キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【影の役者】鈴仙奮闘記30【天才の相棒】

1 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/06/29(月) 22:01:33 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、
東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで師匠を超えるために努力する物語です。
他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆
【レイセンガ】鈴仙奮闘記29【タダシイヨ】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1432654054/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html

☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠、八意永琳に並ぶ選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。

全幻想郷代表選抜大会で活躍し、代表メンバーの一員となる事を夢見てきた鈴仙はある日、
自身が『プロジェクト・カウンターハクレイ』のキャプテン候補に選ばれている事を知る。
それは霊夢や紫達幻想郷に敵対し、以て幻想郷の価値観を覆すという壮大な計画。
更に鈴仙は、全幻想郷代表の下部組織、『リアル・幻想・セブン』の一員として、
乱心した八雲紫と幻想郷を救って欲しいと紫の式・八雲藍から懇願された。

幻想郷を変える為に戦うか、幻想郷を守るために戦うか。そう思い悩む鈴仙の心の隙を突く悪しき者もいた。
それは『プロジェクト・カウンターハクレイ』と『リアル・幻想・セブン』との争いに乗じ漁夫の利を狙う第三勢力。
聖徳ホウリューズの一員にして、『ハイパーカンピオーネ』計画の一翼を担う天性の詐欺師・岬太郎だった。

試合開始前、岬は鈴仙と同じFWの相棒・因幡佳歩の疑心を巧みに利用し、チーム内における不和を演出する。
それは鈴仙により破られ失敗に終わってしまうが、しかし、それでも尚聖徳ホウリューズは強かった。
観客扇動に一芸特化選手、特殊戦術の使用。あらゆる手に苦しめられるルナティックスだったが、
前半終了間際にパスカルが覚醒して1点をもぎ取り、試合は1−1の同点に。
そして迎える後半戦。影の役者がひしめく全幻想郷選抜大会を勝ち抜くのは一体――。

500 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/01(土) 00:06:55 ID:y66YlGf+
★てゐの選択→ ハート6  ダイヤかハートならドリブル、スペードかクラブならシュート
 川上の選択→ ハート10  ダイヤかハートならドリブルに備える、スペードかクラブならシュートに備える★
★てゐ ドリブル/ロビングシュート 52/54 ( ダイヤQ )( 1 + 6 )+(本気モード+1)+(シロウサギドリブル+3)=63★
★川上 そなえる 47 ( ハート10 )( 5 + 3 ) +(読み当て補正+2)=57★*吹き飛び!

てゐ「……まあ、深く考えるだけ損かな。無謀にも強敵に突っかかるのは寿命を縮めるけれど、
万一の危険を恐れて何にもできなくなるのも寿命に悪いしね!」

タッ! ド ド ド ド ド ド ド ド !!

てゐ「――どきなっ! 今の私に近寄るんじゃないよ。 ……『シロウサギドリブル』だっ!!」

ドゴオオオオオオッ!! バギイイッ!

川上「ぐ……ぐふっ!!」

てゐ「ふん。軽く千年位は寝込んでな。 ……それっ」

……バシュッ、ズバッ。
――ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!


永遠亭ルナティックス 3 − 2 聖徳ホウリューズ

501 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/01(土) 00:07:55 ID:y66YlGf+

大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
12ゴール レミリア、鈴仙
9ゴール  フランドール、射命丸
8ゴール  魔理沙
7ゴール  勇儀
6ゴール  来生、屠自古
5ゴール  星、諏訪子
4ゴール  森崎、神子、反町、霊夢
3ゴール  早苗、謎の向日葵仮面
2ゴール  神奈子、ピエール、メルラン、天子、赤蛮奇、空、佳歩、岬
1ゴール  妹紅、咲夜、美鈴、サニー、リリーB、ぬえ、響子、永琳、てゐ
       影狼、藍、幽々子、幽香、針妙丸、パチュリー、小田、椛、パスカル


大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
6アシスト パチュリー、霊夢
5アシスト 小町
4アシスト てゐ、神子
3アシスト 早苗、ピエール、小悪魔、マミゾウ
2アシスト 森崎、反町、はたて、岬、空、お燐、ウサギB、レミリア、アリス
1アシスト 鈴仙、影狼、大妖精、橙、諏訪子、佳歩
       衣玖、針妙丸、リリーW、ルナサ、ぬえ、永琳、妹紅

502 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/01(土) 00:09:07 ID:y66YlGf+

実況「ゴ〜〜〜〜ッル! ここで……! ここで! とうとう永遠亭ルナティックスが逆転だ〜〜!!
3−2!! 波乱と混沌の全幻想郷選抜大会の準決勝戦第一試合は、後半28分でひときわ大きく動きました!
永遠亭ルナティックスの影の役者、因幡てゐ選手がここに来て1点をもぎ取る大活躍!

ルナティックスと言えば、八意永琳選手や中山政男選手。最近では鈴仙選手の存在感が大きいですが、
逆転に至るまでの2点をアシストし得点したのは、比較的無名な佳歩選手とてゐ選手でした!
まさしく、全選手がエースと言わんばかりの隙の無さ! 往時の博麗連合をも思わせるチーム力です!!」

観客「ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「す、凄いぞルナティックス……!」「あの絶望的な状況を、ひっくり返しやがった……!」
「聖徳ホウリューズも良いけど、やっぱルナティックスだよな!」「皆がんばれーー!」

鈴仙「観客達の様子が元に戻ってる。こころが試合に出るようになったから、ってのが大きいと思うけれど。
今までのプレーが、お客さんの心を少しでも掴めたから……だったりして」

佳歩「てゐさまー! 凄い、凄いですっ!」

てゐ「ホメ過ぎだって、佳歩ちゃん。私がここまで来れたのも、鈴仙が守りに徹してくれて、
永琳様が弾いてくれて、佳歩が運んでくれて……。そいで、アホっぽい自称策士がミスってくれたお蔭なんだからさ」

布都「き、貴様等ァ! 陰湿な陰口は慎めい! 泣くぞ!」(←たまたま聞いてた)

鈴仙「えっと。最後のは置いといて。……謙虚じゃないの、てゐの癖に」

てゐ「鈴仙が最近といいさっきのシュートといい、調子に乗ってるからね。バランスを取ってるんだよ」

503 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/01(土) 00:10:29 ID:y66YlGf+
鈴仙「嫌なバランスの取り方ね……(――さて、調子に乗ってるって言われた傍だけど。
だけどここは士気の高揚やこれからの動きの為にも、何か簡単に号令でも上げた方が良いかしらね?
細かい作戦だったら、今の隙にでも決められそうだし……)」

A:「皆! これで逆転よ! このまま勝ち切りましょう!」無難に激励する。
B:「皆、気を付けて! 聖徳ホウリューズはここで終わるチームじゃないわ!」注意を喚起する。
C:「皆、今の点差を守る為にも、ここからは守備を重視していきましょう!」守備重視にするよう指示を出す。
D:「皆、更に点差を付ける為ににも、ここからは更にガンガン攻撃していきましょう!」攻撃重視にするよう指示を出す。
E:「ようし、とりかごだ!」ここから先はボールを取り次第とりかごにする。
F:「あーこの試合勝ったわ。もうここから私GK姫様FWで良いんじゃないですかー?」相手を舐める。
G:その他 自由選択枠

鈴仙のガッツ:410/970

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

*攻撃・守備に寄らせたく無い場合はAかBを選択してください。

504 :森崎名無しさん:2015/08/01(土) 00:14:59 ID:leH2TmmM


505 :森崎名無しさん:2015/08/01(土) 00:16:23 ID:9icx4J5M


506 :森崎名無しさん:2015/08/01(土) 00:18:27 ID:6Lfg81Ao
B

507 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/01(土) 00:52:15 ID:y66YlGf+
B:「皆、気を付けて! 聖徳ホウリューズはここで終わるチームじゃないわ!」注意を喚起する。

鈴仙「――皆、気を付けて! 聖徳ホウリューズはここで終わるチームじゃないわ!」

鈴仙は最初、今の雰囲気に乗ってチームメイトを激励しようと思ったが、
この大一番で逆転された聖徳ホウリューズが狼狽えるどころか、
ほぼ何の反応も見せない素振りである事が気になり、そう注意を喚起することにした。

慧音「分かっているよ。ここで油断をして失点は、DFとしては死んでも避けたい場面だからな」

永琳「……それに。何だか、この試合は最初から今まで全てがおかしい。
試合の流れや作戦、不可解な行動、現れぬ腹心……。
――彼女達には、この試合に勝つこと以外に、何らかの陰謀を企てていてもおかしくないもの」

そして、鈴仙の発言は浮き足立ったルナティックスメンバーを落ち着かせる事に役立った。
それは劇的な逆転劇に湧いた観客席にとって、やや物足りない情景ではあったが、
今の鈴仙達には観客の人気取りよりも大事な事がある。

鈴仙「(……聖徳ホウリューズ。アンタ達がどんな事を考えているのかは分かんないけれど。
このまま勝ち切って、私達のチームがヒーロー頼りじゃないんだって、分からせてやるんだから……!)」

圧倒的な個とそれに従う専門家により構成された聖徳ホウリューズは、成程理に適って効率的に強いチームである。
自分達永遠亭ルナティックスは、聖徳ホウリューズよりも「割り切った」チームではない。神子から言わせれば甘いチームだろう。
しかし、そんな甘さこそが時には役者を輝かせる。現に、自分はこのチームの中で輝きを得る事ができたのだから、間違いない。
――鈴仙は、そう彼女達に言ってやりたいと思っていた。

*冷静な発言で、永琳印象値が少しだけ上がります。52→53

508 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/01(土) 00:58:06 ID:???
……と、言ったところで中途半端になりましたが今日の更新はここまでです。
>>499
今のでゲームオーバーの確率はほぼ無くなりましたね。
残りの試合時間も、比較的短期間で終わらせようと思っています。
ただでさえここまで分量的、期間的にも長引いてしまいましたし…(汗)

慧音先生は序盤〜中盤の成長・覚醒機会をうまく活用できない上、姫様強化に裂かれた時間の割りを食らったなど、
運的にも選択肢的にも不遇な感じですね…。今から引き上げるには、効率を度外視した「愛」が大事になってくるかもしれません。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

509 :森崎名無しさん:2015/08/01(土) 15:47:41 ID:???
>今から引き上げるには、効率を度外視した「愛」が大事になってくるかもしれません

イラナイツ入団確定

510 :森崎名無しさん:2015/08/01(土) 18:22:50 ID:???
乙なのです

か、佳歩ちゃんも前そんなこと言われてたけど大化けしたし
それに基礎値は高いし
(あのときとは時期が違うと言ってはいけない)

優秀なDFであることはたしかなんだし
三章以降も仲間でいてくれるなら活躍する場面もでてくるんじゃないかな
下手に優秀すぎて幻想郷選抜に引き抜かれることもなさそうだし

511 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/02(日) 02:07:13 ID:RQjTyqTs
こんばんは、リアルで付き合いがあったので遅くなりましたが1判定だけ更新します。
>>509
ただ、今の状態でもDF不足の幻想郷では割と貴重な人材だったりします。
>>510
乙ありがとうございます。ブロックであと一回覚醒しただけでも、慧音先生の存在感はかなり変わると思います。
ただ、これは慧音だけに限った話じゃないですが、
第三章でもルナティックスメンバー全員が味方で居てくれるかについては、何とも言えませんね。

512 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/02(日) 02:09:14 ID:RQjTyqTs
神子「ここで終わるチームでは無い、か。鋭いのか、それとも適当に言っているだけなのか。判断に困るな」

屠自古「……ただ、そう思われて敗北した方が吉という事もあります。
ここでの敗北はともかく、大敗のイメージを植え付ける事は良くありません」

――そして、ルナティックスが勝って兜の緒を締める中、
退場した岬と、反省している布都を除き今や2人となった聖徳ホウリューズの幹部メンバー達は、
残された試合時間における身の振り方について協議していた。
試合時間はロスタイムを含めても10分を切っているが、点差は僅か1。
失点も恐れず全力で攻めに向かえば、決して追いつけぬ大差ではない。

神子「我々には、ある程度のビジョンを提示する事が必要だ。
つまり、人間は結束すれば、妖怪に怯えて暮らさず、地上の王者となれるのだと言う希望を。
そしてその為には、あらゆる手段を用いてでも勝ち取るべきであるという思想を。
――観客の扇動はあくまできっかけづくりに過ぎない。
彼ら自身が、これまで『異端』とされて来た危険思想を受け入る為には、ある程度の下地が必要だからね」

しかし、神子が語るように聖徳ホウリューズの厳密な目標は勝利では無い。
如何にして、自身達のメッセージを幻想郷の多くの人間に見て貰うかである。
だからこそ神子は、勝利が怪しくなって来た今の局面に、こうした打算的な思考をも含めて計算し
……冷静で頼れる側近である屠自古に対し、こう発令した。

先着1名様で、

★聖徳チームのこの先→! card★

と書き込んでください。数値で分岐します。

JOKER→神子「えーい! もう色々考えるのメンドイからキックオフシュートでいいや!」屠自古「え」
ダイヤ・ハート→こころ(楽)「……」神子「(何時の間にか面が変わってる……。――ま、折角だし、もう少しこれで攻めてみるか)」
スペード→神子「仕方無い。もう一度だけ、攻めを構築してみるか。……新たな勅を使って」
クラブ→神子「……これ以上の消耗は良くない。ある程度抗った素振りだけ示して、流そう」

513 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/02(日) 02:14:09 ID:???
と、言ったところで今日の更新はこれだけです。
明日も昼から夜まで用事があるので、更新量は少なくなりそうです…。
皆様、本日もお疲れ様でした。

514 :森崎名無しさん:2015/08/02(日) 02:14:09 ID:8Ar1NiiU
★聖徳チームのこの先→ ハート8

515 :森崎名無しさん:2015/08/02(日) 02:14:16 ID:???
★聖徳チームのこの先→ ダイヤA


516 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/02(日) 22:39:58 ID:RQjTyqTs
★聖徳チームのこの先→ ハート8 ★
ダイヤ・ハート→こころ(楽)「……」神子「(何時の間にか面が変わってる……。――ま、折角だし、もう少しこれで攻めてみるか)」

神子「(とはいえ。当の屠自古も私の前では気丈に振る舞ってはいるが、もう『ガゴウジサイクロン』は使えまい。
私自身も、ゲームメイクをするか、点を取りに行くか。どちらも両立して行える程は無い。さて……)――ん?」

こころ(楽)「…………」ジーッ

神子「……あれっ。何をやっているの。勝手に面を変えてしまって」

苦し紛れであるとは分かっていながらも、神子が次の方策を軽く練っている時。
何時の間にかお面を変えて、こころは神子の事をじーっと見つめていた。
顔はいつも通りの無表情であるが、今度は何一つとして喋る気がないらしい。
……いや、『言いたい事も言えない』だけかもしれないが、彼女は兎に角静かになっていた。

こころ(楽)「…………」

神子「……えーっと。『折角だから、自分も少しは活躍したい』ですって?
でも、他の面と違って、この『楽しむ猛毒の面』は地味だからなぁ。
正直、今の状況を打開するには力不足と言うか」

こころ(楽)「…………」

神子「――まぁ、分かったよ。どうせ私はこの試合でこれ以上は望まない。
だったら、次のキックオフからのゲームメイクは任せるから。好きなようにやってみなさい」

こころ(楽)「…………」

トテトテトテ……

どうやらまだ試していなかった面の力を使ってみたかったらしい、彼女の言外の欲を聞き取った神子は、
半分呆れたように彼女の申し出を受け入れる事にした。

517 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/02(日) 22:41:15 ID:RQjTyqTs
そして――。


……ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

実況「さあ、もしかしたらこの試合最後になるかもしれないキックオフです!
聖徳ホウリューズの攻撃から始まり、ボールはまず……中盤の神子選手では無く、
右サイドハーフの秦こころ選手に渡りました。
こころ選手、暫く先ほどまでの頭の悪すぎるプレーとは考えられぬ程丁寧なボールキープで、
数分間パスワークを主導しまして……そして後半31分!」

こころ(楽)「…………」

グワァァッ、バシュウウウッ!

実況「こころ選手、ルナティックスのFWの頭を通り越すような、神子選手へのパス!
先ほどのような、FWとMFの連携による攻撃失敗を教訓としたのか、
確実にルナティックスの守備を分断しようとしております!」

518 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/02(日) 22:42:26 ID:RQjTyqTs
鈴仙「……!(――何か、急に知的なプレースタイルになったわね……あの面霊気。
でも……このパスの威力は石田や神子には正直劣るけれど、地味に侮れない程度はある。
私一人だったら、素通ししちゃうかもしれない。
でもだからと言って無視してると、速攻で神子が更なるパスを出して来るでしょうし……。
実際、それで本間あたりにでも渡って、一対一を狙われるとかなりマズいのよね。
うーん、ここは……どうしようかな?)」

A:ここはパスカットに向かう!(鈴仙のパスカット:49)
B:佳歩と協力して、2人でパスカットに向かう!
C:佳歩にパスカットを任せて、自分はフォローに徹する!
D:この有利な状況で焦る必要は無い。パスは素通しさせる。
E:その他  自由選択枠

鈴仙のガッツ:430/970

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

*こころの被る面が『楽しむ猛毒の面』に変わりました。以降、面が変わるまでこころの能力・必殺技は反町とほぼ等しくなります。
 (一部再現していない部分もあります)

519 :森崎名無しさん:2015/08/02(日) 22:47:32 ID:2NL4iVuw
E自分も下がって守備に参加し守りに徹して守りきる

520 :森崎名無しさん:2015/08/02(日) 22:48:31 ID:mKoj34TE
B

521 :森崎名無しさん:2015/08/02(日) 22:52:41 ID:DZ3o5QeU
B

522 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/02(日) 23:10:23 ID:RQjTyqTs
B:佳歩と協力して、2人でパスカットに向かう!

鈴仙「(パスの連続で来られたら、速攻でボールを前線まで通しちゃうわ!
ここは何としてでも、少しでも前で止めないと……!)――佳歩! 私と一緒にカットに動いて!」

佳歩「はい、わかりました!」

バッ! バッ!

実況「鈴仙選手と佳歩選手、こころ選手の放った正確なパスに対しカットへと向かいます!」

こころ(楽)「………………」

先着2名様で、

★こころ(楽)→モンキーポゼッション 52 (! card)(! dice + ! dice)=★
★鈴仙→パスカット 49 (! card)(! dice + ! dice)+(人数補正+1)=
 佳歩→パスカット 49 (! card)(! dice + ! dice)+(人数補正+1)=★

と書き込んで下さい。カードやダイスの結果で分岐します。

MAX【攻撃側】−MAX【守備側】
≧2→神子、パスキャッチ。
=1、0、−1→ボールはこぼれ球に。そして左から順に
(パスカルがフォロー)(小田がフォロー)(本間がフォロー)
≦−2→聖徳ボールに。
【補足・補正・備考】
鈴仙のマークと敵スートが一致時、スキル・狂気の瞳LV3により敵の数値が−2されます。
鈴仙のマークがダイヤの時、「アキュラースペクトル(+2)」が発動します。

523 :森崎名無しさん:2015/08/02(日) 23:11:04 ID:???
★こころ(楽)→モンキーポゼッション 52 ( スペード8 )( 1 + 3 )=★

524 :森崎名無しさん:2015/08/02(日) 23:14:09 ID:???
★鈴仙→パスカット 49 ( ダイヤ6 )( 2 + 6 )+(人数補正+1)=
 佳歩→パスカット 49 ( ダイヤK )( 3 + 4 )+(人数補正+1)=★


525 :森崎名無しさん:2015/08/02(日) 23:25:21 ID:???
聖徳ボール?まさかこうなることを見越してスピンをかけて必ず相手がカットできないよう・・・!

526 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/03(月) 00:10:30 ID:QkAZMNvg
>>525すみませんミスです(爆)普通にルナティックスボールですね。
★こころ(楽)→モンキーポゼッション 53 ( スペード8 )( 1 + 3 )=57★
★鈴仙→パスカット 49 ( ダイヤ6 )( 2 + 6 )+(人数補正+1)+(アキュラースペクトル+2)=60


鈴仙「(これは……妖怪の山FC戦で反町君が見せた『トリカブトパス』にソックリね。
でもそれなら、さっきみたいなレーザーパスとも違って、手の打ちようはある!)
……それっ、『アキュラースペクトル』ッ!」

タ ッ ! ――ブ ウ ウ ウ ウ ン……!
……パシッ!

こころ(楽)「……やっぱり、ダメだった………」

佳歩「しゃ、しゃべった!?」

実況「鈴仙選手、ここは守備でも存在感を見せつけました!
身軽さと器用さを活かした分身パスカットで、ボールを真正面からカット!
永遠亭ルナティックス、センターサークル付近でボールを奪い返しました!」

鈴仙「よ、よし! 想像以上に上手く行ったわね……!」

佳歩「鈴仙さま、ナイスです!」

パスカル「今は後半32分。ロスタイムも入れて残り5分強と言ったところだな……。
――ああ、それと負傷したケイネさんは戻って来ているから、今俺達はきちんと11人いるぞ」

527 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/03(月) 00:11:52 ID:QkAZMNvg

鈴仙「パスカル君、色々説明ありがと……(……でも、ここからどうしようかな。
試合時間は少ないし、聖徳チームはさっきのこころ以外はそこまで攻めッ気が感じられないから、
ここからボールキープを続けても勝てそうな気はするけれど。
このまま得点を狙って、試合終了間際に最後の特攻をかけたい気持ちもあるわね……得点王的に考えて。
ただ、それで万一途中でボールを取られてそのままカウンター。そして失点して同点、って事になれば、
試合の手間的にも、師匠や回りの評価的にも大変な事になっちゃうかもしれない。

ノーリスクで確実な勝利を得るか。僅かなリスクを背負い、大きなリターンになる得点を重ねに行くか。
――このチームの実質的キャプテン代理として、私はどうすべきかしら……)」

A:このままパスワークで試合を終わらせる。(確実に試合が終了します)
B:ここはチャンス! 更に攻めて追加点を狙う。(更に攻め方について分岐)
C:間をとって、試合終了間際にセンターサークル付近でシュート!
D:その他 自由選択枠

鈴仙のガッツ:390/970

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

―――――――――――――――――――――――――
……と、言ったところで今日の更新はここまでにします。
皆様、本日もお疲れ様でした。

528 :森崎名無しさん:2015/08/03(月) 00:20:12 ID:rh0I3wXo
C

529 :森崎名無しさん:2015/08/03(月) 04:38:56 ID:fC/kfUJI
B

530 :森崎名無しさん:2015/08/03(月) 17:15:49 ID:I5J51MVA
A

531 :森崎名無しさん:2015/08/03(月) 18:03:47 ID:75VNPJVM
A

532 :森崎名無しさん:2015/08/03(月) 20:17:25 ID:???
乙です

ドイツ戦はできそうにないかも

533 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:42:27 ID:mVCLQ89E
こんばんは、更新します。
>>532
乙ありがとうございます。
ドイツ戦は結構厳しい塩梅になってますし、浮き球アップなど他のメニューも良いかもですね。

A:このままパスワークで試合を終わらせる。(確実に試合が終了します)

鈴仙「(……私としたら、このままゴールも決めて試合終了と行きたいところだけど。
――でも、無理して攻めるリスクを皆に強いる訳にもいかない。だから、ここは――)
……パスカル君。ボールを回しましょう」

バシッ……ポムッ。

パスカル「……そうか。賢明だな、レイセン。――それっ、エイリンさん!」

バシッ……。

実況「――そして、ボールを奪ったルナティックスはこのままパスワークに。
これ以上の得点よりも、手堅く今の点差を堅守したい意図でしょうか!
そして聖徳ホウリューズもパスカットに向かいますが、今の立て続けの失点で士気が削がれたのか、
中々上手く攻め入る事ができません! そして時間が経過していき……!」


――ピッ、ピッ。……ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

神子「………………」


永遠亭ルナティックス 3 − 2 聖徳ホウリューズ  試合終了!

534 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:44:35 ID:mVCLQ89E

実況「試合終了〜〜〜〜〜!! 3−2で永遠亭ルナティックスが聖徳ホウリューズを下しました!
試合開始から後半の半ばまで、聖徳ホウリューズ優勢な展開が続きましたが、
鈴仙選手が佳歩選手、てゐ選手と協力した新必殺シュートを編みだし同点に追いついてからは、
試合の趨勢は大きくルナティックスに偏り……そして今、辛うじてではありましたが、勝利を掴みました!」

鈴仙「(……苦しい戦いだったわ。試合前の盤外戦術、特殊な戦略に一芸特化選手。
それを潜り抜けたと思ったら、勝負運に見放された上に強力な新選手。
――何というか、ここで勝てたのが奇跡みたい。……というか、今も何だか釈然としないわ。
あれだけ勝ちに拘っていた筈の聖徳ホウリューズが、いざ負ける段になっても……あんなに、静かなんて)」

神子「………………負けたか」

布都「申し訳ございません、太子様! 我が不甲斐ないばかりに!
こうなったら、我は 投扇興 しますぞ!!」

こころ(喜)「はぁーあ。やっぱり太子はダメだなぁ。やっぱり私みたいなエースが傍に居ないと」

鈴仙「(……いや、静か……でもないか。だとすると、流石に考えすぎかなぁ……)」

――今回の勝利は、鈴仙にとってもっとも大きく得難いもの……である筈だった。
眼前に聳える幾つもの困難を乗り越え、仲間と結束を固め合った末の勝利。
それは本来どうしようも無く劇的で、達成感を覚えざるを得ない。
にも関わらず、今の鈴仙はどうしても心から、この勝利を喜べない。
目の前の困難はあくまで目くらましで、どこか地中深くに真の試練が待ちわびているような。
そんな感触を拭いきれないでいた。

535 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:48:32 ID:mVCLQ89E
永琳「――ウドンゲ。あんたの考える事。多分正解よ」

鈴仙「えっ? 師匠? というかどうしてナチュラルに私の思考を読んでるんですか?」

永琳「それは貴女の脳内に埋め込んであるICチップでね……」

鈴仙「い、何時もの電極じゃないんですか!?」

永琳「……悪かったわね。同じネタを使い回して。
――兎に角、そうやって聖徳ホウリューズへの警戒を怠らないのは正解よ。
試合中にあんたが言った通り。……聖徳ホウリューズは、『ここで終わるチーム』じゃあないからね」

鈴仙「…………?」

そして、そんな鈴仙を諭してくれたのは永琳だった。
彼女は鈴仙を軽く労いつつ、可愛らしい冗談を飛ばしながらも、鈴仙に適当な警告を送る。
鈴仙はポカンとした表情で永琳の発言をかみ砕こうとしていたが。



          ―――ドガァァァァアアアアアアアアアアアアアアンッ!



――その思考は、妖怪の山モリヤスタジアムの外壁を大きく開けた爆音により遮られた。

536 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:50:54 ID:???
てゐ「な、なにィ!? いや、『なんだと〜!』的な意味じゃなくって、『これは何?』的な意味でね!?」

岬「……!(――な、何だ今の爆音は……? こんなの、僕が知ってる計画に無かったぞ……!)」

神子「(……始まったか。延長戦まで長引かなくて、結果的に良かったかな)」

中山「(これは……もしや。俺達は最初から、ハメられていたという事だったのか……!?)」

鈴仙「な、な、な……何が起きたってのよ!?」

佳歩「れ、鈴仙さま……ケホッ、コホッ。大丈夫ですかぁ……?」

――鈴仙が我に帰った時、フィールドは荒野と化していた。
瓦礫の山が地面を抉り、爆炎が天然芝を焼き焦がす。
佳歩の助けを借りて起き上がると、全身には擦り傷が出来ていた。

屠自古「な……何だ。何が起きている……?」

布都「……た、太子様ー!? お助けくだされー!」

こころ(楽)「………………あつい」

537 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:52:48 ID:???
パスカル「聖徳ホウリューズの選手も、今の状況を分かって無いみたいだな……。
――すまんレイセン、人間の俺の目には周囲は砂埃しか見えないんだが。
君の瞳だったら、遠くの視界がクッキリ見えたりはしないか?」

鈴仙「えーっ。そ、そんな事言われても……。狂気の瞳はメガネじゃないんだし。
私の視力なんて、精々が2、300メートル先の文字が読める程度よ」

パスカル「自分で聞いといて難だが……レイセンってそう言えば妖怪だったんだな。それも、かなり位の高い」

鈴仙「正確には玉兎だけどね。まぁ、位が高いのは間違いじゃないけど……。
――って、まぁ、要するに。私の見れる限りで周囲を視れば良いのよね?」

鈴仙はパスカルと会話を交わすと、一瞬で戦場と化したスタジアム。
先ほど壁に穴が開いた先を見ると――。


上級妖怪A「グルル……」

上級妖怪B「……コー、ホー……」

上級妖怪C「グオゴゴゴ……」

鈴仙「……妖怪が居るわ。それも、あからさまなヒト型じゃない。話が通じ無さそうな化け物が、うようよと」

538 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:54:20 ID:???
観客A「きゃ、きゃぁぁぁーーー!?」

観客B「こ、怖い妖怪がスタジアムにーー!?」

観客C「俺達下級妖怪じゃあ話になんねぇ、逃げよう!」

カグヤファンB「カグロットォォォオオオオーーー!?」

観客D「ああ! 腹筋が少し強いだけで心優しい少年の、カグヤファンBくんが恐怖のあまり泣いてしまった!」

実況「う、うわああーっ! これはどうした事でしょう!!
永遠亭ルナティックスと聖徳ホウリューズとの試合が終わってみたは良いものの、
突如、謎の妖怪軍団が妖怪の山モリヤスタジアムに乱入してきました!
彼らには理性が無く、手当り次第人間を襲っている模様!
只今、天狗警備隊が応戦しておりますが、数が多く戦況は劣勢!
こ、このままではこのスタジアムはおわ……うわぁぁぁっ!」


――ドゴオオオオオオオオオオオオオオンッ!


鈴仙「う、うっひゃぁぁぁあっ! また爆発したーーっ!」

ウサギB「……何て事でしょう。信じられません! こんなの、データに無かった……!!」

つかさ「……鈴仙さま。このままじゃあ、確実に死者か……そうで無いにしても、けが人が出ます!」

539 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 00:58:02 ID:???
輝夜「ぶっちゃけえーりんに任せたら、この程度の妖怪なんとかなりそうだけどね!」

永琳「――そうね。何とかするだけなら……ね」

妹紅「どうしたのさ。そんな渋った言い方をして」

慧音「……恐らく、薬師殿はこう言いたいのだろう。自分が妖怪を駆逐するのは簡単だ。
しかし、そうしたら今度は、自分達が新たな脅威となるのが恐ろしいのだろう」

てゐ「人間ってのは、自分より強いヤツが大嫌いだからねぇ。
この場を解決できても、次はお師匠様が畏怖の対象になっちゃう」

永琳「臆病な話だけど。……そうなった時、私は輝夜を無血で守り切れる自身は無いもの。
姫を守るために、姫が望まぬ殺しをしてしまうかもしれない。……それは、ハッキリ言って嫌だから」

パスカル「お、おいおい……! じゃあ、この場は我慢して、今みたいな『異変』を察知した、
博麗の巫女とやらに全権を委任するしかない、とか言うのか!? まだ来ていないのに!?」

永遠亭ルナティックスのメンバーも、この状況に少なからず混乱していた。
現状を解決するだけならば、永琳や輝夜など、強大過ぎる力を持つ者は多く居る。
しかし、彼女達はこれまで人間に害を為さぬ者として、ひっそりと竹林の奥で過ごして来た。
一度強力な魔力や武力を見せてもなお、人間達は同じ目で永遠亭へと来てくれるだろうか。
そうした理由から、彼女達は彼女達で動けないでいた。

中山「……もしかしたら。これが豊聡耳神子の真の狙いなのかもしれない」

鈴仙「……?」

中山「彼女達は本当は、試合の勝ち負けなんてどうでも良かったんだ。
彼女達に必要なのはひたすら、こっちの意識を試合に逸らし、時間を稼ぐ事一点だったんだ。
……天邪鬼あたりをけしかけて起こしたであろう、今回の『異変もどき』の解決。
それこそが、奴の目的だった……そうは考えられないか?」

540 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 01:06:31 ID:???
そんな時中山は、一つの仮説を立てた。
果たして彼の宣言通り、慌てふためく聖徳ホウリューズメンバーの中で、
豊聡耳神子だけは帯刀した七星剣の鞘を抜いて、強力な一つ目の妖怪を一閃で斬り伏せていた。

神子「――さあ、人間達よ! ここは我らに任せて逃げるんだ!」

鈴仙「……確かに、途端に生き生きしてるわね、アイツ」

中山「先ほど永琳さんが恐れた、力への恐怖が自分に向く事への不安。
彼女――豊聡耳神子には、そうした不安が一切無いのだろう。
だから、今の機会をむしろ自身の人里での株を上げるチャンスとまで思っている。
いや、俺が言いたいのはそうじゃない。
……彼女は、恐らく仲間にも秘密で、今回の騒ぎを別に仕込んでいたのではないか?
そして、博麗の巫女や八雲紫をも出し抜き、自身が秩序の一角を担うべき存在であると。
洗脳でも無く直接に、人心に刷り込ませようとしているのではないか?」

鈴仙「そ、そんな事……あり得るの? 今現に、彼女の腹心の部下だってケガしてるのに……?」

中山「――彼女なら、やりかねないさ……。
真の目的の為ならば、親友や恋人すら道具として切り捨てかねない彼女なら」

鈴仙「…………」

中山が推測する、神子の恐るべき意図に鈴仙は黙り込む。
そして中山は……そんな鈴仙の気持ちを汲んでか、あるいは始めからこう提案しようと思っていたからか。
彼女の肩を優しくつかみ、こう切り出した。

中山「――永琳さん一人、鈴仙さん一人、あるいは俺一人では、
豊聡耳神子の思惑――試合結果を度外視して、自身の主張をアピールする――がまかり通ってしまうだろう。
そして、八雲紫だとか博麗の巫女だとか、こうした秩序は今現れない。現れるまでの間に、犠牲者が増える可能性がある。

……だから。俺達は――互いに結束して、この『異変』を解決しなくてはいけない。……違うか?」

541 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/04(火) 01:10:30 ID:???
…と、言ったところで今日の更新はここまでです。
この唐突なNPCシーンを明日くらいまで挟んで、
明後日くらいにはウサギBの命名イベントをしたいと思っていますので、
名前案を考えて下されば幸いです。

<現在出ている名前案>(>>421さんより)
・因幡 霞(かすみ)
・因幡 椿(つばき)
・因幡 風音(かざね)
・因幡 鈴音(すずね)

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

542 :森崎名無しさん:2015/08/04(火) 01:15:03 ID:???
>神子「――さあ、人間達よ! ここは我らに任せて逃げるんだ!」
なんという死亡フラグ・・・
これぶっちゃけここで死ぬなり退場してくれた方が人にあがめられる英雄とかになれるんじゃね?

身を挺して人を守って死んだ英雄・・・うん!生き残って悪事ばれるよりもはるかにマシなラストじゃないか!(外道)

543 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:35:35 ID:???
こんばんは、今日も無判定ですが更新していきます。
>>542
割と現金な感じになってしまいましたねw
ただ、これも多分考えあっての行動……だと思います。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
鈴仙「私達の……結束……?」

中山「そうだ」

中山は力強く頷いた。

中山「一人の力には限界がある。それが、例えどんなに凄い人物であってもだ。
一方、仲間達が結束すると、それぞれの力は……まさしく無限大になる。
鈴仙さん達が後半に放ったシュート――『真実の友情』――を見て、俺は改めてそう思った。
だから――こういう局面ってのは、皆が力を合わせて、困難を乗り越えていくべきなんだと思う」

鈴仙「皆が力を合わせて……って。――なんか、ヘンな感じねぇ。
幻想郷の異変解決って、色んな奴がやったりするけれど、大体皆が単独行動だから。
……私らのトコには二人組で来られたけど」

中山「え、そうなのか? ……それは失礼。まぁ、サッカーと同じで、やればなんとかなるさ。
良いじゃないか、自機が5人も6人も同時に出て来るシューティングゲームも、お祭り感覚で楽しそうだ」

結束して、スタジアムを襲撃した妖怪軍団を退治しよう。
中山の提案は、鈴仙にとって何故か突拍子も無い提案のように思えたが。
そんな不安は、彼の快活な笑顔を見ている内に忘れてしまいそうだった。

鈴仙「……うん。分かった、中山さん。私も……やってみる」

――だから、鈴仙は素直に中山の提案に頷く事ができた。
自分は何時までたっても、中山さんには敵わないなぁ……。
交戦中ながら、鈴仙は暢気にもそんな事を考えていた。

544 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:37:36 ID:???
……そして。

鈴仙「――撃ち抜け夢幻の弾丸、『マインドエクスプロージョン』!」

バギュウンッ!

上級妖怪A「グワーーーーッ!」

布都「はーっはっは! 括目するが良い、我の風水の力! 炎符・『太乙真火』ッ!」

ゴオオオッ……!

上級妖怪B「……ググ……!」

カグヤファンB「お前が戦う意志を魅せなければ、俺はこのスタジアムを破壊し尽すだけだぁ!」

ギュピピッ! デデーンッ!

上級妖怪C「もうだめだぁ……おしまいだぁ……!」

中山「いいぞ皆! 後少しで敵の本陣だ!!」

――中山の号令の下、奇妙な連合軍はスタジアムの荒くれ妖怪達を蹴散らしていく。
最初こそ鈴仙や妹紅、慧音などルナティックスメンバーを中心とした部隊は、
いつの間にか聖徳ホウリューズの神子以外の幹部選手や、
観戦に来ていた腕に自信がある人妖をも巻き込んで、さながら一個小隊のように成長していた。

545 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:40:37 ID:t0A8o8nc
鈴仙が狂気の瞳で周囲をかく乱しつつ、空を飛ぶ妖怪を銃撃で迎え撃ち、
布都が自慢の風水で数多の雑魚妖怪を焼き払う。
その中、有志で現れた腹筋の強い少年が腹筋パワーで敵にトドメを刺していくなど、
彼らの連携は急造とは思えない程に発達していた。

鈴仙「……うーん。やっぱり中山さんが居ると安心しちゃうなぁ。
パスカル君と比べると話しづらいイメージだけど。何というか、頼れるリーダーっぽいっていうか……」

輝夜「頼れるリーダーって私の事!? 良かったら私の靴を舐めても良いわよ!!」

屠自古「部外者だが。お前では無い事だけは分かったぞ……」

輝夜「ムギーッ! 貴様、私とイナバとの熱い絆を否定するか!?」

こころ(楽)「あのー。……みなさん、ケンカはやめ……」

観客A「おいお前等! じゃれあってるヒマがあるなら戦えーっ!」

こころ(哀)「……モブキャラにすら台詞を奪われる。どぉせ私達なんか……。
――おい貴様、今私達を笑ったな? ……笑うなぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

バギュンッ! バギュンバギュンッ!

上級妖怪D「ギエエエエッ!? ワ、ワラッテナーイ!?」

546 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:41:56 ID:t0A8o8nc

永琳「……これだけ居れば、私も有志として混ざれるかしら」

神子「――おや。私を気遣って来ていただけるとは有り難い。
だが残念な事に前線は私一人で間に合っている。貴殿は是非、目立たない裏方で後方支援を――」

永琳「――良く言うわ。貴女が仕掛けたんでしょうが、この騒ぎ」

神子「……さて。どうかな」



大丸「う、うおおおっ! 神子様ばんざー……うわっ、何をする、離せい!!」

慧音「――生憎と私は、生徒一人一人の命に向き合って、教育させて貰っているんだ!
神風特攻とは感心しないぞ!」

カグヤファンR「とるっ!」

バッ! グシャッ!

慧音「! そうこう言ってる間に、カグヤファンR君の頭が首にめり込んでしまった!
くそっ、仇は取らせて貰うぞ!」

547 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:42:58 ID:t0A8o8nc
ウサギB「次、右側頭部に攻撃が来る可能性78%! 左に避け……」

来生「やだぷーっ♪」

タッ! ……スカッ。

ウサギB「ま、またデータから外れちゃったぁ! 一体何なの、この人!?」

来生「シュレッダーの三毛猫ってあるだろ。つまり俺がルールって事さ!」

ウサギB「三種類も毛を生やさなくっても良いし、それ以前に色々違ってるってば!
……もーう。世の中にはCちゃん以上におかしい子が居るものなのね……」



高杉「こ、こいつらの命はやるから、俺だけは助けーーひえっ!」

妹紅「何を言ってるんだ。他人の命だって大事にしなさい!
無駄に捨てて良い命ってのは――輝夜と、この私だけさ!
そらっ、永遠に尽きぬ閃光、須臾の狭間で弾け飛べ。『インペリシャブルシューティング』!」

バギュンッ! バチバチバチッ……ドゴォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

観客B「す、すげぇ……。妖怪達が一網打尽だ。よし、俺も頑張るぞ!」

548 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:44:58 ID:???
――鈴仙だけが、理想的な部隊を形成出来ている訳では無かった。
全ての人妖(神子本人は微妙だが)が、種族、立場、感情などの垣根が無いかの如く理想的に動いていた。
つまり、中山指揮下の軍隊は、圧倒的劣勢ながらも、非常に高い士気を持続させていたのだ。

鈴仙「――さあ。追い詰めたわよ鬼人正邪! 嘘を吐き人妖を騙し、
そうやって今のようなクーデターまがいのテロを成し遂げた!」

正邪「ケッ、そうだよ! 全ては下剋上の為に仕込んだのさ!!」

神子「だが、貴様の覇道ももはやここまで。我が千年王国の礎となるが良い!」

カグヤファンB「カグロットォォーーーーーーーーッ!!」

バギッ! ズシャッ! バシュウッ! ドゴオオオッ!

正邪「や、やられた〜〜〜! くそっ、これで勝ったと思うなよーーーー!」

……そんな中、この襲撃の黒幕だった小物っぽい天邪鬼が一瞬にしてボコボコにされるのは、もはや必然。
切れ目無く回避不可能な銃弾、剣戟、殴打の弾幕に、反則アイテム無しの下級妖怪が叶う筈もなく。
果たして鬼人正邪と名乗った人騒がせ妖怪は、あっけなくしょっ引かれたのだった。

***

佳歩「み、みなさん凄いです!」

ウサギC「わたしが出てればぶっちゃけしゅんころだったけど、ひざにやをうけてしまってな……」

ウサギD「ほ、ホント!? 大丈夫Cちゃんっ!? そういえば膝小僧にばんそうこうがあるよっ!」

ウサギB「それは昨日かけっこして転んだ時の傷でしょ……」

つかさ「何はともあれ、けが人は無かったようでして。スタジアムは倒壊してしましたが……皆さん無事で何よりです」

549 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:55:29 ID:???
戦闘を終えた鈴仙達を出迎えてくれたのは、
戦闘に参加できないウサギ達や聖徳ホウリューズの人間メンバー。
そして非力な観客達で作られた、応援団の人妖たちだった。
彼女達は戦いで軽傷を負った鈴仙達に応急手当を施すばかりか、
中にはスタジアム近くの住処へ戻り、食糧や薬を提供してくれる妖怪もいた。

パスカル「しかし、ナカヤマは凄いよな。前線で指揮を出すにとどまらず、
下級妖怪相手には札と剣術で応戦してたじゃないか。俺と同じ人間とは思えないぜ」

中山「はは。あの程度の護身術、人里の人間では出来る方がごまんといるよ」

慧音「ここには生憎居ないが。聖殿がここに来ていたら感動していただろうな……。
これこそが、真の人妖の平等である、と」

布都「なーにを言っておる。悪しき妖怪は皆滅ぼすべしじゃ!
……ま。今日我を助けてくれた奴は見逃してやらん事もないが、な」

観客B「よし! 後は皆で呑みにでも行くかー!」

一同「「「「おーう!!」」」」

鈴仙「(これで……終わりよね。私の感じてた違和感ってのはこれで。
中山さんのリーダーシップのお蔭で観客が怪我する事もなく、
神子がでしゃばって、発言力を伸ばす事もなく終わったし……今度こそ、ハッピーエンド、よね?)」

試合前のアウェー感や敵意はどこへやら、
結集して妖怪を退治した一同は、完全に和やかなムードを形成していた。
雨降って地固まるとは良く言うが、今回の事件も結局はそうした話だったのだろうか。
聖徳ホウリューズの野望は、この敗北と最後の計画の失敗により、完全に打ち砕かれたのだろうか。

――結論から言えば、その答えはノーであった。

550 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 00:59:08 ID:???
……と、言ったところで中途半端になりましたが、力尽きたので、今日の更新はここまでにさせてください(汗)
明日の更新で、一旦弛緩しかけていたムードを再び引き締め、
準決勝第二試合、そして決勝へのモチベーションにしていければ……と考えています。
ウサギBの名前案については、近日投票しますので、また色々と考えてくだされば幸いです。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

551 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 01:09:10 ID:???
乙でした
腹筋とはいったい……うごごご!!
そう言えばブ○リーは腹パンでやれてたし弱点の克服の為に鍛えてる可能性が微レ存

552 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 18:35:25 ID:???
乙なのです

色々ツッコミ所満載ですが、あえて一つだけ
なんで来生敵に回っているんだオイ(汗)

553 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 18:53:43 ID:???
え?

554 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 19:50:59 ID:???
敵に回ってる描写どこ?ど俺の読解力が低いのかそんな描写なかったぞ

555 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 20:06:28 ID:???
ウサギBの所かな?来生が言う事を聞かないのを勘違いしたんじゃないかな。

556 :森崎名無しさん:2015/08/05(水) 20:18:16 ID:???
あ、ウサギBちゃんが来生に指示出してたんですね
ウサギBちゃんと来生が戦っていると勘違いしてました

557 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/05(水) 22:59:26 ID:???
すみません、今日は職場の付き合いがあり、かなり酔ってしまったので、
更新をお休みさせていただきます。
コメント等につきましても、明日まとめて返信したいです。

558 : :2015/08/07(金) 01:39:04 ID:???
こんばんは、今日も判定なしですが更新していきたいです。
>>551
乙ありがとうございます。
腹筋をプルプルさせる→空気が振動する→衝撃波になる
という、普通の高校生でも頑張れば出来そうな技ですね。
>>552
乙ありがとうございます。
>>553-555で指摘しただいたとおり、これは観客席にいた来生君が
ニュータイプの力を活かして妖怪を退治している感じでした。

559 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/07(金) 01:40:22 ID:???

スッ……。

紫「……皆様、今の一部始終は全て観させて頂きましたわ」

すっかり一件落着の空気が定着して来たスタジアムの上空に裂け目が生まれ、
そこから美しい金色の少女が現れた。

来生「お、お前は………!」

ウサギB「……ゴクリ」

来生「誰だ!!??」

ウサギB「知らないのに勿体ぶらないでくださいっ! あの方は八雲紫さんですよ。
この幻想郷を作った、とてもとても凄い妖怪です!」

ウサギC「ほへー。はじめてきいた。がいじん? うた?」

ウサギB「Cちゃんは知ってようね!?」

紫「………フフ。仲がお宜しいようで」

幻想郷の管理者にして賢者でもある少女は、
地上での間の抜けたやりとりにも気を咎める事なく、儚げな笑みを浮かべている。
しかし、今大会の主催者でありながら、最近姿を見せていなかった彼女の唐突な出現に、
集まった一同は少なからず驚きを隠せないでいた。(ウサギCとかは例外)

560 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/07(金) 01:42:15 ID:???
輝夜「どうしてアンタがここに居るのよ。今は秋だし、そろそろ冬眠の時期でしょ。
越冬に向けて、エサを巣穴に溜め込んでなくても良いの?」

皮肉たっぷりな笑顔を浮かべながら、輝夜が紫を嘲る。
しかしそれすらにも紫は、他と同じような有象無象と相対するかのように応じない。

神子「――まぁ、そう喧嘩腰になる事もあるまい。
幻想郷を統べる大妖怪殿が手ずからスタジアムに顔を出したという事は、
きっと何か意図があっての事では無いかな? ここは穏健に、話を聞いては如何かな」

輝夜「あん? ここに来て急にイキイキして来たわね。さっき負けたクセに」

永琳「……ですが姫様。豊聡耳神子もそうですが――何より、八雲紫の余裕が気になります。
ここはまず、話を聞きましょう」

輝夜「ち。永琳がそう言うならしょうがないわね」

鈴仙「(何だか、嫌な予感がする。それも、試合後に感じたものとは桁外れな……)」

どよめき落ち着かない空気を一旦鎮めたのは神子だった。
彼女は輝夜を筆頭にざわつく観衆を制し、妖しげに空に溶け込んだ紫を促す。
紫はそれに満足した様子で頷き、重々しくその口を開いた。


紫「……私は今、大変驚いています」

561 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/07(金) 01:53:10 ID:???
その静かな様子は、まさしく賢者と称するに相応しいと言えた。少なくとも、傍で聞いている鈴仙の実感としては、
前々から聞いていた彼女の力が減退しているという話は、全くの嘘であるようにも見える。

紫「……貴方がたは、只今結集して、凶悪な妖怪の群れを退治しました。
一部は例外としても。多くの力なき人間や妖怪が結束し、自分達よりも強い妖怪に立ち向かい、そして勝利しました」

彼女は更に続ける。
観衆はその妖しさに、何時しか神子が制するまでも無く静まっていた。

紫「これは、今までの幻想郷では考えられなかった事です。
強い力を持った一人の巫女……あるいはそれに準じた力を持った人間や妖怪達。
いわば『特別な』力を持った者のみに許されていた、異変の解決。
――それが今や、こうして萃められた、名もなき人々でも可能である事が明らかになってしまった。
人間や弱い妖怪達は、こうして、『希望』を持ってしまった。
……その希望が、いずれ自らの破滅を齎す事とも知らずに」

鈴仙「……(――希望を持って……「しまった」。嫌な言い方ね)」

中山「……!(もしや彼女の真意とは……、そういう事だったのか!)」

そして紫の発言が本旨に近づくにつれ、鈴仙の嫌な予感は増していき、紫の意図を読み取った中山は冷や汗を垂らす。
そんな二人の様子を汲み取ったかのように、彼女は饒舌に語り出し。

紫「――幻想郷は、非常に脆いバランスの元に成り立っています。
全てを受け入れるとは言っても、危険な要素は排除しなくてはなりません。
それは『異変』解決と同じように権威的で。しかし、排除については徹底的に。

――そして、多くの人妖が見守る中で、彼女はとうとう『彼』へと、宣戦を布告した。

紫「……ですから。今の一件を根拠に、私は異変解決を依頼するわ。
幻想郷の弱き人妖に『希望』という病毒を与え、その理を破綻させんとする一人の人間。
――すなわち、中山政男の退治を……ね」

562 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/07(金) 01:56:49 ID:???
『中山さんは危険である』というこれまでの紫の主張が、
『今回の下剋上騒ぎは、中山の指揮で解決した』という事実により都合よく実証された!
……と、言ったところで今日の更新はここまでにしようと思います。
皆様、本日もお疲れ様でした。

563 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 08:29:37 ID:???
うどんげのせいじゃな

564 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 08:46:23 ID:???
なんもかんもうどんげがわるい!
よってここはしゅじんこーをこうたいするべきね!(氷精並感)

565 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 17:03:34 ID:???
真の黒幕はれーせんに違いないゾ

566 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 17:47:17 ID:???
>妖に『希望』という病毒を与え、その理を破綻させんとする一人の人間。

紫「幻想郷は私が守る!」

ヨモツヘグリアームズ!
冥界!ヨミ!ヨミ!



真面目な話中山(だいたいうどんのせい)は過程は違えど(無意識的に)結果的にやろうとしていることは
天邪鬼と同じようなことだから仕方ない

いや、下剋上だらけで戦いだらけの生活とかめっちゃうらやましいやなんでもありません
戦いはよくないよね!

567 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 17:56:39 ID:???
中山「妖怪がいきなり襲ってきたから正当防衛したら、終わった後にやってきた奴に退治すると言われた」

言っていることは真っ当だが、当事者にとってはたまったものではないですねこれ

568 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 18:33:41 ID:???
中山でこれだともしこの世界に妖怪凹れる他の外伝の人間連中が紛れ込んだらゆかりん発狂死しそうだな。
具体的には岩見軍団

569 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 18:46:06 ID:???
ドーモ、妖怪サン
妖怪スレイヤーです

570 :森崎名無しさん:2015/08/07(金) 19:24:18 ID:???
ヨウカイスレイヤーさんの正体はハクレイの巫女ではないのか?

571 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:00:43 ID:???
こんばんは、今日もあまり時間が取れず、無判定パートが続きますが更新していきます。
>>563-565
なんもかんも中山のせいだ!あと主人公は霊夢だろ!…ってのが紫の主張ですね。
>>566-567
中山さんは紫達によって仕組まれた罠に掛かった感じです。
>>568
岩見軍団だったら逆に幻想郷の統治者になれそうですね…。

572 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:01:53 ID:???
霊夢「……なるほど。こうなる事まで、全てはアンタの仕組んだストーリーだった訳ね、紫」

紫が中山への断罪を宣言した直後。そんな紫に追いついたかのように、今度は霊夢が空から現れた。
殆ど訳が分からぬまま現状を傍観していた鈴仙は、藁にも縋るような想いで霊夢に助けを求めるも。

鈴仙「あっ、れ、霊夢! 何とかしてよ。なんか、八雲紫が中山さんを退治するとか言ってるんだけど……!」

霊夢「――無理よ。『アレ』を見ちゃった以上、私だって、紫と同じような結論になっちゃうもの。
打ち出の小槌も反則アイテムも無しに、単に人望だけで、あれだけの人妖を動かすなんて。
神子や正邪が途轍も無く可愛らしく見える程の力だわ」

紫「そうでしょう、霊夢? 分かってくれて嬉しいわ」

鈴仙「そ、そんな……!」

鈴仙の期待に反して、霊夢は博麗の巫女としての職務を全うする気でいた。
つまり、彼女もまた、中山政男は確かに幻想郷の秩序に大きな風穴を空ける存在であると認識していた。

霊夢「……まぁ。建前づくりとしては、随分と大袈裟だとは思うけどね」

紫「建前? 何のことかしら。私には表も裏も無い、清らかな乙女なのだけれど」

とはいえ、鈴仙から見ても霊夢と紫とは完全に一枚岩であるようには見えなかった。
少なくとも、霊夢は何らかの事情を知っているように思える。
霊夢はひとり言のようにこう呟いた。

霊夢「アンタは前々から、この大会を通じてサッカーで幻想郷に悪影響を与える中山政男。
あと、その影響を色濃く受けた鈴仙とかを退治しなさいと再三再四私に指示して来た。
だけど、私は何となく乗り気で無かった。
……だから、今みたいな状況を上手くでっち上げて、体よく中山政男の危険性を私に実証したいと。
そう思っていたんじゃないのかしら?」

573 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:03:32 ID:???
紫「………フフ」

霊夢の独白に紫は嗤う。それは肯定も否定もしていないように思えた。

霊夢「――そうか。だからアンタは神子達を。聖徳ホウリューズへの締め付けを敢えて行わなかったのね。
無論そこには、一回退治された神子達の危険度は中山政男よりも低いから……という安心もあったのでしょうけど。
真の狙いはそこじゃない。適度に連中へ恩を売っておいて、ここぞの場面で自分の手駒にする為……とかだったんじゃないの?」

神子「おいおい、それは酷い言い草だな博麗の巫女よ。
それじゃあまるで私達が、プライドも無く強者の間を飛び回り寄生する、コウモリ野郎みたいじゃないか」

輝夜「いや、それはその通りでしょ」

永琳「……貴女達は元から、今日の試合の勝敗には大して興味が無かったのね。
勝利に徹するようでいて、時に隙のある作戦を選択したのは――今回の計画にかこつけて、
裏切りの可能性がある者を平和裏にお払い箱にする意図もあったのかしら?」

岬「……!(……もしそうだとしたら、僕をすぐに消耗させた挙句に反則プレーを要求した事にも、
反則後の僕の印象操作について冷淡だった事にも、説明が付く。
――豊聡耳神子にとって、八雲紫というバックアップを得ている以上。
試合中のああした行動は、彼女にとって単なる厄介払いの為の茶番に過ぎなかった、という事か……。
だとしたら、詐欺師としても完敗だ。僕は、小手先の技術に囚われて、大局を見切れていなかった……)」

更に霊夢が指摘した可能性――豊聡耳神子と八雲紫は裏である程度手を結んでいた――についても、
紫は霊夢の疑問に答える代わりに、曖昧な笑みを浮かべたままこう話しだす。

紫「……豊聡耳神子の企てる【ハイパー・カンピオーネ】計画については知っていたわ。
しかし、彼女の計画には時間が掛かる。ならば、時間も資源も限られた中、優先順位は自ずと低くなってしまいます。
現在は目下の、かつ大きな危機に対して動かねばなりませんわ」

霊夢「……その答え方。殆ど肯定してるようなもんじゃない」

574 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:04:50 ID:???
霊夢は皮肉るが、仮に紫の意図が彼女の予期した通りであるならば、今回の事態を説明するのは容易である。
中山を吊し上げる為の一連の騒ぎを神子が主導したとすれば、それは紫に恩を売る結果となるからだ。
更に紫としても、自ら手を汚さず危険因子を排除する為の錦の御旗を作れる上、
将来の危険因子たる可能性がある神子達の情報を得られるのだから、決して損な話ではなく。
紫と神子とが、彼女らの部下すらもあずかり知らぬ場所でこうした交渉を進めていても、何らおかしくはない。

紫「さて。話が逸れてしまったけれど……中山政男君?」

中山「……僕は、貴女に殺されるのでしょうか」

周囲の疑念が高まる中、紫は本題とばかりに中山に向き合った。
人形のような美しさ、愛らしさの中に禍々しさと狂気を孕んだ瞳に心が吸い込まれそうになる。
しかしそれでも、中山は弱弱しくもハッキリと言葉を紡いだ。

紫「殺しはしませんわ。力に訴えて君の首をこの場で捻る事は簡単ですけど、
それは即ち、私が貴方の持つ力に屈した事の証左となってしまう。
だから、この幻想郷の理に則って、貴方が正しく『退治』される事。……それがまず第一に必要となります」

中山「そうですか。では、もし僕が幻想郷の理どおり『退治』されれば、問題は無いと」

紫「――いいえ。私はそれだけを望んでいる訳では無くってよ。
具体的には、退治の後、速やかに幻想郷から外界へと帰還される事。そして……」

スッ……。

そこで初めて、紫は霊夢と中山以外の人物に視線を向けた。
彼女の目線は中山を通り過ぎ、しかし輝夜や永琳、神子程奥には行かず。
……その中間に居た、長い兎耳を付けた少女の場所で止まった。

575 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:07:11 ID:???
鈴仙「…………!」

最初は取り乱していた鈴仙も、この期に及んでは少しだけ順応できていた。
事前に藍や永琳から、紫の計画や悪意などについて聞き及んでいたから、覚悟があったのかもしれない。
ともかく、鈴仙を見据えて、彼女は虚ろにこう言い放った。

紫「私が退治を望むのは、正確には中山政男だけでは無い。
鈴仙・優曇華院・イナバ。貴女もまた、幻想郷の理に従って、博麗の巫女により退治されるべきと考えます。
何故なら貴女もまた、中山政男の共犯。
なにせ貴女は、彼の持つ『希望』による影響を一心に受け、それを幻想郷中へとバラ撒いた張本人だからね」

鈴仙「……そう、ですか」

紫「あら。思ったより反応が薄いわね。誰から事前に話を聞いていたのかしら」

この言葉を聞いて、紫は藍と自分の密会――力が減退した紫を救うための計画――が
発覚してしまったのではないかと強い畏れを抱いた。
アレは紫に決して聞かれてはならない、と藍も強く念を押していたのだから。
しかしそれは杞憂だったようで、紫はなんてね、と悪戯っぽく呟くと、これ以上の追及は行わない。
ただし、彼女は代わりに鈴仙の耳元へと近寄り、こう甘い言葉を吐いた。

紫「……貴女はここで諦めて、『退治』されれば良いの。そうしたら、誰も何も傷つく事は無い。
中山政男は帰り、貴女は元の生活に戻るだけ。……何も、辛い事は無いのよ」

鈴仙「…………」

576 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:10:02 ID:???
霊夢「退治と言っても、弾幕ごっこでも弾幕アクションでも無いわ。これは形式的な……いわば儀式。
『幻想郷を破壊し得る力を持った中山政男は、その部下共々博麗の巫女にやられました。
その後、皆で宴会をやりました。結局、中山政男も案外大した事なく、幻想郷はいつもの幻想郷のままでした。』
……そんな、いつものストーリーを。いつもの世界を繰り返す為にも必要な茶番を。
――鈴仙。アンタと中山君は演じてくれれば、それで良いのよ。
紫にハメられて悔しい気持ちは分かるけど、……私だって、これ以上良い方法は無いと思うし」

霊夢もまた、普段のさばさばとした口調は鳴りを潜め、
紫の提案する儀式への参加こそが最善ではないかと提案してくれた。
恐らくそれは紫の策略をも度外視して、
どうすれば鈴仙が一番傷つかずに済むかを、霊夢なりに考えてくれた上での結論ではないかと思った。

鈴仙「(八雲紫は言った。この場で霊夢により『退治』される事を決めれば良いと。
そうすれば、辛い事はなにも無くなると)」

鈴仙もまた、考えていた。どうする事が、自分にとっての最善なのか。
これまで、【プロジェクト・カウンターハクレイ】や【リアル・幻想・セブン】への参加などの話こそあったが、
それらは全て、中山や鈴仙を排斥しようとする紫と戦う為の選択だった。

鈴仙「(……だけど。私は本当に戦わなくちゃいけないの?
私は本当に信じられる仲間を得て。師匠にも並び立ち得る選手になりつつあって。
その上で――私は一体、何を望もうというの?)」

今ここで、現実に紫と相対して。
あらゆる手段で――そこに姑息が紛れていても――幻想郷全体の為に尽くそうとする紫に、本当に対立すべきなのか。
鈴仙は強い疑問を覚えるようになった。

中山「鈴仙さん。言わなくても分かってると思うが……自分自身が、一番良いと思う選択をするんだぞ。
俺や永琳さん。あるいは輝夜さんなんかに囚われなくても良い。自分の意志がどうあるかに従って……!」

577 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:24:17 ID:HvKIT762
紫「――静かに。これ以上貴女の思想が。……希望の力が感染しては堪らないわ」

中山「ぐっ……!」

鈴仙「(希望……それだけ取り出すと良い言葉だけど。
希望を得る為には多くの困難に立ち向かわないといけないし、
強い希望を持っていると、その分感じる絶望だって大きくなってしまう。
だから、八雲紫が病毒のように扱うのも、あながち間違いじゃないのかも)」

不意に鈴仙の眼前に現れた、新たなる選択肢……紫とは戦わないこと。
その魅力的な内容に、鈴仙は思わずこれまでの記憶すら忘れてのめり込みそうになる。
しかし同時に鈴仙は、中山が最後に放った言葉も思い出していた。

『自分の意志がどうあるかに従って』。――鈴仙は、紫にこう返答した。

鈴仙「私は……」

A:それでも希望を諦めない。異変の主犯として、自分は霊夢に立ち向かう!
B:もう辛い想いはしたくない。このまま退治され、穏やかな生活を取り戻す。

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票し……



鈴仙「……投票なんて、しなくたっていいわよ。こんなの、決まり切ってるんだからさ」


――投票なんかあっても無くても関係ない。
他者の意志なんかに左右されずとも、左右されたとしても。
鈴仙がこの場で出すべき答えは決まっていた。

578 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:30:16 ID:???




鈴仙「――私は。……傷ついたって良い! それでも、中山さんが私に教えてくれた希望を諦めたくない!
茶番以下の口裏合わせなんてまっぴら御免よ。 ――私は、幻想郷を破壊する異変の主犯として、最後まで戦う!
その先待ち受けているのが悪夢だったとしても、それでも……それでも! 私は行くしかないんだから……!!」

579 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/08(土) 01:36:21 ID:???
――と、言ったところで今日の更新はここまでです。
長引いた試合後イベントですが、明日には終わらせてからウサギBの命名イベント。
明後日以降は紅魔スカーレットムーンズVS博麗連合戦へと繋いで行こうと思います。
……つまり、命名イベント以降は暫くNPCシーンが続く事になります(汗)

<現在出ている名前案>(>>421さんより)
・因幡 霞(かすみ)
・因幡 椿(つばき)
・因幡 風音(かざね)
・因幡 鈴音(すずね)

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

580 :森崎名無しさん:2015/08/08(土) 07:55:37 ID:???
乙ロット!

とうとう鈴仙も言いたいこと言ったな!
これからが本当の異変だ・・・!覚悟しろ!

581 :森崎名無しさん:2015/08/08(土) 10:20:19 ID:???
どっかで見たことあると思ったらこれ今やってるキン肉マンだ
希望が友情パワーで紫があやつそのまんまだ

582 :森崎名無しさん:2015/08/08(土) 11:02:29 ID:???
惑わされるなーッ
惑わされるなと言っておるーっ

583 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:27:10 ID:???
こんばんは、遅くなりましたが今日も更新します。
>>580
乙ロットありがとうございます。
ここから決勝戦までは、この勢いのままハイテンションで進めていきたいですね。
>>581-582
今やってるキン肉マンは分かりませんが、
希望がどうこうってあたりは、最近クリアしたダンガンロンパの影響を受けてるかもです(汗)

584 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:28:14 ID:???
紫「何を言ってるのか、ちょっと良く分からなかったわね」

紫はおどけたように、しかしその視線は先程の数倍も冷たく、鈴仙を睨みつける。
中山すらも怯んでしまいそうな程おぞましいその眼は、
怖がりの鈴仙にとって卒倒失禁レベルの怖さがあったが……それでも、もう退けなかった。
いや、退きたくないという強い気持ちがあった。

鈴仙「――私は、戦うって言ったのよ!
中山さんに導いて貰った道を、これからも自分の力で切り開くために……!」

霊夢「いや……。無理しなくて良いってば。足ガクガクに震えてるし」

鈴仙「む、武者震いだってば!」

本当は、自分の足が無意識に震えている事にすら気づいていなかった。
霊夢にすら心配される異常事態にも堪えず、鈴仙はびしっと人差し指を立てて、紫にこう宣言する。

鈴仙「……中山さんは勿論、私だって、今みたいな言いくるめで納得するもんですか。
もしも私や中山さんが間違ってるって言うんなら、正々堂々とサッカーで勝ってから言ってよね!」

紫「…………」

紫は黙っていた。笑顔はもはや顔だけだった。

霊夢「……でもさ、紫。それも一理あるんじゃないの。
というか、こんな騒ぎが出るまでは、『サッカーでの私達の勝利をもって異変の解決とする』
みたいな話だった気がするし。……だから、今日は一旦退い―――」

585 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:33:29 ID:???
紫「だったら、中山政男の代わりに、貴女を排除しようかしら」

鈴仙「は、話を最後まで……!」

スッ……ブウン。
――バババババババババババババババババババババッ!

鈴仙「……え?」

気付くと、紫は霊夢の諫言をも制して、鈴仙の周囲に多重の弾幕を巡らせていた。

紫「――中山政男は確かに貴女の言う通り。
私達はより正式な手順を踏み、退治するべきかもしれないわね。
その方がより良い『見せしめ』となるのだから。

けれど……考えてみれば貴女の場合は別。
サッカーでしか戦う術を知らない彼と違って、弾幕ごっこでも格闘技一般でも、
貴女の力を正当に較べ合う手段は沢山あるんだもの。
だったら――今この場で、貴女を排除しておいても、決して悪くは無い筈よね?」

一秒間に3353発。
粒弾小弾中弾大弾特大弾。くない弾ナイフ弾楔弾札弾星弾月弾銃弾ウイルス弾。
幻想郷の内外から揃えられた弾丸が鈴仙の周囲に壁を作っている。
普段の弾幕ごっことは違う点は二つあって、そこには一切の抜け道が無い点と、
一発一発が鈴仙の肉体を焼き切る程の威力が籠められていた点だった。

紫は長くて白い指を打ち鳴らそうとしていた。彼女は今そこで鈴仙を亡き者にしようと考えている。

鈴仙「(……私はあくまでも、中山さんのオマケにすぎない。
だから、中山さんを退治するタイミングは善処こそすれ、私なんかは、ある程度はどうなっても良いと。
そういう事かしら。……だとしたら、舐められたものね)」

586 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:38:41 ID:???
紫「大丈夫よ。1フレーム単位で正確な動きさえ出来れば抜けられる穴があるから、
この弾幕は完全なる不可能弾幕じゃない。……命名決闘法違反じゃありませんわ」

紫はこの時、少なからず逆上していたのかもしれない。
霊夢の制止すら聞かずに、彼女は残酷な笑みを浮かべて弾を放つタイミングを見計らっていたが。
……結果的は間の抜けた事に、彼女は『第三者』による襲撃を見逃してしまう事となった。



???「……スピア・ザ・グングニルッ!」


バギュルルルルルルルルルルルルッ……ズバァァッ!!

バンッ! バリバリバリバリ……バシュウウウウウッ!!!



紫「!?」


鈴仙と紫とを隔てるように、天空から一陣の紅光が刺した。
その一撃は少なくとも紫にとっては然したる威力では無かったらしいが、
しかし弾幕の壁を打ち破るには充分な制度と破壊力があった。

587 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:39:46 ID:???
鈴仙「(や、やっぱり怖い……! ――って、あれ?)」

意識を失いそうな緊迫感の中、鈴仙はその隙に気付く。
眼前には弾幕は無く、代わりに紅い槍が地面に突き刺さっていたのだから、気付かない方がおかしいとも言える。

紫「――貴女も私を裏切る気かしら。
私は、貴女方のような妖怪の為に、こうして危険因子を取り除こうと奮闘しているというのに……」

紫は心底哀しむように空を仰いで呟く。
果たして、その先には槍を投げ放った張本人が不敵な笑みを湛えていた。
彼女は腕を組みながら、尊大な態度でこうも言い放った。

レミリア「何を言うか八雲の大妖。私は貴殿に協力してやろうと思っていたのに。
折角の準決勝戦の会場が、バラバラになってた事への腹いせに、ね」

鈴仙「あ。……れ、レミリアさん!?」

そこに居たのは、幻想郷では間違い無く高名な妖怪の一つである吸血鬼。
紅魔館の当主であるレミリア・スカーレット本人で間違いが無かった。
彼女は外見相応の好奇心旺盛な瞳を輝かせながら地上へと降りて行き、紫に対してこう話す。

レミリア「大体の話は聞かせて貰った。そして、その上で私は貴殿に宣言しようじゃないか」

紫「……私の行為が姑息である、とでも? もしくは、鈴仙を排斥しない為の陳情かしら?」

レミリア「どっちでも無いわね。私は姑息であっても全力を尽くしての行為ならば否定はしないし、
どっかの自称賢者ならともかく、この私までもがあんな頭の緩い兎風情を助け出す義理も無い」

鈴仙「(頭の緩い兎……どーせ私なんか……)」

588 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:41:05 ID:???
紫「だったら何か。その中身をお聞かせ頂きたいわね。
協力と言っていたけれど。もしや貴女が私に代わって、この鈴仙を排除してくれるとでも?」

紫は嘲るように招かれる第三者へと尋ねた。レミリアはハハハと笑って、紫にこう答えた。

レミリア「さすがは妖怪の賢者ね! その通り。私が代わりに鈴仙を。アイツらを退治してやるって言ってんのよ」

霊夢「………………は?」

突拍子も無い発言に、いよいよ場は凍り付く。
それも、これまでの緊張感を引き継いだものでは無い、単純な混乱によって。
ただし幸いな事に、今のレミリアの発言を解説してくれる人物も追いついた。

パチュリー「……はぁ。要するにレミィは拗ねてるだけなのよ。
準決勝戦第二試合そっちのけで、あんた達が鈴仙やら中山政男を吊し上げてるから。
当の鈴仙達にしろ、私達そっちのけで、異変を解決するだの霊夢に挑むだの言ってるしねぇ」

咲夜「ただでさえ人一倍プライドの高いお嬢様ですし……」

美鈴「あはは、困ったものですねぇ」

陸「ハヒーッ! 貴様らか弱い人間である朕に荷物持ちさせんなアルー!」

フラン「zzz……」(←昼なので陸におぶさって寝ている)

佳歩「あ! 紅魔スカーレットムーンズの人達です!」

小悪魔「あらどうも。ご無沙汰してます」

……とはいえ、彼女達にはあくまで解説役であり、今目下で繰り広げられている
レミリアと紫との静かな対立を止めるまでには至らない。
鈴仙がビビり、霊夢が辟易としている中、二人は未だ話し続けていた。

589 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:42:16 ID:???
レミリア「……大体、気にくわないのよ。自分こそが幻想郷の秩序を守る存在だ。
だから自分がか弱い妖怪達を調子に乗った人間から守ってやろう、的な考えがさ。
だってさ。人間の創り上げた希望に対する敵ってのは、希望を台無しにする、絶望的な理不尽や恐怖。
――すなわち、私達妖怪そのものじゃない。だから、私達にも鈴仙を退治する権利があるって訳よ」

紫「……霊夢や私に代わって、貴女が『希望』を退治してくれると。だとしたら、それは随分な思い上がりね。
暴力を振るうしか能が無い吸血鬼風情に、中山政男の希望を打ち砕けるとは、私には思えないわ」

レミリア「私だけだったらそうかもね。
でも、私には優秀な妹やら自称賢者やらメイドやら門番やら中国人やらが居るのよ。
相手が希望の力で結束しているとしたら、私達はいわば、絶望の力で結束した軍団。
条件は敵と大体一緒だと思うし、むしろ我らの方が敵役に相応しい気すらするけれど?」

霊夢「……はぁ。長々と喋っちゃって。でも、大体言いたい事は分かったわ」

永遠に終わりそうに無い紫とレミリアの口論に割って入ったのは霊夢だった。

霊夢「要するにレミリア。アンタは私や紫に対して、『鈴仙の敵役ぶるなら、まずは自分達を倒してからにしろ!』
……って、言いたい訳でしょ。それには私も同意だから、心配しなくて良いわよ。
今回の件だって、紫が勝手に突っ走ったのもあるしね」

紫「あら。その点については私だって反対はしていませんわ。
ただ単に、『紅魔スカーレットムーンズは、永遠亭ルナティックスに対立する器ではない』と主張していただけですし」

レミリア「あんですってぇー!? やる前から決めつけないでよね、バーカ!」

咲夜「お嬢様、口調がブレイクしております」

レミリア「おっと……コホン。――ならば、準決勝戦はきちんと執り行われると。
そして我々が勝った場合は、先ほどの異変解決がどうとかも含めて、
全て我々の思い通りにしても良いと。そういう認識で良かったかしら?」

590 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:44:08 ID:???
紫「更なる絶望で、中山政男の希望に蓋をすると言うのなら、それは止めませんわ。……出来るならば、だけど」

パチュリー「――試合が恙なく行われるのは、嬉しい知らせだけど。
……こんなボロボロのスタジアムじゃあ、もう試合なんてできないわね。
フィールド中に穴は開いてるし、観客席は瓦礫の山だし……。
今からでも、人里のサッカーコートにでも移動すれば良かった?」

紫「いいえ。それには及びませんわ。……この程度の事なら、それっ」

ブウウン。パァァァァァァァァァアアアアアアアッ……!

パスカル「うわっ、凄い! スタジアムがまるで、巻き戻し映像のように元の姿に戻って行くぞ!」

ウサギD「ど、どんな仕組みなんですか!?」

慧音「……八雲紫の得意とする、『境界操作能力』の応用かな。
例えば、『過去』と『現在』の境界を曖昧にし、過去に健在だったスタジアムの光景を復元させたとか」

妹紅「永琳とか輝夜とかと付き合っていると忘れがちだけど。あれも中々におかしい能力だよなぁ……」

鈴仙「(……本当に。ほんっと〜〜〜〜に。八雲紫って力を失いつつあるのよね。
これで本気じゃないとしたら、一体どれだけチート級な妖怪なのよぉ……!)」

紫「……疲れたから、私は別の場所で状況を静観させて頂く事にするわ。
――霊夢。後は頼んだわよ。全ては、私達が愛する幻想郷の為に……」

ブウウン……スッ。

霊夢「あっ、行っちゃった。――全く、紫にも困ったものねぇ。
……しょうがない。私もめんどいけど、試合準備にでも行きますか」

タッ、タッ……。

591 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:45:48 ID:???
――紫が去り、少しずつではあったが、事態はとりあえずの収束を迎えようとしていた。
試合後の下剋上騒ぎは中山によって解決され、
その後の紫による中山糾弾は鈴仙の主張によって退けられ、
鈴仙への報復は、午後からの準決勝第二試合を控えたレミリアによって防がれた。
――そして、今、紆余曲折を経て準決勝第二試合は始まろうとしている。

レミリア「おい、頭の緩い兎妖怪さん」

鈴仙「……私、ですよねぇ」

レミリア「別に、バカにして言った訳じゃないけどね。頭が緩い方が、柔軟に物事を考えられる訳だしさ」

最後に、鈴仙の命を結果的に救ってくれたレミリアは鈴仙に声を掛ける。
先ほど自分達を退治する、と言った割にその口調は非常に親しげだった。

鈴仙「あの、さっきはありがとうございます。もしも、あの槍が無かったら……」

レミリア「あの槍が無かったところで、きっと誰かが助けに来てたよ。私は関係ない。
ただ単純に、面白くないから喧嘩を売っただけよ」

鈴仙「それって、自分が無視されてた事……だったり?」

レミリア「ま、それが9割ね」

鈴仙「思ったより多い!?」

レミリア「当たり前じゃない。私を誰だと思ってる、って話よ。……っと、着いちゃったわね。私のチームの控室」

鈴仙「ええ。その……観客席で応援してます。紅魔スカーレットムーンズ」

レミリア「ええ、ありがとう」

592 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:48:13 ID:???

鈴仙はスタジアムのフィールドから控室までレミリアを見送った。
途中の彼女は上機嫌な様子で、鈴仙もそこまで会話に困らなかった。
そして結局、鈴仙は思い至る事が出来なかった。

中山「(……俺のせいで、鈴仙さんは命を失いかけた。
鈴仙さんは、それでも俺の教えてくれた希望を諦めないと言ってくれたけれど。
俺だけが傷つくならそれで良い。
だが、俺は。他者をそんな目に遭わせてまで、この場所に居ても良いのだろうか……?)」


――今回の一件は、あの中山の強靭な精神にすら、僅かならぬ罅を入れていたという事実に。

593 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 02:59:05 ID:fbshiDjU
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
明日はウサギBの命名イベントから開始します。
流れとしては、現在出ている名前(下記)+次の更新時(明日夕方ごろ)までに出ている名前+自由選択枠(要4票)
で3票決の投票をし、必要に応じて決戦投票をする……と言う流れを考えています。
なので、皆様につきましては、積極的に名前案を考えて頂ければ幸いです。

(現在出ている名前案)
・因幡 霞(かすみ)
・因幡 椿(つばき)
・因幡 風音(かざね)
・因幡 鈴音(すずね)

(参考:ウサギBの特徴)※私がパッと思いついたもの、考えているものを抜粋
・基本的には真面目な性格(外見的にも真面目なイメージ(?))
・主にウサギCへツッコミを行う
・ややデータマン気質
・新聞記者(射命丸)に憧れている
・データマンをこじらせた結果(?)、スパイとしての能力が高い
・サッカー能力はオールラウンド型だが、パスが上手い


それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

594 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 03:15:56 ID:???
乙です
紫がどうみてもいろんな意味でハードウェア

595 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 19:35:57 ID:???
乙なのです

紫さん、こうみえて鈴仙さんチートクラスの強さですよ!
ただ周りがそれ以上に規格外すぎるだけです!

596 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 19:39:58 ID:fbshiDjU
こんばんは、今日はウサギBの命名イベントをしようと思います。
>>594
乙ありがとうございます。
ハードウェアは良く分かりませんが、多分似たキャラは居るかと思いますw

597 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 19:45:19 ID:fbshiDjU
>>595
乙ありがとうございます。
原作的に鈴仙は地味に強キャラだと思いますが、『地味に強キャラ』の域からは抜けられないイメージですね…。

【命名イベント・ウサギB】

ウサギB「……あっ、鈴仙さま、お疲れ様です」

鈴仙「ありがと。……何だか大変な事になっちゃったわね」

レミリアとの会話を終えた鈴仙は、続く準決勝第二試合。
紅魔スカーレットムーンズ対博麗連合2015の観客席で仲間達と合流した。
一番通路側に座っていたウサギBは、そんな鈴仙にタオルとスポーツドリンクを用意してくれていた。

ウサギB「あと、これが今大会における紅魔スカーレットムーンズの分析データです。
やっぱり、私達と練習試合をした時と比べて、チーム力が格段に成長しているみたいでした」

しかもそれに加えて、ウサギBは独自の分析データに基づき作られたレジュメを鈴仙に手渡してくれる。
新聞記者に憧れていて、情報収集を得意とするウサギBだったが、
こうして思えば、職業人的な気配りや手回しにも長けているのも彼女である。
守矢みらくるずへのスパイ工作で大きな成果を挙げてくれた事もあり、
鈴仙はウサギBに参謀として全幅の信頼を寄せていた。

鈴仙「……でも、凄い分析量ね、ホントに。どうやって、ここまで調べているの?」

ウサギB「えっと。それはまあ、色々とコネやらツテを使いまして」

鈴仙「(どんなツテなんだろ……)」

――ただ、その周到過ぎる仕事には恐ろしい裏がありそうではあるが。

598 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 19:47:19 ID:fbshiDjU
ウサギB「……ところで、鈴仙さま。一つお願いがあるんです」

鈴仙「え、お願い?」

だから、そんな一人でも何とかしてくれそうなウサギBにお願い事があると聞いた時、
鈴仙は少し驚いた。

ウサギB「はい。……とは言っても、大した事では無いんですけど。
仕事をするにあたって、私にも個としての名前が欲しいんです。
これまでは何とかなったけど、やっぱり、手を広げる際には、名前という信頼が必要って事もあって」

鈴仙「い、いや……別に良いけど。凄い理由ね」

ウサギB「私は今でこそ、探偵やスパイみたいな事しかやってないですけど。
将来は、自分の名前の新聞を世に出したいって思ってるんです。
天狗や人間のためだけじゃない。もっと色んな人や妖怪の為になる新聞を、作ってみたいんです。
そして。そのためにはやっぱり、私の、私としての『名前』が必要になるんです」

ウサギBは切実な瞳で鈴仙にそう訴えかける。その言葉に嘘は無いように思えた。

鈴仙「なるほど。あんたの新聞やデータに懸ける気持ちは分かったわ。
――でも、私なんかで良いの? 貴女の名付け親になるなんて……」

ウサギB「はい。鈴仙さまのお蔭で私は自分に自信を持てるようになりましたし。
それに、データだけでは測れない事象が世の中には沢山あるって事を、教えてくださいました」

額まで綺麗に切りそろえられた真っ直ぐな短髪を揺らして、
純朴そうながらも知性の煌めきを秘めた瞳を鈴仙へと向けるウサギB。
元気そうなイメージの佳歩と外見的な年齢はさして変わらないが、
ウサギBからは、どちらかと言えばインドアな雰囲気を感じる。

599 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/09(日) 19:49:59 ID:fbshiDjU
ウサギB「てゐ様や佳歩ちゃん。それとお師匠様にも相談したんですけど、三人とも、
やっぱり鈴仙さまに決めて貰ったら良いんじゃないかって。ですから……お願いできますか?」

鈴仙「(師匠まで、そんな事仰ってたのね……。そうなると、ますます責任重大ね)」

輝夜「(アレ? 私は……?)」

――名前を付ける理由こそ、これまでの佳歩やつかさの時とは異なり特殊だが、
しかし彼女が名前に懸ける想いの強さは一緒である。
だからこそ、鈴仙は安易に名付けられないと思って真剣にウサギBに相応しい名前を考える。
そして、その結果考え付いたのは――。



***ウサギBの名前を選択してください***

A:因幡 霞(かすみ)
B:因幡 椿(つばき)
C:因幡 風音(かざね)
D:因幡 鈴音(すずね)
E:レミリア「私の解釈では、ウサギBは『可能性の獣』なのよね。きゅうけつ獣ごっこ」
  鈴仙「『仮現獣性』〈ヴァリアブラ・ベスティア〉、ね」
F:ここは敢えて『ウサギB』という名前にしてはどうか。
G:その他 *4票決

先に【3】票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。
本日21時30分時点で未決でしたら、2票以上入ったもので決戦投票を行います。

600 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 19:56:22 ID:llsy47lI
A
全然関係ないですが忍びなれども忍ばない忍者の桃色(知性派の裏番)が同じ名前だったりします

601 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 19:58:51 ID:i6qqoJjA
G 因幡 李白

602 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 20:00:18 ID:rjGDeExw
A

603 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 20:09:43 ID:3f1t0lLo
A

604 :森崎名無しさん:2015/08/09(日) 21:37:38 ID:???
ハードウェアはキャラじゃないです
頭が固い、融通が利かない、決まった動きしているみたいだからそう思っただけです

分かりにくくてすみませんでした

605 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/10(月) 01:04:51 ID:LKJ+kdew
すみません、本当はスカーレットムーンズ戦の開始まで行きたかったのですが、力尽きました(汗)
ほんの少し+無判定となり恐縮ですが、命名イベントの最後だけ先に更新します。
>>600
検索して知りましたが、戦隊ヒーローものはネタを出すのが大変だなぁと思いましたw
>>604
ああ、こちらこそすみません。そういう意味だったんですね。
あまり最近のアニメとかに詳しくないので、そうしたキャラが居るのかと思ってしまってました(汗)

606 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/10(月) 01:06:09 ID:???
A:因幡 霞(かすみ)

鈴仙「……かすみって、どうかしら? 霞って書いて」

ウサぎB「霞……ですか。綺麗な名前ですね」

鈴仙「カスミソウの花には清らかな心とか、親切とか花言葉があるらしくてね。
それが、いつも個性的な皆を纏めてくれるBちゃんにもぴったりかと思って。
それに、私達はこれまでBちゃんのデータ収集や工作活動のお蔭で、ここまでやって来れた。
試合でも、鮮やかな活躍は無くとも、オールラウンドな能力と技巧的なパスで、いつも私達の戦略の穴を埋めてくれていた。

……丁度、花束を作るには綺麗な花の周囲を彩るカスミソウが欠かせないように。
Bちゃん。――いえ。霞ちゃん。……貴女は、私達にとって欠かせない存在なのだから」

ウサギB「鈴仙さま。――そこまで、私の事を考えて下さって……」

鈴仙が考えた名前を、ウサギBは気に入ってくれたようだった。
鈴仙自身も、霞という文字のイメージと、ウサギBのイメージとで強い繋がりがあると思った。

鈴仙「後は、佳歩やつかさと同じに、因幡の姓を与えましょうか。
あなたも、私とてゐの姉妹みたいなもんだからね」

607 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/10(月) 01:07:24 ID:???

ウサギB「……はい。ありがとうございます、鈴仙さま。
さっそく、他の仲間にも報告して来ようと思います!
――とは言っても、もうすぐ試合ですから、もうちょっとは我慢ですけどね」

永遠亭の妖怪ウサギにとって、上司から名前を貰う事は大変名誉な事だ。
そんな名誉な事があっても、即座にはしゃぎ回らずに居たのは、
ウサギB……いや、霞がしっかり者である事の証左であろう。

霞「……えへへっ」

ただし、その代わり、この時の霞は――年相応に嬉しそうな笑顔を鈴仙に見せてくれていた。


*ウサギBが名前を貰い、「因幡 霞(いなば 霞)」になりました!
 以降は「ウサギB」ではなく、「因幡 霞」(もしくは霞)と表記します。

608 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/10(月) 01:14:50 ID:???
…と、これだけですが今日の更新はここまでです。
明日から暫くNPC戦となってしまいますが、決勝戦前の最後の大試合という事で、
決勝戦へのモチベーションアップになれば良いなと思っています。

それでは皆さま、本日もお疲れ様でした。

609 :森崎名無しさん:2015/08/10(月) 01:18:00 ID:???
乙なのです

まさか佳歩ちゃんに続いて霞ちゃんが採用されるとは……
感無量なのです

そういえば博麗チームを見るのは初めてですね
さすがに霊夢さん達もお嬢様相手に手札を隠しては勝てまい……
そうだといいなあ(願望)

610 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:31:13 ID:???
こんばんは、準決勝第二試合を始めていきます。
>>609
乙と名前の提案ありがとうございます!
今回の準決勝第二試合は、本スレのブラジルVSドイツ戦みたいな立ち位置を考えています。
なので戦力の大体全ては、この試合で分かるようにしたいと思っています。

611 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:32:21 ID:YRgTZCP+
〜大会15日目・午後・固定イベント〜
【決勝トーナメント・準決勝第二試合 博麗連合VS紅魔スカーレットムーンズ】
−妖怪の山モリヤスタジアム・観客席−

岬「……はあ」

――騒がしさが戻りつつある守矢スタジアム。
鈴仙がウサギBに名前を付けようとしていた時、
あの後聖徳ホウリューズから放り出されたような恰好となってしまった岬太郎は、大きく溜息を吐いていた。

岬「(――僕は最初、豊聡耳神子に勝負を挑んだ心算でいた。
だけど結果として、それは用済みになった僕を放り出す為に、彼女が仕組んだ茶番に過ぎなかった。
八雲紫に恩を売れた聖徳ホウリューズは、幻想郷中でも最強の後ろ盾を得る事に成功し。
そしてきっと、これからはヒューガーとの連携も深めて、少しずつ、自分の力を強めていくつもりなんだろう。
……現在進行中の、【ハイパーカンピオーネ】計画を、より盤石とするために)」

岬はこの幻想郷で初めて、詐欺師として大きく敗北した。
不運や偶然と言った外的要因は関係なく、完全に自らの能力を出し切って、それで負けたのである。
人生で初めて味わったこの挫折は、岬の合理的な思考に、ある程度の支障を生じさせていた。

岬「(ふう。……考えれば考える程、思考が後ろ向きになる。こんな屈辱は生まれて初めてだ。
――けれど。今は気持ちを切り替えて、試合でも見るしかないか……)」

とはいえ、合理的な思考が出来ない状態で泥沼に嵌る程、岬は愚かな少年では無い。
彼は気を取り直して、眼前で今始まりつつある試合に意識を集中する事にした。

612 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:33:54 ID:YRgTZCP+
−モリヤスタジアム・フィールド−

実況「さあ……午前中の試合後にはちょっとしたトラブルもありましたが無事に解決し、
予定通り今、午後の試合が始まろうとしています!
そしてこの午後の試合こそが、今大会でも1、2を争う超ビッグカード!
由緒正しき名門・紅魔スカーレットムーンズ対、今大会最強チームの博麗連合2015の準決勝戦!!
午前中の試合も見ごたえあるものでしたが、この試合は恐らくそれ以上!!
里の評論家の中には、この試合を事実上の決勝戦と評する者すら居る位です!!」

観客「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「レミリアお嬢様ー! 勝ってくれー!」「博麗が勝つだろう」「魔理沙ー! またあのシュート見せてー!」

霊夢「……観客達も逞しいなぁ。午前中にあれだけ騒ぎがあったのに、もう戻って来てるし」

魔理沙「(午前中、何か騒ぎがあったのか……?
くそっ。練習に精一杯で、異変に構ってられないなんて、主人公として屈辱だぜ……)」

針妙丸「え? 試合の後何かあったの?」

天子「何よ! 異変だったら私も混ぜなさいよね!」

衣玖「総領娘様が混じると、話が余計に面倒になりそうですので止めて下さい」

小町「ねみぃ……(そういや最近練習ばっかりで仕事に行ってないなぁ。100日連続欠勤くらい?)」

アリス「(この大会で活躍して、私の知名度を上げる。そして友達を増やすのよ……!)」

萃香「うーい、酒はまだかー! 何ならメタノールでもいいぞー!」

中里「幻想郷にも慣れて来たでゴザるが。そう言えば紅魔館の吸血鬼と会うのは始めてでゴザったな。
(……ボインボインのセクシーヴァンパイアが居れば、もっと良かったのに……でゴザる)」

613 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:37:13 ID:YRgTZCP+
森崎「(レミリア・スカーレット。今大会得点王であり、『紅帝』の異名を持つナンバーワンFWだったか。
……漸く、この俺がキーパーをするに相応しい相手が出たみたいだな)」


実況「王者の風格で最終ラインの確認をしている博麗連合!
霊夢選手を中心に、大会がある度気まぐれで召集されるメンバーですが、
玄爺選手を除いては、どの選手もエース格の能力を誇る強者揃い!

ゴールキーパーの森崎有三選手は、当初は謎多きドリブラーとして考えられていましたが、
決勝トーナメント第一試合ではあの星熊勇儀選手を完封する程のファインセーブを見せた一流GK!

左サイドバックの比那名居天子選手は、オーバーラップからのシュートを得意とする攻撃的DF。
しかし天人特有の丈夫さを活かしたタックルやブロックは強烈で、格の違いを見せつけて来ました!

右サイドバックの中里正人選手も攻撃的ですが、こちらはドリブルによるボールキープを得意としております。
守備においても忍者らしい多彩な技を持っており、敵チームはあらゆる場面で彼に苦戦させられるでしょう。

センターバックの伊吹萃香選手については説明不要!
幻想郷でも屈指のGKでもありながらCBでもある彼女を抜いて、ボールをゴールへと届かせるのは困難が予想されます!」

ミッドフィルダー、左サイドハーフの永江衣玖選手は隠れた名脇役。
バランスの取れた突破能力・守備能力に加え、アシストに特化したパスは仕事人を想起させられます。

右サイドハーフのアリス・マーガトロイド選手は、一流のゲームメイカー。
華麗なパスと論理に裏打ちされた戦術眼に、紅魔スカーレットムーンズがどう立ち向かうかは見物です!

そして、そんなアリス選手をも抑えてトップ下に立つのが、我らが主人公・博麗霊夢選手!!
圧倒的な総合力と天性のカンを活かしたスーパーシューティングプレイヤーの凄さについては、もはや説明不要でしょう!
ドリブル、パス、シュート。タックル、パスカット、ブロック、クリア。全ての分野において最高レベルの才能を持っており、
取り分け天才的なドリブル突破と、高い浮き球への反応速度については他の追随を許しません!」

614 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:38:16 ID:YRgTZCP+

実況「博麗連合、今日の試合はブラジルタイプ……失礼、ハクレイタイプ風の4−3−3を採用しています。
ハクレイタイプでは、I番の選手をウイングに持って行き、中盤選手の飛び出しを活用するものですが、
今回は、ハクレイタイプの要の位置に、少名針妙丸選手を配置しております。

博麗連合への加入はつい最近の針妙丸選手ですが、ドリブルとシュートによる牽制役を期待されているのでしょう。
彼女がどれだけ敵陣をかき乱せるか。それがこの試合の結果にもつながって来るかもしれません!

左のフォワードは三途の川勤務の小野塚小町選手。平均的FWだった彼女は、今大会に向けてポストプレイを磨いた模様。
フットワークは重いですが、試合を決定づける大仕事をやってくれそうな。そんな貫録が漂います!!

そして、博麗連合を長年支える第二の主人公! センターフォワードの霧雨魔理沙選手は幻想郷屈指のストライカー!
一時は伸び悩みも指摘されましたが、それは全試合に見せた『ファイナルスパーク』の威力で雲散霧消!
この試合でも、持前のダイナミックなプレーを見せてくれる事を、大いに期待しております!」

魔理沙「…………」

霊夢「――魔理沙。分かってると思うけど」

魔理沙「『ファイナルスパーク』だろ? ――分かってるよ。撃たないよ……」

霊夢「あのシュートは、あんたのサッカー寿命……いや、もしかしたら命にとって危険すぎるもの。
だから今は魔法使いっぽく。如何に戦略的に相手に勝つかを考えてて……お願い、だからさ」

魔理沙「……うん。あの業突く張りの霊夢にお願いされちゃあ、断れないしな」

霊夢「……お願いね。本当に」

タッ……。

魔理沙「(……普段だったら、口喧嘩でも始める所だったのに。あの霊夢に気を遣われてるのか?
――だとしたら、私って本当に情けないな……)」

615 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:39:37 ID:YRgTZCP+
***


実況「博麗連合、霊夢選手と魔理沙選手が何やら打ち合わせをしており……!
そして、キャプテンの霊夢選手を除いて、それぞれの持ち場へと着いて行きました〜〜!!
後は紅魔スカーレットムーンズだけです!!」

レミリア「――クク。この試合に勝ち、ルナティックスとの決勝戦にも勝てば。
漸く、我らが幻想郷の王として君臨する事となりそうね……」

パチュリー「そう簡単に上手く行くとは思えないけどね。
大体、王になってもめんどくさいだけでしょ。何かビジョンとかある訳?」

レミリア「ないよ。なってから考える方が楽しいじゃない」

パチュリー「……レミィらしいわね。まぁ、そっちのが幻想郷っぽくて良いと思うけど」

咲夜「私はどうあろうとお嬢様を支えるだけですから、どうでも良いですわね」

美鈴「いや、どうでも良いってのはどうなんでしょうか、咲夜さん……」

陸「朕は金と女さえあれば良いアル」

フラン「(今日はできるかな。お姉様との連携技……)」

小悪魔「が、頑張りましょう、みなさん!」

616 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:40:52 ID:YRgTZCP+
実況「対する紅魔スカーレットムーンズもまた、各自の持ち場へと離れていきます!
今日の試合、スカーレットムーンズは中盤底に人数を割いた、トリプルボランチの4−3−3!

ゴールキーパーの陸大雷選手は、足技を得意とする異色のキーパーですが、その実力は本物!
博麗連合の並み居るシューターからも、そう易々とはゴールを奪われはしないでしょう!

今試合ディフェンスリーダーを務める十六夜咲夜選手も、大会に向けて得意のタックルを更に伸ばしました!
他の分野は勿論、タックルに長ける妖精メイド達への指揮の手腕も大いに期待できるでしょう!

左サイドバックについた紅美鈴選手! 彼女の跳ね返し能力には以前より定評がありますが、
強引なドリブルや強烈な必殺シュートなど、攻撃的サイドバックとしての活躍もあるでしょう!

中盤を支えるのは、紅魔館の動かない大図書館にして、賢者を自認するパチュリー・ノーレッジ選手!
霊夢選手にも匹敵する能力を持ちながら、30分しか戦えないハンデがあった彼女ですが、
今大会ではそれをほぼ克服しています。霊夢選手とのトップ下対決が今から楽しみだ〜〜!

そして、そんな彼女の後ろ、ボランチに居るのは縁の下の力持ち・小悪魔選手です。
自慢の『トップスピンパス』が、博麗連合の中盤にどこまで通用するかも見物でしょう!

スカーレットムーンズのツートップに立つのは勿論吸血鬼姉妹!
妹のフランドール・スカーレット選手は、元々強烈なプレイヤーでしたが、
姉との連携も強めており、妖怪の山FC戦では超強烈な必殺シュートを魅せてくれました。

そして姉のレミリア・スカーレット選手は、既に何度も説明したとおり、今大会屈指のストライカー!
現時点で準決勝を終えた鈴仙選手に並ぶ12ゴールを決めており、
この試合でも森崎選手に勝利しゴールを決める可能性も高い!

更に彼女はシュートだけでなく、ドリブルによる突破やパスによるゲームメイク。
タックルやクリアなどの守備能力でもそれぞれ一流の水準を見せている、正真正銘の名選手!!
今日の試合、純粋な勝ち負けは勿論ですが、
レミリア選手対魔理沙選手のストライカー対決も気になるところです!!」

617 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:46:27 ID:YRgTZCP+
実況「――さあ、レミリア選手が霊夢選手に向き合い、コイントスが始まった模様です!」

霊夢「……表。私達の先行ね」

レミリア「ふん。丁度良いハンデだな。実はこの結果も、私が運命を操って決めた事なのだよ」

霊夢「はいはい」

実況「コイントスの結果は……博麗連合が先攻! そしていよいよ! 幻想郷サッカー史に名を残す名勝負の火蓋が……!」

―――ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

実況「火蓋が、切って落とされました〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜! 博麗連合のキックオフで試合開始です!!」

−−@−− @森崎
−−A−− A玄爺
B−D−C B天子 D萃香 C中里
−−−−−
E−I−G E衣玖 I霊夢 Gアリス 
−−−−−
−−−J− J針妙丸  
F−H−− F小町 H魔理沙
博麗連合2014:4−3−3
紅魔スカーレットムーンズ:4−4−2
−H−−− Hフラン
−−−J− Jレミリア
−−I−− Iパチュリー
−−−−−
−FEG− E小悪魔
C−D−B C美鈴 D咲夜
−−A−−
−−@−− @陸

618 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/11(火) 00:49:04 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
皆様、本日もお疲れ様でした。

619 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:40:15 ID:???
こんばんは、更新していきます。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
霊夢「さて、行きましょうか」

タッ……。
――ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

実況「博麗連合のキックオフで、ボールはいきなりトップ下の霊夢選手に! そして見て下さいこの大歓声!
ボールを持っただけで、観衆はスーパーシューティングプレイヤーに夢中となるのです!」

レミリア「そして、そんな観客共を絶望のドン底に突き落とすのが私ら妖怪の仕事ってね。……フラン、行くわよ」

フラン「うん、お姉様!」

タッ、タタタッ!!

フラン「ぶっ壊れちゃえ、『レーヴァティン』!」

レミリア「夜の恐怖に怯えろ、『ドラキュラクレイドル』!」

――ズザアアアアアアアッ、ゴオオオオオオオオオオオオオッ!
  ……バギュルルルルルッ、グワッシャアアアアアアアアアアンッ!

実況「そしてそんな霊夢選手にぶつかって行くのは、紅魔館の吸血鬼姉妹!
守備も一流なレミリア選手は言うまでも無く、パワーを活かした接触プレイに長けるフランドール選手にとっても、
タックルによるボールカットはむしろ得意分野!
二人とも自慢の必殺タックルを発動させて、まるで小さな竜巻の如く、霊夢選手を吹き飛ばしに向かいます!」

620 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:41:56 ID:???
鈴仙(観客席)「う、うひゃあ……凄いタックルね、こりゃあ。私だったら奪われてるかも」

てゐ(観客席)「でも、どうかねぇ。あの位だったらお師匠様だってやってるし。幾ら二人掛かりっても……」

パチュリー「(……駄目ね。この程度じゃあ、レミィは霊夢に勝てない)」

霊夢「……じゃま」

ガシィッ。 ……ポーーーーーーーーーンッ!

レミリア「……しまった。上だったか」

実況「ああ〜〜っと! レミリア選手達のタックルは霊夢選手に全く敵わない!
霊夢選手自慢の『ヒールリフト』で、フラン選手諸共あっさりと躱されてしまいます!」

魔理沙「(あの技。私が持ってたサッカー教則本をチラっと見ただけで、霊夢は一発でマスターしちまったんだよな。
……あれから大分経つけど、私はまだできないのに)」

パチュリー「……そこまでよ。ここから先は通さな――」

タッ、クルルルルル……シュパァァァァッ!!

パチュリー「!?(……ま、負けた。この私が、真正面から来て何の反応も出来なかった……!)」

霊夢「何か言った?」

実況「続けて霊夢選手、パチュリー選手を『華麗なドリブル』でアッサリと突破!
天才トップ下対決はまず、霊夢選手に軍配が上がりました!!
霊夢選手はわき目も振らず、その実力を誇示するように中央を進んで行きます!」

621 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:44:08 ID:???
鈴仙(観客席)「う、うひゃあ……凄いタックルね、こりゃあ。私だったら奪われてるかも」

てゐ(観客席)「でも、どうかねぇ。あの位だったらお師匠様だってやってるし。幾ら二人掛かりっても……」

パチュリー「(……駄目ね。この程度じゃあ、レミィは霊夢に勝てない)」

霊夢「……じゃま」

ガシィッ。 ……ポーーーーーーーーーンッ!

レミリア「……しまった。上だったか」

実況「ああ〜〜っと! レミリア選手達のタックルは霊夢選手に全く敵わない!
霊夢選手自慢の『ヒールリフト』で、フラン選手諸共あっさりと躱されてしまいます!」

魔理沙「(あの技。私が持ってたサッカー教則本をチラっと見ただけで、霊夢は一発でマスターしちまったんだよな。
……あれから大分経つけど、私はまだできないのに)」

パチュリー「……そこまでよ。ここから先は通さな――」

タッ、クルルルルル……シュパァァァァッ!!

パチュリー「!?(……ま、負けた。この私が、真正面から来て何の反応も出来なかった……!)」

霊夢「何か言った?」

実況「続けて霊夢選手、パチュリー選手を『華麗なドリブル』でアッサリと突破!
天才トップ下対決はまず、霊夢選手に軍配が上がりました!!
霊夢選手はわき目も振らず、その実力を誇示するように中央を進んで行きます!」

622 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:45:44 ID:???
小悪魔「そ、そんな! お嬢様と妹様が。パチュリー様があんな簡単に負けるなんて……!」

咲夜「……小悪魔。あんたも力を貸して。質で競ってもダメなら、数で押し切るのよ!」

メイドF「は、はい!」

メイドG「わかりましたぁ!」

霊夢「……後少し抜けばチャンスみたいね。魔理沙は追いついてる?」

魔理沙「馬鹿にすんな! すばしっこさだけはお前にも負けてないからな。そっちこそ、ここでトチるなよ!」

霊夢「はいはい。分かってるってば」

咲夜「……お友達と会話が弾んで何よりだけど。そんなに暢気で、果たして私のナイフを躱せるかしら?」

霊夢「試合中にナイフを使ったら反則でしょ?」

実況「霊夢選手、真っ直ぐ進んで次は咲夜選手、小悪魔選手とメイド妖精2名に囲まれましたが……!
しかし、それでも余裕の表情! 王者の威厳か、それとも危機意識が無いだけかは良く分かりませんが、
幻想郷屈指のタックラーである咲夜選手を前にしてもひるまずドリブルに向かう様子です!」

咲夜「随分と舐めて下さいますわね、この私にドリブル勝負を挑むなんて。
――だけど。貴女はもうすでに、この私が操る時間の中!」

スッ……。


咲夜「捻じれて曲がりなさい! 奇術・『幻惑ミスディレクション』!」


ズザアアアアアアアアアアアアアッ! ズバッ、ズバズバァァァァアアアアアアア!!

623 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:47:21 ID:???
小悪魔「で、出たぁ! 咲夜選手がこの大会に向けて開発した新技タックル!!
二段から三段に進化したハイスピードフェイントタックルは、まさに逃げ場の無い脚技の檻!
これが完璧に入ったぁ! 入りましたよ!!」

メイドF「それに加えて、僅かな逃げ道は……!」

メイドG「私達妖精メイド隊がキッチリ抑えてるからねー! フフフ……観念してね、博麗の巫女!!」

霊夢「…………」

……ピタリ。

咲夜「……?(動きが、止まった……! 逃げ場が無いから観念したのかしら? それとも……)」

ベストコンディションでの4人掛かりのタックルを受けても尚、霊夢の表情は虚ろなまでに平穏だった。
獲物を絡め取った筈の咲夜はこの時、動物的な嫌な予感を覚えていたにも関わらず、
彼女は自身の理性を信じ、タックルに向かう脚を止めなかったが――これが、彼女にとって致命傷となった。



霊夢「――『博麗幻影』」

スッ。 ……ブウウウン。 ――スカスカスカッ!

小悪魔「……あれ?」

咲夜「……! そ、そんな! 『幻惑ミスディレクション』が完璧に入ったのに……!」

メイドF・メイドG「ど、どうして巫女が消えてるのぉぉぉ!?」


咲夜が。小悪魔が。妖精メイド達が完璧に捉えたと思った――いや、思わされていた霊夢の影は、既にどこにも居なかった。

624 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 00:53:39 ID:???
霊夢「私は一歩も動いていないわ。あんた達が勝手に見当違いの方向にタックルしただけでしょ」

咲夜「……完敗ですわ(――私は博麗の巫女を舐めていたみたいね。
今の彼女は、普段の霊夢じゃなかった。私達の先に潜む『異変』を解決する為の機械……そんな目をしていた)」

パスカル(観客席)「な、なんだ……なんだよ、アレ! まるで次元が違いすぎる……!
まるで、エイリンさんの全力のドリブルが絶え間なく続いているような……!」

永琳(観客席)「――あれが博麗霊夢よ。覚えておきなさい」

中山(観客席)「(……だが。あの咲夜さんのタックルも、決して霊夢さんに負けている筈は無く。
むしろ他の仲間達の助力も含めれば互角以上にも見えたが。……しかし、結果として彼女は勝った。
そんな数値をひっくり返す、豪運とも違う、『何か』があると見るべきだろうな)」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

実況「早〜〜〜い! 早い早い早い! 霊夢選手、試合開始僅か1分!
完全なる単独行動、ドリブル中央突破のゴリ押しで、紅魔スカーレットムーンズの主力を圧倒し得点チャンス!
スカーレットムーンズの名誉の為に言っておけば、彼女達のボールカット能力は決して低くありません!
むしろタックルに関しては、咲夜選手やパチュリー選手を筆頭に、
全チームでも1、2を誇る強さを持つと言っても過言ではないでしょう。
要するに、それだけ霊夢選手の突破力が凄すぎたのです!!」

観客「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「れーいーむ!」「れーいーむ!」「そのまま決めろー!」「次は魔理沙だ!」「小町さんだったりして…寝てるけど」

魔理沙「流石だぜ、霊夢! さあ、私に高い球を! このまま景気づけに一発決めてやる!」

霊夢「やかましいわねぇ、本当に。針妙丸を大きくしたみたい。――ま、精々頑張りなさいな」


グワァッ、バシュウウウウウウウウウウウッ!

625 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 01:02:30 ID:???
実況「霊夢選手、そこから高い浮き球をCFの霧雨魔理沙選手へと放り出した〜〜!
そう! これが博麗連合の黄金パターン! 霊夢選手が運び、魔理沙選手が決める!
幻想郷最強のゴールデンコンビにより、博麗連合はまずは1点をもぎ取ってしまうのでしょうか!
魔理沙選手、大きくボールに向かって振りかぶって……!!」

魔理沙「……動くと撃つ。いや、撃つと動くだ!――星符・『ドラゴンメテオ』!」

グワァァァッ……! バギュウウウウウウウウウウウウウウウウンッ! ビイイイイイイイイ………………イイン!!

実況「そのまま、オーバーヘッドキックの体勢で『マスタースパーク』を放ちました!!
これは霧雨魔理沙選手が以前から得意とする必殺ダイレクト・『ドラゴンメテオ』!
爆音とレーザー音を鳴らしながら、まさしく隕石の如く紅魔スカーレットムーンズのゴールへと突き刺さり……!?
いや、ちょっと待ってください!! 地面から紫色の閃光が、隕石に向かって走り出しました〜〜〜!!」

カッ!

陸「こんな、妹君の『495年の波紋』にも劣るヘナチョコシュート、全然怖くないアルね!
……チェスト〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!! 『襲爪雷斬脚』〜〜〜〜〜〜!!」

バギュウン! ドンンッ! ……バチィィィッ!

魔理沙「……マジかよ。完璧に防がれちまった」

実況「紫色に光ったのは陸選手の右脚でした!
彼がメイド妖精や美鈴選手がクリアに向かう中颯爽と飛び出し、自慢の新必殺技!
『襲爪雷斬脚』で魔理沙選手のシュートを完璧にクリアしてみせました〜〜〜!
やはりこの大会、紅魔スカーレットムーンズも強くなっていた〜〜〜〜〜〜!!」


陸「――フン。朕の強化なぞ屁のカスレベルアル。他のヤツラの成長っぷりを見て、度肝抜かすなヨ」

霊夢「(小手調べで突っ込んでみたけど……予想通り。レミリアの奴。今回はかなり『ガチ』みたいね……)」

626 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/12(水) 01:05:03 ID:???
…と、言ったところで今日の更新はここまでです。
皆様、本日もお疲れ様でした。

627 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:12:23 ID:???
鈴仙(観客席)「今飛び出したのって、陸だったっけ。ああまで凄いと、堪ったモンじゃないわねぇ……」

パスカル(観客席)「そうだな。単独でも恐らく、エイリンさんの『爆宙アポロ』をも防ぎうる威力はあった。
まして今回はメイリンさんやメイド妖精も居た分、さっきの『ドラゴンメテオ』は、間違い無く分が悪かったな」

霞(観客席)「分析データによると、魔理沙さんの高空シュートの最大火力は61。
単純比較はできませんが、星熊勇儀さんの『大江山嵐』や、
蘇我屠自古さんの『ガコウジサイクロン』にも若干劣っている印象ですね……」

輝夜(観客席)「それでも昔は、『幻想郷最強シュート!?』とか恐れられてたんだけどねぇ。
当時の私は魔理沙相手だったら普通のシュートでもゴール許してたから、良く分からないけど」

慧音(観客席)「……とはいえ。そうした事実は本人もきちんと把握済みか。落ち込んでいる様子が無い」

妹紅(観客席)「今のは霊夢と魔理沙的には、軽い小手調べだったのかも。 ……ほら、フィールドを見て」

慧音と妹紅の声に釣られてルナティックスメンバーがフィールドを覗く。
確かに、霊夢と魔理沙は今の一連の攻撃失敗を気にしている素振りも無かった。
想定の範囲内である、いやむしろ期待以上の結果だったと楽しげな風に、
二人は中盤でのボールの奪い合いに参加しようとしていた。


***

628 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:13:24 ID:???
ダダダダッ! シュッ、シュシュッ!

針妙丸「えーん! どうして病弱なのに私よりもすばしっこいのー!?」

パチュリー「私はトロいわよ。あんたがチョコマカしてるのを逆手に取ってるだけ。……それと」

――スッ。クルンッ! ……シュパァァァァァァァッ!

パチュリー「相手の隙を突いてタックルするのは良いけれど。技に溺れ過ぎているわ。
自分の技術に対してそうした高いプライドがあるから、いつまで経っても友達ができやしない」

アリス「と、ととと、友達は関係ないでしょう?!」

実況「陸選手がクリアしたボールは一旦パチュリー選手がフォロー!
パチュリー選手は巧みなドリブルで、針妙丸選手やアリス選手のタックルを捌いています!
今大会に向け、普段の『芸術的なドリブル』に加え、『華麗なドリブル』もマスターした彼女のドリブルはまさに至宝!
霊夢選手にも負けない足さばきで、試合の天秤をスカーレットムーンズ側へと傾けて行きます!」

魔理沙「だったら……私と霊夢が相手ならどうかな!」

タッ!

パチュリー「それは――勝率が余り良いとは言えないわね、降りよ。……小悪魔」

バシュッ……。

小悪魔「は、はい! 頑張りますっ!」

タッ、グワァァァァァッ……!

629 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:15:12 ID:???
実況「暫く中盤の乱戦を落ち着いて処理して来たパチュリー選手は、
霊夢選手と魔理沙選手の最接近を受けて一旦ボールを後ろに。
ボールを預かったのはボランチの小悪魔選手!
小悪魔選手はパチュリー選手に代わり、前線のレミリア選手目がけて脚を振り上げて……!」

小悪魔「――『トップスピンパス』です!」

実況「小悪魔選手、パス! ――伝家の宝刀・『トップスピンパス』だ〜〜〜〜!!」

バシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!ギュルルルルルルルルルルルルルルル!

衣玖「くっ……! こんなに凄いパス、私の管轄ではありませんね!」

実況「パスカットに出たのは……博麗連合の左サイドハーフの永江衣玖選手!
ですが、身軽な彼女を以てしても、ダイナミックに軌道を変える小悪魔選手のパスには追いつけない!
しかし、レミリア選手へとボールを渡す前に、博麗連合の忍者サイドバック・中里正人選手が飛び出します!」

中里「中の里の名誉に掛けて防いで見せよう! ぬうううんっ!」

ブンッ! ブウウウウ…………ウウウウ……ン!

中里「『縮地法』!」

                       バッ! ……パシッ!!

小悪魔「そ、そんな! 私の『トップスピンパス』が……!?」

実況「そして中里選手、パチュリー選手のパスにも引けを取らない威力の『トップスピンパス』を、
自慢の忍術で器用にカットしてしまいました!! ボールは再び博麗連合です!」

630 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:16:48 ID:???
小悪魔「すみません、パチュリー様。私が力不足だったばかりに……」

パチュリー「気にしないで。あそこまでのパスカット技術があるんだったら、
私が魔理沙達のタックルを掻い潜ってパスを出していた所で、きっと弾かれていたわ。
確率的には、決して分が悪い勝負では無かった」

中里「――そしてご婦人。理論はまさしく完璧のようでゴザるが……。
実戦では雑談をする一瞬の隙が命取りになると心得よ! 『分身ドリブル』!」

タッ、ギュウン! ブウウウウウンッ!

パチュリー「ご指摘ありがとう。だけどその内容は本で読んだ事があるわ。……火符・『アグニシャイン』」

タッ、ズザアアアアアアアアアアアアアアッ!ゴオオオオオオオオッ!
……バチイイッ、ポロッ。

中里「……むう。完璧に隙を突けたと思ったのでゴザるが。
理論もここまで敷き詰めれば盤石となるのか。……恐ろしや、でゴザる」

パチュリー「(とはいえ、彼に仕事をされちゃったわね。私を退けつつ、ボールを前に押し出すという大事な仕事を。
……まあ、霊夢達が前線に戻らない限り、まだ大丈夫だとは思うけど)」

実況「ボールを奪った右サイドバックの中里選手は、
そのままオーバーラップで果敢にボールを運びにいきましたが、
これはパチュリー選手により阻まれます!
ですがボールはこぼれ球となり前方へと向かい……右サイドハーフのアリス選手がフォローしました!」

631 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:18:05 ID:???
アリス「(紅魔の十六夜咲夜はパスカットにやや弱い筈。だったら……)針妙丸ちゃん。
ここから一気にワンツーで前線まで向かいましょ」

針妙丸「えー、いいけど大丈夫? アリスって確か、友達居ないんでしょ?」

アリス「少ないだけよ。私は群れるのが嫌いだからね。でもしょうがないわね、あんたがそこまで言うなら……」

針妙丸「まあアリスはパス霊夢の次に上手いから大丈夫だよね。やろっか!」

アリス「………(ど、どうしてそこで話を切るのよぉ……!
ここは孤独な私の魅力に惹かれ友達になろうとするが、私が一旦それをクールに断るような。
友情ドラマとかでも大事な、出会いの場面でしょうがぁ……!)」

パシッ、パシッ……。

メイドF「タックルしか練習してないから、取れな〜い!」

メイドG「な〜い!」

咲夜「……流石に、パスでは貴女には敵いませんわね」

実況「中里選手が弾いたボールをフォローしたアリス選手は、
得意の個人技ではなくここは敢えて、近くの針妙丸選手とワンツーで連携し、タックルに長けた紅魔の最終ラインを突破!」

実況「そしてアリス選手は最後に、バイタルエリアにて針妙丸選手へとグラウンダーのパスを渡しました!
針妙丸選手、陸選手と美鈴選手のみが守るゴールに向かって右脚を素早く振りかぶります!」

632 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:21:11 ID:???
針妙丸「――いっけぇぇぇっ、これが私の必殺シュート。妖剣・『輝針剣』だ!」

……グワァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ、バシュッ!
シュパァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ……!

美鈴「う、うひゃあっ! は、早すぎですこのシュート!
(――でも、お嬢様のシュートと比べて威力は大した事ない! これだったら、今の陸君なら……!)」

陸「ちぇっ、地上シュートとはめんどくさいアルね。でも、この程度……」

グッ。バッ!――バチイイイイッ!

陸「中国三千年の歴史を使うまでも無いネ!」

バッチイイイイッ!

実況「針妙丸選手が放ったシュートは……陸選手がパンチング!
やや我流っぽいきらいはありますが、一流のキーパーにも負けない反応速度でシュートを弾いてみせました。
大会前の練習試合ではパンチングが出来ず、必殺の『雷斬脚』を連発していた時代とは大違いです!!」

レミリア「(アイツ自身は謙遜してるけど、中国の奴は見違えるようになった。技術的にも、人間的にも。
……この辺り、あの中山やら最近の鈴仙が好きそうな、『努力』ってヤツなのかしらね)」

陸が針妙丸のシュートを危なげなく止めた時、レミリアがしたり顔で頷いていた。

633 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:23:09 ID:???
アリス「まだボールは生きているわ。食らいなさい、『ドールズウォー』!」

グワァァッ、バシュウウウウウウウウウウッ!

陸「なんのなんのーっ! これもパンチングで充分!」

バチイッ、ポーーーンッ!

小町「……んあ。 起き抜けだけど、良い所にハイボールがあるねぇ。
そんなら一発食らいな! ……これが私の新技、『ヒガンスカイライン』さ!」

グワァァッ! バゴオオオオオオオオオオオッ!

陸「むー。これは流石に『雷斬脚』程度は必要アルか……?」

美鈴「いいえ、その必要はありません陸君! チェスト〜〜! 『彩虹風鈴』ッ!」

バッ! グルンッ! ドガアアアアアアアアアアアアアアッ!

針妙丸「あれ! またボール来た! だったら一対一で……」

咲夜「そうはさせません、『ミスディレクション』!」

バッ! ズザアアアアアアアアアアアアアアアアアッ、バババッ! ……バシッ。

――そして陸はそんなレミリアの期待と信頼を知ってか知らずか、
この先に続いたアリスや小町、再び針妙丸によるシュートラッシュを悉く退け続けた。
……その中には、咲夜や美鈴など他の仲間達の活躍もあったが。

634 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:25:14 ID:???
***


佳歩(観客席)「う、うわぁ。凄い守備力です! ああまでシュートを撃たれても、びくともしないなんて!」

つかさ(観客席)「『紅魔は攻撃と中盤はともかく、守備陣はイマイチ』……という昔の評価は、
もはや改めるべきかもしれませんね」

てゐ(観客席)「まあ、攻めっぱなしにされてて、カッチリ守り切れてないのはご愛嬌って気もするけど……」

霞(観客席)「そこは博麗連合の必殺シューターの多さもありますし。一概には言いきれませんよ」


***


――とはいえ、てゐが指摘した通り、スカーレットムーンズはシュートを防いではいたものの、
博麗連合の攻勢に押され気味であったという事実は否めなかった。
事実、上述のメンバーに霊夢と魔理沙が合流した瞬間、中盤低めで拮抗していたボール争いは
一気に博麗連合へと傾き――。

魔理沙「そらっ、観念しな! ボールを私達に寄越すんだ!」

ダダダダダダダッ! ズザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

咲夜「……ッ!(駄目、早い。『ザ・ワールド』を使う暇すら無いなんて。
でも、悪魔の荒鷲とも囁かれたこの私が、そう簡単に負けてなるものですか……!)」

バチイイッ! グググッ……。

635 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:31:28 ID:???

魔理沙「くそっ、粘るな! メイド業で鍛えた足腰は伊達じゃないって事か。でも、この位置なら……!」

グググッ……ポロッ。
――ピィイイイイイイイイイイイイイイッ!

実況「おっとここでホイッスル!
魔理沙選手のタックルに咲夜選手は持ち堪えきれず、ボールを後方へと零してしまいました!
よってここは、博麗連合のコーナーキックで試合再開となります!」

パチュリー「(……やはりこうなってしまったわね。チーム力の差もあって、
完璧にボールを前に送れない限りは、どうあってもボールを前へと追いやられてしまう。
――重々想定はしていた展開だけど。やはりこれが続くと……厳しいわね)」

咲夜「(今の場面。一番キープ力のある私がもっと頑張る必要があったのに……!)」

陸「(体力はまだあるけど、なーんか嫌な感じアルな)」

レミリア「(私の勘が告げているわね。この前半5分のコーナーキック。
これがいきなり、この試合における大きな山の一つになると……。
――はてさて。どっちの有利に傾きますやら)」

審判のジャッジに従い、博麗連合の、スカーレットムーンズのメンバーが集まる。
その中には当然霧雨魔理沙やその他博麗連合の攻撃陣は勿論、別格のオーラを纏った博麗霊夢もまた含まれている。
圧倒的な個を打ち破り、一度は息を吹き返しかけた紅魔スカーレットムーンズ。
彼女達は次に、個では無く集団によって、再び窮地に立たされる結果となった。

636 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/13(木) 00:33:27 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
まだ前半5分かよって感じですが、このシーンが終わったら、結構時間が経つと思います。
皆さん、本日もお疲れ様でした。

637 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/14(金) 00:37:29 ID:???
――ピィイイイイイイイイイイイイイイイッ!

そして、スカーレットムーンズメンバーによる懸命の努力も虚しく。
前半6分、彼女達は改めて博麗連合の強さに戦慄する事となった。
ホイッスルと共にアリスから打ち上げられたボールは、
ポストプレイヤーとして覚醒した(本人談)博麗連合のFW・小野塚小町へと届き。

小町「ポストプレイって良いよねぇ……。前線で突っ立ってても怒られないし、
シュートと違って体力もそんな消費しないし。まさにあたいの為に作られたプレーだわ……」

美鈴「そ、そんなふざけた動機でサッカーやってる人なんかに負けられませんよ!
競り合いだったら私だって負けちゃいないんだから……って」

バアアアアアアアアアアア……ンッ!

小町「そ〜〜っれっ! これがあたいの『宵越しポストプレイ』さ!
届くモンなら届かせてみなよ、門番ごときに届くんだったらね!」

美鈴「た、高い……! とどかない……!?」

――ポーーーンッ! 

レミリア「見事なポストプレイね。美鈴一人じゃあ、ちょっと荷が重かったか。
まあ仕方が無い、私もクリアに向かわせて貰おうか!」

ダッ!

小町は背の高い美鈴よりも更に高く飛び上がって、
そこから更にオーバーヘッドキックの要領で空中で一回転し、低いボールを前方へと供給する。
そこには数合わせのメイド妖精に加え、前線から守備の為に戻ったレミリアが独特の体勢での新低空クリア
――『レミリアストレッチ』の構えで身構えていたが……。

638 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/14(金) 00:38:37 ID:???
魔理沙「ナイスだ小町! これで決めてやる!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

そんな中をお構い無しに突っ走る一陣の閃光。構えとしてはダイビングボレーと同じ。
しかし、努力の天才である霧雨魔理沙の脚力は、魔法による強化を合わせれば既に常人をも凌駕しており、
その為に低いボールに動きを合わせる魔理沙の周囲の空気は、摩擦で燃えて光に見える。

魔理沙「『ドラゴンメテオ』がダメなら、お次は低い球で勝負だ!
迸れ閃光、轟け雷鳴! 彗星・『ブレイジングスター』ーーーーッ!!」

カッ! ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッツ!!
バギュウウウウウウウウウウウウウウウウンッ!

ショットガンの如く押し出された魔理沙のダイビングボレー……と呼ぶには圧倒的すぎる大技、
『ブレイジングスター』。
それはクリアに向かう妖精メイド達を完膚なく打ちのめし、
強靭なフィジカルでぶつかって行ったレミリアすらも退けて陸へと邁進する。

陸「『ファイナルスパーク』とやらを出さずとも、この威力アルか! 全く、コイツ本当に人間カ!?」

魔理沙「のうのうと悪魔の館で暮らせる程図太いお前さんには言われたくないぜ!」

陸「その悪魔の館から私財をかっぱらってくと評判のヤツが、余計なお世話アル!
だがまぁ……もう一遍食らうが良いアル、朕の――『襲爪雷斬脚』を!」

バァァァッ! タッ! ダアアアアアアアアアアンッ!
――バギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

――ガンッ! ……ギリギリギリッ……ポーーーーン!

639 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/14(金) 00:39:51 ID:???
魔理沙「ぐぁぁっ!」

陸「あだーーーーっ!」

スカーレットムーンズは、この時点でも辛うじてではあるが堅守を貫いていた。
小町のポストプレイこそ通したものの、そこからの魔理沙の『ブレイジングスター』すらも、
大人数でのクリアとレミリアのフィジカルによる威力減衰もあって、陸は辛うじて弾けてはいた。
……しかし、これがスカーレットムーンズの限界中の限界だった。

霊夢「……決める!」

咲夜「霊夢……!(――美鈴が敗れ、陸君が飛び出し、お嬢様とメイド妖精達は吹き飛ばされた。
やはり霧雨魔理沙は侮れない存在だった。そして、それ以上に霊夢は危険……!)」

バッ!

霊夢が高いボールに動きを合わせた中、
ただ一人まともに守備に動けるのは、もはや咲夜しか残されていなかった。

咲夜「(あの構えだと……きっと霊夢が放つのは必殺の『夢想封印・瞬』ではなくて
オーバーヘッドキック……もとい、『巫女サマーソルト』に違いない。……けれど)」

バァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!

――そして、そんな咲夜が驚嘆する程に、霊夢は自然と高く飛び上がった。
自然。そう表現するのが相応しいまでに、霊夢は空中へと浮かび上がっていた。
1メートル2メートル程度では無い。このモリヤスタジアムを一望できる程度に。

640 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/14(金) 00:41:33 ID:???
咲夜「(その『巫女サマーソルト』ですら、私一人では大きく不利!
おそらく、『プライベートスクウェア』を上手く放てたとしても勝率は五分以下……!
だけど、やるしかない!)……紅魔の名にかけて! ――プライベート……」

霊夢「それっ!」

バギュウウウウウウウウウウウウウウン!
 ギュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!

咲夜「――スクウェア!!」

バァァァッッ! グルウウウンッ…………! 

霊夢が高空からボールを打ちおろし、十六夜咲夜はそのボールに動きを合わせた。
軸足を大きく回転させた反転ブロック――『プライベートスクウェア』で単身霊夢に迎え撃つ。
その動きはプレッシャーの中にあっても淀みなく、まさしく瀟洒と言うに相応しいものだったが――。

ギュウウウウウウウウッ。――ブンッ! ゴォォォォォォオオオオオオッ……!

咲夜「……!(ぼ、ボールが大きく伸びた。――後少しで、弾く事が出来たのに……!!)」

咲夜は大きく絶望した。霊夢が放ったシュートは彼女の胸元で大きく跳ね、
速度を伸ばして急速に変化してしまった。それはまるで神に愛されたかのような幸運。
霊夢が感覚的に撃ち放ったシュートは、偶然か必然か、最も完璧な軌道を正確になぞっていた。
……そして。


バシュウウウッ、ズバァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!
――ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

641 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/14(金) 00:47:15 ID:???
霊夢「……ふう。とりあえずは1点ね」

レミリア「……(私が居ながら、なんてザマかしら。――だが、この借りは必ず返す)」

――全幻想郷代表選抜大会準決勝、紅魔スカーレットムーンズ対博麗連合の試合。
先制点を挙げたのは博麗連合。前半6分。
ここまでの時間、殆どボールに触れる事すらままならなかったスカーレットムーンズにとって、
今回の失点はとりわけ屈辱的に映った。




紅魔スカーレットムーンズ 0 − 1 博麗連合2015

642 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/14(金) 00:48:19 ID:???
大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
12ゴール レミリア、鈴仙
9ゴール  フランドール、射命丸
8ゴール  魔理沙
7ゴール  勇儀
6ゴール  来生、屠自古
5ゴール  星、諏訪子、霊夢
4ゴール  森崎、神子、反町
3ゴール  早苗、謎の向日葵仮面
2ゴール  神奈子、ピエール、メルラン、天子、赤蛮奇、空、佳歩、岬
1ゴール  妹紅、咲夜、美鈴、サニー、リリーB、ぬえ、響子、永琳
       影狼、藍、幽々子、幽香、針妙丸、パチュリー、小田、椛、パスカル


大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
6アシスト パチュリー、霊夢
5アシスト 小町
4アシスト てゐ、神子
3アシスト 早苗、ピエール、小悪魔、マミゾウ
2アシスト 森崎、反町、はたて、岬、空、お燐、ウサギB、レミリア、アリス
1アシスト 鈴仙、影狼、大妖精、橙、諏訪子、佳歩
       衣玖、針妙丸、リリーW、ルナサ、ぬえ、永琳、妹紅

643 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/14(金) 00:51:05 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
皆様、本日もお疲れ様でした。

644 :森崎名無しさん:2015/08/14(金) 01:43:54 ID:???
乙でした!
地味に陸の成長が半端ない気がする。

645 :森崎名無しさん:2015/08/14(金) 01:46:40 ID:???
森崎並とはいかんが、補正選べる必殺技が増えたことの強みだな。
ぶっちゃけ本編のもライトニングタイガー防げるほど強いし...

646 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 00:31:46 ID:???
こんばんは、無判定ですが更新します。
東方紺珠伝がとうとう発表されましたね。
私はコミケに行くほどの余裕は無いのでまだゲットしてないですが、気になって早速キャラや曲のネタバレを見てました。
曲凄い良かったです。1〜3面も良かったのですが、4面以降は本当にツボに嵌りました。特に6面の曲がヤバかったです。
あと、やっぱりえーりんは凄いと思いました(小並感)

>>644
乙ありがとうございます。
今回の陸は本スレWY編相応の実力+必殺空クリアを身に付けた感じですね。
>>645
本編からして雷斬脚で威力83出せてますし、必殺クリアくらいあれば、
森崎ゲルティスミューラーヘルナンデス若林には及ばずとも、
エスパダスやドールマンクラスのGKには充分並べると思います。

647 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 00:33:15 ID:???
実況「決まった、ゴール!! まず先制点を挙げたのは博麗連合!
魔理沙選手を中心とした猛攻の末、霊夢選手が見事なオーバーヘッドキック……いえ!
『巫女サマーソルト』で紅魔のゴールを奪いました!
1−0! 前半6分で博麗連合が1−0でリード!
やはり紅魔はこのまま、博麗連合の圧倒的な総合力に敗れてしまうのでしょうか〜〜!?」

観客「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「す、すげぇえええ!」「人間がどうやったら、あんな空高く飛べるんだ!?」「れーいーむ!」「れーいーむ!」

パスカル(観客席)「ただのオーバーヘッドであの威力か。
キリサメマリサの高低隙の無い大砲は勿論厄介だが、彼女のねじ込みにも要注意だな……」

霞(観客席)「データが出ました! さっきの霊夢さんのシュートは高度5、威力58、誤差補正12です!」

てゐ(観客席)「? 高度と威力は何となく分かるけど、誤差補正って何?」

霞(観客席)「えっと。最終威力を出す際に、打ち出した時のコースとか蹴り方とか敵の位置とか。
色々な要素を加味して加えられる補正値の事です。
基本は6か7位で収束するんですが、今回は理論上最大値の12が出ましたね……。
普通、誤差補正で最大値が出るのは36分の1程度なのですが、霊夢さんは絶好調みたいです」

ウサギC(観客席)「(! dice + ! dice)のことだよね〜」

霞(観客席)「雰囲気無くなるから言わないでよ、Cちゃん!!」



***

648 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 00:34:55 ID:???

魔理沙「……くそっ」

数多くのシューターによる乱れ撃ち。一流のゴールキーパーをも崩し得る主砲。
そして、絶対的なトップ下による完璧なゴール。
全ての者が理想的だと頷ける筈のゴールを前に、しかし博麗連合のストライカーは納得していなかった。

魔理沙「……(また、決まらなかった……。小町にもアシストして貰ったのに、また……!
しかも、そのミスをまた霊夢に尻拭いして貰って……。私、主人公のクセにカッコ悪すぎだろ)」

魔理沙はこの時、『ブレイジングスター』が必ずや紅魔のゴールを撃ち抜くと確信していた。
――いや、確信するよう努力していた。
自分は『ファイナルスパーク』が無くとも、博麗連合のCFであり幻想郷きってのFWであると。
つまり、今の自分は「まだ」、長年来の親友とも並び立てる存在であると。そう信じていたかった。

魔理沙「(確かにレミリアの奴も目が高い。あの陸ってのは間違いなく一流クラスのゴールキーパーだよ。
だけど、森崎や萃香に敵う程の一流じゃない。あの程度、私は一人でぶっ倒せないとダメなんだよ……!
今みたいに霊夢に助けて貰っちゃ、ダメなんだよ……! やっぱり、『ファイナルスパーク』が無いとダメなのか……?)」

これまでの試合でも、自分は『幻想郷きってのFW』に相応しい活躍をしていない自覚があった。
同格のライバルだった筈のレミリアには大きく水を開けられ、
ゴール数ではレミリアの妹や案外大したことない射命丸にも負けて。
単純なシュートの威力では、レミリアは勿論、勇儀や幽香などの古豪に敵わなくなってきていて。
しかも最近では、自分とは正反対なヘタレFWの鈴仙が、かつての自分の位置に就こうとしている。
方や自分は、苦労して新必殺シュートを編み出しても、それは自身の寿命を引き換えにして放つ代物だった。
……そんな背景があったからこそ、今の何でもないシュート失敗を、魔理沙はひどく気にしていた。

649 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 00:37:24 ID:???
霊夢「(……魔理沙のやつ、やっぱし不満そうにしてる)」

そして霊夢は当然、魔理沙がそうした苦悩を抱いている事は知っていた。
知っていたし、友人としてどうにかしたいとも思っていた。
――しかし、元来他者との深い関わりを好まぬ(知らぬ?)霊夢は、少し不器用でもあった。

霊夢「……あのね、魔理沙。今の局面は別に悪く無かったと思うわよ。
大体、シュートが入る入らないってのは運なんだし、この位気にしない方が……」

霊夢は自分なりに優しさを籠めた言葉で、魔理沙に働きかけたつもりだった。
しかし、同格だと思いたい友人から為された同情は、魔理沙の心を更に惨めにしただけだった。
だから……彼女の口から思いがけずこうした言葉が零れてしまう事も、ある意味では仕方なかった。

魔理沙「――ふん。随分と攻撃的なトップ下様だな、おい?」

霊夢「……え?」

魔理沙「お前はさっき、ねじ込みに備えてPA内に居たようだけど、
今の局面、レミリアがクリアに成功して中盤を省略される可能性もあっただろ。
もしそうなっていたら、お前のせいで点を取られてたのかもしれないんだぞ!
お前が良いとこどりをしたいって前に上がったせいで、私達はリスクを負わされたんだ!」

魔理沙は苛々と霊夢の判断ミスを詰る。そこに魔法使いらしい論理性は無い。
単に彼女は、自分自身への怒りを霊夢に転嫁しているだけだった。
そして、魔理沙はそこまで分かっているにも関わらず、口から毒を吐かずにはいられなかった。

魔理沙「最初のプレーだってそうだろ? お前は色々めんどいとか言ってるけれど。
実際は自分が居ないとこのチームは。いや……この幻想郷は成り立たないだとか!
天才の自分が凡人共を導いてやらなきゃだとか思ってるんだろ!」

霊夢「……魔理沙。私が凡人を導くなんて面倒な事、する訳ないでしょ?
お金積まれたらどうなるかちょっと自信ないけど。まあとにかく、ちょっと落ち着き――」

650 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 00:39:57 ID:???
まくしたてるように、これまでの不安を言葉にしていく魔理沙。
霊夢は最初、そんな魔理沙を止めようと思っていたが……不意に発した魔理沙の一言が、
霊夢の希薄な感情に火を付けてしまった。

魔理沙「落ち着いてられるかよ。こんな蛇女がトップ下のチームでさ!
どうせお前は、私みたいな才能の無い無能な奴を無理矢理隣に置いて、優越感に浸りたいだけなんだろ。
――前に言ってた『友達』なんてのは方便で、結局は博麗の巫女である自分の引き立て役が欲しかった……」

霊夢「……!」

―――ぱちんっ。

霊夢「――そんな訳、無いじゃない。ばっかじゃないの……!」

クルッ。スッ……。

歓声に沸くスタジアムが、乾いた音を聞いて静まった。
怒り心頭にセンターサークルへと戻る霊夢と、惚けたように立ち尽くす魔理沙を交互に見比べ、
歓声はたちまちどよめきに変わった。
実況が霊夢と魔理沙の仲たがいをセンセーショナルに報じる中。
既に仲間内での打ち合わせを終えて、キックオフの準備を終えていたレミリアは霊夢を嘲笑する。

レミリア「いやぁ、若いって良いねぇ。私も後485歳くらい若かったら、あんたらの輪の中に入れたのに」

霊夢「勘弁してよ。面倒なのが二人になったら、流石の私も面倒を見切れないから」

霊夢は辛うじて、自分よりも首一つ二つ程背が低いレミリアに対して皮肉を言ってのけた。
レミリアはニヤリと笑って、上目づかいに言い放った。


レミリア「本当だったら仲直り出来るよう、パチェか咲夜辺りに場を取り持つよう命令してるトコだったけど。
貴様等の心の弱さが生んだ不和――我らが勝利の為に、精々利用させて貰うぞ?」

651 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 00:44:37 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
明日は大目に更新できればと思っています。
皆様、本日もお疲れ様でした。

652 :森崎名無しさん:2015/08/15(土) 07:37:17 ID:???
ストライカーは点を取りたいんじゃ・・・自分でゴールを決めたいんじゃ・・・
それは意地なんじゃ・・・分かってくれ霊夢・・・

ところで魔理沙が地獄行きしそうなんですが

653 :森崎名無しさん:2015/08/15(土) 07:57:23 ID:???
この魔理沙は後々セーヌ川ダイブをかましてしまいそうだ……


紺珠伝みたいに新作が出ると物語にも微修正を加えたりしますか?


654 :森崎名無しさん:2015/08/15(土) 13:05:53 ID:???
なんか魔王の時みたいになってる。
なんで劣等感覚えるキャラにどこもなってるんだろうね。

655 :森崎名無しさん:2015/08/15(土) 13:31:30 ID:???
努力を惜しまないからじゃない?

656 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 17:55:56 ID:???
こんにちは、更新をしていきます。

>東方新作について
紺珠伝については、微修正程度だったらあると思いますが(キャラが登場したり、敵チームにスポット参戦するなど)
大筋だけは変えないようにしたいと思っています。
新作では永琳や鈴仙と深い関係がありそうなキャラが出て来るみたいなので、絡みのあるシーンは作っていきたいですね。

>>652
霊夢はその辺りの気持ちをあんまり理解していない…訳では無いけれど、
他人の気持ちを何となく察するのに慣れてないようなイメージがありますね。
魔理沙まで地獄に行くと、地獄が飽和してしまいそうなので多分なんとかなりますw
>>653-655
正直に言って、某スレの魔理沙像をかなり強くイメージしています。
また、強靭な精神を持つ森崎と敢えて対比している所もあります。
内心強い劣等感を覚えつつも、それを普段は臆面にも出さず努力を重ねるというのが魔理沙だと思っていますが、
その『普段』が見えないと、ただ鬱屈してるだけなキャラクターに見えてしまうかもしれませんね。
この辺りの描写は、今後予定している、鈴仙との絡みでも出していきたいと思っています。

657 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 17:57:17 ID:???
ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

実況「先ほど1点のビハインドを許した、紅魔スカーレットムーンズのキックオフで試合再開です!
スカーレットムーンズ、まずはボールをトップ下のパチュリー選手に預け、
手堅くボールをキープして攻め時を見計らっている様子!」

パチュリー「(相手が浮足立った状況の今、こっちは逆に焦らして様子を見るのが吉ね。それに……)」

魔理沙「くそっ……! このボール死ぬまで借りてくぜ、パチュリー!」

タッ、ズザアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

――シュンッ! シュパッ!

魔理沙「……ちっ。お得意の『芸術的なドリブル』か!」

パチュリー「――生憎と、そうカリカリした人間の小娘に分け与えてやるだけの叡智は、持ち合わせていないけど?」

霊夢「馬鹿ね魔理沙。 だからここは一緒にタックルに行こうって言ったのに……!
ええいっ、食らいなさい! 『パスウェイジョンニードル』ッ!」

バシュッ! ズバアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

――クルルルルッ…バッ、バババッ! …スパァァッ!

パチュリー「腰が浮いているわよ。博麗の巫女が、情けない」

霊夢「……今のは『華麗なドリブル』かしら。中々やるじゃない」

658 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 17:58:26 ID:???
パチュリー「(――幸いにも。一対一ならば、私は霊夢や魔理沙が相手でもボールキープで優勢に戦える余裕がある。
いや、私だけじゃない……)――レミィ。後は任せたわ」

バシュウウッ! パシッ。

レミリア「ふん、ご苦労だったなパチェ。後は真打の私に任せなさい」

アリス「吸血鬼と言うのは、どこまで傲慢な種族ね。もう勝った気でいるのかしら?」

衣玖「私は私の仕事をこなすのみ。その仕事には、貴女の足止めも含まれています」

レミリア「ハ。傲慢だって? 私はこれでも、謙虚な吸血鬼として界隈では有名なのよ。
だって、あんた達のような取るに足らない雑魚が相手だって……!」

バッ! グワァァァァッ!

レミリア「――こうやって、全力を以て叩き潰してやってあげてるんだからね!
食らいな雑種共! 紅魔の行進、『スカーレットマーチ』だ!」

ドンッ! ――ドガガガガガガガガ!! バギイィイッ! グシャァァァッ!

アリス「くっ……!」

衣玖「ふ、吹っ飛ばされるのは仕事には無かったのですが……あーれー」

実況「紅魔スカーレットムーンズ! 今度は試合開始時と打って変わって中盤を支配しています!
パチュリー選手とレミリア選手。霊夢選手と魔理沙選手にも劣らない紅魔のゴールデンコンビが猛威を振るう!
先ほどの喧嘩が原因か、イマイチ連携しきれない霊夢選手と魔理沙選手を差し置いて、
じりじりとラインを上げて、博麗連合のゴールを脅かします!」

659 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 17:59:26 ID:???
森崎「チッ、何喧嘩してんだよあいつ等! 幻想郷の選手にゃプロ意識ってモンが無いのか!?」

天子「ないでしょ。だって私らプロじゃないし」

中里「……今更愚痴を言っても始まらぬでゴザるよ、森崎。 それに――敵は今や門前へと来たりっ!」

中里がそう叫ぶと同時に、森崎は怒りの矛をスッと収めて前方に視線を戻す。
そこには、先ほどまで攻勢を伺いボールキープに努めていたスカーレットムーンズの前線メンバー
――レミリア、パチュリー、フランドールの三名がバイタルエリアへと押し寄せていた。

パチュリー「(……試合は前半14分。アクションを起こすならば、今ね)……レミィ、行くわよ!」

レミリア「了解。フランも上がってなさい! まずはアンタに撃たせてあげるから」

サッ……。

フラン「(あのサインは、たしか……アレだったわね)――フフッ、待ちくたびれちゃったわ、お姉様!
私、早く博麗連合のゴールを粉々にしたいわぁ!」

ダッ!

実況「――パチュリー選手はボールを持ったまま、博麗連合のサイド深くへと切り込んでいきます!
そして、フランドール選手をペナルティエリア奥、ゴールの真正面へと向かわせました。
一方、レミリア選手はねじ込みに備えてか、やや離れた位置に陣取ります。
この位置取りからして、まずは同点に並びたいスカーレットムーンズ。
ここはフランドール選手の大型シュート・『495年の波紋』でゴールを狙う算段でしょうか!」

中里「そうはさせまい! 忍法……」

バシュウウッ! ギュウウウンッ! ――スカッ!

660 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 18:00:43 ID:???

中里「ぬ、ぬうっ……! 少し、遅かったでゴザるか……!」

パチュリー「――今のは肝が冷えたわ。もし貴方が一秒早く跳んでいたら。
私のパスですらも弾かれていたでしょうね」

実況「中里選手は自慢の身軽さを活かしてパスカットに向かいましたが……!
しかし、これは後僅かでパチュリー選手の出したセンタリングに届かない!
ボールは予想通り、フランドール選手の頭上へと渡ります!」

萃香「えへへっ、来たね吸血鬼妹! ひっさしぶりに私の『ミッシングパープルパワー』が火を吹くかね、こりゃ。
それとも――私の四天王奥義の出番かな?」

天子「ちょっと、私を忘れないでよね。私はブロックもかなり固い!」

玄爺「………」

森崎「(……………フランドールのシュート、か。あれは俺も見た事はあるが確かに中々のシュートだったな。
あれは俺でも、全力じゃないと完璧にキャッチするのは難しい。
弾くだけなら『がんばりダイビング』でも可能だが……レミリアがねじ込みに来ているのも不安、材料……?)」

フラン「よーっし、いっくよーーーっ!」

グワァァァァァァァァァァァアアアアアッ!

実況「で、出た〜〜! 出た出た出た〜〜〜!
フランドール選手が高いボールに動きを合わせて右脚を鞭のようにしならせ飛び込んで行った〜〜!
これは間違い無く、自慢の『495年の波紋』の体勢! 博麗連合、ここで守れるか〜〜!」

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

森崎「(………いや。違うな。――何かが、おかしい)」

661 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 18:02:58 ID:???
森崎「(……紅魔の妹は狂気の妹。普通に考えれば狂気に任せてシュートを撃つに決まっている。
……筈だが、こいつ。――妙に聞き分けが良すぎないか……?)」

――フランドールのシュートに対し、観客が騒ぎ、実況が煽り、仲間選手が警戒する中。
この試合ゴールを任されていた森崎は、スローモーションになる光景の中で、
自慢の小賢しい頭をフル回転させていた。

森崎「(……それだけじゃない。フランドールは低空からのシュートを得意とする筈なのに、
パチュリーが上げたさっきのセンタリングは高すぎる。
あの中里をも退けるレベルのパスを撃てる奴が、こんな雑なミスをする訳がねぇ)」

レミリア「(――我ら紅魔は如何な相手だろうと全力で叩き潰す。
けれどその『全力』とは、常に正々堂々公明正大、馬鹿正直で猪突猛進とは限らないのよ……)」

森崎「(そして……アイツの。レミリアの微妙な表情の動き! こいつは間違いねぇ!)
……萃香! これは罠だ! クリアに向かえーーーーーーーっ!」

萃香「へ? クリア!? ……まぁ、別に私の取り柄はブロックだけじゃないけど……さっ!」

バッ! グワアアアアアアアアアアッ……!

視界の隅で、レミリアがほんの僅かに唇を歪ませたのを見て森崎は確信した。
だから、自信を持って、前方の萃香に対してそう指示を出せた。

フラン「え? こ、ここで……ここで来るの!?」

萃香「良く分からんが、お嬢ちゃん。この私が競り合うからには、タダでは帰さないよ!」

グッ! グググッ……ポーーンッ!

662 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 18:04:26 ID:Oahb6gRA
そして、完全に想定外な萃香の動きに対し、フランドールは焦りに動きを強張らせた。
それが隙だと言わんばかりに、萃香が容赦なく空中でフランドールの華奢な身体にチャージを浴びせる。
無論、彼女とて吸血鬼であるため、如何に鬼の四天王が相手であっても一方的にやられるだけでは無かったが。
――しかし、虚を突かれた事もあり、ボールを後方へと零してしまった。

レミリア「……ほう。良く分かったな、私達の狙いが」

森崎「何勿体ぶってんだよ。こんなの、サッカーの世界じゃ常識だろうが」

レミリアは低いボールに動きを合わせつつも、心底驚いたように目を丸くして森崎と対峙している。
そんな彼女を森崎は嘲笑った。

森崎「フランドールはあくまで囮。本当は高いボールをスルーさせて、
俺が体勢を崩した所を、お前が決めるつもりだったんだろ?
あの狂気の妹がかくも献身的なプレーをする訳が無い、という心理的ミスリードのつもりだったのかもしれないが。
ハッキリ言って、バレバレだ。ミステリー小説だったら三流、いや……三十流もいいトコだぜ」

グワアアアアアアアアアアアアアアッ……!

レミリア「――ならば今度、パチェに頼んで古今東西のミステリー小説を掻き集めて貰おうかな。
だが、それはそれ、これはこれだ。……狙いは外れたが、ここで私がシュートを決めれば同じだろう?」

森崎「本気でそう思ってるんだったらおめでたいぜ。だったら俺を止めてみろ」

レミリア「ハハハ。ただの人間が、吸血鬼を前にしてその余裕か。
紅霧異変の時に我が館へと特攻して来た、どこかの白黒を思い出す」

森崎「俺をあんなヘタレと一緒にすんな。それよりも俺は心配だぜ。
お前のそのカリスマぶった態度が、俺のせいで粉々にブレイクしてしまう事がな!」

663 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 18:10:09 ID:???
実況「あ……ああ〜〜〜っと! これはどうした事でしょう!
フランドール選手へのセンタリングは、実はシュートでは無くレミリア選手へのスルーが目的!
しかしそのスルーにいち早く察知した森崎選手により、その狙いは外れた!
ですが……ですが、脅威の身体能力で飛びついたレミリア選手が諦めず、低空でのダイレクトシュートに向かっています!
そして……今! 両雄が真正面でぶつかりあった〜〜〜〜〜!!」


レミリア「――紅く焼き尽くしてくれる、『ダイレクトレッドサン』ッ!」

森崎「――ふざけろ、三下! これが俺の……『がんばりセービング・改』だッ!」

……バッ、シュウウウウウウウウウウウウウッ!
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
                           ―――バァァァァァァァァァァアッ!
レミリア「HAーーーーッ!」                  森崎「うおおーーーーーっ!」

……かくして、紅帝は初めて狂王と衝突した。
ダイレクトで放たれた事で威力を増幅されたマスターオブレッドサンが、
森崎のどてっぱらをぶち抜こうと加速し燃える。
その勝負は互角であるかにも見えたが――だがしかし、実は違った。
レミリアが低空シュートに向かい、森崎が全力でのセービングに出た時点で、
この両者にはある程度の実力差があった。そして、今回は――その実力差通りの決着となった。
……すなわち。


ゴオオオオッ………――――ガ シ  イ    イ     イ       イ      ッ!


レミリア「………ッ!」

森崎「……取ったぜ。お前の負けだ、レミリア・スカーレット」

664 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/15(土) 18:11:39 ID:???
……と、言ったところで一旦ここまでです。
続きは深夜までには更新します。

665 :森崎名無しさん:2015/08/15(土) 18:37:19 ID:???
まあジュニアユース直後の森崎のセービング値は明らかにおかしいからなw

666 :森崎名無しさん:2015/08/15(土) 18:50:36 ID:???
一人だけ別世界に足を突っ込んでた状態だったからなぁ・・・

667 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/16(日) 01:59:30 ID:???
更新を再開します。
>>665-666
流石にJr.ユースそのままだったら無理ゲーですので、
あれよりは弱くなってますが、それでもこれまでのGKと比べて規格外な強さになってます。

668 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/16(日) 02:01:44 ID:???
ワッ……ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!?

観客席から戸惑いも籠った絶叫が鳴り響く。しかし、これも無理のある事では無かった。
――燃え盛る太陽のシュートは、森崎の掌中に完全に収まっていたからだ。
森崎有三は、幻想郷最高のストライカーであるレミリア・スカーレットに対し……完勝した。

実況「……す、凄い……! これは夢でも見ているのでしょうか!
確かに、確かに森崎選手は前の試合でも星熊勇儀選手が即席で生み出した
倍速二回転大江山嵐――『零歩必殺嵐』を防いだ実績もあったため、
決して今のプレーも不思議ではありません! ですが……やはり何度も見ても凄い物は凄い!
更に凄い事は、この森崎有三という選手は妖怪でも神でも亡霊でも何でもない!
何の力も持たぬ、ごく普通の人間なのです! 人間が、鬼や吸血鬼に勝利したのです!!」

観客「森崎って奴、そんなにすごかったのか!?」「俺、守備嫌いなFWだとずっと勘違いしてた!」
「勇儀姐さんだけじゃなく、レミリアさんのシュートも防ぐなんて……」「もっりさき!」「もっりさき!」

中山(観客席)「少し厳しいシュートだったが……森崎ならばあの程度の水準のシュートは、
これまでも真正面から受けて来ている。勝利は順当だったろう。
無論、あいつでも完璧に防げるかどうかは五分程度だっただろうが……。――ここは、あいつの勝負強さが出たな」

鈴仙(観客席)「(中山さん、嬉しそう……やっぱり森崎君と親友なだけあるわねぇ。
しかし、それにしても……あれが森崎有三! 改めて、本当に規格外のGKだわ……)」

輝夜(観客席)「(えーりんを呼んでも防げる自信が無いわね……アレ。決勝に来たらどうしよ)」

永琳(観客席)「……威力として、レミリア・スカーレットの『ダイレクトレッドサン』は、
星熊勇儀の『零歩必殺嵐』に比較して高くない。
怒りによって、その力が増幅されていたという事実を加味してもね」

慧音(観客席)「だが……レミリア・スカーレットは幻想郷サッカー史でも最古参の選手だ。彼女を信奉している人妖も多い。
だからこそ、星熊勇儀のシュートを防いだ事以上に、今の森崎のセービングは驚きに映っただろう」

669 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/16(日) 02:03:04 ID:???
レミリア「――サッカーは強い者が勝つんじゃなくて、勝った者が強い。
だから、お前の勝利は偶然じゃなくて運命なんだろう。 ……忌々しいけどね」

森崎「(……こいつ。『アイツ』と同じような事を言ってやがる)――へっ、負け惜しみはそれだけか?」

レミリア「もし私の作戦が嵌ってたら勝ってた。私はダイレクトよりもバイシクルの方が上手い。
運が悪けりゃあんたが普通に負けてた。さっきのシュートはちょっと調子が悪かった。
私は夜行性だからお昼だと眠くてやる気が出ない。新聞の占いが最下位だった。……えっと。後は」

森崎「思ったより多いな……。――ま、吠えてろ。お前が無駄口を叩けば叩くほど、俺の価値は上がるんだからな」

レミリアの超然とした態度に苛立ちながらも、森崎は早速の次の手を考えていた。
勿論、自分がこれから活躍して目立つ為の手である。

森崎「(さーて。そろそろオーバーラップでもするか? それとも寝釈迦ポーズで敵の神経を逆なでしようか?
いやいやそれともゴールバーで懸垂してセーブ力の練習でも始めようか?)」

そしてその手には、一見して奇行にしか見えない……いや、奇行そのものが多々ある。
むしろ奇行じゃない手の方が少なかったりする。
森崎は練習の合間に付け足している脳内の奇行ノートから、とっておきのヤツを取り出そうとして――。


ズキィィッ……!


森崎「……ッ!」


――鋭く走った、自身の腰の痛みによって、その思考は中断された。

670 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/16(日) 02:04:35 ID:???
森崎「(くそっ。腰が痛むな……。ま、化けモンクラスのシュートを防いだんだから、しょうがねぇか。
――敵さんはまだまだイケイケだしな。今無理する事でもないだろ)……ほら、天子。やるよ、このボール」

シュッ……。

天子「――フッ……。ここで中里じゃなくて私に来るあたり、天人と忍者のチーム信頼度は違いすぎたみたいね。
いいでしょう。この私の実力、とくと眼に焼き付けておきなさい! 私100メートル走で15秒とか普通に出すし!」

ダダダダダダダダダッ!

先の地霊殿サブタレイニアンローゼスでも感じた、脳髄にビリッと走る瞬間的な腰の痛み。
無意識的に、森崎の思考はこの痛みをきっかけとして、常識的で無難な方向にシフトしていた。
ボール欲しさに今にも暴走しそうなサイドバックの天子にパスを出し、自分はゴールを守る事に専念する。

中里「(……う〜む。いつもの森崎ならばここで無駄に奇行に出たり、
オーバーラップしたりして敵のペースを崩すかと思ったが。ブラジルでの修行で、常識に目覚めたのでゴザろうか)」

そんなゴールキーパーとして至極真っ当な態度に対し疑問を抱く者は当然居ない。
……これまで森崎のチームメイトとして、永らく彼の奇行を目の当たりにして来た中里以外は。
とはいえ、その中里までも、森崎の事情を全て把握している訳では無かったのだが。


***


天子「オラオラオラー、『勇気凛々の剣』でバラバラに引き裂いてくれるわーっ!」

ダッ、ドガドガッ!! バギイイイッ!

美鈴「な、何ですかこの人怖いー!?」

小悪魔「こ、こぁーっ?!」

671 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/16(日) 02:06:27 ID:???
実況「森崎選手からボールを受け取った博麗連合の天人サイドバック、
比那名居天子選手は誰にもボールを渡さず、暴力的なドリブルでサイドを抉っていきます!
何という自分勝手で利己的なプレーなのでしょうか! しかしこのスタンドプレーは上手く場に刺さっている〜〜!」

咲夜「……お嬢様にパチュリー様。そして妹様が上がり切った現状、我々の中盤はガラ空きです。
恐らくはそれを狙った、大胆なオーバーラップのようだけど……!」

天子「さーて、どうかしら。仲尼は日月なり、得て踰ゆること無し……ってね。
要するに、天人の存在はあまりにも大きすぎるから、
3回連続で見つめられた程度で、貴女方に推し量れるような存在じゃないって事よ!」

グワァァァアアアアアアアアアアアアッ!!

実況「そして小悪魔選手と美鈴選手と吹き飛ばした天子選手は、必殺シュートの構え!
咲夜選手がメイド妖精と共にブロックへと向かう中、彼女は自信たっぷりの傲慢な表情を変えずに……!」

天子「光栄に思いなさい、地上に這いつくばる小人共!
――この私が直々に……『気炎万丈の剣』で、トドメさすよ!!」

バッ……ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
バシュッ!  ……バシュッ、バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ!

実況「出た〜〜〜! 天子選手得意のパワーショット、『気炎万丈の剣』だ〜〜!
キッチリ九回の爆音を上げながら、紅魔スカーレットムーンズのゴールへと向かって行きます!」

咲夜「……悪くないシュートね。だけど、この程度まで通していて、紅魔のメイド長が務まりますか! 『プライベート……」

バッ! グルウウウウッ……!

咲夜「――スクウェア』!」

バッ……シィィイイイインッ! ……ポムッ。

672 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/16(日) 02:08:25 ID:???
実況「お〜っと! ですがここはディフェンスリーダーの十六夜咲夜選手が活躍!
必殺ブロック・『プライベートスクウェア』で天子選手のシュートを完封! 陸選手までボールを運ばせません!」

天子「あ、あんですってぇ〜〜〜! この私のシュートが、キーパーまで届かないだなんて。
荒鷲如きが、貴様の遥か高みに住まう天人様の覇道を邪魔するとは生意気過ぎるわ……!」

ギリッ、ギリギリッ……!

天子「フ……フフ。これで勝ったと思わない事ね……!」

ダッ!

陸「――な、なあ。あの女、逆恨みしててこっち見てて怖いアル……というカ、
なんかアイツが纏う気力が強くなってるような気がするアルけど……」

咲夜「彼女、打たれれば打たれる程興奮するタイプなの。……ああ見えてもね。
だから今も、これまで活躍出来なかった上に、シュートまで容易く止められたという逆境に対して高揚しているんだと思う。
まぁ、それだけならどうぞご勝手に、って話なんだけれど……」

美鈴「あの人、『隠れM』なのか知らないけれど、それで余計にイキイキとプレイしだすんですよね。
それが本当に厄介というか、面倒臭いと言うか。――アイタタ、吹っ飛ばされてお尻が痛いわ……」

小悪魔「でも、これでこっちにボールが渡りました! 咲夜さん、私にボールを下さい。
今からでも『トップスピンパス』で、ボールを前線に上げて見せます!」

咲夜「――そうね。まだ攻めの芽は潰えていないし、
霊夢も1点目までの絶好調は鳴りを潜めている様子。頼むわよ、小悪魔」

バシッ……。

673 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/16(日) 02:09:39 ID:???
ボールを奪い取った咲夜はボランチの小悪魔へとショートパス。
少数精鋭の攻撃陣と、タレント不足を数で補う守備陣という、
敢えてアンバランスな布陣を敷いたスカーレットムーンズにとって、
ボランチとして守備と攻撃の楔を果たす小悪魔のポジションは重要である。

小悪魔「(ドリブルも教えて貰ったけれど、あれはほんの付け焼刃。
私にはやっぱりパス一芸しかない。それにしたってパチュリー様にも劣る。
だけど――このパスは私の……紅魔に懸ける想いです!)――『トップスピンパス』よ!」

グワァァァッ、バシュウウウウウウウウウウウウウウッ!
ギュルギュルギュルギュルッ……!

霊夢「……厄介なパスね。アリスが普通に撃ったパス程度の精度はありそう」

小悪魔が前線のパチュリーへと放ったトップスピンパス。その軌道上には霊夢が鎮座していた。
しかし小悪魔はそれを知った上でボールを要求し、パスを放った。
しかし、小悪魔自身、自分のポジションに対し誇りを持っていたし、それに相応しい実力もあったから、
彼女は――周囲の仲間達は失敗を恐れなかった。小悪魔は心の中でこう呟く。

小悪魔「(さっきは普通の人間がレミリア様のシュートを防いでいたけれど。
そうだったら、一介の名無し悪魔が博麗の巫女に勝っても良いじゃないの!)」

……が。現実は物語のように都合良くは運ばなかった。
確かに小悪魔の『トップスピンパス』は、霊夢単独によるパスカットにも匹敵する程の力を持っており、
実際に今回、魔理沙の事で集中出来なかったのか、霊夢は小悪魔のパス軌道を読み切れない様子でいたが……。

674 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/16(日) 02:15:13 ID:???
霊夢「――ええい、ややこしい軌道ね。こうなったら……勘で行こうかしら」

バァァァッ! ブウウウ……ッン! ――バチィイッ!

霊夢「――って、あらら。外しちゃった。『ホーミングパスカット』で行けば良かったかしら」

小悪魔「……っ!(――後、少しだったのに……!)」

霊夢は天性の勘で小悪魔のパスの行く先を予想し、結果として初速の遅れのため完全に奪えないでいたが、
それでもボールを再び前方へと零す事に成功していた。

魔理沙「……! ぼ、ボールだ!(『ファイナルスパーク』だ。やっぱり私には『ファイナルスパーク』が無いと……!)」

美鈴「魔理沙さん、目が虚ろですよっ。――『彩光風鈴』!」

バギイイッ! ボーーンッ!

――しかし、博麗連合は博麗連合で、それからが続かない上に、
スカーレットムーンズも決定打を撃てない状況がそこから続いた。
霊夢が前に弾いたボールは魔理沙が競り合いに向かうが、ここは美鈴に敵わない。
衣玖がフォローしたボールは、今度はパチュリーによってカットされるが、
パチュリーは霊夢と対峙し、今度はボールを弾かれてしまう……など。
中盤での小競り合いは試合時間をいたずらに浪費していき、
特に1点のビハインドがある紅魔にとっては苛立たしい時間が続く。

……結果として。アンバランスな戦力差の中生じたこの拮抗が崩れたのは前半も終盤。
32分に、パチュリーが霊夢から弾いたボールを、小悪魔がトラップした時の事だった。

675 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/16(日) 02:16:40 ID:???
……と、言ったところで今日はここまでです。
明日には前半を終わらせ、ハーフタイムに突入できると思っています。
それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

676 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/17(月) 00:34:45 ID:???

ポーンッ、……パシッ。

小悪魔「――き、来た。もう一度、チャンスが」

パチュリー「……時間が無い。そのまま前に出しなさい、小悪魔。
『オフサイドトラップ』の危険はあるけれど、成功率は五分と五分。
私が成功しそうなギリギリの位置をレクチャーするから、そこを狙って」

小悪魔「わ、分かりました。……パチュリー様を信じます!」

グワァァァァァァッ……バシュウウウウウウウウッ!
ギュルギュルギュルギュルギュルギュルッ!

実況「ボールをフォローした小悪魔選手、今度は長距離のパス!
霊夢選手とパチュリー選手が揉み合った隙を突いて、前線のレミリア選手へと縦ポンだ〜!」

霊夢「……アリス!」

アリス「分かっているわよ、霊夢!」

スッ……!

実況「ですが、元々霊夢選手のワンマンチームでは無く、
それぞれのポジションに一流クラスの選手が勢揃いしている博麗連合は焦らない!
霊夢選手に代わり、第二のゲームメイカーであるアリス・マーガトロイド選手が指揮を執って……!」

677 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/17(月) 00:36:04 ID:???
アリス「(……ロングパス。ゲームを司るパチュリーは霊夢と同じく、
さっきまでの混戦の影響で身動きが取れていない。だったら、ここは……)――皆!」

サッ……!

衣玖「(アリスさんからのサイン。これは……)了解です、ラインを上げましょう」

タッ! タタタタタッ……!

天子「あー、あれね。勝つべからざるは守るなり、勝つべきは攻むるなり……って奴。
あれって、『攻撃は最大の防御なり』ってだけ覚えてる奴が多いけど、
実際は『負けそうな時はちゃんと守っとけ』とも言ってるのよねー」

萃香「何言ってんだ。負けそうな時は飲んで忘れる! これに限るでしょ!」

中里「(拙者は足が速い。ご婦人方と足並みを揃えるよう、少し手加減しなくては)」

玄爺「………」

博麗連合のDF陣は、小悪魔が放ったパスをオフサイドにするという明確な意図で、
兵隊の隊列の如く揃って、最終ラインを大きく上げ始めた。

アリス「(幻想郷にサッカーが流行った時、私は流行に乗り切れなかった。
だけど今は、皆との話題作りの為に研究した戦術がある!
どうかしらパチュリー。今の私のサッカー戦術は、貴女にも負けていない筈よ……)」

森崎「(――脳内で留まっていたアイツの戦術を、実戦化する為に尽力したのは俺だけどな。
自分で教えりゃ良いのに、勿体ぶるから練習に苦労したぜ)」

678 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/17(月) 00:38:31 ID:???

アリスの戦術眼。そして博麗連合の統率の取れた動きは確かに優れていた。
オフサイドトラップの成功率は原則五分五分ではあるが、
今回に限ってはスカーレットムーンズの分が悪い事を、パチュリーは認識していた。
昔のような、理論家で頭でっかちな彼女であれば、ここは素直にアリスの勝ちを認め退くべきシーンだった。
……しかし。

パチュリー「(本にある理論では、ここは攻めるべき局面では無い。
だけど……ここ最近の慌ただしい日々のせいで。私は、何というか……往生際の悪さというか、馬鹿になったみたい。
だって、こうしている今だって、敗北の可能性を考慮せず、勝利の可能性を積み上げる事にしか目が無いのだから)」

厄介な友人の影響か。成長しつつある友人の妹の影響か。
はたまた、自分の事をマスターと頼ってくれる、馬の骨も知らぬお人良しのためか。
パチュリーは、博麗連合の見事なオフサイドトラップを見てもなお、
自分が小悪魔に与えた指示は正しく、それにより、自分達の攻撃は成功すると信じていた。信じる事にした。
だから彼女は、ボールが地面に着くよりも、審判の笛を確認するよりも先に。
チームメイトに対して、こう指示を出す事にした。


パチュリー「――皆、上がりなさい。 ……『ファストブレイク』よ!」


―――パチュリーの号令は、紅魔スカーレットムーンズによる、前半最後の猛攻撃の開幕を告げる狼煙となった。

679 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/17(月) 00:40:24 ID:???
……と、言ったところで力尽きたので、今日の更新はここまでです。前半終わりませんでした…(泣)
明日で時間が取れれば前半戦は終わりそうですが、仕事が忙しいかもしれません(汗)
皆様、本日もお疲れ様でした。

680 :森崎名無しさん:2015/08/17(月) 01:41:50 ID:???
乙です

余計な指摘かもしれませんが、オフサイドは
パスを受け取った時ではなく、蹴った瞬間で判断されます
つまり小悪魔がパスを上げたそのときに、レミリアがオフサイドラインより前にいること
その上でレミリアがプレーに関与したときにオフサイドが取られます
※プレーに関与するとは、パスを受けとることはもちろん、
相手の体や視線を遮ることなども該当するようです

なので、小悪魔がパスをしてから、アリス達がディフェンスラインを上げて、
レミリアをオフサイドの範囲に置いても意味がないのです。
むしろ、レミリアをフリー状態にすることになりかねません。
小悪魔がパスをする前に、ディフェンスラインを上げて
レミリアをオフサイドの範囲に置く必要があります。

逆にパスを上げたときにレミリアがオフサイドの位置にいなければ、
その後ディフェンスの裏に走り込んでボールを受けても、オフサイドになりません。
一方、パスを上げたときにレミリアがオフサイドの位置にいた場合、
戻って博麗のディフェンスを追い抜いてボールを受けてもオフサイドを取られます。

長文失礼しました
この描写を見ると、小悪魔がパスしてから
アリスがディフェンスラインを上げるよう指示を出しているように見えたので
的外れや勘違いでしたら申し訳ありません。

681 :森崎名無しさん:2015/08/17(月) 02:22:04 ID:???
追記

本スレの以下の場面、アルシオンのパスの部分がよく分かると思います。

キャプテン森崎43
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1319375285/37-38/

682 :森崎名無しさん:2015/08/17(月) 03:08:29 ID:???
Xだと受け取ってからオフサイド判定だからね
勘違いしてる人って割と多そう

実際俺も試合やwikiで確認するまでそうだと思ってた

ゲームから入る知識ってあってるのも間違ってるのもあるから大変よ

683 :鈴仙奮闘記 ◆pXM64Uz50c :2015/08/18(火) 00:32:33 ID:9hOAKfHs
更新再開します。
>>680-681
乙とオフサイドについて教えていただきありがとうございます。
すみません、今の今まで完全にボール受け取ってからオフサイド判定だと信じ込んでいました…。
このスレでは、多少の現実との齟齬は『こまけぇことは(ry』で済ませていましたが、
アリスやらパチュリーが恥ずかしい事になるので、今回はちょっと描写を変えたいと思います。
>>682
私のことですね(爆)Wまでだとオフサイド自体無かったですし…。
スレを始めるにあたって、色々試合やらルール説明を見て勉強してたのですが、良く分かってなかったみたいです。
テクモ版キャプ翼風サッカーを中心にしつつも、あまりに現実のサッカールールを無視し過ぎないようにはしたいと思います。


※オフサイドのルールミスを踏まえて。
 昨日更新分のうち、>>676-678を無かった事にして、そこの修正版から更新していきます。

684 :>>676修正版@鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:34:06 ID:9hOAKfHs

ポーンッ、……パシッ。

小悪魔「――き、来た。もう一度、チャンスが」

パチュリー「……時間が無い。そのまま前に出しなさい、小悪魔。
『オフサイドトラップ』の危険はあるけれど、成功率は五分と五分。
私が成功しそうなギリギリの位置をレクチャーするから、そこを狙って」

小悪魔「わ、分かりました。……パチュリー様を信じます!」

タッ……!

実況「ボールをフォローした小悪魔選手、今度は長距離のパスに向け大きく足をしならせる!
霊夢選手とパチュリー選手が揉み合った隙を突いた、レミリア選手への縦ポンが狙いか! ですが……!」

霊夢「……アリス!」

アリス「分かっているわよ、霊夢!」

スッ……!

実況「ですが、元々霊夢選手のワンマンチームでは無く、
それぞれのポジションに一流クラスの選手が勢揃いしている博麗連合は焦らない!
霊夢選手に代わり、第二のゲームメイカーであるアリス・マーガトロイド選手が指揮を執ってサインを出す!」

685 :>>677修正版@鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:35:08 ID:???

アリス「(……ロングパス。ゲームを司るパチュリーは霊夢と同じく、
さっきまでの混戦の影響で身動きが取れていない。だったら、ここは……)――皆!」

サッ……!

衣玖「(アリスさんからのサイン。これは……)了解です、ラインを上げましょう」

タッ! タタタタタッ……!

天子「あー、あれね。勝つべからざるは守るなり、勝つべきは攻むるなり……って奴。
あれって、『攻撃は最大の防御なり』ってだけ覚えてる奴が多いけど、
実際は『負けそうな時はちゃんと守っとけ』とも言ってるのよねー」

萃香「何言ってんだ。負けそうな時は飲んで忘れる! これに限るでしょ!」

中里「(拙者は足が速い。ご婦人方と足並みを揃えるよう、少し手加減しなくては)」

玄爺「………」

博麗連合のDF陣はアリスが出したサインにより、最終ラインを大きく上げ始めた。
これは間違いなく『オフサイドトラップ』――最前線のレミリアをオフサイドライン上に取り残す事を企図した計画的なもの。
その証拠として、彼女達の足並みはまるで軍隊の行進のように綺麗に整っていた。

アリス「(幻想郷にサッカーが流行った時、私は流行に乗り切れなかった。
だけど今は、皆との話題作りの為に研究した戦術がある!
どうかしらパチュリー。今の私のサッカー戦術は、貴女にも負けていない筈よ……)」

森崎「(――脳内で留まっていたアイツの戦術を、実戦化する為に尽力したのは俺だけどな。
自分で教えりゃ良いのに、勿体ぶるから練習に苦労したぜ)」

686 :>>678修正版@鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:36:16 ID:???

アリスの戦術眼。そして博麗連合の統率の取れた動きは、確かに優れていた。
オフサイドトラップの成功率は原則五分五分ではあるが、
今回に限ってはスカーレットムーンズの分が悪い事を、パチュリーは認識していた。
昔のような、理論家で頭でっかちな彼女であれば、ここは素直にアリスの勝ちを認め退くべきシーンだった。
……しかし。

パチュリー「(本にある理論では、ここは攻めるべき局面では無い。
だけど……ここ最近の慌ただしい日々のせいで。私は、何というか……往生際の悪さというか、馬鹿になったみたい。
だって、こうしている今だって、敗北の可能性を考慮せず、勝利の可能性を積み上げる事にしか目が無いのだから)」

厄介な友人の影響か。成長しつつある友人の妹の影響か。
はたまた、自分の事をマスターと頼ってくれる、馬の骨も知らぬお人良しのためか。
パチュリーは、博麗連合の見事なオフサイドトラップを見てもなお、
自分が小悪魔に与えた指示は正しく、それにより、自分達の攻撃は成功すると信じていた。信じる事にした。
だから彼女は、小悪魔がボールを蹴り抜くよりも、審判の笛を確認するよりも先に。
チームメイトに対して、こう指示を出す事にした。


パチュリー「――皆、上がりなさい。 ……『ファストブレイク』よ!」


―――パチュリーの号令は、紅魔スカーレットムーンズによる、前半最後の猛攻撃の開幕を告げる狼煙となった。

687 :ここから今日更新@鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:37:25 ID:???

レミリア「そうだパチェ。あんたも中々分かって来たじゃない! ……それっ!」

バァァァッ、グルウウウンッ!

……グワァァァァァァッ……バシュウウウウウウウウッ!
ギュルギュルギュルギュルギュルギュルッ!

―――――――ダダダダダダダダッ!

偉そうな上に得意げな女の子の声。
地面が揺れる程の大ジャンプ、そしてムーンサルトで回転させた脚が空を切る音。
……そこからコンマ数秒で、トップスピンが強烈に効いたパスの音。
更に数秒後、大人数がドカドカとフィールドを駆け上がる音。
様々な種類の音が連続してフィールドに響き渡り、その土埃とも合わせて観客達は混乱し逆に静まる。
しかし、彼らが暫くしてフィールドを見ると、その状況は劇的に変化していた。

バシッ! バシッ! バシッ。 ――バシュウッ、バシッ! ポムッ。タタタッ……!

霊夢「……スカーレットムーンズが大挙して上がっている。しかし試合は切られる様子が無い。
――私達のトラップは、どうやら不発に終わったみたいね……」

アリス「……そ、そんな! 確かにあの時。
小悪魔がパスを蹴り出した時、レミリアは間違い無くオフサイドラインの後ろに居た筈なのに……!」

レミリア「バーカ。この私の脚力を舐めて貰っては困るわね。これでも軽く、月を一周できる位には鍛えてあるのよ!
(――突然大声出したパチェと、一気に駆けだした皆に審判が気を取られて無かったら、
 ギリギリオフサイド取られてたかもしれないけど……黙ってよっと)」

688 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:38:58 ID:???
スカーレットムーンズはDF、MF、FW。タレント選手、中堅選手、名無し選手。
その全ての選手が連続のパスワークを繰り返しながら、
ガンガンという音が聞こえて来そうな程に激しくラインを上げて行く。
博麗連合が弄した『オフサイドトラップ』が柔の戦術ならば、紅魔が放った『ファストブレイク』はまさしく剛の戦術。
今回はハッタリも戦術として含めた、パチュリーやレミリアの豪気が勝利を招いた。

レミリア「一旦渡すわ。フランにでも繋げて!」

バシュッ……。

メイド妖精F「はい! ……えーいっ!」

グワァッ、バゴオオオッ!

衣玖「――それっ! ……ああ、ダメでした」

天子「今あんた、手抜いて無かった? 流石に妖精メイドのパスだったら取れてたでしょ」

衣玖「いやーその。何だか脳裏にサイコロを振り続ける男の姿が浮かんでしまい、調子が出なくなって……」

天子「どういう原理よ……」

――そして、前半ロスタイムを迎えるより1分早く、スカーレットムーンズは最高の攻撃チャンスを得た。

689 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:40:10 ID:???
フラン「よーし。今度はちゃんとシュートするんだから!」

バイタルエリアには、今しがたボールを得たフランドール・スカーレット。
狂気を制御しつつある彼女は、真に純粋な瞳で今回のチャンスを心より喜んでいた。


咲夜「(万一敵陣にボールが渡れば、私はそれを直ちに刈り取る。そして……ここで決める)」

そこから後方、ゴールから30メートル程の位置には十六夜咲夜。
もっとも、彼女のロングシュートの威力は距離などに影響しないのだが。


パチュリー「(――『フォトシンセシス』があるとはいえ、正直、最後まで持つか厳しいわ。
だけど――この試合は落としたくない。例えこれが、私の人生最後の試合になったとしても……!)」

フランドールの隣には、今回の攻撃成功に大きく寄与した紅魔の司令塔。パチュリー・ノーレッジ。
悲壮な決意を胸に抱きながら、ねじ込み及び零れ球のボールキープに備える。


レミリア「(――ユーゾー・モリサキ。お前は本当に面白いやつだ。この幻想郷で今一番面白いと言っても良い。
そして、そんな面白いヤツに真正面から戦って勝つなんて……それ以上の娯楽が、この世にあるのかしらね?)」

そして、ゴール前には紅魔を統べる永遠に幼き紅き皇帝、レミリア・スカーレットが立つ。
今度は失敗しない。最高のレッドサンで森崎からゴールを奪い、借りを返す。これこそが彼女の目標だった。

690 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:41:33 ID:???
天子「ま、その前に私に防がれちゃあ、意味無いけどね」

玄爺「……!」

中里「(拙者はフォロー要員となるのが吉か……?)」

萃香「(これだけ居るなら、お披露目しちゃおうかな、『四天王奥義』?
――できる事なら、レミリアとやらのシュートで使いたいトコだけど、タイミングが合うかなぁ)」

森崎「へっ、有象無象がゾロゾロと。まあ良いさ、全部この俺のセービングの錆にしてやるよ!」

グッ……!

そして、紅魔の軍勢に対峙するのは5名の選手。
博麗連合が誇る精鋭のDF4名に加え、世界最高のセーブ力を持つ怪物GK・森崎有三。
背丈は低く、手は小さい。鬼のような怪力も無い。
しかし、異常なまでの力への欲望及び、それを掴む為の努力、精神力において、彼に勝てる人妖はそう存在しない。
もっと早く。もっと鋭く。もっと強く。純化され洗練された、強靭な意志の力。
科学でも魔法でも視る事の出来ない、『がんばり』で構成された壁が、博麗連合のゴール前に横たわっていた。

691 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:42:44 ID:???
フラン「……だけど、形がある物は必ず壊れちゃう。
堅い物ほど、強い物ほど。自分は絶対壊れないって思ってる物ほど、その時のショックは大きいのよ」

グワァァァァァァァッ……!

フラン「だから――私が試してあげるね。貴方が壊れたら、どうなるのか!
禁弾……『スターボウブレイク』!」

バッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオン! ドゴオオオオオオオオオオオオッ!

森崎「何が言いたい。壊れたら、もう一度作りなおせばいいだけだろ。
仮に百回壊れたとしても、俺は百一回作り直せる。そんな男だ!」

バァァッ、バチイイッ!

実況「森崎選手、まずは手堅くパンチング! しかしボールは零れて中里選手の足元へ! ですが……!」

咲夜「食らいなさい、『幻惑ミスディレクション』!」

ズザアアアアアアアアアアアアアッ! ズバッ、ズバズバァァァァアアアアアアア!! ――バチイッ!

中里「ぐううっ……!」

咲夜「ボールを奪ったけれど、こんな所では終われない。
――勝てば官軍、負ければ賊軍。成程確かに貴方の思想は正しいけれど。
生憎と私達は、美しい官軍にならねばならないのです。
だから――ここよ。ここで……決めるのよ! 幻符・『殺人ドール』!」

グワァァァァァァァァァァァッ! バゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
……ドドドドドドドドドドドドドドッ!

692 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:43:50 ID:???
実況「間髪入れずにボールを奪った咲夜選手、ゴールから30メートルの位置で地を這うロングシュート……
『殺人ドール』を放った〜〜〜〜! 距離こそありますが、そうした物はおかまいなしと土煙を上げながら、
シュートはゴールへと向かって行きます!」

森崎「なーにが美しい官軍だ。勝利は皆等しく尊いのに、そうやって選り好みしやがって。
誇りだかゴミだか知らないが、俺はお前等が捨てた汚ねぇ勝利を掴ませて貰うぜ!
――と、御託を並べたは良かったが」

玄爺「……!」

ドーンッ! バシッ!

森崎「……こりゃ傑作だ。名無しに毛が生えた奴にブロックされるのが、美しい勝利なのか、あ?」

咲夜「くっ……!」

玄爺「……! !!」

パチュリー「先の玄爺の動きは、『ヘビーブロック』……。――成程、貴方も流石に、単なる名無しとは格が違うみたいね。
だけど先に言っておく。ブロック一芸だけでは、私に勝てないわよ。それに……」

シュパッ、パシッ。グワァァァァァッ!

玄爺「!……!? ……!」

パチュリー「――やっぱり、ここは私も一発決めておこうかしら。 ………日符!」

グワァアアアアアアアアアアアアアッ!

パチュリー「……『ロイヤル、フレア』……ッ!」

バッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオオオンッ! バシュウウウウウウウウウッ!

693 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:44:55 ID:???
天子「きゃーっ、届かない! 『無念無想ブロック』さえ決まってれば防げたっぽいのにー!」

萃香「……(これはケン、だね。むしろ本命はその次……!)」

実況「玄爺選手がフォローしたボールはパチュリー選手が即刻奪い返し、
パチュリー選手はそのまま自慢のドライブシュート――『ロイヤルフレア』を放ちます!
並みのストライカーの必殺シュートよりも強烈なこのシュートに、博麗連合のDF陣は追いつけない!」

パチュリー「凡才は良く、自分は努力をしているから天才にも勝てる、って勘違いするわよね。
……ふざけないで。努力の量ならば、多くの天才と呼ばれている者だって、凡才とそう変わらないんだから」

森崎「……ああ、俺もそういう見せかけの良い子ちゃんみたいな奴は大嫌いだな。
だけど、お前こそ勘違いするなよ。まず第一に俺は凡才じゃなくて天才だ。そしてもう一つ……!」

バッ! バババッ!

森崎「――この俺以上に努力してるヤツなんて、この世にゃ存在しねぇ!
だから俺は才能においても、努力においても天下最強なんだよ!
……ぬおりゃーっ! 『がんばりダイビング』だーーーっ!」

バァアアアーーーーーッ! グワァァァァッ…………………ガシィィィィイイイッ!!

実況「森崎選手今度は自分ではじいたーーーっ!
必殺のがんばりダイビングで、零れたボールを完璧に捉え、前方へと送る事に成功します!
これは今度こそ攻撃成功か! ボールは中盤の霊夢選手へと渡っていき……!」

美鈴「 ホ イ チ ョ ー ー ー ッ !!」

バシュンッ!――ポーーンッ!

694 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:46:25 ID:???
霊夢「……割り込んでからの前転クリアか。やるわね、美鈴。高空なら私が勝ってたけど」

美鈴「そりゃあ。だって私は体格を生かしたプレーしか出来ないモンですから。
だから私も小悪魔さんよろしく、フィジカルに特化するよう、重点的に鍛えたんです!」

実況「上がって来ていた美鈴選手、中盤で霊夢選手に競り勝ってボールを逆にクリア!
再び紅魔に攻撃権を戻す事に成功しました!!」

美鈴「弱い者にも価値がある。弱い者にも思想がある。弱い者にも……矜持がある!」

森崎「――ケッ。また戻って来やがったか」

レミリア「感謝するが良い、人間。私達が全員がかりで、お前を恐怖へともてなしているのだからな」

森崎「恐怖ぅ? どっちかと言えば、今までの展開はお笑いに近かったけどな」

レミリア「ならば、今までの前座を詫びさせて貰おうか。なんせ、今美鈴が飛ばしてくれたボールは高いんだからな」

バッ……!

紅帝と狂王は再び対峙する。レミリアは終わりの無い不毛な煽り合いを途中で切り上げると後ろを向く。
美鈴が蹴り出したボールは高い軌道を描いてペナルティエリア付近まで飛んでいた。
それを見て、レミリアは満足気に飛翔した。

レミリア「……私が今大会の為に習得した必殺シュートは3つある。
ひとつはさっきお見せした、『ダイレクトレッドサン』。低空でも撃てるが威力は……まあ、そこそこだ。
フランドールの『495年の波紋』や、八意永琳の『爆宙アポロ』などと、そう威力は変わらない」

グルンッ……バァァッ!

695 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 00:51:09 ID:???
その後、レミリアは空中で一回転。後方から向かってくるボールに照準を合わせ、
小さくスラリとした足を、空に向けてピンと伸ばしてみせた。

レミリア「みっつめは先の試合でも見せたし、何よりフランが居ないと撃てないから置いといて。
……今からお前に見せるのは二つ目のシュート。『バイシクルレッドサン』。
これは『マスターオブレッドサン』を、オーバヘッドキックの体勢で撃つだけの簡単なシュートだけど……。
威力は、こちらの方が大きい。まして、貴様への借りで怒りに震えている現状ならば――そうね。
何の制約も無く個人で撃てるシュートとしては、今大会最強になるんじゃないかしら?」

森崎「――微妙な条件付きの最強だな。案外大した事ないんじゃねぇの、それ?」

レミリア「フフ。……そう思うのならば、まずは括目あれ!」

フワァァッ……グルンッ!

軽口を叩く森崎を無視して、ボールが足を通り越した次の瞬間、
レミリアの脚がカタパルトのように機械的に、しかし正確に力強く振り下ろされた。
シュートを撃つ間際、彼女は短く吠えた。

レミリア「――――――――――H A!」

バッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
ドギュルウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!

森崎「(……なっ!)」

この時、森崎は初めて戦慄した。否、戦慄することができた。
生物として当然持つべきである生存本能が働いたのだ。
限界を超えたセービングの為に、無理やり封じ込められ鈍っていた森崎の自己防衛欲求を、
レミリアの人智を超えたシュートは、呼び覚ませてくれた。
しかしそれは、森崎にとってある意味では不幸だった。

696 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 01:00:10 ID:???
森崎「(……く、くそっ! しまった! 身体が一瞬引き攣ってしまった。
あのシュートを食らえばバラバラになる。たったそれだけの恐怖に引きずられて、動きが鈍った!)」

森崎はレミリアのシュートに対し、万全の体勢でセービングに行けなかった。
威力自体は今の『バイシクルレッドサン』も、先ほどの『ダイレクトレッドサン』も、劇的な差は無いにも関わらず。
だからこれはある意味では偶然だったし、もしかしたらこれまでのセービングによる疲労が遠因かもしれない。
ただ、兎にも角にも、森崎はこのシュートへの動きが遅れた。
そして、超一流クラスにおいてその遅れは命取りだった。

森崎「(同じだ。シュナイダーの『バイシクルレッドサン』と……! 殆ど、同じだ!)」

森崎は恐ろしくも気高いレミリアの横顔に、圧倒的な技巧とパワーにかつてのライバルを想起した。
それが現実逃避であると分かっていても、そうしてしまうだけの力が今のレミリアにはあった。

森崎「(……ポスト! ――は期待出来ん。シュートコースは正面下!
枠外やバーも期待は出来んだろうし、そこにぶち当たるようなしょっぱいFWじゃない、あいつは。
だから――要するに、俺が防げないと、負ける! 点をとられちまう!)」

万事休す。森崎の脳裏にそんな単語がよぎった。
世界一の負けず嫌いで弱気が存在しない森崎すら、今のこのシュートはお手上げだった。

―――――――――――――ゴッ!

強い風が吹き抜ける。いや霧だったか、それとも雲か。雪かもしれない。
それはレミリアのシュートが空を切った際に生じたつむじ風だったろうか。
森崎の意識はその風を受けて、ほんの一瞬だけ飛んでしまっていた。

697 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/18(火) 01:01:34 ID:???
レミリア「やったか!?」
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。前半はこれで終了となります。
後ろから来たボールをそのままオーバーヘッドするのは難しそうですが、その辺りはお目こぼしください(汗)
皆様、本日もお疲れ様でした。

698 :森崎名無しさん:2015/08/18(火) 02:05:01 ID:???
フラグ乙

699 :森崎名無しさん:2015/08/18(火) 03:52:16 ID:???
万事休すとかもあるし、体のどこかに当たってくれセービングかな。

700 :森崎名無しさん:2015/08/18(火) 05:57:58 ID:???
シュナは森崎の前でバイシクル作ってないんじゃ?レッドサン違うし

701 :森崎名無しさん:2015/08/18(火) 12:23:47 ID:???
がんばりセービング・改と悟りセービングT(ガッツ回復)・U(一定確率でセーブ成功)の合体技かな?

鈴仙「なにそのチート技」

702 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/19(水) 00:49:14 ID:???
こんばんは、更新します。
>>698
フラグ乙ありがとうございます。
>>700
すみません、凡ミスと筆が滑りました(汗)
レミリアにシュナイダーの影を感じたという事を言いたかったので、
×:森崎「(同じだ。シュナイダーの『バイシクルレッドサン』と……! 殆ど、同じだ!)」
○:森崎「(同じだ。この力強さ、蹴り出し、そして気高さ……! アイツと――シュナイダーと……!)」
などと、脳内変換して頂ければ幸いです。
>>699,701
森崎じゃなくて仲間も活躍した! ……という風に書こうと思ってます。
今回については、流石に新セービングはないです。そっちのが絶望感があって良いかもですが(笑)

703 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/19(水) 00:51:36 ID:???
レミリア「……やったか!?」

シュートが放つ圧力による酸素欠乏で倒れた森崎を尻目に、レミリアは空中で思わずそう小さく叫んでいた。
森崎の全力と自分の全力はほぼ互角。ならば、どちらが最後に立つかどうかは、完全なる運否天賦の世界。
そして結果として、レミリアは森崎よりも長く立っていた。

レミリア「(試合時間は……もう残り十数秒。この段階で同点に追いつけたのは大きい!)」

飛び出し気味の位置に居た森崎が倒れ、もはやシュートを邪魔する者は誰も居ない。
粘り強い攻めはスカーレットムーンズの体力を大きく削いだが、
しかし今、それが成果となって同点へと結びつこうとしている。

レミリア「フランが強烈なシュートを放てなければ、今回の攻撃はそこで終了していた。
咲夜がロングシュートを放たなければ、ブロックに向かうDF陣の戦力を削げなかった。
パチェが身を削ってシュートを撃たなければ、森崎の体力は削げなかった。
美鈴がクリアを成功してくれなければ、そもそも私にボールは回らなかった。
そして……小悪魔や中国(陸)。それに他のメイド妖精達が居なければ、この局面はそもそも訪れなかった。
――どうだ博麗連合。どうだ人間共。これが我ら紅魔の力。夜の住民たる悪魔の矜持だ!」

フワッ……バサッ。

そう宣言しながらオーバーヘッドの体勢で、そのまま背中から地面に倒れこむレミリア。
彼女は強い力を持ちながらなお、仲間の結束を信じ切っており――そして、それを最高の形に創り上げた。

霊夢「……凄いわ、レミリア。――私、自分がさっき魔理沙にムキになったのが恥ずかしくなる」

レミリア「おや、やけにしおらしいじゃないか、霊夢? とうとう私の軍門に下る気になった?」

704 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/19(水) 00:53:53 ID:???
そんなレミリアに、霊夢は何時の間にかゆっくりと歩み寄っていた。
前半終盤から今までの彼女達の攻撃は、今の霊夢には無いものであり、純粋に興味を覚えていたからだ。
しかし、彼女がレミリアの元へ歩み寄ったのは、別の理由が主だった。

霊夢「だけど……この勝負、あんたらの負けよ。
今回はたまたま森崎には勝てたかもだけど、ウチのチームにはもう一人、バケモノが居るからさ」

レミリア「……え?」

霊夢はレミリアに同情していたのだ。彼女達はただでさえ強い上に、仲間と結束し、努力も重ねた。
これが漫画か小説ならば、間違い無く今回はレミリア達が勝つべきシーン。
いや、実際に彼女達は、運の要素も混じっていたとはいえ、最大の敵に勝利した。
それを、……ここで突然、雑魚と思っていた者がしゃしゃり出て来て滅茶苦茶にひっくり返したとすれば、
その物語は面白いだろうか。しかし、今の試合は物語では無い。きちんと現実に行われている試合である。


――よってレミリア達は、面白かろうと、面白くなかろうと。
何時の間にか眼前に広がっていた、この現実を受け止めなくてはならなかった。

705 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/19(水) 00:55:36 ID:???
                    ド                        ン!


             萃香「――へへっ。私がサッカーでこの技を出すのも数百年ぶりだ!」


               本当の意味で、最後の最後まで戦場に立っていた人物。
     それは、森崎でもレミリアでも無く――博麗連合のCBとして出場していた古豪・伊吹萃香だった。
          彼女はバイタルエリア手前から、まるで巨人のような一歩を踏み出した。


               パチュリー「……もしや。あの伝説は本当だったの言うの?
         鋼鉄の小さな巨人。伊吹萃香は幻想郷きってのGKであるが、それは彼女の本職では無い。
               彼女の本職とは……センターバックである――と、いう伝説は……!」


           萃香「そうだよ。幻想郷でサッカーが流行った時は、人手不足でGKばかりやらされてたからね。
      ホントはGKでもこの技が出来ればいいんだけど、ペナルティエリア内で三歩の踏み込みは距離的にできん。
             だから、比較的自由に動けるDFの方が、本来の私向きなのさ……っと!」

706 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/19(水) 00:59:20 ID:???
                   ド                           ン!!

                 地球の裏まで続く穴が開いてしまったかのような二歩目。
               パチュリーはこれで萃香の狙いを完璧に察知する事ができた。
           しかし、萃香が後はゴールへと向かうだけのボールに照準を合わせた時点で、
                       彼女に出来る事は失われていた。

      レミリア「……森崎は囮。本命はお前だったという事か。人間に正GKを奪われた乙な鬼は外面。
            弱いと見せかけその実、自分が最も得意とするポジションに居座る為の!」

  萃香「まさか。そんな野暮ったい事、この私がするもんか。森崎は正真正銘、私よりも強いGKだからそこに居る。
         だけど、博麗連合には私よりも強いDFは居ない。だから私はここに居る。それだけさ」

   グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

          そして、ボールの後ろ側にいた筈の萃香は、あっという間に正面へと回り込んでいた。
     自身の身体を疎にして、妖力を爆発させた彼女にとって、自身からボールまでの三歩はあまりに短かった。

             萃香「この技にも制約がある。まず、タイミングが重要だから毎回は使えない点。
           そして、無理で道理をひっくり返す分、普通の『カウンターシュート』よりも消耗は大きい。
                  だけどね……! こいつはその分、まっこと強力だよ!

                         レミリア「…………ふん」

  レミリアの脳内に流れる不都合な運命。彼女は精一杯のしかめっ面で、それを歓迎する事しか出来なかった。
               萃香はゴールの奥深くでボールに動きを合わせ、こう宣言した。



                   萃香「食らいな。四天王奥義―――『三歩壊廃』!!

707 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/19(水) 01:00:47 ID:???









―――バシュッ!
      ……ゴオォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

708 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/19(水) 01:03:32 ID:???









世界中の全てが崩壊したような音を奏でる、勇儀の『三歩必殺』と違い、萃香の『三歩壊廃』が発した音はあまりに小さい。
壊し廃する為の三歩は、世界のいかなる秩序をも崩しはしない。
しかし、萃香によって弾かれたレミリアの『バイシクルレッドサン』は、
僅かにしか発しない轟音の中に、とてつも無い破滅が植え付けられており。
それは――今や唯一ゴールを守っていると言っても過言では無い陸の手元、いや足元で爆発する事となった。

陸「な、なんじゃ……コラ。紅魔大人(レミリア)が蹴ったシュートを、
何時の間にかシュートに割り込んでいた鬼の子が蹴り返して……こっちに、こっちに……!
こここ、ここここここ……こ っ ち に 、 向 か っ て 来 て る ア ル〜〜〜〜〜!!???」

ォォォォォ……オオオオオオオオオオオオオオ オ オ オ オ オ    オ     オ    ッ  !!

撃ち返された太陽の弾幕は、反射された際には青白い炎となって帰って来ていた。
火を蹴り出す程度ならば簡単だ。簡単ながら修行を受けた陸なら容易く出来る事だ。
しかし、彼女はそれすらを良しとしなかった。
何故なら、今反射されたシュートは青白いとは言え、まさしく太陽そのものだったからだ。


陸「あ、アイヤ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!! ら、らら……『雷斬脚』〜〜〜〜ッ!」

ゴオオオオオッ! ダッ、バギイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

709 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/19(水) 01:08:57 ID:ZnMjp8fs
この絶望的状況下でも、ボールがゴール前へとやって来るまでの僅かな時間で、陸は本能的に右脚を差し出す事ができた。
これは陸がサッカーにおいても天賦の才を抱いている事の証拠にはなったが、それ以上の効果は無い。
反転する太陽を、僅か人間一人の力で制圧する事は、努力とか奇跡とかそうした理屈は抜きにして、物理的に不可能だった。

ゴッ……! ゴォッ。ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオッ! ボオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

陸「あ、あが、っ……! や、焼ける……! も、燃えるアル……! まだ、死にたく、無いアルね……!!」

シュートに対して足を触れたは良いものの、陸の限界はそこまでであり、
残りはシュートに対して掛かっていた強烈な縦回転をなぞるように、陸はボールが持つ重力に引っ張られて行った。
陸の身体は縦に大きく吹き飛び、撃ち返されたシュートは横方向――ゴールへの垂直直線運動を続ける。
そして、その結果は当然だった。そう。信じたくないにしろ……これは、ごく当然の結果だった。


ズバァァァッ! ……ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!
ピッ、ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ……!


――萃香による得点。そして前半の終了を示すホイッスルが同時に鳴る。
それは友情を繋ぎ、同点という名の希望を掴んだ筈の紅魔スカーレットムーンズは一転。
前半終了時点で2点のビハインドという、最悪の現実を叩き付けられた事を証明していた。


紅魔スカーレットムーンズ 0 − 2 博麗連合2015

710 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/19(水) 01:10:43 ID:???
大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
12ゴール レミリア、鈴仙
9ゴール  フランドール、射命丸
8ゴール  魔理沙
7ゴール  勇儀
6ゴール  来生、屠自古
5ゴール  星、諏訪子、霊夢
4ゴール  森崎、神子、反町
3ゴール  早苗、謎の向日葵仮面
2ゴール  神奈子、ピエール、メルラン、天子、赤蛮奇、空、佳歩、岬
1ゴール  妹紅、咲夜、美鈴、サニー、リリーB、ぬえ、響子、永琳、萃香
       影狼、藍、幽々子、幽香、針妙丸、パチュリー、小田、椛、パスカル


大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
6アシスト パチュリー、霊夢
5アシスト 小町
4アシスト てゐ、神子
3アシスト 早苗、ピエール、小悪魔、マミゾウ
2アシスト 森崎、反町、はたて、岬、空、お燐、ウサギB、レミリア、アリス
1アシスト 鈴仙、影狼、大妖精、橙、諏訪子、佳歩
       衣玖、針妙丸、リリーW、ルナサ、ぬえ、永琳、妹紅

711 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/19(水) 01:13:11 ID:???
レミリア敗北!(チームが負けたとは言ってない)
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
萃香さんが実はDF本職的な話や、四天王奥義の存在については随所でチラつかせていましたが、
それを今明らかにした格好です。
ただ、後半戦はスカーレットムーンズがもうちょっと活躍する予定です。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

712 :森崎名無しさん:2015/08/19(水) 07:12:21 ID:???
カウンターシュート持ちのDFだと!?インチキ選手も大概にしろ!(中山さんからは眼をそらす)
乙です

713 :森崎名無しさん:2015/08/19(水) 16:45:21 ID:???
何?DFはシュートを撃たないのではないのか!?
乙でした

714 :森崎名無しさん:2015/08/19(水) 18:16:22 ID:???
インビシ1回でも跳ね返されたらかなり厳しくなるね

乙です

715 :森崎名無しさん:2015/08/19(水) 22:42:28 ID:???
三歩壊廃の威力: 759 TNTトン

上記威力による各キーパーごとの飛行速度・距離および香典(または見舞金)合計
・輝夜
速度:毎秒 840 キロ 距離: 589 キロ 見舞金 847 万円
・にとり
速度:毎秒 81 キロ 距離: 1017 キロ 香典 558 万円
・アモロ
速度:毎秒 597 キロ 距離: 809 キロ 香典 104 万円

716 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/20(木) 00:19:25 ID:???
こんばんは、今日も書いていきます。
>>712
乙ありがとうございます。
中山さんは「まだ」インチキじゃないので大丈夫です…たぶん。
>>713
乙ありがとうございます。
カウンターシュートは必殺ブロックなので何も問題ないですね。
>>714
乙ありがとうございます。
萃香のカウンターシュートはかなり強いですので、試合の時はまた色々考えて頂ければ嬉しいです。
>>715
姫様はやっぱり幻想郷最速でしたね。人望もナンバーワンですし、すごいなーあこがれちゃうなー(棒)

717 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/20(木) 00:20:49 ID:???
ザワザワ……ザワザワ……。

鈴仙(観客席)「え……? 何、アレ……?」

佳歩(観客席)「あの紅魔スカーレットムーンズが無得点で、しかも2点差……。それも、前半戦だけで?」

霞(観客席)「スカーレットムーンズは間違いなく全力。
……いや、むしろ後半戦を顧みず、全力以上の攻勢に出続けていたのに……!」

輝夜(観客席)「……あー、こりゃもう試合終わったわね! 試合結果は33−4かな!?
もう帰ってゲームしてた方が良いんじゃない!?」

妹紅(観客席)「――輝夜、空気読んで」

輝夜(観客席)「ご、ごめん。……流石に悪かったわよ」

ウサギC(観客席)「(33てんとれるいっぽうてきしあいで4しってんするもりさき むのう)」

――萃香が放った渾身のカウンターシュート、四天王奥義『三歩壊廃』。
それはパッと見に分かる破壊力だとか派手さは乏しい。しかし。それは確実にえげつなく、おぞましく。
このフィールド上に漂っていた見えない『何か』を完膚なきまでに破壊し尽ていた。

永琳(観客席)「……見なさい、フィールド上のスカーレットムーンズメンバーを。
嫌味なまでに自信に満ち溢れていた彼女達がああも崩れるなんて。とても、滅多にお目に掛かれないわ」

永琳は僅かな親しみと同情を籠めながら、フィールドを指し示す。
あの永琳がライバルチームの選手に対し、ここまで感傷的になるのも珍しいと思って、
鈴仙はふと目線をフィールド上に向け直すと――そこには、とても「感傷的」では済まされぬ、傷ましい光景が広がっていた。

718 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/20(木) 00:21:51 ID:???
パチュリー「……はぁ、はぁ……!(駄目。前半に飛ばして少しでもリードを奪っておく心算が、
蓋を開けてみればこちらは満身創痍で、相手は2点リードだなんて。
こんなの、流石に想定の……範囲内ではあったけど。それでも、やっぱり現実に来ると、きついわね……)」

元々体力の無いパチュリーは自身の酷使が答えて、肩で息をしながら打ちひしがれている。

レミリア「……(――なんてこと。この私が。レミリア・スカーレットが……敵に恐怖している?
敵の攻撃を凌ぎ、中盤を搦め手で突破し、最終ラインに何度も攻撃を重ね……。
それでもなお、敵には奥の手が隠されていたから?
――たったそれだけの理由で、私が怯えてるとしたら……とんだ屈辱ね)」

誇り高く負けず嫌いのレミリアは、もしかしたら人生で初めての敗北感に唇をかみしめている。
その恐怖と屈辱感は、まるで自分が石になって動けなくなる程に強かった。

フラン「……ウフフ。ウフフフフ……(今までがんばったのに。結局こんな結果?
何よ。そんな事聞いていないんだから。だから、きっとこれは夢。
夢だったら……何をしても良いのよね、ウフフ……)」

フランドールの脳内に、再び狂気の衝動が溢れつつあった。
レミリアとの必死の特訓で克服した筈の正気の鎧は、全てを破壊するシュートの前では無力だった。

咲夜「……」

美鈴「……何も、言えませんね」

小悪魔「……パチュリー様。私にはやっぱり……荷が重すぎましたよ……?」

咲夜と美鈴、そして小悪魔。従者達は、自らの無力に対し、完璧に言葉を失っていた。
彼女達に横たわるのは、ズタズタに破壊された誇りと希望。そして勝利への道程のみだった。

719 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/20(木) 00:23:25 ID:???
メイド妖精「「「……い、いたい痛い……!」」」「「もうやだよ、怖いよ……!」」

陸「ぐ、ぐああああ……ッ。熱いアル。体中の骨がアメ細工みたくぐにゃぐにゃになってるアル……!」

少なくとも自身にまでボールは来るまい。
そう安堵していた時に、不意打ち的にシュートの衝撃を受けたメイド妖精達と陸は、
もう少し分かり易い意味でズタズタにされていた。
シュートを受けた彼ら彼女らはそのあまりの鋭さに痛み泣き叫び、
遠目で見ていただけの者も、仲間の痛々しい姿にすっかり戦意を喪失していた。


萃香「――私は勇儀程、腕っぷしにゃ自信が無いモンでね」

そんなスカーレットムーンズの様子を見てほくそ笑む小鬼が一匹。
萃香は可愛らしい外見とは裏腹、強者らしく勿体ぶるように語り出した。

萃香「だけどさ、鬼ってのはただの脳筋ってのとも少し違うわけだよ。……勇儀は脳筋だけど。
打ち出の小槌を作ったのだって鬼だし、禅の大家を調べてみても、大体が鬼かその系譜に連なる。
鬼ってのはいわば、この世ならざる強さの権現みたいなもの。
だから、こうやって人の精神を粉々にするって意味での「壊廃」……ってのも、立派な特技なのさ」

森崎「(チッ。ここぞとばかりにカッコつけやがって……。
さっきだって、『超モリサキ』にさえなっていれば、余裕で取れたのに……!)」

レミリア「……………」

彼女の言葉に反応する者は、後ろで恨みがましく負け惜しみをする森崎以外に居なかった。
減らず口のレミリアすらも、まるで年相応の少女のように、萃香の言葉に真剣に耳を傾けていた。

720 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/20(木) 00:25:08 ID:???

パチュリー「……帰りましょう、レミィ、皆。前半戦は完璧に私達の負けだったわ。
だから、もう一度考えましょう。――この崩れきった現状を打破する、あんた好みの奇跡の采配をさ」

レミリアに代わって、この場を取り仕切ったのは親友のパチュリーだった。
石像のように固まるレミリアを引きずり、狂気の世界に足を踏み入れつつあるフランドールを宥め、
咲夜と美鈴、そして小悪魔を従え、ロッカールームへと消えて行った。
メイド妖精は始め戸惑っていたがやがて落ち着いて。
控えを含めた6人がかりで、倒れ伏した陸を持ち上げながらそれに続いた。


***


霊夢「……魔理沙」

魔理沙「……………」

スカーレットムーンズが立ち去り、
したり顔の萃香と悔しそうな森崎が仲良く控室へと向かい、天子と衣玖と中里が軽口を叩き合いながら続き。
小町が玄爺の背中に乗って昼寝をする中、集団の輪に入りそびれてあたふたするアリスを見送って。
――博麗連合の絶対的トップ下と絶対的ストライカーは、
二人きり(正確には針妙丸が霊夢のリボンで寝ていて三人だが)となった。霊夢が魔理沙を呼び止めたのだ。

霊夢「そ、その。さっきは悪かったわね、大人気なく手を上げちゃってさ。でも、えっと……」

最後に崩されたとはいえ、悪魔なりの友情で博麗連合の牙城を崩しかけたスカーレットムーンズの姿を見て、
霊夢はやはり自分も、魔理沙と仲直りをしたいと思うようになっていた。
そんなしおらしい気持ちは自分らしくないと霊夢も思っていたのか、最後の方の言葉は消え入るようだったが。

721 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/20(木) 00:29:42 ID:???
魔理沙「無理して謝らなくても良いぜ。だって、悪いのは誰がどう見たって私なんだからな」

スッ……。

霊夢「あっ、待ちなさいよ魔理沙。そっちはロッカールームじゃなくて観客席じゃない。まさか……!」

ただ、魔理沙は悲しい事に、霊夢程感傷的にはなっていなかった。
……いや。霊夢に甘えたい気持ちがあったとしても、彼女の弱さはそれを許さなかった。
霊夢の言葉を遮って、魔理沙は彼女とは反対の方向へと向かって行った。

魔理沙「――まさか、恥ずかしくて逃げ出すんじゃないか……ってか?
それはお前の願望だろ。私は単純に、自動販売機で ブランデー入り紅茶 を買いに行くだけだ。
悪いが、私は見苦しくてもやり続けるぜ。この身体が、完全に動かなくなるまでは、な」

カッ。カッ、カッ……。

霊夢「……魔理沙。行っちゃった」

はぁ、と霊夢は溜息を吐く。元々、こういう陰気くさい喧嘩は得意じゃない。
自分はもっと、真正面からグーで殴り合う喧嘩の方が向いている……。
そう心の中で魔理沙へのあてどない愚痴を呟きつつ、
霊夢は仕方なしに他のチームメイトの待つ控室へと向かう事にした。

722 :森崎名無しさん:2015/08/20(木) 00:33:44 ID:???
やけ酒かな?

723 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/20(木) 00:35:29 ID:???
針妙丸「ねぇ霊夢。大丈夫? さっき、結構ケンアクなムードっぽかったけど」

霊夢「……何よ。アンタ、途中から起きてて聞いてたのね」

フィールドとは一変し、静かでがらんとした、ロッカールームへと続く廊下。
そこで小人サイズに戻った針妙丸は霊夢の頭上で、心配気に声を掛けてくれた。
霊夢は最初、悪趣味ね、と冗談めいてぼかしつつ、彼女に対し無視を決め込もうとしていたが。

針妙丸「……魔理沙は、自分はボロボロになっても良いから、霊夢と一緒に戦いたい。
でも霊夢は、魔理沙にボロボロになって欲しくない……んだよね?」

霊夢は、針妙丸がふと発したこの一言に対し、どうしても何かを言いたい。伝えたい。
そんな強い気持ちにふと囚われてしまい――。

霊夢「……魔理沙はそう思ってるのかもね。でも、私がそんな事、思う訳ないでしょ?
さっきだって、アレじゃあ試合にならないと思ったから、何とかして連携を取り戻したいって思っただけ。
いわば戦略的説得よ。うん、それ。戦略的説得」

その刹那。こんなにも恥ずかしい気持ちを抱いていた自分に腹が立ってしまい、
針妙丸の問いかけに対し、……霊夢は反射的に嘘を吐いた。

724 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/20(木) 00:38:20 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
>>722
台詞に反してかなり余裕タップリですね…>ブランデー入り紅茶

皆様、本日もお疲れ様でした。

725 :森崎名無しさん:2015/08/20(木) 12:18:45 ID:???
この後の展開が読めた


魔理沙「霊夢・・・人間ってのは努力や才能に限界があるなぁ
    私が短い人生で学んだことは人間は努力をすればするほど上を向くのが苦しく
    努力に価値が見いだせなくなるってことだ!」

霊夢「えっ?大丈夫?」

    「人間を超えるものにならねばな・・・
    私は人間をやめるぜ!霊夢ーッ!私は人間を超越するッ!
    霊夢!お前の血でだァーッ!」

吸血鬼となる→吸血鬼なのでチームを裏切る→外に出た瞬間消滅
これに違いない

726 :森崎名無しさん:2015/08/20(木) 13:45:16 ID:???
試合後に川にダイブしないか心配だな。
まぁ後半次第だが

727 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/21(金) 00:50:23 ID:???
こんばんは、後半戦の詳細なプロットが出来ましたのでまた更新していきます。
>>725
魔理沙は結局人間で死にそう…と、思いつつ確かにこの展開的には吸血鬼にでもなりそうですねw
>>726
メタ的に言うと、魔理沙が川にダイブしたら決勝がヌルゲーになるので大丈夫です(爆)

728 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/21(金) 00:51:46 ID:???
*****


〜紅魔スカーレットムーンズ ロッカールーム〜

レミリア「…………」

咲夜「……(あのお嬢様が、こうも消沈されるとは。従者として、何たる不覚……!)」

フラン「………うー」

美鈴「あ……あはは……。はぁ……」

小悪魔「……ひっく。ぐすんっ……」

陸「……あ、アイタタ! おいメイド妖精、もっとクスリは優しく塗るアルね!」

パチュリー「………」

スカーレットムーンズのロッカールームは、キャプテンであるレミリアを筆頭に静まっていた。
広く感じる控室では、咲夜が苦々しげに歯ぎしりをし、フランドールが不機嫌そうに唸り、
美鈴が愛想笑いと溜息を交互に繰り返し、小悪魔が自身の無力さに泣きじゃくり、
陸がメイド妖精に横柄な注文を投げかけている以外に動きはない。

パチュリー「……(……さっきはレミィにああ言ったけれど。ハッキリ言って今の状況は厳しいわ。
大魔法『フォトシンセシス』でギリギリ体力を持たせている私は勿論の事、
必殺シュートを何度も撃ったレミィやフラン。何度も大型シュートをセービングした陸の体力も心許ない)」

しかし、動かない中にも、頭を必死に回転させて、後半の勝機を見出そうとする者は居た。
それは勿論、紅魔館の自称賢者にして知識人でもある魔法使い、パチュリー・ノーレッジだった。
思索こそが存在意義たる種族魔法使いにとって、魔術の実験であってもサッカーの試合であっても同じ。
彼女は、考える事によりこの2点差をひっくり返す方法を見出そうとしていた。

729 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/21(金) 00:52:47 ID:???
パチュリー「(――博麗連合の守備陣について。もう一度おさらいしておきましょうか)」

勝つには勿論これ以上の失点は避けなくてはならないが、それ以前に得点出来なければ負けである。
そう思ったパチュリーは、惚けたレミリアが正気を取り戻すまで、敵の守備戦力を振り返る事にした。

パチュリー「まず……。比那名居天子はタックルとブロック、それと攻撃に優れた攻撃的サイドバック。
性格は自分勝手であり、持ったボールを離さない傾向がある。
彼女は一番挑発の余地と効果がありそうね。……挑発を受けて気を昂らせるタイプだから、その後の報復は怖いけれど。

中里正人はパスカットとボールキープ、その他守備一般に長けた優秀なサイドバック。
一部新聞では覗きの常習犯と噂されているけれど、サッカーにおいては真面目な優等生。
ただ、キャプテンの霊夢よりも森崎を信望している噂があるわ。もしかしたら、指揮系統のブレが隙になるかも。

伊吹萃香。彼女のブロックが恐ろしい事は……言うまでも無いわね。
ただ、何だかんだで彼女のCB歴にはブランクがある。
だから、筋金入りのCBだった八坂神奈子やレティ・ホワイトロックよりは、経験不足による弱みがある筈よ)」

レミリア「………………」

普段なら、この辺りで何らかのツッコミあるいは関係の無い雑談を入れてくれるレミリアは、
やはり石のような棒立ちのまま、特別何かを喋る気配はない。
……気にせず、パチュリーは脳内での情報整理に努める事にする。

パチュリー「(……玄爺も油断ならない選手だけど、私が問題視しているのはそうじゃない。
――要するに、博麗連合の森崎有三。彼を破るにはこの壁を乗り越えなくてはならないという事実。
そして、その森崎有三もまた、彼女達を大きく超える実力の持ち主であるという現実よ。

彼のセービングは間違い無く超超一流。並のシュートでは彼を削る事しかできない。
無論、あれ程の動きをするのだから、おおかた体力不足とか欠点はあるのだろうし、
永遠亭ルナティックスの蓬莱山輝夜みたいに、セービングに長けた反面、一対一の経験値が低いという可能性もある。

730 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/21(金) 00:54:12 ID:???
パチュリー「(……だけど、その両者も気軽に試す事はできない。何故なら、博麗連合の守備陣が強力だから。
シュートで削ろうとしたら、伊吹萃香に『カウンターシュート』を放たれて。
ドリブルで一対一を狙おうとしたら、比那名居天子や中里正人のような、タックルの名手に刈られてしまう。
――そして私達は、勝つためには一厘のミスも許されない。 ……こうして考えてみると、絶望的ね)」

……と。ここでパチュリーは大きく溜息を吐いた。
思考を深めれば深める程、自分が泥沼に嵌ってしまう事が分かってしまったからだ。
スカーレットムーンズが勝利するには、後半戦終了までに少なくとも2点を奪わなくてはならない。
しかし、その目標を達成するには現実的な障害が多すぎる。
考えれば考えるほど自身にとって不利な情報が浮かんで来る現状に至り、流石の賢者も辟易していた。

パチュリー「(……ダメだわ。こりゃ。前半戦ラストのように、総力を挙げて点を取りに行けば、
1点を奪える程度の算段ならあるけれど。でも、ウチじゃあそれが精いっぱい。
どう考えても、最低2点。最終的には3点を奪える戦法なんて、思いつかない。
如何に私が賢者と言えども、この現実を。敗北の運命を操り曲げる力なんて持っていないんだから――)」

レミリア「――そうだ! これだ!! この作戦でいきましょ、パチェ、フラン! これなら完璧よ!!

パチュリー「……」

――そこまで言いかけて、パチュリーの意識に冷や水をぶっかける大声が聞こえた。
その迷惑な声を上げたのは、さっきまで自分が心配していた筈の友人だった。

パチュリー「……あんた。さっきシュートを決められて落ち込んでたんじゃ無かったのかしら」

レミリア「ふざけるな。私がそんな子どもみたいに落ち込む訳無いでしょ。くよくよタイムなんて5秒で充分だ。
あれから今まで、どうやって逆転しようかっていう、奇跡の作戦を考えていたのよ」

咲夜「成程……! ――つまり、5秒間は落ち込まれてらっしゃったのですね」

レミリア「……咲夜。あんた最近私に厳しくない?――まぁ、別に良いや。
兎に角、見つかったのよ。にっくきモリサキから、2点程掠め取る方法がさ!」

731 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/21(金) 00:55:38 ID:???

さっきまでの沈黙はどこへやら、レミリアはまるで妖精のようにかしましく後半戦への希望を語っていた。
それも、パチュリーが先程不可能と断じかけた得点への展望を込みで。

パチュリー「そう。それは良かった。
私も漸く、全力で総攻撃を仕掛ければ辛うじて1点は取れるという試算を出したばかりなの。
だからあんたのその希望的観測は間違いだと、早々に知れて良かったわ」

レミリア「んー? いつ私が総攻撃で2点を取るだなんて言ったか? 私はもっと色々と考えてたんだよ。
いいか、よおく聞いて……」

パチュリー「はいはい……」

子どものままごとに付き合う気持ちで、パチュリーは腰を屈めてレミリアの口元に耳を近づけた。
レミリアは悪戯を披露する子どものような喜色満面で、パチュリーにその戦術とやらを語っていく。
パチュリーは最初、呆れたような顔をしていたが……しかし途中で、その表情が真剣に変わっていった。

パチュリー「……それ、馬鹿っぽいけれど。存外に行ける気がするわ」

レミリア「でしょ? ほら、私の策で2点と、パチェの策で1点。これで3点だ。
後は中国がトチらなければ2−3で試合は終了。私達の勝ちじゃあないか」

陸「(しれっと朕にプレッシャー与えるなアル……)」

この絶望的状況を前に、なおも大胆不敵な態度を取るレミリアを中心に、
一度は破壊し尽された紅魔スカーレットムーンズの士気は回復していく。


レミリア「皆、この試合……勝つぞ! Forza SCARLETMOONS!!」

スカーレットムーンズメンバー「「「「「――おう!!!!!!!!!」」」」」

732 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/21(金) 01:04:28 ID:???
そして最後に一言。これで彼女達は再び戦える体勢へと戻った。
パチュリーが幾ら思案しても出ない結論を、レミリアは一発で叩きだしてみせた。
それは如何に知識を上積みしようと再現できない、彼女特有の「カリスマ」と呼ぶに相応しい神通力だった。

レミリア「……でも。ありがとね、パチェ」

パチュリー「……え? 私は何もしてないけど?」

だがしかし、レミリアは最後、パチュリーにだけ聞こえる声で可愛らしくこう囁いた。
訝しむパチュリーを尻目に、レミリアはこう告白する。

レミリア「――さっき失点した時ね。ぶっちゃけ結構凹んでたのよ、私。
5秒どころか、ずっと立ち直れないかも? ……って、思っちゃったくらいに。
でも、私に代わって場を仕切って、色々と考えてくれてたパチェの姿を見て。
それで……やっぱり、私がやらなきゃダメだって思えたの。 だって――パチェ、頭は良いけど鈍くさいし」

パチュリー「何それ。私にリーダーシップが無い事への嫌味かしら」

レミリア「違うってば。ただ……やっぱ私の相棒と言ったら、パチェだなぁって。そう思ったの。
咲夜は従者だし、美鈴は頼りないし、中国は残念だし、フランは……まだ、私が守ってやらなきゃだし」

パチュリー「……そう。生憎と、それには私も同意だわね」

レミリア「本当? フフ、私達って意外と気が合うのね。……知ってたけど」

733 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/21(金) 01:08:49 ID:???
友人の告白を聞いて、パチュリーも実は悪い気がしない。
自然と、二人の声はまるで旧年来の姉妹のように自然とシンクロしていき。
――やがて二人は、同時に一つの結論を出すに至った。


レミリア「やっぱり思ったのよ。紅帝たる私と同格の力を持ち、
     同じ誇りの為に背中を預け合う。あんた以外に適任はいないね。この―― 

                     パチュリー「……貴女も中々懸命ね。賢者の叡智を信じ、それに導かれ共鳴し合う。
                             あんたなら、特別に認めてあげても良いかもね。この――


              レミリア・パチュリー「「天才たる、この私の相棒に!」」


              レミリア・パチュリー「「………………………あれ?」」


果たしてどちらが「天才」で、どちらが「天才の相棒」なのか。
この解決不能な難題を前に、改めて強固なものとなりつつあった二人の友情は……割とアッサリ崩壊した。

734 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/21(金) 01:10:06 ID:???
――と、言ったところで今日の更新はここまでです。
明日は博麗チームの描写を薄味にして、後半開始まで行ければと思っています。
皆様、本日もお疲れ様でした。

735 :森崎名無しさん:2015/08/21(金) 02:35:10 ID:???
その掛け声で三杉スレ思い出す。
乙でした。まさかれーせんもレジスタに...?

736 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/22(土) 01:51:25 ID:???
こんばんは。少しだけになりましたが更新再開します。
>>735
乙ありがとうございます。
なんかノリでこのセリフが出て来ました。あのスレは逆境からの逆転が本当に熱かったですよね。
鈴仙も適正はありそうですが、レジスタと言ったら何だかんだでパチュリーさんなイメージですね。

737 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/22(土) 01:53:07 ID:???
*****


〜博麗連合2015 ロッカールーム〜


霊夢「……と、言う訳で。後半戦も今までと同じで構わないわ。はい、解散」

逆転の為の秘策に盛り上がるスカーレットムーンズとは裏腹に、
現在2点のリードを得ている王者・博麗連合のハーフタイムミーティングは手短だった。
チームワークとは各人のスタンドプレーの積み重ねから発生する。
キャプテンの霊夢を始めとして、割と多くのチームメイトがそうした考えを持っているが為に、
彼女達が打ち合わせる事は少なく、またそれに対する不満も見られない。

森崎「(いやいやいや……おかしいだろ。紅魔は絶対、後半で何か作戦を変えて来る筈だぞ。
各選手が真っ直ぐ攻めて、真っ直ぐ守るだけじゃ、勝てねーって。――これまでは、それで勝ってたけど)」

……もっとも、不満は「見られない」だけであって存在はする。主に森崎の頭の中に。

森崎「(たしかに、これまでの試合では霊夢みたいな万能選手が臨機応変に動いて、突発的に生じた穴を埋めたりもしていた。
そしてそれが、天子のオーバーラップやアリスの戦術。小町のサボリプレイが際立つ結果にもなっていた。
その辺りは評価してやろうじゃねぇか。美辞麗句を吐いて結局は自分だけが活躍するよか、よっぽど良い。
だが――俺の経験則で言えば、紅魔スカーレットムーンズは、
そんなノビノビとしたプレーだけで勝たせてくれるほど、甘いチームじゃない筈だ)」

森崎は霊夢を評価していない訳では無い。
むしろ日頃の彼基準で言えば、翼に向ける信頼感と同等の物を、森崎は霊夢に対して向けている。
ただ何となく、自分よりも偉そうにしていているのが気にくわない、という感情論が大きい。翼と雰囲気似てるし。

森崎「(何時もなら、俺のシンパを囲って優しく俺流作戦をねじ込んでやる所だが――ちっ。
あの変な白黒帽子ヤローめ、どこで油を売ってやがる?)」

738 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/22(土) 01:56:14 ID:???
結局正GKには成れたものの、正キャプテンにはなれなかった森崎は、
それでも諦めず自身の派閥を作って、霊夢に意見する機会を設けていた。
しかし、その際森崎は、利害関係が一致し親睦を深めた魔理沙を通じて意見を発信するようにしている。
一見中立で冷静であるように見れる霊夢はどこか、魔理沙に対して特別に甘い所があるため、
魔理沙をメッセンジャーにすると、自分の意見が通りやすいという利点があると森崎は知っていた。
……しかし、その肝心な魔理沙は居ない。
先ほど霊夢と会い、「飲み物を買いに行く」と言ったきり、戻って来ていなかった。

森崎「(……まぁ、今ムリに言ってやる事でもねぇか。それに不意打ちなら何時だって出来る。
敵を欺くにはまず味方から、とも言うしな。ククク……)」

試合再開3分前を切っても戻ってこない魔理沙を、森崎は待つのを止めた。霊夢への進言もしなかった。
戦略家でもあり奇策家でもある彼は、現在進言しない事で、今思いついた奇策をより効果的に行えると判断したからだ。
この飽きっぽさ……では無く柔軟さも森崎の特徴だった。

森崎「(前半で俺の体力は割と減ったが、それは相手も同じ条件。
だから相手がそう攻めようとも、後半開始直後から特攻することはない筈だ。
さーて。どうやって目立つか考えようかな。無難にゴールトゥゴールか、それとも根釈迦ポーズか……)」

どこまでも前向きに、自由に発想し、そして努力し。森崎は未来を切り開いて来た。
それはこれまでの人生でもそうだったし、この幻想郷にやって来た今もそうである。
だから、きっとこれからの試合、これからの人生でもそうなる筈だ。
そう思って森崎は後半に備えて大きくノビをして――。


……ズキッ!

森崎「……ッ!(――またかよ。また腰が痛みやがった……練習のし過ぎか?)」


腰に鈍く走った痛みが、現実やら限界やらを直視しない、間抜けな自分を嘲笑っているような錯覚を覚えた。

739 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/22(土) 01:59:11 ID:???
……と、いったところで今日の更新はここまでです。明日から後半戦に入ります。
皆さま、本日もお疲れ様でした。

740 :& ◆bKGLVse38s :2015/08/23(日) 00:43:39 ID:???
すみません、今日は飲み過ぎたので更新をお休みさせていただきます。
明日はその分更新したいと思っています(願望)

741 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/23(日) 22:02:56 ID:???
*****

〜モリヤスタジアム・フィールド〜

実況「さあ〜〜! 後半戦も間もなくキックオフです! 全幻想郷代表選抜大会、準決勝戦の第2試合!
紅魔スカーレットムーンズ対博麗連合2015の勝負は、現在0−2で博麗連合が大きくリードしています!
前半戦は紅魔も善戦するも、博麗連合の圧倒的総合力に押された展開が目立ちましたが、
果たして後半戦はどうなるのか! 最後の最後まで目が離せません!!」

観客「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「お嬢様頑張ってー!」「魔理沙ー! ファイナルスパークやってー!」「総領娘様ー!」「フランちゃーん!」
「森崎!」「森崎!」「霊夢!」「霊夢!」「パチュリー!」「中国!」「咲夜さん!」「萃香さーん!」「じゃ、僕はアリスさんで…」

実況「ご覧ください、この観客達の大歓声を! もはや決勝戦と称しても違和感が無いまでの熱気! 盛り上がり!
そして〜! そして今、両チームのメンバーが最後の35分間を戦いにフィールドへと入って行きます!
博麗連合2015は前半戦からメンバー・陣形の変更は無し。
ハクレイタイプの4−3−3で、揺るぎない王者の意志を滲ませつつ後半戦へと向かいます!
一方紅魔スカーレットムーンズは……!」

ザッ、ザッ……。

佳歩(観客席)「――あ。あの布陣は……!」

鈴仙(観客席)「えっ。……あ、ほ、ホントだ。めちゃくちゃ陣形が変わってる……!?」

佳歩の素っ頓狂な声に釣られて、紅魔スカーレットムーンズの布陣を見た時、鈴仙は一瞬ではあるが言葉を詰まらせた。
彼女達の布陣が、前半戦の時に比べ大きく変わっていたからである。
周囲の観客席からも若干のどよめきが聞こえる中、実況は続けた。

実況「――スカーレットムーンズ、後半戦は……なんと!
幻想郷きっての超攻撃的チームである彼女達らしからぬ布陣を敷いて来ました!
具体的なフォーメーション表は……以下の通りになります!」

742 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/23(日) 22:06:04 ID:???

〜後半開始時の両チームフォーメーション〜

−−@−− @森崎
−−A−− A玄爺
B−D−C B天子 D萃香 C中里
−−−−−
E−I−G E衣玖 I霊夢 Gアリス 
−−−−−
−−−J− J針妙丸  
F−H−− F小町 H魔理沙
博麗連合2014:4−3−3
紅魔スカーレットムーンズ:4−6−0
−−−−−
−−−−−
−−H−J Hフラン Jレミリア
I−−−− Iパチュリー
−FEG− E小悪魔
C−D−B C美鈴 D咲夜
−−A−−
−−@−− @陸


743 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/23(日) 22:07:37 ID:???
実況「スカーレットムーンズはゼロトップ! この布陣自体は確かに斬新ですが、
かつても人里FCが永遠亭ルナティックスとの練習試合にて組んだ事もあるため、
珍しさこそありますが、決して奇策とまでは言えない陣形です。
ですが、スカーレットムーンズは更に変化を加えて来ている!
中心選手であるパチュリー選手とレミリア選手をサイドに寄せて、フランドール選手を中央に置くという、
これまた幻想郷的には新しい配置を押し出してきました! これには、果たしてどういう意図があっての事でしょうか!!」

慧音(観客席)「……本来、0トップとはセンタートップが柔軟にボールをキープしたり、
少ないタッチでウインガーへとパスを出したり、自身が上がって決めに向かうことに特化させた戦術。
決してこれ自体は、攻めのタレントに恵まれるスカーレットムーンズにとって、おかしい布陣では無い。が……」

妹紅(観客席)「あれ? それだったら、センタートップはシュートに特化した選手のフランじゃなくって、
万能的にパスやポストプレイも出来る、レミリアかパチュリーにさせた方が良いんじゃないか?
私達がルナティックス入りする前にやった練習試合では、そんな理由でパスカル君をセンターに置いてたし」

輝夜(観客席)「――ていうか、ぶっちゃけ前半動きすぎたから、二人とも休んでるだけじゃないの?
んで、フランドールはまだ余力が残ってたし真ん中に置いただけ〜……ってのは?
0トップにしたのは、中盤でパスワークして、点差をこれ以上拡げたく無かったからとか」

つかさ(観客席)「あの誇り高いレミリアさん達が、そんな逃げのような戦術をするとは思えません。きっと、何か理由がある筈です……!」

中山(観客席)「(博麗連合は見た感じ、敵の戦術を受けて柔軟に攻め方を変える腹だろうが。
きっと、それだけでは立ちいかない状況も出て来るだろう。
そして、そんな状況は大体、森崎が喜んで奇策をしそうな場面だ。
……フフ。この後半戦、楽しみだなァ)」

鈴仙(観客席)「(中山さんの目が森崎の方を見つめて輝いてる。まるで、恋する乙女みたいね……)」

744 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/23(日) 22:15:02 ID:???

レミリア「……前半戦の借り。必ず返させて貰うわよ」

霊夢「はいはい、頑張ってね(……魔理沙は戻って来たけれど。結局、あれから何も話せなかったなぁ……)」

魔理沙「…………(――もう何も怖くない。怖くないぞ。だって私は決めたんだから。私は、霊夢と……!)」

パチュリー「………(――大丈夫。私の知恵とレミィのカリスマ。
そして皆の結束があれば、私達の作戦はきっと必ず成功する。……博麗連合。この試合、私達の勝ちよ)」

森崎「(案の定、また何かやって来たな……スカーレットムーンズめ。
だが、奇策とは使いどころを見極めてこそ奇策なんだ。ただのヤケクソじゃ、俺にゃ勝てねぇぞ)」

観客席が両チームの戦術と戦略に思いを巡らせ、
一方フィールドでは両チームの両雄が互いに睨み合い、想いをぶつけ合う。
そんな一触即発の緊張状態の中。


――ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!


――全幻想郷選抜大会の準決勝戦第二試合の後半の開幕が、高らかに宣言された。

745 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/23(日) 22:16:55 ID:???
…と、言ったところで一旦ここまで。続きは24時頃に更新します。

746 :森崎名無しさん:2015/08/23(日) 22:28:30 ID:???
一旦乙です

魔理紗「私は、霊夢と……ツインシュートを決める!」

鈴仙「なにぃ!?」

てゐ「ぶっつけで新技編み出すとかないわー」

霞「え?」

747 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/24(月) 01:02:40 ID:???
……と。
開始直前は紅魔の巻き返しによる、鮮やかな逆転劇が期待されたにも関わらず。

パシッ……。パシッ……。パシッ……。

パチュリー「……小悪魔、お願い」

バシッ……。

小悪魔「は、はいっ。えっと……咲夜さんっ!」

バシッ……!

咲夜「ありがとうございます。……パチュリー様!」

実況「えー……。只今、後半戦が始まり5分が経過しようとしています。
後半戦はスカーレットムーンズのボールで試合開始でしたが、
スカーレットムーンズは単純なボール回しに終始し、一向に攻め入る気配がありません。
既に2点のリードを得ている博麗連合も、不要に隙を作る事を避けてか、様子見を続けており、
その結果、試合はずっと膠着状態に陥っております……」

観客「ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
「なんだなんだよー!」「もっと攻めろスカーレットムーンズ!」「魔理沙ー! ボール刈れー!」
「戦え…!」「あーあ。帰ろうかしら」「いや、これからだ。きっとこれから、ファストブレイクが…」

現実の試合は、観客達の意向にそぐわぬ塩試合の様相を見せていた。
互いに積極的に攻める事なく、たまのプレスにはパチュリーや小悪魔などパス巧者により躱される。
そして、躱された霊夢としても、必要以上の深追いはしない。
激しい必殺シュートの応酬や、大人数での烈しいプレスに慣れた幻想郷の一般人妖は、
そうしたプレイを得意とする筈の両チームが、無難なパスワークを続ける事に不満を覚えていた。
……が、スカーレットムーンズは当然、動揺する気配は見せなかった。

748 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/24(月) 01:03:44 ID:???
パチュリー「(……ここまでは想定の範囲内。
博麗連合は機会があればボールを得ようとはするけれど、焦ってボールを奪いには来ない。
人数を掛けた、MF6人がかりのパスワークの成功は。少なくとも5分程度は保証されている筈よ。
そして残りは――私とレミィの立てた策で、時間を稼ぐ)」

アリス「(攻めにくいわね)」

そしてそこから、後半開始から8分が経っても尚、両チームとも大きく動く気配は無かった。
博麗連合の参謀役を自称するアリスも、ここに来てパチュリーの狙いがいよいよ掴めなくなる。

アリス「(もしも0トップを活かして柔軟に攻めたいのなら、幾らでもチャンスがあった筈よ。
私や霊夢が、カット出来そうなパスに向かって行った時とか、魔理沙が前に飛び出しプレスに向かった時とか。
だけど、その都度紅魔は攻めず、単にGKへとボールを戻して、試合を落ち着けるだけだった。
私達がボールを奪えた機会も何度かあったけど、中盤の数とタレントでゴリ押しして、すぐに奪って終わりだし。
――この4−6−0はやっぱり、攻撃の為では無く。単に、中盤でのパスワークを充実させたいだけの策だった……?)」

確かにパスワークだけならば、この戦略はそこそこ上手く行っている。
実際、レミリア、パチュリーが左右サイドに鎮座している為にサイドからの攻撃は難しく、
かと言って中央ではフランドールの能力も決して低くない上に、
メイド妖精による『特攻スライディング部隊』があり、決して分が良いとは言い難い。
また、中盤を越えても幻想郷屈指のタックラーである咲夜は健在だ。
――が、それはおかしい。
果たして、あのスカーレットムーンズが何の意味も無く、2点差の状況でパスワークを続けるだろうか。
そう考えたアリスの頭は情報整理を続けていき。

アリス「(――無論、霊夢あたりが突っ込めば軽く崩れる程度の壁。
でも、万が一にでも霊夢が敗れた時のリスク――中央のスペースが空いてしまう――に対し、
私達が得られるリターンは、ダメ押しの3点目のみと少ない。
――このまま、相手がいつかパスワークを中断して攻めに向かうのを待って。
それに迎え撃てば、良いのかしら……?)」

――と。そこまで思考して、アリスは一つの事実に気付いた。

749 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/24(月) 01:05:34 ID:???
アリス「(このパスワークの起点って……パチュリーが主になっているわね。
それに伴って全体的にスカーレットムーンズの布陣が左寄りになって来ている。
勿論、無理さえなければボールを奪いに行きたい私達の陣形も。
これは――スペースの空いた右サイド側。レミリアへの、不意打ち的なサイドチェンジが狙い……?)」

ふとそのまま右サイド側を見ると、アリスの推測を補強するように、
レミリアが少しずつではあるが、じわりじわりと自身の立ち位置を前方へと位置させていた。
後半戦開始以来、静かなプレーに徹していたレミリアが、中央に位置する霊夢を見てニヤリと笑う。
霊夢ははじめ無視しようと思っていたらしいが、キラキラ目を輝かせるレミリアを見て、リップサービスっぽく呟いている。
アリスはこうした友達のっぽい会話(?)への憧れもあって、二人の会話に聞き耳を立てた。

霊夢「……見え見えの罠っぽいわよねぇ、右サイド(レミリア)側は。
わざと隙を作って、私やアリスをパスカットに向かわせたい意図が透けて見えるわ。
こっそり右サイドへサイドチェンジをする! ……と、見せかけて。そのまま左サイドのパチュリーに持たせて、
左サイドをドリブルで突破させるってのが、本来の目的じゃなくて?」

レミリア「――ククク、さっすが霊夢ね。気付かなかったら、そろそろ1点差になっていた筈なんだけど」

霊夢の追及――どうやら彼女も、アリスと同じ結論に達していたようだ――に対し、
レミリアは……何の惜しげも無く自身の手をさらけ出してしまった。

レミリア「これは私とパチェが考えた逆転計画の一部なのよ」

霊夢「……自分で策を暴露するなんて。とんだ酔狂ね」

レミリア「だって。バレてるんだもの。仕方ないわよ」

アリス「そ――そうよ。こっちの陣形の偏りはサインを出して直させて貰ったわ。だから、サイドチェンジはもう見え見え。
真っ直ぐ行こうにも、ウチの陣営と真正面から戦うのは厳しい筈よ?」

750 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/24(月) 01:06:44 ID:???
レミリアへのサイドチェンジを警戒させることによるパチュリーへのマークの解除。
そしてそれに伴う、パチュリーによる左サイドのドリブル突破。
当初紅魔が考えていたでろう逆転計画については、もはや警戒が行き届いているため、成就は難しい筈だ。
アリスはしたり顔で会話に横から入って、レミリア達にその事実を突きつける。
……しかし。レミリア達の反応はアリスの想像していたそれとは、少し違っていた。

レミリア「ふーん。ま、確かにそうね。でもねぇ、実は私達の策はもう成功してるんだよ」

アリス「何ですって……?」

霊夢「はあ? 今になって負け惜しみ?」

パチュリー「……複雑な手段に対して、その目的は単純って事よ。
私達のパスワークは、不意打ち的な奇襲の為じゃなくて。……ごく簡単な、選手の釣り出しよ」

そう言って、パチュリーはボールをキープした状態で前方へと駆けだした。
彼女の前方には――二人の選手が居た。

天子「おらおらーっ! さっさとボール寄越しなさいー! もう待つの飽きたのよーーっ!」

衣玖「面倒に巻き込まれては困りますからね。キッチリ、仕事はさせて頂きますよ」

ダッ! ダダダッ!

レミリア「奇襲云々は単なる目くらまし。私達が無駄にダラダラパスワークをしているんだって事を悟らせない為のね。
『紅魔がダラダラパスワークを続ける筈が無い。そろそろどこかで攻めに出ようとしている。そのタイミングを掴もう』
――と、思わせ試合を膠着させる一方で。
オーバーラップ好きのDFがしびれを切らして、家来を連れて上がってくれるのを待つべく、時間を稼いでいた訳よ!」

751 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/24(月) 01:13:29 ID:L/uFyMJA
アリス「……! 成程。色々理屈を付けたけれど、それは全部私達へのミスリード用。
今回のパスワークの目標は、あくまでも時間を稼ぐこと。そして、それにより気の短い選手を釣り出す事だけだったのね!」

パチュリー「態々リスクの高いサイドチェンジをせずとも、相手の方から陣形を崩してくれるのを狙う。
気長な策に思えるけれど、負けている時程焦らずゆっくり崩すのが定石……と、言う事よ」

タッ。

パチュリーはボールを持って前方の二選手と対峙した。
天子は優秀なタックラーだし、その前方のSH・永江衣玖も能力は平凡ながらタックルに技を持つ。
通常の選手ならば、間違いなくボールを奪われる事を覚悟すべき局面だが。

咲夜「……パチュリー様の勝ちです。世界最高峰のドリブル力を持つ上に、
『芸術的なドリブル』や『華麗なドリブル』など優れた技も持つ。……生半可な相手では、太刀打ちできません」

パチュリー「……そういう事。じゃあ、そのまま前に行かせて貰うわね」

タッ。タタタタタタッ……!

天子「おっ、来たわね! でもこの私が特別にあんたのボールを刈ってやるわ!」

衣玖「総領娘様。本当に良かったんですか? 何の指示も無くオーバーラップして……」

天子「えー。DFと言ったらオーバーラップするもんでしょう? だって、そっちのが楽しいじゃない?」

パチュリー「(タックル基礎力……目算で天人が52ポイント、使いが48ポイントと言ったところかしら。
基礎力で54ポイントのドリブル力を持つ私なら、充分勝機があるわね)」

752 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/24(月) 01:16:02 ID:L/uFyMJA
――二人と対峙しても、世界屈指のドリブル力を持つパチュリーは引かなかった。
天子の『天地開闢プレス』や衣玖の『龍魚ドリル』を相手にしても、パチュリーは充分勝ち得る自信があった。
……いや。ここで手筈通りにやらなければ、逆転すべき1点も取る事は出来ないだろう。
タックルが来る前にパチュリーは一度大きく息を吸ってタイミングを整えて……。

天子「でりゃーーーっ!」

衣玖「ハッ!」

ズザアアアアアアアアアアアアアアアッ、ズザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

パチュリー「――食らいなさい、これが私の『芸術て――ゴホゴホッ!!」


ドゴオオンッ! ドガドガッ!


パチュリー「む……むぎゅうううううううっ!!」

――パシッ。

天子「あれ。……案外大した事なかったわね」


――天子が言う通り。彼女の当初の見込みよりも数倍は案外大したことなく……パチュリーは敗北した。

753 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/24(月) 01:21:00 ID:L/uFyMJA
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
また、500kbと結構なところまで行ったので、今のうちに新スレのスレタイも募集したいと思います。

【】鈴仙奮闘記31【】

の形で考えて下さると幸いです。
次スレは、紅魔VS博麗戦を終わらせた上で、決勝前最後の自由行動。
そして、永遠亭ルナティックス最後の試合である、大会決勝戦へと入っていければと思っています。

>>746
一旦乙ありがとうございました。
マスター夢想スパーク封印は東方サッカーでもありますが、威力的にはそこそこですねー。
今の魔理沙の性格だったら、霊夢とのコンビプレイは難しそうですね。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。


754 :森崎名無しさん:2015/08/24(月) 07:12:55 ID:???
【崩れゆく】鈴仙奮闘記31【負けず嫌い】

755 :森崎名無しさん:2015/08/24(月) 18:26:47 ID:???
【これが】鈴仙奮闘記31【私のサッカーだ!】
【ストライカーの】鈴仙奮闘記31【条件】
【ルナティックスの】鈴仙奮闘記31【晴れ舞台】
【誰だって】鈴仙奮闘記31【譲れないものがある】


756 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/25(火) 00:19:57 ID:Nar5QZ/Q
こんばんは、今日もこのスレで更新します。
埋めネタはしばらくやれる時間が無く、本編の更新に力を割きたいので、
容量ギリギリまでこのスレを更新したいと思います。
>>754さん、>>755さん。スレタイ提案ありがとうございます!

757 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/25(火) 00:21:31 ID:Nar5QZ/Q


パチュリー「…………」


レミリア「………」

美鈴「………え!? 負けてる! パチュリー様が案外アッサリ負けてるー!?」

小悪魔「ぱ、パチュリー様ぁ……? 大丈夫ですか、パチュリー様ー!?」

パスワークによる敵SBの釣り出し及び、レミリアを囮にしたパチュリーによるサイド突破作戦。
0−2の現状をひっくり返す為のスカーレットムーンズの秘策……
と、思われる何かは、想像以上に案外大したことなく終わってしまった。
パチュリーは必殺のドリブルを出す前に咳き込んでしまい動きを停止。
そしてそのまま、タックルに向かって来た天子の手により思いっきり吹っ飛ばされてしまったためである。

実況「……え。え〜っと。パチュリー選手、ここでオーバーラップして来た博麗連合の左サイドバック。
天界出身の超攻撃的DF・比那名居天子選手によりボールを奪われてしまいました!
パチュリー選手の実力ならば、充分に勝利出来る勝負かと思われましたが……やはりここは、前半からの疲労が祟ったか!?」

パチュリー「はぁ、はぁ、はぁ……! ゴホゴホッ!」

咲夜「パチュリー様。もしや持病の喘息が……!?」

パチュリー「この間身に付けた、喘息を封じる回復魔法――『フォトシンセシス』は少し、欠陥があったみたいね。
どうやら私の体力の低下に合わせて、魔法の効きが弱くなってしまっている……ゴホッ!ゴホッ!」

小悪魔「そんな! それじゃあ、もう試合だって続行不可能じゃないですか。
このまま続けたら、呼吸困難になって死んじゃいますよ!」

758 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/25(火) 00:22:50 ID:???
そして同時に、パチュリー本人による体力と魔力切れ申告も、この状況の深刻さに拍車を掛けていた。
総合力で大きく突き放されている紅魔スカーレットムーンズが逆転をするには、
霊夢と魔理沙に並ぶかそれ以上の実力を持った、パチュリーとレミリアの両方の存在が不可欠。
しかし今早くも、勝利に向かう為の車の両輪の片方は、既に壊れかけているように見える。
現にパチュリーは、咲夜にも小悪魔にも分からないように、こう静かに呟いていた。


パチュリー「そう……死ぬ。死ぬってのも――案外、悪くないかもねぇ」




759 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/25(火) 00:24:24 ID:???
天子「へっへー。良い顔してんじゃない。どんよりと霧がかって、あんた達の気質とぴったり。
蛇足を為す者、終に其の酒を失えり。――お前調子ぶっこき過ぎてた結果だよ? ……って意味よ!
――ヘイ、衣玖!」

バシィッ!

衣玖「待ってました、総領娘様。ここは私の仕事時ですね」

ポムッ。 ……グワァァァァアアアッ……!

実況「パチュリー選手からボールを奪い取った天子選手、
そのまま近くのMFにして天子選手の実質的な世話係となりつつある永江衣玖選手にパス!
そして衣玖選手、咲夜選手がタックルに近づく前にその右脚を振り上げて……!」

衣玖「これが私の仕事。『竜宮の使い遊泳弾』よ!」

――バギュウウンッ! ゴオオオッ!

美鈴「なッ……! は、早い! そして鋭い……!」

小悪魔「ふ、ふええ……! 私の『トップスピンパス』と互角じゃないですかー!?」

衣玖「あら、勘違いしないで下さいな。今のパスは私の仕事の半分です」

咲夜「半分……? それって、どういう意味かしら?」

衣玖「良い質問ですね。残りの半分は――今からシュートに向かう総領娘様を見れば分かりますよ」

760 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/25(火) 00:26:35 ID:???
ニッコリと咲夜に営業スマイルを向けた衣玖は、美鈴と小悪魔を飛び越え、
絶対の自信でボールをフォローした天子の方を示した。
そこでは、天子が――『フリーでは無いが、とてつもなく安定した体勢』でボールを持ち、バイタルエリアの中央に立っていた。

天子「いやー。やっぱり衣玖のパスは最高!
精度は霊夢やアリスに劣るけど、この抜群のパスの収まり具合は誰にも真似できないわよね!
さっすが『空気を読む程度の能力』なだけあるわー! 褒美に イチゴ牛乳 を奢ってやろうじゃない!」

衣玖「恐悦至極に存じます(飲み物なんかより有給が欲しいです)」

パチュリー「ゴホッ、ゴホッ……。そう言えば、聞いた事があるわね。
天界の竜宮の使いはパスの名手。彼女達によって届けられたパスは、
『アシストが付く局面で、パスを受けた者のシュート力を2分の1で1増幅させる力がある』……って伝説」

陸「何アルか、その具体的な伝説。1って何アル、1って! 後2分の1ってどうやって調べたアルか!」

天子「そんなのはどうだっていいの!
兎に角、衣玖だって霊夢とアリスの影に隠れがちだけど凄いって事よ。パスだけはね!
――と、いう訳で行くわよ……!
今度は、さっきの『気炎万丈の剣』なんかとは格が違う。マジで決める時の技なんだから……!」

              ブウンッ、ザクッ! ゴオオオオオオオオオオオオオオオッ………!!
  ――グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……ッ!!

実況「……こ、これは〜〜! 天子選手、腰に帯刀していた緋色に光る剣――『緋想の剣』を地に突いて、
そのまま念じながらゆっくりと右脚を捻りながら上げ始めます。
すると、周囲から様々な光――これは人間や妖怪の「気質」でしょうか!?
――が、磁石のように天子選手の中へと吸い込まれていく!」

           天子「天界から見れば、妖怪も人間も同じヒトに類するモノ。人類に過ぎない。
               そして私は、そんな全人類の気質を集めて――緋想の天に変えてやる!
               食らいなさい! ――『全人類の…………緋想、天』―――!」

761 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/25(火) 00:27:52 ID:???

              バァァッ、ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
       ズガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!
                  ビイイイイイイイイイイイイイイイイイ………ンン!!

実況「そして……放たれた〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
これは! これこそが比那名居天子選手最強のシュート! 周囲の気質をも自分の力に変えて放つ、
最強の緋い弾丸シュート! ……『全人類の緋想天』!!
気質の層が赤いレーザーのようになって、紅魔スカーレットムーンズのゴールを突き破りに向かいます!」

咲夜「……凄いシュートね。これがDFの放ったシュート?
他のチームだったら、文句なしでエースストライカーになれるわよ。勿体無い」

天子「駄目よ。他の雑魚チームなんて行ったら、この私が目立って当然になっちゃうじゃん。
私はそんなぬるま湯みたいな世界よりも、もっと生きてそこにある現実と戦いたいの!」

咲夜「そう。天人とは思えない程殊勝な、良い発言ですわね。
……けれど、永遠を生きる天人のお遊戯と、一瞬に生きて死ぬ人間の戦いとを一緒にされては困るわ!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ……!
バァッ! グルンッ!
          ――――――バギイイイイイッ!!

咲夜「―――ッ!!」

天子「あらあら……。見事な反転ブロックでしたけど。それで吹っ飛ばされるのが、人間の戦い方かしら?
だとすると、心底馬鹿馬鹿しいわね。特攻するだけならサルでも出来るっつーの」

咲夜「……まさか。人間は人間である限り、無為な討ち死にはしないわよ。
人間は動物と違って、仲間の死に意味を持たせる事ができるの。――ですよね、陸君?」

陸「……ああ、あんたのお蔭で見えたアルよ。 ……このシュートの目指すべきコースがァッ!」

762 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/25(火) 00:30:05 ID:???
バァァッ!

陸「チェスト〜〜〜! 『雷斬脚』〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

ドゴオオオオオオオオオオオオッ! バギイイッ………ググッ……ポロン。

メイド妖精A「あっ……! わ、私前に蹴ります! 魔理沙さんとかが来ないうちに!」

グワァァッ、バゴオオオッ……!

天子「……へーえ。吹っ飛ばされるのを見越して、最初から威力減衰とコースの割り出しに努めたのね。
ゆゆうじょうぱぱわーって奴? ――私やっぱり、そういうの案外嫌いじゃないかも」

実況「天子選手の大型シュートは、十六夜咲夜選手のブロックと陸選手のセービングの合わせ技により防がれた!
魔理沙選手や小町選手がタックルに来る前に、
メイド妖精選手がボールを前に出し……これは幸運にも小悪魔選手がフォローに成功しました!
スカーレットムーンズ、ここから逆転なるでしょうか〜〜〜!?」

輝夜(観客席)「……ねえ。今しれっと止めてたけどさ。あのシュート、わりかし強くなかった?」

霞(観客席)「最新型のスカ……シュート力測定器によると――。
シュート威力は61に衣玖さんのアシスト強化があって更にプラス1。62ポイントでした。
これは鈴仙さまの『マインドエクスプロージョン』にも匹敵する威力です」

てゐ(観客席)「(……あれ? でもそんな天人サマの最強シュートに並ぶ威力のシュートを
平然と出せる鈴仙って。ひょっとしなくても、かなりヤバい選手じゃない……?)」

妹紅(観客席)「っていうか。パチュリーって本当に大丈夫かな? まだ咳してるみたいだけど」

鈴仙(観客席)「ううーん。パチュリーさんには色々お世話になってるから、心配だなぁ……
(――でも、変ねぇ。パチュリーさんの様子について、何となく違和感があるような、ないような。
何というか……その、何かを狙っているような。それこそ、捨て身の覚悟でやるべき「何か」を……?)」

763 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/25(火) 00:46:50 ID:???
パチュリー「(―――――)……ゴホ、ゴホ」

レミリア「(……パチェ。大分消耗した風に見えるわね。――この辺が、潮時かしら)」

実況「……ボールをフォローしたボランチの小悪魔選手、小町選手からの申し訳程度のタックルを
『やや華麗なドリブル』で捌きつつ、パスの出し先を考えている模様です!
頼みの綱であるパチュリー選手が喘息の発作で大きく消耗する中、小悪魔選手は責任重大だ!」

小悪魔「(最初はパチュリー様にサイドを上がって貰うって話だったけれど。
パチュリー様があの状態じゃあ、攻めて頂くのは厳しいかも。
だったら、さっき丁度前に上がって頂いて。
今も右サイド側上がり目の位置に居る、レミリアお嬢様に決めて貰おうかな……?)
――お、お嬢様! 今から私がレミリアお嬢様にパスを出しますっ!!」

グワアアアアアアッ、バシュウウウウウウウウウッ! ――ギュルギュルギュルギュルギュルギュル…………!

レミリア「おや……私に出してくれるの? 嬉しいねぇ。
考えてみれば、私はあんた(小悪魔)の直接の上司でも無いのに、色々と付き合って貰って」

この時、スカーレットムーンズはパチュリーの失態から立ち直りつつあった。
天子が放った『全人類の緋想天』を、普段は水と油な咲夜と陸が協力し止めたという事実が、
彼女達に再び結束の大切さと諦めない事の重要さを再確認させてくれていた。
だから、パチュリーとレミリアの考えたという策が失敗したとしても、このまま辛抱強く攻めて行けば、あるいは――。
小悪魔はそんな強い想いで、前方のレミリアへと会心の『トップスピンパス』を放った。


バッ! ……スカッ、スウッ!


アリス「……ッ、届かないわね」

霊夢「……なかなかやるじゃない」

764 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/08/25(火) 00:48:39 ID:???
そのパスは、パスカットの名手であるアリスや、
そのアリスをも上回るパスカット力を誇る霊夢ですら触れる事も出来なかった。
このパスはレミリアまで通る。そしてきっと今度こそ、レミリアが決めてくれる。

――根拠も無くそう信じていた小悪魔は、その後、自身の考えが如何に浅はかだったかを知る事となった。
その理由はいくつかあるが、まず小悪魔は一つ事実を誤認しかけていた。


??「………遅い」

――タッ。シュッ。  ……パシッ。


ボールは、レミリアまで通らなかったのだ――何者かによる巧みなパスカットによって。
その者は、霊夢にも負けず劣らず精度の高い技術によって、小悪魔のパスをまるで読んでいたかのように胸でトラップした。
……が。「パスをカットされた」という事実について、小悪魔にとって驚くべきことでは無い。
驚くべきこそは、その「何者か」の正体だった。

小悪魔「――え? な、なんで……?」


パチュリー「………………ゴホッ、ゴホッ。…………ボール、頂いたわ」


小悪魔からレミリアへの会心のパスを奪い取ったのは、博麗連合の選手では無い。
「何者か」の正体とはつまり、小悪魔も良く知るどころか、尊敬し敬愛すべき選手。
紅魔スカーレットムーンズが誇るガラスの大図書館―――パチュリー・ノーレッジその人だった。

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