キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【早苗】鈴仙奮闘記28【サッカー好きか?】

1 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/04/12(日) 22:35:12 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、
東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで師匠を超えるために努力する物語です。

他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆
【復活の】鈴仙奮闘記27【N】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1425474393/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html

☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠、八意永琳に並ぶ選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。

全幻想郷代表選抜大会で活躍し、代表メンバーの一員となる事を夢見てきた鈴仙はある日、
自身が『プロジェクト・カウンターハクレイ』のキャプテン候補に選ばれている事を知る。
それは霊夢や紫達幻想郷に敵対し、以て幻想郷の価値観を覆すという壮大な計画だった。

永琳から告げられた計画の壮大さに戸惑う鈴仙。しかしさらに追い打ちを掛けるように、第二の道が示される。
――八雲紫の掲げる狂った計画・『リアル・幻想・セブン』を内部から改革するという道だった。
ヒューガーの科学技術により精神を蝕まれた、幻想郷の管理者・八雲紫を救いつつ、これまで通りの幻想郷をより良くしていきたい。
紫の忠実な式・八雲藍は自らの身の危険をも辞さず、鈴仙にそう理想を語った。

幻想郷を変える為に戦うか、幻想郷を守るために戦うか。そもそも、自分は何の為に戦うのか。
そう思い悩む鈴仙の前に、かつて姿をくらました中山政男が圧倒的な力を手に、再び戻って来た。
新しいヒーローの出現に幻想郷中が湧く中、鈴仙は中山の姿に何を想うのか。

現在は決勝トーナメント第1回戦、守矢みらくるずとの対戦中。
試合はルナティックスが後半22分に3−1と優勢だが――早苗、サッカー好きか?

487 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 02:12:43 ID:???
〜回想シーン〜
−???−

――私は物心ついた時から、自分自身こそが物語の主人公だと信じて疑っていなかった。
実際、私には溢れた才能があると思っていた。
里の子ども達でも中心的存在だったし、ほんの些細なレベルだけど魔法もどきの退魔術も使えた。
もっとも、子ども間の人間関係なんて流動的だし、退魔術くらい、
陰陽師とかの子どもだったらある程度使えても不思議ではなく、むしろ自分より上もゴロゴロいた。
勉強はそこそこだったし、スポーツも上の下くらい。
要するに、客観的に見て幼少時の私はどこまでも『普通』に過ぎなかった。
そして、それにも関わらず、私は自分が間違い無く特別な存在だと信じていた。

……だから、家を勘当され魔法の森で住み込む事になっても後悔はないし、
むしろ普通じゃない境遇が重なった自分は、間違い無く主人公なのだという確信を強めてくれた。
途中で深い夜のローブを纏った足の無い魔女に師事し、昔から興味のあった魔術の力を強めた。
師匠は厳しかったが、周囲にライバルが居なかった事もあり、自分は師匠を除けば最強の魔法使いだと思っていた。
あの時、私は途方も無くバカだったけれど。その代わり、途方も無く幸福だったと今では思う。
そんな夢のような幼年期が終わり、辛い現実に曝されたのは何時だったろうか。

「……邪魔よ! どいて!」

「――ふふっ。あのお方の所には行かせないよ。貴女にはここで少しばかり遊んでて貰うわ。
 もっとも、あたいがあんたをアンタを倒しちゃっても良いんだし……キャハハハハッ!!」

――ああ、間違いない。黒歴史だ。
その当時の私は師匠の命令を受け、今ではおよそ考えられないバカ笑いで、
自分と同い年くらいの亀に乗った少女を一撃で焼き尽くそうと算段を立てていた。

488 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 02:14:04 ID:???

「しかし不便よねぇ〜。亀なんかに乗らないと空も飛べないなんて!
 そだ、アンタをあたしの弟子にしてやろうか! そしたら、そうね……きっと三年位で箒で空でも浮けると思うわ。
 あたしですら、飛べるようになるには一年半もかかったんだから!! キャハハハッ!」

「口の減らないヤツね。っていうかアンタ、一年半もかかったの」

「あたしみたく才能のあるヤツでも、ね! 知ってるかしら? この世は私を中心に回ってる、って事実にさ!」

ゴオッ、バババババッ!!

当時の痛い私は、(当時の私なりに)最高にカッコ良い言葉で決めると、
大した威力も無い火球を五発程度、如何にも暢気でとろそうな巫女に放ってやった。

「どうかしら! これがあたいの絶技……『フィンガーフレアスパークス』よっ!!」

両手の指でやるのは負担だったため、五発程度が限界だった。
しかしそれでも、あの巫女をやっつけるには充分だと思っていたらしい。恐ろしい事に。
巫女はそんな私の愚かさに対して、苛立たしげに首を振って。

489 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 02:20:08 ID:???

「え〜い! その程度だったら里香の方が千倍マシよ!
……そんな案外というか元から全然大した事ない技。 ――こうだっ!」

バ! バ! バ! バ! バッ!!
  ――ギュン! ギュギュギュギュンッ!!

ダッ! フワァァァッ………!

「うえっ……?」

その圧倒的な動体視力と反射神経。そして天賦の才とも言える武術への勘と素養。
その全てを駆使して彼女は私の魔法を容易く打ち破り。
しかも極め付けにそいつは亀から大きくジャンプして、『何も無しに空を飛んで』、
私の喉元にそのスラリとした足を振り抜いて――。

「――食らいなさい! ……天覇、風神脚ーーーーッ!!」

ズドオオオオオオオオオオオオオオンッ!!

「きゃ、キャァァァァァァァ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

天才的で煌めいた、本当に本当に綺麗なキックを私にぶちかました。
そんな少女を近くで見た私は、生まれて初めて心底惨めな気持ちになった。
何故なら、とろそうに見えたその少女はその実、自分なんかよりも数倍きれいで可愛くって。
そして、自分が持っていない才能を、溢れ落ちる位に持っていたのだから。

――私はこの時始めて、自分がこの物語の主人公では無いのだという事実を思い知らされた。

490 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 02:23:12 ID:???

*****


−魔法の森 霧雨魔法店−

魔理沙「……そうだ。それが私、霧雨魔理沙とアイツ――博麗霊夢との初めての出会い。
これまで自分こそがこの物語の主人公だと信じて疑わなかった私に、初めて自分自身の価値の無さを疑わせた。
当時の私的には最強最悪にロクでも無い相手だったな」

森崎「……お前バカだな。その位で自分自身疑ってたのか。まるで四面のボスみたいな発想だぜ?
そんなんだったら、いつまで経っても俺みたいな主役にゃなれないぜ?」

大会一回戦を明日の午後に控えた夜。
霧雨魔理沙は利害関係者として共に修練を重ねて来た少年――森崎有三を自宅へと呼んで、僅かな昔話に興じていた。
彼は幻想郷には中々いない珍しいタイプで、要するに魔理沙と割と気が合うタイプだった。

魔理沙「私だって、あれから努力したさ。それに結果も挙げて来た」

森崎「それがどうしたよ。そんなの、主人公にアッサリ負ける三下でも出来る事じゃないか」

魔理沙「じゃあ、どうすれば良いんだよ」

森崎「自分で言ってたじゃないか。自分自身を、この物語の主人公だと信じて疑わない事。
これが一番重要なんじゃないのか? 少なくとも、俺はいつもそう信じているぞ」

森崎の遠慮を全く知らない、完全なる功利主義から基づくドストレートな言葉は時に辛辣に思えるが、
魔理沙にとってはむしろ好感の持てる話し方だった。
現に今もこうして、魔理沙は森崎との会話を通じて、自身の伸び悩みの原因を探ろうとしていたが、
こうした流れで、魔理沙が森崎に反感を覚えた事は自然と一度も無かった。

491 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 02:24:54 ID:???
魔理沙「信じるのは自由だ。だが現実は我々のそんな信仰を妄想だと言って一笑に付してくるじゃないか。
それには一体、どうやって対処するんだ?」

森崎「ほっときゃ良いじゃねぇか。それで仮にカチンと来たり、傷つく事があったとしたら。
それは多分お前も内心その通りだなーって思ってるからだと思うが。まあ、でもそんときゃそれを直せば良いだろ」

魔理沙「直せば良いとは大きく出たな。じゃあ例えば、内心その通りだと思ってる事が、どうしても直せない場合はどうする?
こうなったら、どうしようも無くないか? そうなるヤツは主人公失格なのかな」

森崎「どうしようも無いんだったら、ほっときゃ良いじゃないか」

魔理沙「……お前。もしかして適当な事言って。私を煙に巻こうとしているな?」

森崎「ちっ。バレたか」

二人は練習後、こうしてしばしば談笑する事もあった。
とはいえ、その範囲はあくまで業務中の雑談レベルに過ぎず、踏み込んだ会話をすることはあまりない。
魔理沙がこうして自分の過去を話すのも、今夜が初めてだった。

森崎「――ま。要するに気にするだけ負けってヤツだな。
俺の生活を物理的に邪魔しない限り。結局、他人がどう言おうが、どう思ってようが関係ないさ」

魔理沙「そこは私も分かってるつもりだぜ? むしろ、お前さん以上にな」

魔理沙はパチュリーから大分前に借りた本を枕にして、自室のソファに寝そべった。
流れるような金髪がふわりと揺れると、流石の森崎も若干どぎまぎする事もある
……ような、そんな甘酸っぱい時期は当に過ぎていた。
森崎には丁重に、アリスから『譲ってもらった』クッションの上に座らせている。

魔理沙「……いかんいかん。少し眠くなってきたな。――森崎ももう帰るか?」

森崎「ああ……そうしようかな。そういや、この間のキノコありがとうな。全部腐ってたぞ」

492 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 02:26:18 ID:???
森崎は結局幻想入りの日から今まで、博麗神社の離れを借りてそこで生活している。
食事・洗濯等について霊夢は勿論何もやってくれない(結界があって、勝手に部屋に入る事もできない)ため、
実質的な自給自足の独り暮らしである。
そのため、魔理沙から偶に貰えた質の悪いキノコや草も、森崎にとっては割とありがたい。
魔理沙はそこから、森崎を神社まで連れていった。懐中時計を見ると、時刻は既に3時だった。

魔理沙「ふああ……眠い。明日は大会だし、寝るか……って。あれ」

家に帰った魔理沙は早々に寝支度をしていたが。
その日たまたま魔理沙は、霊夢の家に生活用品を数点置いていた事に気付いた。

魔理沙「あっちゃあ。そういや荷物を持ったまま、神社にお邪魔してたんだっけ。
明日取りに行っても良いけれど――どうしようかなぁーっと」

少しだけ悩んだ末、魔理沙は箒に乗って空を飛んでいた。
性分として、今日やれる事は今日の内にやっておきたいタイプである。
森崎に話してやった過去の自分の冒険譚――外界の天才学者と遭ったり、
かつては髪の長かった幽香を退治にしに行ったり、果ては魔界の神様と戦ったり。
中には不格好なエピソードもあったが。そのどれもが今の自分に繋がる、大切な思い出だったという事に気付いた。

魔理沙「さーて。神社のどこに置いたっけな……」

フワリ。

魔理沙はルーミアも出没する、神社の境内裏で降りて、霊夢を起こして機嫌を損ねぬよう、
こっそりと周囲を歩いて行った。幸いに、魔理沙の探し物はすぐに見つかった。
(霊夢が気を利かせて、纏めて賽銭箱の傍に置いといてくれていた)
――のだが。

493 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 02:27:25 ID:???
シュッ。シュッ! シュッ。シュッ!

魔理沙「……音?」

この時魔理沙は不思議な音を聞いた。何かが空を切るような幽かな音だった。

魔理沙「(何かの妖怪か、それともまだみぬ怪現象か……?
最近、オカルトボールがどうとか都市伝説がどうとかいう噂が立ってたし。割とあり得るかもだぜ……)」

音は神社の裏山から聞こえている。境内裏から少し飛んだ場所だ。
麓の方は開けていて林も無く、自分がもう少し小さかった頃は、同じく小さかった霊夢と一緒に川で遊んだ記憶がある。
音の発生源は、その麓にある川べりからだった。
そこでは一人の小柄な男が、月明かりを受けて映る自分の姿を見ながら、基礎的なセービングのフォームを確認していた。

魔理沙「も、森崎……!?」

――それは間違いなく、先程魔理沙と別れた筈の森崎だった。
森崎は普段からこうして、一人で遅くまで基礎的な練習を積み重ねて来たのである。
魔理沙は大きな声を出して、森崎を呼び止めようとしたが……やめた。

魔理沙「(――ここで私がアイツに声を掛けたら、私はアイツのプライドを大きく傷つけちまう。
だって、私が逆の立場だったら大いに傷つくし……。
でも……何だ、なんだよ。森崎のヤツ。アイツ、あれだけ自信家の癖して……!)」

努力をするのは良いが、そこまで隠れてやる必要があるのか?
自分の事を完璧に差し置いて、魔理沙は森崎に非常に腹が立った。
しかし、魔理沙が今一番腹を立てている対象は森崎では無かった。

魔理沙「(……私は馬鹿だ。森崎から見たらロクな努力もしてない癖に、主人公に憧れて。
それでいて、その為の行動が全然伴ってないんだから! 私と森崎は一緒じゃない。全然違った……!)」

494 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 02:28:46 ID:???
魔理沙は自分自身への怒りに体中を熱くしながら、全速力で空を駆けていた。
そうと決まれば、自分のすべき事はひとつしかない。

魔理沙「(駄目だ。もっと……もっと練習しなくちゃ! もっと努力しないと、私は主人公に憧れるだけの、単なる噛ませ犬だ……!)」

鈴仙が中山から多くの事を学んでいたように、魔理沙は森崎から多くの事を学んでいた。
それはこれまでの半年間での積み重ねでもあった。
だから、森崎の真の努力に気付いた魔理沙が、これまでの森崎との会話から新たなシュートを開発するまでに、
それほど多くの時間を要さなかった。……大会当日の早朝の事である。

――カッ!  チュドゴーーーーーーーーーーーーーーンッ!

魔理沙「はぁ。はぁ……出来た!」

暁光により僅かに白みかけた空の下、魔理沙は博麗神社の裏山目がけておもいっきり、その新しいシュートを撃ち放った。
悪友に対するせめてもの報告が必要だと考えたからだ。

魔理沙「これが……私の物語最大最後のシュート。最後の閃光。『ファイナルスパーク』だ……!」

抜け殻のようになった魔理沙は、自分のシュートをそう名付けると、満足したようにその場に倒れる。
人間はどうしようも無く眠くなった時は、機械のように意識が落ちるのだと魔理沙は学習した。
お蔭で、あの脚が千切れるような痛み、間接の骨がゴリゴリと削られていくような嫌な感じを覚えなくて済んだ。

魔理沙「(み……ま……さま。あた……し、やり……まし……た)」

薄れゆく意識の中で、魔理沙はかつての師を思い出す。
彼女はこのシュートを見て感心しているだろうか?それとも、まだまだだと駄目出しをするだろうか?
その時の彼女の顔は――魔理沙には、ぼやけて何も見えなかった。

495 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 02:31:37 ID:???
――と、言ったところで、今日の更新はここまでです。
いつまでNPCシーン続くんだという感じですが、これで分量的に半分位は行ったと思います。
明日にはNPCシーンを終わらせ、できれば14日目の行動選択に行ければなと思っています。

それでは、皆さま、本日もお疲れ様でした。

496 :森崎名無しさん:2015/05/10(日) 03:04:35 ID:???
乙なのです!

霊夢「へえ……やるわね。素直に感心したわ」
魔理沙「おう、どうだ!」
霊夢「で……この神社の、裏山の惨状についてどう責任を取ってくれるのかしら?」
魔理沙「……観光名所にでもすればいいんじゃないか?」
霊夢「なるか!」

輝夜「オチオチキーパーもしていられないわね、幻想郷は……(汗)」

497 :森崎名無しさん:2015/05/10(日) 11:20:30 ID:???
>勇儀「森崎有三。初対面で会話もしてないが、私はあんたを気に入ったよ」
>完全なる功利主義から基づくドストレートな言葉は時に辛辣に思えるが、魔理沙にとってはむしろ好感の持てる話し方だった。

これは……LOVEの予感!(真勘違い)
アリス「うふふ…にがさないわよ」森崎「や め ろ」

498 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 21:56:12 ID:???
こんばんは、今日も文章だけですが更新します。
>>496
乙ありがとうございます。裏山はあまり深く考えずに吹っ飛ばしてしまいました(汗)
石崎君ですら日向のコンクリ破壊タイガーショットを顔面で受けられるので、姫様だったら大丈夫ではないでしょうか。
>>497
森崎とかは敵役と言うよりも、もう一人の主人公って感じで書いてますね。
なので鈴仙の影でフラグが立ちまくりです。何のフラグかは分かりませんが。

499 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 21:57:53 ID:???
*****

さとり「――ぅ。あ。ここ、は……?」

お燐「なーみょーほーれんげーきょー……。――あっ、さとり様! まだ生きてたんですか!?」

さとり「……ジョークという事は分かっているけれど。怒るわよ?」

お燐「すみませんすみません。九割ジョークでした」

さとりはお燐が普段押している猫車の中で目覚めた。
お燐が言う残り一割が何であるかを敢えて問わずに、さとりはまず周囲を眺める事にした。

さとり「ここは。地獄かしら……?」

さとりがそう勘違いしたのも無理はない。
彼女が目を覚ました周囲では、地面がひっくり返ったように滅茶苦茶になっていた。

お燐「違いますよ。ここはサッカースタジアムです。ほら」

お燐がそう言って指し示した先には、大きく開けた視界の端にはサッカーボールが転がっており、
すぐ近くには、飴細工のようにひしゃげたゴールポストが打ち捨てられている。
信じたくはないが、確かにここは間違いなく、妖怪の山モリヤスタジアムのようだった。

さとり「……私は、点を取られたのね」

お燐「0−1ですね。霧雨魔理沙の、えっと……『ファイナルスパーク』とやらが、
我々地霊殿サブタレイニアンローゼスゴールを突き破った挙句、
フェンスの物質となんか核分裂的なヤバい反応を起こして大爆発。
さとり様は見事吹っ飛ばされて、今の今まで気を失ってたワケです」

500 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 22:00:29 ID:???

空「お燐違うよ! 核分裂じゃなくってミューオン触媒核融合だってば!
多分、あのミニ八卦炉が中間子工場代わりで、負ミューオンが物質中の水素の触媒となって自然崩壊したんだと思う!」

さとり「――そう。お燐、お空、ありがとう……」

さとりは空の科学的な説明を聞き流しながら、二人の頭をくしゃっと撫でて立ち上がる。
試合はまだ始まったばかり。お燐と空を支える一勢力の長としても、さとりはここで挫ける訳にはいかなかった。


***


一方で、ゴールを決めた側の博麗連合の面々も、魔理沙が今放ってみせた最後の閃光
――『ファイナルスパーク』のあまりの威力の高さを見て、祝福するよりも先に戦慄していた。

霊夢「…………」

魔理沙「はぁ、はぁ……! ど、どうだ霊夢、凄いシュートだろう!
なんせ、実際にシュートを撃って見せた私自身が、あまりのえげつない威力にビビってるくらいだしな!」

しかし、そんな事はもはや魔理沙には関係が無い。
これまでの努力が実を結び、レミリアよりも勇儀よりも、最近調子に乗ってる鈴仙よりも。
他のどのライバルにも負けない最強のシュートが完成してしまった以上、
彼女の高揚感を押えられる者は誰ひとりとしていなかった。

霊夢「……魔理沙」

魔理沙「な、何だなんだよ。そんな怖い顔して。ま、確かにさ、これまでは私もパッとした活躍をしてなかったけど。
これからの活躍でぜーんぶチャラだ。今に見てな。私がさとりからダブルハットを取って、得点王に返り咲く姿を――」

501 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 22:02:33 ID:???

霊夢「――止めなさい。あのシュートは、アンタには荷が重すぎるから」

魔理沙「……えっ?」

――腐れ縁と自負しながらも、これまで長い間魔理沙の努力、そして限界を見続けて来た霊夢以外は。
霊夢は魔理沙を険しい顔で睨んで、キックオフに備えて元のポジションへと戻って行った。
魔理沙はそんな霊夢の発言の意図を掴みきれず……。

魔理沙「(――く、くそっ。霊夢のヤツ。なんなんだよ。そんな事言われたら、折角の楽しい気分が……!)」

折角の新シュートに水を差された気持ちになって、憤然としてしまうのだった。
そして――。


……ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

実況「さあ試合は地霊殿サブタレイニアンローゼスのキックオフから再開です!!
地霊殿チームはトップ下の矢車選手を中心に、堅実に試合を組み立てております!」

魔理沙「くそっ。ボールを寄越せっ!!」

矢車「……お前。良い顔をしてるな。俺と一緒に地獄に落ちるか?」

タッ――クイィッ! シュパァァッ!

魔理沙「あっ……!」

霊夢「ちょっと魔理沙、今のは取れた筈でしょう!(あーっ、やっぱりちょっとキツく言いすぎたかなぁ……。
でも、あのシュートだけは。魔理沙があのシュートを撃つのだけは避けさせないと……!)」

502 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 22:03:48 ID:???
――1ゴール目を決めて以降も、地霊殿サブタレイニアンローゼスは諦めずに奮戦した。
確かに総合力的には、地霊殿サブタレイニアンローゼスは博麗連合に比べて圧倒的に劣る。
しかし、お燐のサイドアタックをはじめ、各所各所で長けた一芸を発揮しており。
前半終了間際まで、地霊殿サブタレイニアンローゼスは1−0の状態で辛うじて持ちこたえていた。

パルスィ「(とはいえ、やっぱり相手の守備力が妬ましいまでに高すぎる。
第二のゲームメイカーであるアリス・マーガトロイドのパスカットに、ボランチの永江衣玖の渋いタックル。
巫女を抜きにしても、中盤からしてここまで厄介なのに、最終ラインのブロック力、タックル力も高い。
一体どうやって攻めろって言うのよ……!!)」

この時勇儀から零れたボールをフォローしていたパルスィは、
妬ましげかつ冷静に博麗連合の実力を冷静に分析していた。
辛うじて持ちこたえていた……と言うのは聞こえが良いが、
彼女達は全力を出してなお、1点差を埋める事ができないでいるのである。非常に苦しい戦いだった。
そして、苦しいからこそ、プレーにも綻びが出てしまい――。

霊夢「とりあえずボールは頂くわ!」

タッ、ズザアアアアアアアアアアッ、バシッ!

パルスィ「くっ……妬ましい! だけど、『橋姫』の怨念はこれ程で、は……!?」

タッ……グンッ。 バァァァッ!

霊夢「あのね。怨念がいくらあろうと、地面に這いつくばってちゃあ、空を飛ぶ巫女には届かないでしょ!?」

パルスィ「何ですって……!」

503 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 22:04:52 ID:???
実況「あ〜っと! ここでパルスィ選手、霊夢選手へのマンマークについていた事が災いし、
逆にボールを持った僅かな隙を突かれて奪われてしまった!
そして持ち前のしぶとさも、『空を飛ぶ程度の能力』を持った霊夢選手には通用しない!
前半戦ももはやロスタイムを残すのみ! そしてゴール前には先程凄いシュートを決めた霧雨魔理沙選手が!
地霊殿サブタレイニアンローゼス、前半終了と同時に2失点だけは何としても避けたいが〜〜〜!?」

こいし「や、やばいよ! ここはさらばサッカーしてでも止めなくちゃ……!」

グィッ……。

霊夢「邪魔ッ!」

ブウン……ッ!!

こいし「な、なにィ!? 消えた!? 突然消えるなんてお前はバケモノかぁ!?」

ヤマメ「いや、こいしちゃんだって消えてるじゃん」

実況「霊夢選手はこいし選手の執拗なタックルにも全く動じない!
天才的なフェイントでまるで分身消滅したように見える必殺の『博麗幻影』で、ゴール前へと迫ります!」

霊夢「……よっし。これで後は――!」

――パルスィは霊夢の動きを自由にしてしまう。そうなると、後はもう流れるままだった。
かつて『スーパーシューティングプレーヤー』と称えられた霊夢の圧倒的個人技は健在。
……いや、むしろ前よりも成長している位であり、パルスィやこいしと言った有象無象ではどうにもならない。
博麗連合は前半終了間際という絶好のタイミングで2点目を狙える位置に来ていた。

504 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 22:06:10 ID:???

魔理沙「……れ、霊夢! さっきヘンな事言ってたけど……アレは冗談だよな! だから私に――!」

実況「そしてPA内に控える魔理沙選手は、霊夢選手に対して必死にボールを要求しています!
これはやはり、あの『ファイナルスパーク』を使う構えなのでしょうか〜〜〜!?」

観客「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「いっけー! 魔理沙ー!」「レミリアやうどんげじゃない、お前がナンバーワンだー!」
「さとりにトラウマを植え付けてやれー!」「サトリ サトリ サトリ サトリ」「お前三文字だったら誰でも良いのか」

――そして、そうなると必然的に、観客達の注目は先程鮮烈なゴールを決めた魔理沙へと移っていく。
あの無敵の『ファイナルスパーク』が、容赦なくさとりを病院送りにしてしまうのではないか。
そんな嗜虐的な興味も籠った、熱狂的な声援もあり、場の空気はますます強まる。
ボールを持った霊夢は一瞬の逡巡の後、大きく右脚を振り上げて――。

霊夢「(…………魔理沙)――それっ、小町! 一旦アンタに繋ぐわ!」

バシッ!

小町「ふわ〜い」

実況「霊夢選手、ここは直接では無く一旦小町選手のポストプレイを経由するようです!
サイドにはけてから小町選手にセンタリングを放つ!」

魔理沙「霊夢……! ありがとな、私絶対決めてみせ――」

魔理沙は、霊夢が自分にボールを出してくれると無理矢理にでも信じていた。
眠そうに瞼をこすりつつ、しかし距離を操ったのか途轍もない跳躍を見せる小町の足元へと魔理沙は向かう。
――しかし。

505 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 22:08:20 ID:???

――タッ!

霊夢「――小町! 来い! 私に持ってこい!!」

魔理沙「れい、む……?」

実況「……いや、お待ちください。小町選手が出したポストプレイの先は――魔理沙選手では無く、霊夢選手!
そして霊夢選手はトラップよりも先に高い浮き球に飛びついて、オーバーヘッドキックの体勢を取ります!
もしやこれは〜〜〜〜〜!?」

さとり「『巫女サマーソルト』……では無いですよね。そう、この技は―――!!」

霊夢「アンタの想像通りよ、さとり! 悪いけどアンタの能力、私の『空を飛ぶ程度の能力』には聞かないし。
遠慮なく、決めさせて貰うわ!! ――行くわよ!」

                             グルンッ、グワアアッ!

                            霊夢「『夢想封印――瞬』!」

             バッシュゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!!
                  ――ギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッ!

506 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 22:10:41 ID:???
――霊夢は魔理沙にボールを渡す事をせず、あくまで自分で決める事に拘った。
小町のポストプレイで安定した位置へと掲げられたボールは、地上の魔理沙では無く天上の霊夢の物だった。
彼女は自力で昔発明した、空中での夢想封印――『夢想封印 瞬』を、さとりが守るゴールへと撃ち放った。

さとり「(……ッ! シュートコースが読めない! いや、読めていたとしても。これは………!!)」

天高くから一気に撃ち落とされて、地面スレスレで重力に反するように再び天へと舞い上がって行くドライブシュート。
その軌道は普段の霊夢の気質の如く爽やかな晴天であったが、それ故にさとりには眩しすぎた。
さとりは必死でボールに飛びつくも、シュートはその手をすり抜けていき――。

――バシュウウウッ! ズバァァァァァァァァッ!
ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!
ピッ、ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

魔理沙「(な、なんでだよ。なんでだよ……霊夢! 何時もはそうやって、無駄に出しゃばるお前じゃないのに……!!)」

魔理沙の声に出ない狼狽をよそに、霊夢はごく当然の如く2点目のゴールを決める事に成功した。
そして、地霊殿サブタレイニアンローゼスは懸命に動いたにも関わらず、
2点のビハインドを負った状態で後半戦を迎える事を強いられる事になった。


博麗連合2015 2 − 0 地霊殿サブタレイニアンローゼス 前半終了!

507 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 22:17:55 ID:???
――と、言ったところで恐らく今日の更新はここまでです(汗)
出来れば12時頃に更新したいですが、出来ても文章だけの投下となります。

余談ですが、今日は例大祭で東方新作が発表されましたね。
私は仕事も忙しくて行けないのですが、今日はずっとネットでネタバレ情報を漁ってました(爆)
詳しくは一応ネタバレという事で言いませんが、自機になった鈴仙のセリフがカッコ良くて吹きましたw
新作の要素については、ストーリーの都合上大体的にとは言えませんが、また拙作にも取り入れていきたいですね。

508 :森崎名無しさん:2015/05/10(日) 22:23:24 ID:???
>矢車「……お前。良い顔をしてるな。俺と一緒に地獄に落ちるか?」
また口説いてるw乙ロット!

509 :森崎名無しさん:2015/05/10(日) 22:33:45 ID:???
ファイナルスパークをダブルハット(6発)分打つとか、それなんてストーリーモード敵使用www

勘弁してください(震え声

510 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 23:33:26 ID:???
*****


魔理沙「な、なんでだよ! 何でさっき、私に渡してくれなかったんだよ!?」

霊夢「……………」

――二点差で前半戦を折り返したにも関わらず、
ハーフタイム中の博麗連合の控室は険悪なムードに包まれていた。
理由は勿論、前半終了間際のワンシーンにある。

魔理沙「小町のポストプレイさえあれば、私も充分ペナルティエリア外で撃つチャンスがあった!
霊夢はトップ下だから、無理をしてまで体力を消耗するシュートを撃つ必要は無い!
なのに、どうして………! どうしてあの時、私にボールをくれなかったんだよ!!」

魔理沙は霊夢の襟首を掴んで問いただす。
何時もの霊夢は、人のプレーを軽く咎める事はあっても、明確に禁止の意を告げたりはしない。
自由奔放にさせておいて、それなのに皆が何となく纏まっているというのが普段の彼女らしい姿だった。
折角凄いシュートを開発したのに認めて貰えなかったという子供っぽい感情が相まって、
魔理沙は友人に対して明確な怒りと動揺を露わにしていた。

霊夢「…………」
霊夢はかぶりを振って、魔理沙の問いかけに応えようとしない。
しかしそれは無視や拒絶では無く、言うべき言葉を選んでいるようにも見えた。

511 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 23:34:53 ID:???
衣玖「まあ、まあ。喧嘩はいけませんよ。どうでしょう、ここは空気の読める私の顔に免じて――」

霊夢「……いや。アンタは別にいらない」

針妙丸「でもさ、霊夢も何か言わないと。じゃないと魔理沙も怒りっぱなしだと思うよー?」

アリス「そうよそうよ。友達は大切にすべきよ、霊夢?」

霊夢「別には私はアイツと友人でもなんでも……えーいっ」

しかし、そんな霊夢の態度では魔理沙は勿論周囲の穏健派なチームメイトも納得しない。
無言を貫き通す霊夢の態度に対しても、少しずつ非難が集まっていく。

森崎「(おっ。これは俺のキャプテン就任のチャンスか?)」

そんな騒ぎを楽しむ者も約一名程度はいたが、多くの者はこんな空気が愉快な筈が無い。
霊夢も堪忍したのか、俯きながら苦々しげに言葉を紡いで行く。

霊夢「……悪かったわよ。でも、少し言い出しづらくってさ。
アンタのその、新シュートを決めてアホみたいに喜んでる姿を見てると」

魔理沙「……アホで悪かったな。お前、試合後屋上な」

霊夢「どこの屋上よ。大体幻想郷で屋上のある建物も珍しいっつの。……紅魔館くらい?」

魔理沙「プリズムリバーの廃洋館には確かあったぜ。日向ぼっこくらいしか出来ない狭さだけどな。
地霊殿はダメだ。早苗が子どもの頃良く行ってたらしいネズミの王国の城みたいな、とんがった屋根しかない」

霊夢「ネズミの王国? 外の世界にもネズミの獣人は居るのねー。そういやネズミと言ったら、私の神社にもナズーリンが……」

512 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 23:36:36 ID:???

中里「……オホン。二人とも、話がズレてはおるまいか」

霊夢「――あ。そうだった」

衣玖「(私の空気読みポジションが中里さんに取られた……! 汚いです流石忍者汚い!?)」

……とはいえ。この辺りは普段の惚けた二人。
いざ口を開けばいつもののんびりとしたムードに戻りつつはあるのだが――。
しかし、このままお茶を濁してはいけない事は霊夢にとっても百も承知。
霊夢は勇気を持って魔理沙に向き合って。そして彼女に対し、こう過酷な事実を突きつけた。



霊夢「……魔理沙。あのシュート――『ファイナルスパーク』はどうしようも無い失敗作よ。
貴女はあれ以上、あのシュートを撃ってはいけない。さもないと、あんた……死ぬわよ」

魔理沙「な。……失敗、作? 私があれだけ頑張って作ったシュートが……失敗作だって……?」

513 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/10(日) 23:41:18 ID:???
ドドリア「あんた死ぬわよ!!」
――と、言ったところで、今日の更新は今度こそここまでです。
明日は勇儀姐さんのターンになると思います。
>>508
乙ロットありがとうございます。意図せずともそうなってますねw
>>509
ファイナルスパークは消費が大きいので実際は大丈夫ですw
実際だと撃てて精々3発程度でしょうか。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

514 :森崎名無しさん:2015/05/11(月) 01:26:55 ID:???
魔理沙「撃ち続けると死ぬ必殺技……まさに主人公じゃないか!
これはあれか! 体を鍛えるか、改良して負担が掛からない技にするフラグだな!
そうだな、ネオファイナルスパークとかどうだろう!?」
霊夢「長い、やり直し」
アリス「霊夢論点が違うわ!」

アリス→(私たちずっと、ずっーと友達よね!)→森崎
萃香→(約束破ったら拐うからね)→森崎
勇儀→(新必殺で必ず倒す)→森崎
魔理沙→(好敵手)→森崎
紫→(早く壊れなさい)→森崎
霊夢→(魔理沙や中山君に影響与えた原因)→森崎

なるほど、モテモテだね森崎!
なんていうかアリスさんが不憫ね、あややとにとりには遠く及ばないけど
友達発言してから会ってないし、顔だしてみたいけど、カツカツなんですよねえ

ともあれ、乙なのです! 霊夢さん優しい

515 :森崎名無しさん:2015/05/11(月) 01:45:37 ID:???
乙です
自らの身体を犠牲にしつつも撃てる最強クラスのシュート・・・最高じゃないか
自分に大ダメージだが相手にも大ダメージ系統の技って大好きなのよ
まぁ計算したうえで使うのが前提だけど

あ、このままもう一発ファイナル撃って決勝出てこなくなっても別にいいのよ?
その方が勝ちやすいし(ゲス顔)

516 :森崎名無しさん:2015/05/11(月) 02:10:13 ID:???
鈴仙さんもこの試合見ているんだよね?
なら医者(の卵)として、今の無茶は見過ごせない。魔理沙の体を診させてもらうわ
私の腕が信用できないというなら、師匠に診てもらうといいわ
とかもありなのかな?

鈴仙さんは霊夢さんのように気づきはしないか

517 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/12(火) 00:32:30 ID:???
こんばんは、今日は少しだけですが更新します。
>>514
乙ありがとうございます! アリスさんも仲良くなれば心強い味方になりますね。
森崎は何だかんだで人を惹きつける人柄だと思っています。
>>515
乙ありがとうございます。流石にこれで足壊して決勝出れませんはないですねw
>>516
鈴仙も気づきはしますが、解決法は魔理沙がファイナルスパークを二度と撃たない事なので、
治せる治せないの次元じゃないですね。
あと、これ以上撃ったら死ぬとか書いちゃいましたが、実際はもうちょっと猶予はありますし、
最悪でも死にません。ドドリア「あんた死ぬわよ!」がやりたかっただけだったりします(汗)

518 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/12(火) 00:34:00 ID:???
*****


鈴仙「えっ。失敗作……? あれが、ですか?!」

同じころ、観客席にて試合を観戦していた鈴仙達ルナティックス一行。
これまでずっと無言だった永琳が静かにそうつぶやいたのを聞いて、鈴仙は大きく驚いた。

永琳「そう。失敗作。霧雨魔理沙の『ファイナルスパーク』には、どうしようも無い欠点があるわ」

佳歩「えっと……。ホントですか、お師匠様?
私が眩しい中目を凝らしていた限りだと、あのシュートは威力は勿論、精度にも問題が無さそうでしたが……」

てゐ「八雲紫の手下の狐からパク……失敬した新型式神スカウターによると、
あのシュートの威力は星熊勇儀の『三歩必殺』とほぼ互角。
鬼ですら、あんなに制約だらけの状況下じゃないと撃てない威力のシュートが、
人間のひよっこ小娘はどこでも撃てる……ってのは、確かに都合良すぎだけどねぇ」

鈴仙も内心では佳歩やてゐと同意見だった。
確かに、如何に魔理沙が努力を重ねたとはいえ今のシュートは強力すぎる。
それで何の弱点も無いと言うのであれば都合がよすぎる。
しかしその一方で、鈴仙が実際にシュートを見た限りでは、実際の威力や精度には全く問題が無かった。

鈴仙「――いったい、どこが欠陥なんでしょうか。霧雨魔理沙のシュートは……」

中山「……分かった」

鈴仙の素朴な疑問に答えたのは――永琳では無く、不意に口を開いた中山だった。
彼はごくシンプルな回答を出した。

519 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/12(火) 00:35:45 ID:???
中山「……あのシュートは、そもそも人間が撃てるような代物じゃない。
要するに彼女は間違って。あまりに強力すぎて、自分でも撃てないようなシュートを編み出してしまった。
――そういう事ではないだろうか?」

永琳「ご名答。正確に言えば――」

中山の発言に永琳が頷いた。そして永琳は鈴仙達に向かって医学的な観点から講釈を入れる。
その結論は、当の霧雨魔理沙本人にとって、非常に痛ましい物である事は想像に難く無かった。


*****


霊夢「……ってこと。分かった? つまりあのシュートは、あんたの脚で蹴り出せる限界を軽く三周は超えてる。
物理的には勿論、魔術的にも無理。道理を無理で捻じ曲げてるから、足に掛かる負担もバカみたいに大きい。
だから――このシュートを撃つ事は即ち、自分で自分のサッカー寿命をガリガリ削っているようなモンって事。
次かその次か。はたまたその次かは分からないけれど……魔理沙。
――このシュートに頼っていたら、アンタは遠くない将来、いつか必ず破滅する。身に持て余る力の、あまりの大きさにね」

魔理沙「ど、どうしてそんな事がお前に分かるんだよ……。医者がそう言ってたのかよ……」

霊夢「道理で考えれば一発よ。あの永琳だって、今のシュートを見れば、さっきの私と全く同じ事を言うと思うわ」

魔理沙「マジかよ……」

場面は再び博麗連合の控室に戻る。
魔理沙は霊夢の説明をあらかた聞き終わって、いよいよ怒るよりも先に落ち込んでいた。
霊夢の発言を嘘と決めつけて跳ね返す事も出来た。
しかし魔理沙には、珍しく声を荒げつつも理路整然と説明を行う霊夢の真剣な顔を見てもなお、
それを嘘八百だと笑い飛ばす程の強い神経は持ち合わせていなかった。

520 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/12(火) 00:36:58 ID:???
霊夢「……幸い。さとりが相手だったら、アンタはPA外の『マスタースパーク』で充分決められるわ。
レミリアんとこのヘンな中国人は良く分かんないけど、『ブレイジングスター』や『ドラゴンメテオ』と、
幅広い攻め手と豊富すぎる体力がある、アンタの方が最終的に有利になる。
で、私は決勝の相手は鈴仙達永遠亭ルナティックスになると思うけど。
輝夜は永琳に頼るのと、ヘンなファンを世界中から掻き集める事位しか能が無いから、
永琳にもファンにも頼れない一対一を仕掛けてやったら良い。
――ほらね? 『ファイナルスパーク』に拘らなくても、魔理沙。アンタは充分活躍出来るわよ」

魔理沙「(………………)」

霊夢は語気を和らげ、現実的な問題を交えつつ、
魔理沙には『ファイナルスパーク』を使わずとも活躍出来る道があるのだと言う事を冷静に示していく。
感情的で荒っぽくはあるが、魔理沙とていっぱしの魔法使い。魔法使いは理を何よりも好む種族。
だから、論理に基づいた正確な事実を告げれば、きっと納得してくれるだろう。
そう考えての事でもあったが、果たしてそれは効果があった。
魔理沙は落ち着いた様子で深々と白黒の山高帽をぎゅっと被りなおして告げる。

魔理沙「……分かったよ、霊夢。私、もうアレは撃たない」

霊夢「魔理沙。……分かってくれたのね」

いくら本人が取り繕おうとも、この時の霊夢の口調は心底穏やかで優しげだった。
もしかしたら、霊夢は不安だったのかもしれない。
森崎という謎の外来人が現れて、魔理沙は最近、その外来人の生き方に心を惹かれていた。
そしてその結果、魔理沙は自ら破滅の道を進みつつあった。

魔理沙「――さ。作戦練ろうぜ。次は私達のキックオフだ。アリスの一人ワンツーを使うのも良いかもな。
針妙丸は結構疲れたろうし、敢えて衣玖。お前がロングパスをするってのも……」

521 :森崎名無しさん:2015/05/12(火) 00:42:23 ID:???
ヘンなファンを世界中から掻き集める程度の能力

522 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/12(火) 00:52:02 ID:???
しかし、今ここで霊夢の説得を聞き入れた魔理沙は、
まるで憑き物が落ちたかのように、朗らかかつ熱心にミーティングを先導している。
そんな魔理沙の姿を見ていた霊夢の口元は緩んでおり、どことなく安心しているように森崎には見えた。

魔理沙「……………」

森崎「………ん?」

ふと、森崎と魔理沙の目が合った。彼女は森崎に対して、こう問いかけているように見えた。

――どうする。お前だったら……?

森崎はそんな彼女の強さの中に不安が見え隠れた表情を見て鼻で笑った。
彼はじっとり目線を飛ばして、こう答えてやる事にした。

――俺はお前みたいなヘマはしないよ。一緒にすんな、バーーーーカ。

魔理沙の返答は森崎にはどうでも良かった。
彼はもう既に、先程おぞましいまでの殺気を向けて来た勇儀のシュートをどう受け止めるか。
どうやって挑発して、あの偉そうな大女の角を、いや鼻を明かしてやろうかとウキウキしていた。
森崎はこの時、霊夢の魔理沙に対する説教を横で聞きながら、
自分は決して魔理沙のような惨めな目には遭いたくない。いや、決して遭わないと根拠も無く確信していた。


*****


中山「(凡人が凡人の限界を越えた代償による、身体の崩壊か……)」

一方で、永琳の話を聞いた中山は。
彼のとある親友の姿を先の不幸な少女と重ね合わせ――口に出来ぬ不安を覚えていた。

523 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/12(火) 00:53:54 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
>>521
かぐや姫特有の男を寄せ付ける魅力ですね(違)

それでは皆さま、本日もお疲れ様でした。

524 :森崎名無しさん:2015/05/12(火) 08:37:33 ID:???
霊夢さんの姫様に対するイメージが(笑)
変なファンを世界中からかき集めるくらいとか
ゴールを冥王星に投げたりしただろ、いい加減にしろ!

乙なのです

525 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:37:11 ID:???
こんばんは、更新を再開します。
随分とNPCシーンが長くなってしまい申し訳ないですが、たぶん次回か次々回の更新には終わると思います(汗)
>>524
乙ありがとうございます。ゴールを冥王星は忘れてました(爆)
実際問題、ゴールをブン投げる腕力があれば一人でもかなり凄いGKな気がしますね。

526 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:40:16 ID:???
――ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

そして後半戦のホイッスル。
博麗連合のキックオフから始まる後半戦だったが、
派手好きの魔理沙は『ファイナルスパーク』をのっけからぶちかます……という事はしなかった。
得意の直線的かつ『強引なドリブル』で地霊殿の中盤を突破しつつも、最初に言った作戦通りに、
アリスや針妙丸と言ったサイドの駒にもしっかりと頼り、独断専行はしない。

さとり「(――流石に50メートルもの距離だと不利と踏んだのか。
それとも、単純に体力を温存しているのか。この距離だと心は読めないけれど……何となく不気味ね)」

魔理沙「一旦頼むぜ、アリス!」

バシッ……!

アリス「はっ。ま、魔理沙!? 私の事覚えててくれたのね!」

魔理沙「当たり前だろ。そりゃあ最近、忙しくて冷やかしには来てないけど……でも。
私たち、何だかんだで友達だろ?」

アリス「魔理沙…………それ、って……!?」

そして後半5分、魔理沙は大きく上がってアリスにスルーパスを要求する。
この時アリスはプライベートな事情で舞い上がっていたが、それを邪魔する影もあった。

――タッ。

松山「あにきぃ……こいつ、友達なんかで喜んでるよ? バカだろ? どうせ裏切られるのにさ!」

アリス「――貴女は、何も分かっていない……!」

グワァァッ、バギュン!

527 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:41:36 ID:???
実況「アリス選手パスを出した! これはもしや〜〜〜〜!?」

松山「分かるさ。お前も俺達と一緒に地獄に堕ちる事でしか幸せになれない。
今謝って俺達の仲間になるっていうなら、兄貴の旨い麻婆豆腐を食わせてやるぜ? ……それっ!」

バァァァッァッ!

実況「後半戦、矢車選手から交代した松山選手がパスカットに出た!
この広いスペースを使った上手いパスカットは矢車選手には無い、彼だけの必殺技!
素晴らしい精度を誇りますが……!?」

アリス「――魔理沙がこの先私を裏切ったとしても、裏切る前までは友達で居てくれた。
こんな贅沢な事実に、貴方達兄弟はどうして満足できないのかしらっ!?」

パァァッンッ!

松山「なっ、ボールが更に跳ねた!?(そして……こいつはもしかして。俺達以上の地獄を味わったというのか……!?)」

実況「やはり、やはりアリス選手の二段スピンパス、『アーティクルサクリファイス』には敵わない!
幻想郷でも一級のパサーであるアリス選手のパスは……ペナルティエリア前の魔理沙選手に渡ります!」

魔理沙「いや……別に私は裏切らないからな? 本やらマジックアイテムやらを返す約束は多分裏切るけど。
まぁいいや、折角の得点チャンスだ!!」

グワァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

霊夢「………魔理沙」

魔理沙「……分かってるって。私は理のある勝負を捨てる程バカじゃない。さっきのが特例だ。
だからここで決めてやるよ! 恋符……『マスタースパーク』ッ!」

バッ、ゴオオオオオオオオオンッ!! ――ビイイイイイ………ンン!!

528 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:44:00 ID:???

さとり「(さっきのシュートとは違うけれど、やはり凄い威力……!)――止めます!」

バッ!

魔理沙はここで、霊夢との会話通りに、ペナルティエリア外で『マスタースパーク』を放った。
元々レミリアの『マスターオブレッドサン』にも並ぶと評された威力の元祖必殺シュートは今も衰えず強い。
先程の『ファイナルスパーク』とは比べては大きく劣るが、それでも充分さとりの守るゴールを抜くには充分。
現に、そのシュートはすでにブロックに出ていたこいしやキスメをふっとばし、さとりの鼻先にまで一瞬で近づいて――。

――ドガッ! ……グッ、ググッ……。 バァァァァァァァアッ!

さとり「……と、め……られない……!?(――そんな! 辛うじて防げると思ったのに……!!
これが、追い詰められた主人公の力だと言うの………!?)」

ズバァァッ、ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

――そして、全力のパンチングに出たさとりを吹き飛ばして、呆気なく魔理沙は2点目を決めてしまう。
無論、『呆気なく』とは傍目から見た印象であり。
実際にボールを受け止めたさとり達は、それ以上の運命めいた意志の力を感じていたが。


博麗連合2015 3 − 0 地霊殿サブタレイニアンローゼス

529 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:45:24 ID:???

針妙丸「おおーっ。やったね! やっぱり霊夢の言う通りだ!
ちゃーんと頭を使えば、ヘンな新技使わなくってもゴールは充分決められるんだね!!」

魔理沙「………ああ。そうだな」

異変後に博麗神社でお世話になっていたからか、チームの中でも取り分け霊夢派の針妙丸は、
魔理沙のゴールを霊夢の冷静な説得のお蔭だと考えているようだった。
そんな単純な小人の頭を魔理沙はやや雑に撫でつけると、静かな笑顔で仲間達の方へと向かっていく。

霊夢「………………ちょっと、まり」

霊夢は暫く、そんな魔理沙の落ち着いた様子を寂しげに見つめていた。
そのおり、魔理沙が自分に対し手を高くに差し出す――ハイタッチを求めている時に、
霊夢はふと言葉を出そうと声を挙げる。その時だった。

――ドゴオオオオオンッ! バリバリバリバリバリバリッ!!

霊夢「……な、何ごと!?」

大地が真っ二つに裂ける勢いの地響きと、天が落っこちてくるような勢いの雷鳴で、霊夢の小さな声は掻き消された。
代わりに、そのフィールドに巻き起こった台風の目となった背の高い女はこう言った。

勇儀「そうか! やーーーっと思いついたぞ!! ああすれば、あの森崎とやらを殺せるのか!!」

530 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:49:10 ID:???
先程の天変地異は、鬼の四天王たる勇儀が唐突に挙げた叫び声だったようだ。
物語に示されたとおり、鬼は吐息で天を凍てつかせ、怒声で地を砕くのが常識ではあるが、
常識外れの大鬼は、感嘆符一つで天地をひっくり返す事ができるらしい。

萃香「ちょっと勇儀、メーワクだよメーワク。観客さんが百人単位で、ショック死してるじゃないか」

勇儀「なにィ? たったの百人程度誤差だろうに。私らが居なくなったせいで、地球には人間が何人になったと思う?
70億だよ70億。そのうちちょっと死んだところで、世界は変わりゃしないさ。
――あと誤解の無いように言っとくと、観客は気絶しただけで死んでないからな」

ウサギC(観客席)「ガチで死んでたらネタでもシャレにならないからね〜……」

ウサギB(観客席)「誰に対して言ったの、Cちゃん?」

萃香「あれ、そうだっけ? 嘘ついちゃったなー私。たはは」

勇儀「全く、お前さんは昔から嘘を吐くから良く無い。鬼たるもの、嘘を真実にする位やってみせなよ」

萃香「駄目だよ。若島津健は強靭な精神力でスクラップの妖怪として存命してるし、
河城にとりは緊急脱出ポッドで月まで逃げたからたぶん無事だ。この物語で人死には絶対に出ないし出させないよ。
……これだけは、鬼の矜持に従って誓う」

勇儀「全く、萃香も甘くなったモンだねぇ。まあ、それも一興か! 血の溶け込んだ酒は旨く無いからねぇ!」

531 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:50:57 ID:???

霊夢「っていうか。そんな簡単に人を殺しでもしたらマジでボコすからね。
アンタら鬼が軽く騒いだだけでも、こっちとしては大異変だから」

……そして、霊夢の冷静なツッコミがスルーさてしまう程に、鬼達の会話は更に非常識かつ雲上の世界だった。
人間にも分かるように翻訳すると、勇儀は宣言通り森崎を殺し得る新技をたった今思いついたらしい。
そして、この次のキックオフ以降でその技をやる、とのことだった。

森崎「(……まあ、殺すは流石にジョークだと思うが。これだけ大口叩いてる奴のシュートを防いで、
逆にヤツらを嘘つき呼ばわりするのも悪くねぇか……)」

――そして、自分のあずかり知らぬところで、大々的に殺害予告が行われているにも関わらず。
引きながらもこうして挑発文句を既に考え始めている森崎は大物だった。
……もっとも、そんな彼でさえ、『鬼は嘘を吐かない』という基本的な妖怪のルールを失念しており、
そして、星熊勇儀はそんな鬼の中でも最も嘘が嫌いな部類であるという事までは知らなかったようであるが。

勇儀「……早くキックオフしようぜ。もう待ちきれないよ。早くボールを出しとくれ」

静かな殺気を審判に漂わせ、勇儀はキックオフを催促する。
古明地さとりは霧雨魔理沙に敗北した。しかし。星熊勇儀と森崎有三の勝負は、これから始まったばかりだった。

532 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:54:45 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
勇儀姐さんがかなり物騒な事を言ってますが、スケールのデカい冗談(嘘とは言ってない)という事で大目に見てくれれば幸いです。
多分本人もそこまで殺す気はありません。……たぶん。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

533 :森崎名無しさん:2015/05/13(水) 00:58:11 ID:???
乙です。
とうとう予告殺人シュートの使い手が現れるのか・・・
レヴィンシュートの強化版かな?

534 :森崎名無しさん:2015/05/13(水) 20:44:13 ID:???
ファイナルスパークマイルドの開発を急ごう

535 :森崎名無しさん:2015/05/13(水) 22:01:32 ID:???
>この物語で人死には絶対に出ないし出させないよ
でも中西くんは死んだよね…w

536 :森崎名無しさん:2015/05/14(木) 21:53:47 ID:???
>河城にとりは緊急脱出ポッドで月まで逃げたからたぶん無事だ
ブローリン「どこへいくんだぁ?」
にとり「ひゅいいいいい!!ぶ、ブローリンくんと一緒に避難する準備だよぉ…」
ブローリン「一人用のPODでかあ?」

537 :森崎名無しさん:2015/05/14(木) 23:36:30 ID:???
ファイナルスパーク撃てるようになるまで筋肉をつけよう
そして上位技のマッスルスパークを習得するんだ

538 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:32:22 ID:???
こんばんは、昨日は忙しかったので更新できませんでしたが、
今日は暇が空いたので更新します。今日も文章のみです。明日はちょっと選択を出せるかもです。
>>533
乙ありがとうございます。
そういえばキャプ翼原作の時点で、レヴィンが赤井とかの名前プレートにシュート撃ちこんでましたね…w
シュートは純粋に威力系ですね。
>>534
もうちょっとだけかかりますね。亀仙人的な意味で。
>>535
物語の始まる前に死んでたという事でひとつ…(汗)
鬼はウソ付きじゃない、まちがいをするだけなんです。
>>536
緊急時にまで人間と一緒に避難する準備を整えるにとりは盟友の鑑ですね。

539 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:34:23 ID:???
ピッ、ピリョッ、ピィイィイイイイッ……!

そして、審判は鬼の威圧に怯えながらも勇気を出してホイッスルを鳴らした。

勇儀「どきな、森崎の前座ども! 怪輪「地獄の苦輪」ッ!」

ダッ、ドドドドドドドドッ……!!

魔理沙「誰が前座だ! そっちこそ喰らえっ、魔符・『スターダストレヴァリエ』!!」

ズザアアアアアアーーーッ!

勇儀「やるねぇ、死をも恐れぬその猛進! だけどね――今のアンタじゃ、私には勝てないよ!」

ドッ……ゴオオオオオッ!!

魔理沙「ぐっ……!」

小町「ああっ、魔理沙! くそっ、あたいがフォローでなく、タックルに行ってたら……!?」

衣玖「(最初からスタスタ逃げてたクセに、良くあんな事が言えますね……)」

勇儀は森崎をさっき閃いた新シュートで殺すという、様々な意味で前代未聞の予告通り、
魔理沙の鋭いタックルをかいくぐり(小町がフォローと称してサボってなかったら奪われていただろうが)、
猛然とフィールド中盤を突破していく。

アリス「(――新シュートとやらは、『三歩必殺』のような長距離の踏み出しが不要なのね。厄介そう)」

霊夢「くっ……! 相変わらずの怪力バカね! でもね、その位のドリブルだったら……!!」

勇儀「バカはそっちだよ、巫女! 生憎と私は戦う事も好きだが――勝つことも好きだからねッ!」

540 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:35:41 ID:???

森崎「おいおい……お約束なのか? こういう時にフィールダー連中がこぞって使えないのはよ!」

グッ!

萃香「良かったな、森崎! 勇儀があんなに楽しそうな顔してたの、久しぶりに見たよ。
こりゃあ私もお邪魔になるかな……とか、なんてね。私も仲間に入れてくれよ!!」

バッ!!

天子「あっ。私も仲間外れにしないでよね!」

タッ……!

森崎「ちっ。勝手なヤツラめ。ちょっとは緊張感を持てよ……」

このお燐の突破を前に、残された森崎以外の博麗連合のDF陣も、
来たるべき未知の大型シュートを前に士気を高揚させて各々ブロックへと向かう。
そしてお燐がソツの無いパスで衣玖のパスカットを掻い潜り、勇儀の足元にボールを運ぶと、
周囲の緊張感は爆発的に増した。

勇儀「ようし。これでお膳立ては整ったね」

森崎「何言ってやがる、口でベラベラと。弱いヤツこそ強さを口で説明したがるモンだぜ」

勇儀「あっは。流石は森崎! 良い事を言うじゃないか……!」

ペナルティエリアの手前で森崎と勇儀は対峙する。
萃香や天子のような周囲の優秀なDFすら、その二人を包む異様な闘気に割り入る事ができない。
永遠にも近い一瞬が流れた後、勇儀はその右脚を大きく振り抜いた。

541 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:40:36 ID:???
                    ――――グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

                   実況「勇儀選手大きく右脚を上げた! これは一見すると、
             燃費と使い勝手はともかく威力は劣る、『大江山嵐』のフォームにも見えますが……!?」

               さとり「(勇儀さんの新技とやらの理屈は、ハッキリ言ってメチャクチャでした。
          あんなのを初見の思いつきで成功させるなんて、彼女じゃなければ妄言としか思えないけれど……)」

                       ――グルウウウウウウウウウンッ!

               さとりを始めとする地霊殿サブタレイニアンローゼスの面々の心配をよそに、
             勇儀は普段通り左脚を軸にして、回し蹴りの要領で右脚をグルンと一周させていく。
                    ここまでは実況の言う通り、『大江山嵐』と全く同じ動き。
            確かに強力なシュートであるが、それで森崎の守りを突破するのは難しいように思える。
                          ――だが、そこからが違った。

                      グァァァッ!――グルウウウウウウウウウンッ!
              ――グルウウウウウウウウウンッ!――グルウウウウウウウウウンッ!
                ………ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

             勇儀は一周の回転を終えた後……シュートに行かず、更に回転を繰り返し始めたのだ。
                     倍速、三倍速、四倍速で、二度、三度、四度――。
                 やがて鬼が繰り出す回転は竜巻となってフィールド上に聳えたった。

542 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:42:06 ID:???

         勇儀「――『三歩必殺』は三歩の踏み出しが必要で、キックオフやフリーキックじゃないと撃てない!
         一方『大江山嵐』は即座の回転からシュートを放つから、そこまで高い威力を出す事はできない!」
                ならば簡単! その二つの利点を総取りすれば良いんだ! 見てな森崎!!」


                                 ド    ン!

                               ド        ン!!


           その後、竜巻に囚われて高空数百メートルに飛んだボールに向かって、勇儀は大きくジャンプ。
           そして発生した上昇気流に乗って勇儀は空気を踏んで一段、二段と大気を踏み固めながら、
                        空気の階段を宇宙に向かって跳んで行く。

                    森崎「……こいつ、何やってるんだ。 バカか? バカなのか?」

     萃香「――成程ね。確かにそれなら誰も邪魔されない上に、威力の減衰も問題にならない。勇儀も中々頭が回るね」

            勇儀の周囲で酸素が燃え、モリヤスタジアムのフィールドの一部に真っ黒な穴が開く。
               そんな中、真っ白い一陣の光の筋が天からゴールに向かって舞い降りた。
                   それは雷というよりは、天からの裁きと表現する方が正確だった。

                 勇儀「これが私の新兵器! 倍速トルネードで竜巻を発生させ、
               横軸ではなく縦軸に向かって三歩を踏み出し蹴り抜いた新・四天王奥義。
                      名付けて……『零歩必殺嵐』だーーーーーーーッ!!」

                           カ              ッ!

543 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:43:16 ID:???


                ドゴオオオオオン! バギュウウウウッ!!ドッゴォ!
          バリバリ!!   バリバ リ!!ドッゴォオオオ オオオオオオオオオオンッ!!
          ドゴォリバグギャ  グ           ギャグギャワワアアアアアアアアン!!!
              グォォ    ォォォォ    ォォオオオオ!!!!!!!
                         リバリバリッ!ゴゴゴッ! グシャアアアアアアア!!!!!
              バシュウウ ゴゴゴゴゴゴウウウウウウウウウウウッ!!バリバリ!!!  
              ュウウウウア!!! ャグギャグギャグギャワワアアアアアアアアン!!!
               ボオオオオオオオオオオン!! チュドォオオオオオオオオオオオオオオオン!!
        ギャアアアアアアアアアアアアアッ! ギュウウウウウウウッ! ドゴオオオオオオオウウウウウ 
          グギャグギャドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
                      ドドドドドドドドドドドドドド
               グギャグギャグギャグギャグギャワワアアアアアアアアン!!!
                  ボオオオオオオオオオオン!! チュドォオオオオオオオオオオオオオオオン!!
                         ウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!バリバリ!!!  
                      ュウウウウウウウウウ       ウウウウウウウウウッ!!
                     グギャグギャグギャグギギャァァァアッ!!

544 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:44:28 ID:???


光が煌めいてから数秒後に、耳をつんざく轟音が走った。
地球上の兵器を全て爆発させたかのような慈悲無き威力のシュートが、狙い違わず森崎の頭上へと落ちて来る。
光の中で、重力波を纏いブラックホールと化したシュートはどす黒い。

天子「ふ、ふん! この程度じゃないと面白く無いわね! この私がブロック……できないっ!?」

萃香「『ミッシングパワー』ーーーッ! ……じゃ、やっぱり力不足か。くそっ!」

ゴゴゴゴゴゴゴッ……! ドオオオオオオン!!

ブロックに向かった博麗連合のDF――天子と萃香は幻想郷でも指折りの実力者であるにも関わらず、
竜巻と熱線と重力波の三重苦が伴う地獄のシュートに全く太刀打ちできなかった。
ブロックを試みるも、その外周で阻まれて大きく吹き飛ばされてしまう。

お燐「(マジで初見の思いつきで、こんなの決めちゃうなんて。やっぱり鬼はヤバイよ……)」

松山「あーあ、いいよなぁ……才能があるヤツは。どぉせ俺なんか……」

小町「いやー、あたいはFWで良かったなァ。あんなシュート御免すぎるよ」

針妙丸「わ、私がブロックに出てればアイツ(勇儀)の目をちくちくして邪魔できたのに〜!?(※反則です)」

地霊殿サブタレイニアンローゼスのメンバー、博麗連合のメンバーともに、
その信じがたい威力のシュートを眼の前に恐れるしかなかった。
太古から人と共にあり、単純にその圧倒的な力のみで人に恐怖を齎して来た鬼の全力は、それほどの物だった。
ただし、例外も三名程居た。

545 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:46:00 ID:???

魔理沙「(……! 私の『ファイナルスパーク』と、大して変わらない威力だ……!
いやむしろ、コンディションによっては私の方が上かも……!!)」

身を滅ぼす危険と引き換えに、勇儀にも負けない超絶的な威力を秘めたシュートを持つ主人公・霧雨魔理沙。

霊夢「(……なんか。止まるような気がする)」

未来予知的な勘により、シュートの行く末を何となく察知してしまった天才・博麗霊夢。
そしてもう一人。

森崎「……よし! ここで止めてあのデカブツ女に恥をかかせてやる!!」

――極めて幼児的な理由だが、しかし油断ならないまでの執念さで、数多のシュートを防いで来た覇王・森崎有三。
辞書にある不可能という文字を黒塗りして唾を吹きかける度胸の持ち主である彼は、今頃この程度のシュートで諦めはしない。
彼は宇宙からボールが降り注ぐまでの三秒間でシュートの最終的な威力を分析し、そして最善手を考え付き実行した。

森崎「(時間が無いから超モリサキにはなれん。だが、良く見たらあのシュートは相当な見かけ倒し!
大気圏で燃え尽きて、地上に来る頃にはボールは真っ黒焦げだから、シュートコースは読みやすい!
威力も大気との摩擦で幾分削られている筈だ! だから威力的には前の『三歩必殺』と互角だろう!
この程度――!)そう何度も。いや、一度たりとも抜かれて堪るか……!」

バンッ!!

森崎は天高く飛んだ。シュートの閃光が森崎の天井にまで来ている。
そのまま両手を大きく伸ばした。彼が得意とする体力を消耗した全力のキャッチ――『がんばりセービング・改』の構えである。
数千度で燃え盛る太陽は熱く、愛用のキーパーグローブを少し焦がしてしまったが――それでも、森崎はめげない。恐れない。
むしろ、代わりに敵の喉笛にでも食らいつかんとする勢いである。
そして、星熊勇儀が世界一のストライカーだとしたら――この森崎有三は世界一の負けず嫌いだった。

546 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:47:52 ID:???
――カッ! バリバリバリッ!!

森崎「何が鬼だ! 何が最強のシュートだ! こんなものは……この俺が、防いでやるッ!!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
      ………メキ、メキメキ……!

森崎「ぐううっ……!(こ――腰が……!)」

空中で最後にひときわ大きな振動音。そしてそのすぐ次の瞬間。

勇儀「……なにィ?」

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
                            ―――ドサッ……ポロリ。

――空中で起きた天変地異は全て雲散霧消し、代わりに森崎が天から落ちて来た。
今やすっかりその威力が喪なわれたボールと同時に。
それはつまり、森崎有三が、星熊勇儀の全力の必殺技を真正面から防いだ事を意味していた。
観客達は暫くその意味に気付けず、ポカンと静まり返っていたが――。

――ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

すぐに、歓声が爆発した。

実況「な……なんとこれは! 凄い! これは……! 防いだ! 防いだ、防いだ〜〜!!
森崎選手がゴールを止めた〜〜〜!!
柔軟な体をバネのようにして、もはや一種の魔法か妖術染みた精神力を使った最強のセービング。
『がんばりセービング・改』により、星熊勇儀選手のシュートは弾かれてしまいました〜〜〜!!」

観客「な、なんだなんだなんだ〜〜!?」「アイツ、人間の分際で……!」「本当に人間か、アイツ!?」
「天才だろうな、少なくとも」「もっりさき! もっりさき!!」「もっりさき! もっりさき!!」

547 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:53:37 ID:???

――森崎は地面に大の字に寝そべって軽口を叩きながら、
暫くは自身に振りかかる声援のシャワーを浴びて、心地よさそうに目を閉じていた。
ボールは自分の忠実な同僚である中里が、しっかりと前方へとクリアしていた。

勇儀「フフ……! 決められなかったのは悔しいが、森崎有三! 私はアンタに惚れ直したみたいだ。
今まで小細工を使って私の全力を防ぎに来た人間は腐るほどいたが、
まさか真正面から破りにいくのはアンタが生まれて初めてだ!
私は嘘は吐かん。だからいつかアンタを殺さなきゃいかんのが辛いが……! でも、とても楽しみになって来たよ!」

森崎「フン、負け犬が良く吼えるぜ。殺すなら今でも俺の首を捻れよ。簡単に殺せるぜ?」

勇儀「馬鹿にしないどくれ。力も才も無いにも関わらず鬼を正面から打ち負かした尊敬すべき相手、そう簡単に殺せるか。
私がアンタを殺る時は、互いに全力を出せる場――サッカーの試合中の攻防の時だけだ」

タッ……。

勇儀はそう森崎に言い残して、守備へと向かっていく。
森崎はそんな潔い勇儀の台詞すら見下すように、寝そべったままフンと鼻で笑ってみせた。
当初の望み通り、勇儀に恥をかかせる事は出来たか微妙ではあるが――それでも、不思議と悪い気はしなかった。

548 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:57:53 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
明日こそ試合が終わり、聖徳戦にかかるイベントも入れられればと思っています。
>>537
マッスルインフェルノとマッスルリベンジャーも覚えないといけませんね…w
というかヘタしたら筋肉鍛えても心臓病で死にそうです。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

549 :森崎名無しさん:2015/05/15(金) 01:05:28 ID:???
気のせいかもしれませんが、>>539>>540の間に勇儀のパス、お燐の突破あたりの描写があるような気がするのですが
勘違いでしたらすみません

森崎君も勇儀さんも魔理沙さんもすごいな
距離補正なしの三歩必殺、同威力のファイナルスパーク、それを止める超化なし森崎
鈴仙「……主人公、私よね?」

乙なのです!

550 :森崎名無しさん:2015/05/15(金) 08:46:51 ID:???
森崎、モテモテすぎてそのうち刺されるんじゃね?アリスさんあたりに
乙ロット!

551 :森崎名無しさん:2015/05/15(金) 20:54:01 ID:???
ボールを宇宙に出した。ボールをスペース(宇宙)に出した。

552 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 22:54:28 ID:???
こんばんは、今日は少しだけになりますが更新します。
>>549
乙ありがとうございます。
これまで博麗チームについてはラスボスチームであるにも関わらず描写があまりなかったので、
ちょっとくどいかな? と思われても良いからやや多めに書いていますね。

鈴仙のターンはもうすぐ来るのでもう暫くお待ちください。
ちなみに描写からはとても信じられませんが、これでも鈴仙の『インビジブルデューパー』の方が
勇儀や魔理沙のシュートや森崎のセービングより強いです(びっくり)

文章についてはすみません、一部凡調かと思い描写を削った箇所があったのですが、
上手く治ってませんでした。次レスで修正版を投下します。
>>550
乙ロットありがとうございます。異世界ファンタジーによくあるハーレムものですね(違)
いや、ある意味正しいのかもですがw アリスさんが報われる日は来るのでしょうか。
>>551
空いたスペースを大事にするという、近代サッカーの理論を大事にした必殺技でしたね。

553 :>>540修正版@鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 22:56:40 ID:???
グワァァァッ、バコッ!

お燐「ほい来た! そんなら、あたいはあたいの仕事をさせて貰うよっ!」

タッ! クルンッ…! シュババババッ!

アリス「――くっ。全然都会派な動きじゃないわね!」

衣玖「わ、私の『龍魚ドリル』だったら……いや! ボランチの位置だとこれは、ギリギリ届かない……!?」

実況「勇儀選手、霊夢選手からは逃げのパス! 堅実にボールをお燐選手に繋ぎ……!
――そして、自慢のサイド際での必殺ドリブルでアリス選手や衣玖選手を翻弄!
あっという間にバイタルエリア付近へとボールを運びました〜!!」

森崎「おいおい……お約束なのか? こういう時にフィールダー連中がこぞって使えないのはよ!」

グッ!

萃香「良かったな、森崎! 勇儀があんなに楽しそうな顔してたの、久しぶりに見たよ。
こりゃあ私もお邪魔になるかな……とか、なんてね。私も仲間に入れてくれよ!!」

バッ!!

天子「あっ。私も仲間外れにしないでよね!」

タッ……!

森崎「ちっ。勝手なヤツラめ。ちょっとは緊張感を持てよ……」

554 :>>540修正版その2@鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 22:58:24 ID:???
このお燐の突破を前に、残された森崎以外の博麗連合のDF陣も、
来たるべき未知の大型シュートを前に士気を高揚させて各々ブロックへと向かう。
そしてお燐がソツの無いパスで衣玖のパスカットを掻い潜り、勇儀の足元にボールを運ぶと、
周囲の緊張感は爆発的に増した。

勇儀「ようし。これでお膳立ては整ったね」

森崎「何言ってやがる、口でベラベラと。弱いヤツこそ強さを口で説明したがるモンだぜ」

勇儀「あっは。流石は森崎! 良い事を言うじゃないか……!」

ペナルティエリアの手前で森崎と勇儀は対峙する。
萃香や天子のような周囲の優秀なDFすら、その二人を包む異様な闘気に割り入る事ができない。
永遠にも近い一瞬が流れた後、勇儀はその右脚を大きく振り抜いた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
と、言う風に>>540を脳内変更して頂ければ幸いです。(2レスになってしまいましたが)
次レスから、昨日の続きを投下させて頂きます。

555 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:07:21 ID:???
星熊勇儀の豪快な新技は、森崎有三という謎の男のセービングにより破られた。
――そんな衝撃的な幕切れと共に、試合終了を待たずして、互いに矜持を持つ者同士の戦いは終わった。
『どのタイミング・場所からでも撃てる三歩必殺』という破格の新技・『零歩必殺嵐』すら破られた
地霊殿サブタレイニアンローゼスの士気は、口に出さずとも大きく落ちていた。

天子「ふっふーん! このまま『気炎万丈の剣』でバラバラに引き裂いてやるわ!!」

グワァァァッ、ドドドドドドドド、ドゴオオオオンッ!

さとり「……キスメさん、頼みます!」

キスメ「……!!」

ヒュ〜〜〜〜ッ、ガイーーーーンッ!!

天子「ちょ、ちょーーーい! なんで私のシュートが釣瓶落としに防がれるの〜!?」

実況「――後半28分、辛うじて弾かれた針妙丸選手のシュート『輝針剣』に対し、
勝手に後ろで張り付いていた天子選手がねじ込みに向かいましたが……これは通じない!」

――とはいえ、地霊殿もある程度は奮戦した。
確かに、中盤の支配力の差、そして勇儀やお燐、松山等主力選手の疲労もあって、
地霊殿サブタレイニアンローゼスのボール支配率は悲惨な事となっていた。
しかし、ゴールキーパーの古明地さとりは持ち前の精神力とリーダーシップで守備陣を鼓舞しており、
今のようにペナルティエリア外から飛んで来たミドルシュートであっても、仲間と連携して守り失点を回避していた。

556 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:08:55 ID:???

空「勇儀さんのカタキー! くらえっ、『核反応制御不能ヘッド』ォーーーー!」

森崎「無駄だと……言ってるだろうが!!」

バァァァァッ、バシイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

ただし、地霊殿が誇る高火力のFWは、いよいよ顕在した森崎の守備力の高さに依然苦戦していた。
空のシュートとて勇儀には劣るものの、並のチームではエース格の攻撃力を誇るにも関わらず、
森崎はその全力すら出さず、『がんばりダイビング』の多用で容易く切り抜ける。
無論、体力面の不安は各技のあまりの無茶な動きから容易に想像できたが……。

勇儀「もう一度決めてやるよ! この私の『零歩必殺嵐』で……」

萃香「甘いね勇儀!」

ジャラッ、ズザアアアアアアアアアアアッ! ポロッ!

勇儀「――な。これは『鬼縛りの鎖』! くそっ萃香、私にシュートを撃たせんとは卑怯だぞ!」

萃香「何言ってるんだ。こっちは限られたルールの中で全力を尽くしたまで。
誇りを捨てずとも、もうちょいと気楽に行きなよ、勇儀はさ!」

――森崎を支える博麗連合の守備陣もまた優秀。
ブロック一芸だけでなく、最低限以上のタックル技術と技を持つ萃香が勇儀をマークし撃たせず、
空へのセンタリングは中里が『縮地法』『韋駄天の術』などのパスカット技を発揮し通せない。
また、天子も攻めッ気たっぷりな所は玉に傷であるが、優秀なタックラーかつブロッカーである。
故に、手数で森崎を削る事や、一対一を挑む事すらも相成らない。

557 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:11:16 ID:???
中盤は完敗。守備は辛うじて守るが、攻撃が振るわない。
そうしたジリ貧の状況が十分、二十分と続き――そして、後半ロスタイム。

霊夢「――魔理沙! ……お願いね」

バシュッ! ギュルルルルルルルルルルルルッ!

実況「出た〜! 霊夢選手自慢の、受け手に向かって追尾する必殺パス!
その性能から『博麗アミュレット』とも称されるホーミングパスを、魔理沙選手が受け取りました!」 

魔理沙「……もう一発食らえ! これが私の……『マスタースパーク』だ!」

グワァァァッ、ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ! ビイイイイイイ………ンン!!

キスメ「……!」

ドガァァァッ!

ヤマメ「ちぇーっ。またひよったシュート? 最初のヤツでやれよー? ……ま、吹っ飛ぶんだけどさ」

バゴオオオッ!

こいし「ふふふ。あなたの無意識、面白いね!」

バゴオオオオオッ!

さとり「こ、こいし。皆……!(――距離は27メートル程度。私から魔理沙さんの心の声は聞こえない。でも……)」

―――ドゴオオオオオオオオオオオオッ! ズバァァァァァァァッ!!

558 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:38:02 ID:???
魔理沙は霊夢のパスを受け、再度『ファイナルスパーク』ではなく『マスタースパーク』を放った。
この時点で、魔理沙だけで無く針妙丸や天子、
稀に霊夢のミドルシュートを幾度と受けていたさとりは疲労していたため、
今大会全体ではややパッとしない威力の『マスタースパーク』でも、充分有利な勝負という事は明らか。
そのため、運でも気力でも何でもなく、さとりがこうして吹き飛ばされるのは必然だった。

――ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!
ピッ、ピッ。ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

魔理沙「……うん、よし。 ……やったぜぇぇぇぇっ!!」

4点目のゴールと試合の終了を告げるホイッスルが鳴り、
魔理沙は彼女らしからぬ小さな声でそう呟いた後、大きく叫び直した。
その顔は一瞬だけ曇っていたが、すぐにいつも通りの傍若無人で大胆不敵な満面の笑みに変わっていた。
魔理沙のこの微妙な表情の変化は、あまりに一瞬だったが――それに気付かぬ者も居ないでもない。
その一例が、魔理沙のすぐ近くで無表情ながら敗北感を噛みしめていた、覚妖怪の少女だった。
さとりは魔理沙から比較的近くの距離でゴールを守っていたため、彼女の心の一端を読む事ができていた。

さとり「……魔理沙さん。貴女は今ゴールを決めた時、嬉しそうではなかった」

魔理沙「………」

さとりは魔理沙とすれ違いざまにそれだけ伝えた。魔理沙は黙って何も答えなかった。
その明るくも虚ろな目線の先には、先程自分をアシストしてくれた巫女の姿が映っていた。
彼女の姿を見て、この金髪の小柄な少女は何を想ったか。

さとり「(『私は、霊夢と並び立ちたかったのに……』――ですか。
彼女にとってはやはり、あの努力の成果である『ファイナルスパーク』こそが、大きな心の拠り所だったようね……)」

さとりは敢えて、魔理沙が何を想っていたかを口に出すのは避けるようにした。
それを伝えたら、彼女の中の何かが修復不可能なまでに壊れてしまうような気がしたからだ。
そのまま、さとりは敗者に相応しくとぼとぼと自チームの控室へと戻って行った。

559 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:45:59 ID:???
霊夢「(――これで……良かったのよね)」

そして、心を読まずとも魔理沙の心境などお見通しの者は無力だった。
彼女は魔理沙の心の中身を知ってなお。
それとは無関係なごく当然かつ一般的な理を、自分の中で何度も繰り返す事しか出来なかった。


博麗連合2015 4 − 0 地霊殿サブタレイニアンローゼス 試合終了!


大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
12ゴール レミリア
11ゴール 鈴仙
9ゴール  フランドール、射命丸
8ゴール  魔理沙
7ゴール  勇儀
6ゴール  来生
5ゴール  屠自古、星、諏訪子
4ゴール  森崎、神子、反町、霊夢
3ゴール  早苗、謎の向日葵仮面
2ゴール  神奈子、ピエール、メルラン、天子、赤蛮奇、空、佳歩
1ゴール  妹紅、咲夜、美鈴、サニー、リリーB、ぬえ、響子、永琳
       影狼、藍、幽々子、幽香、針妙丸、パチュリー、小田、椛、岬

大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
6アシスト パチュリー、霊夢
5アシスト 小町
4アシスト てゐ、神子
3アシスト 早苗、ピエール、小悪魔、マミゾウ
2アシスト 森崎、反町、はたて、岬、空、お燐、ウサギB、レミリア、アリス
1アシスト 鈴仙、影狼、大妖精、橙、諏訪子、
       衣玖、針妙丸、リリーW、ルナサ、ぬえ、永琳、妹紅

560 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:55:50 ID:???
……と、いったところで今日の更新はここまでです。
皆様、本日もお疲れ様でした。

561 :森崎名無しさん:2015/05/16(土) 09:49:20 ID:???
乙でした。
さすがは主人公チーム。強い(確信)
森崎対策は、シュート連発なんだけど、まず削るのが難しそうだね。

562 :森崎名無しさん:2015/05/16(土) 15:33:17 ID:???
乙なのです
実際総合力は博麗の方が上だし、てゐをマークされて、中盤押し負けて支配されたら
シュートラッシュor一対一で完封+姫様炎上もありそう

563 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 21:44:11 ID:???
こんばんは、今日もほんの少しだけですが更新します。
>>561
乙ありがとうございます。
森崎の弱点については明白なので、そのあたりの対策はしてきますね。
決勝戦はずっと続いて来た第一部のクライマックスですので、それにふさわしい強敵になればと思います。
>>562
乙ありがとうございます。
博麗チームはかなり強いですが、実は中山さん加入+仲間の成長で、総合力的にはほぼトントンだったりします。
なので、サンパウロ戦レベルの引きでもなければ、そう一方的な試合にはならないと思います。

564 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 21:52:18 ID:???
鈴仙「――何と言うか。圧倒的な試合でしたね……」

永琳「そうね。でも……内容を見ると、地霊殿サブタレイニアンローゼスも決して悪くは無かった。
とりわけ、星熊勇儀はこの試合で大きく株を上げたでしょうね。
試合後半に見せたあの新必殺シュートは、霧雨魔理沙は勿論、レミリア・スカーレットにも真似できない。
彼女の全幻想郷選抜でのレギュラーは、ほぼ確定されたものね」

輝夜「あんなシュート、ウチらの試合中に思いつかれてたら今頃死んでたわよねー。ハハハ!」

慧音「笑ってみせるその豪胆さは尊敬するけれど。そんな恐ろしい想像、してくれるなよ……」

佳歩「それよりも、魔理沙さんのあの『ファイナルスパーク』。やっぱりもう使わないのかなぁ……」

ウサギB「もしも使われてたら、決定力は文句なしのSランクだろうけど。
少なくとも、もう無駄撃ちはしないと思うな。あの人間の魔法使い、意外と計算高いから」

中山「う〜む。パルスィさんにマンマークされていたから、
博麗霊夢……さんの出番があまり無かったのが少し残念だったか」

パスカル「にも関わらず、博麗連合は俺達がナカヤマ抜きとは言え3−2と苦戦した
地霊殿サブタレイニアンローゼス相手に、4−0で圧勝してしまったのは恐るべき事実だ」

試合終了後、鈴仙は観客席で永遠亭ルナティックスのメンバーと共に、試合の感想を口々に語り合っていた。
かつて苦戦した地霊殿サブタレイニアンローゼスの大敗は、ある意味では予想通りとはいえ、
メンバーに危機感と博麗連合というチームの強大さを教えるには充分だった。

鈴仙「まあ、とりあえず私達は明後日の準決勝も勝たないといけないんだけどね……」

しかし、博麗連合と対決できる権利を得る為に、鈴仙達はまず明後日の試合に勝利しなくてはならない。
全幻想郷選抜サッカー大会の決勝トーナメント準決勝戦。
謎と野心に満ち溢れた道士・豊聡耳神子率いる、聖徳ホウリューズとの試合の事である。

565 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 21:55:52 ID:???
鈴仙「(パチュリーさんを故意に負傷させたり、来生君を疑惑の反則で退場させたり、
果ては手下を使って、フィールド全体の雰囲気までをも混乱させる、恐るべきデマゴーグの扇動家!
妖夢はそれをも認めて、力の為に彼女達の軍門に落ちたけれど。
やっぱり、私は彼女達のやり方を理解はすれど、納得はできない……!)」

鈴仙とて、過去に軍人として多くの卑怯な兵法を学び、その必要性を学んで来た。
実際に自分が手を下した事もある。しかし、それでも今ここにある聖徳ホウリューズのやり方は納得できないでいた。
そこに明確な論理や理屈は無い。理を学んでも、どうしてもなんとなくそれを割り切れないのが、永琳には無い鈴仙らしさだった。

輝夜「ま! 疲れたし明日の事は明日考えましょ! 今日はもう解散ね!」

鈴仙がそう地面に向かって怖い顔をしていると、輝夜がパンパンと手を叩いて雑に解散を宣言する。
子どもの妖怪ウサギ達はそれを聞くと、真っ先にこぞって人里へと駆けだして行った。
佳歩から前に聞いたところによると、永遠亭のウサギ達は外出時の帰りに、
人里のオシャレな店やおいしい茶店へと寄るのが最上級の至福のひとときであるらしい。

鈴仙「(――もっとも、おこずかいは少ないから専らウインドウショッピングらしいけど。
やっぱりあの位の年の子だったら、ただ刺激があるってだけで楽しいのよねぇ……きっと)
――って、あっ!」

ドシン!

少年「おっと、これは失礼」

鈴仙「いえいえ、こちらからすみません(怖い人じゃなくて良かったなぁ……)」

自分がおらずともたくましく遊ぶウサギ達に何となく寂しい感じを覚えながらも、
鈴仙は未だ人混みの激しいモリヤスタジアムの観客席から出口に向かって歩く。
先程の少年を始めとして、当然の権利のように、鈴仙は道中で他人に三回ほどぶつかった。

566 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 21:58:12 ID:???

てゐ「ぷはー。やーっとこさついた」

つかさ「何回も人にぶつかっちゃいましたね。ひったくりとかが居ても分かりませんわ」

鈴仙「あははっ。つかさったら心配性ね。大丈夫よ、この私がひったくりなんか……に……?」

そうして、辛うじて人ごみを抜けた鈴仙はスタジアムの外で、
つかさの発言を軽く受け流すように、ポケットにポンポンと手を当てるが――。

鈴仙「……あれ。私のサイフが無いんだけど」

てゐ「うわー。やっぱり心配だなぁ、コイツ……」

パスカル「……おいおい。しっかりしてくれよ、レイセン?」

鈴仙「――う、うっさいわね。人が多すぎて、気付かなかったのよ」

鈴仙を白けた表情で見る者が数名。
そんな仲間達の薄情さに対抗するべく鈴仙は言い返すが、語気に力が入らない。
つかさが心配した通りか、それとも単純に道端にでも落としただけなのか。
その理由はともかくとして、今の鈴仙には金が無かった。

鈴仙「ゴメン、ちょっと探してくる!」

バッ!

てゐ「あっ、鈴仙! ……って、行っちゃった」

鈴仙は単身身を翻して、妖怪の山モリヤスタジアムの観客席へと戻って行った。
別に「ふわたり手形」くらいしかない古財布、見逃しても良いんじゃないかなぁ……と思いつつ、
てゐはそんな機転が効かない鈴仙を見送るのだった。

567 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 22:12:35 ID:???
そして結論から言うと、鈴仙の財布は簡単に見つかった。
さっき座っていた観客席に、柔らかい黒髪の、屈託のない少年が鈴仙を待っていてくれていた。
その片手にボロボロになった、人参柄の財布を持って。

少年「――やあ。待っていて良かった。落としていましたよ、これ」

鈴仙「……。待ちなさい。貴方は、いや、あんたは………!!」

その少年はまるで天使のように爽やかに笑う。
先程ぶつかった時は全く印象が無かったが、鈴仙は彼の顔を知っていた。
少年は丁寧に鈴仙の古サイフを差し出して、こう挨拶をした。

岬「既にこの僕――岬太郎の事はご存知のようだね、鈴仙・優曇華院・イナバさん。遭いたかった。
貴女については、妖夢さんから色々と話を聞いているよ」

彼の名は岬太郎。聖徳ホウリューズを率いる豊聡耳神子の片腕として暗躍する、笑顔と策謀のアーティスト。
天性的な詐欺の才能で多くの人間のファンを幻想郷にも作りつつ、
その裏では鈴仙のマスターたるパチュリーを負傷させた張本人。
また、妖夢の才能を見出し、神子が主宰する『ハイパーカンピオーネ』計画のスカウトを行った人物でもある。
そんな彼が今突然、鈴仙の眼前に姿を現したのだった。

鈴仙「……そりゃあどうも。ありがとうございます」

流石の鈴仙も、妖夢やパチュリーの発言から彼の素性を幾らか知っているため、
如何に彼が柔和な姿勢で語り掛けて来たとしても油断はしない。
鈴仙は敢えてぶっきらぼうに応じるが、予想通りの態度だったためか、岬は全く怯まずこう返す。

岬「やあ。そんな怯えた表情をされても困るな。僕は単純に、君の落とした財布を拾っただけなんだから。
……もっとも、ついでに立ち話も出来れば、とは思っていたけどね」

――どう考えても、後者の方が本題である事は明白に思えた。
岬のペースに惑わされぬよう、鈴仙はゴクリと唾を呑みこんで、強く彼を睨む事にした。

568 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 22:14:29 ID:???
岬が鈴仙に接触!?
――と、言ったところで今日の更新はここまでです。
今日は布石ということで地味でしたが、明日は久しぶりに鈴仙回になればと思います。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

569 :森崎名無しさん:2015/05/16(土) 22:25:24 ID:???
流石にミサキーヌにだまされたりしないよな?

570 :森崎名無しさん:2015/05/16(土) 22:37:19 ID:???
てゐにも注意されてたし、この前の試合もあるし、大丈夫でしょう、多分
乙なのです!

571 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 00:55:08 ID:???
鈴仙「おまわりさん!あの人に私の財布をすられました!」ミサキーヌ「なにィ!?」

逮捕させて敵の戦力を落としてやる。乙ロット!

572 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 12:35:14 ID:???
コロッとだまされることはないだろうけど、なりふり構わなくなった岬は怖い。
さて、何してくるのか。

準決勝まで自由行動2回。決勝までは6回。

鉢巻を松山に渡すことは確定として

正邪との面会
オフサイドトラップ、フェアプレイ精神、しゃべるボールの完成
つかさ、ウサギBちゃんと特訓狙うか
脳内試合ドイツ(準決勝後推奨)
レミリアのシュート練習

文(追放後どうなった?)
反町(大事なものと引き換えにシュートの才能なんたら)
アリス(森崎に上手く利用されてる? 友達になりたい発言)
あたりと会っておくか

573 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 20:53:18 ID:???
鈴仙「それで何のようなのかしら……」
岬犬「……妖夢さんの行方がわからなくなったんだ。居場所を知りませんか」
鈴仙「え?」


矢車「一緒に歩いて行こう、ゴールのない暗闇の中を」妖夢「にいさぁん」

574 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 22:45:50 ID:???
ふーむ、例え益がなくても吠えヅラを拝みたいな
1. ちょっと脅しをかけて、妖怪との差を分からせる
2. 太子やにゃんにゃんの存在を盾に心配するふりをする
3. 「この人痴漢です」 それでもボクはやってない

575 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 22:48:40 ID:???
・・・なぁ、これ見ようによっては岬がカツアゲされてるようにも見えなくないか?
ちらっと誰かが写真撮ってやっぱ妖怪は最低って話になるんじゃないか?

576 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:22:17 ID:???
吠え面かかせたいなら財布くれてやってなにも話さず逃げればいい
話術の使い手なんだからそもそも交渉のテーブルひっくり返して帰ればいい
そしてたんたんとサッカーで普通に勝てばいい

577 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:24:46 ID:???
こんばんは、今日も更新していきます。
>>569
鈴仙を直接騙したりはしないですね。
>>570
乙ありがとうございます。
花果子念報の記事でも岬の悪行?は出ていますし、
鈴仙もこの前の試合の一連は知っているという体でいます。
>>571
乙ロットありがとうございます。
証拠が無いから逮捕はできない……という理屈で行こうと思いましたが、
テレビとかで、状況証拠のみで痴漢が逮捕されたりって話は聞きますね。
幻想郷では前者の理屈という事でお願いしますw
>>572
計画ありがとうございます。
反町や射命丸がどうなったかについては、別途無判定シーンで補完したいと思います。
>>573
地獄兄弟入りはJOKERでもたぶん無いと思いますねw
>>574-575
確か幻想郷では、人里では妖怪は人間を襲えないというルールがあります。
モリヤスタジアムは妖怪の山ふもとで人里では無いですが、周囲には人間も多いので(という設定)、
あまり良い行動では無いかもですね。

578 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:25:29 ID:???
(そのときふわたりてがたの存在を思い出した)

579 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:26:15 ID:???
>>578 ・・・あ!それや!

580 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:26:43 ID:???
岬「……ところで」

鈴仙「何ですか。またナンパでもするんですか?」

岬「これは手厳しいね」

鈴仙「師匠から、仕事以外で知らない男の人に声を掛けられても相手にするな、って言われてますから」

鈴仙の財布を渡し終わった岬はおもむろに話しだすが、
警戒している鈴仙はそれを真正面から受け取らない。
彼の口の巧さは新聞などの様々な評判や、
何よりあの真面目で一本気な妖夢を籠絡してみせた事実から、鈴仙も良く熟知しているつもりだった。
だから、鈴仙は岬に口を開く暇を与えさせない。
鈴仙は財布をむんずと握って、岬の元から一刻でも早く立ち去ろうとしたが。

岬「――あらら。まあ待ってよ鈴仙さん。僕は決して君にも損にならない情報を持っているんだけどな」

岬は明るい声でそう述べるが、鈴仙はぷいとそっぽを向いたまま振り返らない。
岬の趣旨が仮に鈴仙にとって得な情報であったとしても、その真偽を確かめる方法は無い。
つまり、何を言おうが岬は、鈴仙を惑わせる以上の事をしない。
いくら鈴仙でも、その程度の考えはしっかり整理がついていた。

鈴仙「(多分アイツは私の財布をひったくって、こうやってサシで会話して、
私を混乱させようと目論んだんでしょうけど。 ――アンタの計画は既に割れてるのよ!)」

岬から背を向けた鈴仙は、毅然とした態度で、心の中でそう言い放つ。
――しかし鈴仙は同時に、この時ミスをしていた。
そのミスは通常、ミスとも言えないごく当然な行動だったが――こと岬相手で、それは大きな落ち度だった。
岬は鈴仙のミスに気付き、澄ました声で鈴仙に向かってこう呟いた。


岬「……君は知りたくないのかな。八意永琳の真意を」

581 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:28:01 ID:???
鈴仙「やご……何ですって」

岬は鈴仙の心の琴線に触れ得る言葉を既に知っていた。
それにも関わらず、鈴仙は彼の口を封じもしなければ、自分の耳を塞ぐこともしなかった。
そのごく当然な隙を突かれて、鈴仙は岬の前で足を止め振り返ってしまった。

岬「(僕がわざわざ出向いて来るんだ。全く無為で無謀な行動をする訳が無い。
失敗しない為にもその程度の調査、やっておくに決まってるじゃないか)」

ここで一旦足を止めたならば、こっちのものだ。
蜘蛛の巣に引っかかった蝶へと向かう蜘蛛のように、岬は内心でほくそえんだ。

岬「――やっぱり気になるみたいだね。君のお師匠様。
月の賢者にして地上へ堕ちた裏切り者。永遠亭を実質的に統べる至高の薬剤師にして医師。
八意XX……僕たちの言葉だと、八意永琳のことが」

鈴仙「――良く調べたわね。ウチにスパイでも投げ込んだのかしら?」

岬「さてね。……ところで、君はこの幻想郷に降り立って以来ずっと、
この八意永琳の元で従者として働いているんだったよね?
ああいや、答えなくてもいいよ。答えはイエスと知っているから」

岬は鈴仙に思考させる時間を与えないよう、やや早口で話している。
そうする事で、鈴仙に思考する猶予を与えず――岬はこう、結論を先に言い放った。

岬「――僕は君の為に忠告するよ、鈴仙・優曇華院・イナバ。
……八意永琳は、間違い無く君を利用している。自分自身の計画の成就。ただそれだけの為にね」

鈴仙「――利用、ですって……! そんな事、ある訳ないじゃない!!」

岬の結論は、その真贋を問わずして、鈴仙の耳に重くのしかかった。
永琳の真意については、鈴仙もまた預かり知らぬ事だったのだ。

582 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:31:02 ID:???
岬「――それはどうかな、鈴仙さん。
君はこれまで、色んな人から話を聞いて来たと思うけど――しかし。
その全ては必ずしも真実であるとは限らない。
必ずしも善意で君に全てを教えてくれるとは限らない。
真実とは、様々な語り手から示される情報を基に、自らが構築していくもの――そうは思わないかい?」

鈴仙は既に岬の言葉に釘付けになりつつあった。
それを知った岬は、雄弁に鈴仙に対してこんな提案を持ちかけた。

岬「だから……鈴仙さん。とりあえず、聞いてみたくはないかい?
僕達が調べたところによる、今回の異変における八意永琳の真意を。
それが正しいか間違っているか。その判断は全て君にお任せする。
更に、この内容をもって、僕たちは君に神子様率いる『ハイパーカンピオーネ』計画入りをしてくれ、
……などと頼む気もさらさらないし、恐らく聞いてもならないと思う。
純粋に、僕は君に真実を掴んでもらいたい。そんな意図で、提案をしているんだ」

鈴仙「――そ、そんなの。胡散臭すぎるに決まってるじゃない。目的は何なのよ……!」

鈴仙は辛うじて声をあげた。岬はその質問を想定していたかのように、理路整然と答える。

岬「僕が君に真実を伝える事で、何のメリットがあるか……って事だね。
それなら簡単、僕達は君に気付いて欲しいのさ――八意永琳が必ずしも、君の絶対的な味方では無いという可能性に。
何故なら君は今や、ある意味では中山政男よりも森崎有三よりも、重要な存在となりつつあるんだからね。
そんな凄い君を我々に引き入れるのは……流石に難しいにしても、ある程度の恩は売っておきたいんだ」

鈴仙「……私が重要な存在。それは、『プロジェクト・カウンターハクレイ』のキャプテン候補だからって事?」

岬「……フフ。気になるよね。僕の話を聞くと約束してくれれば、その辺りもサービスとして、詳しく教えてあげようじゃないか。
もっとも、ここは引いて、君の親愛なるお師匠様に問いただす事もアリかもしれない。
流石の八意永琳も、こうして僕達がゆすって来たと知れば、君に幾らか話をしてくれるかもだしね。
――でも、そうなると――どうする、鈴仙さん。君は誰の話を信じる? 怪しいペテン師の僕? それとも、優しいお師匠様?」

583 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:34:18 ID:???
岬はここまで言って、鈴仙の判断を待つ為に沈黙を保った。
永琳の真意は先日、鈴仙が『プロジェクト・カウンターハクレイ』計画を知った際にも明確に教えてくれなかった事。
知りたく無い筈が無い情報であるが――果たして、この岬の発言を信じる価値はあるのだろうか。

鈴仙「(私は必ずしも、ここで岬の発言を聞き入れる価値は無い。
師匠や姫様に問いただしたって、同じように真意を教えてくれる可能性は高い。
そしてそっちの方が、恐らくこの詐欺師の言葉よりも信用出来る筈。だけど――)」

『真実とは、様々な語り手から示される情報を基に、自らが構築していくもの――そうは思わないかい?』
鈴仙には岬のこの台詞が引っかかっていた。彼の指摘にも正しい面はあると思っていた。
確かに、鈴仙は『プロジェクト・カウンターハクレイ』の件について、当事者である永琳と輝夜の話しか聞いていないのだ。
このまま岬から逃げ出して、永琳と輝夜の話のみを信じるのは、真実から逃げ出す行為では無いのか。

鈴仙「(――だけど。それも含めて岬の罠なのかもしれない。私の疑念を加速させて、混乱させるための……)」

鈴仙は冷や汗を拭きながら周囲を見渡す。スタジアムの観客席は既にまばらだが人間も多く残っている。
幻想郷での決まりとして、妖怪は人里で人間を襲ってはいけないというものがある。
そのため、ここで実力差を利用して岬を脅迫する事はもっての外。
(モリヤスタジアムは厳密には人里では無いが、人間の割合が多く、人里のルールを準用する例が多い)
鈴仙はこの場で岬の話を聞くか、それとも逃げ去って永琳の話を聞くかの実質的な二択を強いられていた。

鈴仙「(……たぶん、どう考えてもどっちが正解という事は無い。これは単純に私の在り方の問題。
危険な道を歩んででも、自分の力で真実を掴み取ろうとするか、それとも、
勇気を持って師を信じ、その想いに応えようとするか。
どっちが間違っている訳でも無い。ここは純粋に、私の気持ちで答えるしかないわね……)」

584 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:43:48 ID:XR1qZKnk
鈴仙は目を閉じて、意を決して岬に対してこう答える事にした。

A:「……分かったわ。信じないけれど、話を聞いてやろうじゃない」岬の説明を聞く。
B:「あんたに話を聞く事は師への裏切り。これ以上の話は要らないわ」岬の説明を聞かない。
C:「あんたが本当に『信頼できる』って言うなら、話を聞くけれど?」武力をちらつかせつつ、真実である事を証明させる。
D:「……!」黙って財布を岬の鼻っ柱にぶち当ててから逃げる。

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

*対応が難しいため、申し訳ございませんが今回自由選択はナシでお願いします。
 どうしても何か意図があれば、A〜Dの選択とともにコメント書いて頂ければ、多少は反映できるよう努力します。
*選択肢の中に1つだけ明確なハズレがあります。その根拠は>>580-583に記載されています。

585 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:44:47 ID:fYx4H/mY


586 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:45:29 ID:YwXBkfFY


587 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:45:38 ID:ag6OMCm+


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