも俺受験勉強してないしなぁ。 いや、勉強はそこそこ出来るとは思うけど。
    東邦はエスカレーター式だからまるで対策とかもしてないし……やっぱり幻想郷に残った方が……でも……)」

56 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:56:47 ID:???
むにぃ

反町「ふへ?」
穣子「なーにをまたムッツリ考え込んでんのよ、私と姉さんを前にしときながら」

と、反町が悶々とまた考え事を始めた所で、不意に頬をムニンと引っ張られた。
意識を再び現実へと引き戻してみれば、そこには頬を膨らませながら右手で反町の頬を抓む穣子。
その横では苦笑をしながら、そんな2人の様子を見守る静葉の姿がある。

穣子「こんな時まで難しい顔してうんうん唸る事無いでしょ」
反町「にゃにするんだよ……」
穣子「大会がやっと終わったってのにまだなんか心配事でもあるわけ?」
反町「いや……」
静葉「……何かあるなら、相談に乗るわよ一樹くん?」

口調はあれではあるが、穣子も心配をして言ってくれているのだろう。
その程度の事は、反町にもわかる。
しかしながら――外の世界に戻るべきか否か、2人に相談をしてもいいものだろうか。
2人が引き留めるかもしれない……と考えての躊躇では無い。
恐らくは今後の生き方を決める、大事な人生の岐路である。
だからこそ、これは――。

反町「これは多分、俺が答えを出さないといけない事だから……」

ようやく離してくれた頬を摩りながら、それだけ答えた反町。
穣子は未だに納得がいかない様子ではあったが……これ以上聞いても仕方ないと判断したのか、プイと怒ったように顔を背け。
一方で静葉は困ったように、やはり微笑を浮かべるだけで――。

57 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 21:58:03 ID:???
早苗「反町くーん♪」
反町「へ? え、早苗さん?」

と、そこに反町の耳に飛び込んできたのは――やけに陽気な声。
振り向けばそこには、頬を赤らめグラスを片手にニコニコと笑みを浮かべる緑の巫女。
その背後で疲れ切ったような表情を浮かべぐったりしている、赤の巫女。
東風谷早苗と博麗霊夢、両者の姿があった。

早苗「えへへ、大会お疲れ様でした!」
反町「は、はい……(あれー?なんだか凄く上機嫌だぞ……?)」

かつては常識に囚われず、フィールドで堂々と寝釈迦のポーズを取ってみたりGKながらオーバーラップをしたり、
はたまたゴールバーで懸垂をしてみたりと、それはそれは奇行を幾度となく繰り返してきた早苗。
ただ、反町と出会い常識の大切さを取り戻してからは、以前のような訳のわからない言動やハイテンションは鳴りを潜め、
どちらかといえば大人しい部類の性格へと戻っていた筈である。
ところが、今の早苗はといえば――いつもの様子は失せ、かといって常識に囚われなくなった訳でもない。
一体どうしたのかと目を白黒させる反町だったが……。

穣子「あー……飲んでるのね、早苗」
早苗「はいっ! 飲んでます!!」
反町「つまり……(酔っぱらってるのか……)」
静葉「(あまりお酒に強くないようだものね……おまけに酒癖がいい方でもないし……)」

同じ妖怪の山に住まう者、八百万の神と風祝。
何かと親交がある静葉と穣子は、早苗の様子について見当をつけ、的確に言い当てる。
そう、何が会ったのかと言えば……単に酔っぱらっているだけ。
本来、あまり酒を好んで飲む方ではない早苗であったが、祝勝会で高揚していたという事もあってか、ついぐいぐいと。
一口が二口、二口が三口となっている間にアルコールはどんどん体内に吸収され……ご覧の有様である。

58 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:00:28 ID:???
反町「で、霊夢さんは一体どうしてそんなに疲れ切ってるんです?」
霊夢「……こいつがあんたんとこ行くって言って聞かないのを止めてたのよ」
反町「? なんでまた……」
霊夢「嫌な予感するのよねぇ……すっごい嫌な予感」

酔っ払いを放っておく、というのは――確かにあまりいい事ではない。
が、あくまで所詮は酔っ払いである。
倒れこむ程飲んでいる訳でもなければ、気分を悪くしている訳でもない。
ただ単純にいつも以上にテンションが上がり、いつも以上に気が大きくなっているだけだ。
霊夢がわざわざ早苗の手綱を握る――しかも、反町に会いに行こうとするというのを止めていた、という言葉を聞き、
反町は首を捻るのだが……霊夢は盛大に溜息を吐く。

しかし、そんな事は今の早苗には関係ない。

早苗「反町くん、あの……約束の事なんですがっ!!」
反町「約束?」
穣子「なんかしてたの反町? っていうか早苗、声おっきい」
霊夢「(あーこれは……これは駄目な奴だわ、うん)」

思いのほか大きな声を出した早苗に、一体何事かと会場にいる者たちも反町達に視線を向ける。
そんな視線を知ってか知らずか、早苗は更に声量を上げ、満面の笑みで――。

早苗「はいっ! 大会が終わったら、ほら、その……」
反町「あ――」

早苗「私と正式に、お付き合いしていただけると!!!!!!」

ぶちかました。

………
……


59 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:01:48 ID:???















         「「「「「はあああああああああああああああああああああああああああああああっ!?!?!?!?!?!?」」」」」

















60 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:03:35 ID:???
反町一樹と東風谷早苗。
2人の出会いは遥か昔である。
かつて常識に囚われないとしていた早苗は、常識にまるで捉えられないシュート力を持つ反町に一目ぼれ。
その後、早苗は紆余曲折を得てやっぱり常識は大切ですねと無意味にオーバーラップをする事を控えるようになり、
また、反町もなんだかんだで容姿端麗で(常識が戻れば)大和撫子。
男の理想とするタイプを具現化したような早苗に惹かれたのは当然の事であり、
両者は紅魔杯が終わった際、人知れず両想いの恋人となっていた。

しかしながら、その後全幻想郷Jrユースというチームに召集されるとわかっていた2人。
真面目な反町と常識的な感性を取り戻した早苗である。
大会が終わるまでは2人の関係を黙っていよう、と約束をしたのだが――。

反町「(そういや……大会終わったから、黙ってる必要も無いのか!)」

無論、あけすけに話すような必要も無い。無いが――今の東風谷早苗は酔いどれである。

1.酔っ払い
2.フランス国際Jrユース大会優勝でテンション上がりっぱなし
3.それよりとっとと愛しの反町くんとちゅっちゅしたい

これらの要因が重なり合い、早苗はとんでもない爆弾発言をした。
大声で、である。

ざわ……!
               ざわ……!!

61 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:07:05 ID:???
これには思わず、周囲の者たちもどよめくのだが……。

早苗「……反町くん、お答えを」
反町「え、え? いや、その……(まさかいきなり来るとは思わなかったっていうか!? え、ここで俺が答え出すの!?)」

東風谷早苗は反町一樹が逃げる事を許早苗。
魔王がにげるコマンドを選ぶ事を選択出来ないとはどういう事かと混乱する反町だったが、
それでも……それでも……!

反町「(そ、そうだよな。 思えばようやく……)はい……そうですね、ようやく表に出せますね早苗さん」

反町個人としても、思春期。
色々と豊満でグラマーで浮き球3/3な早苗が相手な事はあり、また、それは差し置いても好きあっている仲である。

逃げる事は当然なく、肯定の意志を小さくうなずきながら告げ――。

早苗「えへへ……ぎゅーっ!」
反町「(う、うわーっ!? うわーっ!? ああああああああっ!?!?!?!)」

それを聞いて、早苗はやはり満面の笑みで……反町の腕に絡みついてきた。
一同が絶句をする中で――それだけ、このビッグカップルの誕生は衝撃だったのだろう――。
ともかく、早苗は幸せそうに反町の腕に絡みついてきた。
これに対して反町は右腕に伝わるたわわな幸せと恥じらいとどうしていいのかわからなさに翻弄される。
反町一樹15歳、6点フェイスの男は言うほど女性に慣れていない。

早苗「うふふふ……」
反町「さ、早苗さん?」
早苗「これからは……これからは、我慢だってしなくていいんですもんね?」
反町「え、え、ええ……まあ……その……」
早苗「じゃあ……」

言いながら、早苗はすっと身を翻し――。

62 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:08:53 ID:???














ちゅっ……


















63 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:10:27 ID:???
その光景を見て――ようやく一同は、2人の関係性について、確信を得た。

魔理沙「ぅぁ……」

割と初心な者は、濃厚なそれを見て、思わず顔を赤らめ。

大妖精「あ、あわわわ……!?」
にとり「ひゅいぃ!?!?!?!?!?(恐ろしいねぇ! 恐ろしいねぇ!!!)」

臆病な者は、とりあえず理解の範疇外の――想定外の出来事に懼れ抱き。

咲夜「(え?え? え!? ずっと年下の早苗が私より先に彼氏手に入れた!?
    って、いやいやそういう事じゃなくて!! えっと、そう、ここは……ここは、友人として祝福すべきね!?)
   お、おめでとう早苗!! お幸せに!!」
妹紅「めでたいっ! 凄くめでたいね!! 反町、良かったねぇ!!」
松岡コーチ「心も身体も熱くなってきた!!」

その場がシンと静まり返ってるにも関わらず、祝福する者もいたり。

パルスィ「パ……パル……パ……パルルルルル……!!!!!」
ヤマメ「ちょ、やめなよパルスィ!! 妖夢、止めて!!」
妖夢「お任せ下さい! この魂魄妖夢、サッカーならともかく! 腕力や弾幕勝負で2ボスに負ける事などあんまりない!!」

水を得た魚のように嫉妬する者もおり。

リグル「ああ……このジュース美味しいなぁ。 おかわりください」
ヒューイ「(うーん、早くご飯来ないかな。 焼き肉と言ったら白米だよ)」

そもそも話を聞いていない者もいた。

64 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:13:34 ID:???
そんな中で、それらとはまた違う反応を示す者もいる。

霊夢「(言わんこっちゃない……やっぱり面倒な……ああもう、面倒な!!)」

酒を飲ませた早苗を、この場で反町に合わせる訳にはいかない。
そう"第六感"を働かせていた霊夢は、執拗に早苗を引き留めていたが……そんな霊夢を振り払った早苗がしでかした事は、
案の定この場を混乱させるにふさわしい爆弾であった。
大きく溜息を吐きながら、霊夢は頭を抱える。
勘の良すぎる彼女は、ここから大まかに何が起こるかを理解し始めていた――。
恐らく、幻想郷のルール自体が変わってしかねないという状況になりうる自体になる事に。

静葉「(これは……拙い……)」
てゐ「(……ここでそうくるんだー、うわーうわー。 やめてよー……これ以上永遠亭苦しめるのやめてよー……)」
輝夜「(ちょっと待ってちょっと待って……これ、幻想郷サッカー界的に考えて大問題じゃない?)」
パチュリー「(紅魔杯優勝チームの守矢フルーツズキャプテンと、トーナメント敗退ながら……。
       この全幻想郷JrユースでMVPを獲得。 文字通り、世代最高の選手の栄誉を手に入れた選手のカップル……。
       さて、これは……)」

一方で冷静に、この状況を分析しようとする者もいた。
彼女たちは頭を動かす事が仕事である。故に、考えた。
このビッグカップルの誕生が、一体幻想郷サッカー界に何を齎すのか――どう影響を及ぼすのか。
杞憂に終わればそれが1番である。だが――少なくとも、杞憂に終わるとは思えない、と3者は考える。

65 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:15:33 ID:???
そして――。

穣子「………………うそ」

少女は――その口づけを目の前で見ていた少女は、ぽつりとそれだけ呟いた。
その表情は、うかがい知れない。声色からも、感情は読み取れない。
祝福か、嫉妬か、羨望か、怒りか、驚愕か。
……ただ、ただ、その一言だけからは、何を感じたかは図り知る事が出来ない。
ただ、しかし。

その少女の瞳に映る少年は、はにかみ、照れながら。
それでも嫌悪する様子は一切見せず――しかし、幸せそうにしていた、というのは事実。

反町「ぷはっ!?ちょ、さ、早苗さん!?」
早苗「えへへへへ……」
穣子「…………」

今この時。

少年の隣に立つのは、少女ではなく――もっと格上の神の風祝。
そして、少女よりもずっと少年に近しい位置につけた――現人神であった。

66 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/23(火) 22:18:33 ID:???
一旦ここまで。
個人的に、一番東方サッカーでの互換キャラではなく(二次創作の東方サッカーでなく1つの東方とキャプ森のクロスとして)
上手く置換出来たのが早苗さんかなと思ってます。
以下がその要因。

・東風谷早苗森崎有三説
1.当初早苗さんは霊夢さんの二番煎じ、ルイージ説があった
 →森崎も翼に対して嫉妬や羨望や恨みやまぜこぜの感情を抱いてる。
2.森崎は常識に囚われない
 →早苗さんも常識に囚われない(後に改善)
3.森崎の最大のライバルは翼
 →早苗さんのライバルも多分霊夢
4.早苗さんは大事な所で決める(ヒロインレース大勝利、紅魔杯優勝)
 →森崎もサンパウロ戦では負けたが紅白戦で劇的な勝利を決めたり本編ラストもガッチリキャッチした。
5.森崎の両親も本編で一応ご登場
 →早苗さんの両親的存在な神奈子様諏訪子様もポイズンスレでは出てる。
6.森崎には恋人の陽子さんがいる。
 →早苗さんも恋人がいる。

Q.E.D.証明完了


今日は多分ここまでです。次は一旦幻想郷に帰ってから、早苗さんのご両親的存在に反町が挨拶に行くところからになると思います。
それでは。

67 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 22:31:22 ID:???
乙です
永遠亭は紺珠伝組(主にサグメ様とか純狐さんとか)+綿月姉妹が入ればまだワンチャンあるから(震え声)
そして芋様……分かっていても涙を禁じ得ない。

68 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 22:37:38 ID:???
乙でした

付き合うことになったとは言え、保護者への挨拶がまだだったな
早苗の常識戻すのに協力したから好感度はそれなりにあるはずだが
でも幻想郷に残らないと早苗と別れることになる可能性が高いのよね
信仰不足で二柱が現代にいられなくなったから幻想郷に来たわけだし
反町は今マジで人生の岐路に立っている状態なんだな……

69 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 22:46:48 ID:???
>>43
普通に考えると脚だろうが、アローシュートみたいに手で脚掴んでるのかも
老人が石の上で脚掴んで何もないところを蹴る絵面はシュールだが

70 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 22:47:01 ID:???
安定のリグルである

71 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 22:47:49 ID:???
うーん穣子の気持ちを考えると素直に祝福できねぇ
添い寝までした幽香さんにもなんて説明すれば良いんだ

72 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 22:58:58 ID:???
え、重婚すればいいじゃないか
だって常識にはとらわれてはいけないんだから!

73 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 23:19:45 ID:???
そもそも幻想郷って一夫一婦制なんだろうか
そこら辺すごい適当にやってそうなイメージ

74 :森崎名無しさん:2018/01/23(火) 23:27:06 ID:???
重婚したらパルスィ爆発しそう

75 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/24(水) 20:36:40 ID:???
>>67
乙ありです。すみませんその原作このスレで取り扱ってないんですよ……。
というのは置いておいて、実際このスレでは神霊廟までのキャラしか出ない予定です。
その中でも1分ですね……具体的には命蓮寺に関係する2人くらい。
なので残念ながら永遠亭は……。

>>68
乙ありです。
好感度は高いですが、それと娘との交際を認めるかどうかはまた別で……。

>>70
リグルだからしょうがない。

>>71-74
早苗「浮気は絶対許早苗」



短いですが出来た所まで投下します。

76 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/24(水) 20:38:09 ID:???
Act.3 東風谷早苗大勝利!希望の未来へレディ・ゴー!!

早苗の大告白から数日――幻想郷Jrユースへと選出されていた選手たち。
そして、各国へと派遣されていた選手たちは幻想郷へと帰還していた。
そんな中、当然ながらあのショッキング過ぎる告白は瞬く間に幻想郷中へと広まった。
当然である。多くの勢力からの代表が集結する、幻想郷Jrユース。
そこで起こった大事件が、噂にならない筈もない。

新聞屋が何度も取材に来ようとする中、何度も突っぱねていたのは守矢神社総本山。
祀られる八坂神奈子と洩矢諏訪子の二柱は、そもそも自分たちは何も聞いて無いと答えていた。
実際、彼女たちは何も聞かされていなかったのだ。

そう、聞かされてなかった。
彼女たちは自分が誰よりも信頼し、信頼されていると思っている早苗から、
よもやあの反町と両想いになっているとは何も聞いていないのである。

無論、早苗にもプライベートはある。
その身を神奈子と諏訪子の為に、現実世界を捨て去り幻想郷へと共についてきた早苗。
そんな彼女にも、自分の世界というものは必要だったし、彼女たちもそれを容認していた。

神奈子「しかしだな……まだ早くないか。 あの紅魔館のメイドだってあの年になって浮いた話の1つも無いんだぞ」

本殿――(とは名ばかりで、実際は彼女たちが住まう住居と化している)でそう呟いたのは、
東風谷早苗の保護者代わり、八坂神奈子である。
彼女は何やら先ほどからしきりにその辺りを行ったり来たり、うろうろと落ち着かない様子であった。

諏訪子「むしろ遅すぎるんじゃない? 彼氏の1人や2人、むしろ早苗の器量なら外の世界だっていなかったのがおかしい。
    幻想郷の世相基準で考えるなら、結婚してたっておかしくないんだし」

そんな神奈子の言葉にあっさりと返したのは、祀られるもう1柱――やはり保護者代わりの洩矢諏訪子である。
彼女はバリバリと、ちゃぶ台につきながら煎餅を頬張っていた。

77 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/24(水) 20:39:33 ID:???
神奈子「いや、いや! 幻想郷基準で考える事は無いだろう、早苗は外の世界出身なんだぞ。
    感性だって基本はそっちのままの筈だ。 やっぱり早すぎる」
諏訪子「……感性云々言ったらさぁ、常識に囚われなくなくなった時期あった時点で、
     やっぱそういう尺度に当てはめるべきじゃないと思うんだけど」
神奈子「うぐぅ……」

神奈子と諏訪子。
両者はほぼ立場的には対等と言えたが、口の上手さでは諏訪子の方に分があるらしい。
致し方なく、神奈子は口を閉ざし……諏訪子と同じちゃぶ台に腰掛けると、懐から煙管を取り出す。

諏訪子「あれま、久しぶりに見た。早苗に『臭いです』って言われてからやめてたのに」
神奈子「…………」

茶化すような諏訪子の言葉を無視しながら、神奈子は肺の中の煙を吐き出す。
思い出すのは、早苗とのこれまでの記憶だった。
諏訪子と神奈子を祀る風祝として外の世界で生まれ、しかし、その頃の神奈子たちは既に神としての力を大きく失っていた。
信仰が薄まり存在すら消え失せようとする中、
しっかりと神奈子達と意志疎通が出来たのは早苗の生まれ持った才能だったのだろう。
事実、早苗の前の代――更にその前を遡っても、意志疎通はおろか、姿を見えた者も少ない。

故に、神奈子たちは早苗を可愛がったし、早苗は神奈子たちを慕った。
元々、神奈子たちが幻想郷へとやってきたのは外の世界で失われた信仰を取り戻す為。
そのお手伝いをしたいと自ら申し出、外の世界を捨ててまでついてきてくれたのが早苗である。

78 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/24(水) 20:41:08 ID:???
神奈子「(そうだ、早苗は私たちの為に外の世界まで捨ててついてきてくれたんだよ。
     いわば私たちの子供――いや、それ以上の絆で結ばれていると言っても過言じゃない。
     大事に思うのは当然だろう)」

結果、神奈子たちは早苗を溺愛した。
信仰が薄れ、存在すらあやふやになった中でようやく自分たちを見つけてくれた希望。
そして、自分たちが新たな世界へ向かう際、両親や友人――大切なものを捨ててついてきてくれた少女。
溺愛しない方がおかしい、と神奈子は考える。

諏訪子「まぁ落ち着きなよ、早苗に相応しいかどうか見極める為にこれから会うんでしょ。気に入らなけりゃ追い払いなよ」
神奈子「あ、あぁ……ふぅ……」

早苗「ただいま戻りましたーっ!!」
神奈子「!!!」
諏訪子「はーいはいはい、おかえりー」

そして、非常に元気な早苗の声が本殿(ぶっちゃけ日本家屋の普通の茶の間)に木霊した。
瞬間、神奈子は体を一層硬直させ――煙管に溜まった灰を思わずポロリと落とし。
逆に諏訪子は軽やかなステップで早苗の声の方へと向かっていく。

79 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/24(水) 20:43:18 ID:???
それから数秒後。

諏訪子「やあやあいらっしゃい、こうしてサッカー以外で会うのはあんまり無かったね。
    会ったのは……試合や、試合観戦の時偶然にとかそれくらいだった気がするもんね」

やたらと愛想のいい諏訪子を先頭に。

早苗「いえ、でも……ここに来ていただいた事もあるんですよ。 紅魔杯が終わった後に、その……」

頬を染めながら、その諏訪子の後ろにつける早苗が姿を現し。

反町「は、はい。 挨拶が遅れてすみませんでした」

最後に――問題の男。
早苗と付き合っている、と聞いている男がひょっこり顔を出した。

反町「お、お久しぶりです神奈子さん。 Jrユース大会ではお世話になりました」
神奈子「……うむ、よいよい」

神奈子の姿を見るや否や、頭を下げる反町に威厳たっぷりに豊満な胸を張り返す神奈子。
その瞳は、反町の事を値踏みするかのように、不躾にも上から下まで見やっている。
――噂になる事数日。もはや隠すとかありえないレベルで広まった為、
早苗が反町との関係について説明する為に連れてくる――と告げていたのが、この日であった。

早苗「あっ! 神奈子様、また煙管を……!! それは臭いがつくからと、あれほど!!」
神奈子「あ、う、うん……ごめんよ。 と、とと」

なお、威厳たっぷりに決めた神奈子であったが、
目ざとく早苗に煙管を吸っていた事を注意されると慌ててポイした。

80 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/24(水) 20:45:09 ID:???
一旦ここまで。

81 :森崎名無しさん:2018/01/24(水) 22:46:02 ID:???
完全におとんとおかんですなぁ
ご両親にご挨拶とはなんとも気の早いことで
そしてさりげなくディスられる咲夜さん可哀そう

82 :森崎名無しさん:2018/01/25(木) 07:56:23 ID:???
昔は壊れたルイージとか言われたのに……
人って変われるもんだねぇ

83 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/25(木) 22:34:08 ID:???
本日は更新無しです。明日には投下出来ると思います。

>>81
割とこのスレでの微妙に可哀想な咲夜さんは書いてて好きだったりします。
>>82
常識が戻らず、オーバーラップを繰り返したり寝釈迦をしたりする早苗さんも書いてみたかった……。

84 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:03:05 ID:???
神奈子「ん、んん……」

いまいち恰好がつかない形となってしまったものの、そこはそれ。
一つ咳払いをしてから、神奈子は彼の人――反町に視線をやる。
頬をかきながら困ったように反町はその視線を受けつつ……しかし、自身の視線を彷徨わせる事はない。
彼自身としても、この場は一世一代の大舞台。
割と小心者ながら、精一杯情けない姿は見せないように――と頑張っているのだろう。

神奈子「(そういえばそんなのこの子の人となりは知らないんだよねぇ……。
     見た感じは、真面目そうではあるんだが……早苗の常識を取り戻してくれた訳だし……)」
諏訪子「ほらほら早苗も反町くんも座って座って」
反町「は、はい! あ……よければこちら、皆さんで呑んでください」
神奈子「むっ!? それは!?」
諏訪子「あらら、気を遣わなくてもいいのに。 ありがとうね」

値踏みをする神奈子とは対照的に諏訪子が反町に腰掛けるよう勧め、
ようやく反町も立ったままの状態から人心地つく。
その際、手から下げていた荷物を差し出した。

呑んでください――という言葉通り、それは『日本酒』である。
この日、早苗と共に守矢神社へと来訪するにあたり、反町が事前に準備。
決して潤っているとは言えない懐事情ながらも、事前に人里の酒商店に行き、
そこの店員さんたちにお勧めを見繕ってもらった手土産だ。

……こういった場合に、酒を手土産とするのはどうかと反町本人も迷いはしたが、
早苗との相談の結果、お菓子などよりはこちらの方が喜ぶと聞いての判断である。

85 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:04:06 ID:???
神奈子「(あれは……銘酒『ふぁいなるふらっしゅ』!!
     『びっぐばんあたっく』や『ぎゃりっくほう』はまだ市場に出回っているが……手に入れるのは相当困難な筈!)」

事実、神奈子は声には出さないものの内心は大層喜んでいた。
――ちなみに、この酒を勧めてくれた店員さんは、口では文句を言いながらも、
手土産にするのならばこれくらいでなければならないだろうと格安で譲ってくれたという。

思わず今晩の晩酌が楽しみになる神奈子だが、それは表情には出さず。
腕を組んだまま対面に座る反町を見やる。

神奈子「(……少し近すぎるんじゃないか?)」

彼の隣には早苗が腰かけたのだが、些か距離が近い――ように思える。
実際は別にぴたりとくっついている訳でもなく、また、反町にとっては完全アウェーという状況の中、
早苗が彼の隣につけるのは何ら不思議ではないのだが……当然神奈子はそんな思考など持っていない。

その後、諏訪子がお茶を淹れ、4人に差し出し、それを一口啜った所で……。

反町「改めまして……オータムスカイズのキャプテンをやっている、反町一樹です。
   その……東風谷早苗さんと」
早苗「…………」

すすっ、と反町の方に体を寄せる早苗。当然ムッとするが、黙っている神奈子。
諏訪子はにやにやしていた。

86 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:05:31 ID:???
反町「お付き合いをさせていただいてます」
神奈子「………………」

知っていたことではある、が――やはりショックである。
隣で反町自身の口からそういった言葉が出た事で照れている早苗も含めて。
無論、神奈子とて反町の事が嫌いな訳ではない。
先に言ったように、反町のお蔭で早苗の常識は戻ったのだから……むしろ感謝をしているくらいである。

ただ、それとこれとは話が別なのだ。
保護者の心は色々と複雑である。

神奈子「うむ……うむ。 そうか」

よって、神奈子はそう返すだけが精いっぱいであった。

諏訪子「そうかいそうかい、いやぁ、こんなかっこいい子が早苗の彼氏なんて勿体ないねぇ」
反町「い、いえそんな! こちらこそ早苗さんのような人が俺を好きでいてくれるなんてまだ信じられないくらいで」
神奈子「(確かに顔は悪くないけど……特別よくもないだろう! 点数つけるなら6点が関の山だ!)」

やたらと親しみを込めて喜び言う諏訪子の言葉に内心反論しながら、それでも神奈子はぐっと堪えた。
奥歯をかみしめながら、腕を組んだまま反町に問いかける。

神奈子「……いつからだい?」
反町「その……紅魔杯が終わった後からです。 正式にお付き合いを始めたのは、幻想郷に戻ってきてからですが」
神奈子「1ヵ月以上前じゃないか。 私たちの所に挨拶に来るのが遅かったんじゃないか?」

どちらかと言えば、1ヵ月程が経過した時点で両親(的な存在)に挨拶に来る時点で早いくらいである。
ただ、幻想郷基準で言えば、やはり古式ゆかしい日本の風習が残っている。
好きあって付き合うだけでもお互いの家やらなにやらとの関係がややこしいくらい絡み合う為、
神奈子としてはもっと早く挨拶に来るのが礼儀ではないのかと指摘をした。
というか単純にイチャモンをつけたいだけだった。

87 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:06:49 ID:???
諏訪子「何言ってんだい、紅魔杯が終わった後って言ったらもうすぐにJrユース大会が始まる頃じゃないか。
    私たちだって準備があったし、反町くんだってそうだよ。
    そんな時間取れなかったんじゃないの?」
早苗「それにその……Jrユース大会では同じチームで活動する事が決まっていましたから。
   公私混同を避ける為にも、公表をするのはやめましょうとお互い話し合って決めたんです。
   ご報告が遅れて申し訳ありません」
諏訪子「いやいや謝る事じゃないよ、年頃の男女が好き合えばすぐにでもイチャイチャしたいだろうに。
    それをぐっと堪えるなんて中々出来る事じゃない。 真面目じゃないか、早苗も反町くんも。 ねぇ神奈子」
神奈子「……ぐむぅ」

とはいえ、イチャモンはただのイチャモンである。
あっさりと正論で返されれば、神奈子としても口を噤むしかない。

神奈子「(確かに真面目そう……ではある。 いや、実際そうなんだろうけど……)」

88 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:08:18 ID:???
諏訪子「ところで反町くんはさ、今後どうするかとかは決めているの?」
反町「今後、ですか?」
神奈子「そ、そうだよ。 うむ……君は八雲紫に拉致同前にこの幻想郷にやってきて、
    帰る方法が無い故にサッカーに興じていたようだけど、既にJrユース大会を通じて外の世界への道も開けた」
反町「………………」
神奈子「外の世界に戻るのか、幻想郷に留まるのか。 そのくらいは考えたのか?」

諏訪子の言葉に追従するように神奈子が畳みかけると、反町は言葉に詰まったように呻きながら視線を下にする。
その様子を見て、神奈子は何も考えていないようだなと感じ、更に続けようとするが――。

諏訪子「まあまだJrユース大会が終わって少ししか日が経ってないもんね。
    自分の人生を決める事なんだから、ゆっくり考えて納得出来る方を選んだ方がいいよ」
神奈子「……うぅん」

先手を取られて二の句は次げない。
実際、まだ反町は齢15の少年である。
人生の岐路に立たされて、どちらを選ぶか即断出来る程達観した価値観を持っている訳でもなければ決断力に優れている訳でもない。
悩み、迷うのも自明の理と言えたし、むしろ即決していた方が怪しいだろう。

89 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:09:32 ID:???
諏訪子「今日は反町くんも晩御飯食べていけるんだよね?」
反町「は、はい。 チームには断りを入れてますので、団欒のお邪魔にならなければ是非……」
諏訪子「いやいや、いつも同じ面子での食事だからね。 賑やかなのはいい事だよ。
    それじゃあ用意しないとね、早苗も手伝ってくれるかい?」
早苗「はい……あ、でも……」

ここで夕飯を作りに行っては、茶の間に残るのは神奈子と反町だけである。
早苗の目から見ても、神奈子がいまいち反町に気を許していないというのはわかっていた。
果たして反町を1人残してしまっていいのだろうか、と立ち上がろうとしたまま中腰で静止してしまうのだが……。

反町「(大丈夫です、何を言われても大丈夫ですから)」
早苗「(反町くん……わかりました。 それでは、反町くんの為にめいっぱい美味しいご飯を作ってきますね!)」

視線を交わすと、反町は力強くうなずき――早苗はそんな反町を見てから、ようやくその腰を上げ台所へと向かった。

諏訪子「(若いっていいなぁ……ピュアッピュアだね! 私もあんな頃があったねぇ)」
神奈子「(あんなに見つめ合って……いやらしい!!)」

なお、保護者2人はそれぞれ相反する感想を抱いていたという。

90 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:10:52 ID:???
神奈子「………………」
反町「………………」

そして、である。
残された2人は無言のまま茶の間にいた。
元々、決して口数が多い訳ではない反町と神奈子。
おまけに今は彼女のご実家で挨拶という世の男性緊張してしまう場面ランキングトップ5には入ろうかという状況の反町に、
未だに反町に対して何とも言えない感情を隠せない神奈子だ。
言い知れぬ緊張感が漂い、反町にとって居心地の悪い沈黙が場を支配するのだが……。

神奈子「……早苗はね」
反町「! は、はい」
神奈子「早苗はね、いい子なんだよ」

不意に、ぽつりと神奈子がそう切り出した。

神奈子「小さい頃から、私や諏訪子の姿が見えて……それはそれは慕ってくれた。
    信仰が無くなり、神力が落ち、この幻想郷へと渡る時にも……早苗はついてきてくれたんだ」

先にも記したように、神奈子たちが幻想郷へとやってきたのは外の世界で失った信仰を再び得る為。
この妖怪の山を拠点として、人妖問わず、信仰を集めようとしている。
その活動が叶ってか、2柱は外の世界では考えられない程の信仰を幻想郷で集める事が出来た。

そして、その活動の中心には早苗がいる。

神奈子「妖怪の山の連中とも上手く付き合っているし、人里に出ては信仰を得られないか勧誘もしている。
    私たちの為に、本当によく頑張ってくれてるんだ……」
反町「…………」
神奈子「私はね、そんな早苗の事を大切に思ってる」

91 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:12:09 ID:???
それは偽らざる神奈子の本心だった。
反町がそれなりに真面目だという事も、ここまでの短い間の会話でよくわかる。
だが、果たしてそんな反町が――早苗を幸せにしてくれるのか。
真面目であるというのは美徳ではある、しかし、それが万人に幸せを与える存在かと言えば否である。

神奈子「早苗は君の事を好いていると思う。 あんなに嬉しそうで、照れている早苗を私は見た事が無い。
    悔しいが、それは認める。
    だけどね、君は――君は、もしかしたら外の世界に帰るかもしれないのだろう?」
反町「それは……」

反町自身、その答えは出せていない。
一生を決める事である。答えがそう簡単に出せる筈がない。

神奈子「そうなれば遠距離恋愛という話では済まない。 ……もしも君が、外の世界に帰るつもりなのだとしたら、
    その時は……綺麗に早苗を振ってやってほしい。 そうでないなら、そちらの方が残酷だ」

生涯を幻想郷で過ごすと決めた少女。
反町が外の世界へと帰るのならば、当然ながら2人は離れ離れとなる。
思い合いながらも触れ合う事が出来ない、それは神奈子の言う通り残酷な事だった。

反町「………………」
神奈子「勘違いしないで欲しいが、君を責めている訳じゃない。 諏訪子も言ったけど、迷ってもいいと私は思う。
    ただ、半端なやさしさは人を傷つけるだけだとわかって欲しいだけだ。
    そして……」

神奈子「もしも幻想郷に残ってくれる、という選択肢を取るなら。
    ……よければ我々のチームに移籍をしてくれないか、と私は考えている」
反町「……え?」

92 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:13:23 ID:???
その神奈子の言葉は、正に青天の霹靂であった。
今まで反町の考えにあったのは、即ち。
外の世界に戻り、どこの高校に通うかはともかくとして――外の世界のいち学生、いちサッカー選手として生活をしていくか。
はたまた、幻想郷に残り、オータムスカイズのキャプテンとしてこれからもチームに為に戦っていくか。
その2択であった。

ただ、神奈子の提案した1つの案を聞いて気づく。

反町「(俺が……守矢フルーツズに移籍する?)」

3つ目の選択肢について。

神奈子「さっきも言ったように、早苗は私たちの為に活動をしてくれている。
    サッカーをしているのも、言ってみれば、信仰を集める為だ。 幻想郷じゃサッカーがブームだからね。
    君がうちに加入をしてくれるなら、早苗だって心強いだろう。
    オータムスカイズのままなら、当然、敵同士という事になる。
    特に君はFW、早苗はGKだ。 直接相対する事になるんだ。 ……そして、それは直接、早苗の活動を邪魔する事にも繋がる」
反町「………………」

それは考えた事が無かった。
無論、自分のシュートを受けて再起不能になりそうになった(というか実際なった)人物がいる事も、
反町はある程度把握はしている。
地霊アンダーグラウンドの古明地さとり、全日本の若林源三。
どちらも天才GKと謳われながらも反町に蹂躙され、精神崩壊まで行った。

それ程までに自分に影響力があるとは彼自身は思っていなかったが、ともかく、事実として存在する。
今後、自分がオータムスカイズで活動をするならば――当然、守矢フルーツズと戦う事もあるだろう。
そして、その時は当然……反町はストライカーとして、早苗の守るゴール目掛けてシュートをぶち込むに違いない。

その時、早苗はどうなるのか。早苗が仕える2柱はどうなるのか。

反町「(でも……)」

93 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:15:46 ID:???
それがわかった上で尚、反町は考える。
早苗の事が大切である事は間違いない、思いがようやく通じ合えた人だ。大切でない訳がない。
ただ、それと同じく、反町にとってはオータムスカイズも大切であった。

自分が全日本からも、東邦学園からも離れ、生まれ変わる切っ掛けとなれたチーム。
秋穣子、秋静葉の姉妹と共に、チームメイトを集める所から始まった。
最初は無名。木端妖怪と名前も無い妖精、そして反町のような箸にも棒にもかからない選手しかいなかったチーム。
そこから皆で練習をし、切磋琢磨し、仲間をそろえ、時にはぶつかり合い、更に時には別れもありながら……。
オータムスカイズはようやく、名門と言えるだけのチームへと変貌をした。

反町「(それに、信仰っていうなら……穣子や静葉さんだって)」

そもそも、信仰を集める為にサッカーをしているというのは、神奈子たちだけではない。穣子たちも同様である。
いつか、何故サッカーをするのかと聞いた時、そう答えてくれたのは誰だったか。
ともかく、早苗の活動を邪魔しない為に守矢へ移籍するというのなら――それは逆に、穣子たちを苦しめる事と同じになる。

神奈子「……なんなら、吸収合併という形でもいい。 オータムスカイズの選手たちが入ってくれるなら、
    こちらとしてもありがたい事だからね。 大所帯だろうが、面倒は見させて貰うよ」
反町「(その口ぶりだと……母体は守矢フルーツズになる、って感じだな。 いや、仕方ないのか……。
    元々のチームとしての"格"はあちらの方が上なんだし、それに紅魔杯で俺達は負けたんだ。
    それに、にとりや穣子、静葉さんにとっては神奈子さん達が上司に当たるらしいし……)」

神奈子の妥協にも思える提案も、反町にとっては苦いものだった。
チームメイト全員と移籍が出来るとしても、それはオータムスカイズの名が消えるという事である。
これまで反町達が築き上げてきたチームそのものが、消えてしまうのだ。

反町「………………」
神奈子「まあ、考えておいてくれ。 ああ、そうだ。 ちなみにね」

パンパンッ!

反町「?」

94 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:17:09 ID:???
ガラガラガラガラッ!!!!

西尾?「ワシじゃあ!!」
反町「ゲ、ゲェーッ!? 西尾?……じゃなかった、カルツ!?」

意味ありげに呟いた神奈子が手を鳴らすと、ガラガラッ!と戸を開けて現れたのは――。
なんと、西ドイツJrユース所属の仕事師――ヘルマン=カルツ。否……。

西尾?「カルツじゃないわい! ワシは西尾浩司?じゃあ!!」
反町「えぇーっ!?」

そう、そこにいたのはかつて守矢フルーツズに在籍。
その後、フランス国際Jrユース開催にあたって本名と素性を包み隠さず打ち明け、
西ドイツへと帰った筈の男……カルツ改め、西尾浩司?がいた。

反町「ど、どうして西尾?じゃなくてカルツが……」
西尾?「だからワシは西尾?じゃ!! まったく、どこをどう見ればこのゲルマ……ゴホン、静岡魂溢れるワシが外国人に見えるんかのう」
反町「(今、ゲルマン魂って言いそうになった! 絶対ゲルマン魂って言いそうになった!!)」

それにしても一体これはどうしたことだろう、と反町は混乱する。
そもそも、この西尾浩司?は早苗に助っ人として呼ばれた際、
異母兄弟であるという西尾浩司という男の偽名を名乗っていた――と説明をした。
その後、静岡愛はあるが西ドイツに帰らない訳にはいかん、何せワシにはゲルマン魂があるから……と、
謎の愛国心を見せながら帰国をし、Jrユース大会で戦った事は記憶に新しい。

反町「どうしてここにいるんだ? 西ドイツに残ったんじゃないのか? えっと……西尾?」
西尾?「西ドイツに残るじゃと!? 何を言うちゅうがじゃ! ワシは生まれも育ちも静岡生まれ静岡育ちじゃぞ!!」
神奈子「……話が進まないから私から話そう。 西尾?くんについてなんだがね……」

95 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:19:12 ID:???
曰く、こうである。
元々、西尾?もとい――カルツは確かにゲルマン民族であり、ゲルマン魂溢れたゲルマンっ子だ。
しかしながら、この守矢フルーツズにも愛着があり、そう容易くは離れがたいと考えていたという。
どうするか迷っていた訳ではある西尾?……改め、カルツ。
ハンブルグに残るか、それとも守矢フルーツズに残るか。

神奈子「ただ、ハンブルグに残ると何か嫌な事が起こりそうな予感がして……うちに残ってくれたみたいなんだよ」
反町「そ、そうなんですか……」

具体的には事無かれ主義のパサーやら人殺しシュート(反町の事じゃない)を打つMFが加入をしそうで、
心労が増えそうだという事だった。
やたら具体的だと思いながらも、一応は納得を示す反町。

反町「でも……良かったのか? えっと……西尾?」
西尾?「何がじゃ?」
反町「それは、外の世界を捨てるって事じゃないのか? 両親や、友達……寂しくないのか?」
西尾?「無論、寂しさはある。 じゃがの、郷土愛は死なずじゃ」

反町の質問に、西尾?はドン、と胸を叩きながら言う。

西尾?「神奈子さんはの、いざユース大会などが開かれる事があれば、ワシに国に戻ってもいいちゅうてくれとる。
    ……言ってみれば、これはワシにとってはサッカー留学みたいなもんじゃ」
反町「サッカー留学……」
神奈子「勿論、反町くんにしてもそうだ。 日本で代表としてサッカーをしたいというなら、私が八雲紫にも話をつける」
反町「(全日本で……? …………)」

その提案は、あまり反町にとっては魅力的とは思えないものではあった。
元々、反町は西尾?のように郷土愛に富んでいる訳ではない。
日の丸をつけて闘うという事にある程度の憧れはあれど、そこまで熱心ではなかった。
むしろ反町が気になったのは、サッカー留学という言葉である。

反町「(海外サッカーでは……よく選手が移籍をして、そのチーム、その土地のいい所を吸収するって聞くもんな)」

96 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:20:55 ID:???
西尾?「守矢はいいチームじゃぞ。 なんといっても、アットホームじゃき」
反町「………………」

それを言うなら、オータムスカイズもそうだ、と反町は返したかった。
……妖精トリオとチルノ。風見幽香と静葉らといった問題点は抱えてはいるが。
それでも、皆が仲良くやっている……と、反町は思う。

神奈子「カル……じゃなかった、西尾?くんもうちにはいてくれる。
    反町くんも、同じ外来人として、やりやすい環境ではあると思う。
    ……すぐに答えは出さなくていい。 ただ、考えてみてくれないか?」
反町「………………」

元の世界に戻る。
元のチームに戻る。
それに代わる第三の選択肢――新たな環境に身を置く。

2つの選択肢で迷っていた少年は、更に新たな選択肢を提示され――そして、迷っていた。
迷う程に、3つ目の選択肢は彼にとって魅力的な提案だったという。

………

ちなみに。

反町「あの……ところでなんで、あいつまた西尾?なんて名乗ってるんです?」
神奈子「ああ……なんでも、幻想郷の原風景を見ていたら、やはり和名を名乗るのが礼儀じゃろう……らしいよ。
    本人曰く、『ワシはゲルマン育ちの静岡県人じゃ』らしいから」
西尾?「うーむ、やはりおでんは黒はんぺんに限るわい! それにしても美味いのう!
    料理上手なゲルマ……大和撫子の早苗さんとよい仲になってるとは、反町も憎い奴じゃわい!!」
早苗「やだそんな……あ、西尾?くん、おかわりいりませんか? まだまだありますよ黒はんぺん! だし粉も!!」
諏訪子「(舞い上がってるなぁ、早苗……西尾?くんがゲルマンって言いそうになったのに突っ込み入れてない)」

夕食はなんとも賑やかに滞りなくとられたもよう。

97 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/26(金) 22:22:24 ID:???
一旦ここまで。
次回は反町の決断を書けたらと思います。

98 :森崎名無しさん:2018/01/27(土) 00:27:40 ID:???
カル…西尾?くん馴染み過ぎ
シュナイダーも居なくなったし若林含め他のメンツよりはこっちのがやり易いかもしれませんね
反町が日本代表に復帰するのは考えて無かったなー。
復帰したらどうなるかもちょっとで良いから見てみたいです。

99 :森崎名無しさん:2018/01/27(土) 00:55:17 ID:???
そういえば今静岡県でハリネズミが野生化しちゃってちょっとした問題になってるんだよな
西尾?くんと何か因果関係が……?

100 :森崎名無しさん:2018/01/27(土) 01:27:16 ID:???
サイヤ人は商売種族だっ!!!! なめるなよーーーーーーーーっ!!!!!

101 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/27(土) 23:55:04 ID:???
>>98
シュナイダーがハンブルグに残っていれば帰ったかもしれませんが、
原作程仲良くない若林しかいないなら(更にその後問題児が来るなら)守矢かなと思います。
このスレですと、三杉も中学時点で心臓病が完治している為、ユース編ではそれなりにパワーアップすると思うので、
それに加えて反町までとなるとチートクラスに強くなりそうですね……。
>>99
野生の西尾?くんが大量発生……?(難聴)
>>100
???「ホーッホッホ、見てごらんなさい、綺麗な閉店セールですよ!」


本日も更新は無しです。
多分大体2日に1回くらいのペースになっていくかなと思います。
のんびりとお待ちいただければ幸いです。

102 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:08:45 ID:???
その日の事である。
守矢神社での夕食を終え、早苗に送ってもらい帰路についた反町。
帰宅した頃は既にチームメイトの全員が(幽香だけは、Jrユース大会が終わってからも帰宅をいていなかったが)寝静まる中、
反町は自室でこれからの身の振り方について改めて考え直していた。

反町「(俺には3つの道がある。 1つは、外の世界に戻る事……)」

今更東邦学園に戻るというつもりは無い。
以前にも考えた事であるが、やはり日向が牛耳る学園に残るという気持ちは彼には微塵もなく。
しかし、外の世界には友人や両親も確かにいた。
どの高校に進学をするかはともかくとして、安寧に暮らすならばそれが1番最良の選択肢だっただろう。

反町「(2つ目は……この幻想郷に残って、オータムスカイズのキャプテンとしてこれからも活動を続けていく事)」

自分がこの幻想郷へと呼ばれたのは、正に自身の人生において1番大きな転機であった。
これからどんな分かれ道が現れようと、それは間違いのないものである。
きっとあのまま全日本Jrユースにいたままならば、自分は恐らく、十把一絡げのその他大勢役。
なんでもこなせるFWと言われながらその実ただの器用貧乏。
見る所のないまま、ユース世代で消えて行ってしまっていたと言っても過言ではない。

そんな自分が変われたのは、やはり幻想郷へとやってきたお蔭である。
オータムスカイズを設立し、このチームを、『和を大切にするチーム』として運営しようとし、
仲間たちと切磋琢磨をしてここまで大きくした。
結果、反町も……そしてチームも、名門と呼ばれる程にまで成長を遂げる事が出来た。

迷いながら、それでも、これまでの反町ならば2つ目の選択肢に比重がやや傾いていた。
ただ、今日、知ってしまった……3つ目の選択肢がある事に。

反町「(そして……3つ目。 幻想郷に残り……守矢フルーツズに移籍をする……)」

………

103 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:09:54 ID:???
コンコンッ!

反町「え? は、はい!(誰だ?もうみんな寝てる時間だぞ)」

考え事をする室内に、やや大きめのノックの音が響く。
その音量に少しばかり驚きながらも、反町は返事をしてドアを開け……。

穣子「こんばんわ。 と、ついでにおかえりなさいね」
反町「穣子?」

そこにいたのは、秋穣子。
こんな時間にどうしたのだろうか、と首を傾げる反町に対し、穣子は苦笑しながら中に入れるかどうか問う。
立ち話というのもなんだし、と……反町は了承をし穣子を部屋の中に招き入れ……。

穣子「にしても……相変わらず殺風景ねぇ、あんたの部屋」
反町「うるさいなぁ……」

穣子はその部屋の中を見て、一つそう呟いた。
確かに反町自身、殺風景ではあると思う。
何せ部屋の中にあるのは既にいつでも寝る準備が出来るようにとしていたお布団。
それに簡易的な机と、時計くらいなものだ。
生活する上で必要最低限のものしか置いていない、と言えるだろう。
趣味や道楽に使っているような――人間味のある内装では、少なくとも無かった。

何せこれまで、この幻想郷に来て、ずっと反町は突っ走っていたのだ。
弱小チームを中堅に、強豪に――そして、名門へと育て上げるまで。
練習をし、練習をし、また練習をして。
弱い自分たちが強くなる為には練習をするしかないと、ただそう信じて時間のほぼ全てを練習へと注ぎ込んだ。

結果、反町がそれらしい装飾なりを買いそろえる時間は無かったと言える。
アルバイトなどを探し、ポケモンなどを売り払おうと考えた事もあったが、結局それも中途半端であった。

104 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:10:55 ID:???
穣子「ま、いいわ。 とりあえず座りなさいよ」
反町「俺の部屋だぞ? ……まあ座るけど」
穣子「うん、よろしい」

穣子に促されるまま、着席をする反町。
穣子もまた、その対面に座り……再び、口を開く。

穣子「で? 八坂様達に会ってきたのよね? ちゃんとご挨拶出来た? 粗相はしなかったでしょうね?」
反町「小学生じゃないんだぞ、そんな言い方ないだろ……まあ、緊張はしたけどちゃんと話は出来たと思う」
穣子「そう? なら、いいけど」

相も変わらず反町を子ども扱いしているとしか思えない言葉に辟易しながら、
ともかく今日あった事を反町は説明した。
早苗がわざわざ迎えに来てくれた事、諏訪子がにまにましながらも愛想よく反町を歓迎してくれた事、
カルツ――もとい、西尾?が謎の郷土愛を見せながら、守矢フルーツズに残っていた事。

そして――。

反町「神奈子さんから言われた」

最初は不機嫌そうで、反町に対してやけに敵意を剥き出しにしていた神奈子が――。
しかし、やがて、早苗についてのこれまでを語り……これからの事について語った事を。即ち……。

反町「……守矢フルーツズに、移籍をしないかって」
穣子「……そう」

105 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:12:40 ID:???
正直な所を言って、これを穣子に対して話すべきかどうかも、反町は迷った。
オータムスカイズのキャプテンである反町は、それ相応の責任というものも持ち合わせている。
そんな反町が他所からの引き抜きがあり、それに対して迷いを見せているとなれば……。
神奈子と反町、双方にとっても、あまりいい噂は立たないだろう。

だが、それでも……反町は穣子には話しておきたかった。
それが穣子がこんな事を誰にも話さないと信じての事だったのか。
はたまた、迷いを誰かに打ち明けて楽になりたいという気持ちがあったのか。
それはわからないが――いずれにせよ、反町が穣子の事を信頼しての吐露であったのは違いない。

そんな告白に対して、穣子は少しだけ驚いた様子を見せながら……。

穣子「で? あんたはどうするの?」
反町「…………こんな事言ったらどうかと思われるかもしれないけど、迷ってる」

外の世界に帰るか。オータムスカイズに残るか。守矢フルーツズに移籍をするか。
3つの選択肢は、提示された時から、ずっと反町の脳裏に焼き付いて離れなかった。
これがもし、自分の中に小さな自分たちがいて、それらが多数決を取り決定するという方式なら……反町はここまで迷っていなかっただろう。
しかし、当然ながら反町の中にはそんな便利な機能などついていない。
故に迷う。

106 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:14:28 ID:???
反町「どれもこれも……選べないんだ。 どれが正しいのかもわからない。
   神奈子さんに話を聞いた時は、確かにそれも魅力的だなって思った。
   でも、こうして穣子の顔を見たら……この家に帰ってきたら、やっぱりオータムスカイズにいたい。
   ……両親の顔を見たら、多分外の世界に戻りたいと思うんだろうな」

優柔不断なんだ、と、自嘲気味に言う反町に対して……。

穣子「空中☆お芋チョップ!」

ぺちっ

反町「いてっ!」

穣子はその必殺技をぶちかました。

107 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:16:20 ID:???
ぺちん、といい音を立てて反町の額に突き刺さる穣子の手刀。
いや、手刀でぺちんなんて音は立たないだろと思いながらも反町は首を傾げながら額を摩り……穣子を見やる。

穣子「男ならとっとと決めなさい! 情けない!!」
反町「うっ……しょ、しょうがないだろ。 一生を決める事なんだから!!」

そう、一生を決める事だ。
厳密にいえばそれは外の世界に帰るか否かの選択が主ではあるのだが、
仮に幻想郷に残るとしてもオータムスカイズに残るか守矢フルーツズに移籍をするかではやはり大きな違いがある。
だからこそここまで反町は悩みに悩んでいたのだが、穣子はそんな言葉を鼻で笑い飛ばした。

穣子「一生を決める事だからって、うじうじ考えてるだけじゃ埒あかないでしょ!
   大体がさ……一生を決める事って言っても、あんたが考えてるのずっとずっと、すぐそこの事ばっかじゃない」
反町「はぁ? どこがだよ!?」
穣子「外の世界に帰ったら両親や友人がいる。 ええ、いるでしょうね。 いつまで?
   外の世界に戻ったら、ずっとその人たちと生活するの?」
反町「それは……いや、そういう話じゃないだろ!?」
穣子「そういう話よ、これは」

些か乱暴ではある、あるが――穣子の言葉にも、一理くらいはある。
今の反町は、あくまで立場としては中学生。
当然ながら親元で過ごし、そして友人らと仲良く遊ぶというのが普通だ。
だが、反町も大人になれば親元は離れる。進路が違えば友人と会う機会も少なくなる。

穣子「要は早いか遅いかの話でしょ? 違う?」
反町「いや……」
穣子「幻想郷に残るにしたってそうよ。 オータムスカイズを離れたくない、
   って言ったって、このチーム出来てまだ半年すら経ってないくらいよ?」
反町「………………」
穣子「私だって愛着はある。 でも、それに引きずられてちゃ駄目でしょ」

108 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:17:39 ID:???
穣子「……もっと先の事考えなさいよ」
反町「先の事って……なんだよ?」
穣子「将来、どうなりたいとか。 どうしたいとか、あるんじゃない?」
反町「………………」

将来、と言われても、反町には当然明確なビジョンというものは無かった。
反町一樹15歳、将来を考えてもおかしくない年齢ではあるが、そんなこと考えずアッパラパーに遊び呆けてるのが大半の年代である。
しかし、ことここに至って、反町は考える。

反町「(Jrユース大会の時は……)」

いつだったか、偶然観客席で西ドイツのダブルストライカーと相対した事があった。
即ち、西ドイツの皇帝――カール=ハインツ=シュナイダー。
そして、紅魔館の吸血鬼――レミリア=スカーレット。
彼女たちを前にして、あの大会でNo.1のストライカーとなると宣言をした反町。

実際、反町はその証明として西ドイツに快勝。
それどころか得点王と大会MVPのW受賞までし、名実ともに大会No.1ストライカーとなったのは記憶に新しい。

反町「(シュナイダーやレミリアさん達だけじゃない……)」

ウルグアイのラモン=ビクトリーノことブラックファルコンと、星熊勇儀。
イタリアのフランドール=スカーレット。
フランスのルイ=ナポレオン。
魔界の魅魔と……幽香。
そして、全日本の日向小次郎と比那名居天子。

いずれとも戦い……しかし、ストライカーとして勝利をしてきた。
だが、まだ足りない。

109 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:18:57 ID:???
反町「(フランス国際Jrユース大会では……確かに、俺は得点王が取れた。
    だけど……あの大会には、ブラジルをはじめとして、他の強豪国と呼ばれるチームも参加はしていなかった。
    それに……俺は、森崎から一度もゴールを奪えていない……)」

祝勝会の際、輝夜に対して吐露した心情――森崎有三からゴールを奪えなかった事への、悔しさ。
頂点を掴んだ、掴んだが――それでも、まだ目指すべき場所がある。辿り着きたい境地がある。

反町「俺は……俺は、世界一のストライカーになりたい」
穣子「………………」
反町「誰にも文句を言わせないくらい、お前が一番だって言われるくらいの決定力を手に入れて。
   ……そして、どんなキーパーが相手でも負ける事が無い。
   世界一のストライカーに、俺はなりたい」

この幻想郷へとやってきたのは、反町からしてみれば偶然であった。
チームを作ったのも、成行きだった。
劇的な成長を遂げたのは、ただ勝ちたいが故だった。

成長をして、強くなり――その上で、自分が何をしたいのか……何になりたいのか。

反町一樹はこの時、初めて考え、結論を出した。
先ほどまで迷っていた三択とは違い、スッパリと、綺麗に。
それを聞いて、穣子は少しだけ寂しそうに笑みを浮かべ……。

穣子「……なら、どうするのが近道か。 わかるんじゃない?」
反町「………………」

言われ、反町は考えた。

110 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:20:20 ID:???
まず、外の世界へと戻るというもの――強くなる、という一点を考えれば……まずその選択肢は消えた。
『秀才』である反町にはわかっていた。
確かに前回のJrユース大会で、全日本は準優勝という、アジアの島国にしても優秀な成績を収めたと言える。
だが、そもそも世界と日本とのサッカーのレベル差というものは、大きく開いている。
Jrユースレベルならともかく、この先――ユースレベルとなってくるとどうなるのか。
予想をするのは、決して難しい事ではなかった。

ならば取るべき道は、幻想郷へ残るというもの。
オータムスカイズに残るか、守矢フルーツズに移籍をするか――二択に絞られる。

反町「(強くなりたいなら……強くなる、という観点だけを見るなら……)」

練習設備は、守矢フルーツズの方が整っていた。
オータムスカイズが練習で使用をしているのは、人里近くのコート。
決して設備が整っている訳ではなく、そして移動をするのも多少不便ではある。

逆に守矢フルーツズは、専用の練習グラウンドを神社のすぐ近くに設置していた。
乾と坤を創造するらしい二柱が主に手作業と河童たちの手伝いをもとに作ったというそれは、
地面が土の人里近くのコートと違い芝が生え、電気が通っているらしく夜間に練習出来るようライトもある。
おまけに神社からは近い、と文句のつけようがなかった。

反町「(それに……大妖精と早苗さん……)」

そして、反町が主に練習相手としたいのはGK――オータムスカイズならば大妖精、守矢フルーツズなら早苗となる。
どちらも幻想郷を代表するレベルで高い技術を持ったキーパー同士であったが……。

反町「(大妖精……俺のシュート練習にあまり付き合ってくれないんだよな)」

反町も薄々感づいてはいたが、大妖精は反町の事を――。
というよりは、反町のシュートを畏怖している。

111 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:21:21 ID:???
元々気弱な性格である大妖精。
反町が何人もの守備陣を吹き飛ばし、派手にゴールを決める所を見て最初は頼もしく見ていたものの、
しかし、やがてそれは自分の身に降りかかったらどうしようという恐怖心と成り下がっていた。
当然ながら、そんなシュートを食らう練習を、彼女が付き合ってくれる道理はない。

逆に早苗ならどうだろう、と反町は思う。
彼女も基本的には好戦的なタイプではないが――だからといって、臆病ではない。
Jrユース大会が始まる以前は、幾度となく反町の暴力的なシュートを受けながら、吹き飛びながらも、
何度も立ち上がり果敢にゴールを守ろうとしていた。
お互い思いを通じ合えたから、というだけでなく。
共にサッカーをするという上でも……練習を行う上でも、彼女はきっと反町の大きな助けになるに違いない。

反町「………………」

2つの事柄を考えるに、強くなる為には――。

穣子「守矢に行きたいんでしょ?」
反町「…………」

守矢に行った方が、一層、レベルアップを図りやすくなる。
少なくとも、反町はそう結論づける事が出来た。

だが、それでもなお――迷う。

反町「俺は……このチームを立ち上げた時、言ったんだ。 『和を大切にするチーム』にしたいって」
穣子「ん、そうね。 覚えてる」

112 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:22:36 ID:???
チームメンバーを集め、キャプテンに就任した時、反町はそう宣言した。
東邦学園とは違う、全日本とも違う、仲間との協調と和を大切にしたチームにしたいと。
……実際の所はともかくとして、少なくとも、反町はそうなるよう努めてきたつもりだったし、
これからもそうしていきたいと思っていた。

反町「その俺が、チームを抜けてどうするんだ? ……神奈子さんの話では、吸収合併でも構わないと言ってたけど」
穣子「それは無理ね。 ……私達が抜けるつもりがないから」
反町「……うん」

或いは、まだ、オータムスカイズが守矢に吸収されるという形でならそれもよかったかもしれない。
だが、それは穣子たちが否定をする。

『信仰』

穣子と静葉は、信仰を集める為にサッカーをしている。
無論、吸収合併された所で、彼女たちに出番が来て、相応に活躍をすれば……それなりに集まるかもしれない。
ただ、それはあくまでそれなりだ。
チームの顔は、やはり『守矢フルーツズ』と名乗る以上は、守矢に名を連ねる神々である。

穣子「それに信仰云々は抜きにしたって、私はこのチームに愛着あるしね。 さっきは半年も経ってないとは言ったけどさ」
反町「それを言うなら、俺だって……!!」
穣子「あんたは違うでしょ。 明確に、やりたい事が見つかったんだもん。
   ……惰性や責任感で、このチームに残り続けるなんて……そんなのあんたが許しても、私が許さない」

反町がなお縋ろうとしても、キッパリと穣子は言い切った。

穣子「あんたはあんたの夢を追いなさい。 ……ここまでずっと、チームの為に頑張ってきたんだもん。
   あんたが多少の我儘を言った所で、バチは当たらないわよ」
反町「……いいのかな」
穣子「とーぜん! この私が『バチが当たらない』って言ってんのよ?」
反町「………………」

113 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:23:52 ID:???
選択肢を出され、迷い、項垂れていた少年は――女神の後押しを受け、一歩踏み出す事を決意した。
目の前の女神は、いつもの快活な笑みを浮かべている。

穣子「いつか言ったでしょ? あんたには感謝してるって。
   何があっても、私は絶対あんたにご利益を与えてあげるって」

それはいつの事だったか。
ヒューイやリグルを始めとして伸びていく選手たち、新たに加入をした戦力。
それらに押しつぶされそうになった時期が、穣子には確かにあった。
その際、助けてくれたのは誰か。見捨てなかったのは誰か。
穣子は確かに記憶をしている。

穣子「八坂様達には及ばないけど、これでも神様なんだからね!
   信仰してくれた人間には、とーぜん! その分の見返りを与えないと!」
反町「………………」
穣子「皆が反対するなら、私が話つけてやるわ。 あんたはあんたの事だけ考えなさい」
反町「……うん」
穣子「勿論、あんたが守矢に移ろうが何しようが、私達だって負ける気はないけどね!
   私達にほえ面かかされて、間抜けな顔しないようにあんたも頑張りなさいよ!」
反町「ああ……ありがとう、穣子。俺……」
穣子「………………」

反町「俺、守矢フルーツズに移籍するよ」
穣子「…………ん、それでよし!」

………
……


114 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:25:36 ID:???
それから一言、二言、2人は会話を交わし……穣子は反町の部屋を出た。

穣子「ふぅ……」

部屋を出るなり溜息一つ――それでも、パンパン、と、顔を張ると自分の部屋に戻ろうとして……。

静葉「……一樹くんとは話が出来た?」
穣子「姉さん……」

廊下で、静葉と顔を合わせる。
ぎこちなく首を縦に振る穣子に対し、静葉は無言で自身の部屋を指さし穣子を招き入れ……。
穣子はそれに素直に従い、2人は静葉の部屋で対面をする。

静葉「…………それで?」
穣子「ん……やっぱ、姉さんの言う通り、八坂様に勧誘されたってさ」
静葉「そう……(やっぱり、そうなるわよね……)」

今日、反町が守矢神社へ挨拶に行くと言っていた際――否、もっと前。
即ち、あの祝勝会で度胆を抜かれる大告白があった際から、静葉はそうなる事を予感していた。

愛する者と戦うよりは、チームを共にして支えとなるという選択肢。
ついでに言えば守矢のFWはポストプレイヤーである諏訪子――純粋なストライカーである反町は、喉から手が出る程欲しい筈だ。
感情論で言っても、理屈で言っても、早苗と反町が互いに愛し合っており、
そしてその早苗があの2柱に信仰を捧げている以上は自然な流れである。

静葉「それで……一樹くんは?」
穣子「迷ったって。 愛着のあるオータムスカイズに残るか、それとも家族のいる外の世界に戻るか、それに守矢に移籍するか。
   でも……聞いたの。 あいつ、世界一のストライカーになりたいって」
静葉「……うん」
穣子「だったらね……どこに行くのが1番いいか、わかるんじゃない?って……私言ったの」
静葉「…………そう(早苗を支える訳でもなし、ね)」

115 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:27:31 ID:???
穣子の言葉を聞きながら、静葉はそう考える。
無論、そういう気持ちも多分にはあるのかもしれない――ただ、揺れ動いていた1番の要因となったのは、
そういった感情ではなく、実利の面だった……というのは、静葉の脳裏にしっかりと刻まれている。
目の前にいる妹は、自分がそう背中を押したのだからかは知らないが、そんな事を考えている由は無いが。

穣子「そしたら……反町は、守矢に行きたいみたいでさ」
静葉「ええ……」
穣子「ハッパかけてやったわ! ならうじうじ迷ってないで、とっとと行きなさいって!
   これまでこのチームを支えてきたんだもん、そんくらいの我儘、皆許してくれるわよって」
静葉「……そう」

それは静葉にとっては予想の範疇で――しかし、当たって欲しくは無かった事である。
許す許さないで言えば、静葉としても……許さざるを得ない。
そもそも幻想郷サッカー界では選手の移籍自体、頻繁に起こっている。
反町が――例えキャプテンだとしても、オータムスカイズを離れるという事に、誰も文句を言う道理はない。
道理はないが……あまりにも、痛すぎる損失だ。

静葉「(穣子なら……そうね、穣子なら、そういうわよね……)」

今日、穣子が反町の部屋を訪れ、今後の事について話し合うという事も静葉は知っていた。
或いは穣子の言葉なら、反町が思い直し、オータムスカイズに残る選択肢を選ぶのではないかとも思って。
――神奈子に誘われた際、反町の気持ちがそちらに傾くというのは、静葉にはわかりきっていた事である。
ここよりも、外の世界よりも、優れた環境である守矢フルーツズ。
ただ『強くなる』という一点だけを見れば、その選択肢を選ばない筈が無い。

それでも、静葉は反町がオータムスカイズにかける愛着にかけたかった。
穣子に対する感情にかけたかった。
しかしながら、それは敵わなかった――と、知った。
それを伝えた穣子の後押しがあったからなのか、純粋に実利だけを見ての選択だったのか、反町ではない彼女にはわからなかったが。

116 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:29:07 ID:???
静葉「……寂しくなるわね(そしてそれ以上に、チームとしては戦力の大幅ダウンが逃れられない。
   一樹くんだけじゃなく……他の事を考えると)」
穣子「まあね……でもさ、仕方ないじゃない」
静葉「穣子……」

穣子を励ましながらこの先を考えていた静葉は……しかし、視界に映った穣子の顔を見て声を失くす。
彼女は笑っていた。笑いながら――大粒の水滴を、ポロポロとその瞳から流していた。

穣子「あいつは……強くなりたいって、言ってるんだもん。 もっともっと、だってさ。
   大会で得点王取っても、MVP取っても、まだまだ満足してないのよ」
静葉「………………」
穣子「私だってさ、もっとあいつと同じチームで一緒にいたかった。 けどさ、もう、邪魔だもん」

静葉はゆっくりと静葉に近づき、その背中を摩る。

静葉「………………」

いつだか、フランス国際Jrユース大会の際――試合中、体力を使い果たして倒れこんだ穣子。
医療室へと担ぎ込まれ、大事には至らなかったものの気絶をして眠り……。
その際、見舞いへとやってきた静葉との問答を思い出す。

穣子は確かに、反町に対して親愛の感情を抱いていた。
それが男女のそれだったのか、或いは家族としてだったのかはわからない。
少なくとも、その時は、弟みたいなものだから、放っておけないから、と穣子は言っていた筈だ。
そう、放っておけなかった。
放っておきたくなかった。
ずっとそばで、彼の成長を見守り――彼と共にありたかった。

117 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:30:54 ID:???
穣子「だけど、あいつは早苗が好きだって言うし、早苗もあいつが好きだし!
   強くなれて、思い人のいる所にいれるなら、それが1番じゃない!」
静葉「……そうね」

しかし、それは叶わない。
いつかの時に静葉が言ったように、少年は成長をする。いつまでも見守るという事は出来ない。
そして、どれだけ絆を結んでも、それは男女の愛にはきっと敵わないのだろう。

穣子「私は、あいつに言ったわ。 いつかあいつに受けた恩は、信仰は、必ず返してやるって」
静葉「………………」
穣子「それが女神である私の誇りだって。 でも、でもね……私、あいつにまだ何も出来てない……」

それは違う、と静葉は言いたかった。
確かにサッカーではずっと反町の世話になっていた、反町がここまで引っ張ってきた――それは疑いようの余地も無いだろう。
だが、日常生活でも――そして、繋がりとしても、誰よりも支え続けていたのは穣子だ。
いきなり幻想郷へとやってきて、右も左もわからない反町を助けていたのは、穣子だ。
……それを言っても、彼女は納得しないのだろうから、静葉はじっと口を噤んでいたが。

穣子「私だって、別れたくない……」
静葉「………………」

それがきっと、穣子の本音なのだろう。
それでも、彼女は、自身の誇りや、何よりも反町の事を思って、身を引く事を決断した。

静葉「(一樹くんを……引き留めたい、所なのだけど)」

誰よりも近くにいた穣子がそう言うのだ。一体、どうして静葉が引き留める事が出来るだろう。
それは静葉だけではなく、このオータムスカイズにいる――他の誰にも言える事だ。
穣子がそう決断をした、ならば、それに口を挟める者など――空気を読まない何人かはいるだろうが、それもまた、静葉が許さない。

118 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:32:35 ID:???
穣子「反町と離れるなんて……やだよぉ……」
静葉「………………」

いつしか静葉のやや寂しい胸に顔を埋めながら、嗚咽し、穣子は呟いた。
静葉はやはり、黙ってその頭を撫でてやる。

静葉「よく頑張ったわね、穣子。 本当に……よく頑張ったわ」
穣子「うぅぅ……」
静葉「(ただ……穣子と一樹くんは、神と人としては、あまりにも近すぎた。
    ……結果的には、これが良かったのかもしれない。 ……穣子には、残酷な事かもしれないけれど)」

穣子を慰めながら、そうも思う静葉。
確かに穣子と反町の関係は、近かった――近すぎた。
それを考えれば、反町がオータムスカイズから離れる事も、決して悪い事ばかりではないと。

彼女はまだ知らない、白熱した幻想郷サッカーブームが、これから更なる盛り上がりを見せていく事を。

静葉「(……後は、私が頑張る番ね。 穣子の為にも……このチームの為にも)」

彼女は知っていた、反町が守矢フルーツズに移籍する上で、何名かの選手が反町に続き移籍をする可能性を。

静葉「(このチームが得てきた名声を……失墜させる訳にはいかない)」

誰もまだ知らない、稔りに稔った秋の空に……静かに終焉の日が近づいていた事を。

反町一樹が守矢フルーツズへの移籍をチームメイトに発表したのは、その翌日の事である。

119 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:36:13 ID:???
早苗「(ヒロインレースに)勝ったッ!第3部完!!」
という事で早苗さん大勝利で一旦ここまで。
ここまでの流れは賛否両論あると思いますが、多分、あの時あのまま続いていたとしても、仮にJrユース大会後の進路は、
反町は守矢移籍ルートになっていたかなと思います。

次回は、反町移籍を受けてのオータムスカイズチームメイトの動向などを書けたらと思います。
それでは。

120 :森崎名無しさん:2018/01/28(日) 23:33:03 ID:???
乙です
穣子さんが良い女すぎる…妻として反町を支えてやってほしい

121 :森崎名無しさん:2018/01/29(月) 01:29:16 ID:???
移籍の理由の一部としてシュート練習したいからってのがなんともシュート魔王らしいというか
とはいえ、穣子が行かないでって言ったら残ったんだろうなぁ
穣子もそれが分かってて移籍しろって言ってるんだろうな

122 :森崎名無しさん:2018/01/29(月) 06:29:58 ID:???
早苗さんルートだと移籍しか道がなかったんやなって……
穣子ルートも見たかった

123 :森崎名無しさん:2018/01/29(月) 08:47:43 ID:???
メタ的に大妖精が練習に付き合ってくれないって結構影響あったんですか?
これがプロチームの話しだったら大妖精が批判される案件だとは思うが

124 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/29(月) 21:56:46 ID:???
>>120
乙ありです。
早苗「浮気は絶対許早苗」

>>121
行かないでと言っていたら……まぁ、残っていたでしょうねぇ。
結局の所はやや守矢移籍に傾いていたくらいなので、ぐいっと引き戻せばそちらに行っていました。
穣子さんはそこを逆に押し返しちゃった感じですね。

>>122
途中までは穣子をヒロインのつもりで書いていたんですけどね……。

>>123
練習に付き合ってくれない、付き合ってくれてもビビりまくってて罪悪感が半端無いって感じですね……。
批判とかもされないと思います。殆どの人は付き合いたくないと思うでしょうし。
実は大妖精の反町に対する感情とかは、本編の日向に対するタケシや反町のそれのオマージュのつもりでした。
反町「選べ、俺のオータムドライブを受けて全治不明の重体になるか、俺が敵を吹き飛ばす所を味方として見るか」

短いですが投下します。

125 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/29(月) 21:57:51 ID:???
Act.4 終焉の秋

反町一樹が守矢フルーツズへの移籍を発表したその日である。
秋静葉は、所属をしているチームメンバーに召集をかけた……当人である反町を除いて。
機を失う訳にはいかないと、彼女の行動は迅速であった。

静葉「(一樹くんが移籍をすると発表して日を置けば置くほど、状況は悪くなる……対応は迅速に。
    だけど、冷静に)」
橙「お、遅くなりましたにゃ……藍様に呼び出しを受けていて……」
静葉「いえ、時間通りよ。 さ、座って」

オータムスカイズの誇る右の俊足サイドハーフ、橙の謝罪を笑顔で許しながら、
静葉は橙に着席するよう促す。
橙はそれに至極申し訳なさそうにしながらも、ちょこんと空いていた席に腰掛ける。

静葉「…………レティ、風見幽香は?」
レティ「駄目ね、まるで便りも何もないわ。 ……あの大会から」
静葉「……そう(それも、ある程度は予想の範疇。 ……大丈夫、まだ大丈夫)」

Jrユース大会が終わってから、まるで姿を見せる事のない風見幽香。
かつて静葉や橙、にとりとひと悶着を起こし、
加入をしてからもそのルール無用の残虐ファイトで色々と物議を醸したチームの一員である。
魔界Jrユースとして戦ったその時より、一層その残虐性は磨かれ……。
或いはこのチームにはもう二度と戻ってこないのかもしれない、と、静葉はある程度の予想はつけていた。

オータムスカイズの中でも、疑いようの無い総合力を持っていた幽香の離脱。
反町の移籍同様、これもまた痛い。
ただ、その痛さはこの2人の純粋な戦力としての計算以上に波紋を呼ぶ事になる。

126 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/29(月) 21:59:17 ID:???
リグル「幽香もいなくなっちゃったのかぁ……(反町もいなくなるんだよなぁ。つまんないなぁ……)」
メディスン「………………」
静葉「(一樹くん、それに風見幽香を慕う者も多い……)」

人当たりがよく、基本的には品行方正であった反町。
暴力的ではあるものの、カリスマ性を持ち多くのメンバーを率いてオータムスカイズへと加入した幽香。
彼らがいなくなる――そして、移籍をする。
これを受けてこのオータムスカイズからこれ以上の選手の漏洩を防ぐ……それが今、静葉に求められた役割であった。

静葉は己に求心力があるとは思っていない。
力があるともまるで思っていない。
それでも、秋の空と名付けられたこのチームの為に、昨日、辛い決断を下した妹の為に。
冷静に、顔には笑みを浮かべたまま、その口を開く。

静葉「皆も聞いたけれど、一樹くんが守矢フルーツズに移籍することになったわ」
サンタナ「そうそう、あれ、なんでなの!? あの妖怪の山の変態GKになんかされたの!?」
穣子「そういう訳じゃないわよ……反町も、色々考えての結論だわ」
静葉「ええ、一樹くんも色々考えて……そして、守矢フルーツズへと移籍をする事になった。
   ………………」

そこまで言って、静葉は一拍置き、周囲を見回し……。

大妖精「あ、あの……他の選手で、オータムスカイズから守矢に移るのって……いいんでしょうか?」
静葉「(そこが1番手……か)いえ……幻想郷のチーム事情で言えば、選手のチーム間の移籍自体は何ら問題は無いわ。
   誰かが移籍をしたいというのなら、それを止める事は誰にも出来ない」
大妖精「だ、だったらその……わ、私も守矢フルーツズに移籍したいかなぁ……って」

その大妖精の発言に、多くの者たちは驚きのまなざしを向ける。
ただ、これも――やはり静葉によっては予想の範疇であった。

127 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/29(月) 22:00:50 ID:???
静葉「(大ちゃんは一樹くんを恐れている……正確には、一樹くんのシュートを……だけど、まあそれは些細な事。
    要は彼女は、一樹くんのシュートを受けたくない。 敵対したくない。 ただ従順にいるしかない、と考えている。
    ……一樹くんのシュートで吹き飛ばされる側を選ぶか、それとも味方として一樹くんがゴールを奪う場面を見るか。
    その二択を提示されれば、迷わず後者を選ぶのは自明の理ね……)」

大妖精自身は、幻想郷でもトップクラスのセービングを誇るGKである。
ただし、彼女はその実力に見合わない程にまで、気弱だった。臆病と言える。
そんな彼女がオータムスカイズに残るという選択肢を取る筈が無い。
ある意味ここまでは予定調和であると言え……。

大妖精「チ、チルノちゃんも一緒に行こう! ね!?」
チルノ「うぇ? あたい?」
静葉「(そう、そうなる……)」

問題はその後――即ち、大妖精がチルノを引き連れて守矢へ移籍しようとする事である。
チルノと大妖精の仲については、今更説明する必要も無いだろう。
勝気でおてんばで頭が弱くて、しかし誰よりもド根性があるチルノ。
そして、そんなチルノと何故か仲良く、誰よりも彼女を気にかけている大妖精。

大妖精の性格ならば自分だけがこのチームを離れるという事を良しとしなかっただろうし、
何よりもチルノの顔面が反町のシュートで粉々にされるなど許せる筈が無いだろう。
よって、大妖精が移籍をする際にチルノを誘うというのもまた、予想が出来た。

静葉「私としては……チルノには、残って貰った方がありがたいのだけど」
チルノ「ん?」
静葉「大ちゃんがいなくなれば……やはりゴールを守るのに不安は残るもの。
   シュートに対して無類の強さを発揮するチルノがいてくれれば、それでも安心は出来るわ」
チルノ「ん……んん?」
リリーW「チルノはゴール前にて最強って言ってるですよー」
チルノ「そう! やっぱりあたいってばさいきょーね!!」

128 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/29(月) 22:02:46 ID:???
まだ大妖精は仕方がない――彼女の意志は固い、まず説得は不可能だろう。
だが、チルノに関してはそうではない。
元々、チルノにしても当初はオータムスカイズと敵対していたのだ。
言ってみれば、大妖精と離れたチームで活動をするという事にもそこまで抵抗が無い筈である。

後はその自尊心を言葉巧みにくすぐってやれば、自然とその気になって残ってくれるだろうと考え、静葉は引き留める。

実際、静葉の予想通り、チルノはすっかりその気になった。
事実としてチルノのブロックが大妖精が抜けた場合チームの守備の柱になるとはいえ、
あっさりと感情がオータムスカイズに残る方へと傾く。

静葉「ええ、これからもチルノにはオータムスカイズの頼れる壁として……」
大妖精「だっ、駄目だよチルノちゃん!」
チルノ「え?」
静葉「……!」

後もうひと押しすれば、チルノはいとも簡単に残留を表明するだろう……と考えた矢先である。
先ほどよりも更に大声で、その静葉の言葉に待ったをかけたのが大妖精であった。
元来どちらかといえば小声である大妖精のその大声に一同が再び驚き視線を向ければ……。

大妖精「だ、駄目だよチルノちゃん……駄目だよぉ……」
チルノ「だ、大ちゃん?」

更に一同は驚く。
何せ、大妖精はその瞳に涙を浮かべていたのだから。

静葉の誤算は、大妖精の反町に対する畏怖が想像以上に大きかったという点だろう。
なまじセーブ力だけならば幻想郷トップクラスであるだけに計算違いをしていたのかもしれない。

129 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/29(月) 22:04:19 ID:???
だが、実際に、彼女はそれだけ反町を恐れていた。
無論、大妖精は反町の事をいい人だとは思う。世話になった事もある。尊敬が出来る人だとも思う。
しかしながら、それと、反町のシュートを受けるという事は別問題だ。

大妖精「お願いだからチルノちゃんも一緒に行こう! 私、チルノちゃんがボロボロになる所、見たくないよぉ……」
チルノ「………………」

自分がそんな事になる訳ない、と、いつものチルノなら言っていた所である。
ただ、相手が親友の大妖精だ。
彼女が本当に自分の身を案じていて、親身になって言ってくれているという事は誰よりもわかっていた。
それでも、チルノは迷いを見せる。
静葉がいて欲しいと言ってくれた事もある、そして……。

チルノ「(あの人間が移籍するんだもんなぁ……)」

元々、チルノ自身が反町を嫌っているという問題もあった。
妖精トリオにばかりかまけている……依怙贔屓しかしない人間、というのがチルノの反町に対する印象である。
実際の所は言う程妖精トリオの面倒も見ている訳ではないのだが、そこはそれ。
とにもかくにも、彼女が反町に対していい感情を持っていないというのは事実だ。

チルノ「(でも、大ちゃんがここまで誘ってくれてる……)」

故に迷う。
大妖精についていきたいと思う自分、必要とされる所で――かつ、嫌いな人間のいない場所でサッカーをしたいと思う自分もいる。
あまりおつむがよろしくないチルノは、それでも目いっぱい、うんうん唸りながら悩み、考え……。

チルノ「………………」

ちらり、と視線を横に向けた。
それを受け、視線を受けた女性は口を真一文字に引き――逡巡するようにその目を閉じ。

静葉「(! まずい……)チルノ、あのね……」

130 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/29(月) 22:06:05 ID:???
レティ「チルノが行くならば、私も行くわ」
静葉「っ!」

静葉が言葉を言い切る前に、その女性――レティ=ホワイトロックは短く告げた。

大妖精「そ、そうです! レティさんも一緒に行きましょう!!」
静葉「(……拙い。 これは……あまりにも……)」
レティ「(ごめんなさいね、静葉。 私もこのチームには愛着があるのだけど……)」

心の中で謝罪をするレティに対し、しかし、静葉は内心で歯噛みをする。
考えてみればそうである。
大妖精に誘われ、迷った挙句、チルノが最後の指針としうるのは誰なのか。
どう考えても、大妖精の次に縁の深いレティだ。

ならばレティはこの件について、どういうスタンスを取るのか。
彼女自身は、幻想郷全土で見れば希少とも言えるDFとして多くのチームから引っ張りだことなる……。
幻想郷界隈でも古参に入る選手である。
そんな彼女がこのチームに入った経緯と言えば、風見幽香とチームを結成していた為、
このチームに幽香が加入をする際共に入ったというもの。

131 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/29(月) 22:07:09 ID:???
チルノや大妖精という顔なじみがいたという事もあり、また元々春夏冬の4人組でチームを組んでいた中、
秋姉妹がいれば真に春夏秋冬がそろい踏みする事になるというものもあったが、
大本を辿れば至って単純なものであった。

では幽香がいなくなった現状――彼女の立ち位置はどうだろう?
……非常にフラットなのである。
彼女が内心で思ったように愛着があれど、執着は無い。

レティ「(キャプテンが抜けて、幽香もいない……戦力の大幅なダウンは免れない。
     その上で私達が抜けたら、守備にまで大きく下がってしまうけれど……)」

それは重々承知ながら、レティは思う。

レティ「(あえて弱体化したチームでやる程の愛着まではない。 大ちゃんやチルノが移籍をするというのなら、なおのことね)」

レティ=ホワイトロック。体型通りの大らかさと雪のようなクールさを持つ彼女は、冷徹にそう決断を下した。

132 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/29(月) 22:08:11 ID:???
或いはチルノや大妖精が残っていれば彼女も残留を表明したのだろうが、
大妖精は頑なに移籍を望み、チルノも迷っている状況である。
チルノに選択権を視線で委ねられた時から、彼女の選択は決まっていた。

レティ「(あちらの方が総合的な能力の高い選手が多いとはいえ、やはりDFの頭数自体はいなかった筈。
     大ちゃんは正GKを取るのは難しいでしょうけど、そういうのを気にする性格ではないし……。
     私とチルノなら、十分レギュラーとして活躍は見込める。 やはり、移籍をしない手は無いわね……)」
チルノ「そう! じゃあそうね、あたいも大ちゃんと一緒にいくわ!!」
大妖精「う、うん! うぅ……良かった。 良かったよぉ……」
レティ「……ごめんなさいね、みんな」
静葉「……いえ。 (止められなかった……守備の要が……3人も)」

叫びたくなる程の衝撃を受けながらも、それでも静葉は笑みを絶やさなかった。
大妖精、レティ、チルノ。いずれもオータムスカイズの守備の要である。
特に、大妖精の移籍は何よりも痛い。

静葉「(ストライカーと正GKを同時に失う……というか、誰をGKにすればいいのよ……!)」
リグル「チルノも行くんだ。 そっかぁ、反町もそっちなんだし私もそっちに移籍しようかな〜……」
静葉「リグルちゃんは……『オータムスカイズのエース』なんだから。 移籍するのはおかしくないかしら?」
リグル「え?」
静葉「それに、一樹くんがいなくなって……得点力が下がるのは目に見えているわ。
   この上リグルちゃんまでいなくなったら、私達、どうしていいのか……」

リグル「ハッハァー!! そーだよね! うん、そーだと思ってたよ!!
    しょうがないなぁ、私ってばエースだしね! うんうん、まっかせて!!
    チルノ、大ちゃん、レティ! 負けないからね!!」
チルノ「おー!!」

静葉「(……みんなこれほど上手く、単純に事が運べばいいのだけど)」

因みに、あっさりと残留を表明していたものもいたという。

133 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/29(月) 22:09:40 ID:???
一旦ここまで。

134 :森崎名無しさん:2018/01/30(火) 02:13:06 ID:???
乙でした
これは反町も責任感じちゃうだろうなぁ
静葉さんに頑張って勧誘してもらわないと…

135 :森崎名無しさん:2018/01/30(火) 09:33:54 ID:???
性格的に仕方ないが楽な方に逃げちゃったか大妖精
選手としては−の選択だしこの性格を少しでも変えないと後で厳しくなりそう

136 :森崎名無しさん:2018/01/30(火) 11:32:07 ID:???
乙でした
殺伐とした展開の中に安定のリグルw

137 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/30(火) 20:43:17 ID:???
本日は更新をお休みします。
何か質問や疑問があれば可能な限りは答えますので何かあればどうぞ。

>>134
乙ありです。キャプテン静葉、はじまります。
>>135
大妖精に関しては、根本的にそこまでサッカーに熱意がある訳ではないので、
文中でレティさんに言われてるように第二、第三キーパーになってものほほんとしてるでしょうね。
個人的には、幻想のポイズン中に変えて欲しかった1人ではあります。
>>136
乙ありです。リグルはまぁ……リグルですから。

138 :森崎名無しさん:2018/01/30(火) 22:03:44 ID:???
引退なり、コンバートなりすれば魔王シュートを受けなくて済むと思うんだけど
そうしない理由が大妖精には何かあるのかな?

139 :森崎名無しさん:2018/01/30(火) 22:12:51 ID:???
大ちゃんの反応が反町のオマージュなのか
という事はもし反町が日向ばりの恐怖政治をやってたら魔王大ちゃんが誕生してた可能性が微レ存?

140 :森崎名無しさん:2018/01/30(火) 22:21:50 ID:???
本来は気弱なキーパーが下克上……
それただの森崎じゃね?

141 :森崎名無しさん:2018/01/30(火) 22:22:37 ID:???
新外伝 現実の大ちゃん

142 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/31(水) 22:46:14 ID:???
申し訳ないですが本日も更新はお休みします。明日は更新出来ると思います。

>>138
反町のシュートさえ受けなければ、サッカーを楽しめるのかもしれないです。
あとはチルノと一緒の事したいとかかなぁ。と思います。
>>139
反町「な、なにィ!?俺のオータムドライブがはじかれただと!?」
大妖精「(うーん完全にキャッチ出来ず>1で弾いてしまいました。完全にキャッチできるようにまだまだ練習しないと!!)」
>>140
死に能力になってましたが、一応MF適正自体は大妖精にもありましたね……。
>>141
現実世界に大ちゃんが行くとしたらどこが最適ですかねぇ。
岬に上手く利用されそうな南葛か、純粋にいい人レベルで高そうな葵と(ロリには)優しいナンデスがいるインテルか。

143 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:21:09 ID:???
上機嫌に「私はエース♪」などと鼻歌を歌っているリグルを後目に、静葉は考える。
実際のところ、リグルの引き留めは最優先事項であった。
先ほど静葉が口にした「反町がいなくなった後、得点力で誰を頼ればいいのかわからない」というのも事実である。
反町が抜け、幽香が行方をくらました現状――リグルしか得点源が無いと言っても過言ではない。
そういった意味では、あっさりと残留を表明したリグルの存在は何よりありがたい。

静葉「(そして、リグルちゃんが残留を表明してくれたお蔭で……)」
リリーB「私達は……」
リリーW「オータムスカイズに残るですよ〜」
サンタナ「あっ、私も!」
静葉「ええ、ありがとう(流れはこちらに傾いてくれる……)」

大妖精の言葉を皮切りに、多くの者たちが移籍へと傾こうとする中。
リグルの残留宣言は流れを断ち切るには格好の材料であった。

元々、レティと同じく幽香と共にオータムスカイズへと加入をしたリリーWとリリーB。
彼女たちの立ち位置は、オータムスカイズ内でも決して高いものではなかった。
というか、ほぼベンチウォーマーであった。
その要因は彼女たちの基礎的な能力が余りにも低すぎたという点もあるが、
それ以上に彼女達のポジションがFWかMF――或いはGKと、それぞれ不動のレギュラーが固まっていた場所であった為である。

今までのFW陣で言えば、反町とリグル、そして攻撃能力しか無い橙。
MFで言えば幽香とヒューイはほぼ固定ながら、静葉・メディスン・橙・ボランチ起用された穣子と、まず出番は来なかった。
正GKである大妖精の代わりは、前述以上に苦難の道である。
それが正GKがいなくなった時点で既にリリーW、もしくはリリーBの出番は確約されており、
おまけにFW・MFどちらも絶対的な強さでレギュラーを誇った選手が離脱する。

こうなれば彼女たちが残留の意を示すのもなんとも自然な事であった。

144 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:22:20 ID:???
サンタナに関してはリリーたちの考えよりも更に単純。

サンタナ「(人間がいるなら私も移りたいけど……チルノが行くチームになんか意地でも行ってやるもんか!
      へへーんだ、むしろいなくなってくれてありがたいくらいだわ!!)」

チルノを嫌う妖精トリオの中で、1番にチルノの事を敵対視しているのがサンタナである。
妖精トリオの中で反町に1番懐いているのも彼女とはいえ、
それ以上にチルノに対する悪感情が強かった彼女が残留を表明するのは自明の理と言えた。

或いは、彼女たちも、静葉たちが幻想郷Jrユースとして活動する傍ら、
オータムスカイズの一員として数多のチームと野良試合を繰り広げた事で、このチームへの愛着を人一倍持ったのかもしれない。

サンタナ「(大妖精がいなくなってもキーパーはいるし! ね、ボナンザ!!)」
ボナンザ「…………」シャンシャンシャーン

静葉「(チルノちゃんとサンタナちゃんは両天秤だった。
    大ちゃんやレティの事を考えればチルノちゃんに残って貰った方がありがたかったわね……。
    とはいえ、その両天秤も絶対とは言えなかった。
    チルノちゃんへの敵意より、サンタナちゃんの一樹くんへの信頼が上回っていればそれまで。
    ……正直言って、全員が守矢へと移籍する可能性だってあった)」

そういう意味では、反町がそこまで全員と親交を深めあっていなかった事に安堵をする静葉。
ただ、それでも依然として戦力が不足しているというのは事実である。
何せ残留を表明した中でリグルはともかく、サンタナ、リリーW、リリーBは何れも一線級とは到底呼べない選手たち。
もう一言、ここで欲しいと静葉は考え……。

静葉「……妹紅は、どうかしら?」
妹紅「…………ああ」

視線を横へと向け、考え事をしていた少女――藤原妹紅へと問いかけた。

145 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:23:38 ID:???
妹紅は考えていた。
そもそも――彼女自身も、オータムスカイズには途中加入をした選手である。
当初はコーチとして、未熟な選手たちが多い中で得意とするタックルや競り合い、シュートを教えてきた。
その切っ掛けとなったのは、やはり反町である。

元来、蓬莱人――不死の体を持つが故に、人との関わりを避けようとしてきた妹紅。
そんな彼女が再び人妖と交わろうとするようになったのは、反町のお蔭であった。
彼と出会い、交流を深め、時には草サッカーの助っ人として呼ばれ、
そして世捨て人のような、達観したようなそぶりを見せながらも、その実、人に焦がれ寂しがっていた妹紅。
その外殻を捨て去り、素直に1つのチームの一員としてチームスポーツを楽しむ事を教えてくれたのは反町なのだ。

妹紅「(感謝してる……感謝してるんだ。 でも……)」

ただ、それと同時に妹紅を助けたのは静葉でもある。

妹紅「(あの時、私の庵に反町と静葉が来てくれて……2人が揃って私を誘ってくれたんだ。
    そのおかげで私はオータムスカイズにいる)」

妹紅にとってオータムスカイズで過ごす日々は楽しいものだった。
久方ぶりに多くの者たちとの共同生活を行い、サッカーを通じて友情を育んだ。
長年の宿敵であった輝夜とも打ち解けるようになり、妖精1とにとりの猛特訓に付き合った思い出もある。
日数で言えば、今まで妹紅が過ごしてきた日々に比べれば本当に極僅か。
それでも、妹紅にとっては掛け替えのない時間だった。
本音を言うならば、誰も移籍する事なく、同じチームでずっとサッカーをしていたい。

妹紅「(でも……駄目なんだよね)」

それは永遠を生きる妹紅がいつも繰り返してきた事。
永遠に、ずっとこの"今"が続いて欲しいと願う妹紅とは対照的に、"生きる"者たちは変化をしていく。

146 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:24:47 ID:???
妹紅「(昔はそれが嫌だったんだ……今は続かない。永遠なんてものは本来無い筈なんだ。
    こういう思いがしたくないから、人と関わり合うのだって嫌だった……けど)」

それを受け入れて、人の中で生き続けると妹紅は決めたのだ。
他ならぬ反町と、静葉の言葉によって。
だからこそ、今の状況を受け入れなければならない。

妹紅「(そう、わかっていた事なんだ。 変わっていく事は。
    まさかキャプテンの反町が……っていうのは驚いたけど、幽香だっていなくなってるし……。
    それを受けて大妖精たちも移籍に傾いてる。 そういう流れが来たって、別におかしくはない。
    問題はそれを受けて、私がどうするか……)」

空返事をしてから考え込むようにしていた妹紅を、静葉は不安げに見やる。
静葉だけではない――多くの者たちは、極端な熱血漢へと変貌した妹紅の物珍しい大人しい姿に呆気を取られていた。
そんな視線を知ってか知らずか、迷いに迷った妹紅は、1つの決断を下した。

妹紅「私は……残る。 オータムスカイズに残るよ」
静葉「! そう……ええ、歓迎するわ妹紅」
妹紅「こっちこそ、これからもよろしくね!」

喜びを隠さずに声を上ずらせる静葉に対して、妹紅は笑みを浮かべながら返答する。
その笑みの裏側で、妹紅は考えていた。
反町にも静葉にも感謝はしている、恩がある。ならばどちらを取るのか。

妹紅はどちらも取らなかった。というより、個人を対象とする事を止めた。

妹紅「(反町にも静葉も、本当に感謝してる。 でも……私が一番感謝してるのはこのチームに対してなんだ。
    みんながバラバラになるなら――いや、なっても。 このチームの皆が私にしてくれた事を忘れない為に。
    私はこのチームの存在が無くなるまでここにいる。 仮になくなったとしても――ずっと忘れない)」

人ではなく、チームへの感謝。自身を変えてくれた、受け入れてくれた多くの仲間たち。
短い間だったとはいえ、共にいた事を忘れないように。藤原妹紅は残留の意志を表明した

147 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:25:52 ID:???
にとり「(妹紅は残る事を選ぶかぁ、そっかぁ……あー、私はどうしよう!)」

この妹紅の残留宣言を聞いて、更に悩んでいたのはにとりであった。
彼女もまた妹紅と同じく、反町・静葉共に親しい。
しかもそれだけではなく、よりにもよって守矢フルーツズ――即ち、妖怪の山に本拠を置くチームが関わっているというおまけつき。
妖怪の山は幻想郷でも珍しい程の縦社会が形成された地域である。
河童であるにとりは、その中でもあまり地位が高い方とは言えない。

守矢神社の二柱である神奈子と諏訪子に対しても、別段直属の上司といった訳ではないが、
それでもご近所のとっても偉い人という関係性だ。

にとり「(本来なら戻る方が自然なんだろうけど……でもここでのびのびやりたいんだよね……。
     やっぱ睨みきかされるとやりづらいし)」

割と小心者な一面も持つにとりとしては、現状、オータムスカイズの方がやりやすくはある。
とはいえ、だからといってそう簡単に残留を示せるものではなかった。

にとり「(チルノとレティが向こう行っちゃうとはいえ、DFの数自体はまだまだ不足してそうだしなぁ、あっち。
     ……反町を通して八坂様とかに勧誘されたらなんて断ればいいんだか。 うーん……)」

何度も言うように、幻想郷サッカー界では移籍というのは日常茶飯事である。
だからこそ、にとりとしてはそういった心配事があった。
残留を表明しながら、勧誘されたらホイホイついていく――などという事があれば、
そちらの方が余程静葉らに対して残酷である。

故に今のにとりに必要なのは、覚悟であった。
勧誘をされたとしても突っぱねられるくらいの、大きな覚悟。

にとり「(静葉を取るか反町を取るか……じゃ、覚悟は出来ない。 問題はそうじゃないんだ。
     勿論私がサッカーをのびのび出来るかどうかって話でもない)」

148 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:27:00 ID:???
そう考えながら、にとりはそっと視線を斜め向かいへと向けた。

妖精1「………………」
にとり「………………」

そこでは少しだけ不安そうに、しかし話し合いが始まってからじっとこちらに視線を向ける愛弟子の姿がある。
かつて才能があると見出し、師弟関係を結びながら、
しかし放任主義から大きく他の妖精たちと実力差をつけられてしまった妖精1。
彼女の訴えを聞き、初めてにとりは己の過ちを理解し、彼女の為に全てを捧げた。
自分の練習時間を削り、妖精1を鍛え上げた。幻想郷Jrユースの合宿でも、常に共に過ごしてきた。

それでもまだ足りない。

にとり「(私が思っていた妖精1は、思慮深くて大人びていて、こっちの考えをしっかりわかってくれてる奴だった。
     ところが、話し合ってみればなんてことない。あいつもやっぱり妖精なんだ)」

それは悪い意味ではない。

にとり「(思慮深いんじゃなくて臆病なんだ。 大人びているんじゃなくて諦めているんだ。
     こっちの考えをわかってくれて黙ってるんじゃない、自分を出すのが苦手なんだ)」

なんてことはない、1番理知的に思えた妖精1も……やはり、ただの子供に近い精神構造をしているだけである。
それを知らなかったにとりは、かつて傷つけてしまった。
だからこそ周囲に対して劣等感を抱き、自分に自信を持てない妖精1をなんとかしてやりたかった。

にとり「(だから私が1番に考えるべきは妖精1の事だ。
     どうするのが妖精1の為になるか、妖精1の成長に繋がるのか。
     ……妖精1が自信を持てるようになるのか。 考えるんだ)」

149 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:28:11 ID:???
にとりは思考する。オータムスカイズの中でも割と頭脳派に分類される頭を使って。

にとり「(守矢に移籍した場合――メリットはなんといっても反町が味方にいるって事だろ。
     反町が相手なら、DFとしてはこれ以上無い環境で練習出来るって事になる)」

奇しくもそれは反町が守矢に移籍を表明した一因である、練習環境。
幻想郷どころか世界レベルで見てもまず間違いないストライカーである反町。
彼を相手に練習ができ、尚且つ、設備の方も守矢の方が優れている。

にとり「(新しい環境に身を置くことになるし、妖精1が嫌ってるチルノも移籍するからそこはアレだけど……。
     まあ、メリットに比べれば些細な事だね。
     逆にオータムスカイズに残留すれば? ……多分、妖精トリオが残る事になるだろうなぁ)」

既に残留を表明しているサンタナに加え、妖精1も残るとなれば、まず間違いなくヒューイも残留するだろう。
劣等感を抱いているとはいえ、3人は親友である。
妖精1が彼女たちと共にサッカーを出来る環境は、やはり妖精1自身が望むだろう。

にとり「(とはいえ、それはメリットとするには本当に微々たるものだ。
     成長を考えれば、1番はやっぱり守矢に移籍する事になるんだろうけど……)」

そこまで考え、にとりはもう一度妖精1を見やる。

妖精1「………………」
にとり「(それは『ブロッカーとしての成長』を考えれば、だ。
     ……お前はそうじゃない、なぁ妖精1)」

150 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:29:46 ID:???

にとりが妖精1に見出した才能――それは群を抜いたマンマーカーとしての才覚である。
特別鋭いタックルが出来る訳ではない、パスカットが得意という訳でもない、ブロック出来るのは三流ストライカーのシュートくらい。
ただ、彼女は類まれなる反射神経と、マンマークについた際に発揮する粘り強さを持っていた。
即ち、ストライカーが打ってから止めるのではない。
打たれる前に止めるのである。

にとり「(勿論そういった面でも反町は格好の練習相手になるだろうさ。
     でも違う、私はこいつに自信をつけさせてやりたいんだ)」

自信をつけるにはどうするか。成功体験をさせるのが1番である。
それも、出来れば大きな事で成功させてやるのが1番いい。

にとり「(それなら……『反町が敵に回った方』が、よっぽどやりやすい筈だ)」

現状でも、妖精1のマンマーク技術ならば反町がボールをキープ出来る確率もそこまで高くない。
無論、守矢に移籍してからも反町が練習を積み重ね、ドリブル技術を向上させる可能性もあるが、
そこはそれ。にとりも信頼と実績の鬼コーチング(河童だが)で更に上をいけばいいだけの話である。

にとり「(実際、妖精1の才能はまだまだこんなもんじゃない。 反町が相手なら、高い確率でボールを奪えるようにだってなる筈だ。
     反町は……ストライカーとしては一流だけど魔理沙みたいになんでも器用にってタイプじゃないしね。
     だからこそ、敵に回す方がいい。 世界トップだろうストライカーを止められれば、何よりの自信になる! よし……!)
    妖精1、いいかい?」
妖精1「……うん」

1つ断りを入れてから、にとりは大きく頷くとその口を開いた。

にとり「私と妖精1も残留するよ。 ……いいね?」
妖精1「ん……(河童がそう判断するなら、私は信じるだけよ)」

かつて崩壊しかけ、しかし何よりも強固となった師弟の絆を確認しながら、
こうしてにとりと妖精1は残留を表明した。

151 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/01(木) 22:30:49 ID:???
一旦ここまで。次でこのパートは終わると思います。
中々進まず申し訳ないです。

それでは。

152 :森崎名無しさん:2018/02/01(木) 23:32:15 ID:???
乙です
かつては忘れることを怖れていたもこたんのそれでも忘れないという決意が涙腺に来た……
友として末長く秋姉妹を支えてやってほしいな

153 :森崎名無しさん:2018/02/02(金) 00:30:26 ID:???
乙でした
もこたん空気読んでくれた良かった
今のところ残ったメンツで中堅より上くらい?FWとGKが弱いかなー
反町が加わった守矢相手だと勝てるビジョンが見えない

154 :森崎名無しさん:2018/02/02(金) 00:31:35 ID:???
別スレでも守矢は超巨大戦力になってたな

155 :森崎名無しさん:2018/02/02(金) 18:56:13 ID:???
某スレでの自爆を見た後にこっちのにとりを見ると知的レベルの差に吹いてしまうw

156 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/02(金) 21:37:16 ID:???
>>152
乙ありです
妹紅に関しては、きっと余程の事でも無い限りはオータムスカイズから離れないでしょう
JOKER効果で色々とはっちゃけたキャラになってしまいましたが、
本質としては不器用な寂しがりやの人情家ですね
>>153
乙ありです
FWの選択肢はリグルとリリーB、GKはリリーBかリリーWになりますからね……
どちらも反町、大妖精と比較をするとガクッと実力が下がりますね
>>154
現状守矢の弱点であったDF陣と諏訪子の相方(ストライカータイプのFW)がガッチリと強化されてしまいましたからね
チルノ・レティというブロックに強いDF、大妖精というサブGKが加入する事で早苗さんの弱点であるスタミナ不足も解消されそうですし
>>155
こちらのにとりは心綺楼要素が無いという点もあるかもですね
風時点のにとりと、以降のにとりとでは二次創作でも割と扱いが変わりますので

本日は更新をお休みします。それでは。

157 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/04(日) 00:10:10 ID:???
ちょっと横になるつもりが気づいたらガチ寝でした……申し訳ありませんが本日も更新はお休みさせていただきます。

158 :森崎名無しさん:2018/02/04(日) 13:21:36 ID:???
乙です。無理なさらず、続き楽しみにしています。

159 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/04(日) 23:58:02 ID:???
>>158
乙ありです。

書けるは書けたのですが、キリのいいとこまで行けなかったので本日もお休みします。
明日には投下出来ると思います。

160 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:08:10 ID:???
大妖精たちの離脱を聞き、内心気落ちをしていた静葉であったが、
ここで妹紅とにとり、妖精1が残留をしてくれた事でホッと一息、胸を撫で下ろす。
何せ、彼女たちの動向については、静葉でも全く読めなかったのだ。

静葉「(妹紅もにとりも、一樹くんとは親しい……それと同時にこのオータムスカイズに残る可能性も勿論あったのだけど、
    どちらに転んでも決しておかしくはなかったわ……)」

妖精1に関してはにとりを慕ってどちらにつくか決めるだろうと推測出来た為、
問題は2人が残ってくれるか否かであったのだが、運よく残る事を決めてくれた。
理由については静葉の知る所ではないが、大妖精たちが抜けた今、
ブロッカーであるにとり、万能性のある妹紅、マンマークに長ける妖精1の残留は何よりも嬉しい。

静葉「(一歩間違えばDFが穣子だけ……という事態にもなりかねなかった。
    さて、これで残るは……)」

橙「(うぅぅ……ど、どうしようかにゃ……)」
メディスン「…………」
ヒューイ「…………」

静葉「(橙ちゃんにメディスン、それにヒューイ……ヒューイに関しては、サンタナと妖精1が残るとするなら、
    まず間違いなく残ってくれる。 問題は……後の2人)」

攻撃能力だけならば、オータムスカイズでもトップクラスに位置付ける橙。
そして、基礎的な能力こそ低いもののエース殺しの極意を持ちボランチとして期待が持てるメディスン。
既にほぼ残留が確定しているボール狩りの名手ヒューイに加え、
2人が残留を表明してくれれば、まだ、戦える。

静葉「(そう、まだ戦える。 これ以上選手が流失しては……うちは中堅すら名乗れないレベルになってしまいかねない。
    だからこそ……)メディスンは、どうかしら?」
メディスン「………………」

161 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:09:18 ID:???
静葉の言葉を受けて、しかし、メディスンは黙ったままであった。
元々、彼女自身は反町に不可思議なシンパシーを受けて途中加入をした選手。
元来人間嫌いである彼女にとっては、人間である反町に誘われてというのは非常に珍しい出来事であった。
とはいえ、そのシンパシーを感じたというのも当時の話である。

メディスン「(今はもう……どうでもいい……)」

あれはただの気まぐれか勘違いか、いずれにせよ、あれ以後、反町とメディスンの間に何かがあったという訳でもなく。
ただ惰性でメディスンはこのオータムスカイズに所属をしていた。
それでも――まだ、幽香が加入をしてからはこのチームに所属をする意義も見いだせた。
ひょんな事から知り合い、友人関係となったメディスンと幽香。
人見知りなきらいもあるメディスンにしては珍しく。
だからこそ、というべきかもしれないが……唯一とも言える幽香には非常に懐き、共にサッカーが出来る喜びを感じていた。
ただ、その幽香もいなくなった。

メディスン「(だから、もうこのチームからいなくなっても別に問題無いんだけどね……。
       ……あの人間についていくっていうのもまっぴらごめんだけど)」

メディスンが揺れていたのは、反町について守矢に行くかこのチームに残るか、という問題の話ではない。
そもそもこのチームに残る必要があるのか、というものだった。
サッカーを止めても構わない……そういう決断も選択肢の1つに上がる。

162 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:10:45 ID:???
リグル「メディスンも一緒に残ろうよ! 幽香もふらっと戻ってくるかもしれないし!」
メディスン「…………(戻ってくるとは思えないけど)」

幽香には割と、気まぐれな所もあるという事はメディスンも知っていた。
勝手気ままに幻想郷中を巡り、四季折々の花を愛でる幽香。
昨日までいた場所に今日はいない、という事もままある。ただ……。

メディスン「(四季が廻れば、また戻ってくる事も、あるけど……)」
静葉「……悩むくらいなら、一旦、保留でも構わないわ。 何かがあれば、出て行ってくれても問題は無いのだから」
メディスン「…………ん」

結果、迷いに迷ったメディスンは、結論を先延ばし――現状維持を選んだ。
どれを選んでも構わないからこそ、どれも選べない者もいたという事である。

橙「(にゃー……メディスンも、残るんだぁ。 うぅ、私はどうしたら……)」

一方で、橙は目に見えて狼狽した様子を見せながら、ペタンと耳を畳み視線を下に向けていた。
この話し合いが行われる前――入室をしてきた橙が言っていたように、
この日、彼女は主人である藍の元を訪れていた。
……正確に言えば、藍"達"の元に、である。

163 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:12:17 ID:???
     〜回想〜

橙「お久しぶりですにゃ、藍様!! それに紫様!!」
藍「ああ、おかえり橙。 とはいっても、Jrユース大会では久しぶりにずっと一緒に過ごせたのだけどね」

オータムスカイズに所属をする選手たちの中で、橙は珍しく1つの他勢力に所属をしていた選手であった。
彼女がオータムスカイズに参加をした切っ掛けは、紫が反町をほぼ強引に連れてきた事を知った藍が、
なんとか手を貸してやりたいと感じ、新チームに興味を持った橙を加入させた事。
好奇心旺盛で無邪気ながらも、サイドアタッカーとしての実力は相応に高い橙は、
今ではオータムスカイズには無くてはならない攻撃手段の1つとなっている(なお成功率はあまり高くない)。
そんな彼女は日ごろから定期的にマヨヒガへと帰り定期的に報告などをしていたが、この日は特別に呼び出されての帰宅であった。

橙「はい! 私も久しぶりに藍様と同じチームになれてうれしかったです!」
藍「うんうん、パルパルズとオータムスカイズ……2つのチームに分かれて橙と戦うのも悪くは無かったけど、
  2人一緒だとコンビプレイも出来るからね」

対する主人である藍もまた、その身を所属するマヨヒガ連合から移し、
オータムスカイズと同じく弱小から成り上がっていったチーム――ネオ妬ましパルパルズへと移籍をしていた。
外来人であるシェスターにJrユース大会では魔界として参加をしたアリス。
そして、キャプテンであるパルスィに、藍。
4人で形成される中盤は幻想郷でもトップクラスの支配率を誇り、
FWの決定力不足や守備陣のボールカット能力のお粗末さを補って余りある程のもであった。

主人と式という間柄ながら、幾度となく戦いを繰り広げてきたのは、
偏に彼女たちが互いのチームに対して愛着を持っていたからであろう。

164 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:13:26 ID:???
橙「ところで今日は何用ですかにゃ? 私にお話があるって聞きましたけど」
藍「うん……それについては、紫様から話してもらおう。 紫様……」
紫「はいはい」

藍の豊満なボディにいつまでも顔を埋めていた橙であったが、
そういえば果たして自分への用件とはなんだったのだろうか……と疑問を口にする。
すると一旦藍は非常に名残惜しそうにしながらも橙を離し、紫へと視線を向けた。

紫は相変わらず仲のいい2人に苦笑をしながらも、一歩、歩み出ると橙の頭に手をやりながら言う。

紫「橙……全日本で知らない選手たちと一緒に戦ったのは、楽しかった?」
橙「はい! 最初は凄く緊張しましたけど……でも、藍様もいましたし、それにみんないい人!……ばかりじゃなかったですけど、
  でも仲良くなれた人もいました!」
紫「そう、それはよかったわ」

国際Jrユース大会が開かれる折、各国へと派遣された選手たち。
橙はその一員として、藍達と共に全日本へと渡った。
新天地で、見知らぬ者ばかりのチームの中に溶け込めるかと当初は不安だった橙だが、
そこは元々人懐っこく、好奇心旺盛な橙である。
性格も子供っぽい所もありながら天真爛漫となれば、個性派揃いである全日本の中でも孤立するという事は無く、
練習を見た立花兄弟を中心にそれなりには交友を深めた仲の選手も出来ていた。

橙「でもどうしてそんな事を聞くんですか……?」
紫「まだ詳しくは言えないのだけど……うぅん、そうね……。 橙、あなた、今よりもっと強くなりたいかしら?」
橙「はい! 勿論ですっ!!」

165 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:14:29 ID:???
質問に対して質問で返すのはルール違反であるが、勿論賢い橙は主人の主人である紫に対して指摘はしない。
素直に質問にしっかりと答える。
それに紫は一つ頷くと……更に1つ問いかけた。

紫「なら……強くなる為に、今のチームから離れるのはどう思う?」
橙「にゃっ!?」

その問いかけに対し、橙は思わず飛び上がらん程に驚いた。
今のチーム――即ち、オータムスカイズから離脱をする。
彼女としては、はっきり言って考えた事の無い事柄である。

橙「離れ……え、えっと……それは、マヨヒガに帰ってこいって事、ですかにゃ?」
藍「ああいや、違うんだよ橙。 ……先ほど紫様が仰られたように、まだ詳しくは言えない。
  ただ……そうだね、言ってしまえば、橙に武者修行をしてもらおうか、と思っているんだ」
橙「む、武者修行……ですかにゃ?」

武者と聞いて橙の頭の中で、どこぞのPK絶対外すウーマンな半霊シューターがちらつく。
あまりいいイメージが沸かなかった。

藍「サッカーの修行をね。 ……橙は今のままでも十分トップクラスの攻撃能力を持ってる。
  ただ、もっと上手くなれる筈だ」
紫「って、藍がどうしても勧めるからね。 私としては本来なら藍に行ってほしかったんだけど……」
橙「あの……? 藍様が行く予定だったっていうのは?」
藍「うん……まあ、色々あってね。 私か、橙か。 どちらかしか行けないんだ。
  だが、私は橙に行ってほしいと思って紫様に推薦したんだよ。
  さっきも言ったように、橙はもっともっと上手くなれるからね」
橙「(ら、藍様に期待されてるんだにゃ……!)」

その言葉は、橙にとってこれ以上ない歓びであった。
事実として、橙はその攻撃能力"だけ"を見れば、既に藍に伯仲―― 一部は凌駕すらしてしまっている。
出来る事なら、その気持ちには応えたい。が……。

166 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:16:42 ID:???
橙「あ、あの! それって期間はどれくらいになるんですかにゃ?
  この前の大会の時みたいに、1ヵ月か2か月くらい……」
紫「いえ、今度はみっちり行ってもらうつもり……そうね、おおよそ、3年程度を予定しているわ」
橙「さっ、3年ですかにゃああ!?」

長い。
先ほどまでの紫と藍の口ぶりからして、恐らくはまるで知らないような新天地に飛ばされる事になるのだろう。
そしてそこには藍達がついてくる事もなく、橙は1人、3年もの月日を過ごさなければならない。
無論、行ってみればその場その場で友人なりを作れる事もあるのかもしれないが、
それでも藍達と離れるという事に寂しさを感じない筈もない。

藍の期待には応えたい、強くなれるなら行ってみたい、だが、離れる事は寂しいし不安がある。
ぐるぐると橙の頭の中で様々な思い、感情が鬩ぎ合い、思わず橙は頭を抱えるのだが……。

藍「……すぐに答えを出す必要は無いよ。 突然こんな話をしたんだ、混乱するのも無理が無い」
紫「ゆっくり考えなさい。 ……私としては、受けて欲しいのだけどねこの話」
藍「勿論断っても構わない。 勝手な話なんだからね。
  しっかりと自分で考えて……自分が納得出来る答えを私達に教えておくれ」
橙「は、はい……」

突然の言葉に混乱するのも無理は無いと、藍と紫はすぐに答えを求めなかった。
それでもやはり目をしぱしぱしながら、橙は言葉少なにオータムスカイズの住居へと戻っていき……。
紫と藍はそれを見送りながら、言葉を交わす。

紫「……受けるかしら、橙?」
藍「どうでしょう。 ……或いは、あの事が無ければオータムスカイズから離れる事も厭わなかったかもしれませんが」

言いながら、藍は目を細める。
反町一樹が東風谷早苗と交際をしている――というニュースは、当然ながらここにも届いていた。
勿論、彼女たちが反町が移籍を決断した事を知っていた訳ではないが……。
交際をしている、となった以上はそういう話が出るのは時間の問題だろうという予想もしていた。

167 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:17:57 ID:???
紫「……大きく変わるわね」
藍「ええ。 そして、その余波を一番大きく受けるのがオータムスカイズです。
  ……橙としては、苦しいかもしれません」
紫「さっきも言ったけれど、離れるなら離れた方が上策よ。 今のあそこは、沈むのがわかりきっている泥船状態。 未来は無い、と言える」
藍「かもしれません。 それは、橙も当然わかっているでしょう」

反町が移籍をする。そうなれば当然、オータムスカイズの戦力は大幅なダウンだ。
幻想郷どころか世界を見渡してもまず間違いなくトップであろうストライカーの離脱。
何かと内紛が起こっていたチーム事情を、綱渡りながらも纏めてきた手腕も含め。
反町の移籍は、オータムスカイズがこれまで築き上げてきた地位を崩壊させる一手となるだろう。
紫の言うように、未来の無い泥船という表現もわからないでもない。

藍「ただ……私も橙も、このままオータムスカイズが終わるとは思いたくない」
紫「……そう」

オータムスカイズに愛着を持っている橙だけではない。
ネオ妬ましパルパルズに所属をする事で、パルスィたちと共に打倒オータムスカイズを目指してきた藍もまた、
このまま秋の空が終焉に向かうとは思いたくは無かった。
だからこそ、強く橙にオータムスカイズを離れる事を勧める事が出来ない。

藍「…………いずれにせよ、橙の意志を私は大事にしたいですね」
紫「まあ、無理強いは出来ないからね。 ……ところで、もしも橙が行かない場合、あなたも……」
藍「私もネオ妬ましパルパルズを離れるつもりはありませんよ。 紫様には、ご迷惑をおかけしますが」
紫「そ。 ……ま、わかりきっていた事ね」

今までの事ならば、主命には何があっても従っていただろう藍に橙。
しかしながら彼女たちは、その言葉に迷い――或いは、キッパリと断りを見せた。
小さく溜息を吐きながら紫は……それでも、ハッキリと見えた式たちの変化に対して、薄く微笑みを浮かべるのだった。

紫「(とはいえ……どちらも行かない、となった場合困るのも事実。 どうしたものかしらね……)」

………

168 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:19:31 ID:???
橙「(うぅ……どうすればいいですかにゃ〜!)」

などという事がありつつ、場面は再び話し合いの場に戻る。
相変わらず、橙は頭を抱えて項垂れていた。
彼女としても、ある意味ではメディスンと同じ――反町についていくという選択肢ではなく、それ以外の事で悩んでいた。
オータムスカイズを離れ、藍の期待に応える為にも武者修行へと行くのか。
それともこのままオータムスカイズに在籍し続けるのか。

橙はその小さな頭を捻り、懸命に考える。
敬愛する藍からの信頼、期待に精一杯応えたい。
今よりも更にレベルアップをして、八雲一家として恥じる事の無い実力を身に着けたいという思い。
その気持ちは、橙の中に確かにあった。

橙「(でもでも、私が今離れたら……どうなっちゃうんですか……)」

チルノたちDF陣が抜けた事について、橙が残った所で解決できる事は何ら無い。
何故なら彼女の守備はからっきしであり、名無しの妖精とも大差無いレベルなのだから。
だが問題はこのチームの攻撃面である。

橙「(今日の朝に聞いた反町さんの移籍……それに、風見幽香もいない)」

爆発的なシュート力を持つストライカーと、幻想郷有数のMFの離脱。
チルノ、レティ、大妖精という守備の柱を失う以上に、攻撃面での低下も著しい。
唯一、静葉が引き留めてくれたお蔭でリグルの流出が防がれたのはオータムスカイズにとって朗報であったが、
それでも手数が明らかに足りない……と、橙は感じている。

橙「(なんだかJrユース大会でも凄く活躍してたし、実際それくらいリグルは強くなってるけど……。
   でもでも、リグル1人じゃ無理。 他に得点力がいる選手が殆どいないにゃ……)」

169 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:21:06 ID:???
ドリブル、パス、シュートと全てにおいて万能であり、
なおかつその必殺シュートは幻想郷においても上位に入る程のリグル。
反町がいなくなった後、このチームで最も総合力が高い選手は彼女になるだろう。
静葉が引き留めの際に使った『オータムスカイズのエース』という言葉も、決して誇張やおべっかではない。

ただ、だからといって彼女がいるだけで攻撃全てが上手くいくかと言われれば話は別である。

そもそも彼女自身、あまり周囲の指示を聞かず、おつむが大変残念である。
PA内を固めているのにドリブルで突っ込む、作戦をあまり理解しない、挑発には乗りやすく頭に血が上りやすい。
と、実力以外の面での大きな問題も抱える。

更に、スタミナの方も決して多い方ではない。
……スタミナについてはそもそもオータムスカイズの選手陣、殆どの者たちが足りていないという話もあるが、
その点を考えても手数というものがまるで足りない。

何よりも得点力を持つ選手がリグル以外にほぼいないというのが問題点である。
静葉もミドルシュートを持つが、その威力は決して高いものではない。
恐らく、永遠亭のお姫様でも取れるくらいだろうと橙は認識している。
かつてはFW・MF・DFとあらゆるポジションをこなし、
FWとして出場をした際には恵まれたスタミナからシュートを乱打していた妹紅も、
しかし、オータムスカイズに加入をしてからはほぼDFとしての起用が主である。
シュートに関しては、大きく錆びついてしまっている。

橙「(リグルにマークつけられたらそれで終わる話だにゃ……でも……)」

もしも自分が残留をすれば、違う――と、橙は考える。

170 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:22:40 ID:???
守備能力についてはなんども言っているように、あまりにもお粗末な橙。
しかしながらドリブル、パス、シュートと攻撃面に関してはかなり高いレベルで纏まっていた。
特にドリブルに関しては――流石に霊夢やパルスィといった超がつく程の一流には一歩及ばないかもしれないが、
それでも幻想郷上位には入れるだろうという自信もあったし、
サイドアタッカーとして重要な正確なパスも磨いてある。

橙「(シュートは……流石にリグルには負けちゃうけど)」

それは単純にリグルのライトニングリグルキックが規格外の高火力シュートなだけである。
純粋なキック力だけで見れば橙はリグルと伯仲していたし、
FWとして起用をするのならば最低限と言えるだけのシュート力は身に着けていた。

橙「(私が残れば、静葉さんだってやりやすくなる筈ですにゃ……)」

恐らく――反町が離脱をした後、キャプテンマークをつける事になるのは静葉になるだろう、と橙は考えていた。
実際、今までも副キャプテン的な役割に回る事が多く、
一同を引っ張るような力は無いまでも、纏め、一歩引いた所から見守る事の出来る人だと橙は信頼をしていた。
そんな静葉と、同じMFとして切磋琢磨をしてきた橙は、
パサーである彼女がパスを出す先の選択肢が増える事はきっと喜んでくれる筈だとも思う。

橙「(私も、このチームには最初から……本当に最初からいたんだ)」

橙がチームに加入をしたのは、反町達がチームを立ち上げたその翌日。
妖精トリオの後、静葉らの勧誘を受けて入った。言わば、初期メンバーの一員である。

橙「(妖精トリオも残るんだろうし……静葉さんや穣子さんも、このチームで頑張ろうって……。
   反町さん達がいなくなっても、戦えるようにって思ってる筈ですにゃ)」

理性はそんな思いだけで反町達が抜ける穴を埋める事は出来ないだろうと感じていた。
だが、感情は違った。共に戦い、切磋琢磨してきたチームメイト――。
橙が幻想郷上位の力(なお守備は壊滅的)を手に入れる事が出来たチームの、崩壊の危機。

171 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:23:46 ID:???
橙「(もっと強くなりたい、藍様の期待に応えたい……でも……でも! 強くなるのに、必ず離れる必要がある訳じゃない。
   私がここで、もっと強くなれれば……何も問題ないんだから!)
  あのっ! わ、私も……私も、チームに残りますにゃ!」
静葉「! そう……ええ、ありがとう。 歓迎するわ」
橙「(藍様も紫様も、きっと許してくれる……今更、みんなを裏切れない)」

熟考の末に橙が下した結論は残留であった。
情に絆された、と言ってもいい。

冷静に考えれば、そもそも八雲一家である橙がここまでオータムスカイズに肩入れする必要は無い。
主命があったのだから、そちらを取る方が余程自然と言えた。
式神――主人の言葉には忠実である存在である事を考えれば、尚更である。

ただ、それでも橙は選んだ。
確固たる意志で、泥船に乗る事を望んだ。

橙「(反町さん達がいなくなっても、また強くなっていけばいいんだ)」

弱者が決して強者になれないという訳ではない。
それは主人が在籍をするチームの橋姫が、見事に体現している。

橙「(パルパルズはオータムスカイズの打倒が目標って言ってた……私達は、そうやって強くなってきたパルパルズを目指して、
   これから頑張るんだ)」

同じドリブル巧者として、(性格までは勘弁だが)橋姫の飽くなき向上心を目指しつつ橙はそう誓った。

橙「(その為にも、明日からドリブル練習だにゃ!)」

因みに、守備を鍛えるつもりは全くなかった。


172 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:25:21 ID:???
静葉「(よかった……これで、少なくとも、チームの形は出来る。
    チルノとレティ、大ちゃんの離脱はあまりにも大きすぎるけど……)」

それでも、まだこれならば戦える――と、静葉は考えていた。
攻撃面ではリグルと橙を主体とし、守備面ではにとりに妖精1、妹紅、穣子とそれぞれ長所が別れるDF陣を巧みに使える。
中盤に関しては……複雑な話だが、風見幽香が来る以前に戻るだけである。
自身が彼女には到底及ばない能力しか持っていない事は静葉自身理解もしていたが、
チームを纏める為に精一杯の努力はする所存であった。

静葉「(ただ、中盤は底にヒューイを置ける。 彼女がいてくれれば、大ちゃんの穴を埋める事が出来る)」

チルノたちが離脱した事で、ミドルシューターに対して取れる対策が、
ほぼにとりのブロック頼みになってしまう。
よって、これからのオータムスカイズの守備での方針は――打たせる前に止める、が第一となってくる。
その際に誰よりも頼りになるのが、ヒューイである。

リグル同様――否、元が名無しの妖精である事を考えれば、成長率だけで言えばオータムスカイズ1のヒューイ。
既にその実力は……少なくともタックルに関しては、まず間違いなく世界でもトップレベル。
ボランチとして最低限の攻撃能力も持ち、彼女こそが守備と攻撃、両方における要となるだろうと静葉は考えていた。

静葉「これからもよろしくね、ヒューイ」
ヒューイ「ほえ?」

何の気なしに、静葉はそう声をかけた。
声をかけてから思い出す――そういえば、彼女はこの話し合いで一言もしゃべっていなかった、と。

声をかけられたヒューイは、「お夜食」として穣子が用意したお芋を頬張りつつ、首を傾げる。

173 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:27:17 ID:???
ヒューイ「よろしくって何が?」
静葉「?」

最初、言われてる意味が静葉はわからなかった。
よろしくとは言葉通り、これからも同じチームの一員としてよろしく、という意味である。
如何におつむが弱い妖精といえど、それくらいは理解出来る。
出来る筈である――だからこそ、静葉は一瞬虚を突かれた。

妖精1「何が?じゃないわよ……これからも同じチームとして、って事でしょ」
ヒューイ「?」

思わず二の句が継げなかった静葉に代わり、妖精1がフォローをする。
それでも、ヒューイはよくわかってない様子でやはり首を傾げ……口の中で咀嚼していたお芋をごっくんすると、
その大きく丸い瞳をぱちくりさせながら、ただ一言、言った。


ヒューイ「……私、あの人間についてくよ?」


静葉「……は?」

その一言に、静葉は思わず間の抜けた声を出し。

妖精1「え?」
サンタナ「え、えええええええええっ!?」

残る妖精2人は、片方は呆気にとられたように――そして、もう片方は驚きのあまり絶叫をするのだった。

174 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:28:59 ID:???
驚愕をしていたのは、3人だけではない。
ほぼオータムスカイズ所属の選手たち、全てが驚いていた。
彼女たちの認識としては、ヒューイは反町と一応の師弟関係こそ結んでいるものの、
その絆については妖精1とにとりのように固いものでは無い。
むしろ縁深く、親しいのは妖精トリオ同士であった。

だからこそ、妖精1とサンタナが残留を決めた際、ヒューイも残るものと決めていた。決めつけていた。
だが、静葉が感じたように、ここまで彼女はこの話し合いの場で一言も喋っていなかった。
己の意志を示してはいなかった。
故に、ここで移籍を表明するというのも――反町についていく、というのも……可能性としては残っていただろう。

静葉「な……何故?」

頭を鈍器で殴られたような、頭痛を覚えながらようやくの想いで静葉は言葉を紡いだ。
いや、妖精は気まぐれなのだ。計算通りに行かない事も、多々ある。
反町についていく――と言っても、それが一時的な思いなのだとしたら、或いは、引き留める事も出来るかもしれない。
サンタナと妖精1が残留を表明しているのだから、少し突いてやれば天秤はこちらに傾く。
そう考えて、静葉はヒューイの言葉を待った。

ただ、結論から言えば静葉のその考えは見当違いのものだった。

ヒューイ「何故って……だってさ」

それは感情ではなく。

ヒューイ「人間の所にいた方が、強くなれるしレギュラーになれるもん」
静葉「…………は」

実利だけを求めての移籍。

175 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:30:21 ID:???
今のヒューイなら、どこに行こうがレギュラーを取れるだけの実力がある。
反町がいたから強くなったという訳ではない、
無論、反町がヒューイの練習を見てやったという事も多々あったが、ヒューイ自身の努力の結果もあっての事だ。
ただ、少なくともヒューイはそう感じてしまっている。

かつてサンタナがチルノを忌み嫌い、そして練習で勝利を収め、
チルノに勝った=自分こそが最強であると思いこんだように。

妖精1が代表レベルの闘いで相応の活躍が出来る程に成長をしても、
しかし、未だに過去のトラウマから己の力量に自信を持てていないように。

妖精という種族は根本的に短絡的であり、そして思い込みが激しく、意固地なのだ。

ヒューイの場合もまた、そうだった。
彼女は反町がいたから自分は強くなれた、反町がいたからレギュラーが取れたと思い込んでいる。
それが事実かどうかはさておき、少なくとも、彼女にとっては真実だった。
そんな彼女が、どうして反町から離れられるだろう。
例え妖精1やサンタナと別れる事になったとしても、彼女は反町が移籍をするという話を聞いた時から自分もついていくと決めていた。

静葉「あ、あのね、ヒューイ……落ち着いて聞いて」
ヒューイ「それにさ」

それでもなんとか説得しようとする静葉の言葉を無視して、ヒューイは続ける。
大人びていて、臆病で、劣等感に塗れ、やや斜に構えているが本心は素直な妖精1。
人一倍元気で、やかましく、時に傲慢で暴走する事も多いサンタナ。

彼女らに比べるとヒューイは子供っぽく、いつも腹を空かせ、しかしながら他の妖精たちに比べると人一倍無邪気で――。

ヒューイ「弱いチームにずっといる理由なんて、無いでしょ?」
静葉「…………」

――人一倍、残酷であった。

176 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:31:58 ID:???
こうして、話し合いは終わった。
反町と幽香、2人の移籍と失踪を発端とした、4人の離脱。
名門と呼ばれていたオータムスカイズは、計6人――あまりにも大きすぎる戦力を、失った。

妖精1「ヒューイ……」
サンタナ「なんでよ……あっちにはチルノいるじゃん。 なんでよ」

眠くなったと言って我先に部屋へと戻ったヒューイに、妖精1達はかける言葉が見つからなかった。
妖精1とサンタナは何故ついてこないのか、と逆に首を傾げ問いかけてきたヒューイ。
予想だにしない離別を前にして、そもそも自分たちの精神を整える方が彼女たちには先決であった。

リグル「ハッハァー! 大丈夫大丈夫、6人いなくなってもエースが残ってる限りはオータムスカイズは安泰だよ!」
リリーW「……実際リグルに頼るしかないですよー、このチーム」
リリーB「ホワイト、明日から私はGKの練習する……。 ……多分、今更FWとして鍛えてもついてけない」
メディスン「(ホワイトもMFなら使えるかっていうとそうでもないけど……パスだけなら、それなりには出来るしね)」

能天気な者もいる。
ある意味彼女が一番幸せ者であり……そんな彼女に頼るしかない現状に、不安を覚える者たちもいた。

にとり「(妖精1……辛いだろうけど、幻想郷サッカーじゃ移籍や離脱は日常茶飯事だ。
     ……敵として戦う時、お前の実力をヒューイに見せてやるんだよ)」
橙「……反町さん達がこの家を出て行くのって、いつになるんですかにゃ?
  (移籍が決まった以上は、早めに出て行って貰った方がいいんじゃ……このままだと、絶対歪みが出来るにゃ)」
妹紅「具体的にはわからないけど、まあ、近い内になるんじゃないかな。 ……あ、そうだ穣子!
   出て行く日には、豪華なお料理作ってよ! 盛大に、送り出そう! ね!!」
穣子「もっちろん、そのつもりよ! (私があいつに料理作ってあげれるのも、もう少しだけだもんね)」

身内を心配する者、チームを考える者、出て行く者を想う者もいた。
確固たる信念で残留を決めた彼女たちはそれなりに表情は明るかったが、それでもいつもに比べればぎこちなかった。

177 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:33:02 ID:???
静葉「(弱いチーム……ね)」

そして、率いる者は――残酷にも告げられた言葉を受け止めていた。

事実、現状のこのチームは弱いだろう。チームとしての格どころの話ではなく、純粋な力として。
幻想郷トップクラスチームである紅魔スカーレットムーンズや、博霊神社連合は当然として、
そこから格が落ちるであろう、永遠亭ルナティックス、地霊アンダーグラウンド、ネオ妬ましパルパルズにも……。
かつては勝利を収めたそれらチームにも、今ならば負けてしまうかもしれない。

いや、高い確率で負けるだろう。それ程までに戦力の流出が痛い。

静葉「(でも、やるしかない……やるしかないのよ)」

信仰を集める為に闘う。チームに愛着があるから闘う。倒したい相手がいるから闘う。
己の存在を証明する為に闘う。ただなんとなく闘う者もいる。
それぞれ思いも、その深さも千差万別なのは相変わらずだ。
ただ、これからはそんな一同を――自分がまとめなければならない。

静葉「(私の為にも、穣子の為にも――そして、このオータムスカイズの為にも)」

静葉はこの場にいる10名をぐるりと見回してから……大きく手を叩いて、注目を集める。
一体何事かと一同が勘ぐる中、静葉は些か緊張しながらも……それでも、一同の視線を受けながらその口を開いた。

静葉「みんな、よく聞いて。 それじゃあこれから――明日の予定について、決めるわ!」

何度となく繰り返されてきた、明日の予定を決める夜の恒例行事。
彼女の手には、既に一同から提出をされていた一週間の予定表が記されてある。
後はこれをもとに、練習と自由行動を計画的に織り交ぜていくだけ。

静葉「まずは午前だけど……」

オータムスカイズ新キャプテン――キャプテン静葉の初仕事であった。

178 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:35:00 ID:???
………
……


ちなみに。

うどんげ「いっ、いいのかなぁ……勝手に何も言わないで出てきて」
てゐ「ええんやええんや! どーせ私達がオータムスカイズに加入してた事なんてみんな覚えてへんてウサ!」

夜の帳が落ちた中、竹林を颯爽と走っていたのはうどんげとてゐであった。
彼女たちの肩には私物が入った風呂敷包み……さながら夜逃げ同然の格好をしている理由といえば、
彼女たち自身が行っている通り、オータムスカイズを何も言わずに離脱してきたからに他ならない。
誰も覚えていないかもしれないが、一応、彼女たちもオータムスカイズ所属である。

うどんげ「うぅっ、最後にお別れくらい言いたかったなぁ。 だってみんな、仲間だもんげ!!」
てゐ「そんな事言ってる場合じゃないでしょ! 師匠からとっとと戻って来いって言われてんじゃん!
   大体、どーせ私達があそこに入ったのだって、博霊連合じゃアカンわと思って入っただけだし……」
うどんげ「でも結局オータムスカイズも負けちゃったけどね」
てゐ「うっさいウサ!」

ゲシィ!

うどんげ「痛い!」

179 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:36:53 ID:???
そもそも永遠亭所属の彼女たちは、あまりオータムスカイズ所属というイメージが無い。
その上に在籍期間も短かった為、幸か不幸か話し合いの場にいなくても誰も気づかなかった。
……或いは、気づいていても無視した者もいたかもしれない。
いたらいたで戦力低下している中でありがたい話だが、さりとて無理に引き留める程の実力者ではないのだから仕方ない事だった。

そして、彼女たちは反町の移籍を耳にする前から永遠亭に帰ってくるようにと師匠である永琳と主人の輝夜に告げられていた。
このどさくさに紛れてそのまま帰っちまおう、という魂胆である。

うどんげ「でも師匠もなんでこんな急に戻って来いって言ったんだろ。
     私、結構オータムスカイズの事気に入ってたなんだけどなぁ……何も言わなくてもご飯が出てくるし」
てゐ「知らんウサ。 ま、重要な事なんじゃないの?」

割と未練がましいうどんげに対して、てゐの方はさっぱりしている。
ちらちらと来た方角を見ているうどんげは、誰も聞いてはいないのに口を開く。

うどんげ「あそこにいたら私もストライカーとして才能が開花……してたような!」
てゐ「(またうどんちゃんの妄想がはじまったウサ……)」
うどんげ「妖精たちの合体シュートあったでしょ! ああいう感じで、私もてゐと合体シュートしたり!
     真実の友情に目覚めたり!!」
てゐ「はいはい、また聞いてあげるからとっととかえろ。 ね?」
うどんげ「あわわ、待ってよー」

呆れを通り越して悲しさすら覚えてきたてゐは、強引に話を打ち切って駆け出した。
慌てて、うどんげもその後を追う。

文字通り、脱兎の如く秋空から脱出する2名であった。
なお、あまり戦力に影響はないもよう。

180 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/05(月) 22:39:19 ID:???
という事で一旦ここまで。
多分新生オータムスカイズのフォーメーションはこうなると思います。

−−J−− Jリグル
−−−−H H橙
−−−−−
G−I−F Gサンタナ I静葉 FリリーW
−−E−− Eメディスン
D−B−C D穣子 B妖精1 C妹紅
−−A−− Aにとり
−−@−− @リリーB

……うーん。

ひとまず、これで幻想のポイズン、その後の後処理のようなものはおしまいです。ここまでで序章くらいです。
次からは幻想郷の他の勢力、ならびに表題の人も出てくると思います。それでは。

181 :森崎名無しさん:2018/02/05(月) 22:47:34 ID:???
乙でした
分かってた事だけどヒューイの選択が辛すぎるな
初期は反町の標榜する和を尊重しててくれたのに……まあその反町が自分からその和を捨てたのが原因だけど

182 :森崎名無しさん:2018/02/05(月) 23:23:04 ID:???
乙でしたー
今回もボリュームあって中身も濃くて読んでて楽しかったです!
キャプテン静葉は難易度高そうだけどやってみたいな

183 :森崎名無しさん:2018/02/06(火) 03:05:42 ID:???
乙でした
全幻想郷の選出メンバーが7人+派遣選手が1人居る名門チームという見方もあるのかな
橙も残ってくれたし、それなりにコマは揃ってると思うのよね
ただ、ラスボスの守矢がヒューイ加入でさらに強化されてどうしたものやら

うどんちゃん完全に忘れてた(小声)

184 :森崎名無しさん:2018/02/06(火) 20:38:30 ID:???
雑魚ではないけど強豪ではない絶妙なバランスのうどんげすき
忘れてたけどw

185 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/06(火) 23:47:36 ID:???
>>181
乙ありです
ここら辺はそれぞれの中で何を最優先事項とするかという所ですからねぇ
>>182
乙ありです
本当はもうちょっと短く纏めたいのですが、ボリュームがでてしまいましたね
キャプテン静葉は……もしやるとすると、相当な高難易度になると思います
チーム自体はある程度纏まってるので変に不穏な事になる事は無いと思いますが、何せ戦力が……
>>183
乙ありです
選出メンバー、とはいえ……能力値的には石崎や高杉や修哲トリオクラスばかりのようなものですからね
辛うじてリグルが早田あたりより若干上という程度です

うどんちゃんは犠牲になったのだ……シリアスが続いた中での一服のギャグパートの、その犠牲にな
>>184
うどんチャンスが多分その内回ってくると思うのでご期待下さい!(活躍するとは言ってない)


本日も更新はお休みします。それでは。

186 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 01:33:03 ID:???
本日も更新はお休みします。
明日には投下できると思います。

187 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:38:47 ID:???
Act.5 佐野満の憂鬱

オータムスカイズの分裂から、再び数日が経った。
幻想郷Jrユース大会が終わってから数えればこの頃で2週間程。
既にこの頃になると各勢力、各サッカーチームも普段通りの日常へと戻っていた。

幻想郷では新参に入る勢力である命蓮寺。
ここもまた、日常へと戻っていた。
朝のお勤めを果たし、昼食時になった為にみんな揃ってのお昼ご飯タイム。
本日のメニューは金曜日である為、キャプテン・ムラサ特製カレーである。

ナズーリン「うーむ……しかし、これは驚いた。 あの守矢の風祝とオータムスカイズのキャプテン……。
      ああいや、元キャプテンとが恋仲だったとは」

そんな中、小食であるが故に一足先に昼食を取り終えていたナズーリンは、
今朝方投函をされていた新聞を熱心に読んでいた。
一面に載っているのは、先ほど口にしたように守矢神社の風祝――東風谷早苗と、外来人反町一樹の熱愛報道。
幻想郷Jrユースに参加をした選手が誰一人としていない命蓮寺である為、実際に見聞きした訳ではないが、
その事自体は風の噂で聞いていた。

少女たちが中心である幻想郷。噂の流れる速度は早い。色恋沙汰となれば尚更である。

星「でもいい事ですよね。 祝福されるべき夫婦が増える事は、大変喜ばしい事です。
  あ、ムラサ、おかわり」
ムラサ「いやー、まだ夫婦になった訳じゃないんじゃない? あと星はどんだけ食うのよ……いつもの事とはいえ」

本日4皿目となるカレーを要求する星と、呆れながらも皿を受け取りおかわりをよそうムラサ。

188 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:40:08 ID:???
ルーミア「私もおかわり〜。 でも、いつもの事って言えば〜、カレーなのにお肉入ってないんだね」
小町「いいんじゃないかい? これはこれで美味いよ」
ルーミア「……ところで死神さんは今日平日なのにお仕事しなくていいのか〜?」
小町「なんのなんの、今日はプレミアムフライデーで花金だから問題ないのさ」
ルーミア「そーなのかー」

命蓮寺のチームに所属をするルーミアと小町の両名もいた。
割とフットワークが軽い彼女たちであるが、Jrユース大会が終わっても離脱する事はなく、チームに在籍を続けている。
それだけこの命蓮寺というチームの居心地が良かったのかもしれない。

ぬえ「しかし、こんなもん一面にするってどうなのかぬぇ……。 週刊誌じゃないんだし」
ナズーリン「まあ似たようなものだろう、天狗の新聞も。
      ……それに、サッカー関連でも大きな関連記事があるからね」

つまらなそうに新聞を横から見ていたぬえが茶々を入れるが、このニュースは一面で取り上げられる程大きなものである。
ナズーリンの言う通り、反町一樹と東風谷早苗の交際が発覚、正式に公表をしたのと同時、
守矢フルーツズは反町をはじめ、元オータムスカイズ所属である選手数名を加入させた。
Jrユース大会で猛威を振るったストライカーの移籍となれば、それはやはりビッグニュースだ。

小町「しかしまぁ、純そうな顔してやる事やってんだねぇ。
   どうだい椛、あんたがいた頃からこの子と早苗ってそんな雰囲気あったりしたのかい?」
椛「……どうッスかねぇ」

189 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:41:27 ID:???
小町に話を振られた椛は、苦笑をしながらそう返答するのが精いっぱいだった。
元々、オータムスカイズに所属をしていたとはいえ、椛と反町の仲は決して深いものではない。
少なくとも彼女が見てきた内では逆はあっても、反町が早苗に好意を抱いているとは思えなかったのだが……断言はできなかった。

椛「(っていうか、そもそもそういう色恋沙汰に興味があるとは思わなかったッスよ……)」

むしろサッカーにしか興味が無いんじゃないか、と心の片隅で思っていたのは内緒である。

ムラサ「はいおかわりお待たせっと。 で、聖はまだ帰ってこないのかしらね」
星「お昼までには戻ってくるとは言ってましたが……」

白蓮「ただいま戻りました〜」

ナズーリン「噂をすればなんとやらだね」

190 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:42:50 ID:???
………
……


ナズーリン「お疲れさま、話し合いは上手くいったかい?」
白蓮「ええ。 話し合いと言っても、難しいものではありませんでしたので……ああ、いい匂いですね」
ムラサ「あっ、お昼ご飯まだ? すぐに用意するわ」
白蓮「ええ、ありがとう」

一同が昼食を取っていた広間に、この命蓮寺の主人――住職である聖白蓮が帰ってきた。
ここまで星たちが言っているように、彼女は朝方から、とある会合へと出席していたのである。
朝方から食事を取っていなかった白蓮は広間に香る強烈な匂いに鼻を鳴らし、
早速白蓮へとムラサがお手製カレーを配膳すると、白蓮は瞑目し合掌をしてから匙を手に取った。

星「……聖、話し合いの内容とはなんだったのですか?」
白蓮「はい?」

早速匙で白米とルーを小さく混ぜ合わせ、パクり。
余程お腹が空いていたのか、黙々と食べ勧める白蓮に対し、星もまた匙を動かしたまま問いかける。
ちなみに星は既に7皿目に突入しようとしていた。

小町「八雲紫主催の会合なんだ。 内容が気になるのは皆同じだよ」
ナズーリン「ああ……しかも、集められたのは各勢力の代表なんだからね」

191 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:44:43 ID:???
この日、白蓮が参加をした会合にはナズーリンの言うように各勢力の代表が集まっていた。
即ち、紅魔館のレミリア=スカーレット。白玉楼の西行寺幽々子。永遠亭の蓬莱山輝夜。
守矢神社の八坂神奈子。地霊殿の古明地さとり。更には地獄から四季映姫。
……そして、命蓮寺の聖白蓮に、主催である八雲紫である。

幻想郷の重鎮達を集めた場で、一体何が話し合われていたのか。
一同が気になるのも自然な話であった。

ルーミア「おかわり〜」
星「すみません、こちらもおかわりを」

ちなみにまるで気にせず食事をするもの、気にしながら食事をするものもいた。

白蓮「内容ですか……そうですね。 別に、そんなに恐ろしいような……多分皆が考えているような、物騒な事じゃありませんでしたよ」
ムラサ「そうなの?」
白蓮「ええ。 今回紫さんが私達を集めたのは、サッカーについて……」
ナズーリン「サッカー?」

ナズーリンの言葉に首を縦に振りながら、白蓮は続ける。

192 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:46:00 ID:???
白蓮「各勢力から各々選手を一名ずつ……外界へとサッカー留学させないか、という提案だったのです」
椛「サッカー留学……ッスか!?」

そして放たれた言葉は、一同が驚愕するに値する、衝撃的なものだった。
元々、先のJrユース大会に幻想郷と魔界が参加をし、
更には各国に選手たちが派遣された事からも――外界と幻想郷との間に、大きな隔たりというものは無くなってきている。
とはいえ、それでもやはり幻想郷と外界とは違う世界。

反町一樹が当初、外の世界に戻るか幻想郷に残るか迷ったように。
本来ならばそう簡単に行ったり来たりができるような関係性ではないのだ。
よりにもよって幻想郷の秩序というものを何よりも大切にしている八雲紫が提案するようなものとは思えない。

小町「……胡散臭いねぇ。 なんだってそんな事を提案したんだい?」
白蓮「先のJrユース大会で、外の世界と交流を深めた事で幻想郷の人妖にもいい影響があったからと聞いてます。
   それに、幻想郷サッカーというものは閉鎖的なもの。
   外界に選手を留学させ、見聞を広め吸収させる事によって新たなカンフル剤としたいと言っていました」
ナズーリン「(胡散臭い……)」
ムラサ「(胡散臭い……)」
星「なるほど! 確かに、幻想郷サッカーは頻繁に移籍があるといえど、主だった選手というのは変わりありませんからね。
  それに我々は前回魔界Jrユースとしての参加でしたから、外界の方々とはあまり大きく接触してません。
  新たに交流が出来るというのは、とてもいい事かもしれませんね」
ルーミア「そーなのかー」

一応理由を聞いてみるものの、その内容はやはり完全に信用出来る――とは言い難いものだった。
……信頼しきっている者も一部にはいたが。

193 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:47:44 ID:???
ムラサ「っていうか、外界にサッカー留学って言っても……幻想郷の方が強いんじゃないの?」
白蓮「そうでもないようですよ。 実際、派遣選手が各国へと渡ってからの1か月間で、
   外の世界の選手たちは大きく成長を遂げていましたし、ぽてんしゃるというものがあるらしいのです。
   既に一定の実力となった以上、ここからはより一層外の世界の選手たちも強くなるだろうというのが紫さんの見解でした」
椛「…………で、それって受けるんスか?」
白蓮「ええ。 各勢力で1名ずつ、という条件ですが賛成多数で可決されました。
   我が命蓮寺からも、誰かを外界へと送らなければなりません」
星「なるほど……それで、期間の程は?」
白蓮「およそ3年間、と聞いています」

3年――という言葉を聞いた途端、一同には衝撃が走った。
精々長くても数か月程度、と思っていた者が多かったのである。
幻想郷から3年もの間離れる……永きを生きてきた者たちばかりとはいえ、それでもその歳月は決して短いものではない。
特に、聖を封印から解放し、ようやく共にいる事が出来た命蓮寺のメンバー達にとっては尚更であった。

とはいえ、白蓮が持ち帰った話である。
ここで誰も行かない――という選択肢も、恐らくはつける事が出来るのだろうが……。

ナズーリン「(うちは他所の勢力と比べても結構な大所帯だからね……さて、断った所でどうなるか)」

幻想郷全土で見ても、命蓮寺はかなりの大所帯を持つ勢力である。
椛や小町、ルーミアという他勢力からの移籍組を除いても6名。
これだけの人数がいて態々八雲紫が集めて発表した提案を断る、となれば……相応の理由というものが必要となるだろう。
まさか聖から離れたくありません、というだけで認めてくれるとも思えない。

小町「先手を取って言わせてもらうけど、あたいはパスだよ。 映姫様も呼ばれてたんだろ?」

そして、まず己の意志を表示したのは小町であった。
そもそも移籍組であり、かつ、明確に他所に上司を持つ彼女が断りを入れるのは道理。
一同もそれを理解していたのか、特に小町を責める事は無かった。

194 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:49:21 ID:???
小町「(とはいっても、映姫様の持つ方の留学権とやらで飛ばされるのもやだな〜……。
    外界にわざわざ行くって事は毎日サッカー漬けになるんだろうし。 嫌いじゃないけど、そこまで必死こくのはねぇ……)」

もっとも、当人は例え映姫の言葉があっても外界へ留学するというのは断るつもりであったが。

ナズーリン「(そして……まあ、ルーミアもまずアウトだな)」
ルーミア「?」

この命蓮寺に身を寄せている間は大人しくしているとはいえ、ルーミアの根本は人食い妖怪である。
命蓮寺を離れ、人々が暮らす外界へと1人放り出すというのは、餓えた獣を放つというのと同義であった。
よって、こちらも話が出る前に、多くの者たちにとって『無し』となる。

星「……では、私が参りましょう! 不肖、この寅丸星! この命蓮寺の為ならば!」
ナズーリン「……いや、流石に本尊であるご主人がいなくなっちゃ駄目だろう」
星「……そういえばそうですね」
椛「(そういえばって……)」

では結局命蓮寺に住まう者たちから出さなければならないのか、とここで一番に名乗りを上げたのは寅丸星である。
本人もやる気は満々であったが、生憎と彼女はこの命蓮寺の本尊であった。
当然ながらそんな立場の者が3年間も命蓮寺を離れる訳にはいかない、と、即座に却下される。
そして、星が残るというのならば、その星の監視役でもあるナズーリンが離れる訳にもいかない。

ムラサ「私も船の修理とか色々あるしなぁ……」

次に口を開いたのはムラサであったが、こちらも問題があって留学には行けないというものだった。
現在彼女たちが住居兼寺として使っている命蓮寺は、元々は彼女が扱う船である。
魔界Jrユースへ合流する際、船へと変形させて使用し、また戻ってきてからは寺として使った為、
この命蓮寺のあちこちは色々と不具合が発生してしまっている。
現在、河童などの力も借りて修復中ではあるが、陣頭指揮を執るムラサがいなくなるというのは問題だ。

195 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:51:11 ID:???
ムラサ「ぬえはどうなの? あんたなら身軽でいいでしょ」
ぬえ「ん……」

そして話を振られたのは、この命蓮寺に居候をしているぬえである。
ムラサの言う通り、彼女はこの命蓮寺において大きな役割というものは持っていない。
住んではいるが、お勤めを手伝う訳でもなく。日がな一日ぶらぶらしている。
一番身軽であり、一番暇を持て余しているのがぬえだった。
ならば留学に行って貰っても問題無いのではないか、というムラサの意見は至極まっとうなものだったが……。

ぬえ「……留学ってさ、要は強くなりに行くって事だぬぇ?」
小町「そりゃそうだろう。 交流だなんだってのも目的としちゃあるだろうが、強くなるのが1番の主目的さ」
ぬえ「(強くなる、強くなるぬぇ……)」

ぬえ本人としても、今以上にサッカーの実力をつけたいとは思っている。
そういった意味では、このサッカー留学というものも悪くは無いと考えていた。
ただ、例えば――この留学をしてぬえがレベルアップをして帰還をした所で、
果たしてそれが命蓮寺を一気に強豪クラスのチームに押し上げるかというと疑問に思う。

ぬえ「(永遠亭は今でもなんとかなるとは思うけど……紅魔館はうちよりも強いだろうし。
    他にも橋姫のチームや地霊殿とかは……うん、厳しそう。 何より守矢にはまず勝てぬぇよね)」

意地が悪くて天邪鬼であるぬえであったが、その根本は仲間への思いやりで溢れていた。
普段の生意気な口の利き方なども、要はその裏返しである。
故に、この時も彼女は全体として――俯瞰的にチームの事を見て、自身に出来る事を探していた。
確かに留学をしてぬえ自身が強くなる事も一つの手である。だが、それは他の者にも出来る。

ぬえ「(……うちの強みって、オータムスカイズみたいに全員を名有りで固められてるって事だぬぇ。
    戦争は数だよって偉い人も言ってたし、うん……)私もやりたい事があるからパスだぬぇ!!」
ムラサ「えー……」

よって、ぬえまでもこの留学の件を断った。

196 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:53:04 ID:???
となれば他に行けそうな人物など、そう多くは残っていない。
この命蓮寺の代表である白蓮を除けば、自然と絞られてくる。
一同は一度、視線を椛へと集中させ――これを受けた椛は、やや俯きながら、苦笑しつつ口を開く。

椛「……申し訳ないッスけど、自分も妖怪の山の仕事がありますから。 3年なんてとてもとても……」
ナズーリン「ああ……まあ、そうなるだろうね」

元々彼女も妖怪の山に所属をしており、手に職を持つ妖怪であった。
哨戒天狗として組織においても下っ端に位置される彼女が、3年間もの長い間……。
仮に守矢神社などからの指令でならばともかく、命蓮寺の為にと仕事を休むという事が出来よう筈もない。

椛「(それに……サッカー留学をしても、ねぇ)」

ただ、それ以上に椛がこの話を受け入れられない理由もあった。
Jrユース大会から既に数日が過ぎていく中、多くの者たちはあの敗戦から立ち直り始めていたが、
椛の中では未だに尾を引いている。

かつてオータムスカイズに在籍をしながら周囲の成長に後れを取り、チームを立ち上げ始めたばかりだった命蓮寺へと移籍。
当初から今まで、得意とするブロックと数少ないサッカー経験者として主にディフェンス陣を引っ張ってきた。
練習などによる成果が芳しくない時もあったが、それでも努力を重ね、
魔界Jrユースではレギュラーとして起用される程には成長をした。

それでも負けた。完膚無きまでに。

椛「(反町さんどころか……魔理沙やリグルのシュートすら止められなかったッス……。
   今更、自分がサッカー留学した所で……この差が埋まるんスかねぇ……)」

強くなっても強くなっても、差は縮まるどころか逆に広がるばかり。
自信を喪失しつつあった彼女が乗り気になれないのも、無理からぬ事だった。

197 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:54:05 ID:???
ならば――と、一同は視線を縁側へと向けた。
ここまで話し合いに一度として参加をしていない……この命蓮寺のキャプテン。

白蓮「佐渡くんは……どうでしょうか?」
佐野「………………」

いつものように名前を間違える白蓮に、もはやツッコミを入れる事なく。
佐野満――椛同様、ボッコボコのケチョンケチョンにしてやられてしまった男は、縁側で静かに黄昏ていた。

ナズーリン「……やめておいた方がいい、聖。 今の彼には心の休養が必要だろう。 それと、彼の名前は佐野だ」
小町「元気だけが取り柄って感じだったのにねぇ……」
椛「(無理無いッスよね……)」

幻想郷へと戻ってきてからというもの、佐野はいつもこうであった。
命蓮寺で生活するようになって規則正しい生活が身についた為に朝は早朝に起床をし、
食事もしっかりと取り、手伝いなどもするものの、暇があればいつも縁側で黄昏るばかり。
無暗やたらとやかましく、根本的にアホで、割と一同からは呆れられる事も多かったかつての姿は潜めていた。

198 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:56:07 ID:???
その原因といえば、やはりあの大敗が原因なのだろう――と、一同は考える。
反町より後に幻想郷へと呼び出され、命蓮寺へと所属をし、これまで切磋琢磨をしてきた。
幻想郷内の大会で栄光を掴み、かつてからは想像も出来ない程の力をつけた反町に対し、
羨望と嫉妬とを混ぜたような複雑な感情を持ち合わせていた佐野。

そんな彼が初めて反町と対峙をしたのは、命蓮寺としての練習試合。
全幻想郷以上の猛特訓を繰り返して挑んだその試合に――しかし、佐野達はボッコボコにやられた。あまりにもあっさりと。
そこまでならばまだ佐野も立ち上がれた。頼れる仲間と師匠と共に、リベンジの機会を伺った。

だが、そのリベンジの機会がどういう結果になったのかは――先述の通りである。
得意のキープもある程度成功しようと、相手はその上を行く超火力で蹂躙する。
ダブルスコアをつけての大敗。

椛「(普段明るい人程、落ち込んだ時に立ち直るのが遅いって言うッスけど……)」
ぬえ「……バッカみたいだぬぇ。 いつまでもメソメソしててもしょうがないのにさ」

いつものぬえの悪態が鈍る程度には、佐野の気落ちは目に余るものだった。

199 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/08(木) 23:58:19 ID:???
一旦ここまで。

200 :森崎名無しさん:2018/02/09(金) 02:18:11 ID:???
乙でした
佐野くんすっかり大人しくなっちゃってまあ
復活の軌跡楽しみに待ってます

201 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:24:30 ID:???
となると結局、誰も留学に行かせる者がいなくなるという結論になってしまう。
その後も一同は喧々囂々と議論を重ねるのだが……。

魅魔「ちょいと邪魔するよ」
白蓮「あら?」
星「ああっ、魅魔さん! お久しぶりです!」

不意に聞こえてきたのは、件の佐野の師匠――魅魔の声であった。
佐野の師匠として普段から命蓮寺で過ごしていた彼女であったが、Jrユース大会が終わってからというもの、姿を見せない。
一体どうしているのだろうかと思っていた所にようやく姿を見せ、白蓮や星は喜ぶのだが。

ナズーリン「一体今までどこをほっつき歩いていたんだい? 先代の博麗の巫女殿は……今は神社にいるらしいが」
魅魔「いやなに、魔界の連中についてあたしゃあっちに戻ってたんだよ、色々と話もあったからね。 
    幻想郷に戻ってきたのはつい昨日の事さ」
ムラサ「それならもっと早く顔を出してくれればよかったのに……」
魅魔「そうしようとも思ったんだけど、ちょいと野暮用があってね……ほれ」

言いながら、魅魔が身を翻すとその背後から人影が現れる。
決して大柄という訳ではない彼女の背中に隠れる程の小柄、しかしながらこの場にいる全員がよく知る顔。

202 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:25:53 ID:???
魔理沙「よう」
小町「あれっ、魔理沙じゃないか?」

普通の魔法使い――霧雨魔理沙の姿が、そこにあった。

魔理沙「しかし……改めて見るとどういう集まりだこりゃ?
     寺の連中はともかく、死神に人食い妖怪に白狼天狗。 とんと共通点が見当たらんぜ」
椛「まあ、話せば色々長いッスよ」
魔理沙「じゃあいいや。 そこまで興味はない」
魅魔「バカタレ、興味が無かろうが話くらいは聞いとけ。 少なくとも、あたしがそこそこ長い間滞在したチームの事だ」

パコッ

魔理沙「いてて」

相変わらずの憎まれ口を叩く魔理沙の頭を引っぱたきながら注意をする魅魔。
いつまでも師匠面されて嫌になる、と肩を竦める魔理沙だったが――その表情が実に楽しげに見えたのは錯覚ではないだろう。
魅魔と魔理沙の関係性について、命蓮寺に所属をする一同は既にあらかた説明されており、
なるほど、幻想郷へと戻ってきた彼女が魔理沙の元へと向かうというのもわかる話であった。

白蓮「昨夜は魔理沙さんの所にお泊りになられたんですか?」
魅魔「ああそうさ。 しかし酷いもんだったよ、そこら中に物が散乱してて寝るスペースすら取れやしない」
魔理沙「普通だぜ」

呆れた様子の魅魔も、しかし嬉しげであり……そんな中、視線を彷徨わせて縁側で佇む、もう1人の弟子に目をつける。

203 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:27:08 ID:???
魅魔「……あいつはまだあの調子かい」

大会後、魅魔が一旦命蓮寺のメンバーから離れ魔界へと向かった際、彼女の気がかりとなったのが佐野の事である。
試合中、点差が決定的となった時から糸が切れた人形のように脱力し、試合が終わってからも立ち直る素振りすら見せなかった。
果たしてそんな彼を置いていって大丈夫か――と、後ろ髪を引かれながらも、
しかし、今後を考えて神綺たちと共に魔界へと戻った。

その期間中に、佐野ならば地力で立ち上がってくれるだろうと考えてはいたのだが……。
生憎と、魅魔の期待通りにはならなかったのは、一目見ればわかってしまう。

魔理沙「……魅魔様」
魅魔「ん……」

それは魔理沙から見ても明らかなものだったのだろう。
殆ど言葉を交わした事が無いと言えど、魔理沙にとって佐野は弟弟子である。
今、佐野に何が必要なのか――姉弟子である彼女は誰よりも理解しており、視線で魅魔に訴えかけた。
それに魅魔はただ頷くだけで了承し、ふよふよと佐野の傍まで移動をする。

魅魔「どうした、しょぼくれて」
佐野「…………なんだ、師匠か」
魅魔「なんだとはなんだ、久しぶりに会った師匠に対して」

204 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:29:14 ID:???
軽く声をかけてみても、返ってくるのは上の空の返事。
一目魅魔を見て、しかしすぐに視線を虚空へと向けて溜息を吐く佐野を見て、いよいよもって重症だと魅魔は悟る。

魅魔「(落ち込む事こそあれど……こいつはそこまで引きずるタイプには思わなかったがねぇ。
    ……まぁ、こういう事もあろうさ)」

体育座りこそしていないものの、ジメジメとした佐野の態度に眉を潜めながら、
それでも魅魔は佐野の隣へと腰かけた。

魅魔「……ちゃんと飯は食ってるかい?」
佐野「…………」
ムラサ「あ、今日の昼食はちゃんと2回おかわりしてたわよ」
魅魔「(……落ち込んでる割にはしっかり食ってるね)」

返事をしない佐野に代わってムラサが答える。
色々と言いたい事はあるが、ともかく、食欲があるのはいい事だとして魅魔は続ける。

魅魔「……そんなにショックだったかい、あの反町くんの事が」
佐野「………………」

無言ではあったが、反町の名を出した瞬間、佐野の体がピクリと震えるのを魅魔は見逃さなかった。
やはりあの大敗――そして、反町と己との格差というものが、彼の中では大きくのしかかっているのだろう。

佐野「………………」
魅魔「……お前さん、言ってたね。 自分と反町くんとやらは、元いたチームじゃ似たような立ち位置だったって」

反町一樹と佐野満。
両者は共に、全日本Jrユースへと召集をされたFWであった。
反町一樹は全国中学生サッカー大会の得点王。
そして、佐野満は初出場ながらもベスト8まで駒を進め、優勝チームである南葛を苦しめた比良戸の2年生FW。
大会でも両者ともに活躍をしたが、しかし、代表での扱いは決していいものではなかった。

205 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:31:20 ID:???
単純な力量不足ではあるものの、反町も佐野も十把一絡げの一員でしかなかった。
反町は単純に、雑魚チームを相手に得点を荒稼ぎしてなんとか得点王を取っただけの凡夫。
そして佐野はキープ力に関してはある程度目を見張るものがあるものの、FWとしては得点力の低さが目立ち、
おまけにそのキープ力についてもチーム内にはもっと上手いものがゴロゴロいるという有様だった。

圧倒的なシュート力を持ち、FWの中でも頭一つ抜けている日向小次郎の相方を任せるに足るサブFW。
その競争の中でも下位に位置をしていたのが両者である。

だが、この幻想郷へとやってきて両者は大きく変化を遂げた。
佐野はドリブルの精度を上げて更にキープ力を増し、不安だった得点力も(椛の力を借りてであるが)ある程度解消。
MFとしても十分通用をするだけのパス精度まで身に着けた。
……守備については、まるで手つかずであったが。
少なくとも、今、全日本へと戻ればレギュラーが確約されるであろう程の実力は得た。

ただ、それ以上に劇的な変化を遂げたのが反町だった。
元々は帯に短し襷に長し……総合的な能力で言えば日向、来生に次ぐ実力者でありながらも、
尖った部分が無い――長所が無い故に目立たない選手であった反町。
そんな彼はこの幻想郷で、爆発的なシュート力を身に着けた。
必殺シュートを編み出そうとしてたまたま見つけた、ドライブ回転をかけたシュートへの適性。
地道にコツコツと、努力を重ねて身に付いたシュートの威力。
そして、それらを最大限に生かせるだけの精密過ぎるシュートコントロール。
天才とは及ばないまでも秀才とも言える頭脳も武器とし、彼は大きな進化を遂げた。

佐野がレギュラー確定とするならば、反町はまずエースストライカーとしてチームの中心となれる程。
それ程までに互いに力をつけ――そして、その差は開いていた。

206 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:32:50 ID:???
佐野「……俺と反町さんの何が違うってんだ」
魅魔「………………」

魅魔の言葉を聞き、そして、それが彼の何かに触れたのか。
ぽつりと、小さく――しかし、隣にいる魅魔が聞こえる程度の声量でそう呟く。
佐野と反町の何が違う――かつては、立場はそう変わらなかった。
ユース世代になれば共に切り捨てられるような、そんな不安定な立ち位置だった筈だ。お互いに。

佐野「俺だってこの命蓮寺にやってきて、自分なりに必死こいてやってきた。
   師匠もいてくれて、チームメイトもどんどん増えて、キャプテンとして引っ張ってきたじゃねぇか」
魅魔「……ああ、そうだね」

それは事実だった。
佐野は確かに、このサッカーのど素人集団であった命蓮寺のメンバーを、キャプテンとして引っ張ってきた。
ともすれば少しばかり――いや、かなり頼りない所はあったが、
それでも持前の明るさと懸命さでチームを盛り立て、魅魔らに助けられながらも努力を重ねてきた。
その甲斐あって命蓮寺のメンバーも……今や、中堅から強豪と言える程の実力者が揃っている。
白蓮などに至っては、名門の選手とも遜色が無いレベルだ。

佐野「反町さんが華々しく大会で活躍してる時だって、大会に出るのは我慢して、練習に練習を重ねた!」

結局、佐野達が幻想郷のサッカー界でデビューを果たす事は無かった。
華々しい舞台を蹴ってでも、実力を上げる事を選択した。
それもこれも、最後には必ず笑う事が出来ると信じての選択である。

だが、結果はご存知の通りだった。

207 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:34:32 ID:???
佐野「俺と反町さんの何が違う……!」
魔理沙「………………」

いつしか大声となっていた佐野の言葉に、命蓮寺のメンバーは胸を締め付けられ、
そして、姉弟子である魔理沙もまた奥歯をギリとかみしめる。
彼女もわかっていた――立場が違えど、反町に苦しめられた者として……佐野の気持ちが痛い程わかる――。

佐野「なんで……なんで……!!」
魅魔「佐野……」


佐野「なんで反町さんに彼女が出来て!! 俺に出来ねぇんだよォォォオオオオ!!!」


――筈だった。

208 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:35:56 ID:???
「「「………………」」」

ルーミア「かのじょ?」

佐野の絶叫を受けて、唯一、言葉を発する事が出来たのはルーミアだった。
基本的に能天気であり、性質としてはオータムスカイズのリグルなどに近いのが彼女である。
あまりにも予想外過ぎる佐野の言葉に、純粋に疑問を持てたのが彼女だけだった。

魔理沙「………………」

逆に他の者たちはといえば、絶句である。
二の句を継げないどころか、一の句すら発する事が出来ない。
あれ?さっきまで反町との格差についてあれほど悲痛に語ってたんじゃなかったっけ?
一同の脳内は混乱を極め、しかし、佐野は更に続ける。

佐野「そうだよ彼女だよ、俺もさぁ、聞いてたよ! 噂に聞いてたよ、反町さんに彼女出来たって!!
   でもなんだよこれさぁ! 見ろよホラ!!」

言いながら佐野は立ち上がると、ナズーリンが読んでいた新聞を広げた。
ナズーリンが言っていたように、一面には反町と早苗の記事。
当然その記事にはデカデカと、それはそれはお似合いのカップルの写真が写っている。
照れた様子の反町と、同じく早苗。その背後ではややムッとした表情の神奈子と、嬉しげな表情の諏訪子の姿も見える。

佐野「なんっっっでこんな可愛い彼女出来てんの!? ビックリするわ!!」

そう、早苗は可愛かった。
無論、佐野もフィールドで相対し、その顔を見た事もある。
だが写真に写る彼女の姿は正に恋する乙女。はにかむ姿はなんとも麗しく、
フィールドで奇跡のGKとしてゴールは絶対許早苗とか言う姿からはまるで想像できない。

209 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:37:12 ID:???
佐野「こんなの絶対おかしいよ……」
小町「あー……あー……えーっと、あれか。 つまり……」
星「……反町くんに、伴侶が出来たとあって落ち込んでいた、という事でしょうか?」
椛「いや、別に伴侶って訳じゃ……いや、もうどうでもいいッス……」

えぐえぐと、涙すら流し始めながら慟哭する佐野だったが――。
ここにきて、ようやく一同は気づいた。
佐野がここまで落ち込んでいたのは、とどのつまり、反町に彼女が出来たのに自分にはいないから――という事に。

……無論、彼自身も試合に負けた事で、反町に完膚無きまでにボコボコにされた事で大いに凹んでいた。
凹んでいたが――割とすぐに立ち直ってもいた。
ただ、幻想郷へと戻ってくるなり、風の噂で聞いた反町に彼女が出来たという話。
これは大いに彼を混乱させ、迷走させ、そして奈落へと突き落とした。

佐野満、中学2年生、思春期。
割と彼女が欲しいお年頃である。

佐野「俺と反町さんの何が違うってんだよ……反町さんだってそんなにイケメンじゃないじゃん、整ってる方とは思うけど、
   点数にしたら6点くらいだと思うぞ、ホント。
   やっぱサッカーで活躍したから? したからなの?」

割とサッカーで活躍したからというのは正解ではあるが、佐野は答えを求めている訳ではないし、
何より誰も答えを知らない――というか知っていても言いたくない。

ムラサ「……そういえば、こういう子だったね佐野くんは」
ぬえ「(……心配したのがバカみたいだぬぇ)」
ナズーリン「佐野くん……」
佐野「うぅっ……な、ナズー……」

ナズーリン「君は……実にバカだなあ」

210 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:38:35 ID:???
………
……


佐野「……という事で、どうすれば俺に彼女が出来るか会議をこれから始めたいと思います」
ムラサ「却下」
小町「否決」
ぬえ「死ね」
佐野「あれ……なんかみんないつもより辛辣……」

落ち込みも、しかし溜まっていたものを全て吐き出してスッキリしたのか、佐野はすっかり元の調子に戻っていた。
……あっさりと戻った事によって、今までの心配はなんだったんだと一同は思い切り肩すかしを食らい、
佐野への対応が冷たくなるのだがそれも致し方ない事だろう。因果応報である。

魔理沙「……魅魔様、これがホントに私の弟弟子か? なぁ……こんなのがか?」
魅魔「……まあ、うん。 バカ弟子同士仲良くやっとくれよ」
魔理沙「これと同じ尺度で語られるのは流石に勘弁願いたいんだが……」

一方、師匠である魅魔と姉弟子である魔理沙も――こちらはただただ、呆れかえっていた。
特に魔理沙としては、佐野とは殆ど面識も無い。
魅魔が新たに迎えた弟弟子がどんな奴だろうと、改めて話すこの機会をある程度楽しみにこそしていたのだが、
それがご覧の有様な為になんとも言えない表情で溜息を吐くばかりである。

椛「(とはいえ……あんだけ完膚無きまでにやられておきながら、すぐに立ち直って馬鹿馬鹿しい事考えられてるのはスゲェッスよ……。
   ……真似したくないッスけど。 ……メンタルで言えばリグルとかに似てるんスかねぇ。
   あぁ……やっぱ真似はしたくないッスね……)」

ほんの少しだけ、佐野の事を評価する者もいた。
無論、それはほんの少しだけであり――感情の9割9分方は呆れの方が優っていたが。

211 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:39:36 ID:???
魅魔「オホン……さて、まあそれはともかくとしてだ。 佐野、ちょいと話がある」
佐野「ん? なんだよ師匠?」

とにもかくにも、これでは話が進まない――と、魅魔はコホンと咳払いをしてから佐野に告げた。
うかうかしていると本格的に佐野が彼女を作りたい会議を始めかねない。

魅魔「その前にだ……割と心配だから一つ聞いとくよ。 ……お前さん、まだ反町くんと戦う意思はあるかい?」
佐野「ったりめーだろ! あんな可愛い彼女いる人にサッカーでまで負けてたまるか!!
   大体二回負けたくらいで諦めてられっか!!
   守矢だかヤモリだか知らんけど、今度の大会ではケチョンケチョンに仕返してやる!」

いずれにせよ、佐野の折れた心は既に修復をされていた。
完膚無きまでに負けた悔しさと屈辱は、こんな態度ではあるが佐野の心中にしっかりと刻まれている。
それでもなおバカバカしい事に意欲を傾けられる程には立ち直り、
そして必ずやリベンジを果たしたいという意思もある。
魅魔の言葉に鼻息荒くそう宣言する佐野に、魅魔は満足そうに頷く。

魅魔「ならいい、牙はまだ抜けてないようだ。 ……と、それはいい。
   そこで1つ提案があるんだがね。 ……佐野、お前さん外界へ戻ってみないかい?」
佐野「ん?」
白蓮「あら……?」
魅魔「おや?」

そして魅魔が佐野に告げたのは――外界へと戻らないか、という誘いであった。
突然の言葉に困惑をする……訳ではない。
一同はつい今しがた、まったく同じような話を白蓮から聞いていたのだから。
即ち――。

佐野「それってサッカー留学の事か? さっき白蓮さん達が話してた」

外界へのサッカー留学。

212 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:41:09 ID:???
一体どうして佐野の頭脳でピタリと目的を言い当てたのか、と魅魔は目を丸くして驚いていたが……。
しかし、佐野のみならず他の者たちの反応を見て、思い当たる。

魅魔「ははぁ、なるほど……どうやら、幻想郷の方でも同じ事をしてるようだね」
白蓮「幻想郷の方でも……と、いう事は魅魔さんは私達命蓮寺の持つ留学権を行使しての留学の事を言っている訳ではないのですね」
魅魔「ふん、そっちの口ぶりだと幻想郷の方は各勢力にそれぞれ留学させようって魂胆みたいだね。
   ……ああ、私のは別件さ。 さっき言ったろ、魔界の方に用があったって」

つまるところ、魅魔の持ってきた話は魔界繋がりでの外界への留学であった。
話を聞いてみれば、内容についてもほぼ同じ。
おおよそ3年間の外界へのサッカー留学をもって、外界のサッカーを吸収し交流を深めて戻る。
そうする事で閉塞的な環境を打破する意図がある、というものだ。

魅魔「まあ、それに加えて3年間ってのは意味がある。 ユース大会を見据えての事だ。
   八雲紫も、きっとそれを考えての案なんだろうね。
   (恐らくもっと深い所でも考えてるんだろうが……ま、そっちはうちにゃ関係無い話だ)」
佐野「ユース大会……え? またユース大会に幻想郷と魔界が参加すんの?」
魅魔「そりゃするだろうさ。 Jrユースには参加したのにユースには参加しないなんて道理もなかろう」

割と無茶苦茶な話ではあるが、実際、Jrユース大会に参加をしたというだけでも無茶苦茶なのだ。
そこらへんは悪い大人――もとい、悪い妖怪さん達が考えているだろう事なので、
佐野も深くは考えなかった。

佐野「つってもなぁ……さっきの話聞いてる限りじゃ、命蓮寺の方も誰送るかで困ってんだろ?」
魅魔「おや? その口ぶりだと留学に行くこと自体は問題無いって事かい?」
佐野「まあな。 それで強くなれんだったらいくらでも行くさ。 ……まあ、ここを離れるってのも寂しい話だけど」

なんのかんのとこんな佐野を温かく迎えてくれている命蓮寺である。
当然、佐野当人としては愛着があるし、出来る事ならば離れたくは無かった。
とはいえ、強くなれる機会があれば是非ともそれに参加をしたい。

――まるで性格は正反対だが、選択した道のりは守矢への移籍を決めた反町と似通っているものであった。

213 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:43:35 ID:???
星「その……魅魔さん、佐野くんは私達側から外界へ送らせてもらう訳にはいかないのでしょうか?」
ムラサ「そっちはほら、魔理沙もいるんでしょ?」
魅魔「……私も佐野か魔理沙、どっちかを送ろうと思ったんだけどねぇ」
魔理沙「悪いが私はパスだ。 残ってやりたい事が、色々あるんでな」

なんとか外界へと留学させる選手が見つかった――かと思えば、今度は留学権が2つに増えたという事態である。
白蓮たちからしてみればたまったもんではなく、魔理沙と2人で行かせてはどうかと言っても、
返ってくる言葉は望んだものではなかった。

佐野「やりたい事って何だよ」
魔理沙「……お前にゃ関係ねーことだよ。 あと、私は姉弟子なんだから敬語使え」
佐野「姉弟子ったって歳はそう変わりゃしねーじゃねーか」
魔理沙「魅魔様、こいつクッソ生意気だぞ」
魅魔「あーあー、もう喧嘩するんじゃないよ……」

因みに、割とこの姉弟弟子――そんなに相性は良くないらしい。

しかし、それはともかくとして、一同は大いに困る。
結局佐野は、既に留学が決定だ――とはいえ、後もう1人を捻出しなければならない。
先ほどまで繰り広げていた議論をもう一度繰り返すしかないのか、と考え――。

その時、混迷する命蓮寺メンバーの中から、1人の少女が立ち上がった。
決意を秘めて。

一輪「わかりました……私が行きましょう! 姐さんの為にも!!」

……… ……… ………

佐野「い……イチさん!?」
白蓮「一輪……」

214 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:45:05 ID:???
雲居一輪。
命蓮寺に在籍をする入道を操る妖怪であり、そして聖白蓮を慕う尼僧である。
青と白を基調とした尼を想像させる装束に身を包み、頭を隠す頭巾。
やはりどこからどう見ても尼僧である。

性格は至って真面目であるが、機転が利いて要領がいい。
命蓮寺の中ではうっかりものの星、悪戯好きのぬえあたりの面倒を見、
また、お勤めの際にも聖の補佐など様々な役割を買って出るしっかりものであった。

そんな彼女がチームの中で務める役割は、GK。
相棒である入道の雲山の力も借り、必殺の『げんこつ』を繰り出すセーブが得意技である。

……ここまで説明をして、え、誰?とか言ってはいけない。
彼女はしっかりここまで話し合いにも参加をしていたし、
命蓮寺のメンバーとして――魔界Jrユースのメンバーとしても試合に参加をしていた。

実際、彼女が発言をした所で――驚いてはいるものの、それはその内容について。
いきなり知らない人が出てきた事を驚いている、という訳では断じてない。
その証拠として、改めてここまでの彼女の動きを書き記すとしよう。

215 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:46:46 ID:???
* * *

ぬえ「ぬえぇ……あいつ、もう完全に棒立ちになっちゃってるぬぇ……」
星「無理ありません……私にもっと力があれば……」

場面は戻ってJrユース大会準決勝。
反町一樹がゴールを決めた直後、佐野の心がポッキリ折れた(すぐ治るが)頃に遡る。
この時、フィールドでは佐野がその心中を吐露して白蓮たちに謝罪をし……。
一方でぬえや星といった出番の無かった者たちは、ベンチから佐野達の事を想い悔しさと哀しみをかみしめていた。

では一輪はどうしていたのだろう?

一輪「ふぅ……いよいよ出番ね」

答えはウォーミングアップを終えて出番待ちをしていた、である。
魔界Jrユースの正GKは、元々魔界に所属をしていた夢子。
彼女の方が一輪よりも一段上を行く技術を持つが為に、一輪自身はサブキーパーの身に甘んじていたのだが……。

夢子「ハァ……ハァ……ごめんなさい」
一輪「いえ、謝られるような事は何もありません。 後は私に任せて、ゆっくりお休みください」

元々、夢子は必殺セーブを駆使してセービングをするタイプの選手であった。
反町、魔理沙、リグルと吹っ飛び係数持ちシューターに幾度となく吹き飛ばされ、おまけにセーブの濫用。
そのスタミナが持つ訳もなく、こうして一輪に出番が回ってきたという訳である。

一輪「(点差は絶望的……もうチームにも諦めムードが漂っている。
    でも……私が入って、これ以上点差を広げられる訳にはいかない!)いざ!」

こうして、一輪は夢子の代わりにフィールドへと向かった。勇ましく。
ただ悲しい事に、この時は誰もが精神的にも肉体的にも披露していた為、一輪に声をかけるものは誰一人としていなかったのだが……。

* * *

216 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:48:05 ID:???
では先ほどまでの会議では一輪はどこにいたのか。
もう一度よく見てみよう。

ムラサ「しっかし星もルーミアも相変わらずよく食べるわホント……」
一輪「水蜜、お皿貸して。 ルー入れてくるわ」
ムラサ「サンキュー、一輪」

昼食を取っている時は、ムラサの手伝いをして台所などに立っていた。故にあまり視界に入らなかった。

* * *
一輪「ふぅ……さてと、食事の後片付けは水蜜に任せるとして、私はお掃除を終わらせておきましょ。
   姐さんが帰ってくるまでに終わらせて、褒めてもらうんだ〜ふふふ〜ん」

自分の食事が終わった後は、その前までやっていた掃除の仕上げをしていた。
よって聖が帰ってきた際、すぐに広間に顔を出す事が出来なかった。

* * *
一輪「(外の世界への留学……3年間も……それは即ち、姐さんとの3年間もの離別を意味してる。
    ようやく一緒になれたのに、3年も離れ離れになるなんて……。
    いえ、でも私が強くなる事で姐さんの助けになるなら! でも……)」

白蓮の話を聞かされたあとは、ただただ悶々と悩んでいた。
白蓮を慕うと同時、役に立ちたいとも思う彼女が真剣に悩むのは命蓮寺メンバーからしてみればわかりきった事であったので、
その思考を邪魔する事は無いだろうと、あえて彼女には声をかける事はなかった。

* * *
一輪「お久しぶりです魅魔さん、あ、お茶淹れてきますね」

魅魔がやってきた時はお茶を淹れに向かっていた。
よって中々会話にも入る事が出来なかった。

217 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:51:12 ID:???
とまあ、いたのである。一輪は確かにそこに存在をしていた。
ただ、致命的なまでにタイミングが悪く、そして目立った行動も取っていなかったが為に存在感が薄かった。
薄かったが――ことここに来て、ようやく姿を現した。
先にも記したように、大きな決意を胸に秘めて。

佐野「いいのかよイチさん、3年だぜ3年? 3年もどこともわからん場所で過ごすんだぜ?」
一輪「心配無用。 覚悟は決めたわ」

佐野も当然、一輪が白蓮を慕っている事は知っている。
何せ常日頃から白蓮の後をついて回り、何か白蓮に声をかけられればそれだけで幸福そうな表情を浮かべ、
ただただ白蓮の言う事に付き従い、白蓮の為に動いてきたのだ。
一種の盲目的――盲信的なまでの行動に、佐野としては色々と勘繰りそうになったものの、
そういったものではなく純粋な憧れである……と一応一輪には聞かされたが、ともかく。
そんな一輪が白蓮から離れて平気でいられる筈が無いと思っている。

ただ、一輪の中では既に留学に対する決意は固いらしい。

一輪「確かに姐さんのお傍を離れるのは悲しいけど……でも、現実的に考えたら私くらいしか行けそうなのはいないし」

一輪のこの命蓮寺での役回りは、主に白蓮の補佐などである。
本尊である星のようにいなくなってはそもそも立ち行かない訳でもなければ、ナズーリンのように他の重要な任務を持っている訳でもない。
言ってみれば、いないと困る存在ではあるが――いなくても、それはそれでギリなんとかなる。
周囲でカバーしようと思えばカバー出来る穴であった。

一輪「それに、これもまた姐さんの為ならば!」
白蓮「一輪……そこまで……」
一輪「お任せ下さい、姐さん! この雲居一輪、見事命蓮寺の代表としてお勤めを果たしてまいります!!」

218 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:52:28 ID:???
何よりも、この時ばかりは一輪の白蓮の役に立ちたいという思い。
そして――GKとして更に強くなりたいという気概が堅固であった。
思い返せばあの練習試合――一輪はゴールを守りながら、しかし、やはりボッコボコにやられた。
反町、魔理沙、リグルにそれはもう完膚無きまでフルボッコであった。
佐野は試合に大敗した事に気落ちをしていたようだが、GKである一輪の衝撃といえばその比ではない。
ただ、それでも彼女の精神力は折れる事は無かった。
偏にこれ以上白蓮へ汚名を着せられないという一点からの想いである。

一輪「金輪際姐さんに、そしてこの命蓮寺の名に泥を塗らぬ為にも!
   この一輪、修行をして更に大きくなって帰ってきますとも!」
ムラサ「お、おぉ……(あ、これ一輪のヤバイスイッチ入ってるかもしれない)」

この寺で一番一輪と仲の良いムラサは、いつも以上にテンションの高い一輪を見て聡く気づいた。
真面目で要領がよくて機転がいい。しかしながら一輪の短所として――。

一輪「さぁ、行きましょう佐野くん! うんざーんっ!!」
雲山「………………」ニュニュニュッ
佐野「うおっ!?」
一輪「この世はでっかい宝島! 今こそアドベンチャーの時よ!! では、行ってまいります!!」

ビューンッ!!!

人の話を聞かず、これと決めた事に猪突猛進気味に突き進んでしまうというものがあった。
とどのつまり、暴走である。

彼女は佐野の手をひっつかむと、相棒である雲山を呼び出してそのまま一気に空へと向かう。
別に心が清い人でないと乗れない訳ではない雲山には、佐野もしっかりしがみ付いていた。

ムラサ「あ……あーあぁ」
ぬえ「……行っちゃったぬぇ」

……… ………

219 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:53:45 ID:???
一輪「あの……ところで、私達どこに行けばいいのかしら?」

そして、5分後、戻ってきた。勿論、佐野を引き連れて。
行き先も聞いていなければ、そもそも外界へ行くというのに空に飛びあがってどうするのかという話。
勢いのまま飛び出したものの、どうせすぐに戻ってくるだろうというのは自明の理であり。
帰ってきた瞬間、ナズーリンは待ってましたと言わんばかりに一言告げるのだった。

ナズーリン「キミは……実にバカだなあ」
一輪「なにィ!?」
佐野「イチさん……スピードだし過ぎ……俺ちょっとチビったかもしれん」

とにもかくにも、こうして新たな一歩を踏み出す者たちが決まった。

幻想を飛び出した軽業師――佐野満。
守りし地味系暴走大輪――雲居一輪。

あまりにも不安過ぎる人選と、やはり不安な先行き。
それでもこんな所から、彼らの新たな物語は始まってゆくのである。

………

小町「しかしホント、なんでお前さんはいかないんだい? あの反町ってのに勝つにゃいい機会じゃないか」
魔理沙「しつけーなぁ。 言ったろ、色々やる事があるって」
魅魔「ま、あんまり苛めないでやっとくれ。 こいつもこいつで、色々と触発された事があるのさ。 なぁ?」
魔理沙「…………」プイッ

執拗な追求に、魔理沙は何故か頬を染めながら視線を横に逸らした。
丁度その視線の先に、床に置かれた新聞が目に入る。
その一面に写る、幸せそうにはにかむ早苗を見て……魔理沙は少しだけ、頬の紅潮を強めるのだった。

魔理沙「けっ……!」

220 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/10(土) 00:55:37 ID:???
一旦ここまで。
これくらいのギャグノリでこのスレはやっていきたいと思います。
次回は他の勢力の動向とかあらかた書いてから、留学パートに行ければと思います。それでは。

221 :森崎名無しさん:2018/02/10(土) 01:11:37 ID:???
乙でした
佐渡君が凹んだ理由が軽すぎて笑ってしまった
一輪は椛をかばってくれた緑の人とかブローリン君とかとサントスに行くのかな?

222 :森崎名無しさん:2018/02/10(土) 01:22:54 ID:???
佐野ェ…復活するにしてももうちょっとドラマがあると思ったのに…
ま、まあ元気になってなにより

223 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/11(日) 03:11:42 ID:???
横になって起きたらこんな時間だったので本日はお休みします。

>>221
乙ありです
多分本人にとっては重い理由だったのでしょう……多分
各選手がどこに留学するかはまた後々書いていければなと思います
>>222
復活にかけてのドラマなり成長なりのシリアス分は他のキャラが多分補ってくれるから……(適当)



それでは。

224 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/11(日) 22:10:25 ID:???
本日も更新はお休みさせていただきます。
お詫びと言ってはなんですがJrユース大会後での佐野くんの能力(前回と同じく本編準拠換算)を公開します。

名前   ド パ シ タ カ ブ せ 高低 ガッツ 総合
佐野   75 73 72 69 70 69 70 2/2  800/800 498

    佐野
コマネズミドリブル(1/2でドリブル力+2)
ヒールリフト(1/4でドリブル力+4)
ピンポイントパス(パス力+2)60消費
オーバーヘッドポスト(高パス力+2)100消費
椛とのコンビプレイ(シュート力+7、発動は椛)120×2消費
チキンフットオーバー(シュート力+10、発動は椛)200×2消費
オーバーヘッドキック(高シュート力+2)120消費
ローリングオーバーヘッド(高シュート力+4)200消費


ご覧のとおり決して弱くは無いです。少なくとも本編に比較をすれば雲泥の差。
守備はできませんがドリブルには磨きがかかりパスもシュートも出来るようになってます。
文中にも書きましたが全日本に帰ればレギュラーになれるでしょう。
が、反町のような圧倒的な強さはありません。パスはもっと上手い選手がいます。
シュートも椛がいなければ新田のファルコンクロウ以下です。
ドリブルも翼、三杉、ディアス、ピエール、幻想郷に目を向ければ霊夢やパルスィなど上もいます。
レギュラーは取れるだろうしある程度活躍は出来るだろうけどメインは張れない、という感じですね。

それでは。

225 :森崎名無しさん:2018/02/11(日) 22:33:57 ID:???
とりあえず見た感じドリブル以外のトップレベルの武器が必要かな
カットでも単独のシュートでも何でも良いから1つ有れば劇的に変わりそう

226 :森崎名無しさん:2018/02/11(日) 23:21:37 ID:???
MFやらせるには守備が軽すぎ、FWやるには火力がないか
役割的にはまんま葵と同じだね

227 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/12(月) 20:56:37 ID:???
本日も更新はお休みさせていただきます。
明日には更新出来ると思います。

>>225
今後佐野くんがどう成長していくかについてはまたポイントポイントで数値化して披露出来ればなと思います。
>>226
葵に比べるとドリブルとパスが出来る分シュートと守備が離されてるって感じでしょうかね。
葵が本編終了後くらいまで成長してしまうとドリブルすらもほぼ並ばれてしまいますが。

228 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/13(火) 23:14:53 ID:???
ごめんなさい、投下する予定でしたが過去ログを色々眺めていたら時間が無くなってしまいました。
ちょっと長すぎませんかね……。
明日は出来ればと思います。

229 :森崎名無しさん:2018/02/14(水) 22:25:15 ID:???
ポイズンさんの更新速度は外伝作品の中でも上位に入ってたからなぁw

230 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:38:45 ID:???
>>229
当時は若く、時間が有り余っていたのもありますかね。
後はSSと違ってゲーム式の方が、小刻みに投下出来てたかなというのも思います。

出来ましたので短いですが投下したいと思います。

231 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:40:18 ID:???
Act.6 7つの選択

こうして佐野達がなんとも間抜けな形で留学選手を決定していた頃。
一方で同じように各勢力でもそれぞれが派遣をする選手を決めようとしていた。
無論、それぞれの勢力でも命蓮寺と同じように、殆どの場所で議論が難航をしていたのであるが。

パチュリー「……海外へのサッカー留学ね」

ここ紅魔館もまた、議論が難航をしていた勢力の1つである。
命蓮寺の次に、所属をする選手が多数在籍している勢力でもある紅魔館。
レミリア、フランドール、咲夜、パチュリー、小悪魔、美鈴。
6名ともなればなかなかの大所帯である。

しかしながら、この6名の中――外界へと行ける条件を満たす者はそう多くない。
まず、当主であるレミリア――そもそも彼女はこの留学というものに乗り気ではなかった。
先に白蓮がこのサッカー留学の是非を聞いた時、賛成多数で可決をされたと言ってはいたが、
その際に反対を述べたのがこのレミリアである。

レミリア「八雲紫の掌の上で転がされるなぞ癪に障る。
     ……第一、必要性が無い。 外界との交流など悪魔には不要よ」

異常なまでに気位が高く、また、己がするならばともかく他人に運命を操られる事を嫌うのがレミリア。
紫が提案をした、幻想郷サッカー界を変えかねないというこの提案に、彼女が反対をするのもまた道理だった。

レミリア「そもそも魂胆が見え透いている。 どうせこの留学も、あの人間への対抗策程度に思っているのだろう」
パチュリー「……ま、十中八九そうでしょうね」

何よりもレミリアのプライドを刺激したのが、この留学の裏に隠された意図である。
外界との交流、閉鎖的な幻想郷サッカー界の新たな道の模索。
とは単なるお題目――実際に選手たちを外の世界に留学させる事は、
反町に対する対抗策に過ぎないというのは誰の目にも明らかだった。

232 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:42:11 ID:???
反町一樹は世界でも間違いなくトップのストライカーである。
世界中どころか幻想郷からも集められた選りすぐりの選手たちばかりでの大会において、
その圧倒的なシュート力で強敵たちと相対しながらも得点王に輝いた事からもそれは明白。
そんな反町が、幻想郷でも強豪として知られる守矢へと移籍をした。
これが何を意味するのか、頭の中が春ではない者ならばすぐさま理解出来る。

即ち、守矢一強時代の到来である。

元々守矢フルーツ自体は、先に述べた通り強豪クラス――名門と呼ぶには一歩及ばない程度のチームである。
FWの諏訪子は高い浮き球に強いポストプレイヤーであり足元の技術も十分だがシュートの火力は一流には及ばない。
MFの神奈子は高い能力を持ちながらも、やや帯に短し襷に長しといった、長所が見えづらい選手。
得意とするロングシュートも、十六夜咲夜や四季映姫など他に同じように得意とする選手がいた為に、
優れているがパッとしない、一流半の選手として認知されていた。
GKの早苗もまた、既にセービング技術ならば幻想郷どころか世界で見てもトップレベル。
しかしながらそのスタミナの無さと一対一での弱さという明確な弱点を持つが故に失点率も高いGKであった。

なら、ここに反町――そして彼が引き連れたオータムスカイズを離脱した選手を入れればどうなるだろう。

ポストプレイヤーである諏訪子は、己の力を最大限生かせるストライカーを得る事になる。
神奈子は広い中盤をヒューイと共に支配する事で、己の負担を減らす事が出来る。
そして、早苗はスタミナが切れた際のサブキーパー。
更にはそもそもスタミナが切れないよう――シュートを防いでくれる強力なブロッカーを手に入れた。

FW・MF・DF・GK。
全てのポジションに核とも言える選手を配置出来るようになった事が、何を意味するのか。
総合力において幻想郷でトップを取る。
それはやはり、一強の時代の幕開けを意味しているのである。

233 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:43:28 ID:???
無論、守矢フルーツズの選手たちに比較をし、より優れている選手は大勢いる。
今、苦々しげな表情で歯噛みをするレミリア=スカーレットもその内の1人だ。
トップレベルのシュート力と突破力、MFやDFとしても通用をする程の守備力。
間違いなく幻想郷でも有数の実力者。
更に彼女の元には時間制限付きとはいえ優れたテクニックを持つパチュリー=ノーレッジ。
幻想郷No.1ボランチとして名を馳せる十六夜咲夜。
そして、純粋なシュート力ではレミリアをも超えるフランドール=スカーレットもいる。

爆発的な攻撃力で相手を蹂躙するサッカー――それがレミリア率いる紅魔スカーレットムーンズのサッカーである。

ただ、このスカーレットムーンズ。シュートに対してすこぶる弱い。

咲夜が優れているのはあくまでもボールカットであり、打たれた後の対処は不得手。
元々GKであった紅美鈴はGKとしてはカカシ同然であり、フィールダーに転向した後の方がまだ活躍している始末。
他の選手たちは主に攻撃寄りな能力を持っているが為、とにかくシュートを打たれた後の対処法が無いに等しい。
爆発的な攻撃力で蹂躙をすると先ほどは書いたが、正しくはそうするしか勝つ手段が無いと言えるのだ。

そして、このような弱点を他のチームも多かれ少なかれ持っている。
だからこそ、幻想郷サッカー界は不安定ながらも不思議と均衡のとれたバランスの上で成り立っていた。
ただ、それが崩れ去ろうとしている――否、事実、まず間違いなく崩れるのだろう。

小悪魔「……でも、それでどうして留学に? 各勢力から1人ずつ、なんて事になれば一層私達の戦力が下がっちゃうじゃないですか」
レミリア「現状維持だろうが負けるなら、どうせだから外に飛ばすって腹積もりなんだろうさ」

小悪魔の問いかけに対して苛立たしげに、レミリアはそう吐き捨てる。

美鈴「え? でも、守矢の方も留学には参加をするんですよね? それじゃあ結局同じなのでは?」
パチュリー「……守矢側が今回の件で留学に出せる選手の選択肢はそう多くは無い。
      まずもって、現状で大きなアドバンテージである反町を手放す事は考えられない。
      そして八坂神奈子、洩矢諏訪子。
      彼女たちが外界で3年間もいる、というのは彼女たちが幻想郷へとやってきた経緯を考えればこちらもあり得ない」
レミリア「そしてそいつらが残るならあの巫女モドキも残る。 結局守矢を形成する中枢は幻想郷を離れられないさ」

234 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:44:54 ID:???
レミリアたちの予想では、守矢フルーツズが留学に向かわせる選手は妖怪の山に所属をする選手。
恐らくはあの鴉天狗あたりが妥当だろう、と考える。

美鈴「なんだかややこしいというか回りくどいというか……難儀ですねぇ」
パチュリー「(まぁ……選手を強くするという手段は留学以外にも数多にある。
       ……先に述べたのもまたブラフ。 恐らく1番の目的は……『隔離』をする事でしょうからね)」

いずれにせよ面倒な話だと美鈴は目を回しそうになりながら呟くが、
生憎と賢者として知られる少女はそれすらもまやかしであると考えていた。

なんにせよ、八雲紫の真なる目的がどうであれ――本題は一向に片付いていない。

小悪魔「それで、結局私達は留学に誰を送るんでしょう? あ、いや、お嬢様のご意向では送らないつもりなのでしたっけ?」
レミリア「………………」
パチュリー「意地を張るのはよしなさい、レミィ。 話に乗っておいた方がいいというのは、あなたもわかってるでしょう」

紫の目的が彼女たちの予想通りなのだとすれば、その話に乗るというのは敵前逃亡に等しいものである。
だからこそ、プライドの高いレミリアはその案に易々とは乗る事が出来なかった。
頭では事実として守矢の過大な戦力が驚異的な事だと理解していても、
闘う以前より諦める事など紅帝である少女が許す筈もない。

パチュリー「……目先の戦いよりも、3年後を見据えた方がいいわ。
      次の大きな大会は、外の世界で再び行われるユース大会なのでしょうから」
レミリア「………………」

それでも、親友であるパチュリーは昏々とレミリアを説得し、
レミリアは相変わらず苦々しげな表情を浮かべてはいたが――小さく頷いた。
かつて不夜城カップでは守矢に敗れ、Jrユース大会では反町のシュート力にストライカーとして敗北。
幻想郷中を見渡しても、彼らに対してリベンジの機会を待つレミリアにとっては、苦渋の決断であった。

235 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:46:26 ID:???
パチュリー「(私が背中を押した結果とはいえ、いつものレミィならば『今この時も勝ち、3年後も勝つ』と反論する所。
       にも拘らず留学の件を認めさせた辺り……やはり反町にしろ早苗にしろ、
       レミィにとっては脅威であるという事ね……当然と言えば当然なのだけど)」
美鈴「えっと……それじゃあ誰が行くことになるんでしょうか?」
フラン「あっ、はいはーい! 私行きたい!」

そして話は誰を留学へと送るかという話題に差し掛かるのだが、
ここで手を挙げたのがここまで黙っていたフランドールであった。
元々、彼女はレミリアからのいいつけで基本的には館を出る事が叶わず、幽閉をされ続けていた。
そこを霊夢や魔理沙などの影響もあり――さまざまな途中の事情は割愛するが、ある程度屋敷の外を歩き回る事も許可された。

Jrユース大会においても、派遣選手としてイタリアJrユースに合流。
危険なプレイをしたが為に退場処分を受けながらも、それ以上にその得点力で貢献をした。

フランとしては、元々あった外に対する好奇心とイタリアで過ごした日々の楽しさがあり、
だからこそ今度の留学もきっと楽しいものなのだろうと考え立候補をしたまでである。
ただ――。

レミリア「フランは駄目よ! 1人で留学だなんて危険すぎるわ」

その留学を、妹を溺愛するレミリアが当然許す筈が無い。

フラン「ぶーっ、なんでよお姉さま! この前の大会で、私何も悪さしてないよ?」
レミリア「フランが悪さをするかどうか以上に、フランが誰かに悪さをされかねないわ。
     海外は治安が悪い所も多いと聞くし、フランはまだ小さいのよ。
     悪い大人に騙されて口に出すのも恐ろしいような事にでもなりかねないし、
     何より外の世界に留学するとなれば男所帯に入る事になるわ。
     こんなに可愛いフランを、餓えた男どもが見たら一体どうなるか……」

236 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:47:26 ID:???
頬を膨らませるフランドールに対してレミリアは矢継ぎ早に言葉を口にしていく。
それはフランを心から心配しての事であり、ともすれば過保護とも言える程のものではあったのだが、レミリアにとっては真剣そのもの。
495歳児と500歳児、500年程生きてきて5歳しか違わない姉妹といえど、レミリアにとってフランはまだまだ小さい妹なのである。

美鈴「(フランドール様が悪さされかねないって……いや、どうあがいてもそれは無理なんじゃないかなぁ……)」
小悪魔「(ま、まぁ留学されない方が安心なのは確かですよね。 あの大会から帰ってきて、少し大人しくはなられましたけど、
     まだフランドール様は……その……とても無邪気ですから)」
パチュリー「(レミィもこれが無ければいい友人なのだけど……ああ、駄目、今のレミィの顔はとても他の勢力の代表には見せられない)」

因みに、周囲の者たちは心配する対象が違うのではないかと考えていたがレミリアにとっては些細な事である。

小悪魔「なら……パチュリー様はどうですか? 外のサッカーにも、興味があるんじゃないでしょうか?」
パチュリー「そうね、興味がある事はあるのだけど……」

小悪魔の問いかけに、パチュリーは肩を竦める。
知識欲の塊と言っても差支えない彼女にとって、先のJrユース大会は非常に興味深いものだった。
数多くの国と見知らぬ強敵。知らない戦術に予想だにしない作戦。
ありとあらゆるものがパチュリーにとっては新鮮であり……、
ならばこそ、更に長い期間をかけて外界で留学をし知識を蓄えたいという欲求も少なからずある。

ただ、パチュリーには幻想郷に残ってやっておきたい事もまたあった。

パチュリー「……本格的に、喘息を抑える方法を考えようと思っているのよ。
      八意永琳にも協力をしてもらうつもりだけど……短期間で治せるものではないわ。
      悪いけれど、私は行けないわね」
小悪魔「そうですか……あっ、それなら私もお手伝いします!」
パチュリー「当然、そのつもりよ」

生まれつきの喘息による制限されたプレイ――天才と呼ばれながらも、
パチュリーが超一流として活躍出来ていなかったのはその大きなハンデによる所が大きかった。
外界で勉強をするよりも先にそれを克服する必要があるのは周囲もわかっており、
パチュリーのこの選択に異を唱える者は1人としていなかった。

237 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:48:59 ID:???
美鈴「え? 小悪魔さんも残るんですか?」

そして、パチュリーが残るのならば当然その使い魔である小悪魔も残る。
フランは駄目、パチュリーと小悪魔も駄目となれば――いくら大所帯と言える紅魔館でも、そう多くの選択肢は残されていない。
つまり、いてもいなくてもそこまで差支えが無い適当な人材――。

美鈴「あ、あれ? もしかして――」

自分が選ばれるのだろうか?と、美鈴は期待と不安を綯交ぜにした表情でレミリアを見つめ……。

レミリア「……留学に行ってもらうのは決めてるよ。 勿論……」
美鈴「………………」
レミリア「咲夜だ」
美鈴「はいっ! が、がんば――あれぇ!?」

予想だにしないレミリアの言葉に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまうのだった。
否――驚いていたのは、何も美鈴だけではない。
フランドールは目を丸くし、小悪魔は口を大きく開け……。

咲夜「私が……ですか?」

ここまでレミリアの背後にぴたりとつき、彼女の世話をしていた――今、名指しで呼ばれた当の本人。
自分が呼ばれる事はまずないだろうと考え、ここまで会議に参加をしていなかった十六夜咲夜ですら、
その胸に手を当てながら思わず聞き返していた。
主君の言葉に疑問を呈する――普段の咲夜からは、考えられない行動である。

レミリア「二度は言わないよ。 行ってもらうのは咲夜、お前だ」
咲夜「は……ですが」
パチュリー「理由くらいは説明してあげなさい、レミィ。 疑問に思うのはもっともでしょう」

そんな咲夜たちに、レミリアはキッパリともう一度宣言をし――。
しかし、説明不十分だろうとパチュリーからの言葉を受け、面倒くさげに口を開く。

238 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:50:39 ID:???
レミリア「さっきも言ったように、こいつは八雲紫があの山の神社に対抗する為の策だ。
     あの反町って男が入って誰がキャプテンになるのかは知らんが、
     巫女モドキか反町か、どっちかが頭になるのは違いない。 実際、中心選手もその2人だからね」

早苗が変わらず守矢フルーツズを率いるのか、それとも反町がキャプテンを引き継ぐのか。
それは彼女たちにもわからないが、どちらかがなるというのは明白である。
留学は、そんな彼女たちに対抗をする為の策。
つまりは早苗と反町を倒しうるだけの戦力を備える為のものだ。

レミリア「相手は人間だ。 となれば、同じ人間に行かせるというのが道理というものだ」

この幻想郷でサッカーをする――トップレベルの世界でサッカーをする人間というのは少ない。
多くは力を持つ妖怪であったり、或いはそれに類する者たちばかりだ。
そんな中で、咲夜は希少とも言えるトップレベルの実力を持つ人間である。
役割は地味と言えるボランチを務めながらも、時にはオーバーラップをしてゴールを狙えるだけの攻撃力は持ち、
ボールカット能力においては幻想郷でも五指に入る程。

レミリア「守矢の人間でも、霊夢や魔理沙でもない。 ましてや冥界の半人半霊などでもない。
     紅魔が誇る悪魔の狗こそが、最も優れたプレイヤーであると証明する。 その方が痛快だろう?」

故にレミリアは咲夜を選んだ。
彼女が外界で鍛え上げ、守矢フルーツズを打倒する為の切り札となる。
守矢への意趣返しとしては、これ以上の選択は無いとも言えた。

ちなみに、先に上げた人間の内、悲しい事にレミリアの言葉の中では軽業師さんについてはまるで触れられなかった。

239 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:51:47 ID:???
レミリア「咲夜、いいね?」
咲夜「ええ、かしこまりましたわ」

無論、この紅魔館のメイド長であり実務関連のほぼ全てを執り行っている咲夜が留学に向かうというのは大きな不安が残る。
だが、それでもレミリアは咲夜を選んだのだ。
理由についても、己のプライド――紅魔館の誇りをかけて、同じ人間である咲夜に反町達以上の力を身に着けさせる為というもの。
レミリアの真意がわかった以上、咲夜が断る筈もなく、力強く頷いた。

フラン「いいなぁ、咲夜。 私も行きたかったなぁ……」
美鈴「(残念……なような、そうでもないような。 複雑ですけど……それ以上に……)」
小悪魔「(咲夜さんがいなくなって大丈夫でしょうか……色々と……)」

こうして決定した留学選手について、フランドールたちは思い思いの反応を見せる。
そんな一同を横目で見ながら、ふ、とパチュリーは虚空を見つめ思いを馳せる。
レミリアの言う通り、人間に対抗するのは同じ人間。
そんな条件を満たす男が、かつてはこの紅魔館に所属をしていた事に。

パチュリー「(三杉がいれば……私が推した所なんだけどね……)」

三杉淳――反町の言葉を受け、パチュリーが呼び出した外の世界の天才である。
心臓病という大きなハンデを持ちながらも一流と言えるサッカーセンスを持ち合わせ、
彼はパチュリーとそのハンデを解消する代わりに力を貸すという契約でこの紅魔館に身を寄せた。
元々、外界と幻想郷のサッカーにおける実力差というのは大きな剥離がある。
その中でも三杉は弛まぬ努力を積み重ね、パチュリーの期待通り――否、それ以上の実力者となり、
パチュリーと共に中盤の要としてチームになくてはならない選手となっていた。

240 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:53:00 ID:???
そんな彼は――しかし、Jrユース大会後、紅魔館に残る事を選択しなかった。
没落したとはいえ、それでも彼はいい所のお坊ちゃんである事に違いない。
外の世界を捨てるかどうかという苦渋の選択を前に、彼はそれを選ぶ事が出来なかった。
幻想郷という土地で暮らすには、彼はあまりにも生まれが良すぎたのである。

パチュリー「(日本に戻るのはもう満足できない……とは言っていたけれど)」

幻想郷で過ごし、Jrユース大会では全日本で全試合フルタイム出場。
全日本の準優勝に大きく貢献をした彼は、その後の進路で幻想郷から離れる事を選んだ際にも、
しかし日本でサッカーを続けるのも出来る事ならばやめたいとパチュリーに告げていた。
彼は当然知っていた。サッカー後進国である日本で、高校という3年間を過ごす内、世界とどれだけの差が開いていくのかという事を。

パチュリー「(この話が、あいつが離脱する以前に来ていれば……ね)」

心臓病を克服し、これからは思う存分サッカーをする事が出来るようになった三杉。
彼が恵まれた環境で努力をする事が出来れば、果たしてどれだけの選手になるのか。
彼に対して強い信頼と、それと同程度の期待をかけていたパチュリー。
己の目で彼の成長を見る事が出来ないという事に、ただただ悔しく、残念に思うしかない。

パチュリー「(日本という環境は幻想郷に比較をしても劣っていると聞いたわ。
       ……折角の才能を埋もれさせなければいいのだけどね)」

241 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:54:46 ID:???
咲夜「ですがお嬢様、私が留学中は屋敷の事は如何いたしましょう? ……妖精メイドはいずれも殆ど役に立ちませんが」
レミリア「あー……そこはあれ、美鈴、小悪魔、頑張りなさい」
美鈴「や、やっぱり私達が咲夜さんの穴埋めするんですか……」
小悪魔「こぁー……(パチュリー様の手伝いをしながら咲夜さんの仕事をこなすって、ベリーハードってレベルじゃないですよー……)」

一方、留学をするに当たり問題となる咲夜の不在中の館の管理であるが――。
そこは当然、レミリアの配下である美鈴。そしてパチュリーの使い魔である小悪魔へとお鉢が回ってきた。
上の都合で仕事を増やされる、それに対して文句も言えない。
ブラックではあるが悪魔の館である以上ブラックであるのも当然と言え、美鈴たちは聞き入れるしかない。

咲夜「では留学の日時まで2人には教育をしておきます。
   お嬢様も私がいなくなったからといって、あまり朝更かしをされず規則正しい生活を」
レミリア「はいはい」
咲夜「それと食事中はあまり食事を零さないように注意下さい。 館内でのモケーレ・ムベンベごっこも控えるように。
   お菓子は必ず3時に1日1回のみ。 外から帰ってきたら手洗い、うがいは忘れずに」
レミリア「う、うー?」

そして次に咲夜の心配は不在中のレミリアが果たして自分がいなくても無事に過ごせるかという事であった。
日ごろから何度か言われている小言を集中的に言われ、レミリアは思わずうーうー唸る。
唸るのだが、咲夜が己を心配して言っているのも理解しているので止めない――のだが。

242 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:56:16 ID:???
咲夜「ああ、あと、寝る前に水分の取りすぎはお気を付けください。
   私がいませんので、これからは粗相をされても誰にも気づかれずに処理する事が出来ません」

時が止まる――。

美鈴「――へ?」

――そして動き出す。

小悪魔「そ、粗相……って……」

思わず一同は、レミリアへと視線を向ける。

フラン「お姉さま……もしかして、まだ……」

5歳年下のフランドールは、信じられない表情で姉を見つめていた。

パチュリー「………………」

親友であるパチュリーは、この時、
もう起きている時間帯の筈なのにレミリアの自室を訪ねても迎え入れてくれない事が稀にある理由を悟った。

243 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:57:45 ID:???
……… ……… ………

レミリア「しゃくやーっ!!?」
咲夜「えっ!? ど、どうされましたかお嬢様!?」

思わず顔を真っ赤にして激昂するレミリアに、しかし咲夜は狼狽えるばかりである。
彼女としては心から心配をしての発言である為、それは必然。
狼狽する咲夜を見て、やはり何を言っても無駄であると思ったのか。
それともこれ以上周囲が自分を注視する事に耐えられなかったのか、
イスから飛び跳ねるようにして席を立ち、自室へと走り去っていったのだった。

咲夜「おっ、お嬢様……? ど、どうしたのかしら?」
美鈴「(あ……また何が悪かったのかわかってない顔……)」

十六夜咲夜――紅魔館を取り仕切り、サッカーでも優秀な能力を持つ紅魔館が誇る悪魔の狗。
完全で瀟洒な従者は……残念でKYな従者でもあった。

244 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 00:59:22 ID:???
という事で一旦ここまで。
紅魔館からの留学選手はKY長に決定しました。

それでは。

245 :森崎名無しさん:2018/02/15(木) 22:09:32 ID:???
咲夜さんやらかし過ぎてついに左遷される
左遷…もとい留学先はどこなんだろう?ボランチ向きの留学先ってパッと思い浮かばない

246 :森崎名無しさん:2018/02/15(木) 22:38:28 ID:???
よっしゃDMFの留学先ならヤウンデかポルトや(サカつく脳)
まあ真面目に考えたらイタリア辺りが良さそうではある

247 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/15(木) 23:49:22 ID:???
>>245-246
留学先についてはまた後々判明させる事が出来ればなと思います。
あとあまり中の人はリアルサッカー事情詳しくないので、
なんつートコ送っとんねんというツッコミもあるかもしれませんがご容赦を。

本日は更新はお休みです。
明日には更新出来ると思います。それでは。

248 :森崎名無しさん:2018/02/15(木) 23:49:42 ID:???
本編でボランチ強くて苦戦した国って無かった気がする
日本のボランチが一番強いかもしれない…日本留学してもなー
イタリアかドイツで組織的な守備を学ぶとかかな

249 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:18:31 ID:???
>>248
本編ですと、大体守備が強い選手はDFって感じだった気がしますね……。
WYでのドイツはカルツとシェスターをDMFに配置してましたが、この2人もDMFってイメージはあまり強くないですね。

短いですが投下します。

250 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:19:59 ID:???
命蓮寺や紅魔館とは逆に、所属をする選手が少ないという勢力もある。

妖夢「(…………どうしましょうか)」

魂魄妖夢――今は他チームに在籍をしているが、彼女の大本の所属である白玉楼もまた、
その所属選手が数少ない勢力の1つであった。
彼女はつい先日、主人である幽々子に留学の件について言い渡されていた。
白玉楼に所属をする選手といえば、今は幽々子ただ一人。

しかしながら当然、Jrユース大会の時のような短期間ならまだしも、
亡霊であり冥界の管理者である幽々子が外界に3年間も留学をするという事が出来る筈もなく、
白羽の矢が立てられたのは白玉楼を離脱した筈の妖夢であった。

幽々子から通達をされてから数日。妖夢は考えに考えていた。
留学をする――即ち、己を鍛え直す環境に身を置けるというのは、彼女にとって大きなメリットである。
元々、彼女はよく比較をされる人間組――霊夢や魔理沙といったグループと一括りにされながらも、
実力においては一枚も二枚も下回る。
才能はあるが半人前、才能はあるが運が無い、才能はあるがまるで芽が出る様子も無い。
そういった声が幻想郷サッカーファンから上がる事も多々ある。

妖夢「(厳しい環境に身を置けば……みんなとの実力差も縮まる。
    ……流石に、リグルよりも下なんて地位に甘んじる事は無くなる筈)」

ナチュラルに自分には才能がある筈なのだから、と考えるあたりが非常に甘い。
終ぞ幻想郷Jrユースでは出番が来なかった身という、崖っぷちの状況にありながらも、
己は強いと無自覚に思える――中途半端な実力を身に着けていたのが彼女の悲劇である。

ただ、彼女が己の評価をどうするかはともかく――留学によって力をつける事が可能だろうというのは事実である為、
それは一旦置いておこう。

251 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:21:16 ID:???
妖夢「(ただ……留学をするとなれば、当然幽々子様の元から離れる事になる……それに……パルスィたちとも)」

白玉楼を離れ、妖夢が選んだ――というよりは半ば無理やり引き入れられた新天地、ネオ妬ましパルパルズ。
キャプテンである橋姫、水橋パルスィの強引過ぎる勧誘により、
妖夢だけならず幻想郷では名だたる選手として知られる八雲藍、アリス=マーガトロイドまでもが加入。
ついには強豪とも呼ばれるまでのチームへと成長へと遂げた。

そんなパルパルズに対して、妖夢は愛着を持っている。
当初は強引に引き込まれた事に対して乗り気ではなかったものの、
白玉楼を離れ――幽々子の従者としてではなく、1人の魂魄妖夢としてサッカーをする事が出来たのは楽しい経験だった。
交流の深かった藍や、人当たりのいいアリス。気さくで面倒見のいいヤマメや無口だが仲間思いなキスメ。
サッカーを通じて彼女たちと仲を深めるのも、今までにない事だった。
……一部、あまり仲を深めたくは無い者もいたが。

なんにせよ、パルパルズから離れがたい――妖夢にはそういった感情もある。

妖夢「(パルスィたちに話した時は、みんな私の好きにすればいいと言ってくれたけど……)」

この悩みを、妖夢は既にパルスィたちへと相談していた。
元々義理堅く、隠し事などが苦手な妖夢。
おまけに藍はこの留学計画を提案した紫の式――妖夢にその話が渡っている事もわかっていただろう。
留学をして今よりも強くなりたい……しかし、チームから離れる事も嫌だ。

なんとも我儘な本心を彼女はぶちまけたが、それに対して明確な答えが返ってくる事はなかった。
行くも行かぬも、結局は妖夢本人。妖夢自身が決めるしかない事なのだから、当然と言えば当然であったが。

妖夢「(…………まぁ、当のパルスィ本人はまともに返事をしてくれもしませんでしたけどね)」

パルスィ『妬ましい……! あっさりと強くなる機会を貰えたあなたが妬ましい……!!』

脳裏に相談をした時のパルスィの言葉がよぎり、思わずため息を吐く妖夢。
藍やヤマメといった者たちは真摯に答えてくれただけに、なんとも言えない気持ちである。

252 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:23:18 ID:???
シェスター「サムラーイ! どうしたんだい、ボーッとして」
妖夢「あ、シェスター。 ……練習はもういいの?」
シェスター「うん、ちょっと休憩だよ。 ヨームはしなくていいのか?」
妖夢「うん……まぁ、色々集中できなくて」

こうして妖夢が悶々と1人悩んでいた所、声をかけてきたのはフランツ=シェスター。
かつてアリスが呼び出した、外界からの助っ人選手であった。
ニンジャフリークが高じて日本の文化(多分に間違った知識もある)を好む彼は、
先日のJrユース大会後、戻っていた西ドイツを離れ再び幻想郷のネオ妬ましパルパルズへと復帰をしていた。

西ドイツの元いた所属チーム――ブレーメンへとそのまま戻る選択肢もあったが、
彼の燃えに燃える日本愛が優ったという事だろう。
或いはカルツ……もとい、西尾?や反町も残るのならば、と気持ちの上で楽になった面もあるだろう。
無論、ネオ妬ましパルパルズへの愛着もまたあったのは言うまでも無い。

そんなシェスターは、幻想郷へと戻ってきて――しかし、観光に勤しむ訳でもなく、
パルスィ達と共に練習に明け暮れていた。
普段から彼が練習をしないという訳ではないが、その熱心さは以前にも増しているように妖夢には見えた。
あまりの練習に対する熱意に、松岡監督からも太鼓判を押される程である。

今もまた、朝早くからネオ妬ましパルパルズが本拠としている練習グラウンドで、
松岡監督に付き合ってもらいながら汗を流していたシェスター。
今日の練習は昼からの予定であるにも関わらず、だ。

妖夢「本当にここの所熱心ね。 帰ってきてから……ほぼ毎日じゃない?」
シェスター「そうかな? ……うん、そうかもしれない」

タオルで汗を拭いながら、シェスターは肩を竦める。
でも、まだまだ満足はしていないとばかりに。

253 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:25:30 ID:???
シェスター「Jrユース大会じゃ悔しい思いしたもんね。
      俺もカルツも、それにヨームのオヤカタサマであるユユコさんも……。
      幻想郷でつけた力を見せつけられず、ギャフンと言わされちゃったからね」

そう、先のJrユース大会――シェスターが参加をした西ドイツJrユースは幻想郷Jrユースにやはり完敗をした。
西ドイツの皇帝カール=ハインツ=シュナイダーをキャプテンとし、
幻のゴールキーパーと呼ばれたデューダー=ミューラーを招集。
ここに幻想郷へと召喚をされて大きく力をつけたカルツ、シェスター。
更にはレミリア、幽々子、神奈子といった派遣選手を取り入れ、正に万全とも言うべき体勢を取りながら……。
しかし、割とあっさりと敗れてしまったのである。

その敗北の原因を、シェスターは自分が不甲斐なかったせいであると認識していた。

シェスター「シュナイダーもレミリアさんも、反町や魔理沙さん達には負けてなかった。
      ミューラーだって相当なキーパーだよ。 西ドイツが負けたのは、やっぱり中盤が支配できなかったからだ」

カルツ、シェスター、共に力をつけたとはいえ――しかし、幻想郷の中盤は圧倒的だった。
霊夢、咲夜、ヒューイ。攻撃においてオールマイティな性能を持つOMFと、ボール狩りにとにかく長けたDMF。
これに前後半どちらかしか出場出来ないとはいえ実力は抜きんでているパチュリーや、
シェスターらの誇るキャプテンであり極限までドリブルを磨き上げたボールキープの鬼パルスィまでいる。

彼女たちを前に、シェスターたちは為すすべなくやられたのである。

妖夢「…………」
シェスター「俺達がもっと上手くやれてれば、
      シュナイダー達にボールを供給する事が出来たし反町達に打たせる回数も減らせたんだ。
      まぁ、今更言い返してもたらればでしかないけど……次の戦いを見据えて、今からもっと練習しておかないとね」
妖夢「次……」
シェスター「そうさ! 幻想郷にいれば、みんなに対してリベンジが出来る機会があるだろ?」

254 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:26:48 ID:???
この時、思わず妖夢は感心をした。
元々呑気なように見え、実際妖夢や藍を見かけてはサムライだのキュービだのと声を大にして叫ぶシェスター。
どこかおちゃらけているように見えて、その実かなり熱いハートの持ち主だという事に。
いや、思い返してみれば――パルスィの異常なまでの嫉妬心に感応しチームの為にとパルパルズに貢献してきた男である。
普段が普段でも、根っこの部分を見ればサッカーに対する情熱はかなりのものなのだろう。

妖夢「(単純にこの幻想郷が日本の原風景を残しているからという理由で残った訳じゃなかったんだ……)」

それも理由ではあったのだろうが、幻想郷の選手たちにリベンジをしたいという気持ちも嘘ではないのだろう。
シェスターに対して内心謝罪しながら、妖夢はそして、1つ溜息を吐く。

妖夢「(次って言われて気づいたけど……そうか、また皆と戦うんだ)」

幽々子からの留学の件が頭にあった為に忘れていたが、時が来ればまた幻想郷サッカー界も動き出す。
しばらくすればどこかの勢力からまた、大会の知らせが入るだろう。
再び全幻想郷Jrユースとして戦うのではなく、各々のチームに戻っての戦い。
今この時、練習をしているのも――その戦いで勝利を収める為なのだ。
しかし、である。

妖夢「(今の私で……他のチームのGKから点を奪えるだろうか)」

255 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:28:30 ID:???
妖夢は自分の実力には自信を持っていた。
先にも言った通り、ナチュラルに己を強者であると認識をしていた。
実際に彼女は相応の実力者ではあるのだが――あくまでも、それなりのである。

例えばそれが紅魔スカーレットムーンズのように、キーパーが名無しならば妖夢でも点が取れる。
或いはそれが永遠亭ルナティックスのように、ザルキーパーの代名詞が守るゴールからなら――多分妖夢でも点が取れる。

ならばこれが守矢フルーツズの早苗が相手ならば?
早苗でなくてもいい、その守矢に移籍をした大妖精が相手ならば?
どこのチームに所属して参加をするかわからないが、伊吹萃香が相手ならば?
否、それどころか――このネオ妬ましパルパルズのゴールキーパー、黒谷ヤマメからもゴールを奪えるだろうか?

妖夢「………………」

自分を強者であるとは思いながらも、それでも彼我の実力差を図れない訳でも妖夢は無かった。
故に、自問自答をして――その確率が低いという事もわかっていた。

妖夢「(勿論私も練習をする、して、でも……それと同じだけ、周りも練習をするだろう。
    差は縮まるのだろうか。 次の時までに)」

その確率もまた、恐らくは低いのだろう。
このまま幻想郷に残る――それでは結局、このまま幻想郷サッカーの歴史の中で、
自身の名は反町や魔理沙らといった者たちに埋もれてしまうのではないかと考えてしまう。
それならば、やはり――環境を変えてみるのもいいのでは、それもまた魅力的に感じてしまうのだ。

256 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:29:55 ID:???
シェスター「ヨーム、どうしたんだい?」
妖夢「あ、ごめん。 考え事を……」
シェスター「ヘタの考え、釈迦寝に似たりだよ!」
妖夢「……思いっきり寛いでますねそれは」

微妙に惜しいシェスターの間違いに苦笑いをしつつ、妖夢はもう一度相談をしてみるのもいいかと考え、
シェスターに対してぽつりぽつりと悩みを打ち明けだした。

シェスター「うーん、前も聞いたけど留学かぁ……ヨームはどうしたいんだい?」
妖夢「それが私にもさっぱり。 ……強くなりたいという気持ちは確かにある。 その為には、留学が1番だとも思う。
   でも……不本意ながら、私もこのチームからはやっぱり離れたくない」

強くはなりたい、だがチームは離れたくない。
離れなければここで練習をして強くなるしかないが、それでは周囲と成長速度もほぼ同じになるだろう。
二律背反、どちらも取れず、だからこそ妖夢は悩んでいる。

妖夢「白玉楼を離れてサッカーをするのは、本当に楽しかった。
   ……いや、幽々子様とサッカーをするのが嫌だという訳じゃないけど。
   ただ、藍さんやアリス。 ヤマメやキスメ、シェスターと一緒に過ごすのが楽しかった」
シェスター「俺も!」
妖夢「うん……だから、離れたくない。 でも……留学に行けば、チャンスが広がる。
   もしかしたら、反町や魔理沙にだって追いつけるかもしれない」

257 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:31:03 ID:???
そこまで言ってから、妖夢は「どう思う?」と、視線でシェスターに問いかけた。
シェスターはその意図に気づき、しばらく無言で腕を組み、唸っていたが……。

シェスター「ヨームがしたい道を選ぶのが1番。 1番だけど……」
妖夢「だけど?」
シェスター「……ヨームはここでするサッカーが楽しいって言ったよね?」
妖夢「? うん」
シェスター「……楽しくないサッカーっていうのも、知るべきかもしれない」

次に口を開いて出た言葉に、妖夢は思わずすぐ反応出来なかった。

妖夢「……楽しくないサッカー?」

そして、反応がようやく出来ても――それはただの鸚鵡返しとなってしまう。
だが、シェスターはそんな妖夢の反応にも真剣にコクリと頷き返した。

――無論、妖夢もサッカーをしていて楽しい以外の感情を抱いた事はある。何度もある。
例えばそれはドリブルやシュートが失敗をした時。
例えばそれは試合に負けてしまった時。
例えばそれは他の強者に居場所を奪われ、ベンチから試合を見つめるしかなかった時。

しかし、シェスターは妖夢がそんな気持ちを抱いた事があるのも知っている筈だ。
ならばきっと、楽しくないサッカーというのは、そういったものとはまた違うものなのだろう。
では、何故そんなものを『知るべき』だというのか。

シェスター「ヨームはパルパルズでのサッカーが楽しいって言ったよね?
      でも……外のサッカーは、楽しいだけじゃ出来ない」
妖夢「? 楽しいだけじゃ出来ない?」
シェスター「少なくとも、楽しむと強くなるを両立するのは難しい。 俺はそう思う」

258 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:33:36 ID:???
基本的に、幻想郷のサッカーというのは、趣味の延長線上のようなものである。
競技に準じる者たちも、本職を持っている場合が多く、
だからこそ草サッカー的な楽しみを第一とした主義主張といったものが色濃く出る。
しかし、外界のサッカーはそのような甘いものではない。

シェスター「外の世界の……少なくとも、俺がいた世界でのサッカーは、金を稼ぐ為のサッカーだよ」
妖夢「お金を?」
シェスター「うん。 サッカーをすることで、お金を――お給料を貰う。
      俺がいたのは、そういうチームの更に下部組織。
      将来的には、外の世界にもし戻っていれば、そこを目指していただろうからね」

それは幻想郷サッカーではありえない話であった。
例えば、大会の副賞として現金などが貰える事はある。あるが――しかし、サッカーをしていて恒常的に給料を貰える事などはない。
基本的に、先にも述べたように幻想郷サッカーは道楽なのである。
そこに金銭や何かという、野暮なものが介入する余地は無い。

シェスター「ただ、外の世界は違う。 ……俺はまだマシな方だよ。
      でも、もっと生活が苦しい者は、サッカーで一山当てようとする。 そうすればどうなるか……」
妖夢「…………どう、なるの?」

含ませるようなシェスターの言葉に、しかし、妖夢は首を傾げるだけで……。
それに苦笑いをしながら、やはり妖夢は外の世界に行くべきだ、とシェスターは思う。

シェスター「強くなりたい。 単純に強くなるだけなら、信念さえあればなれるかもしれない。
      楽しみたい。 単純に楽しむだけなら、このチームにいれば草サッカーの延長が出来るかもしれない」
妖夢「………………」
シェスター「でも……更にその先を目指すなら、やっぱりヨームは外の世界に行くべきだと思う」
妖夢「…………うん」
シェスター「俺も強くなりたい、楽しみたいっていう気持ちがあった。 でも、それでもここを選んだ。
      ヨームも、楽しくないけど強くなれるかもしれない――他に得るものがあるだろうサッカーか。
      それともただ楽しいというだけのサッカーか。 どちらも知った上で、選んだ方がいいんじゃないかな?」

259 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:35:42 ID:???
それはシェスターが、パルパルズでする楽しいサッカーと、外の世界の楽しいとは言えない事もあるサッカーを通して下した決断。
敗北を受けてからは人一倍熱心に練習に繰り出し、反町達へのリベンジに燃えながらも――。
それでも、より成長出来るような環境を選ばなかったシェスターの言う、『楽しくないサッカー』。

妖夢「(一層、行きたくはなくなった……けど……)」

厳しい環境に置いてこそ、己は磨かれる。
少なくとも妖夢はそう師匠に教えられたし、そう信じていた。
今の言葉を聞いて、尚一層、外の世界の環境は厳しいものなのだと感じた――ならば。

妖夢「ありがとう、シェスター」
シェスター「ん?」
妖夢「ようやく迷いが晴れた」

思えば、迷いを断ち切る刀を持つ自身が、迷いを見せるなど言語道断。
それでも迷いを見せていたが、しかし、今の問答でようやく妖夢は答えを導き出した。

妖夢「私は……留学に行く」
シェスター「……そっか。 うん、なら応援するよサムラーイ!!」

260 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:37:45 ID:???
強くなる。
厳しい環境に身を置いて、一層の修行を持って強くなる。
楽しくないサッカーというものがどういうものなのか、それは未だに妖夢にはわからない。
ただ、それでも、恐らくは幻想郷の中で一番(反町は秀才ではあるがあくまで日本出身、西尾?はそもそも本国の事情を喋りたがらない)、
外の世界のサッカーに精通をしている者の助言である。

妖夢「それまで、パルパルズの事はお願い」
シェスター「もっちろん! 任せてよ、打倒オータムスカイズ!ってね」

迷いを持っていた少女は、井の中――の外を知る少年の言葉を受け、空へと飛び立った。
厳しい環境に身を置き、知らない事を知り、そして今いるチームの助けとなる事を信じて。
彼女がはばたくか、それとも地に堕ち、幻想郷界隈ではその他大勢も多くいるFWの一員と成り下がってしまうのか。
それはまだ、誰も知らない。

261 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:39:00 ID:???
反町、魔理沙、リグルにポジションを独占されてはしまったものの――それでも、彼女の実力が低い訳ではない。
スピードを生かしたダイレクトシュートと、半霊も使った特有のドリブル能力。
得点を取るのは妖夢に任せるかパルスィのドリブルゴールかの二択というのがパルパルズの方針。
その内の1つが無くなる――というのは、あまりにも痛い損失ではある。
痛い損失ではある、のだが――。

かといって、いなくなったからといってまるで点が取れない可能性が無い、という訳でもない。
藍もアリスも、ダイレクトシュートならば妖夢にも負けない程のシュートを打てる。
自己を過大評価をする妖夢に対して、周囲の評価と言えばその程度である。残念ながら。

ただ――かといって、彼女が不要だからと言って留学に向かわせた訳ではなかった。
事実、先に書いた通り、彼女たちの多くは今回の件に関して、妖夢に一任をするつもりだったのだから。

パルスィ「……いいえ、これでいい。 妖夢は、これでいいのよ」

しかし、それを鶴の一声で妖夢を外界へと向かわせるよう仕向けたのがパルスィである。
妖夢とシェスターが語り合う後方、藍達と共に茂みの中から顔だけを覗かせてそう呟くパルスィの姿は、
滑稽を通り越して非常にシュールであったが……彼女が妖夢を想う気持ちは本物である。

パルスィ「我がネオ妬ましパルパルズ。
     打倒オータムスカイズを目指し、ここまでやってきた」

弱小から這い上がり、ついには幻想郷有数のチームへとなったパルパルズ。
藍、アリス、妖夢、シェスター……といった数多くの実力者を備えてここまでの地位に上り詰めたチームでもあったが、
しかし、その基本形は前身である妬ましパルパルズ時代からのものである。
即ち、ヤマメ・キスメという最終ラインが守り、パルスィが攻める。
ドリブル・ブロック・一対一。いずれにも精通をした強者がいたからこそ、彼女たちはここまで這い上がってきた。
弱者が強者を食い破る、才能の無い者が才能のある者を圧倒する、ただ一つの道筋を信じて。

262 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:40:40 ID:???
………
……


アリス「なんとかうまくいったけど……これでよかったの?」

そして、この妖夢とシェスターのやり取りを生暖かい目で見守っていたのはその他のネオ妬ましパルパルズの面々である。
本日は午後からの練習、にも関わらずここにはアリスをはじめとして、
チームを構成する全員が揃っていた。
……それもこれも、キャプテンであるパルスィが、
シェスターになんとしても妖夢を外の世界に留学に行かせるように説得せよと命令し、その様子を見守っていたが為である。

ヤマメ「妖夢は確かにいい子だよ。 才能だってある。 でも、このままじゃそれも腐っちまうってパルスィの判断だね」

妖夢は、基本的に常識的な人物である。
一時的に見た人を定期的に斬り殺そうとしていた時期もあるが、それはそれ。
温厚で真面目で、力をつける事に対して貪欲でありながら――しかし、幼稚であった。
力をつけたいが愛着のあるチームも捨てがたい。
彼女が迷っていたのは、そんな彼女の性格も多分に影響をしているだろう。

藍「いいか悪いかで言えば、パルパルズにとっては大きな損失だ。
  現時点でも、妖夢の得点力はパルパルズにとって必要不可欠だからな」

263 :>>261は無視してください ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:42:50 ID:???
反町、魔理沙、リグルにポジションを独占されてはしまったものの――それでも、彼女の実力が低い訳ではない。
スピードを生かしたダイレクトシュートと、半霊も使った特有のドリブル能力。
得点を取るのは妖夢に任せるかパルスィのドリブルゴールかの二択というのがパルパルズの方針。
その内の1つが無くなる――というのは、あまりにも痛い損失ではある。
痛い損失ではある、のだが――。

かといって、いなくなったからといってまるで点が取れない可能性が無い、という訳でもない。
藍もアリスも、ダイレクトシュートならば妖夢にも負けない程のシュートを打てる。
自己を過大評価をする妖夢に対して、周囲の評価と言えばその程度である。残念ながら。

ただ――かといって、彼女が不要だからと言って留学に向かわせた訳ではなかった。
事実、先に書いた通り、彼女たちの多くは今回の件に関して、妖夢に一任をするつもりだったのだから。

パルスィ「……いいえ、これでいい。 妖夢は、これでいいのよ」

しかし、それを鶴の一声で妖夢を外界へと向かわせるよう仕向けたのがパルスィである。
妖夢とシェスターが語り合う後方、藍達と共に茂みの中から顔だけを覗かせてそう呟くパルスィの姿は、
滑稽を通り越して非常にシュールであったが……彼女が妖夢を想う気持ちは本物である。

パルスィ「我がネオ妬ましパルパルズ。
     打倒オータムスカイズを目指し、ここまでやってきた」

弱小から這い上がり、ついには幻想郷有数のチームへとなったパルパルズ。
藍、アリス、妖夢、シェスター……といった数多くの実力者を備えてここまでの地位に上り詰めたチームでもあったが、
しかし、その基本形は前身である妬ましパルパルズ時代からのものである。
即ち、ヤマメ・キスメという最終ラインが守り、パルスィが攻める。
ドリブル・ブロック・一対一。いずれにも精通をした強者がいたからこそ、彼女たちはここまで這い上がってきた。
弱者が強者を食い破る、才能の無い者が才能のある者を圧倒する、ただ一つの道筋を信じて。

264 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:44:30 ID:???
パルスィ「だからこそ私は妬ましい。 才覚ある妖夢がこのまま腐ってしまうのは。
     あいつは……私を差し置いて、このチームのエースになれる才能を持ってる。
     それだけで妬ましいのに、それを腐らせるなんて……ああ……妬ましい、パルパル……」
ヤマメ「……心配ないと思うけどねぇ、妖夢って真面目だし。 練習をサボるような奴じゃないだろ。
    反町達に負けてるって言ったって、それで腐るようなタマじゃないだろうさ」
パルスィ「いいえ、腐る。 ……何せ、妖夢は綺麗過ぎる」
ヤマメ「うん?」

パルスィの言ってる意味がわからない、と思わず首を捻るヤマメであったが――。
しかし、藍やアリスなどは理解出来たのか、納得をしたように首を縦に振る。

パルスィ「藍やアリスはまだ……私の思想に共感を抱いて、このチームにいてくれる。 シェスターもそう。
     ただ……妖夢は、あくまでも『楽しいから』というただそれだけでいる。 ……それでは駄目」
藍「……言わんとする事はわかる」

何をするにも、信念――折れない根本が必要である。
ここにいる腐れ縁であるヤマメやキスメだけではなく、
アリス、藍といった者たちも――パルスィの掲げる、たった1つの題目に引き寄せられた。
当初は成行き任せだったとはいえど、今では彼女たちも心から信頼出来る仲間である。

そして、それはシェスターもまた同じであった。

パルスィ「あいつは尚更そう。 外の世界とこちらを知っていながらも、私達を選んだ。
     確固たる信念で」

265 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:46:11 ID:???
パルパルズに残留する事を決め、この幻想郷に残ったシェスター。
外の世界とパルパルズとを知る彼だからこそ、パルスィは彼に妖夢の説得役を任せた。
彼女の言う、妖夢の綺麗さを――汚すように、と。
当初、シェスターはこれに対し、妖夢の自由にさせるべきではないかと考えていたが――それもパルスィに説得され、了承する。
彼としても、妖夢の有り余る才覚を腐らせてしまうのはあまりにも勿体ないと考えたのだろう。

パルスィ「ああ、妬ましい……穢れも知らぬまま、のうのうとサッカーをしようとする妖夢が妬ましい……」
ヤマメ「あちゃ……また始まっちゃったよ」
アリス「ま、今回ばかりはいいんじゃないの?」

爪を噛み、呪詛を呟き始めるパルスィを見て溜息を吐くヤマメに対し、
アリスは肩を竦めながらそう言い放った。
彼女の視線の先には――妖夢とシェスターがいる。

妖夢「私は3年間で、必ずこのチームに不可欠な選手として帰ってくる」
シェスター「ヨームなら出来るさ! っていういか、今でも不可欠だよ!」
妖夢「…………ありがとう。 ごめんね。 みんなに迷惑をかける事になるけど」
シェスター「大丈夫さ。 みんなも言ってただろ、ヨームの好きにしたらいいって!」

いる。いるのだ。パルスィが大好きで大嫌いな、年頃の男女(しかも美形)が。がっつりと将来の事を話し合っているのだ。
無論、彼女たちに他意はない。互いに好意こそ持っているものの、恋愛的なあれそれではない。
無いが、それを見てパルスィがどういう反応をするのかはまた、別問題である。
それを考えれば、パルスィが勝手に妖夢の才覚に嫉妬をしてくれている方が遥かにマシというものだろう。

松岡監督「身体も心も熱くなってきた!!」
しっとマスク「ムハハ! どれ、ここは私がシェスターと同じく妖夢を後押ししてくるとするか!!」
ヤマメ「よしなしっとマスク! あとついでに監督!!  それ以上、いけない」
キスメ「…………」←><という顔をしてる

こうして将来を語り合う男女と、それを見守る仲間たちと、あと賑やかし要員。
てんやわんやもありながらも、こうして未完の大器と言われた少女――。
魂魄妖夢は己の殻を破る事を胸に、世界へ羽ばたく事を決断したのだった。

266 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/16(金) 23:49:26 ID:???
一旦ここまで。
自信家だけどPK外しちゃうみょんすき。

それでは。

267 :森崎名無しさん:2018/02/16(金) 23:54:33 ID:???
乙です
これはオランダゆきかな?

268 :森崎名無しさん:2018/02/17(土) 00:13:41 ID:???
オランダ留学でダーティなサッカーを学んだ妖夢
そして3年後、大事な場面でマリーシアがバレて赤紙を貰う妖夢の姿が!

269 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/18(日) 01:42:11 ID:???
>>267
乙ありです。
オランダは思想はともかく、FW陣が高いレベルのドリブラーダイレクトシューターと妖夢が手本にすべき見本がいますね。
>>268
これにはパルスィも苦笑い

本日も更新はお休みさせてもらいます。それでは。

270 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/18(日) 23:07:46 ID:???
本日もお酒を飲んでしまったので、更新はお休みさせていただきます。

271 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/19(月) 22:17:13 ID:???
本日も更新はお休みさせていただきます。
明日には更新出来ると思います。

272 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/20(火) 23:16:51 ID:???
悩める者もいる一方で、留学を打診されて喜ぶ者もいる。

輝夜「……という訳でイナバ。 八雲紫から持ち掛けられた留学の件……。
   今回はあなたに行ってもらう事にしたわ」
うどんげ「は、はいっ!!」

宵の帳も落ちた迷いの竹林の更に奥、まともな人間ではまず到達できないような場所に佇む屋敷――永遠亭。
ここでは主人である蓬莱山輝夜自らが、留学に向かわせる選手をじきじきに選定し、その密命を言い渡していた。
これを受けたのは永遠亭の誇る薬師――。
の見習い兼家事担当兼雑事担当兼お庭に沢山いるうさぎのまとめ役兼つまりは雑用担当、鈴仙=優曇華院=イナバである。

通称をうどんげとする彼女は、非常に元気よく返事をした。
先ほどから懇々と輝夜が留学について説明する内、もしかしたら自分が選ばれるのかもしれないと考え、
実際に自分が選ばれたのだから当然でもある。

永琳「頼んだわようどんげ。 永遠亭の未来は貴女の双肩……もとい、両足にかかっているわ」
うどんげ「は、はい! お任せ下さい師匠!(師匠にも期待されてるんだ!!)」

尊敬する師匠――永琳にも叱咤され。

てゐ「ま、頑張ってきなよ。 逃げ出さないようにね〜」

(一応)部下であり気心知れた仲である因幡てゐにはかつての汚点をしっかり皮肉られながらも応援され。
うどんげは完全にやる気に満ち満ちていた。

うどんげ「(サッカー留学……私にもこんなチャンスがようやく巡ってきた!
      これでやっと地味で毎日慌ただしい生活とはおさらばだ……うぅ、これまで耐え忍んできた甲斐があったよぉ)」

273 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/20(火) 23:18:53 ID:???
彼女も勿論、永遠亭の者たち――そして、生活自体が嫌いな訳ではない。
月の戦争が嫌で嫌で、思わず逃げ出した臆病兎。
そんな彼女を受け入れてくれた永遠亭に、感謝の気持ちはある。あるが――。
地上の人間は穢れているというエリート意識と、そんな地上で毎日あくせく働いている自分へのストレス。
それらはいかんともしがたい問題として、うどんげの心中に存在をしていた。

元々、彼女自身――サッカーについても弾幕ごっこについてもリアルガチの戦闘力でもそこまで低いものではない。
無論高い方ではないのだが、幻想郷全体の尺度で考えれば、まぁ、ギリ上位から数えた方が早いんじゃないかなというレベルである。
にも関わらず、彼女は自身が軽んじられていると感じていた。

部下のウサギは自分の言う事をまるで聞かないし(ウサギからの人望はてゐの方がある)、
里に薬売りに出かけてもあまり人は買ってくれないし(単純にうどんげの営業がド下手であるだけ)、
家事全般など雑事は全部丸投げされるし(輝夜は姫なのでしない。永琳も色々忙しい。てゐが手伝う筈もない)、
おまけにサッカーではそこそこの実力があるにも関わらず何故かいつも伏兵呼ばわりである。
名無しばかりのチームに行けば、自分だってエースになれる実力はある筈だ、とうどんげは自負していた。
――誰だって名無しばかりのチームに行けばエースになれるとは言ってはいけない。

なにはともあれ、彼女は現状に対して小さくない不満を抱いていたと言える。
しかし、これもサッカーが上達すれば――きっと事態も好転をする筈だと考えてもいた。

274 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/20(火) 23:20:42 ID:???
うどんげ「(名無しの妖精だってサッカーで活躍すれば人気が出るんだもん。
      私だって活躍出来れば人気者になれる筈! そうすればきっと待遇だって変わってくるわ!)」

問題はどうやってサッカーの技術を高めるかである。
1人で練習をしたところで上手くなれない、上手い人に教えて貰って初めて上達すると考えていたうどんげとしては、
これが忌々しき問題であった(なお、この考えを他人に吐露した所、『情けない奴!』という感想を抱かれた)。

何せ永琳は多忙の身――幻想郷一の薬師である彼女は、常に多くの患者を抱えている。
月の天才の異名を持つ彼女にサッカーの教えを乞えれば万事解決だったのだが、
残念ながら永琳はうどんげに最低限の基礎能力を備えさせたまではいいものの、その後はうどんげの自主性に任せていたのだ。
練習を見てくれと言っても、簡単なアドバイスをしてくれるだけで大きな変化は無い。

うどんげ「(でもサッカー留学をすればきっと詳しいコーチの人とか上手い人とかに教えてもらえるはず!
      そうすれば私の実力なら師匠の相棒を名乗るに恥ずかしくないくらいになれる筈だよ!)」

そこに降って沸いた、サッカー留学の話。
幻想郷Jrユースとして戦ってきた彼女は、外の世界でのサッカーというものも見てきた。
そこでは多くのコーチといったものや先輩選手などが、まだ未熟な選手を指導している姿もあった。
もしも自分が同じように指導を受ける事が出来れば――実力は飛躍的に上がるだろうと考える。

うどんげ「(そう! これは間違いなく……)」

うどんチャンスなのである。

275 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/20(火) 23:21:45 ID:???
うどんげ「(毎日の家事雑事から解放される。 サッカーは上手くなる。 私は師匠や皆に褒めてもらえる。
      わぁ、一石二鳥どころか一石三鳥だ!
      もう人生ライン際な状態からはおさらばだよ!)」

このうどんチャンスを見逃す程、うどんげは間抜けではなかった。
留学から帰ってきた後、自分がちやほやされる姿を脳裏に描き思わず表情を綻ばせる。
そんなうどんげの様子に対し、永琳は小さく咳払いをして意識を自分に向けさせ――。

永琳「ともかくうどんげ――留学の具体的な日取りについてはまた後日話すわ。
   あなたはそれまでにここでの仕事を片付け、身支度を整えておきなさい」
うどんげ「あ、そ、そうですね! わかりました!」
輝夜「話は終わりよ。 ……ところで夕餉は何かしら?」
うどんげ「今日はニンジンたっぷりのシチューとにんじんしりしりとにんじん山盛りの炊き込みご飯です」
てゐ「うどんちゃんの壮行会も兼ねるんだし、キャロットジュースもつけといて〜」
うどんげ「もう、しょうがないなぁ。 特別だからね!」

これからの輝かしい己の未来の前では、目の前の雑事など些細な事。
てゐのお願いを快く受けながら、うどんげは今にもスキップをしそうな足取りでお台所へと向かっていた。

今、彼女の中では周囲に期待されているという歓び。
ようやく地味で目立たず軽くみられるという損な役回りからの解放感。
そして敬愛する師匠に褒められるかもしれないという高揚感もある。
それだけ浮かれてしまうのも、仕方ない事なのかもしれない。

廊下を歩くうどんげの、ご機嫌な鼻歌を聞きながら部屋に残った3人はしばし無言でその場に座し。
やがてその鼻歌が聞こえなくなった所で……。

てゐ「…………アカン。 うどんちゃん、完全に浮かれとるウサ。
    もう強くなった後の事考えてる顔じゃんあれ」

まずはてゐがその肩をガックリと落とすのだった。

276 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/20(火) 23:23:19 ID:???
輝夜「いやいや……まあ、やる気は十分だったみたいだし平気でしょ……多分」

輝夜もまた、不安そうに溜息を吐いていた。
うどんげの事を腐そうとするてゐに対し諌めるような発言もするが、そんな彼女の口元も引きつっている。
言っている彼女自身も、完全に浮かれているうどんげに不安があるのだろう。

永琳「とはいえ、うどんげしか送るものがいないのも事実だし……こればかりは」

そして、うどんげが敬愛するお師匠様――永琳もまた、それはそれは盛大な溜息を吐く。
何のことはない。
うどんげは大きな期待をされて留学選手に選ばれた訳ではなかった。ただそれだけの話である。

永遠亭という組織は、決して大きな勢力ではない。
主要とされる人物は4名であり――まず、当主である輝夜はこの屋敷を離れる訳にはいかない。
その輝夜の従者でもある永琳もまた、離れられる筈もない。この時点で2名に絞られる。
うどんげかてゐの二択となった時、どちらが永遠亭に残らないと影響が大きいか。
うどんげにとって悲しい事に、てゐの方が永遠亭に与える影響が大きい。

先にも述べた通り、配下のウサギたちが言う事を聞くのは、てゐの命令のお蔭である。
普段うどんげがやっている家事雑事なども、ぶっちゃけ誰でも出来る事だ。
てゐがその分を請け負っても――てゐの負担は大きいが問題無い。
つまりはうどんげが今やっている事はてゐにも大体出来る事だが、
てゐが今やっている事はうどんげにはとても出来ない事なのである。

よって、留学に行かせるのはもううどんげしか選択肢が無い状態であったのだ。

とはいえ、それを正直に言った所でうどんげがショックを受けるだけ。
だからこそ、こうして4人揃って会議のような形で言い渡したのである。
……正直な所を言えば、少し考えればうどんげ自身でも自分の立ち位置というものに気づき、
選ばれた理由にも察しがつくかもしれないが――残念ながら彼女は完全に有頂天となっていた為、気づく事が無かったという。

277 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/20(火) 23:24:31 ID:???
輝夜「……まぁ、単純な実力を考えても私やてゐよりはイナバが行った方がいいとは思うんだけどさ」
てゐ「うどんちゃんだからなぁ……」
輝夜「ねぇ……」

ただ、彼女たちがうどんげに対して全く期待していないという訳ではない。
少しは期待していた。少しは。
実際問題、輝夜は自他ともに認める三流キーパー。
てゐもパス精度に関してだけならば一流レベルにも通用するが、それ以外はこれもまた三流といった程度。

それに比較をすれば、うどんげはまだ永琳に基礎能力を鍛え上げられている為にそれなりには強い。
ここから更に一段、二段とレベルアップをしてくれれば――やがては永琳を超える……のは無理としても。
永琳の相棒として恥ずかしくないだけの実力はつけてくれる可能性はある。
……無論、可能性の話であり、それ以上に彼女がただうどんげである、というだけで失敗しそうな気が彼女たちはするのだが。

永琳「……賽は投げられた。 ここから先は、流石の私でもどうなるか読めない」

天才の頭脳を持ってしても、うどんげが更なる飛躍をするか否かは見当がつかない。

278 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/20(火) 23:26:02 ID:???
輝夜「これが駄目だったらいよいようちも終わりよねー」
てゐ「他の勢力はどんどんメンバー吸収してるからね。
   うちなんか酒商店の奴らとか人里の連中くらいしかそういうのいなさそうだけど」
輝夜「あーあ……昔のサッカー界だったら、永琳1人でも大会で優勝とか出来たのにねぇ」

幻想郷Jrユースとして戦ったうどんげとてゐは、ろくすっぽ試合にも出れぬその他大勢要員。
アルゼンチンJrユースに参加をした永琳は、その幻想郷と対戦しまさかの大敗。
そして、幻想郷に帰ってきてみればその永琳しかほぼ見るべき選手がいない――。
現在の世情を考えれば時代錯誤とも言える典型的なワンマンチームである。

既にその名は失墜し、更には這い上がる事も困難。
辛うじて強豪と呼ばれるだけの知名度はあるものの、それだけである。

だからこそ、彼女たちはこの留学の話に乗らざるを得なかった。
そして彼女たちは信じるしかない。
うどんげがしっかりと成長をして、この永遠亭に帰ってくる事を。

永琳「(うどんげにはポテンシャルがある……切っ掛けさえあれば、それが発揮されれば……。
    必ず、どのチームにも引っ張りだこになるだろう程のものが。
    ……問題は、彼女がそのポテンシャルについてまるで気づいていなさそうな事だけれど)」

小さく溜息を吐き、小窓から見える満月を見上げる永琳。
それに気付けた時、あの情けなく鈍くさくその癖プライドだけは一人前で割と打たれ弱いバカ弟子は、
きっとサッカーの実力面だけでなく精神的な面でも大きく成長をする事が出来るのだろう。

師匠の心配をよそに、有頂天になり――人生のライン際で飛んで跳ねる幸せ兎。
跳ねて跳ねて飛び跳ねて、その手が月に届くのか。
それとも転んでラインの外に飛び出してしまうのか。

それもまた誰にもわからない。

279 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/20(火) 23:27:19 ID:???
といった所で短いですが一旦ここまで。
人生のライン際なうどんちゃんすき。

280 :森崎名無しさん:2018/02/21(水) 00:38:25 ID:???
乙でした
永遠亭は人材不足が深刻ですなぁ
うどんちゃんが反町クラスに育っても厳しそう

281 :森崎名無しさん:2018/02/21(水) 01:50:31 ID:???
乙でした
超鈴仙伝説始まったな(始まるとは言ってない)

282 :森崎名無しさん:2018/02/21(水) 12:27:50 ID:???
助っ人でゴールデンフリーザを呼ぼう(提案)

283 :森崎名無しさん:2018/02/21(水) 22:01:31 ID:???
ふと思い立ってうどんげの能力値を推測してみた(過去スレ見ながら本スレ換算、一部推測)

名前    ド パ シ タ カ ブ せ 高/低 ガッツ  総合
うどんげ 71 73 70 69 70 68 71 3/3  750/750 492

   うどんげ
やや華麗なドリブル(1/4でドリブル力+2)
マインドシェイカー(1/4でドリブル力+4)
カローラヴィジョン(パス力+2)60消費
インビジブルハーフムーン(高シュート力+4)200消費
ロケットインミスト(高パス力+4)200消費
スキル・人生ライン際(うどんげが焦ったとき(?)、全能力+1)

ポストプレイが実は優秀(なお必殺シュートは反町のただのシュートと同値)
全能力+1されて、ドリブルかシュートが+2されて、何か技を習得できれば葵・山森クラスにはなれるかな?

284 :森崎名無しさん:2018/02/21(水) 23:04:19 ID:???
素質自体は有りそうだけどそれを自分で蓋をしてる典型だな

285 :283:2018/02/21(水) 23:40:46 ID:???
ミスった、ロケットインミストはたぶん(高パス力+3)150消費だ

286 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/21(水) 23:59:59 ID:???
>>280
乙ありです
人里の慧音先生や商人民族の方々の力を借りる事もできますが、
こちらの方々は「慧音は置いてきた、このレベルの戦いにはついてこれそうもない」状態に近いので……如何ともしがたいですね。
縁深いもこたんもオータムスカイズを離れる事は無いでしょうし。

>>281
乙ありです
割と強くはなると思うんですよ、強くは(活躍するとは言ってない)

>>282
フリーザ様が参戦してくれればまだ戦えますかねぇ。
問題はフリーザ様としては百貨店の経営の方が忙しくてサッカーやってる暇が無いという事ですが。

>>283 >>285
あわわ、どうもお疲れ様です。
わざわざ過去スレを辿っていただき正確な数値出していただけて感謝。
実際、それなりには文中で書いている通り強いんですよね……次レスで、
もしもこの留学編を実際にゲームとしてやっていたらどの程度の数値でスタートしていたかを公開させてもらいます。

>>284
自分に自信は持ってるけど、かといって超一流には届かないと蓋をしているタイプですね。
ついでに言うとそんな超一流に頼りまくりの精神面もあります。
近くにいるのがディアス互換の永琳じゃ仕方ないと言えば仕方ないですが。

287 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/22(木) 00:02:45 ID:???
Jrユース編終了後、これから始まる「留学編」更をにゲーム形式でスレを続けていた場合、
こちらの予定ではある程度のキャラは技などを削除し能力値の見直しをするつもりでした。
Jrユース時点で多くのキャラが多くの技を習得していた為、差別化などが難しくなっていた為ですね。
妖夢とうどんげに関しても、この留学編をするにあたって一新しました。ちょっと詳しく見ていきましょう。

名前   ド パ シ タ カ ブ せ 高低 ガッツ 総合
妖夢   72 69 71 70 70 69 72 2/4  750/750 493
うどんげ 71 73 70 71 72 70 71 3/3  750/750 498

    妖夢
天女返し(1/4でドリブル力+2、吹っ飛び係数2)
未来永劫斬(シュート力+6、吹っ飛び係数2)200消費
待宵反射衛星斬(低シュート力+5、吹っ飛び係数2)250消費
スキル・幽明の苦輪(ドリブル時、任意発動。二度判定)120消費

    うどんげ
マインドシェイカー(1/4でドリブル力+4)
カローラヴィジョン(パス力+2)60消費
ルナティックレッドアイズ(シュート力+5、1/2で相手GKに転倒ペナ)200消費
インビジブルハーフムーン(高シュート力+4)200消費
スキル・人生ライン際(後半以降発動。
           一度も得点に絡んでいない時点から自身が点に絡むまで全能力+1、必殺技発動率+1/4)

288 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/22(木) 00:05:20 ID:???
妖夢のコンセプトは強化版新田です。
幻想のポイズンでは当初は一定以上の実力を有しており、しかし周囲の成長速度についていけなかった妖夢。
東方サッカーでの互換対象は新田ですが、
流石にJrユース時点の新田程弱くは無いだろうという事もあり特殊スキルはそのまま残し、ダイレクトも合計+9補正はかなりのものです。
ただ、素のシュート力が弱い。ドリブルもスキルとの兼ね合いを考えると素の数値はこれくらいかなという所。
まずもって反町リグル魔理沙といる幻想郷ではJOKERやクラブAでも出ないと起用されない感じですね。

うどんげは総合力では佐野と同格です。仲間だもんげな妖夢にも実は勝っています。
が、ご覧の平均的な配分と半端な技のせいで微妙な評価を受けざるを得ない選手。弱くは無いんだけど……という感じですね。
スキル・人生ライン際はネーミングが気に入ったので削除せず残しています、こちらもまた強力なスキル。
ポジション的には本編での山森……からグライダースマッシュを抜いた感じが近いでしょうか。
シュートを打てない山森となると、やはり主役にはなれない感じですね。そんな彼女も強くなれる要素があるのですが。




本日は更新は無しとさせていただきます。
それでは。

289 :森崎名無しさん:2018/02/22(木) 00:12:46 ID:???
プレイヤー目線だと人生ライン際が強いしSBに転向させた方がと思うな
FWからSBって比較的ポピュラーなポジ変更だし守備の素質もまあ問題はなさそう

290 :森崎名無しさん:2018/02/22(木) 10:05:31 ID:???
少なくともシュート70はFWの数値ではない

291 :森崎名無しさん:2018/02/22(木) 16:53:55 ID:???
謝れ!シュート70で他分野もうどんげ以下な本スレ反町に謝れ!

292 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/22(木) 23:45:32 ID:???
>>289
人生ライン際が発動すればタックル72、カット73ですからね。
技の1つでもあればまぁそこそこ活躍出来るでしょうか?そこそこ止まりでしょうが……。
>>290
少なくともストライカーと呼ぶには低すぎますね。
>>291
なおこのスレでは魔王様になってしまっているもよう。
改めて見ても酷い数値ですねほんとに。

本日も更新はお休みさせていただきます。明日は出来たらと思います。

293 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:09:54 ID:???
留学の話を聞いた瞬間、従者たちの想いが1つとなる組織もある。
忌み嫌われた妖怪たちの行き着く先――旧地獄を統べる地下の楽園、地霊殿。
当主である古明地さとりは、
八雲紫から受けた話を早速己のペット達(地霊殿にいる者の多くは、元はさとりのペットである)へと説明していた。

さとり「……という訳で、この地霊殿からも1人。 留学に向かわせる選手を決めなければいけないわ。
    おくう、お燐、どうかしら?」
おくう「う、うにゅ! 外の世界でサッカーしたら強くなれるんですか!?」
さとり「ええ、きっと。 勿論相応の努力は必要だけど……環境に関しては、ここよりずっとよくなる筈だわ。
    おくうも、外の世界の施設は見てきたでしょう?」
おくう「はい! なんだか凄そうな、よくわからないのが沢山ありました!」
お燐「(よくわからない……まぁ、おくうのオツムじゃなくても河童が弄ってそうな機械だなんだってのは、
    あたい達もわからんしなぁ)」

旧地獄の一角に居を構えるとあり、地霊殿近くのサッカー施設というものは環境が整っている訳ではない。
勿論、旧地獄街道の方に比べればここら一帯はさとりの管理している場所という事もあり、
忌み嫌われ忘れられた妖怪たちが暮らすには十分すぎる設備がある。が、それでも比べればという話だ。

実際に外の世界でフランスというサッカー先進国で最先端の練習を繰り返してきたさとり。
そして、幻想郷Jrユースとして外の世界で練習を積んできたおくう。
どちらもこの地底世界ではありえない程の充実した環境には覚えがあり……。
それだけでサッカーが上手くなれる訳ではないのだが、ここでするよりは成長する可能性が高いだろうという事はわかる。

おくう「そっかぁ、今よりもっと上手くなれるんだぁ!」
さとり「………………」

無邪気にそう呟くおくうは、傍から見れば留学に乗り気なようにも見えるのだろう。
事実、彼女は幻想郷Jrユースとして戦ったあの大会の中、
まるで出番が来ず活躍出来なかった事を恥じ、悔いていた。強くなれる機会があるのなら、すぐにでも飛びつくだろう。
ただ、そんなおくうはニコニコと笑みを浮かべたまま、さとりをじっと見やるだけだ。

294 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:11:23 ID:???
おくう「(さとり様が留学に行ってくれたら、今よりもっと強くなってくれる!
     そして今度こそ、あの意地悪な人間を倒すんだ!!)」
さとり「………………」

心を読む覚り妖怪――古明地さとりには、おくうの心が透けて見える。
今、おくうの中にあるのは、純粋にさとりがこの留学に行き、
意地悪な人間――反町を今度こそシャットアウトするのだという確信。
そんなおくうの心から……しかし、目を逸らすようにしてさとりは矛先を変える。

さとり「お燐はどう?」
お燐「にゃっ……あ、あたいですか?」

火焔猫燐……彼女は幻想郷Jrユースに一時期選出されながらも、合宿でリタイアするという憂き目にあっていた。
ドリブルを得意とし、そのネコ科特有の俊足としなやかさを持った技術は高いレベルではあったのだが、
しかし、如何せん幻想郷Jrユースには彼女以外にも大勢のドリブラーがいた事が運のつきだった。
召集される以前の大会で負傷をしたパルスィが、驚異の回復力で実力を合宿中に取り戻した事も不運である。
結果的に、役割の被る選手が大勢いたが為に彼女は主人や友人が外の世界で戦う中、
寂しくこの地霊殿で帰りを待っていたのだった。

それだけに、今以上の力を手に入れたいという欲求はおくう以上のものであろう。
さとりの問いかけに対して、しかしお燐は困ったように俯く。

お燐「(あたいだって行きたいのは山々さ……でも、一番はさとり様に行ってもらいたいんだ。
    でも……)」
さとり「………………」

彼女もまた、さとりに留学に行ってもらいたいと願う1人であった。

295 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:12:35 ID:???
この幻想郷界隈で、かつて三大キーパーと謳われていた古明地さとり。
しかしながらオータムスカイズとの戦いを経ていく内に、さとりに降りかかる罵詈雑言の嵐は日に日に増えて行った。
対戦する時は常に大量失点。
反町どころか、他の選手にもゴールを奪われる始末。
遂にはフィールダー全員を含めての、驚異の11人抜きゴールという屈辱にも甘んじた。
……しかも、その時の反町のシュートは完全なるミスキックで――である。

古明地さとりという少女にとって、反町一樹という少年はトラウマ以外の何物でもなかった。
トラウマを操る妖怪が、トラウマに苛まれるなど皮肉にも程がある。

そしてそんなさとりは――先のフランス国際Jrユース大会において、各国へ送られる派遣選手として選出された。
幻想郷に比較をして劣る各国に対し、選手兼コーチという名目で向かった先。
まだ地位が失墜した自分でもそんな重要な役回りを任せられる程には認められていたのかと感じたのは当初だけ。

さとり……そしてその妹であるこいしが派遣された場所は、大会開催国でありながら、
一部の選手以外は世代で見てもワーストクラスの選手が目白押しの国、フランスだった。
どこからどう見ても左遷――便宜上、さとりという一勢力の主に対して形としては派遣選手の体を為したものの、
実際の所はどうでもいいその他の国を押し付けたという形だった。

これに対してさとりは心底絶望をした。
派遣選手である自分たちの力量については誰よりもさとり自身が知っている。
彼女たちは決して強い方の選手では無い――反町一樹に『凌辱』をされ、自信を完全に喪失していた彼女はそう感じていた。
事実、幻想郷サッカー界に精通する者ならば、他国に派遣された選手に比べて見劣りをすると断定をしていただろう。

296 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:13:40 ID:???
その上、フランスJrユースはキャプテンであるピエールとストライカーのナポレオン以外は、
幻想郷の各チームに所属をする妖精やら羽目玉やらバケバケやら……そういった類の選手と大差無い実力。
有り体に言って、雑魚である。
このチームで勝てる筈が無い。誰もがそう思う。だからこそ、さとりは諦めていた。

だが、そんなさとりを――2人が救ってくれた。
1人は古明地こいし……さとりの唯一の肉親であり、誰よりも大切な妹。
そしてもう1人は若林源三……さとりと同じくザルキーパーの烙印を押され、地の底へと叩き落された『元』天才キーパーである。

絶望の縁にいたさとりに対し、偶然出会った若林は――しかし、そんなさとりを軽蔑し、奮起した。
それがさとりには不思議でならなかった。
反町一樹に思うが儘に蹂躙され、今まで大事にしてきたものを奪われ、それでも尚立ち上がろうとする気概。
意地の塊のような男である若林の生き様を、さとりはまるで理解が出来なかった。

こいしについてはもっと理解が出来なかった。
弱い弱いとされていたフランスの選手たちを、おはようからおやすみまで――朝から晩まで、練習のサポートを続けた。
気まぐれで飽き性で、何よりも我儘なこいしからは考えられない行動である。

何よりも、弱い選手を鍛えるという『無駄』な行為。何故そんな事をするのか、さとりはわからなかった。
何もかもを諦めていたさとりは、その時点では既に自信どころか戦意を喪失していたのである。
ただ、それでも――泥塗れになりながら呟いたこいしの言葉を、さとりは今でもしっかりと覚えている。
さとりこそが幻想郷でも一番のキーパーだという言葉を。
今度の大会で、今度こそそれを証明して見せて欲しいという言葉を。

297 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:14:41 ID:???
――思えば、さとりがこうして駄目になるまで、こいしとさとりは決して仲が良い訳ではなかった。
悪かった訳ではない。
ただ、こいしの性格上、姉であるさとりに対して大きな執着を見せるという事は無かったのである。
それがさとりの地位が失墜するや否や、こいしは献身的にさとりの為にと動いた。
チームを強くする為にと、フランスの選手たちを鍛え上げ、さとりを懸命に励ました。
フランスの選手たちもそのこいしの気持ちに応えようと――彼らに出来る、精一杯の努力を積み重ねた。
無論、チームの中心人物であるピエール、ナポレオンも同様である。

そんな彼女たち――彼らを見て、ようやくさとりは立ち直った。
自分たちは弱い。だが、弱いのならば強くなればいい。
弱音を吐く心を捨て去り、こいし達に支えて貰ってようやく折れない心を手に入れたさとりは――。

ただ1人で立ち向かう事を決意していた若林源三と、修練に励んだ。

……その後、さとりは大きく成長を遂げた。
力押しに弱かった貧弱な体は、簡単には吹き飛ばされぬ程に屈強に。
相手の心を読んで行うセービングの速度は、誰よりも速く。
死のグループともされたイタリア、ウルグアイ、アルゼンチン――そして幻想郷と揃ったグループに配置される中。
それでもさとりを有したフランスは、リーグ最終戦である幻想郷との戦いを前に決勝トーナメント進出を決定づけていた。

……結局、最後の最後で幻想郷には敗れ、決勝トーナメントでも敗退をしてしまった訳ではあるが。
しかし、他国に派遣された選手との実力の違い。
己の大きな成長という点を見せつけられたという意味では、名誉を挽回出来た大会だったと言っていいだろう。

298 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:16:20 ID:???
さとり「(そう、私はもう十二分に活躍が出来ました……)」

さとりの心中では、まだ、これ以上を望む気持ちは当然ながらある。
何故なら、彼女はまだ反町一樹に一度として勝っていない。
選手個人としても、チームとしても。

幻想郷三大キーパーという称号如何はともかく、ある程度の権威は回復出来たとはいえ――。
未だに彼女自身はリベンジを果たせていないのだ。
本音を言えばそのリベンジの機会が欲しい――その為の、強くなる土壌が欲しい。
ただ、それは出来ない。
だからこそ、彼女は己の心に蓋をする。自分は十分活躍出来た、それよりも大事なペット達にチャンスを与えるべきだと考える。

さとり「(もう十分、十分我儘を通させて貰った。
     私がいない間、お燐は本当によくこの地霊殿を守ってくれた……これ以上、皆に負担をかける訳にはいかないわ)」

そう――彼女は一勢力の代表だからこそ、留学には行けないのだ。
無論、彼女がそうしたいと言えば、彼女のペット達はもろ手を挙げて賛成をしてくれるだろう。
さとりの事を愛し、何よりも大事に思ってくれている彼女たちだ。疑う余地は無い。
だが、だからこそ出来ないのだ。
さとりがいなかった間、お燐が――おくうがいつも管理している灼熱地獄の様子を見る事もあって、
てんてこ舞いの忙しさでこの地霊殿を管理してくれていた事をその第三の瞳を持ってさとりは知っている。

彼女たちの負担を考えれば、どうして留学に行きたいなどと言える事が出来るだろう。

さとり「……すぐに答えが出せないのなら、よく2人で話し合って考えてみて。
    どちらが留学に行くのか……ね?」
おくう「うにゅ? あれ?」
お燐「(さとり様……本当は自分が1番行きたいのに……)」

さとりの言葉を聞いて、予想外の一言だったのかおくうは首を傾げ……。
お燐はやはり俯いたまま、悲痛な叫びを心の中で上げる。
その声を聞こえない風に装いながら……ふと、さとりはこの場にもう1人いるべき人物がいない事に気付いた。

299 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:17:23 ID:???
さとり「……そういえばこいしはどうしたのかしら?」

そう、つい先ほどまで考えていた――最愛の妹、こいしの姿が見えない。
いや、見えないのはいつもの事だ。何せ無意識を操る彼女――完全な視覚外から出てきて驚かせるのは日常茶飯事。
ただ、この場――大事な話があるからと言い聞かせていたにも関わらず、姿を見せないというのは変である。
あの大会から帰ってきてからも、今まで以上に姉妹仲が深まっていた古明地姉妹。
基本的に気まぐれであるこいしも、さとりの言う事ならばある程度は聞くようにまで関係は改善されていたのだから。

お燐「ありゃ? そういえばおかしいですね……おくう、なんか知らない?」
おくう「わかんない。 さとり様はわかりますか?」
お燐「……今誰がこいし様の事を話題に出したかね」

ペット達もこいしがいない事を不思議に思い、首を捻る中――。

ガチャッ

こいし「やっほー!」
おくう「あっ、こいし様!」

当の本人――こいしが扉を開き、さとりたちが話し合っていた広間へと姿を現した。
またそこらへんをほっつき歩いていたのかと内心不安だったさとりは、
彼女が姿を見せてくれた事に安堵しながらも注意をする。

さとり「言ったでしょうこいし、大事な話があるから広間に集まっていなさいって。
    おくうでもちゃんと覚えてやってきたのに……」
お燐「(……まあそのおくうは案の定忘れてたからあたいが引っ張って来たんだけどね)」
さとり「…………ともかく、座りなさいこいし。 もう一度話を……」
こいし「いーよいーよ、もう聞いたもん。 サッカー留学でしょ?」
さとり「…………? こいし、あなた……」

300 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:18:43 ID:???
呆気らかんと言うこいしに、さとりは思わず眉を潜める。
もう聞いた――つまり、恐らくは、こいしはきっと最初からこの場にいたのだろう。
そしてさとりがサッカー留学の話をすると共に、この部屋を出て行った。
無意識を操るこいしだ。姿を現さないだけでなく、誰にも感づかれず部屋を出て行く事など造作もない。
それ自体は問題では無い。問題は――何故そんな事をしたのか?という事だ。

まるで訳がわからない、とばかりに混乱するさとりに対して、しかしこいしはニコニコと笑みながら口を開く。

こいし「サッカー留学はお姉ちゃんが行きなよ! 行きたいんでしょ?」
さとり「……はぁ」
お燐「こいし様、それは……」
おくう「あ、そうですよね! やっぱりさとり様が行くんだぁ!!」
お燐「おくう、あんたちょっと黙っときな。 話がややこしくなる」

無邪気に言い放つこいしに対して、さとりは溜息を吐くばかりだ。
先にも言った通り、さとりにはこの地霊殿を離れられない訳がある。
地霊殿の主として、一勢力の代表として、3年間もの長き間を留守にする訳にはいかないのだ。
こいしもその程度の事はわかっている筈だと思っていたのだが、どうやら思い違いらしい。
そう考えたさとりは改めて説明をしなければならないか、と考えるのだが――。

こいし「地霊殿の事でしょ? だいじょーぶ!」

先手を取って、こいしがドン!とそのなだらかな胸をひとたたきし。

こいし「私が責任を持ってみておくから!!」

フンス、と鼻息荒くそう宣言をするのだった。

さとり「…………はぁ?」

これを受けて、さとりは思わずそう呟き返すのがやっとである。

301 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:20:03 ID:???
さとり「あ、あのねこいし……貴女、何を考えてるの」
こいし「何ってお姉ちゃんの代わりに地霊殿を管理するんだよ! 大丈夫大丈夫、まっかせて!」
さとり「………………」
おくう「流石こいし様! うにゅう、私もお手伝い頑張ります!!」
お燐「いや、いやいや……ちょっと待ちなよおくう」

簡単に言ってのけるこいしだが、さとりから見てみれば無謀極まりない。
というか、屋敷の管理という仕事を甘く見ているのではないだろうか、と感じてしまう。
この旧地獄を預かる地霊殿の役割は、忌み嫌われた妖怪たちが好き勝手暴れていないかという治安維持に始まり、
近隣の皆様との関係を円満なものにするご近所づきあい、おくうやお燐はいいものの喋れないペット達のお世話。
更には灼熱地獄の管理と、多岐に渡る。

特に灼熱地獄の管理についてはペットであるおくう達に任せてこそいるものの、
そのペット達の配属をどうするか、休暇はどうするかなどを決めているのはさとりだ。
各々の特性や性格、能力を考えてシフトを組む為に毎度頭を悩ませている。

さとり「今度冷却担当の班の子が2人揃って長期休暇を取っちゃったからその穴埋めも考えないといけないし、
    加熱班の主任が腰やっちゃって復帰時期が未定な分余裕を持ってシフトを組まないといけないし……」
おくう「うにゅ……ギックリ腰でしたっけ?」
さとり「いえ、ヘルニアみたいよ。 ああそうそう、労災についてもまた話し合っておかないと……」
お燐「あ、そういえば来月に中途の採用面接入ってましたね」
さとり「ええ。 それを考えても、今ここを離れる訳にはいかないわ……」

旧地獄という事はかつての地獄。
未だに必要な管理を請け負う事で現在の地獄からは金銭を受け取って成り立っている。
そして、成り立たせているのは全てさとりの能力あってのものだ。
まるでこれまで手伝いもしていなかったこいしが、いきなりやってきて全て出来る筈もない。

さとり「来月頭には経営会議もあるし……あ、来週には視察もやってくるわ。 それまでに掃除もしておかないと」
お燐「……こいし様、さとり様はこの通りお忙しいです。 流石のこいし様でも、さとり様の代わりは……」

302 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:21:13 ID:???
やらなければならない事は、数えだせばキリが無い。
1つ思いつくとまた1つと仕事を思い出すさとりを横目で見ながら、お燐はこいしを諭すのだが……。

こいし「そだねー、私1人じゃ難しいかも。 でもね」

ガチャッ!!

こいし「みんなが力を貸してくれるって言ってるから、大丈夫だよ!」

言いながら、こいしは自分が入ってきた扉を思い切り開いた。
そこから入ってきた――否、なだれ込んできた一団を見て、一同は目を丸くして驚く。

ウサコッツ「さとり様ー、後の事は気にしないで外の世界行ってきてよー!」
さとり「う、ウサコッツ!?」

303 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:22:35 ID:???
そこにいたのは、地霊殿の誇るぬいぐるみ型ペット――ウサコッツ。
愛らしくとてとてと歩きながらさとりに対して語り掛ける一方、
その後ろからは更に続々とさとりが所有するペット達がさとりに声をかける。

デビルねこ「僕もまだちょっと体の調子が悪いけどさとり様の為に頑張るよ〜」

生活習慣病を患いながらも、健気にさとりの後押しをするデビルねこ。

Pちゃん・改「………………」

何も言わず、無垢な表情でさとりを見つめるPちゃん・改。

ヘルウルフ「さとり様……チュキ!」

チュキかコロチュしか喋れないながらも、精一杯の応援をするヘルウルフ。

アーマータイガー「ウッス! さとり様の為なら俺もあの……頑張るッス! ウッス!!」

力仕事なら誰にも負けない。本当は強いぞアーマータイガー。

304 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:23:42 ID:???
「俺が本気出したら2人分の穴埋めくらい軽い軽い、マジで」「空姉さん達とも協力してやってきますから安心してください!」
「くっそー、俺もキャスト・オフ(羽化)出来たらなぁ……」

アリジゴク型のペット、セミ(幼虫)型のペット、更には何故か剥かれて調理される寸前のエビ型のペットまで。
他にも多くのペット達が口々にさとりの留学を願い大挙して部屋へと押し入っていた。
これにはさしものさとりも驚いたものの――一番の驚きは、彼らの言っている言葉が心の底からのものであるという事。
誰もがさとりの事を想い、さとりの願いを叶えたいと想い、助けになろうとしてくれている。

さとり「みんな……」
お燐「で、でも……みんなは元々うちのペットじゃないか。 仕事の戦力としてはいて当然で……」
こいし「皆には今以上にもっと頑張ってもらう。 その分お給料もたんと弾んであげる。
    それにね、はい」

言いながらこいしが机に置いたのは、紙の束――。
一体何かと思って見てみれば……それが多数の履歴書である事がわかる。

こいし「ウサコッツたちに求人看板を持たせて立たせたら、これだけすぐに集まってね〜。
    穴埋めするには十分だと思うんだ」
さとり「こいし……」
こいし「お金はすっごくかかっちゃうけどね」

そこだけはごめんね、と笑いながら言うこいし。
実際、今いるペット達の労働時間を増やし給料を上げ――更には新たに人材を募集するとなればコストがかかる。
かかるが――しかし、それだけやればさとりの穴は埋まる。
非効率的ではあるだろうが、こいしの案ならばさとりが後願の憂い無く留学に行けるだろう。

さとり「………………」

305 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:26:16 ID:???
さとりはニコニコと笑みを浮かべ、さぁ面接の日取りを考えないとと意気込んでいる妹を見やる。
彼女の周囲にはウサコッツを始めとしたペット達が群がり、こいしの指示を待っていた。

おくう「私も頑張るよ! さとり様は何も気にせず外の世界で頑張ってきてください!!」
さとり「おくう……」

あまり頭がいいとは言えないが、純真なおくうは――ここまでずっとさとりの留学を望み、それを発言してきた。
彼女の頭ではやはり理解があまり出来ていないが、
それでも今の流れがさとりが留学をするにあたり問題が無くなってきた状況だという事は読み取れたのだろう。
両腕でぐっと力瘤を作る仕草をする彼女が、なんとも頼もしく見える。

お燐「……あたいも、あたいも頑張ります。 3年間……長い期間、さとり様が地霊殿を思って不安になる事もあると思いますけど。
   ここはあたい達に任せて下さい」
さとり「お燐……」

対して、何かと聡いお燐も――ことここに来て、ようやく覚悟を決めた。
地霊殿における幹部のような役割を持つ彼女は、さとりが不在の際――まるで地霊殿の運営関連では役に立たないおくうや、
そもそもあまり興味が無く遊びほうけているこいしに代わり、取り仕切る事が多かった。
実際にさとりたちがJrユース大会に参加している間にも、彼女が管理を代行していたのは事実。
しかしながらその膨大な作業量には辟易しており、数か月だけでも大変だったのが3年ともなれば大丈夫なのかと不安にも駆られたが、
それでもこれだけの多くの仲間と力を合わせれば――きっと可能だろうと感じる事が出来た。
何よりも、現実的にさとりの留学が出来そうになってきたのだ。
さとりを心から愛する彼女が、その道を応援しない筈がない。

さとり「………………」

こいしを中心として、具体的にこれからどうするかという話し合いを詰めていく一同。
それを遠巻きに見やりながら、さとりは想う。

306 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:28:43 ID:???
さとり「(あのこいしが……まさか、こんな風になるなんて)」

他者とかかわる事を恐れ、瞳を閉じた妹。
ペット達と関わる事はあれど、しかし、やはり彼女は気まぐれで深く繋いだ絆というものは無かった。
それがどうだろう。
今の彼女は、多くの者たちから囲まれ、笑顔で話し合っている。

無論、そこにはさとりに対する想いがあってこそ――全てはさとりを想っての行動。
だが、着実に古明地こいしという少女は人との関わり、他者との関わりに積極的になっている。

さとり「(それに、みんな私を想って……)」

思えば自分は恵まれている。
忌み嫌われた妖怪でありながら、これだけ多くのペット達に愛されている。
いくら給金が上がるとはいえ、労働は厳しくなり環境も変わる――にも関わらず、大勢のペット達はさとりの留学を応援している。
否、それはペットだけではない。
考えてみればフランスでも――1つのものを目指して、必死に、懸命に努力をする仲間たちと出会う事が出来た。
コーチという仕事を半ば放棄しても、自分を信頼してくれる仲間たちとサッカーが出来た。
同志と共に、必ずやリベンジをするという誓いを胸に戦う事が出来た。

さとり「(……ありがとうみんな。 私は本当に、幸せ者です)」

地底の奥深く、忌み嫌われた――幻想郷一の幸せ者。
古明地さとりは、そっと目尻を拭いながら一呼吸置くと口を開く。

さとり「……わかったわ。 みんな、後の事はお願い」
お燐「! は、はい!!」
こいし「お姉ちゃんが1番凄いキーパーなんだって証明する為にも、むっちゃくちゃ強くなってきてよね!」
さとり「勿論」

307 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:30:44 ID:???
もはや迷いは無く、憂いも無い。
これだけの事をしてもらい、これだけの想いを貰い、躊躇う理由も無い。
もう挑戦は終わった、この幻想郷に居を移して――リベンジの機会を伺うという消極的な気持ちも消え失せた。

強くなる。ただ強くなるという思いを胸に、さとりは留学を決意した。

さとり「こいしの言うように、幻想郷3大キーパーという称号で満足はしません。
    今度は幻想郷一のキーパーと呼ばれるように――いえ! 世界で一番のキーパーと呼ばれるように――そして」

勝てなかった相手に、終ぞ勝てなかった相手に勝てるように。

さとり「今度こそ、反町くんを――」
ウサコッツ「ぶっ殺すよ〜!!」
ヘルウルフ「反町……コロチュ!!」
さとり「……ウサコッツ、ヘルウルフ、殺すは物騒よ。 倒すにしましょ、ね?」

割と使う言葉が過激な愛らしいペット達に注意をしつつ、さとりは笑みを浮かべる。

さとり「(今度こそ私が勝つ……3年という月日を全て練習に費やして……今度こそ!!)」

蹂躙されたか弱い妖怪は、地の底から這い上がり広い世界へと飛び立とうとしていた。
傷つき、折れ、曲がり、不恰好となったその姿。
何度転んでも立ち上がる不屈の闘志はかの少年から。
自分が、自分こそが優れたキーパーであると信じ続ける気持ちは最愛の妹から。
両翼を動かし、天駆けるその背を後押しする風は自分を応援する大切なペット達から。

闘う意思と環境と覚悟、それらを改めて掴んだ少女は再び立ち上がる事を決意する。
期待に応える為に――そして、勝利を収める為に。

308 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:31:55 ID:???
一旦ここまで。
さとりは幻想のポイズン内で五指には入るくらいのお気に入りキャラでした。
書いてる内にどんどん好きになっていくキャラっていますよね。

それでは。

309 :森崎名無しさん:2018/02/24(土) 08:35:41 ID:???
質問ですけどさとりの一対一ってどれくらい強かったんですか?
競り合いはそんなに高くないけどスキルでカバーしているって感じですかね?

310 :森崎名無しさん:2018/02/24(土) 12:05:41 ID:???
綺麗なこいしちゃん(ダーティディフェンス持ち)

311 :森崎名無しさん:2018/02/24(土) 19:02:32 ID:???
乙です
自分もフランスJr.ユースのところでさとり好きになりました

312 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/25(日) 03:49:33 ID:???
>>309
当時の能力を引っ張り出してきたので公開しますね。
本編準拠に数値は合わせていないので、当時の過去ログを見ながらこんな数値だったのかーと見てみて下さい。

名前   ド パ シ タ カ ブ せ 高低 ガッツ  総合 才
さとり  55 55 51 55 55 53 57 3/3 800/800 381 5 パンチング67 キャッチ64

     @さとり
古明地コンビ(パス力+3で連続ワンツー、要こいし)消費ガッツ80×2
ツインシュート(低シュート力+3、要こいし)消費ガッツ120×2
とめます!(1/2の確率でセーブ力+2)
さとりセービング(PA内からのシュートにキャッチ+8の補正でセーブ)消費ガッツ40
テリブルスーヴニール(一対一+3)120消費
スキル・覚り(一対一の時読み違いが起こらない)
スキル・ケンカLv5(全ての接触行動に吹っ飛び係数10がつく)
スキル・パンチング+1
スキル・一対一+5
スキル・飛び出し+1

お察しの通り競り合いは当初弱い予定でした。が、バヤシさんとの特訓を経てその虚弱体質を改善したという設定があります。
なのでかなり競り合い自体も強くなり、おまけに必殺一対一とラストフォート互換スキル持ちです。
おまけに圧巻のスキル・一対一+5。競り合い57+読み一致+3+必殺+3+スキル一対一+5で68。
当時の反町のシュート力が59という事を考えると、まあほぼほぼ無敵ですね。

>>310
こいしちゃんは大好きなお姉ちゃんの為に己の手を汚す覚悟を持ったのです……。

>>311
そう言って頂けるのは嬉しいですね。フランスに関しては当時かなり力を入れて書いてたので。

横になって起きたらこんな時間でしたので、今日は更新おやすみにさせていただきます。
それでは。

313 :森崎名無しさん:2018/02/25(日) 13:06:39 ID:???
反町のシュート59→77だから+18で換算すると、
さとりパンチング85キャッチ82(PA内はキャッチ90)(1/2で更にセーブ+2)か
これで一対一も86だから普通にヤバイな、フィールダー能力もあるし普通に現状でも森崎クラスだわ
こんなGKから、しかも得意なPA内でゴールを決めるのは幾ら魔王でも不可能だな(断言)

314 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/25(日) 21:20:54 ID:???
>>313
才レベルが5なので、本編換算すると数値的にはもうちょっと低くなります。
具体的にはパンチング83、キャッチ80。競り合いは73ですかね。
あとこれは反町と戦う事を想定して作られたデータなので、システム上ゲームにするならエラッタをしていたと思います。

315 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/25(日) 23:55:37 ID:???
書きあがりませんでしたので本日もお休みさせていただきます。

316 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/26(月) 22:17:52 ID:???
本日も更新はお休みさせていただきます。明日は更新出来ると思います。

317 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/27(火) 23:50:13 ID:???
派遣選手に指名をされて、頭を抱えていた者もいる。

文「あやややや……いやぁ、参りましたねぇ」

妖怪の山に住まう鴉天狗――射命丸文。
彼女は先刻、この妖怪の山に居を構える守矢神社から自宅へと帰ってきたばかりであった。
いつも新聞を書く机に向かいながら、しかしその手はペンを握ってはいない。
握っているのは一枚の紙――そこにはビッシリと細かい文字で何やら書かれているが、その内容は彼女の頭に入ってこない。
彼女が目にしているのはその紙の一番上部にしっかりと刻まれた文字――。

『サッカー留学についての手引きと案内』というものである。

射命丸文という妖怪は、幻想郷サッカー界で見ても上位に位置するサッカー選手である。
速さを生かしたドリブルと、MFとしても通用をするパス技術。
守備面に関しては攻撃能力に比較をしてお粗末であったが、それでも並程度にはこなせる。
そんな彼女が、守矢神社に通達された八雲紫からの『サッカー留学』の対象として守矢神社から指名されたのは当然の帰結だろう。

この話を聞いた当初、守矢神社代表として会議に出席をした八坂神奈子は感じた。
チームにいる選手を1人選んで外の世界に送る――。
外の世界との交流だの、更なる成長を促す為だのといったお為ごかしはともかく。
これが反町一樹達が加入をして大きく戦力を増強させた守矢神社への牽制とする策である事を。

現在、守矢フルーツズに所属をする選手は早苗をキャプテンとし、
神奈子と諏訪子と西尾?という古株の選手たち。
そこに反町、大妖精、レティ、チルノ、ヒューイといった者たちが加入をし、
幻想郷全土を見ても有数の名有り選手を持つ名門チームへと変貌していた。

彼らの能力――特にGKとしての早苗と、ストライカーとしての反町の能力はずば抜けており。
脇を固める選手たちも、一芸に特化していたり、はたまた相応の実力者と隙が無い。
前線、中盤、守備陣。どこを取っても弱点が殆ど無い、高次元でバランスの取れたチームである。
故に、八雲紫はこのバランスを崩させようと選手を留学という名目で離脱させようとしたのだと神奈子は考えた。

318 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/27(火) 23:51:37 ID:???
……無論、それだけが八雲紫の目的ではない事も神奈子はわかっている。
かといって、この留学に己のチームの選手たちを行かせる事は出来ない。
何せ3年間である。これだけの選手がいれば、まず間違いなく幻想郷で天下を取れるというメンバーだ。
3年間、常勝無敗でいる事が出来れば――神奈子たちが得られる信仰はとてつもないものとなるだろう。

何より、そもそもの話である。
この留学話に行かせてやれる選手自体、守矢フルーツズにはいない。
この件を話した際にも、誰も我こそがと手を上げるものがいなかった。当然だろう。

元々守矢フルーツズにいた早苗、神奈子、諏訪子は幻想郷を離れる事が出来ず、
西尾?にしてもこのチームに愛着を持ってチームに残留をしてくれた選手である。
反町にしても、この環境――そして早苗への想いから移籍をし、そしてヒューイはそんな反町から離れる事を望んでいない。
唯一チルノに関してはこういった事柄に興味を示しそうではあったが、
チルノと片時も離れたくない大妖精がそれを許す訳もない。
レティに関しても、そこまで乗り気という訳でもないのだった。

ならば留学の話を無かった事にする――そういう訳にもいかない。
先に記したように、八雲紫がこの話を持ち込んだのは十中八九守矢神社を警戒しての事である。
ここで留学の話を引き受けないとなれば、果たしてこれから先どのようなペナルティが課せられるのか――。
無論、神奈子としても甘んじてそれを受け入れるつもりはないが、
相手は妖怪の賢者――そして、その他の勢力の者たちも守矢の動きに注視をしているだろう。
足並みを乱す、という真似は到底出来ない。

ではどうするか。
――適当な人材を、スケープゴートにするしかない。

射命丸文は、正にそのスケープゴートに最適な人材だったという訳である。

319 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/27(火) 23:53:34 ID:???
守矢神社に直接所属をしている訳ではない。
とはいえ、八坂神奈子が妖怪の山上層部を通じて命じるには丁度いい人材。
妖怪の山という社会に属する鴉天狗としては、上からの命令には絶対服従。
元々妖怪の山自体、守矢フルーツズのサッカーに対して協力的な姿勢を取っていた為にこの指名も既定路線である。

呼び出され、説明を受けた時点で、文自身もある程度上の方での色々面倒ないざこざというのがあったんだろう、
という事も察していた。
ただ、だからといってそう簡単にこの話を受けたくもない。

文「(サッカーする事が嫌いな訳ではないんですが、留学まではねぇ……)」

基本的に幻想郷のサッカーとはアマチュアスポーツである。
趣味や何かの片手間にする者が大多数であり、文もその内の1人だ。
無論、当の八坂神奈子達のように信仰を集める為にしている者もいるし、
己のプライドに賭けて、弾幕ごっこなどだけではなくサッカーでも実力を披露したいという目立ちたがりもいる。
文としても幻想郷最速という異名を引っ提げ、それに違わぬ実力を見せる事に愉悦を感じてはいたものの、
しかし、だからといってそれだけに傾倒をしている訳ではない。

彼女の本業はブン屋。
やはりサッカーは趣味程度のものなのだ。
3年間もの間、幻想郷を留守にしてサッカーに興じるというのは御免こうむりたい。

文「(ただ、命令に背く訳にもいかない。 それこそスケープゴートのスケープゴートでもいればいいのですが……)」

守矢が出すこの指令に、自分以外の者を推薦出来れば問題は解決する。
が、やはりそれも簡単に行く話でもなかった。
文の他にも、妖怪の山に縁のあるサッカーの得意な選手はいる。
いるのだが、その悉くが留学に向かわせる事の出来ない理由を抱えていた。

320 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/27(火) 23:55:00 ID:???
まず第一に文が思いついたのは、同じ天狗仲間である犬走椛や、河童のにとりといった組織の一員。
文が声をかければ、嫌な顔はするだろうがそれでも渋々と従っていた筈である。昔なら。
ただ、今の2人はそれぞれ妖怪の山から離れ――それぞれ別チームの選手として活動をしていた。
無論、それでも行かせるだけなら問題は無いのかもしれないが、
かといって守矢フルーツズと敵対をしているチームの者が留学に行って力をつけて戻ってきた場合、責任の所在は文にあるという事になる。
にとりはともかく椛にそこまでの才覚があるとは文は思えなかったが、
それでも万一の可能性を考えると避けたい事だった。

ではこの山に住まう神様――秋静葉、穣子の姉妹。そして厄神である鍵山雛はどうだろう。
これもまた、無理である。
反町一樹が移籍をした際、静葉と穣子がチームを解体せずにオータムスカイズに残留した。
これは幻想郷サッカー界的には決して小さくないニュースであり、文自身も取材に赴いた事がある。
残念ながら明確な答えを得る事は出来なかったが、それでもその際の態度や様子から、おぼろげにはチームに残った理由も見えた。
即ち、『信仰』の為。

サッカーを通じて名声を得、それを信仰につなげようとするのは守矢神社も秋姉妹も同じである。
彼女たちが守矢フルーツズに移籍をしないというのも、それが可能かどうかは別としてそう取らざるを得なかった理由としては尤もであり。
だからこそ、この『守矢神社から来た』留学という話に、彼女たちが乗る訳もない。
建前はどうあれ、彼女たちは事実上敵対しているも同然なのだ。

鍵山雛に至っては単純である。
厄神である彼女――そこに存在をするだけで災厄を振りまく彼女が、
人間の多く住まう外界に3年間という長い期間行ける筈がそもそも無いのだ。

文「(うぐぐ……せめて、椛がいればなぁ……)」

いなくなってはじめてわかる、部下のありがたみである。いや、別に直属の部下という訳ではないが。
しかしながら、いよいよ文としては困る。
自分は留学に行きたくない。だが、代わりになるような人材も用意出来ない。

321 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/27(火) 23:56:27 ID:???
今はまだ自宅に話を持ち帰ってじっくり考えてくれと言われただけであるが、
しばらくすれば嫌でも留学に向かう選手として、正式に決定してしまうだろう。
社会において考えておいてくれという言葉は、放っておけば了承を示したものと受け止められてしまうのである。

文「(誰か他に適当な、サッカーが出来る者……妖怪の山にいて、それでいてフリーで……。
   って、そんな珍しい選手はもう大体いないか。
   今や大体の選手は所属するチーム自体が決まっているし、それこそ最近出てきた新参選手くらいしか……っ!?)」

と、そこまで考えていた文は――ふと机の上に散らばっていた新聞に目をやり、思考を停止させる。
思わずそれを引っ掴み、あまり乗り気ではないもののパラパラと捲っていく。
自分が執筆をした新聞――文々。新聞とは違うそれは、文が他の記者がどのような記事を書くかの研究用に入手したものである。
『文から見れば』稚拙で面白味も無く、そもそも事実無根の妄想ばかりが書き連ねられたような記事ばかり。
おまけに記事の内容自体が、今更フランス国際Jrユース大会の結果や経緯などが書かれたものだった。

あれから既に数週間は経過している。
スピードが命であると考え、その通りに帰郷後即座に新聞を発行をした文からしてみれば、
あまりにも遅すぎるその発刊速度。更には実際に大会に参加をした文に比較をし、外から見ていただけのそれは酷く抽象的だ。
以前、実際にこの感想を記者に素直に文は告げ――その記者は酷く立腹していたのだが。

文「(ただ、それと同時にやっぱり実体験するしかないのかと凹んでたし。
   ……サッカーの腕も、最近始めたばかりにしちゃ悪くない)」

一手遅れているその記者は、やはりサッカーも最近始めたばかりの新参であった。
当然ながら文には到底敵わない程度の実力しか持たず、おまけに性格にも難があってどのチームにも所属はしていない。
だが、それでも文が知る限りでは留学に行かせられるだけの実力者でフリーの人材というのはその『彼女』くらいしかいない。

文「(駄目で元々だしね。 割と世間知らずだし、上手く話を運べば乗ってくれるでしょう)」

名案と思しきものがが思い付くと、すぐさま行動に移るのが射命丸文という少女である。こういう面でも彼女はスピーディだった。
彼女は立ち上がるとお供の鴉を呼び出し、我が家を出てその記者の住まうねぐらへと向かう。
家を出た際、閉じたドアの風圧でペラペラと捲れていく新聞――その紙面には、『花果子念報』と記されてあった。

322 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/27(火) 23:58:31 ID:???
短いですが一旦ここまで。
幻想のポイズン内で出てこなかった新しい東方キャラは、今回の彼女含めて3名を予定してます。

323 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/28(水) 22:59:03 ID:???
本日は更新をお休みさせていただきます。
次回あたりから、佐野くんがどこに留学に行くかの発表とかが出来ると思います。
それでは。

324 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/01(木) 21:23:24 ID:???
本日も更新はお休みさせていただきます。土曜日あたりに更新出来ればと思います。

325 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/03(土) 22:58:41 ID:???
申し訳ないですが本日も更新はお休みさせていただきます。
明日まで、明日までお待ちください(ガレリ並感

326 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:48:43 ID:???
そして数日が過ぎた。
当初八雲紫がサッカー留学の話を出してから、日数にして数週間。
この頃になると、ようやくほぼ全ての組織からサッカー留学に向かわせる選手の目途が立ち。
また、人員が不足をしている組織からもその最高責任者が他に適任と思しき選手を補填としてスカウトする事も出来ていた。

紅魔館、白玉楼、マヨヒガ、永遠亭、守矢神社、地霊殿、命蓮寺、地獄――。
それぞれ8つの勢力からの留学選手。
彼女たちは各自、秘めたる想いを胸にして博麗神社から八雲紫の能力を用いて既に出立をしていた。

佐野「はー……しかし朝はえらい大騒ぎだったな本当」

そんな中、我らが今はまだ幻想郷にいる軽業師は、住まいとする命蓮寺でのんびりと過ごしながら、
今朝方の事を思い出していた。
留学選手に立候補をし、白蓮の期待に応えようと意気揚々と留学に備えていた一輪。
基本的に思い立ったが最後、普段は大人し目であまり目立つ事のない彼女であるが、
一旦火がつくと誰にも止められない程に暴走をするのは以前の何も考えず飛び出した経緯から見ても察して貰えるだろう。

そう、火がつくと止められない――だが、いつまでも燃え続ける火など無い。

当初はやる気に満ちていた一輪も、段々留学の日時が近づくにつれて、
やはり白蓮と離れるというのが寂しく、悲しく、名残惜しくなってきたのだろう。
結局、当日の今日――留学に向かう為に博麗神社に行く直前、
赤子のように、白蓮のそれはそれは豊満な高い浮き球4程あるだろう胸に顔を押し付け咽び泣いた。

これには白蓮はもとより命蓮寺の一同も困り果てたのだが、
最終的には一輪の性格を良く知るムラサの「聖の為にも強くなって帰ってきてね」の一言で全てが解決した。

佐野「イチさんも単純だよなぁ」

佐野に言われてはおしまいであるが、実際の所事実なのだから仕方ない。

327 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:49:54 ID:???
ムラサ「……真面目で機転が利き要領がいい性格だったんだけどなぁ、あの子も」
佐野「おっ、キャプテン。 ……イチさんが真面目なのはわかるけど、間違いなく要領とかそういうのはよくなさそうじゃね?」
ムラサ「聖が関わらなければいい子なのよ、ホント」
佐野「そりゃわかるけど……(そーいやなんで皆が白蓮さんの事慕ってるかとか、そーいう理由も俺詳しくしらねーなぁ)」

佐野の言葉に困ったように相槌を打つのは、その一輪の盟友――村紗水蜜である。
呆れ半分にそう呟く彼女の姿に、思えばそもそも命蓮寺の一同が、
聖白蓮の事を異様に慕っている理由を佐野は知らなかったと思い至るのだが、
なんとなくここで聞くのは今更過ぎるような気がして口には出せない。

ムラサ「で? 佐野くんはいつごろ出発なんだっけ?」
佐野「俺もどうせなら他の皆と同じ日にって師匠は言ってたけど……。
   まだこねーな師匠、もう昼だってのに」

魅魔の推薦により、魔界からの使者として留学選手に決定した佐野満。
八雲紫の提案した留学計画とは別口の件で留学に向かうのだから、
当然ながら他の者たちと同様、八雲紫のスキマ経由で外の世界に行ける道理もない。
よって、彼はその外の世界への移動手段に関しては完全に発起人である魅魔任せであった。
だが、その魅魔が留学予定日の当時になっても、一向に姿を現さない。
これにはさしもの佐野も、少しばかり焦りを見せるのだが……。

魅魔「あたしゃここにいるよ〜」
佐野「あっ、師匠!」

言っている傍から、ようやく魅魔が姿を現した。
命蓮寺の居住スペースとなっている区画の玄関口。
いつもの間延びしたような、それでいて凛とした決め台詞を聞いた佐野が振り返れば、
そこには果たして、当の魅魔と彼女を出迎えていた命蓮寺の面々――そして。

328 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:51:58 ID:???
魔理沙「よう!」
佐野「あ、魔理沙だ」
魔理沙「……だから『さん』をつけろって何度言えばわかんだ? あぁん?」

佐野の姉弟子にあたる霧雨魔理沙――彼女の姿もその中には見受けられた。

魅魔「準備は終わったかい、佐野?」
佐野「おうよ。 まぁ、つっても荷物なんて大して無いんだけどな」

相変わらずあまり仲がいいとは言えない佐野と魔理沙が言い争いをする前に、
魅魔が佐野に問いかけると佐野はグッと右手を掲げながら準備は万端であると宣言する。
実際、幻想郷に何も持たずにやってきて、この命蓮寺で過ごしてきた佐野の手荷物というのは多くは無い。
精々数日分の着替えや日用品程度である。

佐野「外の世界に比べてこっちは娯楽ってのが少ないからなぁ……思えば私物ってのも殆どねーや。
   あーあ、ドラゴンスフィアの続きが読みてぇなぁ」
ナズーリン「(なんだろうな……そんなにその続きが読みたいなら人里の酒商店にでも行った方がいいと思ってしまう)」
魅魔「遠足に行くんじゃないんだ、それくらいの方がかえってサッパリしてていいだろ」

足りない分は現地で買い足せばいい、金なら一応魔界から出る事になっている、と魅魔は説明する。

魅魔「そろそろ出発だ。 佐野……何か挨拶はあるかい?」
佐野「ん……そーだな」

言われ、佐野はむくりと立ち上がると魅魔の背後にいた命蓮寺メンバーへと視線を向けた。
思えば、この幻想郷にいたのも――長いようで短かった。
勝手気ままに幻想郷へと召喚され、勝手気ままにいらない子扱いされ、
勝手気ままに利用価値があるとされ、勝手気ままに創設間もないチームの指導者となった。
なんとも周囲に翻弄され続けた運命であったが、佐野自身は命蓮寺のメンバーを嫌っていないし、ここに来れて良かったと思っている。

329 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:53:10 ID:???
誰もかれもが個性的ではあるが、それでもサッカーに対して真摯だったのは指導者だった佐野もわかっている。
幻想郷においては珍しい、他者を思いやる心がある者たちばかりだという事も知っている(一名例外はいたが)。
召喚されはしたものの、衣食住――人が最低限生活するのに必要なものを持っていなかった佐野としては、
そんな自分を必要としてくれ、保護してくれた一同に感謝する気持ちが無い筈もない。

佐野「(つってもなんつっていいもんか……こういうのはこっぱずかしくていけねぇな)
   あー……まぁ、なんだ。 イチさんと同じく、俺も外で頑張ってくっからよ!!
   皆もその間、幻想郷で頑張ってくれよな!
   俺っていうスーパーエースがいなくなって、イチさんっていう正ゴールキーパーがいなくなって苦労するとは思うけど」

それでも思春期特有の、感謝を口にするのが恥ずかしいと思ってしまう性分故か。
佐野はどこか斜に構えたようにそう宣言するのが精いっぱいだった。
精一杯だったのだが……。

ぬえ「誰がスーパーエースって? ねぇ、誰が?」
ムラサ「(佐野くんには申し訳ないけど……正直、『超人化』した白蓮なら佐野くんの代わりにはなるけど、
     GKの不在の方が痛手だから……ぶっちゃけ、佐野くんより一輪の離脱の方が辛いのよねぇ)」
佐野「なにィ!?」

案外佐野の評価自体は大した事なかった。
無論、彼の能力が低いという訳でもなければ、命蓮寺メンバーから嫌われていた訳でもない(一部例外を除く)。
ただ、実際問題佐野という1人のドリブラーの離脱よりは、ゴールを守る一輪の離脱の方が痛手であったというだけの話である。
しかしながら、この反応には流石の佐野も凹む。
口に出して指摘をするのはぬえだけだが、他の者たちもなんとも言えない表情で佐野を見守っているのだから。

佐野「なんだよ!? 俺がいなくなったら誰がボール持って突破すんだよ!? ヒールリフトを誰がするんだよ!?」
ぬえ「ヒールリフトを超必殺技みたいな言い方する男の人って……」
星「ま、まぁまぁ佐野くん。 佐野くんがいなくなって寂しいのは私達もなんですよ。
  ……外の世界でも、留学、頑張ってきてくださいね」
佐野「お、おう?」

330 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:54:18 ID:???
思わず自分の得意技の有用性について言及してしまう佐野だったが、それすらも一笑に伏される。
実際の所、今更ヒールリフトの有無程度で自慢げにされた所で……という話ではあるのだが。
佐野に対してやけに突っかかるぬえを制しながら、温厚な者たちで占められる命蓮寺の中で人一倍温厚である星が仲介に入る。
思いがけず優しい言葉をかけられて佐野はいつもの流れとはちょっと違うなと感じながら周囲を見やり……。

小町「短い間だったけど同じ釜の飯を食ったんだ。 ま、達者でやりなよ」
ルーミア「お土産はいきのいい人肉がいいな〜」

まずは外様である小町とルーミアが、別れの言葉を告げる。
小町の言う通り、短い間とはいえ共に過ごした仲だ。
そこに情が沸くのはまた人情というものであり、ひらひらと軽く手を振りながら別れを惜しみ。
逆にルーミアは平常運転といった様子で呑気に、いつも通りの対応を見せた。

ナズーリン「……まぁ、幻想郷にいる私達が、元々外の世界にいた君を心配するというのは非常に滑稽なのだろうが。
      くれぐれも気を付けてね」
ムラサ「強くなって帰ってくる一輪と佐野くんの事、楽しみにはしてるんだからね」

命蓮寺のメンバーであり、当初から佐野と付き合いのあるナズーリンとムラサは佐野の行く末を心配しつつ期待もしていた。
彼女たちにとって、今は然程能力的に大きな差異が無くなったとはいえ――。
佐野が初めて来訪した時は、佐野は彼女たちにサッカーのイロハを教える指導者だったのだ。
そこに感謝の気持ちと尊敬の気持ちは当然ながらある。……後者に関しては、最近薄れてはいたものの。
ともかく、彼女たちにとって佐野はヒーロー……とは到底言えないが、
それでも相応には特別な立場の選手であった事は変わり無かった。

白蓮「佐渡くん」
佐野「……あの、佐野です」

331 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:55:20 ID:???
そして、この命蓮寺の代表――聖白蓮がそっと歩み寄りながら口を開く。
……案の定、佐野の名前を間違えていた事に、佐野自身は丁寧に訂正を入れるのだが、
白蓮は聞いていないのかそれとも気にしていないのか、ふわりとやわらかな笑みを浮かべたままだ。

白蓮「貴方がこの命蓮寺に来てからの数か月……我々が、まるで知らなかったサッカーというものを教えて貰い、本当に感謝しています。
   終ぞ、幻想郷での大会には参加が出来ませんでしたが……。
   全幻想郷との練習試合、思えばあれが、私達の――初めて、表舞台に立てた試合でしたね」
佐野「………………」

言われて、佐野の胸にはチクリと痛みが走る。
命蓮寺メンバーと修練に励み、更には魔界へと向かい幻想郷以上に優れた環境の中で練習をした。
白蓮の言うように幻想郷での大会には出場出来なかったが……。
しかし、ようやく彼ら――反町達を相手に表舞台での試合を慣行する事が出来た。
かつては雲の上の存在であった反町、そしてその他の幻想郷メンバーを相手に。
佐野達、命蓮寺のメンバーは懸命に努力をしてその前に立ちふさがろうとしたのだが……。

……佐野達は敗北をした、あまりにも呆気なく、あまりにもあっさりと。

佐野「(折角強くなったと思ったのに、反町さん達ときたらそれ以上に強くなってんだもんな……。
    ……そーいや、あん時は魔理沙さんも敵だったか)」
魔理沙「………………」

どうにも相性の悪い佐野と魔理沙であるが、そんな佐野とて魔理沙の実力の高さについては知っている。
豪快なシュートに突破力。おまけに守備意識の高さと、その守備力についても文句無し。
幻想郷どころか、世界中で見てもトップクラスのFW。
いや、FWとしてだけでなく――1人の選手として見た場合でも、名選手と言える程の実力を有していた。

そんな魔理沙ですら、霞む程の――当時の全幻想郷Jrユースの選手層の厚さ。
そして、そんな魔理沙をもってしても、第二FWの地位を掴むのが精々という反町という存在。
今更ながらに、佐野は一体どうしてそこまで反町が強くなったのか――反町だけではない、
何故自分たちと反町の周囲にいる者たちとで、ここまで大きな差があるのかと疑問に思ってしまう。

332 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:57:22 ID:???
佐野「(不公平だぜ……俺だって、俺達だって頑張ってきたのによ……。 畜生……)」
白蓮「佐古くん」
佐野「……だから佐野だって」

少しばかりネガティブになってしまう佐野であったが、再び白蓮に呼ばれ、現実に引き戻される。
再三に渡って名前を間違える白蓮に、やはり佐野は訂正するのだが……。
白蓮はやっぱり気にする素振りは見せず、慈愛に満ちた表情で口を開く。

白蓮「貴方が私達に教えてくれた事、口では色々と言いながらも努力をし、鳥町さん達に勝とうとしていた事。
   私達もそれに感化され、サッカーというものに情熱を傾ける事が出来ました。
   ……結果は残念でしたが、それは御仏もご覧になられている事でしょう」
佐野「(鳥町じゃなくて反町さんなんだけどなぁ……)」
白蓮「一切皆苦――思うが儘にならぬのが、人の生。
   どれだけ努力をしても、どれだけ頑張っても、結果が出せぬという事に苛立ち、悲嘆にくれる事もあるでしょう。
   ですがサモくんは今一度――いえ、これまで幾度となくあった敗北を前にしても、
   何度も立ち上がり……このたびも、魅魔さんが持ってきた留学話を快諾しました」
佐野「あの……俺、佐野……」
白蓮「御仏のみならず、不肖ながらこの私も――そして、他の者たちも遠く離れた幻想郷にて応援をします。
   どうかこの旅路が、サミュエルくんにとってより良きものとなりますように」ペカー
佐野「もはや日本人じゃねーじゃん……ってうおっ、まぶしっ!!」

いい加減訂正するのにも疲れてきた佐野であったが、
白蓮が真摯に佐野の事を心配し、想い、彼の成功を祈ってくれている事だけはわかった。
実際、瞳を閉じて祈るように手を合わせる彼女の背後からは目に見えて後光が刺している。
あまりにも強烈過ぎる仏パワーに、佐野は目がチカチカするのだが……。
それならばそれでしっかりと名前くらいは覚えておいて欲しいと思わないでもない。

333 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 00:58:56 ID:???
佐野「ま、まあ……さっきも言ったけど俺も頑張ってくっから! 白蓮さん達も頑張ってな!
   レベル不足で前までは幻想郷での大会にも出られなかったけど、今なら全然出れるだろうし!」
ぬえ「へーんだ、アンタに言われなくたってそのつもりだよっ!
   アンタがいなくたってこの私の力で優勝させてやるんだから!」
佐野「にゃにおう!? この俺のローリングオーバーヘッドが無くても優勝が出来ると言うのか!?」
ぬえ「浮き球補正も特に高くない上にシュート力も低いのにローリングオーバーヘッドが得意技な男の人って……」

逆に素直に佐野を応援していない者もいる。
封獣ぬえ――彼女はとにかく、佐野と折り合いが悪かった。

当初この命蓮寺がチームを結成し、メンバーがそもそも11人にも満たなかった頃の事である。
ムラサ、一輪と古馴染であったぬえは、彼女たちの助けになるならばと加入しようとしていた。
しかしながら、生来天邪鬼な性格なのがこのぬえである。
素直にチームに入れて欲しいと言う事も出来ず、おまけに命蓮寺のメンバーの多くはドがつく程の天然が多い。
幸いにして、その時、その場にいた佐野はぬえの真意について察知したのだが……。
素直でないぬえの態度からからかい半分で追い返した事より、2人の関係は決して良いものとは言えないものになっていた。

……その後、紆余曲折を経てぬえがチームに加入をしてからも、互いに反目する間柄である。
もっとも、周囲からはケンカ友達としてほのぼのとした視線で見られる事が多いのだが。

ムラサ「ほらほら、ぬえも佐野くんも喧嘩しない。 ……佐野くんもあんまり気を悪くしないでね。
    ぬえもこれで寂しがってるのよ」
ぬえ「か、勝手な事言わぬぇでくれるムラサ!? 逆にコイツがいなくなってくれてせーせーするくらいだわ!」

べー、と舌を出して威嚇するぬえに苦笑しながらムラサが突っ込みを入れ……。
とりあえずはこの場も丸く収まるのだった。

334 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:00:16 ID:???
佐野「(……ま、こいつが生意気なのは今に始まったこっちゃねーしなぁ。
    それに、サッカーに関しちゃ真面目なのはわかりきった事だし。 白蓮さん始め、命蓮寺のメンバーはお人よしばっかだ。
    1人くらいこういう底意地の悪いのがいた方が安心……か?)」

素直になれないのは佐野もまた同じ。
なんのかんのと言いながらも、ぬえがこのチームの中で締める役割というものが大きいのは知っている。
特に白蓮や星といった、超がつく程の善人達がいる中、
こういった――いい意味であくどい者もまた、サッカーをしていく上では必要な人材であった。

椛「キャプテン……」
佐野「おっ、椛」

そして最後に佐野に声をかけてきたのは椛であった。
彼女はこの騒がしい一同の中においては、あまり目立つようなタイプではない。
おずおずと、苦笑をしながら前に歩み出てきた椛を見て――しかし佐野は嬉しそうに笑みを見せる。

佐野「ケケケ、今のキャプテンは俺じゃなくて椛だろ」
椛「わふ……いや、まぁ、そうッスけど……」

この命蓮寺ナムサンズのキャプテンは――一応は、佐野満という事になっている。
ただ、その佐野が外の世界へと留学に行く以上、佐野がいない間――3年間、キャプテンを代理として勤める選手が必要だった。
当初は実力的にも、そして体面的にもこの命蓮寺の代表でもある白蓮に一任されるのではという話もあったが、
佐野が指名し、またその当人である白蓮も推薦をしたのが犬走椛であった。

彼女もまた、この命蓮寺というサッカー未開の地で佐野と共に一同を鍛え上げた一員の1人である。
無論、小町やルーミアといった経験者もある程度はいるものの、彼女たちはそもそもあまり指導力というものがない。
結果として、佐野と椛――更には佐野が特別に師事を受けていた魅魔らが命蓮寺メンバーの成長に一役買っていた。
こうした点や、試合においてもディフェンス陣のリーダーとして振る舞っている点。
更には生真面目な性格などから椛はキャプテンへと推薦され……周囲の者たちも、特に問題は無いだろうと賛同をしていたのだった。

335 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:01:29 ID:???
椛「本当に自分で良かったんスか? やっぱ白蓮さんとかの方が……」
佐野「もう決まった事だろ、似合ってんぜキャプテンマーク?」
椛「わ、わふ……」
ぬえ「(っていうか別に試合じゃないのにつけてるあたり、なんだかんだでこの天狗もキャプテンになれてうれしいんじゃない?)」

その腕に締めた腕章を見て、佐野が言うと椛は照れたように頭をかき……。
しかし、小さくだが溜息を吐いた。

椛「(嬉しいのは嬉しいんスけど……本当に、いいんスかねぇ……。
   自分はやっぱりあの試合でも勝てなかったどころか、ろくすっぽ活躍すら出来なかったッス。
   ……キャプテン。 いや、佐野くんはもう立ち直って次の道を見据えてるッスけど……)」

出番を求めて命蓮寺へとやってきて、かつてオータムスカイズにいた時よりは大きく成長をして。
更には魔界へまで行って、そこでも大きく成長をして。
――それでも尚、敵わない。いや、敵わないどころか――勝負にすらなっていなかった、反町一樹との対決。

今、こうして佐野はすっかり立ち直り、前向きに留学に行くことに思いを馳せていた。
今よりも更に強くなり、今度こそ勝って見せるという強い気持ちを持っていた。
それはきっと彼の心が強く、そして実際に反町と相対する事が少なかったが為なのだろう。
ただ椛の場合は違う。彼女はDFであり、反町はFW――次に戦う時も、直接相対する関係だ。
その時自分は勝てるのか。この命蓮寺として大会に出て――本当に彼がいるチームに、勝てるのか。

椛も決してネガティブな性格をしている訳ではない。
だが、ここまで積み重なった敗北。練習をし、努力をしてもそれ以上のスピードで離れていく強者たちの背中。
何よりも一切満足のいく結果を出せていないにも関わらず、キャプテンに就任した焦りと、それでも感じてしまう歓び。
努力だけは認められたが、果たして今の自分にそれに見合う実力はあるのか。生真面目であるが故に、椛の悩みは尽きなかった。

椛「(自分にも佐野くん程の強い心か……反町さんみたいな他者を圧倒出来る才能でもありゃいいんスけどね……)」
佐野「ま、後は頼むぜ椛!」
椛「わふ……はいッス」

それでも辛うじて、そういった悩み――苦しみを周囲に出さなかったのは椛なりの意地だった。

336 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:02:54 ID:???
魅魔「……さて、そろそろいいかい?」
佐野「お? おう」

そして全員との挨拶を終えた所で、魅魔は改めて佐野に声をかけた。
名残惜しい思いはあれど、それに縛られてはいけない。
佐野は大きく頷くと、よいしょとオッサン臭い声を上げながらスポーツバッグを肩にかける。

佐野「……って、あれ? どうやって外の世界まで行けばいいんだ?」
魅魔「私の魔法で飛ばす。 ちょいと時間がかかるが……じっとしときな」
佐野「はぇー……師匠ってそんな事も出来んだな」
魔理沙「魅魔様は攻撃魔法だけじゃなく補助も回復も出来るからな。
    転送魔法も使えるし……いざって時は2つの魔法を同時に唱える事だって出来る」
佐野「ふーん……。 ……それって凄いの?」
魔理沙「めちゃめちゃすげーよ。 お前は少しは師匠の事を知る努力をするべきだぜ」
魅魔「ま、佐野はサッカーについての弟子だからね。 知らんでも問題無いさ。
   それと魔理沙、あんまり人を煽てるもんじゃないよ」

そういえばこの人って魔法使いだったな、と魅魔の持つステッキに目をやりながら佐野は思う。
ともかく、ここは言いつけ通りに佐野はじっと大人しくその場に立ち尽くし……。
しかし、今更ながら聞いていなかった1つの疑問が浮かび上がり、思わず口に出す。



337 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:04:08 ID:???
佐野「今更だけどさ、俺が行く留学先ってどこなんだ?」
魅魔「そいつはついてからのお楽しみさ……だが、悪いようにゃせんよ。
   しっかりと調べて選んだからね。 ま、環境についてはお前も文句言わんだろうさ」
佐野「ほへー」

明確な答えは貰えなかったものの、魅魔がここまで言うのならばきっとそうなのだろう。
今よりずっといい環境、というとやはりサッカー先進国――ヨーロッパ諸国か南米か。
佐野が新天地に想いを馳せる中で、魅魔は魔力をステッキへと込めると詠唱をし……。

魅魔「トゥエエエエエエエエエエエエエイイァアアッ!!」
佐野「掛け声かっこわるっ!? ってうおおおっ!?」

ステッキを一振りすると同時、佐野は綺麗さっぱりその場から姿を消すのだった。

338 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:05:22 ID:???
ムラサ「おお、本当にいなくなっちゃってる。 これって送れたって事でいいんだよね?
    ちょっと動きがあまりに地味すぎてちゃんと送れたのか単純に佐野くんがただ消えちゃったのか判別しにくいんだけど」
魅魔「人里で流行ってるような貸本屋の漫画とかならいわゆる『えふぇくと』とかいうのが出るんだろうが、
   本当の魔法ってもんはこういう地味なもんさ。
   地面に魔方陣だかを書いて魔力を増幅するのだって、私からいわせりゃ自分の持前の魔力じゃあ不足してるから、
   魔方陣を書く事によってその補助とする――。
   つまりは自分の力量不足を周囲に見せてるだけの、三流以下のやり方だね」

言いながら、魅魔はステッキを手元で弄びつつその場に腰掛ける。
その場にいる者が魔法に関してはあまり関心が無いか詳しくない――。
もしくは、魔法使いでありながらもこういった転送魔法などについてはまるで専門外であった為に突っ込みは無く。
しかし、唯一――魔理沙だけはそんな魅魔の隣に腰掛け、疑問を口にする。

魔理沙「しかし良かったのか魅魔様? あんな事言って」
魅魔「おや、どうした魔理沙? 何か変な事でも言ってたかねぇ?」
魔理沙「……環境には文句も言わんだろう、って言ってたじゃねーか」

魔理沙が気にかかったのは、先ほど魅魔が佐野に告げた言葉についてだった。
……本来、そこまで佐野達と仲がいい訳ではない魔理沙。
そんな彼女が、何故わざわざ佐野を見送るような場所にやってきたのか。
魅魔の魔法をこの目で見ておきたいという理由もあったが、それ以外にも理由がある。

339 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:07:07 ID:???
魔理沙「私はここに来る前に博麗神社に行ってきた。 ……霊夢と紫の奴が、派遣選手って奴を送るのを見に行ったんだけどさ」
魅魔「ああ、それで?」
魔理沙「咲夜や妖夢、うどんげ……後はさとり。 あいつらは、それぞれがてんでバラバラのチームに送られてたみたいなんだけどな。
    ……3人程、同じチームに送られてた奴らもいた」
魅魔「ほうほう」
魔理沙「……魅魔様、私には教えてくれたよな? 佐野がどこに行くのかって」
魅魔「ああ、教えたねぇ」
魔理沙「………………」

今回のサッカー留学は、何度も言われているように各人の大きな成長。
そして、外の世界との交流をメインとして企画されたものである。
――少なくとも、建前上は。

大きな成長についてはともかくとして、交流をメインとするならば……。
当然ながら、各々は別の国――或いは別のチームに所属をした方が、より多方面との交流になる。
だが、八雲紫が指定をした3名については、それぞれが同じチームに送られた。
……無論、外の世界のチームとの契約、交渉が上手くいかなかった可能性もある。
何せこちらは留学と称してそのチームの選手の枠を貰い受ける形になるのだ。
金を出し、その枠を買い取る形……それが上手くいかない事も、あり得るだろう。

魔理沙「なら……尚更3人も同じチームってのはおかしいじゃねぇか?
    よっぽど安く買いたたけたとしても、3つも枠をくれたりするもんか?」
魅魔「………………」
魔理沙「……逆なんじゃねーかなって思うんだよな」

340 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:09:12 ID:???
逆。つまり、幻想郷側が――八雲紫が頼み込んでそのチームに3つの枠を貰ったのではない。
そのチームの側が、是が非でも幻想郷からの留学選手を受け入れたいと申し出た。
そう考えれば3人もの選手が同一チームに向かったというのも、納得が出来る。

魔理沙「受け入れたいって言う理由は、考えられる可能性は2つ。
    1つは単純に先の大会で幻想郷の選手に興味を持ったチームであるって事。
    ……つっても、私が思うにこれは薄い。
    なんせ送られた3人はあの大会でロクに活躍どころか、大会に出てすらねーのもいたんだからな」
魅魔「………………」
魔理沙「そして、もう1つは……。 ……留学選手に頼らなきゃならねーくらい、よわっちいチームって事。
    ……なぁ魅魔様、私が聞いたその3人が向かったチームってのと。
    さっき魅魔様から教えて貰った佐野の留学先、一緒だったんだが……」
  
この指摘こそ、魔理沙がここに来た理由であった。
……関係は決していいとは言えないとはいえ、それでも魔理沙にとって佐野は一応は弟弟子である。
師匠である魅魔が、決して弟子をだましたりするような人間――もとい、悪霊ではないと知っているとはいえ、
それでも気になり……魅魔の真意を探ろうとするのだったが……。

魅魔「魔理沙、いい事教えてやるよ」
魔理沙「! ……なんだよ」
魅魔「『優れた環境』っていうのはね、何も『強いチーム』って事じゃあないのさ」
魔理沙「………………」

いたずらっぽく笑みを浮かべてそう言い放つ魅魔を見て、魔理沙は少しだけ佐野に同情したくなるのだった。

341 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:10:54 ID:???
………
……


佐野「…………」

一方その頃、佐野満は外の世界で立ち尽くしていた。
魅魔の転送魔法は、やはりしっかりと成功をしており……彼は特に何の問題もなく、
目的地――留学先のチームのグラウンドへと降り立つ事が出来ていたのである。

そして、恐らくは留学先のチームも――魅魔の差し金か、佐野がこの時間にやってくることを知っていたのだろう。
外の世界へと久しぶりに帰還し、しかし右も左もわからない場所にやってきた佐野の案内役を、しっかりとつけていた。

栗毛の少年「やあ、ようこそ。 君が最後のメンバー……サノ・ミツルだね?」
佐野「あ、ああ……(最後?)」

辺りをきょろきょろと見回し、知らない者が見れば不審者扱いしそうな佐野にまず声をかけてきたのは、
茶髪の……どこか優等生的な雰囲気を持った、メガネをかけた少年であった。
彼の意味深な言葉にどこか引っかかりを覚えながらも、名前は合っている為に頷く。

栗毛の少年「良かった、時間通りだったね。 さあ、こっちへ……実は君以外にも今日入ったメンバーがいてね。
      どうせだから一緒にチームの皆に紹介をしようと、今みんなを集めていた所だったんだ」
佐野「あ、そうなんスか(ほへー、珍しい事もあるもんだ。 さて掴みの挨拶を考えねーとなっと……ん?)」


342 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:13:46 ID:???
金髪の少年「………………」
佐野「(なんだこのゴリラ?)」

笑みを浮かべながら案内をする栗毛の少年の後をついていく佐野だったが……。
そんな栗毛の少年がいる一方で、先ほどから不躾にも佐野をジロジロと見ながら、無言で同伴をする金髪の少年がいる事に気づく。
少年、と言ってもその背格好――体格は大人顔負けに見え……。
佐野としては、どことなくかつて比良戸にいた時の先輩――次藤に似た雰囲気を覚える。
……次藤とは違い、頭は完全に金髪なのだが。

佐野「(っていうか、金髪に茶髪……やっぱ外国か。 少なくともアジアじゃねーな)」
栗毛の少年「さあついた、ここで皆待ってるよ。 入って入って」
佐野「あ、どもども」

やけに人の好さそうな栗毛の少年に先導され、部屋の中へと入る佐野。
ここは一発ギャグで入ると同時に心を鷲掴みにするべきか、などと考えながら入ってみれば――。

343 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:15:14 ID:???
一輪「あ、佐野くん待ってたわよ! さ、こっちこっち!!」
佐野「は……へ!? い、イチさん!? なんで!?」

なんとそこにいたのは、今朝方別れたばかりである筈の命蓮寺メンバー……雲居一輪の姿があった。
彼女はなんとも元気にブンブンと手を振って佐野の名前を呼んでおり、
一方で佐野としては予想以上に早すぎる再会に驚愕してしまうのだが……。
よくよく周囲を見てみれば、更に佐野は目を飛び出さんばかりに驚く破目になる。

??「(にゃ……あれが最後のメンバーかぁ。 ……なんだか試合でダイスばっか振りそうな顔してるにゃあ)」
??「(ひぅっ、今こっち見た? ……見たよね?
    ……うー、こんな人が多い場所でずっと待機してなきゃいけなかったし、やっぱ間違いだったかなぁ)」

多くの者たちはこのチームを構成する上での選手――男性ばかりである。
ただ、そんな中で特段目立つ少女が2名、長椅子に腰掛けている。
1人はネコミミの生えた少女、そしてもう1人はどこか怯えたように周囲をキョロキョロ見回している少女。

佐野「(え、え? あれ? ここ外の世界だよな? 幻想郷じゃねえよな?)」

後者はともかく、前者のネコミミ少女についてはどう考えても幻想郷産としか思えない外見。
一輪がいる事から考えてもそれは事実なのだろうが……しかし、どうしてここに?と疑問を持ってしまう。
何せ彼女たちは3人――佐野を含めれば、4人もの留学選手がいる事になるのだ。
混乱をする佐野を後目に、背後にいた栗毛の少年は咳払いをすると手を叩いて注目を集め口を開く。

栗毛の少年「それでは改めて紹介しよう。
      彼はサノ・ミツル……これから俺達と共に戦ってくれる、ゲンソーキョーと呼ばれる場所からやってきた選手だ。
      イチリンさん達をはじめ、これで4人の新戦力が加入してくれる事になった」
佐野「(あ、や、やっぱり4人全員が新戦力……つまりは留学選手なんだな)」
栗毛の少年「サノくんたちには、後でまた挨拶をしてもらうとして……まずは俺達から」

そこまで言うと栗毛の少年は佐野……そして一輪達へと視線を向け。

344 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:16:50 ID:???
マンチーニ「俺の名前は『クォグレー・マンチーニ』……そして、こっちが」
カルネバーレ「『ゴリー・カルネバーレ』だ」
佐野「(名前までゴリラみてーな……っていうか、なんだこいつ? めちゃめちゃ不機嫌だな)」

栗毛の少年――マンチーニに続き、金髪の少年――カルネバーレもまた、挨拶をする。
にこやかなマンチーニに対し、カルネバーレに関しては非常にぶっきらぼうな物言いだった為、
思わず佐野は眉を潜めるのだが……カルネバーレはそんな事など意に介さず、
ギロリと先ほどのマンチーニの視線とは打って変わって敵意に近い感情を剥き出しにした視線で佐野達を見ながら口を開く。

カルネバーレ「言っておくが、俺達のサッカーはゲンソーキョーとやらのオママゴトのサッカーじゃない。
       覚悟が無いならとっとと帰るんだな」
佐野「な、なにィ!?」
カルネバーレ「ふん……」

挑発めいたカルネバーレの言葉に思わず佐野が反応を見せるが、やはりカルネバーレは無視。
慌ててマンチーニが間に入り、なんとか場を取り纏めようとする。

マンチーニ「ま、まあまあ。 サノ、怒らないでくれ。 カルネバーレも不用意に煽るような事を言うのは止めるんだ」
佐野「むぐ……」
マンチーニ「さあ、自己紹介の続きだ。 まずはサノから……って、その前に言ってなかったな」

そこで一旦言葉を切り、メガネをクイッと上げてからマンチーニは続けた。

マンチーニ「ようこそイタリア、レッチェへ! 俺は君たちを歓迎するよ」

345 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 01:20:16 ID:???
佐野くんと一輪さん、更にまだ謎の少女×2がレッチェに移籍決定!という訳で一旦ここまで。
ゲームの方で1番やったのが5だったので、主人公の留学先はレッチェと決めていました。
なお元いたキーパーでは多分ゲームにならないので一輪さんもついてきてしまうもよう。

それでは。

346 :森崎名無しさん:2018/03/05(月) 18:20:30 ID:???
乙でした
ゲーム森崎以下のキーパーではやむを得ないか
彼の行方は如何に…

ところで、在籍選手の中にミッツィーニさんとかいませんか?

347 :森崎名無しさん:2018/03/05(月) 19:28:55 ID:???
ブルノさん解雇か、おしい人を無くした
謎の少女の能力にもよるけど、翼の負担が大きい5のレッチェよりもバランス良さそう
特にキーパー交代は大きいなぁ

348 :森崎名無しさん:2018/03/05(月) 21:44:20 ID:???
カルネバーレのネーミングが適当すぎて草

349 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/05(月) 23:53:45 ID:???
>>346
乙ありです

ミッツィーニさんとかハナミーチェさんとかは考えていましたがやめました。
佐野くんその他が目立たなくなっちゃうからね……仕方ないね。
>>347
一応ブルノさんはいることはいますが、サブキーパーですね。
もしも出番が来たらヤバイです……。
>>348
ネーミングセンス無いから……仕方ないね。

今日は更新無し、明日は出来ると思います。それでは。

350 :森崎名無しさん:2018/03/06(火) 16:20:00 ID:???
オテッロ「アンザーニ監督……試合に、出たいです……」

本当にアンザーニ監督だったらアナカンさんに土下座ものでしょうがw

351 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:23:40 ID:???
>>350
アンザーニ監督は……出るかもしれないし出ないかもしれない?

それではちょっとだけ更新します。

352 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:25:14 ID:???
佐野「イタリア……レ、レッチェ?」

マンチーニの言葉を受けて、思わず佐野はそう鸚鵡返しをしていた。
佐野とてサッカー少年。海外の著名なリーグ、有名なクラブチームというのはある程度知っている。
知っているのだが――それはやはり、ある程度という知識でしかない。

この時代、サッカー後進国である日本において、海外リーグの情報を得る手段というものは決して多くは無く。
佐野としては、イタリアがサッカー大国であるという事は知っていても、
レッチェというクラブチームなど知らないというのはある意味当然なのであった。

佐野「(イタリアって事はセリエA……でいいんだよな?
    インテルとかミランとかなら知ってるんだけど、レッチェ? ……無名クラブなのかなぁ)」
マンチーニ「さあ、それじゃあ次は皆に自己紹介をしてもらおうかな」
カルネバーレ「お前から行け」
佐野「(おっと、ま、チームの事については後で聞けばいいか。 ……しかしこのゴリラはなんでこんなケンカ腰なんだ?)」

思い悩む佐野であったが、知らない事についていつまで考えていても答えが出る筈もない。
マンチーニらに促されながら、ここは先に自己紹介をしておくべきだろうと口を開く。

佐野「あー……名前は佐野満! 元々は日本の比良戸中学ってトコにいたんだけど、
   色々あって幻想郷の命蓮寺ナムサンズってトコで世話んなってました。
   ポジションはFWとMF! ま、攻撃に関しちゃお任せあれって感じで1つヨロシク!」
マンチーニ「ああ、Jrユース大会ではマカイという所の代表で出ていたのを見ていたよ。
      見事なドリブル技術でこれから本当に頼もしいな」
佐野「あ、そう? まーなー、俺くらいのドリブラーはそんなにいるもんじゃないからなぁ」
カルネバーレ「タワケが。 足元の技術はともかく、体つきが中学生どころか小学生並だ。
       そんな体でここでやっていけると思っているのか」
佐野「ぬ……」

353 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:27:18 ID:???
まずは己の長所をアピールしつつ、気さくな感じで自己紹介を済ませる佐野。
これにはマンチーニが先の大会での佐野の活躍ぶりを評価しながら褒める。
実際、佐野の実力に関しては――少なくともドリブルだけならばトップクラス。
世界一という訳ではないものの大きな武器であり、マンチーニの頼りがいがあるという言葉も嘘偽りの無いものである。
これには佐野も鼻高々とばかりに気をよくするのだが、カルネバーレの辛辣な言葉に思わず詰まるのであった。

佐野「(なんだよこのゴリラ。
    さっきからイチャモンつけてばっかじゃねーか……チェッ、マンチーニってのはいい奴っぽいんだけどなぁ)」
マンチーニ「あ、あー……それじゃ次。 端の方からお願い出来るかな?」
一輪「私ね!」

思わず険悪なムードになりそうになった所で、慌ててマンチーニが話を進める。
指名をされた一輪は、待ってましたと言わんばかりに立ち上がると、
胸を張りながらその口を開いた。

一輪「名前は雲居一輪! 佐野くんと同じく、命蓮寺ナムサンズ所属のGKよ!
   好きな色は白! 好きな花は蓮! 好きな属性は聖! 好きな言葉は南無三!
   好きな京都の通り唄のフレーズは『あねさん ろっかく』のトコロ!
   好きな如来像は釈迦如来像! 好きな三法印は……」
マンチーニ「ま、待った待った……もういいから」
一輪「え、そう? 折角だから趣味の写経でやったお経を読みたいと思ってたのだけど……」
佐野「(アカン、テンション上がってるのかイチさんまた変な感じになってる……)」

凄くどうでもいい事を長々と――というか、そもそも恐らく大半の人物が違う宗教を信仰しているだろうにも関わらず、
仏教的な事を話しはじめ、おまけに事前に持ってきたと思しき経典を読み上げようとする一輪。
これにはマンチーニも慌てて止め、佐野は内心でまた一輪の悪い癖が出てると冷や汗を流す。

354 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:30:33 ID:???
佐野「(しかし、イチさんも大変そうだな……他のポジションならともかくGKってのは枠が1つしかねーんだ。
    イチさんだって悪いキーパーじゃないんだけど、もしもこのチームにいるGKってのが優秀ならスタメンは難しいぞ?
    ……って、ん?)」
ブルノ「ふっ……GKか。 やれやれ、折角留学に来てくれたというのに、
    それがこの『ザ・レッチェの壁』ことブルノ様のいるレッチェというのは運が無かったな」
佐野「お? もしかしてアイツがここの正GKなのか?」
マンチーニ「え? ああ……まあ、そうだね」

一輪の事を心配する佐野は、この一輪の挨拶に反応をした1人の少年に目をつける。
よくよく見てみればマンチーニやカルネバーレをはじめ、他の選手たちがユニフォームを着ている中。
その少年だけは違う色のユニフォーム――GK用のユニフォームを着ていたのである。
佐野が気になりマンチーニに問いかけてみると、マンチーニはどこか歯切れ悪くも肯定をした。

ブルノ「ククク……この後の練習で『SSGGKK(スーパー・スペシャル・グレート・ゴールデン・かっこいい・キーパー)』と呼ばれる、
     ブルノ様の実力が如何に高いかという事をお見せしよう」
佐野「(むむむ……この自信、この不敵さ……。 まさかコイツ、相当強いのか?)」
マンチーニ「………………」
カルネバーレ「………………」

尊大な態度を取るブルノの姿勢に、思わず唾をゴクリと飲み緊張する佐野。
一方でマンチーニとカルネバーレは、生暖かい視線でブルノの事を見つめるのだった。

355 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:31:52 ID:???
マンチーニ「ええと……それじゃあ次に行こうか。 お願い出来るかい?」
??「にゃあい! 待ってました!」
佐野「(そーいやあの子は見た事ねーな。 ……少なくとも、この前のフランス大会じゃ出てなかったんじゃねーか?)」

何はともあれ、一輪の自己紹介は終わったという事で。
マンチーニは次の少女へと視線を向けて自己紹介をするよう促す。
つられて佐野もまた、その少女に視線を向け――しかし見覚えの無い少女だと首を捻る中。
少女はそのネコミミをピクピクと動かしながら立ち上がる。

お燐「あたいの名前は火焔猫燐(かえんびょう りん)! 幻想郷は地霊殿の出身さ!
   ポジションはMF! これからよろしくね、お兄さん方!
   ま、気軽にお燐って呼んでおくれよ!」
佐野「地霊殿……(って、確かフランスに派遣されてたキーパーさんらがいる場所、だったよな?)」

ウインクをしながら、愛嬌たっぷりにそう自己紹介する少女の名前は火焔猫燐。
佐野の考え通り、古明地さとりが統治する地底の要所――地霊殿のペット。
先のフランス国際Jrユース大会では試合に出るどころか、幻想郷Jrユースの代表にすら落選した選手である。
彼女が本来留学選手としての権利を行使出来る筈だった地霊殿の留学選手は、古明地さとりで内定をしている。
では何故そんな彼女がここにいるのか――それは、彼女が他勢力の権利を使って留学をしていたからに他ならなかった。

356 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:32:55 ID:???
〜 回想 〜

お燐「にゃ〜ん……さて、いそがしいそがし。
   こいし様がやる気を出してくれたとはいえ、やっぱりまだまだ荷が重すぎるもんね。
   おくうじゃとても補佐なんてもんは出来ないし、あたいがしっかりこいし様を支えないと!」

古明地さとりが留学選手に決まった地霊殿。
留学までの間、さとりの指揮のもと、地霊殿を統治する体制を一同は整備しようとしていた。
その中でも人一倍動き回り、内情を纏めてさとりがいなくとも運営出来るようにと努力していたのはお燐である。
こいしが妖怪を集め、運営に携わるようになるとはいえ彼女はまだ未熟。
盟友であるおくうもやる気だけはお燐以上に出しているが、残念ながら彼女の頭は頭脳労働に向いていなかった。

よって、お燐が頑張るしかない。
幸いにしてさとり達が留守にしていた期間中、この地霊殿を切り盛りしていたのはお燐だ。
その時に培ったノウハウもあり、後はこれを長期的に運用出来るようなシステム作りをすればいい。
辛くはあるがこれもさとりの為と懸命に働くお燐だったのだが……。

勇儀「お、ここにいたのかい地獄猫」
お燐「うにゃ? あ……勇儀の姐さん」

そんなお燐に声をかけてきたのは、旧地獄街道を取り仕切る鬼――星熊勇儀であった。
慌ただしくバタバタ走り回るお燐は声をかけられた事で一旦足を止め……。
しかし、やはり忙しそうに、申し訳なさそうにしながら口を開く。

お燐「悪いけど宴会のお誘いならまた今度! 今ちょっと忙しいんだよ」
勇儀「おいおい、まだ話の用件も言ってないのにそりゃないだろ?
   ……まあ、いつも宴会に誘いに来てるからその反応もわからんでもないが」

三度の飯より酒が好き。今もまた盃を手にしている勇儀を見て開口一番にそう言うお燐に対し、
勇儀は困ったように頭をかきながら宴会に誘いに来たのではないと手を横に振って否定する。

357 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:34:13 ID:???
勇儀「私は回りくどいのが嫌いでね。 単刀直入に言わせてもらうよ。
   地獄猫……アンタも例のサッカー留学とやらに行かないかい?」
お燐「……はァ?」

そして続いて出てきた発言に……お燐は思わず恍けた声を上げていた。
一体こいつは何を言っているのかと、明らかに格上である勇儀に対して疑念に満ちた視線を向ける。
酒の飲み過ぎで頭まで悪くなったのか、というか何故彼女がサッカー留学の話を知っているのか。
疑念は絶えないが、いずれにしろ地霊殿の留学選手はさとりに決まったのだ。

お燐「悪いけど、ウチから留学に行くのはさとり様だよ。
   っていうか余所の御家の事情に首突っ込まないで欲しいにゃ」
勇儀「あー……いやいや、違う。 コイツは地霊殿として留学に行けっていう話じゃあないんだ」
お燐「にゃ?」
勇儀「地獄の裁判長様が先日お見えになってねぇ……」

肩を竦めながら、勇儀は決していいとは言えない頭と弁舌で説明を始めた。
曰く、先日――旧地獄街道を取り仕切る星熊勇儀の元に、現在の地獄――。
是非曲直庁に勤務をする四季映姫がやってきたのだという。
そこで四季映姫が語ったのは、地獄が得た留学権を星熊勇儀に委託したいという話であった。

お燐「……にゃんでそんなことに?」
勇儀「あちらさんは仕事熱心だからねぇ。 裁判長殿は、基本的に誰も行かせたくないんだろうさ」

地霊殿を始めとして、基本的にどの組織も程度の差こそあれ幻想郷での役割を持っている。
その中でも地獄――是非曲直庁に関しては幻想郷でもトップクラスの忙しさを持つ組織であった。
タイトに組まれた裁判制度と慢性的な人員不足。
ぶっちゃけ、サッカー留学などに人を出している暇など無いのである。

お燐「あの渡し守のお姉さんなんか、いてもいなくても仕事しないんだから問題ないんじゃにゃい?」
勇儀「かもしれんが、だからってホイホイ留学に行かせられんのだろう」
お燐「ふーん……」

358 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:35:17 ID:???
お燐「(火燐だね……)」

かつてサッカーの試合中、お燐と共に中盤を切り盛りし、覚醒をしたゾンビフェアリー。
お燐を慕っていた彼女に対し、お燐は自身の名前から取った字を使い名前を与えた。
それ以後は一介の妖精ながらもサッカー、実生活共にお燐の支えとなっていた彼女。
勇儀の言うようにお燐を推薦するならば彼女しかいないと、お燐は考えていた。

勇儀「どうなんだい? 違うってんなら他の奴に話を持っていかなきゃあならなくなるんだが……」
お燐「あー……いや、あたいは……」
勇儀「おっと、『正直』に答えなよ? 正直にね」
お燐「(めんどくさいにゃあ……)……そうだね、まあ、確かに。 留学ってぇ奴に行ってみたいのは事実さ」

嘘を嫌う鬼に嘘はつけない、とお燐は白状をした。
実際、さとりが話を持ってきた時も――お燐自身は、
こいしやおくうに比べ、行ってみたいという気持ちを隠してはいなかった。
好奇心旺盛な彼女の性格上、外の世界というものに興味がある――という面もある。
だが、それ以上に彼女が求めていたのはさとりの役に立てるだけの力を手に入れたいというものだった。

お燐「(おくうは殆ど出番が無かったらしいけど、それでも代表入りしてゴールだって決めてた。
    こいし様はさとり様の支えになって、外の世界のチームの選手たちを鍛えてたらしい。
    あたいだけが何も出来なかった。 ……地霊殿で帰りを待つしか出来なかったんだ)」

359 :>>358は無視して下さい ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:36:17 ID:???
はじめはイマイチ話が読めなかったお燐であったが、勇儀の説明によりある程度は納得した。
確かに是非曲直庁の忙しさというのは耳にしているし、
厳格な四季映姫があくまで遊びの延長であろうサッカーにかまけて仕事を疎かにする訳が無いというのは理解できる。
何よりも、この話をしたのは目の前の星熊勇儀だ。
ウソを何よりも嫌う種族――鬼の勇儀がそう言うのだから、それはきっと真実なのだろう。

お燐「っていっても、なんであたい? パルパルズの人たちとかは? お姐さん、仲良かったんじゃないの?」
勇儀「一応話は持って行ったが、乗り気な奴がいなかったからねぇ」
お燐「ふーん……じゃ、おくうとかこいし様とかは?」
勇儀「ああ、そいつは考えたんだが……どうも話を聞いてるとアンタが適任そうだったからね」
お燐「うん? どゆこと?」

パルパルズのメンバーに話を持って行った時、彼女たちが乗りきでなかったというのはまだわかる。
なんだかんだと言いながら、あそこも既に強豪クラスのチーム。
おまけに橋姫を中心としながら、多種多様な種族、勢力の選手たちが集まり仲良くしているチームだ。
噂で聞いた妖夢の離脱こそあれど、基本は全員があのチームでやっていきたいと考えているのだろう。

ただ問題はその上で何故勇儀がお燐に話を持ってきたのかという事である。
地霊殿には他にもおくうやこいしがいる。
その中でお燐を選んだ理由がいまいちつかめず、問いかけると、勇儀は快活に笑いながら返答した。

勇儀「お前さんがこの地霊殿で、ホントは一番外の世界に行きたがってたって聞いたからね」
お燐「……誰にだい?」
勇儀「顔色が悪い妖精さ」
お燐「………………」

勇儀の返答を聞いて、お燐はすぐにピンと来た。

360 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:37:25 ID:???
お燐「(火燐だね……)」

かつてサッカーの試合中、お燐と共に中盤を切り盛りし、覚醒をしたゾンビフェアリー。
お燐を慕っていた彼女に対し、お燐は自身の名前から取った字を使い名前を与えた。
それ以後は一介の妖精ながらもサッカー、実生活共にお燐の支えとなっていた彼女。
勇儀の言うようにお燐を推薦するならば彼女しかいないと、お燐は考えていた。

勇儀「どうなんだい? 違うってんなら他の奴に話を持っていかなきゃあならなくなるんだが……」
お燐「あー……いや、あたいは……」
勇儀「おっと、『正直』に答えなよ? 正直にね」
お燐「(めんどくさいにゃあ……)……そうだね、まあ、確かに。 留学ってぇ奴に行ってみたいのは事実さ」

嘘を嫌う鬼に嘘はつけない、とお燐は白状をした。
実際、さとりが話を持ってきた時も――お燐自身は、
こいしやおくうに比べ、行ってみたいという気持ちを隠してはいなかった。
好奇心旺盛な彼女の性格上、外の世界というものに興味がある――という面もある。
だが、それ以上に彼女が求めていたのはさとりの役に立てるだけの力を手に入れたいというものだった。

お燐「(おくうは殆ど出番が無かったらしいけど、それでも代表入りしてゴールだって決めてた。
    こいし様はさとり様の支えになって、外の世界のチームの選手たちを鍛えてたらしい。
    あたいだけが何も出来なかった。 ……地霊殿で帰りを待つしか出来なかったんだ)」

361 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:38:56 ID:???
表面上は明るく見せていたが、その現実はお燐にとってショックであった。
無論、地霊殿でさとりたちの不在の間しっかり留守番が出来たというのは1つの誇りである。
ただ、あまりにもちっぽけな誇りだ。
本音を言えば自分も代表入りをして活躍し、地霊殿のイメージアップに貢献したかった。
忌み嫌われた妖怪たちの首領。覚り妖怪の住まう屋敷の凄さをアピールしたかった。

そういった事を考えれば、お燐にとって留学という話は飛びつきたくなる程の話であった。
……さとりの事を考えて自制をしたが、本音を言えば留学をして強くなりたい。
さとりの役に立てるようになりたいという思いは、同じペットのおくう以上には強かっただろう。

お燐「ただ……あたいが行ったらいよいよ地霊殿は傾いちゃうよ。 おくうとこいし様だけで回せると思うかい?」

とはいえそれはただの願望であり、現実的ではない。
お燐の言う通り、さとりという頭脳がいなくなった今、地霊殿を切り盛りするのは自分しかいないという自負がある。
この上にお燐までいなくなっては、地霊殿がのっぴきならない状況になるというのは自明の理であった。
故にお燐としては、行きたいが行けない。そう答えざるを得ない。

362 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:40:14 ID:???
ただ、そのお燐の答えも予想をしていたのか……勇儀は盃をクイと傾け一口呷り、
酒気を帯びた息を吐きながらも笑みを浮かべて解決策を述べた。

勇儀「問題ない。 あんたの代役についちゃ妖怪の山の天狗どもにお願いするつもりだからね」
お燐「は……はァ!?」

星熊勇儀は、かつて妖怪の山でぶいぶい言わせていた鬼でもある。
今ではこの地底に住まい、隠遁生活をしているようなものだが、今でもその威光は妖怪の山で通用し、
そこに働きかけて追加の人材を呼び寄越すくらいは簡単なものだ。
特に、この解決策は妖怪の山の天狗に頼む――という点が秀逸であった。
妖怪の山の社会組織は、地霊殿のそれよりもよっぽど人間社会のそれに近い管理体制である。
そこで働いている天狗がお燐の代理を務めるのならば、不慣れであろうともすぐ慣れる事が出来るだろう。

しかし、お燐が驚き声を上げたのはそんな事が理由ではない。

お燐「妖怪の山って……勇儀の姐さん、あんた……そんな性格だっけ?」

かつて、と言ったように……勇儀が妖怪の山にいたのは遠い昔の話である。
元山の四天王として名を馳せていた彼女は、しかし今は旧地獄街道で毎日酒盛りをしているただ一介の鬼。
良く言えば単純で豪快、悪く言えば短気で粗野で融通が利かない性格の彼女。
元来権力や過去の栄光というものを振りかざし、昔の部下に無理難題を突き付けるような性格ではない。
というよりも、むしろそういった権力をかざして命令する者を毛嫌いするようなタイプである。

そんな勇儀が何故そこまでするのか、とお燐が疑問を持つのは当然であり。
それに対して勇儀はどこか苦々しくしながらも返答する。

勇儀「……まぁ、私もあんまりこういった手は使いたかぁなかったんだがね。
   ただ……地霊殿にゃあ借りもある」
お燐「借り?」
勇儀「ああ。 より正確に言えば……お宅のご令嬢にゃあ、大層失礼をこいたからね」

363 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:41:29 ID:???
そう言う勇儀の表情は、やはり苦虫をかみつぶしたかのようなものだった。
お燐の知る事ではないが、彼女は先日あったフランス国際Jrユース大会において、
同朋である鬼――伊吹萃香、と……おまけについてきた鴉天狗の射命丸文と共にウルグアイJrユースに参加。
フランスへと派遣をされていた古明地姉妹と対戦をしていた。

その以前までの幻想郷における大会において、見るも無残にシュートに蹂躙され、
トラウマを見せるどころか逆にトラウマに苛まれるようになった古明地さとりに対し、
心底呆れと軽蔑に近い感情を抱いていたのが勇儀である。
当然、Jrユース大会でも完全にさとりたちを見下し、歯牙にもかけぬつもりで戦ったのだが――。

そんな勇儀をあざ笑うかのように、さとりたちは奮闘し、勇儀たちを破った。
後半戦に入り難攻不落とされる萃香から、フランスの第二ストライカーがゴールを奪い。
そして、勇儀の持つバカげた威力のシュートをも、古明地さとりは完全に防いだうえで。

勇儀「……ここまでの便宜って奴は私なりの罪滅ぼしって奴だ。
   鬼退治をしたツワモノには相応の褒賞ってのが古来よりの慣わしだろう」

鬼を相手に、決して強いとは言い切れない筈の覚り妖怪の姉妹が勝利した。
その事実は彼女に大きなショックを与え……。
それでも、例え負けたとしてもそれを受け入れるだけの度量が勇儀にはあった。
むしろ、自身を打ち負かしたという事実を讃え、侮っていた事を詫びる程度の気持ちはあった。

そんな中に舞い込んできた地獄からの留学話。
詫びを入れる際の手土産としては、十分なものではないだろうか。

勇儀「ってなわけだ。 行っといで、地獄猫」
お燐「お姐さん……! ありがとにゃーっ!!」
勇儀「(やれやれ……しかしなんとまあ、あの古明地のご令嬢といいこいつといい、留学……いや、修行、練習か。
    そんなに楽しいもんかね。 まるで人間のような事を。
    ……鍛えるってのは女々しい事だと思ってたが、これも時代なのかねぇ)」

364 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:43:02 ID:???
諸手を上げて飛び跳ね喜ぶお燐を見て、苦笑をしながらもそう思う勇儀。
力を持って生まれ、その力をして四天王とまで呼ばれていた彼女の思想は、
才覚ある者がそれを鍛えようとするのは女々しい――という、恐らくは鬼独特でしかない思想である。
ただ、しかし……こんな勇儀の考えも、決して珍しいという訳ではない。

実際にこの幻想郷には……練習をしない訳ではない、が、それでも。
生まれ持った才能、種族というものが全てという考えを持つ者も大勢いる。
そして事実として、かつての幻想郷では才能を持ち、
それを思うが儘に使う者こそがサッカーにおいても力関係においても常にヒエラルキーのトップに立っていたのだが……。

少なくともサッカーに関しては、ここ最近は情勢が変わってきている。

勇儀「(地底だけでも古明地のご令嬢は今じゃ萃香にも負けない程のキーパーだし、
    橋姫は博麗の巫女顔負けのドリブラー……とんでもない話だ)」

早速皆に報告を、と駆けだすお燐を眺めながら勇儀は考える。
変わりつつある幻想郷、変わりつつあるパワーバランス。
それがいい事か悪い事かはさておいて……。

勇儀「(少なくとも、強い奴が増えるってのはいい事だね! 私の腕もなるってもんだ!!)」
お燐「勇儀の姐さ〜ん! みんな喜んでくれてるよ!! ホントありがとね!!
   あと、今度地霊殿ネコ科の会のみんなで壮行会やってくれるらしいから、お姐さんも参加しておくれよ!」
勇儀「おっ、いいのかい?」
お燐「もっちろん!! あたいが留学に行けるのはお姐さんのお蔭なんだからね!」
勇儀「ハッハッハ、ならお言葉に甘えて参加させてもらおうかね」

勇儀はそれを受け入れ、楽しみにしていた。
鬼である彼女は誰よりも強者との戦いを求め……そして誰よりも単純であった。

365 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:45:07 ID:???
……ちなみに。

勇儀「………………」

お燐「………………」

アーマータイガー「………………」

火燐「………………」

数日後、お燐の言った通り地霊殿のネコ科たちが集まり、壮行会を開いてくれた。
ネコ科でもなく、勿論クマでもない勇儀が参加をするのは異例中の異例と言え、
また、一介の妖精である火燐がこの席にいるのもおかしな話でもあったのだが、
勇儀はお燐への留学話を持ってきたという事。火燐はそんな勇儀にお燐が留学に興味を持っていると告げた事。
そして何より当事者のお燐が誘ったという事もあって他の者たちにも受け入れられていた。

主賓であるお燐、客人である勇儀。
更にそこにアーマータイガーや、他の地霊殿に住まうネコ科たちが勢ぞろい。
全員が地霊殿のとある一室に集まりお燐の前途を祝おうとしていたのだが……。
微妙に、どことなく、雰囲気が重い。

何故か。

デビルねこ「ごめんね、ボクが糖尿病だからお茶しか出せなくて……」

この壮行会の幹事であるデビルねこが糖尿病である為アルコール類が出せず、
いまいち盛り上がっていないからだったという。

〜 回想 終わり 〜

366 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:46:16 ID:???
お燐「(まぁ……最後はともかく! あたいはやるよ、勇儀の姐さん!!)」

いまいち締まらない幻想郷最後の思い出であったが、それでもお燐は燃えに燃えていた。

お燐「(そしてさとり様、こいし様、おくう!!
    もう皆の後ろ姿を見るだけはゴメンだ。
    あたいは今日ここから、皆と一緒に戦えるだけの力をつけるんだ!)」

幻想郷代表に残れなかったという、活躍するしない以前――スタートラインにすら立てなかった悔しさ。
外の世界という未知の環境に対する希望と好奇心。

地底に住んでいる割には意外に明るい少女は、この新天地。
慕う主や友がいない場所で、きっと自分は――今度こそ主の役に立てるような立派なペットになってみせるのだと、
そう胸に誓うのだった。

367 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/07(水) 00:47:16 ID:???
おりんりんランド、イタリアで開園!という所で一旦ここまでです。それでは。

368 :森崎名無しさん:2018/03/07(水) 01:22:54 ID:???
乙でした
謎のメンバーはこっちの猫さんだったか、レッチェでは貴重な戦力だなぁ
あと一人は得点力がある選手だと大分バランス良くなるんだけどどうなるかなー


369 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/08(木) 21:46:59 ID:???
>>368
乙ありです。
5のレッチェ編はキーパーのザル具合も含めて割とハードモードですからね。
留学してきた選手は佐野は既に一定の能力があるとはいえ、一輪お燐あと1人は元々の能力は低めでスタートする予定でした。
そこを鍛えながらどうやって勝っていくか、という展開にするつもりだったので、
そういった育成・練習描写や交流もそこそこ書いていきながらやっていければなと思います。

本日も更新は無しです。明日、明後日に出来ればと思います。それでは。

370 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 02:30:21 ID:???
今日も更新は無しです。が、それだけだと寂しいので当時やっていた時の「反町への」好感度のデータを公表してみようと思います。
ちなみにデータ的にはJrユース編が始まる以前のオータムスカイズ編時点でのデータとなります。
まずは基準値となるであろうステディ・早苗さんの好感度について。

早苗評価   21

21です。ちなみにこれがどれくらいかというと、大体20が本編で言う+5くらいに思っていただければいいと思います。
20を超えれば絶対的な信頼や好意です。それを考えた上でのオータムスカイズメンバーの数値はこちらです。



穣子評価   28
静葉評価    9
にとり評価  17
大妖精評価  12
橙評価    10
リグル評価  21
妖精1評価  11
サンタナ評価 14
ヒューイ評価  9
チルノ評価  −2
メディ評価   0
幽香評価    7
レティ評価   6
リリーW評価  0
リリーB評価  1
妹紅評価   23

371 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 02:32:38 ID:???
打ち切った後などにも言った記憶がありますが、
正直当時私が穣子さんルートのつもりで書いていたというのも数値的には見て取れると思います。
勿論妹紅ルートも大いにありだと思います。リグルについては一切恋愛的な意味でのルートは考えてませんでしたが。
……ぶっちゃけると、当時、自由選択肢なりなんなりで、
穣子さんに「お前の事が好きだったんだよ!(意訳)」的な事を言えば、
多少なりとフラグなりなんなりは立ってそちらルートに行っていたと思います。それくらいの必要な好感度はありました。
もこたんあたりでもそれは同様ですかね。リグルはやっぱり考えてませんでした。
結局の所PLキャラである反町、もしくはその対象が好意を自覚させないといけないわけで。
そういった意味では明確に恋愛感情を向けた早苗さんがヒロインレースに大勝利したのも自明の理かもしれませんね。

その他を見ていきますと、意外と静葉さん橙といった初期メンバーの数値が低いです。
ここら辺は幽香さん関連で揉めた影響とかもあったかもしれませんね。
にとりに関してはそれで試合に対して割を食ってはいませんでしたので、
もうちょっといけば恋愛ルート突入もあったかもしれません。

妖精トリオについては弟子であるヒューイが実は一番低いです。
これについては幻想のポイズン内で散々言っていましたし、このスレでも描写していますが、
反町といればレギュラーになれるけど別に人間として好きでいる訳ではないしその他の面で信頼してる訳ではない。
実利の面で信頼しているだけという所でしょうか。

その他の面子については幽香さん以外は妥当でしょうか。
総括としてはやっぱり好感度の差が激しい。また高くても試合中の関係で上下が殆どだったので。
もっと日常パートでみんなと構ってあげて欲しかったというのが正直な所でした。

372 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 02:34:35 ID:???
次にその他の面々で気になる所。

パルスィ評価  1

やったね反町!パルスィの評価が1だよ!という感じでライバルのパルスィはたった1。
それでもパルスィから+の感情値を引き出すのがどれだけ難しいかというのはご理解されてると思いますので、これは凄い事です。

ラディッツ評価11

ラディッツ>静葉さん・橙・ヒューイ・幽香さん

さとり評価   6

吹っ飛ばされて精神崩壊したけど、私は元気です。

慧音評価   14

恐らく妹紅関係で相当上がったのだと思います。

魔理沙評価   2

自分でも忘れていましたが、スレの初期に魔理沙とは出会っていました。
そこでの応対などから決して悪感情は抱かれてなかったみたいですね。
未だに当時のマスタリングで悔いの残る点は、魔理沙など他の面子と知り合ったりするイベントをもっと作るべきだった。
完全自由な行動パートでなく、ある程度練習と日常と定期イベントを織り交ぜるべきだったという事ですね。
初期からそこそこ深く繋げられていれば、双方努力家。良き友にはなれたかもしれませんが……。

好感度を公開した所で、今日はこれだけ。明日は更新出来ると思います。それでは。

373 :森崎名無しさん:2018/03/10(土) 08:48:23 ID:???
反町がシュートの魔王を目指したと言うか目指すを得なかったのは
萃香に歯が立たなくて最後の合体シュート失敗して皆にボロクソに言われたから

JOKERの結果でも分不相応な敵をぶつけてはいけない(戒め)

374 :森崎名無しさん:2018/03/10(土) 10:12:21 ID:???
萃香以前にも紫が超強い事は示唆されてたし、合体シュートは元々無理があったし関係ないでしょう
あの試合以前から一芸特化の流れは強かったと思う。
(VS萃香時点で反町のシュート以外の攻撃能力は初期値)

375 :森崎名無しさん:2018/03/10(土) 11:11:42 ID:???
その一芸がまるで通用しないからもっと鍛えなきゃ(使命感)の流れになったんだろな
どれだけ伸ばしても伸びにくいにはならないし

376 :森崎名無しさん:2018/03/10(土) 14:12:10 ID:???
結果出さないとチームの皆を引っ張れないからな
そうなると参加者がシュート特化の流れになるのは自明の理というか

377 :森崎名無しさん:2018/03/10(土) 15:22:49 ID:???
皆生き急ぎすぎたんだなあ

378 :森崎名無しさん:2018/03/10(土) 19:40:53 ID:???
芋様の好感度がぶっちぎっていたというだけで救われる
芋様ルートを見たかった

379 :森崎名無しさん:2018/03/10(土) 20:44:29 ID:???
ここでもハブられるうどんげ(とてゐ)とは一体…うごごご!

380 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 23:05:33 ID:???
>萃香さんが立ちふさがった件について
あのイレギュラーなJOKER(JOKERは元々イレギュラーなもんですが)はそうですね、
確かにはい、もうちょっとなんとかならんかったかなと未だに自分でも思います。
ただGM的には、ぶっちゃけあれは負けイベントみたいなものだったので、
通用しなくてものんびりやってくれればって感じだったんですよね。
とはいえ、通用するように練習しなきゃという当時の参加者さんの気持ちも今ならばわかる気はします。

>合体シュートについて
あの結果(ボロクソに言われた)については少なくとも今でも間違ってないと思ってます。
あの場あの局面ですと一生懸命努力して、決勝まで勝ち上がって、皆の力を合わせて戦ってきた所で、
最後の最後でヤケクソのシュートを打ってぶち壊した、という風に受け取られると思います。
事前に練習をしてたとか、最低でも話題に出していたとかならばまた違ったでしょうが。

>結果出さないと引っ張れない
個人的にはここら辺が、一番参加者さんと私との間で認識の差があったのかなと思います。
Jrユース編から特に顕著になりましたが、力でねじ伏せて信望を集めるというのは、
当初のコンセプトからは外れて行ってたかなと思います。

>うどんげとてゐ
うどんげ評価  5
てゐ評価    2

こんな感じでした。特にこれといって言う事もないので除外しました……けどそういえばオータムスカイズ所属でしたねこの2人(忘却)


それでは短いですが更新します。

381 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 23:06:56 ID:???
マンチーニ「ああ、これからよろしく頼むよオリン」
カルネバーレ「………………」

胸を張って自己紹介をするお燐に対し、マンチーニはにこやかに応対し。
逆にカルネバーレはやはり厳しい表情でお燐を睨み返すだけだった。
佐野としては、なんだかんだでそれなりには知る幻想郷から、一輪と共にやってきてくれた仲間である。
直接的な交流どころか、互いに知らない関係性ながらもお燐に対して親近感が沸き、
内心でお燐の加入を歓迎するのだが……。

佐野「(ところでそのおりんりんの隣にいる人(?)がめちゃめちゃ震えてるのは気のせいですかね……)」
???「(じ、自己紹介……自己紹介!? え、これやっぱり私がする流れなの!? しかもトリ!?
     えええええ!? 自己紹介って何話せばいいの!?)」

それよりも何よりも、佐野としてはそのお燐の隣で震えている少女の事が気になった。
意気揚々と挨拶をするお燐とは対照的に、その少女の表情は暗い。
ただ暗いだけではなく色は真っ赤であるし、おまけに冷や汗がダラダラであった。
あからさまに緊張をしているのがまるわかりな様子である。

マンチーニ「えっと、それじゃあ次に……」
???「(うわーうわーこっち見た!? 今こっち見た!? っていうか、あいつだけじゃなくて皆私見てる!?
     なんでなんでー!? 私何も変な事も面白い事もやってないのにー!!)」
カルネバーレ「そこのお前、挨拶しろ」
???「ぴぃっ!?」

382 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 23:08:20 ID:???
そしてそんなあからさまに挙動不審な少女に、無慈悲にも指名が飛んだ。
瞬間、少女は決して小さくない悲鳴を上げてから音を立てて椅子から立ち上がり……。

はたて「ひっ、ひっ、姫海棠(ひめかいどう)はたて……でっす、ぅ……!!
    よ、妖怪の山からき、来ました!!」バッサバッサ
佐野「(妖怪の山……って、えーっと、確か椛が仕事してるトコだよな?
    つーかめっちゃバサバサいってるあの羽……確か、烏天狗って種族だっけ? つーかなんで羽をあんなバサバサやってんだ?)」
お燐「ちょっ、天狗のお姉さんやめて! 羽が当たってる! 当たってる!!」
はたて「(い、言えた! ちゃんと自己紹介出来たわ私! やっぱりやれば出来るじゃない!!)」バッサバッサ

やっぱりあからさまに緊張し、どもりながら、挨拶をした。
なお、緊張と興奮のあまりに羽が一緒に動いてしまい、お隣にいたお燐に思い切りぶつかるハプニングがあったのだが、
当の少女――姫海棠はたては自身が自己紹介を終えた安堵と達成感により、
そんな事にはまるで気づかなかったという。

佐野「(……しかし、また知らん人……いや、妖怪だな。
    しゃめーまるとかいう天狗さんはウルグアイで活躍してたってのは知ってるけど……。
    こんな人、確かどこの国にも。 勿論幻想郷代表にもいなかったよな?)」

一応は幻想郷Jrユースにおける控えが主だったメンバーについても、
命蓮寺のメンバーなどから聞いて知って聞いていた佐野。
しかしながらそんな彼のデータベースには、姫海棠はたてという少女の名は一切入っていなかった。

否、それどころかJrユースレベルですらなく、幻想郷での活動時点から、
守矢フルーツズ・オータムスカイズなど妖怪の山の妖怪・神を中心としたチームの中で、
彼女の名を聞いた事などまるで無い。

そして、それは無理からぬ事だった。
何故なら姫海棠はたてという選手がサッカーを始めたのは、Jrユース大会が始まる寸前の出来事だったのだから。

383 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 23:09:53 ID:???
〜 回想 〜

文「……という訳で、はたて。 あなたこのサッカー留学というものに行ってみない?」

時間を巻き戻し、舞台は妖怪の山――当の姫海棠はたての住まう住居。
守矢神社からの通達を受けて自分が行くしかないかと思っていた射命丸文が、
藁にも縋る思いでサッカー留学の話を持って行った相手というのが、このはたてであった。

はたて「はァ? なんで私がそんな事しなきゃいけないのよ」

そして、そのはたて自身はといえば……そんな文の言葉を見事に一蹴した。
同じ烏天狗、そして同じ新聞記者。
両者はお互い旧知の仲であり、だからこそ文としてもそんなはたてに留学の件を話したのだが、
はたて自身の反応は決して芳しくは無い。
……そもそも、彼女自身もまた文と同じ。そこまでサッカーに対して強い情熱というものを持っていないのだ。
いきなりこんな話を持ってこられて、承諾する訳もなかった。

はたて「3年間も外の世界とか……守矢の……えぇっと、ガンキャノン様だっけ?」
文「神奈子様よ……(本当にこの子は……まるで外の世界どころか、幻想郷の事すら何も知らないんだから)」
はたて「ともかくよ! あんたが言われた事なんだから、あんたが行けばいいじゃない。 私が行く義理も道理もないわよ」

それは正論ではあったが、しかし文としては困る事である。
よってなんとか文としてははたてを言いくるめるより他なかった。

文「そうは言ってもねぇ……アナタ、この前の新聞でもまた遅れに遅れた情報しか出さなかったでしょ」
はたて「うぐ……」

そう、サッカーに対する情熱というものははたてには殆どない。
だが彼女には新聞記者としてのプライドがあった。
そんな彼女にとって、目下の課題であり問題点であったのが――己の発刊する新聞の情報速度。
Jrユース大会から数週間遅れでようやくその大会の結果や経過などを知り、記事としたのだが、
あまりにも遅く――おまけに内容も薄っぺらいそれは文の刊行する文々。新聞の僅か1割程しか売れなかった。

384 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 23:11:09 ID:???
その事について当事者であるはたてが思う所が無かった訳ではない。
何故文の新聞の方が売れるのか、何故自分の新聞は誰にも読まれないのか。
分析し、考え、結局の所やはり問題点だと自分でも考えていたのが発刊速度と内容の充実さである。
ウルグアイJrユースに派遣選手として向かい、案外大した事ある指導力と実力で内部からの情報を得て即座に記事にした文。
それに対してはたてが出来た事といえば……。

はたて「で、でも私には念写があるし……」
文「そればかりに頼ってるから駄目なんでしょうが」

念写――はたての持つ、唯一にして最大の武器がそれである。
思い念じ、キーワードを使い検索をすればそれに見合った画像が浮かび上がる。
これを基にして記事を作成するのがはたてなりの新聞の作り方であったのだが……これには当然粗がある。
無論、念写をして思うが儘に画像――写真を撮れるというのは優れた能力であった。
ただ、その写真も……写真1枚だけではまるで意味が無い。
情報を持っていなければ、サッパリ訳がわからない写真などもあるのだから。

文「大体あの記事は何? アルゼンチンが……なんやかんやありまして、幻想郷には10−0で負けましたって」
はたて「いや、流石に10−0なんて大差が起こるとは思ってなかったし、そもそもその経過も……。
    10点差なんて事になったらどこがターニングポイントかどうかもわかんないじゃない!!」
文「逆切れはいけませんよ……(まあ、気持ちはわからないでもないけど。実際参加してた私でもあの試合は訳がわからなかったし)」

スコアだけを見ても、その経過を知るすべは無い。
よってはたても、数々の全幻想郷Jrユースの戦績を、「全幻想郷 Jrユース大会 結果」などの検索によって、
写真を見る事によって知り得てはいたのだが……その内容については知る由もない。
特に大差で勝利をしたアルゼンチンについては、完全に雑魚扱いとして記事にしてしまっていた。

文「でもそれじゃ読者には伝わらない。 そもそもアルゼンチンも弱者じゃないわよ、ウチは負けたし」
はたて「えっ、なんで!?」
文「私を超えるドリブラーがいたからよ。 ドリブラーっていうか、まあ、全体的にワンランク上にしたような感じね。
  多分永遠亭の薬師すら上回る天才。 ……幻想郷Jrユースとの戦いでは案外大したこと無かったけど」

385 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 23:17:20 ID:???
よって信憑性については著しく文の新聞などに比べれば落ちる。その上に、妄想や想像で記事を書くしかないのだからスピードも遅い。
実際の所は幻想郷Jrユースと戦った際、前評判に比べてそのチームのエースが案外大したこと無かったという事実と。
そもそもエースが存在しなかったという記事とでは、やはり意味合いは違ってくるのだから。

文「結局、あなたのやってる事は写真を基に記事を妄想で書き連ねてるだけ。 新聞ですらないわ」
はたて「あ、あなただってねつ造だの誇大表現だのやらかしてるじゃない! 何度クレーム来てるのよ!?」
文「あややや。 それは多少の誇張や表現の自由って奴よ、うん。
  大体が部数で言ったってあんたの所の花果子念報、全然売れてないじゃない」
はたて「ぐぬぬ……」

無論、文の書く記事全てが真実であり、信頼されている訳ではない。
ただ、それでも文は文なりに取材をして記事は書いている。誇張などはあっても、それについては事実だ。
だがはたての場合はあくまでも想像でしか書けていない。そこにはやはり大きな隔たりがある。

文「あんたも外の世界に行って、実際に取材をしてみれば?って言ってるのよ。
  これはビッグチャンスよ、はたて!」
はたて「むむむ……」

そして、その隔たりははたてとしても重々承知していた事だった。

文「あんたは最近サッカーを始めた割には下手じゃないし、留学させるには丁度いい頃合いの選手でしょ」

文の言う通り、はたては最近の幻想郷のサッカーブームに乗じて……しかしやはり流行に乗るのが遅く、
つい最近サッカーを始めたばかりの素人ではあった。
期間としては、大よそ命蓮寺のメンバーが佐野と共にチームを結成した頃とほぼ同時である。
しかしながらそんなはたては、才能でもあったのか――最近始めた割には、そこそこと言えるだけの実力は備えていた。
まったくの名無しの天狗などよりは、ずっとマシな留学選手候補である。

386 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 23:18:41 ID:???
はたて「で、でも外の世界って怖くない? 知らない人と会う事になるんだろうし……」
文「今更人間如きを怖がっててもしょうがないでしょうが」
はたて「う、うぅん……でも……」

その後もなんだかんだではたては渋ってはいたが、結局の所は文に言い包められ、留学に行くことに同意をした。

はたて「そうよね……うん、直接取材しないとわからない事もあるだろうし……」
文「(普通に取材するくらいなら幻想郷にいたって出来るのに。 やっぱりこいつチョロいわ……外の世界行って大丈夫かしら?)」

自分で話を持ってきながらも、それでも割と簡単に折れたはたてに、少しばかり不安を覚える文。
実際、文の考える通り、念写に頼らず取材などを行い記事を作るなど、
現状の文をはじめとした烏天狗がやっているように、幻想郷でだって行える。

しかしながらはたては、先のJrユース大会という一事象だけを切り取って考えてしまい、
外の世界に行かなければ現状を打破できないのだと考えてしまっていた。
ここら辺の大局的な物の見方というものも、やはり彼女は出来ていない。

おまけにはたてが口にしたように、彼女は生来知らない人と会話をするのが苦手である。
文とは旧知の仲であるからこそこのようにざっくばらんに話しているが、
これが知らない人物であればまともに喋る事が出来ない。

念写にばかり頼り、妄想と想像で記事を作ってきた少女。
彼女はあまりにも世間知らずで視野が狭く――そして何より、コミュニケーションが苦手であった。

〜 回想 終わり 〜

387 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 23:27:09 ID:???
はたて「(よ、よーし! ちゃんと挨拶は出来たしこの調子で外の世界でも頑張っていくわよ!!
     ……ところでイタリアってどこだったかしら? ……なんか記事でも書いた記憶があったけど)」バッサバッサ
カルネバーレ「おい、あー……ヒメカイドー」
はたて「ぴっ!? は、はい!(えぇ、なんだろ!? ゴリラに話しかけられた!?)」

とにもかくにも、こうしてコミュ障のはたては自身が無事に挨拶を終えた事に安堵をしていた。
安堵をしていたのだが……やはりその挨拶は不十分であった。
よってカルネバーレが突っ込むのだが、これ以上何か言われると予想をしていなかったはたてはやはり悲鳴を上げ。
しかしそんな事を気にした素振りも見せず、カルネバーレは言葉を紡ぐ。

カルネバーレ「肝心な事を聞いてない。 お前のポジションはどこだ?」
はたて「ポ、ポジション?」

そう、ポジション――はたてはそれを、先の自己紹介では説明していなかった。
佐野はFWかMF。一輪はGK。お燐はMF。
それぞれが己の役割をしっかりと説明しており……カルネバーレたちも、それを聞きながら脳内で構想を立てる。
これから練習で実際に能力を見た上でポジションなどは決まるとはいえ、
それでも本人が元々やっていた役割を知る事は重要である。

388 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 23:30:55 ID:???
よってこの時のカルネバーレの質問は至って普通な問いかけだったのだが……。
一方で問われたはたては、やはり顔を真っ赤にしながら汗をダラダラと流し狼狽える。

佐野「あん?(どうしたんだあの天狗のねーちゃん……)」
マンチーニ「ハタテ? 何か……」
はたて「あっ、の……ポ、ポジションは…………」

これには一同もどうしたのかと疑問に思う中、意を決したようにはたては口を開き……。

はたて「あ、ありま、せん……」
カルネバーレ「…………何?」
はたて「し、試合なんて……したことが、ないので……」

サッカーの実力はある。練習だってしていた。烏天狗という種族上、その実力も確か。
しかし、実戦経験は全く無い。
世間知らず、人見知り、経験不足。割と不安要素しかないものを抱えた少女――。
姫海棠はたての告白に、一同は唖然とするしかないのであった。

389 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/10(土) 23:32:38 ID:???
という訳で留学4選手発表といった所で一旦ここまで。
この4人+ゴリ、マンチーニ(+おまけのブルノさん)でイタリア編はしばらく進む事になります。
それでは。

390 :森崎名無しさん:2018/03/11(日) 01:13:27 ID:???
乙でした
最後の一人が予想外にポンコツ…点取れるのかなこれ
ゴリラのヘディングと佐野の突撃以外だけだときっつい

391 :森崎名無しさん:2018/03/11(日) 01:33:04 ID:???
強いGKと攻撃手段がないという致命的な部分が大きく目立ってるの困るよな
DFとマンチーニ達MFはわるくないんだけど
あと控えもわるくない

392 :森崎名無しさん:2018/03/11(日) 07:09:14 ID:???
はたての実力が未知数でなんとも言えん

393 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/11(日) 21:33:46 ID:???
>>390
乙ありです。
ゴリラとマンチーニは実は本編に比べて多少強化していますので、
まあ点は取れるんじゃないかな……と思います。
>>391
中盤はマンチーニ・お燐・佐野でそこそこ強力にはなりますね。
まあタレントの数では他チームよりも多少多めなので、そこで頑張っていく感じになると思います。
>>392
はたての適性や実力についても後々描写出来ればと思います。

本日は更新無しです。明日更新出来ればと思います。それでは。

394 :森崎名無しさん:2018/03/12(月) 01:04:43 ID:???
ゲームのレッチェを見直したら、ヘボい選手層だと改めて思った
使えるのは顔有り以外はモゼとチェーザレくらいで、他は大して戦力にならない
控えはそれ以下の奴らばかりで(DF一芸のドメーニコを除く)
オテッロに至ってはブルノ以下のセービング能力という酷さ(飛び出しは強いけど)
こんなのでよくセリエAに昇格できたもんだな…

395 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/12(月) 22:48:38 ID:???
>>394
マンチーニで運んで翼に打たせるかゴリに打たせるか。
守備の時はとりあえずタックル押して後はお祈りって感じでやってた記憶ですね。

今日更新する予定でしたが書きあがりませんでしたのでお休みさせていただきます。

396 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:06:00 ID:???
試合などした事が無い――そう、姫海棠はたてという少女は、試合経験というものが一切ない。
何度も言っているように、彼女は人見知りが激しくその上最近サッカーを始めたばかりの少女であった。
故にどこのチームにも所属しておらず……結果、試合をする機会というものがそもそも無かった。
彼女がようやく人並み程度にサッカーの技術が達した頃、
既に世間ではJrユース大会へ向けての活動で幻想郷サッカー界が動いていたのだから。

カルネバーレ「………………」
佐野「お、おいおい……(試合経験が無いって……大丈夫かよ?)」
はたて「(あ、あれ? 何この雰囲気……私、何かマズった!?)」

そして当然のように、このはたての告白を受けて一同は衝撃を受けていた。無論、悪い意味で。
佐野達留学選手ですら、幻想郷では各々、所属するチームがあり試合経験はある。
新設チームである命蓮寺ナムサンズに所属する一輪にしても、練習試合などではゴールを任された事があり、
代表ではサブキーパーに甘んじたとはいえ、まったくの経験不足という訳ではない。
中堅どころといった地霊アンダーグラウンドの中盤を任されていたお燐、
ついでに言えば元々が外の世界出身である佐野に至ってはしっかりと経験がある。

だからこそ彼らはショックを受け……そしてそんな佐野達以上にショックだったのは、
カルネバーレらレッチェに元々いた選手たちであった。
よもやサッカー素人を寄越してくるなど、誰も想像だにしていなかったのだから。
特にここまで佐野達に厳しくあたっていたカルネバーレは、当初は衝撃のあまり口をポカンとあけていたのだが……。
事情を理解するや否や、次第にわなわなと震え始める。

カルネバーレ「しっ、試合経験が無いだとォ!? おいお前! ふざけてるんじゃ……」
マンチーニ「さ、さあっ! 自己紹介も終わった事だし、早速だけど練習をしよう!!
      俺達も早く皆の実力を知りたいし、皆だって早くチームに馴染みたいだろう!
      その為にはやはりボールを蹴るのが一番だ! な!」

397 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:07:38 ID:???
遂にはカルネバーレの堪忍袋の緒が切れるかという矢先、マンチーニが咄嗟に空気を変えた。
このままではまず間違いなくカルネバーレの怒号が響き渡り、
はたてを更に委縮させてしまうと感じての判断である。
ただでさえ緊張をしているはたてを追いつめる事はいけないと考えた、マンチーニのファインプレーである。
こうなってはカルネバーレも矛を収めるより他なく、強くマンチーニを睨み付けながら深く息を吐いた。

カルネバーレ「……まあいいだろう。 フザけた奴なのかどうなのか、実際にやってみればわかる事だ。
       だが言っておく。 到底ここでの練習についてこれないと思った奴は、
       直訴してゲンソーキョーとやらに帰ってもらうぞ」
佐野「なぁマンチーニ、こいつにそんな決定権あんの?」
マンチーニ「まぁ……一応カルネバーレがこのレッチェのキャプテンだからね。
      心配することないさ。 サノの実力はさっき言った通り知ってるけど、君ならウチでもスタメンクラスだ」
佐野「(うげ、マンチーニじゃなくてこのゴリラがキャプテンなのか……めんどくせー。
    まあ……そこはこの俺の実力ってもんを見せてギャフンと言わせてやりゃいいだけの話だけど。
    ほかの面子は……イチさんだってあのブルノとかいうのとのキーパー争いは大変そうだし。
    お燐とはたてってのは実力が未知数だからどうとも言えねぇなぁ……)」

意外な事にこのレッチェのキャプテンは、先ほどから場を纏めていたマンチーニではなく、
佐野達に睨みを利かせ不機嫌そうにしていたカルネバーレであったらしい。
この事実は、これから3年間こんな気難しそうな奴の下でやっていかなければならないのかという不安にもなり……。
しかし、それでも自分の実力を見せてやれば、文句を言われる事も少なくなるだろうと考える。
一方で、佐野としては逆に他のメンバーの心配をするのだが……。

398 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:08:46 ID:???
お燐「にゃあい! やったね、久しぶりにサッカーが出来るよ!」

お燐に関しては、そもそも彼女自身がボールを蹴る事自体久しぶりという事もあり、
純粋に練習でもサッカーが出来るという事に喜んでいた。
幻想郷代表にも選ばれず、腐っていた彼女は新たな環境に向けてとにかく前向きであった。

はたて「れ、練習……(え、普通こういうのって挨拶が終わったらすぐ解散とかじゃないの?
    まだ他の人たちと一緒にいなきゃいけないのね……疲れるなぁ……)」

逆にはたてとしては、挨拶が終われば解放されると思っていたものが更にここから練習と聞いてげんなりしていた。
練習をするというのが嫌いという訳ではない。
事実、彼女は人知れず練習をして……あの案外大したことある派遣選手にも選ばれた射命丸文からも、
留学選手に相応しいとして太鼓判を押されてこのイタリアへとやってくるだけの実力を備えていたのだ。
ならば何が問題かと言えば、やはりこれ以上他人と関わるという事。
人と接するのが苦手な引きこもり天狗は、とっとと与えられた部屋へと戻って1人の時間が欲しかった。

ブルノ「さて、それじゃあこの俺様が新人どもの実力を測ってやるとするか」
佐野「(こいつ……やたらとさっきからでしゃばってくるな。 やはりただものではない……!
    イチさん、こいつからキーパーの座を奪うのは多分相当苦労するぞ!)」

そしてマンチーニが練習を言いだした所で、キーパーグローブを手に嵌め、
やる気満々といった様相でこのチームの正GJ――ブルノは不適に笑みを浮かべた。
腕組みをしながら自信たっぷりに言い放つ彼の姿を見て、
佐野は一輪の行く末を案じながらもマンチーニの先導を受けて練習に向かうのだった。

399 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:09:57 ID:???
早速練習という事になったが、果たして何をするのか。
道中で佐野はキャプテンであるカルネバーレ……ではなく、マンチーニに問いかけた。

マンチーニ「そうだね……まあみっちり練習をしてもいいんだけど、歓迎会を兼ねたレクリエーションとして、
      ミニゲームをしようかとさっきカルネバーレとは話したよ。
      さっきの感じだとオリンも試合には餓えてるようだったしね」
佐野「ほっほー……。 あのゴリ……でなかった、カルネバーレがそんなんで納得したのか?」
マンチーニ「気難しい奴だけどアイツも皆の事を考えてるって事さ。
      (本当はミニゲームでコテンパンにしてサノ達の実力を見て、それ次第では追放を上に進言すると言ってたけど……。
       それを素直に言うのはなぁ……)」

心中でそっと溜息を吐くマンチーニ。彼としても、正直な所試合経験が無いというはたての発言には大層驚き、
果たして戦力として計算が出来るのだろうかと心配をしていたのだが、そこはグッと堪えていた。
カルネバーレの手前、自分がそれに同調をするような事があってははたてだけではなく、
佐野達にも余分な心労を与えてしまうと思っていたのだ。
実際のところ、このレッチェでは――佐野の能力は平均以上……レギュラーになるのもほぼ確実だろうとマンチーニは考えている。
その他の面子にしても、約一名に限っては是が非でもいて貰わなければならないとも感じていた。
ここで不要に悪印象を抱かせる訳にはいかない、と、カルネバーレと佐野達との潤滑油になるマンチーニ。
丸眼鏡をクイッと上げる彼は、その風貌通りかなりのやり手であった。

………

そして一同はコートへと移動した。
ミニゲームをするとの事だが、果たしてチーム分けはどうなるのか……と佐野が疑問に思う中、
キャプテンである(らしい)カルネバーレが口を開く。

カルネバーレ「どうせだからお前ら4人は一緒のチームで組め、その方がわかりやすい。
       後は……ベニャミーノ、モゼ、ミケーレ、ニコーラ、バルトロメオ、チェーザレ、パトリツィオ。 そっちに入ってやれ」
モゼ「俺はヤスィーノ・モゼ」
バルトロメオ「シオーナ・バルトロメオだ」
チェーザレ「カクデム・チェーザレだ、よろしくな」
佐野「おう、よろしく(なんかすげぇモブっぽい顔してんなこいつら)」

400 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:11:21 ID:???
とりあえず頭の中でヤス・シオ・カクと情報をインプットしつつ、
佐野は手渡されたビブスを羽織りながら準備運動を開始した。

佐野「ポジションはどーする? えーと……お燐はMFだっけ?」
お燐「そだよー。 ロンゲのお兄さんはFWも出来るならFWする? 天狗のお姉さんは……」
佐野「あー……ポジション、はいいとしても。 そうだな……得意な事とかってあるか?」
はたて「ひぅっ!? え、えぇっと……ドドド、ド、ドリブルなら……あと少しだけなら走れましゅ……。
    (なんで話しかけてくるのこの人!? 私隅っこで黙ってたのに!?)」
佐野「(走れる……足が速いって事でいいのか?)
   じゃあ……まあサイドハーフやってもらうか。 えーっと、サイドハーフってわかるか?」
はたて「ひゃい!」
佐野「(なんか悪い事してる気がしてきた……普通に喋ってるだけなのに)」

その傍ら、作戦会議とも言えぬとりとめのない会話を選手たちと話し合う。
ただのミニゲーム、レクリエーションのようなものとはいえ、やるからにはどうせなら勝ちたい。
フォーメーションを決め、佐野はFW、お燐はトップ下……そしてはたてはサイドハーフ。
動くことの無い一輪以外の面子はそれぞれ配置へとつき……。
そこで不意に佐野は疑問を抱き、隣に立つ同じくFWに配置されたベニャミーノに声をかける。

佐野「そういや、監督は? さっきもいなかったし、この練習も見に来てねーけど」
ベニャミーノ「監督は、ちょっと入院中で不在なんだよ。 この前のリーグ戦の時からね……」
佐野「えぇっ!? ……おいおい、大丈夫なのかよそれ」
ベニャミーノ「ああいや、何か内臓系に異常があるとかではなくて怪我の類での入院だから……。
       1、2週間もすれば退院出来るって聞いてるし不安に思うような事はないよ」
佐野「そっ、そうか……(しかしどんな監督か早く会ってみたいようなそうでないような……。
   全日本の時の見上さんみたいな人だったらヤだなー、あの人めっちゃ堅いし)」

指導者である筈の監督の不在に不安を覚える佐野であったが、言っても仕方のない事である。
ここはベニャミーノの言う通り、早期に戻ってきてくれるという言葉を信じるしかなく、
気を取り直してミニゲームに臨むのだった。

401 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:12:39 ID:???
………
……


佐野、お燐、はたて、一輪を有するチーム。
対するはレッチェのキャプテンであるカルネバーレと、その補佐役であるマンチーニ……そして、正GKのブルノを有したチーム。
レクリエーションという事で時間は前半後半無しの15分のみとした上での試合は、
まずはジャンケンで勝利した佐野チームのボールではじまり、佐野がその実力を見せる所から始まった。

ポーンッ! クルクルッ!

佐野「あーらよっと! これが俺の必殺! ヒールリフトだ!!」
マンチーニ「(うん……やはり彼の突破力は素晴らしいな。 俺もドリブルには多少自信があったんだけどなぁ)」
カルネバーレ「(……小手先の技術だけは中々だな)」

再三言われている事であったが、佐野のドリブルはこのイタリアでも十分通用をした。
そもそも彼自身、この留学に来る以前は魔界Jrユースという強者たちを集めたチームでレギュラーを取っていた選手である。
守備に関しては大きな穴があるとはいえ、攻撃能力についてはお墨付き。
元々好意的だったマンチーニはもとより、カルネバーレも一定の評価はし……。

カルネバーレ「だが小手先だけだゥホオッ!!」

バギィッ!!

佐野「ぐぎゃっ!? ちょっ、ま……今の反則じゃねーの!?」

しかし、調子に乗っていた佐野は1人、2人と抜いた所で、
猛チャージを仕掛けてきたカルネバーレの強烈なショルダーチャージを受けてボールを零した。
力任せなそのタックルに佐野は思わずうめき声をあげ文句を吐き出すのだが、
周囲の者たち――少なくとも留学選手以外の者たちはそんな佐野に構う事も無いままプレイを続行している。

402 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:14:30 ID:???
佐野「あ、あれっ?(反則でプレイ止まらないのこれ?)」
カルネバーレ「……今のが反則とでも思ったか? バカタレ、あれくらいの当たりで根を上げるな!」
マンチーニ「(言い方はともかく……まぁ、あれくらいなら試合でも普通にある事だからなぁ。
       ただカルネバーレ、レクリエーションなんだから怪我の可能性のあるプレイは……)」

目を丸くしている佐野に対して、カルネバーレは叱るように怒鳴りつける。
実際、彼の言うようにこのイタリア――サッカー先進国の中でも有数の国の中においては、
先ほどのカルネバーレのプレイもそこまで危険なものと判断はされない。
……幻想郷や魔界といった、色々と常識外れな環境でプレイをしてきた佐野ではあるが、
逆にこのような一般的な範疇の乱暴なプレイが流されるという事に微妙に新鮮味を感じるのであった。

お燐「じゃじゃ〜んっ! あたい、参上!!」

そして試合の方はといえば、佐野の零したボールをお燐がフォローしていた。
久方ぶりの試合、久方ぶりのボールの感触。
お燐は笑みを浮かべながら、佐野が突き進んでいた方向とは逆サイドへと流れながらドリブルを開始する。

佐野「おっ、やるじゃねーかお燐」
お燐「ふふ〜ん、ドリブルが得意なのはお兄さんだけじゃないんだよ!」

代表落ちをしたとはいえ、彼女も幻想郷では名の知れたサッカー選手である。
特にその磨かれたネコ科特有のしなやかさを生かしたドリブルは、佐野には及ばずとも上々の出来。
実際にお燐もその軽やかなステップでプレスに来る選手たちをかわし突破を成功させてしまう。

カルネバーレ「(ふん……あいつも、まあ中々やるようだが……)」
お燐「(おっとと、メガネのお兄さんが近づいてきてる……あのお兄さんはちょっと組しにくそうだねぇ。
    それじゃま、ここは逃げよっか)天狗のお姉さん、いくよー!」
マンチーニ「(おっと、逃げられたか)」

パコーンッ!!

403 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:15:57 ID:???
そしてサイドを完全に抉ろうかといった所で、お燐は斜め前方からやってきていたマンチーニに視線を一つやると、
勝負は避けた方が無難と判断し大きく逆サイドに振った。
これにはマンチーニも追いつけず、また中盤のメンバーもカットには向かえなかったのだが……。

ピューン

お燐「ありゃ……」
佐野「おいおい、ライン割っちまうぞあれ」

試合勘が鈍っていたのか、お燐の蹴ったボールははたての遥か前方目掛けて飛んでいた。
これには流石にはたても追いつけず、スローインから仕切り直しかと一同が考える中……。

はたて「わ、わ……(ボールが来た! 取らないと……怒られるっ!!)」

ギュ……

佐野「ん?」

ギュオォオオオオオオオオオオオオオオッ!!

バシィッ!!

佐野「な、なにィ!?」

しかしである、はたてはこのお燐のボールをしっかりと受け取った。
ボールがラインを割ろうかというギリギリ、はたては急加速。
『走れましゅ』と宣言をしていた通り、全速力で走り――その上でガッチリと足でトラップをしていた。

お燐「にゃ〜、凄いねお姉さん。 あの虚報新聞の方のお姉さんみたいに速いや」

404 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:17:13 ID:???
実際の所は文の方がはたての数段上を行く俊足である。
が、それを差し引いてもはたてもまた種族としての特性か足は非常に速い部類であった。
おまけにそれだけの全速力を出しながら、ボールをあっさりとトラップする技術。
少なくともサッカー素人とは思えない動きであるのは間違いない。

佐野「(追いつけたとしても零すくらいが精々かと思ったけどキープ出来てるもんな……って)
   おいはたて! 前、前!! 敵が来てるぞ!!」
はたて「へ……ぴ、ぴぃっ!?」

期待していなかった選手が予想以上のプレイを見せた事に内心驚く佐野であったが、
そんな事はおかまいなしとばかりに敵チームのDF達ははたてにプレスをかける。

ブルノ「なーに、相手が上手くフォローをしたところでそれを奪い返せば問題無い!!
    お前ら、いつまでも新入りなんかにいい恰好させてるんじゃないぜ!!」
佐野「(くそっ、アイツの指示か! トラップした直後を狙うとは……アイツ、中々頭も切れる!)」

敵チームゴール前で大声を出すブルノを後目に、佐野ははたてをフォローできる位置へと急いで走る。
が、当然ながら佐野がどれだけ急いでもDF達がはたてからボールを奪いに向かう方が速い。
ボールを持ったままどうしたものかとまごまごしていたはたては、眼前に迫るDF達に対し……。

はたて「(やだやだなんでこんなにいっぱい来るの!? と、とにかく逃げなきゃ!!)」

シュッ……タタタタァァァァーッ!!!

佐野「うおっ……おお!?(やっぱ速い! それに……結構上手いぞ!?)」

405 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:18:36 ID:???
とにかく逃げるべく、サイドから離れるように中央へと寄りながらドリブルを開始した。
やはりその速度は速く、おまけにドリブル技術自体も決して下手な訳ではない。
少なくとも佐野には及ばないが、それでもお燐同様そこそこは出来るといった様子である。

マンチーニ「(これは嬉しい誤算だな。
       試合もした事が無いというのが事実なら……それでもあれだけ出来るというなら、果たして経験を積めばどうなるか)」
佐野「よーし、いいぞはたて! こっちにパスだ!!」

このままとりあえず一本打っとくか、と、佐野はペナルティエリアに侵入をしハイボールを要求した。
ご自慢のそこまで高い訳ではない浮き球補正と低くは無いけど一流レベルではないシュート力を生かした、
世界レベルでは火力不足である補正のローリングオーバーヘッドを打つ心算である。

はたて「パ、パシュ……(そ、そっか! ボールを手放せば追いかけられなくて済むんだわ!
    うん、そうよね! よしあの……えっと、誰だっけ? ……名前も知らないロンゲの人に渡しましょう!!)」

そしてこの指示を受けたはたては、素直に佐野にパスを出す事にした。
DFに追いかけられるのが(足の速さ的に追いつかれはしないが)怖いからという一心で、
その右足を振り上げてボールを蹴りぬく。

ぱしゅっ……

蹴られたボールは打ち上げられた……ぱしゅっ、と音を立てて、それはそれは弱弱しく。

406 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:19:36 ID:???
佐野「ほげっ……」

あまりの弱弱しさに佐野は思わず息を飲み。

お燐「蹴りそこにゃい……じゃ、にゃいよね……?」

お燐は思わずずっこけそうになりながら、必死そうな表情のはたてとパスとの温度差に引きつった笑みを浮かべ。

マンチーニ「…………よっ!」

このパスコースに飛んでいたマンチーニは、悠々とパスカットをした。

たった1人で練習を繰り返し、ドリブルの技術は佐野達からもそこそこという評価を受けていたはたて。
しかしたった1人で練習をし、試合経験が全く無い彼女は、ドリブルで走る為以外にボールを蹴った事がまるで無い。
何故ならパスを受けてくれる者も、シュートを止めてくれる者もいないのだから。

更に言えば、あの射命丸文をもってして、大局的に物事を見る事が出来ず、視野が狭く、コミュニケーションが下手と言われているはたて。
これが何を意味するのか。
大局的に物事が見れず視野が狭いという事は、パスコースを探す事が苦手であるという事。
そして、パスがボールを通したコミュニケーションという言葉もある通り――。

姫海棠はたてという少女は、パスとシュートがドがつく程に下手であった。

407 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/14(水) 00:28:44 ID:???
一旦ここまで。
なんだかはたてちゃんがメインみたいになってますがそんな事はなく、
前作で出てこなかったキャラなので色々と掘り下げている形となっています。
それでは。

408 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/15(木) 23:51:09 ID:???
はたて「ひぅっ!?」

ガーン、と大きなショックを受けながら悲鳴を上げるはたて。
彼女の中ではとっととボールを手放してDF達に追いかけられず、
また、注目されるような事から解放されると思っていた筈が結果はパスミス。
彼女なりに精いっぱい頑張ってのパスであったが、悲しい事にそれはやはり弱弱しく。
ド下手で精度も速度もまるで無いそれを見て周囲の者たちが深い溜息を吐くのを、
彼女はその場で立ち尽くして聞くしか出来ないのであった。

はたて「(失敗しちゃった怒られる〜!? っていうか、ボール手放したのになんでみんなが私見てるの!?)」
佐野「(見た限りパスはへっぽこ……あれじゃシュート打たせようとしても多分キック力不足だろうなぁ。
    ドリブルだけは実践レベルってトコだけど動きも不安定だし……。
    っていうかパスに至っては高杉さんとかと同じくらいのレベルじゃねーか?)」

注目されている事に気づき顔を真っ赤に染めるはたてを見やりながら、佐野は考える。
某日本代表で同チームにいたの先輩を軽くディスっているが気にしてはいけない。
彼はDFの数が少ないが故に選出されているだけであり、
得意であるブロックとクリアー以外はまったくもってお話にならないのは事実なのだ。

マンチーニ「(試合経験が無い……それにしてもパスが出来ないというのは大問題だな。
       これからの練習で向上が見られればいいんだが……それよりもまずは)」
カルネバーレ「マンチーニ!」
マンチーニ「ああ、いくぞっ!」

バシュウッ!

一方でボールをカットしたマンチーニは、そのまま一気に前線へと放り込んだ。
自陣深くから一気にセンターライン付近まで飛んだボール目掛けてカルネバーレは走り込み、
慌ててこれにはDFのバルトロメオとMFのモゼが連携をして競り合いに向かう。

409 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/15(木) 23:52:09 ID:???
バルトロメオ「くそっ、二人がかりなら!」
カルネバーレ「止められると思うか!?」

ダダッ! バッ!! ガシィイッ!!

モゼ「だ、駄目だ……」
佐野「(うげ、やっぱあいつ見た目通り競り合いに強い……上に案外ジャンプ力もあるぞ!?)」

体格がいい上に跳躍力も人並み以上にはあるカルネバーレ。
2人がかりで阻みに来たバルトロメオ達をあっさりと蹴散らしながら空中でボールを確保すると、
そのまま脇目も振らずドリブルで中央を突き進む。
流石にキャプテンというだけあって実力は確からしいと佐野が感心する中……。

カルネバーレ「…………」ドタドタ
佐野「って、足おそっ!?」

しかし、そのドリブルスピードの速さが巧さや力に比較をしてあまりに遅い為に思わずそう叫んでいた。
あまりの遅さ……というか鈍重さに、走る音も『タタタ』や『ダダダ』でなく『ドタドタ』であった。
一気に前線に放り込んだはいいものの、これではカウンターにはならない。
実際にカルネバーレはすぐに戻り始めたお燐にもチェックをかけられたのだが……。

お燐「ふふ〜ん、あたいは他のネコ科と違って守備も出来るんだからね! ゴリラのお兄さんボールちょうだい!」
カルネバーレ「誰がゴリラだァッ!!」

バギィッ!!

お燐「うにゃ〜んっ!?」
佐野「うお、やべっ! みんな、そのゴリラ止めるんだ!!」

410 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/15(木) 23:53:41 ID:???
横からスライディングタックルにやってきたお燐を、強引に吹き飛ばしながら更にカルネバーレは突き進む。
やはりスピードだけは完全に欠如しているが、パワーについては疑う余地も無い。
このままでは一気にシュートチャンスを作られてしまうと佐野は慌てて守備陣に指示を飛ばし、
これを受けて守備陣もカルネバーレの危険性をよく知っているのだろうすぐさまプレスをかけに向かう。

シュタタタタッ!!

はたて「うぇひっ……(い、勢いで戻っちゃったけど……これ私も行かなきゃいけないの!?)」
佐野「おお……はえぇ。 よしはたて! そのままゴリラに突撃だ突撃!!」
はたて「ぅへあ……」

その中にはなんと先ほどまで前線にいた筈のはたてもいた。
いくらカルネバーレが鈍足といえど、大きく距離が離れていたにも関わらずチェックに行けるあたり、
彼女の足の速さについてはもはや疑う余地も無いだろう。
……割と足が速いつもりであった佐野ですら、まだ追いつけていないのだから。

はたて「(突撃って言ったってどどど、どうすりゃいいのよ〜!? えっとえっと……)」
カルネバーレ「(上手く俺にマークが集中してきたな。 よし、頃合いだ!)マンチーニ!!」
はたて「(うぇっ、あ、ボール蹴る!? さ、触らなきゃ!!)」

指示を受けてもまごまごしていたはたてであったが、
そんなはたてを後目に、カルネバーレはここで強引に突破を図らずパスを選択した。
自身にマークが集中する今、再びマンチーニへと預けて彼にボール運びをしてもらう為である。
その右足を小さく振りかぶり、サイド際に流れてゆくマンチーニにパスを出そうとするのだが……。

ビュンッ!!

はたて「え、ええ〜いいっ!!」
カルネバーレ「むっ!?」

バチィッ!!

411 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/15(木) 23:55:07 ID:???
直接ぶつかるのではなくパス相手にならと、思い切って飛び出したはたて。
そのスピードはやはり速く、彼女の突き出した足は辛うじてボールに触れて軌道を変えた。

カルネバーレ「(……俺自身、あまりパスが得意という訳ではないのもあるがそれでも触れたか。
        身体の使い方がてんでバラバラだが……守備がそこまで苦手という訳ではないか?)」
はたて「うぃ、うぃひひ……(なんでこのゴリラ私じっと見てるの!? 食べる気!?)」

ドリブルは上手いがパスは苦手。守備はまるで形がなっていないがスピードには目を見張るものがある。
なんともちぐはぐなはたての動きに、カルネバーレは訝しむような視線を向け。
一方で目の前で凝視されたはたては愛想笑い(のつもりだが完全に引きつっている)を浮かべながら半歩下がった。
ちなみに愛想笑いを浮かべている最中も、はたてはカルネバーレの目をまるで見れていなかった。

そしてこぼれたボールはカルネバーレチームのMFがフォローした。
直接とはならなかったが、そこを経由してボールはマンチーニへ。
結果的にはカルネバーレの狙い通りとなったが、それでも間に1人挟んだ分時間はかかっている。
故にこのマンチーニには佐野が向かう事が出来た。

佐野「よーし、ここで俺が颯爽とボールを奪って……」
マンチーニ「………………」

スッ ササッ タターッ!!

佐野「……あれ?」
マンチーニ「(国際Jrユース大会を見ていてわかったが、やはり情報通り彼の守備は軽いな……)」

もっとも、向かう事が出来ただけで、ボールを奪えはしなかったのだが。

412 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/15(木) 23:56:43 ID:???
その後、マンチーニは向かってきたパトリツィオも抜き去り完全にサイドを突破。
そのまま中央を向き、PA内へと侵入してきたカルネバーレへとセンタリングを上げる。
これに対してカルネバーレは高く飛び上がり、慌てて守備陣もクリアーとセービングの構えを見せるのだが……。

カルネバーレ「喰らえ! これが俺の……G・ヘッドだぁ!!」

ドゴオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!

チェーザレ「ぐぼあっ!?」

高い跳躍力と体躯を生かした力任せのヘディングシュートが放たれると同時、爆発的な音を掻き立ててゴールを襲う。
クリアーに向かったチェーザレは威力を殺す事すら出来ないままあっさりと吹き飛ばされ……。

バゴォオオオンッ!! ズバァッ!! ピピィーッ!!

佐野「うげっ……(すげー破壊力……流石に威張ってるだけあるな)」
お燐「うにゃ……(おくうの八咫烏ダイブよりももしかしたら上? うそ〜……)」

更にゴールネットを突き破り、それと同時に審判の得点を告げる笛が鳴り響いた。
無論、このシュートよりも威力は上であるシュートは数多く存在する。
佐野にしろお燐にしろ、そんなシュートを敵として何度も見てきたのだ。
ただ、それでも彼らはカルネバーレの放ったようなシュートを打つ事は出来なかったし、
何よりも上には上がおろうと、それがカルネバーレのシュートの威力を否定する事には繋がらない。
実際にこうやってゴールを決められているのだから尚更だ。

413 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/15(木) 23:58:24 ID:???
佐野「(って、そういや『G・ヘッド』って……なんのGなんだ?)」
チェーザレ「ぐ……いててて。 やっぱりすげーなカルネバーレの『ゴリラヘッド』は」
モゼ「ああ、わかってても止められないぜ。 キーパーの……人も頑張ってたんだけどな」
バルトロメオ「俺達が束になっても止められないもんなぁ、『ゴリラヘッド』は」
佐野「へー、GはゴリラのGなのか。 ははは、そいつぁ傑作だ」

ゴン! ゴン! ゴン! ゴン!!

カルネバーレ「誰がゴリラだ! バカタレ!!」
チェーザレ「げふ……」
モゼ「がへぇ……」
バルトロメオ「ごほっ……」
佐野「いってぇ〜!!」

なお、このカルネバーレの『G・ヘッド』。
当人は巨大な自身の身体と威力から『ジャイアント・ヘッド』というつもりで名づけたのだが、
周囲からの通称は完全に『ゴリラ・ヘッド』で定着してしまっていた。

……無論、それを口にした場合、今のようにカルネバーレの拳骨が飛んでくるのだが。

414 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/16(金) 00:00:32 ID:???
佐野「(畜生……すげぇシュート打てるからって威張りくさりやがって!
    ミニゲームとはいえこのまま負けてちゃ、このゴリラにもチームの皆にも舐められちまいかねん。
    こうなったら残り時間でなんとか点をとらねーと……その為には……)」

内心舌打ちをしながら、痛む頭を摩りつつ敵陣ゴールを睨み付ける佐野。
レクリエーション、互いの実力を知る為のお遊びに近いゲームとはいえ、このまま負けるつもりは毛頭ない。
時間的に逆転は難しいだろうが同点に追いつけば、まだ面目は保てるだろう。
問題は得点が出来るかどうか……先ほどまでのプレイを見ている限り、はたてはどう考えてもシュートは打てそうにない。
お燐は打てるかもしれないが、それでもMFと言っていて、得意なのはドリブルだと言っている以上自分よりは下だろう。

佐野「(俺がゴールを奪えるかどうかにかかってるな……あいつから……!)」
ブルノ「(ふふふ、生意気にもガンを飛ばしてきてやがるな。
     来るなら来い……そう簡単にこの俺様の守るゴールから点は奪えんぞ!)」

このレッチェのゴールを守る正GK――ゴール前で不敵な笑みを浮かべながら、
こちらを睨み返してくるブルノを見て、ゴクリと唾を飲み込む。

佐野とブルノ――後に終生のライバル、とは絶対に呼ばれない2人の対決の時間が、
刻一刻と近づいてきていた。

415 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/16(金) 00:03:06 ID:???
一旦ここまで。
原作では強引なドリブルしかなかったカルネバーレですが、必殺シュートを持たせて強化しています。
威力的にはサトルステギのダイナマイトヘッドくらいですかね。
次回更新でミニゲームパートも終わり。
その後に一輪・お燐・はたて・ゴリラ・マンチーニの現時点での能力を公開出来たらなと思います。
それでは。

416 :森崎名無しさん:2018/03/16(金) 09:50:17 ID:???
ブルノ君はレベル上げればアクセルスピンシュートキャッチ出来るんだぞ
レベル35ぐらい必要だけど!シニョーリのレベル21だけど!

417 :森崎名無しさん:2018/03/16(金) 10:11:04 ID:???
ナチュラルにゴリラヘッドって読んでた
思ったよりゴリラ強そう

418 :森崎名無しさん:2018/03/16(金) 12:05:11 ID:???
流石にランピオンスト様よりは弱いだろうが、
必殺ブロックのハエタタキ持ってたらDFでスタメン取れそう

419 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/17(土) 22:40:32 ID:???
本日も更新はお休みさせていただきます。

>>416
才レベルで14差くらいあれば流石に誰でもキャッチ出来そうですね……。
ちなみにタイユースのワチャラポンくんが才レベル5から更に14上げてキャッチ87になるみたいですね。
ライトニングタイガークラスにも互角に戦えるよ!
>>417
主人公チーム補正とキャプテン補正で結構強化しております。
>>418
イタリアユースのFWはほぼ不動ですからね。
本編でカルネバーレや名前だけですがブルノが出てきたのは嬉しかったです。

420 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/18(日) 22:54:17 ID:???
申し訳ないですが本日も更新は無しです。
ブルノさんをどう描写するかで悩む悩む……多くの他スレ様でも人気キャラですからね。扱いは丁重でなければ。

421 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/21(水) 00:34:05 ID:???
本日も更新はお休みです。明日は更新出来たらと思います。

422 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:02:34 ID:???
ピィーッ! バムッ!!

その後、再び佐野チームのボールで試合再開がされる。
ボールを受け取った佐野は、逡巡する間もなく一旦ボールを右サイドを走るお燐へ。
早く得点をしたいという思いがありながらも、真向からドリブルでの突破は挑まない。

佐野「(中央にはあのゴリラがいるしなぁ……)」

勿論自分のドリブルがまるで通用をしないとは思っていない。
得点力はマシになったとはいえ世界水準で見ればまだまだ低く、ディフェンス技術は殆どお話にならない。
そんな中でも唯一世界の猛者達と対等に渡り合える程までに鍛え上げたのが佐野のドリブルだ。
圧倒的な――幻想郷における水橋パルスィや博麗霊夢、外の世界の大空翼やファン・ディアスクラスのキープ力というには及ばない。
しかし、一選手の武器とするには十分過ぎる程の水準ではある。

ただ、それでもここは佐野が自ら持って上がる事はなかった。
中央にいるカルネバーレに先ほどは反則紛い(と未だに佐野は思っている)のパワーチャージで止められた以上、
彼と再び対決するよりは右サイドのお燐に流した方が勝算があると考えての選択である。
かつて魅魔との問答から、より味方を生かせるようなタイプの選手になろうと考え、それを行動に移したまで。
普段の言動こそあまり知性を感じないが、一応サッカーになるとそれなりには真面目になるらしい。

佐野「(つっても俺もやっぱ他の皆をアッ!と言わせるプレーしてーなぁ。
    キックオフシュートとは言わないけど、11人抜きしてゴールとかさ〜)」

……もっとも、未だに自分がより活躍したいという思いについては未練タラタラであったようだ。

お燐「ふふ〜ん、ナイスパスお兄さん! それじゃいっくよ〜!」

タッタカター

佐野「(うーむ、やっぱお燐は結構上手いな。 はたてみたいに穴という穴が無い感じだ)」

423 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:03:53 ID:???
1人、2人とドリブルで抜き去るお燐を見て感心をする佐野。
サイドに振ったが為に中央に位置していた鈍足カルネバーレは当然追いつけておらず、
そのままお燐が一気に中盤を突破してしまおうかという所まで来るが……。

マンチーニ「(さて……今度はどうするかな?)」
お燐「(メガネのお兄さんがやっぱりやってくるよね〜……)」

しかし、CMFの配置についていたマンチーニがこちらへとすり寄り、プレスをかけに来ているのが見えた。
これは先ほどの突破の場面――佐野がカルネバーレにドリブルを止められた後、
こぼれたボールをフォローをしたお燐がサイドに流れて突破を図った場面と奇しくも同じである。
あの時お燐は逆サイドを走るはたてに向けて大きくサイドチェンジをし、マンチーニとの勝負を避けた。
この目論見は上手くいき、マンチーニをかわすという目的だけは達成出来たのだが……。
その後、はたての壊滅的なパスの下手さがカウンターを誘ってしまった事は記憶に新しい。
よってサイドチェンジという選択肢は浮かんでもすぐに消えた。
では中央にいる佐野に渡すか。これもお燐は一瞬考えたが、すぐに却下した。

お燐「(あたいはパスは……あの天狗のお姉さん程じゃないけど苦手だもんね〜。
    メガネのお兄さんのタックルがどれほどかわからないけど、自分の得意分野で勝負させてもらうよ!)」

ダダッ!!

マンチーニ「来たか!」

パスではなく、自分の得意分野であるドリブルに勝機を見出したお燐。
はたて程のスピードではないが、それでも十分俊足と言える急加速で走りはじめたお燐に対し、
マンチーニも一気に距離を詰めてスライディングタックルに向かう。
ここまで好プレイを見せてきたマンチーニらしく、そのタックルも相応の精度でボールへと向かっていたのだが……。

424 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:05:07 ID:???
キュッ! タンタンッ!! ズダダッ!!

マンチーニ「うっ!?」
お燐「悪いけどあたいのドリブルはそう簡単には止められないよっ!」

踊るようなステップを踏みながら、小刻みにボールを扱い翻弄するお燐。
縦、横、斜め、あらゆる方向へとフェイントを駆使しながらドリブルをするお燐を前に、
マンチーニの足は空を切ってしまう。
その"ランダム"に繰り出したフェイントでお燐はマンチーニをかわしてしまうと、
既に邪魔者はいなくなったとばかりに更に快速を飛ばしてサイドを完全に抉り切った。

佐野「(俺もあれくらいのフェイントが出来ない訳じゃねーけど……あそこからの急加速は無理だな。
    っと、ともかくチャンスだ!)よし、お燐ここは……」
ブルノ「DF、逆サイドだ! あの俊足の新入りに気を付けろ! 奴に上げてくるぞ!!」
佐野「んん?」

お燐の突破に感心していた佐野は彼女にフィニッシュの指示を出そうとし……しかし、その耳に聞こえてきた敵GK――。
ブルノの指示を聞いて首を捻る。
彼の指示を受けてDF達は素直にはたてへのパスコース、
及びボールを受け取ってもすぐに奪いに行けるようにマークにつくのだが、佐野としてはそもそも彼女に合わせる意図は無い。
はたてに決定力が恐らくないであろう事は、パスですらへろへろでまるでキック力が無い事からもわかりきっている事だからである。

佐野「(……そういやこいつ、さっきの時もはたてにプレスかけるように指示出してたな。結果的にDFはあっさり振り切られてたし……。
    ……いやまぁ、あいつの実力を知らなかったから仕方ないっちゃ仕方ないし、
    その後結局はパスが失敗してカウンターになったとはいえ)」

しかし、はたてからボールを奪おうとした――というのは、やはり誤った判断だったと言えるだろう。
マンチーニが好判断からはたてのパスコースを遮断していなければ、
佐野のシュートチャンスが来ていたのは明白である。

425 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:06:33 ID:???
佐野「(ま、いいや。 それよりも改めて……)お燐こっちだ! ハイボールを上げろ!!」
ブルノ「なにィ!?(あの小柄なチビが打ってくるのか!? ドリブルしか出来ないんじゃないのかこいつ!?)」
マンチーニ「(Jrユース大会では見られなかったが……ドリブルに加えてパスも得意な彼の事だ。
       そして、あの試合ではトップ下の役割。 シュートが打てても不思議ではないな)」
カルネバーレ「(あんな小さな身体で威力のあるシュートを打てるものか)」

何はともあれこれで何も邪魔はなくなった、と佐野は改めてお燐にハイボールを要求しながらPA内へと侵入した。
先ほどもはたてからラストパスを要求していたのだが、どうやらブルノの頭からはその事はすっぽり抜け落ちていたらしく、
思いっきり狼狽しながらもセービングの構えを見せ、
カルネバーレとマンチーニは佐野の実力を見極めようと注視をする。

お燐「いくよお兄さん! そーれっ!」

パコーンッ! グワァァアッ!!

佐野「よっしゃあ! 決めるぞ!!」

お燐も佐野の指示には素直に従い、高いボールでのセンタリング。
彼女自身が言う通り、やはりそれはドリブルに比べれば些か精度が落ちていたのだが、
それでも遥かにはたてのものよりはマシであったし、何よりパスコースに誰も入っていなかった為に佐野も簡単に合わせる事が出来た。
慌ててDF達がブロックに入ろうとするものの、クリアーに向かえる者も無し。
佐野はボールの落下地点を予測しながら駆け込み、軽く捻りを加えながら大きく跳躍をする。

マンチーニ「ロベッシャータか! いや……」
カルネバーレ「(捻りを加えている……身体に回転をかける事でボールにも直接回転をかけるつもりか!)」
佐野「いくぜ! これが俺の超必殺! ローリングオーバーヘッドだ!!」

浮き球補正2/2、高シュート力+4補正。
どう考えても超必殺というには些か威力が不足気味なのだが、それでもこれが佐野の最大火力故に仕方ない。
ともかく佐野はこれを放つべくボールに向けて足をたかだかと振り上げ、それと同時に逆さまになったゴール前を見た。
当然シュートコースを探す為である、のだが――。

426 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:07:35 ID:???
佐野「(あれ? あのブルノって奴どこいった?)」

そう、GKであるブルノの姿が見えなかった。
先ほどまではセービングの構えを見せていた彼の姿が佐野の視界からは消え去っていたのである。
これは一体どうしたことかと逆さまの世界の中で佐野は一瞬混乱をしたのだが……。

ブルノ「ふう、ふう……ちょっと待ってくれ。 今上るから」
佐野「なっ……何やってんだアイツー!?」

彼の声が聞こえそちらへと視線を向けた瞬間、思わず佐野は叫んでいた。
ブルノは考えた。彼は常に真剣であり、例えレクリエーションといえど負けるつもりは毛頭ない。
むしろ新入りである佐野達に自分たちレッチェの実力というものを見せつけてやろうと、
カルネバーレ同様並々ならぬ覚悟でこの試合には臨んでいた。
そんな彼は佐野のローリングオーバーヘッドを見た瞬間、考え、動いた。
高い所から放たれるオーバーヘッドキック――佐野のジャンプ力と上背からしてみればそこまで高所という訳ではないが、
それでも通常のヘディングなどに比較をすればかなりの高度である。

角度をつけて放たれたオーバーヘッドを止めるのは至難の業。
ならばと彼は発想の逆転をし、自分もまた佐野と同じだけの高度を手に入れればいいのだと考えた。
ではどうやって同じ高度を手に入れるか。普通にジャンプをしただけでは到底届かないし、
そもそも今からでは飛び出しても佐野との距離を考えれば到底競り合いには向かえない。
そこでブルノは思いついた。

ブルノ「(ゴールバーに乗れば同じ高さ……いや! 俺の方が高くなる!! これはいける!!)」

正しくそれは天啓であり。悪魔的発想であり。逆転の閃きであった。
思いついたが即座に行動をしたブルノは、一気にゴールポストに駆け寄ると登り棒の要領で登ろうとする。

ブルノ「ふう、ふう……(しかしこれ辛いな。ポスト足引っかけるトコ無いから登りにくいぞ)」

427 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:08:43 ID:???
ただ、このブルノの作戦の問題点は、割とブルノが登り棒が苦手でありゴールバーに上るのに手間どった事。
そして…………。

佐野「ゴ……ゴールからっぽやんけ!?」

思わず佐野が錯乱して関西弁になってしまう程に、ゴール前がもぬけの殻となってしまっていた事である。

マンチーニ「ああ……(またか……)」
カルネバーレ「あのバカは……」

とんでもない奇行を見せるブルノに、思わず頭を抱えるマンチーニたち。
一方で佐野は何はともあれチャンスだとゴールを射抜く為にその右足を振りかぶるのだが……。

佐野「あ、やべっ!?(あまりの事で呆気にとられてミスった!?)」

カシュッ!!

ブルノの奇行に気を取られ過ぎたか、ここで痛恨のミスキックとなってしまう。
具体的にはダイスで言う所のピンゾロ。
ローリングオーバーヘッド独特の回転もロクにかけられぬまま、放たれたシュートは無人のゴールへと向かうのだが……。

バゴッ!

しかし、これを相手DFが上手くカバーしブロックに成功した。
悲しい事に佐野のローリングオーバーヘッドは、ミスキックでもゴールを簡単に奪えるという程には威力は高くなかったのである。

佐野「うげげっ!?」
マンチーニ「(ブルノの奇行を見て動揺したか。 ……まあ無理もないな)」
カルネバーレ「(ふん、あの程度……とは到底言えんが、それでも動揺するとは情けない奴め)クリアーだ! 早くしろ!!」

428 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:10:42 ID:???
この結果を見てマンチーニ、カルネバーレの両者はやはり両極端な感想を持ちつつ、
何はともあれともかくクリアーだとカルネバーレの指示を受けてDFは急いでボールを蹴りあげた。
これは至って当然であり、普通のプレイである。カルネバーレの指示も、DFのプレイも何ら問題は無い。
彼らには何ら問題は無く、非も無い。

ブルノ「ふぅ……よし、上ったぞ! くくく、ではこのブルノ様の華麗なるセービングを見せてやろう!!
    無限の彼方へ……さあ行くぞー!!」

ビュバッ!!!

彼らには非は無かった。問題も無かった。……ただ、GKだけが問題だった。
ようやくゴールバーの上へと登り切ったブルノは、割と高い事にちょっとビビりながらも虚勢を張りつつ、
誰も聞いていないというのに声を張り上げながら飛んだ。そう、セービングに向かう為である。
彼は悪くない。彼は彼なりに必死こいて真剣にゴールを守ろうとしていただけである。
……その行為の奇抜さなどには大いに問題があったが、ともかく、ゴールを守ろうとしていた。

ただ、既に佐野のシュートはDFに止められていた。
ブルノは知らなかった。割とバーに上るのに集中してしまっていた為、フィールドで何が起こっているか。
また、やっぱり高い所が微妙に怖いので足元を見過ぎてしまい、目の前で何をしているのか。
よって彼は佐野がシュートに来ていると思いこみ、そのまま飛んでしまったのだ。
これが何を意味するか。

ブルノ「うおおおおおおお!! ゴールは割らせん!!!」
佐野「へ?」

429 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:11:55 ID:???
佐野のシュートを防ぐべく、前に飛んだブルノ。彼の身体はそのまま佐野の目の前までやってきて……。

バゴンッ!!

ブルノ「ぐぎゃっ!?」

位置的に、DFのクリアーボールが直接当たる軌道となってしまっていた。
ブルノの尻に当たったボールは、DFが全力でクリアーしようとしていた為に彼の尻に多大なダメージを与えつつ跳ね返り……。

テンテンテン……

……… ……… ………

そのまま誰もフォローする事も無いまま、無人のゴールへと吸い込まれるのだった。


ピ、ピピィー!!

佐野「………………は?」

最初、佐野は目の前で起こった事を理解出来なかった。というより、彼の脳が理解する事を拒んだ。
何せキーパーがいきなりゴールバーに上るという奇行を繰り出したと思えば、
それが原因で運悪くミスキックしてしまいシュートミス。
これをDFに防がれてしまったのだが、なんとこれにそのキーパーが飛び込んでしまい、ボールは跳ね返されゴールへ。
結果としてはオウンゴールであり、佐野としては喜ぶべきことなのだが、
まったく見た事が無いこの展開に呆気にとられてしまっていたのだ。

430 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:13:11 ID:???
マンチーニ「………………」
佐野「あ、あの、マンチーニ? あいつは……あいつは、何者?」

思わず佐野が近くにいたマンチーニにそう問いかけてしまったのも無理は無い話であった。
これを受けてマンチーニは、やや言いにくそうにしながらもメガネをクイと上げつつ……やはり歯切れ悪く口を開く。

マンチーニ「彼は……うん。 実力自体は、決してそこまで低い訳じゃないんだ。 ……高い訳ではないけど、
      それでもセービング技術に関してはうちでも1番のキーパーなんだ」
佐野「そ、そうなのか?」
マンチーニ「ただその……判断力がね」
佐野「そういう問題じゃない気がする……」

確かに思い返せばDF達の指示から含めて、ブルノの判断は全て裏目ばかりであった。
が、そもそもゴールバーに上るだとか、あまつさえそこから飛び出してクリアーボールをブロックしてしまうだとか、
果たしてそれは『判断力が悪い』という事だけで片づけてしまっていいのか。
佐野の疑問はもっともだったが、マンチーニはそれっきり口を閉ざしてしまい答えは聞けなかった。

佐野「(……え? こんなトンデモが正GKだったの?)」
ブルノ「ぐ、くそっ! まさかこの俺のセービングを掻い潜ってうまくボールをゴールに押し込むとはな!!
    見た目とは違って中々切れるようだな! だが次はそうはいかんぞ!!」
佐野「(え? なんでこんな真っ当な、いかにも俺がライバルでございみたいな口調で話しかけてきてんの?)」

そして当のブルノはといえば、佐野が自身を掻い潜りシュートを放ってボールを当て、
その反動でゴールを決めたと盛大に勘違いし、露骨に悔しがりながらそう息巻いていた。
実際の所はお前がクリアーボールを止めたせいでそれがゴールに入っただけだ、と言いたかったが……、
そんな事を言う気力すら、今の佐野には沸かなかった。

431 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:14:34 ID:???
お燐「(そ、外の世界のキーパーって……みんなこんなんなのかねぇ? ……流石に、そりゃないよね? ね?)」
はたて「(…………。 サッカーってこういうスポーツだっけ?)」
佐野「(正直、イチさんがスタメン取れるかどうか不安だったけど……)」

お燐がポカンと口を開け、はたてがおどおどとしながらブルノへと視線を向ける中。
佐野はくるりと振り返り自身のチームのゴール前にいる少女を見た。
……彼女は彼女でやはりブルノの奇行に驚いていたようだが、それもひと段落すると同点に追いつけた事に喜んでいる様子だった。
こんなゴールで喜べるあたり、割と彼女の性格も色々とおかしい、のではあるが。
どう考えても目の前にいるブルノよりはよっぽどマシである。

ブルノ「さあみんな、まだ同点になっただけだ! もう一度突き放して、俺達の実力を見せてやろうぜ!!」
マンチーニ「あ、ああ……うん、そうだな……」
カルネバーレ「………………」
佐野「(いや、言ってる事はいいんだけど……いいんだけどさ)」

彼の言っている事は間違ってはいない。
残り時間が少ないとはいえ、味方を鼓舞し失点しても凹まないメンタルの強さは素晴らしい。
ただ、マンチーニもカルネバーレも……その他の面々も、あからさまに表情は暗い。
そりゃ当然だ。何故あんな失態を(自らの失態だと気付いていないとはいえ)晒しておきながら、
その事を棚に上げて鼓舞出来るのか、というか如何にも俺がチームの中心選手ですみたいな顔で周囲に声かけが出来るのか。

ブルノ「(俺は……俺達は負けんぞ! 新入りども!!)」
佐野「(……うん。 ……イチさん、スタメン取れそうだぞ。 良かったな)」

その瞳に闘志を燃やし、気合を入れ直すブルノ。
そんな彼を見やりながら佐野はげんなりしつつも、そんな事を考えるのだった。

………

その後、結局同点で試合が終わった翌日。
佐野が初めて参加をした全体練習では、レギュラー組に一輪が。控え組にブルノがしっかりと分けられていましたとさ。
めでたしめでたし。

432 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:30:39 ID:???
本日の更新は一旦ここまで。
ブルノさんをどう描写するかについては色々悩みましたが、
「本人は至って真面目で真剣なのだが、壊滅的に判断力が悪い奇行師」という事に落ち着きました。
それではミニゲームも終わりましたので、レッチェの主力紹介です。
佐野については前に公開してますのでそれ以外について。

名前   ド パ シ タ カ ブ せ 高低 ガッツ 総合
お燐   72 69 69 71 70 68 70 2/2  800/800 489
はたて  73 65 66 69 70 70 70 3/2  700/700 483
一輪               73 3/3  800/800   パンチング77 キャッチ75

カルネバーレ  72 71 73 73 70 74 74 3/2  850/850 507
マンチーニ   73 73 71 72 73 73 72 2/2  800/800 507
ブルノ              70 1/1  600/600   パンチング74 キャッチ72

    お燐
キャッツウォーク(1/4でドリブル力+3)
キャットランダムウォーク(1/4でドリブル力+4)
地獄コンビ(パス力+3で連続ワンツー、要おくう)100消費×2
火焔の車輪(高シュート力+4)200消費
スプリーンイーター(1/4でタックル力+3)

    はたて
高速ドリブル(1/4でドリブル力+4)

    一輪
げんこつスマッシュ(パンチング力+3)120消費
スキル・飛び出し+2

    カルネバーレ
強引なドリブル(1/2でドリブル力+2、吹っ飛び係数2)
Gヘッド(高シュート力+5、吹っ飛び係数2)250消費

433 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:34:50 ID:???
    マンチーニ
やや華麗なドリブル(1/4でドリブル力+2)

    ブルノ
奇行セービング(確率でキャッチ力++0〜+8)200消費
スキル・判断力C(状況判断のカード判定の際、悪い結果が出やすくなる)
スキル・何があっても自信を喪失しない(何があっても自信を喪失しない)
スキル・顔グラフィック(正ゴールキーパーみたいな顔をしている)
スキル・ダイビング(ゴール付近の味方のクリアボールに1/4で飛びつき、オウンゴール)

代表選出されていないお燐、そもそも初心者であるはたてはやや能力が低めです。
が、お燐に関しては割と技が揃っています。ドリブルはもとより守備力も低くないので、
成長すれば秋空の猫と違い攻守両面で活躍出来るタイプになるでしょう。

はたては現段階でもドリブルが十分高いレベル。ですがパスとシュートが壊滅的で守備はそこそこといった所です。
突破したはいいけどどうやって手放そうかという事に頭を抱える事が多くなりそうですね。

一輪さんは地味ながらやっぱりそこそこの実力者です。
必殺技を使ってパンチ80。これをどう見るか。ちなみにウルグアイのカノーバさんが才レベル5でパンチ81です。

上記の3人については、今後3年間で基礎能力も多少なりと上がる予定です。勿論技・スキルも覚えていくでしょう。

434 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/22(木) 01:35:53 ID:???
ゴリは本編から比較し大幅に強化しています。ゲーム版でもレベル差が1,2程度開けばミューラーからでもゴールを決めれるので、
まあこれくらいはあっていいのかなという感じ。

マンチーニはほぼ本編と同じですがドリブル技を密かに追加しています。

ブルノさんは……アモロよりは基礎能力はマシ。ただしマイナススキルが沢山あり、必殺キャッチも確率発動。
ダイヤで+8、ハートで+4、スペードで+2、クラブで+0の予定でした。
ダイヤが出ても一輪のげんこつと同値なので……多分試合で見る事は無いでしょう。
日常パートなどでの賑やかし要員としては出る可能性あります。

……最近久しぶりにゲーム版5をやっているのですが、記憶以上にブルノさんがザルで驚きました。
必殺シュートを止められない←わかる
顔ありキャラの普通のシュートを止められない←まあわかる
名無しキャラのPA外からのミドルシュートすら止められない←は?

それでは。

435 :森崎名無しさん:2018/03/22(木) 01:54:57 ID:???
スキル・顔グラフィック(正ゴールキーパーみたいな顔をしている)
で草

436 :森崎名無しさん:2018/03/22(木) 02:06:12 ID:???
乙でした

ブルノがクリアボールに飛び込んでオウンゴールあったなぁ
ネタ満載で遠くから見てる分には楽しそうなキーパーになってますね
ゴリラとマンチーニ強化&新戦力加入で大分強くなってる感じだけど、
ディフェンス陣が辛そう

437 :森崎名無しさん:2018/03/22(木) 02:33:51 ID:???

恵まれた顔グラから糞みたいなセービングだからな
モブ顔ならまだしもあの顔だから失望も大きいという

438 :森崎名無しさん:2018/03/22(木) 12:13:54 ID:???
リオカップ編みたいなものと考えれば一輪のセービングも悪くないね
サンパウロの悪夢影の立役者であるレナートより上だ

439 :森崎名無しさん:2018/03/22(木) 21:51:27 ID:???
ブルノ強すぎる

赤井のシュートすら止められないぐらいじゃないと駄目

440 :森崎名無しさん:2018/03/22(木) 22:04:17 ID:???
5の能力値見て赤井の能力値イメージするとさすがにシュートは止められると思うぞ
キックオフただのシュートで失点するけど

441 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/23(金) 00:22:00 ID:???
>>435 >>437
乙ありです。
多分これからもちょくちょく無駄に顔を出して正GKみたいな反応を見せてくれる事でしょう。
その分一輪さんの出番も無くなりそうです。
>>436
乙ありです。
よかったポストだ。DFが拾ったしとりあえずパスだ→ガイーン→テンテンテン……
の流れはある種の様式美であり唖然とする出来事でしたね。
>>438
一輪さんは決して弱くは無いですね。
一流とは呼べませんが、三流でもありません。
>>439 >>440
ゲーム版を考えると当然そこまで強くは無いけどめちゃめちゃ弱くは無いというラインかなと思いました。
ただモブのミドルシュートにすら失点する事を考えればパンチング70くらいでも良かったのかなと今では思いますが。
そうするとオテッロくんとかの立場すらなくなっちゃうので……。

442 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/03/23(金) 00:24:59 ID:???
追記:本日も更新はお休みします。
色々と考えてはいますがイタリア編で戦う相手なども煮詰めていきたいのでちょっと次の更新は遅れるかもです。

443 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2018/04/01(日) 22:21:09 ID:???
EX.もしも反町に好感度トップ3のハーレムルートがあったら

>ポイズンスレ41 >>31からの分岐

反町「……すみません、俺は……。 俺は、早苗さんの気持ちには応えられません」
早苗「……そう、ですか」

反町一樹、一世一代の大舞台。
容姿端麗、頭脳明晰、おまけに常識を取り戻した上に高い浮き球は3もある早苗を前にして、
しかし、反町は早苗の告白に対して謝罪で返した。
早苗の好意――自分を好いていてくれるという気持ちは、ありがたい。
だが、それでも――未だに自分は、早苗の事を深く知っている訳でもない。
確かに試合などを通じて早苗の人柄には触れてきたつもりであるが、
それでもまだ……付き合う付き合わない以前に、男女の恋愛的な感情を反町は早苗に対して抱けずにいた。

反町「それに……」

今先ほどまでの瞬間、早苗に告白をされた際、反町の脳裏には3人の少女の姿が過ぎった。
豊穣の女神、蟲の姫、蓬莱人。
ここまでの短い期間――それでも濃かった時間を共に過ごしてきた少女たち。
1人だけでなく3人というあたりがなんとも反町の優柔不断さを象徴しているようだったが、
それでも反町の心は秋の空のように晴れ渡っていた。

その後、反町は失恋をしながらもこれからも良き友人でいて欲しいと願う早苗の案内を受け、
自身が住まうオータムスカイズメンバーの家へと帰り着くのだが……。

反町「あれ? なんで俺の部屋に明かりがついてるんだ?」

出かけの際にしっかりと電気(河童印)を消した筈なのに……と思いながら自室のドアを開ける反町。
そこには予想だにしない光景が広がっていた。

444 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2018/04/01(日) 22:22:39 ID:???
*ここから都合により音声のみでお楽しみ下さい*

反町「あれ!? 何やってんだ穣子!?」

穣子「反町!?」

反町「何で部屋の中にはいってるんだ? 覚醒が目当てなんだろお前!?(K引き)」

穣子「違う、違うの……」

反町「とにかくじっとしてろ! 逃げられないぞ! 妹紅さんに連絡するからな(EXボスへの信頼)」

反町「もしもし妹紅さんですか?(河童印のスマホ) 俺の部屋に変態焼き芋屋が入り込んでるんですけど……。
   不法侵入ですよ! 不法侵入!! いっ、今すぐ来てください!」

反町「妹紅さんに連絡したぞ! 大人しくしてるんだ!」

………

妹紅「自警団だ!(二次設定)」

妹紅「穣子、何が目的だったの? お金? 輝夜に言って借りてきてあげようか?(仲良しアピール)」

穣子「ちぇーん!(右サイドアタック)」

妹紅「橙は関係ないでしょ。 反町、部屋に異常とかはなかったの?」

445 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2018/04/01(日) 22:23:40 ID:???
反町「はい。 特に何もないですけど……穣子、布団の上で枕を抱えて……」

妹紅「枕を!?(驚愕) 抱えて……(ドン引き)」

反町「多分眠かったと思うんですけど(鈍感)」

妹紅「とりあえず部屋に連れていくよ。 おやすみ、反町」

………

妹紅「何が目的だったの?」

穣子「……」

妹紅「もしかして穣子……反町の事が好きだったの?」

穣子「…………(コクリ」(当然のように反町への好感度No.1の風格)

妹紅「そうか……身も心も熱くなってきた!!」(意外な事に反町への好感度No.2の風格)

妹紅「私にいい考えがある。 ついてきて!」

………

446 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2018/04/01(日) 22:25:31 ID:???
ガチャッ!

妹紅「鳳翼天翔!!」(高クリア力+2 100消費)

反町「えっ、妹紅さん!?」

穣子「〆サバァ!!」(秋の味覚)

反町「穣子も……何するんだ!? 流行らせコラ!」

妹紅「穣子はそっち抑えて!」

反町「ドロヘドロ!(毒属性っぽい)」

穣子「抵抗しても無駄よ!」

妹紅「大人しくしてよ、反町!」

反町「穣子と妹紅さんに……2人に負ける訳ないだろ!(シュート力67) 流行らせコラ!!」

リグル「ハッハァ!! ここで颯爽とエースが登場!!」(貫禄の反町への好感度No.3)

反町「何だリグル!?(多分リグルとの恋愛ルートだけは無かった並の反応)」

穣子「リグルはそっちを押さえて!」

妹紅「3人に勝てる訳ないだろ!(人数差補正+2)」

反町「馬鹿野郎妹紅さん俺は勝つぞ!(オータムドライブ威力76)」

447 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2018/04/01(日) 22:26:54 ID:???
穣子「フルお芋さん!!(夕飯作りはお嫁さんの特権)」

反町「ゲッホゲッホ(ガッツ300以下ペナ) やめろ……あぁも! あぁ……!」

反町「みんなオータムドライブだからな!(Aを引いて11人吹き飛ばし)」

リグル「シュバルゴ!(申し訳程度のポケモン要素)」

妹紅「さあもう抵抗しても無駄だよ!」

反町「やめろォ!(建前) ナイスゥ……(本音)」

反町「うわーやめろ! みんなドコ触ってんでい!(1回目の判定) どこ触ってんでい!!(類まれなる反射神経)」

穣子「ほら見せてみなさいほら!」

反町「穣子なんだ……俺の事そんな近くで見て喜ぶなよもう……(カップルジュースごくごく)」

妹紅「やっぱりいい身体してるね!」

反町「やはりやばい……」

448 :幻想のポイズン ◆0RbUzIT0To :2018/04/01(日) 22:27:56 ID:???
反町「何なんだ皆!(今更) 何なんだ、俺に恨みでもあるのか!?(鈍感)」

リグル「中々いい脚してるじゃないか! ……ところでお腹はぶよぶよだけどブロック鍛えないの?」

反町「いいじゃないか俺の勝手だろ(主人公特有の尖った能力)」

反町「みんなにゴチャゴチャ言われたくないぞ!(秋空特有の尖った能力)」

穣子「もっとよく見せてホラ!(やっぱり芋様ルート書きたかった)」

反町「ンァイ…どけコラ!(メイア・ルア) やぁめろ……ゥァー……」

〜GAME OVER〜

449 :幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/04/01(日) 22:29:11 ID:???
はい、という事で4/1という事でアホなネタを書かせて頂きました。
そして申し訳ありませんが本編の方はもう少しだけお待ちください。
ちょっと仕事の引継ぎなどの影響で中々時間が取れない状況です。申し訳ないです。

それでは。

450 :森崎名無しさん:2018/04/04(水) 21:11:46 ID:???
乙でしたー
いっぱい笑わさせていただきましたw

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