キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【秋空模様の】鈴仙奮闘記36【仏蘭西人形】

1 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/03/26(土) 12:24:01 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで世界を救う為に努力する話です。
他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆
【新天地は】鈴仙奮闘記35【魔境】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1455897713/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html

☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠に並ぶ名選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。
彼女は永琳の庇護下で実力を大きく伸ばし、幻想郷中の勢力が集まった大会でMVPを勝ち取った!

しかしその夜鈴仙は、自身の成長は永琳の計画であった事、その計画の副作用で
月に眠る大いなる厄災――「純狐」が八雲紫の身体を乗っ取り目覚めつつある事を明かされる。
そして、鈴仙は永琳に懇願される。「純狐」の純粋なる狂気を止める者は、
これまでの経験で混沌たる狂気を溜め込み成長した鈴仙以外に居ない。
だからこそ、鈴仙は次に紫が計画した大会――『幻想スーパーJr.ユース大会』に優勝し、
その狂気をもって純狐を倒し、世界を救って欲しい……と。

鈴仙は最初は戸惑いつつも、中山により自身の成長と覚悟を悟り、最後には永琳の願いを受け入れる。
そして、幻想郷の秩序の変革を狙う『プロジェクト・カウンターハクレイ』にて
編成された新チーム・リトルウイングズの一員として、大会に優勝することを誓った。
そして修行のため鈴仙は単身ブラジルに渡り、様々な困難や出会いを経験しつつも、
ブラジルサッカーの登竜門・リオカップで華々しい初勝利を挙げた。

一方その頃、鈴仙と志を同じくして新チームに入った、
元妖怪の山FC所属の反町と秋姉妹は、フランスのサッカースクールにて個人技の開発に努めていた。
フランスユースのメンバー達やアリスさん、そして謎の転校生(予定)を交えた学園生活の行方は……!?

739 :森崎名無しさん:2016/06/12(日) 18:15:12 ID:???
まぁほどよい感じに仕上げてくれるさ!
今回は素直にピエールさんを誉めようや。
しかし美鈴の決定率がヤバい。これはエースストライカー。

740 :森崎名無しさん:2016/06/12(日) 19:25:29 ID:???
もう負けたまま進んでもいいのではないだろうか
反町組加入不可能にして

741 :森崎名無しさん:2016/06/12(日) 19:56:56 ID:???
反町と秋姉妹を外して、アリスと矢車兄貴加入でいいんじゃないかと。
アリスがいなかったら、この試合大敗していたぞ。

742 :森崎名無しさん:2016/06/12(日) 21:08:16 ID:???
加入不可能とか唐突な松山加入は本当に勘弁してくれ
引きの偏りは本当にどうしようもないんだから

743 :森崎名無しさん:2016/06/12(日) 21:14:52 ID:???
アリスさん以外の反町組加入不可能でいいんじゃね?

744 :森崎名無しさん:2016/06/12(日) 21:32:25 ID:???
こっちにペナルティ与えるんじゃなくて二回も勝利した向こうに報奨を与えればいいんじゃないかな
例えば今後の再戦したときに美鈴が絶対的なストライカーとしてたくましく成長しているとか
フレーバーで早苗とピエールの実家の状況が少し良くなるとか
……つーか美鈴さんは今回超頑張ってたから何か恩恵受けていいと思うのよマジで!

745 :森崎名無しさん:2016/06/12(日) 21:33:17 ID:???
これ以上は止めよう、反町組に思い入れがある人もいるだろうしGMさんもそうだと思うから。
GMさんと参加者の意識のズレで物語がビターエンドになるのはもうたくさんだ。

746 :森崎名無しさん:2016/06/12(日) 22:51:55 ID:???
GMさんが気持ちよくやれるのが一番だしね。

747 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/12(日) 23:07:31 ID:rQFZpPLU
>今回のリセットについて
とりあえず、今回のリセットでは数値的、あるいは仲間的なペナルティは付与しません。
ほぼノーリスクなリセットがある事でゲームへの参加意欲が無くなるのは問題ですが、
だからと言って、どうしようも無い引きの悪さで負けた場合にペナルティを付与するのも嫌だと思いますし、
GMとしても、ペナルティが重なる事でゲームが詰んでしまう事を恐れています。
なので、リセット間隔を広くする、描写を工夫するという方法で、安易なリセットを生まないようにしようと思います。
(ただ、今回は流石にあんまりなので、ここもちょっと甘くしました)
ご意見頂いた『向こうに報奨を与える』等、物語的にもプラスになりそうな方法は取り入れていきたいです。

>当スレの進行について
コメントで頂いた意見については真摯に受け取り、問題だと思った点については随時検討しつつも、
最終的には私が面白いと感じられる方法で進めたいと思います。
私としては、反町達仲間キャラについても、単なる能力値が設定された駒ではなく、
それぞれ失敗する事や面倒臭い事もあるけれど、それでも使いたいような、
愛着のあるキャラクターとして描写していきたいと思っています。

748 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/12(日) 23:09:10 ID:rQFZpPLU
★美鈴→過頂緋龍拳 62 ( クラブA )( 5 + 2 )=69★
★ドゴール→ブロック 48 ( スペード10 )( 1 + 4 )+(人数補正+1)=54
 ルスト→ブロック 51 ( スペード6 )( 3 + 5 )+(人数補正+1)=60★
★アモロ→たすけてルスト! 63 ( クラブ2 )( 2 + 2 )+(ガッツ300未満ペナ-1)=66★
≧2→美鈴の『過頂緋龍拳』がレジスタンスゴールを突き破る!※こうなったらゲームオーバーにしようと思います。

――アリスさんの祈りは届かなかった。

ドゴオオッ!

ドゴール「ぐっ……!?」

バギイイッ!

ルスト「(やはり俺では駄目か。頼むぞ、アモロ……!)」

ドゴールとルストは美鈴のシュートに耐え切れず大きく吹き飛ばされて。

アモロ「(……う、動けない。どうしてだよ、何で動かないんだよ! あんなに勇気を振り絞って決意したのに。
     僕の精神は今頃、全てを犠牲にしてでもあのシュートを防ぎたいと思っているのに。
     どうして、どうしてどうして身体が動いてくれないんだよーーーっ!?)」

アモロは累積した疲労が祟り、脳の指令が身体に伝わらない。
そうしている間にも、数回分のキックを籠めたシュートはアモロのどてっぱらを貫き――。

バゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
――ズバアッ! ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!



……試合は後半ロスタイムを残すのみにして、趨勢を決定付ける生徒会チームの4点目が決まってしまった。

749 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/12(日) 23:10:28 ID:rQFZpPLU
美鈴「あ、アレ!? そろそろ防がれると思ったのに!?  もしかして私の実力、とうとうお嬢様を越えちゃったとか!?」

ピエール「(彼女の実力がどの程度であるかは据え置くにしても、彼女が今日の試合絶好調だった事は間違いない。
       正直半信半疑だったが、まさかここまでやってくれるとは……)」

美鈴が無邪気にはしゃぐ中、ピエールは彼女の予想外の活躍に驚きつつもこの先の勝利を確信していた。
試合は残りあと僅かで、主力の反町は疲労困憊。これ以上攻めても点差を返す事は困難。
ピエール、早苗、岬を軸とした中盤を乗り越え、相撲GK・中西の壁を超え……それを2回繰り返す事は物理的に不可能だ。

早苗「(これで、良かったのかな……)」

ピエールに誘われて生徒会チームに入った早苗は、勝利を目前としながら慙愧の念に思い悩みながらも――。

岬「――さあ、残りは消化試合だよ。急ごう」

早苗「……は、はい」

どこまでも冷徹で柔和な笑顔を絶やさぬ岬に手を引かれ、次のキックオフに備える事にする。
そして――。

ピッ、ピッ、ピィイイイイイイイイッ!!


レジスタンス 2 − 4 生徒会チーム 試合終了……



750 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/12(日) 23:12:54 ID:rQFZpPLU
実況「ここでホイッスル! 試合終了! 試合は3−4で生徒会チームの勝利!
    これで学校の運営は、徹底したエリート教育を重視する生徒会の方針に委ねられる事となりました!」

反町「(そ、そんな……!)」

ボッシ「くそっ、くそっ……!」

ナポレオン「……使えねぇ奴はただのゴミ。ソイツの代わりなんて沢山居る。
       ――それが、世の中の道理だ。力を示せなかった俺達に、言える言葉はねぇ。黙って去るだけだ」

反町達レジスタンスは返す言葉が無い。力を示すべく敵に立ち向かい、その結果、力を示せなかった。
ナポレオンの言葉に、誰も反論する事ができないでいた。

穣子「ううっ、ぐすっ……。ごめんなさい、ごめんなさい、一樹君。皆ァ……!」

静葉「(……もしもあの時、私がボールをキープできていれば。奪う事が出来ていれば。
    ――負けるにしても、こんな後悔が残る負け方だけは……したくなかったのに)」

窮地において力を発揮できなかった穣子と静葉は、ただ涙を流すしかできないでいた。

アリス「何言ってんのよ、皆ァ……! 試合はまだ終わってない! まだ試合終了のホイッスルが鳴っただけじゃないのよ!
    私達はまだ戦える。戦いはまだ、始まったばかりなのよぉ……!」

アリスさんは熱血染みた事を言っていたが、日ごろの行いが祟り、不幸にも誰にも相手にされていなかった。

751 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/12(日) 23:14:19 ID:rQFZpPLU

反町「(俺達の想いは決して間違っていない。ただ、俺達のプレーが相手より劣っていて、
    相手のプレーが俺よりも優れていただけだ。……それは分かっていても、後悔してしまうな。
    ああ……俺は、何を一人粋がっていたんだろうか。もう、何も話したくない……)」

そして反町は、この試合において穣子達を――フランスで出来た仲間達を守れなかった事を悔いていた。
彼は再び、言いたい事を言えない臆病な少年へと逆戻りしていた。


  *****


――そしてそれから、反町と秋姉妹の姿を見た者は誰も居ない。
信仰を失い消えてしまったか、それとも山に籠り今もサッカー修行を続けているのか。

アリスさん「……フフ。今となっては懐かしいわねぇ……」

その真実を知るのは、数百年後も魔法の森にてぼっちで人形作りに精を出す、アリスさんのみぞ知る事となった。

752 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/12(日) 23:15:32 ID:rQFZpPLU


*****************************


ででんでんででででん♪←ゲーム版2の例の音楽

BAD END 9
「アリスさんの伝説2」



*今回は引きの悪さが祟った結果なので、更新のテンポ等も考慮した上で、
  反町が3点目を挙げた直後、>>662から再開にしようと思います。

753 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/12(日) 23:16:32 ID:rQFZpPLU
―――――――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――


――――――――――

―――


ナポレオン「……マチ。おい、ソリマチ! 疲れたのは分かるがしっかりしやがれ!」

反町「――あ、れ……?」

反町はナポレオンに肩を揺さぶられて目覚めた。
初めは場の状況が、何故自分がここにいるのかすら思いつかなったのだが、やがて認識する。
……そう。自分は今、『ポイゾナスオーバー』で中西からゴールを決めて……。
そして、皆から祝福されている中、ふと意識がぼんやりしていたのだと。

反町「(……また、夢を見ていた。俺達がどうしようも無く負ける夢だ)」

心配して声を掛けてくれたナポレオンに軽く礼を言いながら、反町は先程の事を思い出していた。
薄れた意識の中で見えたビジョンがあまりに現実味を帯びていた事を反町は思い出し、一人震える。
自分は『また』、運命に抗えずに敗北を喫してしまうのではないか……と。
そんな我ながら狂気的とも言える妄想を振り払いながら、反町は最後の打ち合わせを行う仲間達の声に耳を傾ける事にした。

754 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/12(日) 23:17:56 ID:rQFZpPLU
ルスト「――――必死なのは敵さんも一緒だ。試合時間は残り10分を切って、
     試合は再び同点で降りだし。しかし恐らく、この次に決めたチームが勝つだろう。
     そうなった以上、次のキックオフ。ピエール達は正真正銘の全力で俺達を潰しにかかるだろうな」

アモロ「ひ、ひいっ。……僕も、もう後一回くらいしか全力のセービングに行けないよ……!」

ナポレオン「……先にパンチを命中させた方の勝ち。まさにいよいよ不良の喧嘩染みてきたじゃねぇか。
       フン、面白ぇ。――ソリマチ。次は俺が決めてやるぜ」

ボッシ「FWだったら、俺だって居るんだけどな。……ま、それはおいといてさ。
     次のキックオフに備えて、簡単に動きや陣形について打ち合わせておかないか?
     そりゃあ一気にガラッと変えるのは難しいだろうが、FWの選手を一部MFに置いたりとか、
     その程度の動きだったら、今の間でも出来そうだと思うんだが」

静葉「……そうね。泣いても笑っても、ここが恐らく最後の攻防になるでしょうし。
    それをどのような形で受け入れるかは、充分に検討の余地があると思うわ」

755 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/12(日) 23:19:24 ID:rQFZpPLU
反町「(とりあえず、今の陣形を継続するかどうか位は検討する必要があるか。
    ――さっき見た夢では、俺達は下の選択肢にある、Dの案を採用していた気がするけれど……?)」

反町も仲間達の発言を聞きながら、先程見た夢の中身も考慮しつつ、自分なりの意見を纏め上げてみる事にした。
そしてその結果……。

A:この布陣で問題ない。このまま敵を迎え入れる!
B:反町をOMFにして布陣を4−4−2にし、中盤の支配力を高める。
C:穣子をボランチにして布陣を3−4−3にし、撃たせる前に取れるようにする。
D:反町をOMF、穣子をボランチにして布陣を3−5−2にし、中盤の支配力・守備力を底上げする。
E:その他 何か良い作戦があればこちらで

反町のガッツ:160/820

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

(参考:現在の自軍フォーメーション)
レジスタンス:4−3−3
H−J−F Hナポレオン J反町 Fボッシ
−−−−−
−−I−− I静葉
G−−−E Gジョルジュ Eアリス
−−−−−
C−D−B Cドゴール D穣子 Bブラボー
−−A−− Aルスト
−−@−− @アモロ

756 :森崎名無しさん:2016/06/13(月) 00:06:33 ID:RR0tqo4+
D

757 :森崎名無しさん:2016/06/13(月) 00:15:03 ID:n6gtjlqk
D

758 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/13(月) 00:28:27 ID:wCeLH0/M
D:反町をOMF、穣子をボランチにして布陣を3−5−2にし、中盤の支配力・守備力を底上げする。

反町「(……ここは、変える必要は無いだろう)――俺はもう、シュートは撃てない。
    だったら、これから来るであろうピエールの猛攻に備えて、中盤の数合わせになった方が効率的だ」

ナポレオン「おう、そうしろ。最後の4点目は俺とボッシの野郎に任せとけ」

ボッシ「(ナポレオン、何だかんだで俺の事、そこそこは信頼してくれてんのな……)」

穣子「あ、あの! だったら、私もMFになるよ。もうこうなったら、中盤で止めちゃった方が良いんでしょう?
    それなら、私もパスカットとかタックルで力になりたいよ」

アリス「そうね。……それもアリかもしれないわ。どうせ後は1点勝負だと言うのなら、
     少しでも布陣を前に置いておいた方が良い。攻撃は最大の防御とも言うしね」

ルスト「つーことは、俺達のラストフォーメーションはこうなるって訳か」

(自軍フォーメーション)
レジスタンス:3−5−2
−H−F− Hナポレオン Fボッシ
−−−−−
−I−J− I静葉 J反町
G−D−E Gジョルジュ D穣子 Eアリス
−−−−−
C−A−B Cドゴール Aルスト Bブラボー
−−−−−
−−@−− @アモロ

759 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/13(月) 00:30:31 ID:wCeLH0/M

アモロ「ラストかぁ。……いよいよ、ここまで来たんだね」

ドゴール「俺達DF陣に出来る事は少ないかもしれん。だが、最期の一秒まで最善を尽くそう」

ブラボー「俺達だって、数合わせ位にはなるだろうしな、ハッハッハ」

ジョルジュ「何だってかまわない。俺達は確かに生徒会チームの面々と比べると劣等生かもしれない。
       Jr.ユース大会だって、ピエールにおんぶだっこで何もやってこなかった。
       だけど、俺達にだって、俺達でしか出来ない事が、きっとある筈なんだ!」

ナポレオン「その意気だテメエら! ピエールが何を血迷ってこんな対立を作ったのかは知らねぇが、
       さあ武器を取れレジスタンスの野郎ども。隊列を組んで進め。生徒会共の穢れた血が、俺達のフィールドを満たすまでな!」

レジスタンス「「「「おう!!」」」」

反町「(ラ・マルセイエーズか……。荒っぽくてこれを国歌にするのはどうかと思うけど。
    今は、その位に強い気持ちを持っていた方が良い気がする。何度も繰り返す絶望に、終止符を打つ為にも……!)」

ナポレオンの荒っぽい演説にいよいよ士気を高めるレジスタンスチーム。
そんな中、穣子がくいと反町の袖を引っ張った。

穣子「あのね……一樹君」

反町「……穣子さん。どうしたんです?」

穣子は複雑な顔をして、反町の顔を覗き込んでいた。
反町は静かにそれに応じると、穣子は表情を決然としたものに変えて、こう続けた。

760 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/13(月) 00:32:20 ID:wCeLH0/M

穣子「あのね。この試合に私達が勝ったら、その夜。……少し、一緒に居て欲しいの」

反町「……はい」

このやりとりに反町が既視感を覚える中、穣子は反町の返事を聞いて、自分のポジションへと戻っていった。
そしてふと前を見ると、覚悟を決めた様子のピエール達生徒会チームが並んでいる。

反町「(……今度こそ、勝とう。そして、約束通り、穣子さんの話を聞いてあげるんだ……!)」

穣子の気丈な後ろ姿を見て、反町は勝利への決意を再び固めた。

*****


――ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!


実況「さあ! 恐らくはこの試合最後となるキックオフです!
    生徒会チームの攻撃で始まって、ボールは早速ピエール選手からサイドの岬選手へ。
    そして……!」

岬「(敵はMFを増やしてきたか。だったら、ここは分断を狙って――)いきなり行くよ、『グリーンカットパス』だ!」

グワァッ、バシュウウウウウウッ!

実況「岬選手、いきなり必殺のパスを中盤に向けて放ちます!
    パスの落下点は丁度静葉選手・反町選手と穣子選手・アリス選手・ジョルジュ選手の中間地点!
    そしてそこにはピエール選手が駆け込んできている! 生徒会チーム、ボリュームアップしたレジスタンスの中盤を、
    丁寧に分割する事で崩しにかかりました〜〜!」

761 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/13(月) 00:34:53 ID:wCeLH0/M
反町「(ピエールが単騎で突っ込むかと思ったけど、避けてきたな。でも、それも仕方ない。
    俺達には『オータムスカイラブタックル』があるんだ。4人以上の人数差に加えて、
    オータムスカイラブがあるとすれば、流石のピエールでも分が悪い)」

静葉「そしてだからこそ、オータムスカイラブを使われても良いように。
    あるいは使えなくする為に、戦力を引き離しに来たわね。
    成程確かに、私達がカットに出れば、穣子の『オータムスカイラブタックル』は封じられる。
    そうすれば、ピエール君はどこまでもドリブルし放題。失点の危機よ」

ボッシ「くっ……! って事は俺達は下がって、ピエールの攻撃に一点集中して備えるしかないのか!?」

反町「(でも、俺達――俺と静葉さん。それとナポレオンよりは下がり目にいるボッシ。
    この三人――がボールをカットしてしまえば、逆に大きなチャンスに繋がる。
    そしてもしかしたら、相手は知らないか失念していて、勘違いをしているんじゃないか?
    『オータムスカイラブ』を操れるのが、静葉さんと穣子さんだけだと……)」

――確かにピエール達生徒会チームは、ここに来てレジスタンスの強み――『オータムスカイラブ』を潰すべく、
用意周到に策を練ったプレーを仕掛けてきた。しかし同時に、彼らの作戦に弱点がある事を何となく察知していた。
後はその弱点を突くだけとは思い、反町はここでも慎重に考えるが――すぐにその必要は無いと思い至った。



反町「(俺は……知っている。この場面での選択肢を。そして、何が正解であるかも……!)」

反町は意を決したように静葉の方を向いてサインを送る事にした。

静葉「――反町君。……いよいよアレをやるのね。分かったわ!」

タタタタッ……。

762 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/13(月) 00:37:16 ID:wCeLH0/M
実況「これはどういう事でしょうか! 単身パスカットに向かうボッシ選手を尻目に、
    反町選手と静葉選手は互いに近寄って、一件無意味な動きをしている風に見えますが……!?」

反町「頼む。静葉さん!」

静葉「ええ。あなたのその信仰に応えて見せるわ!」

ガシイイッ、バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!

静葉「てりゃあああああああっ!」

実況「いや、……これは! これはオータムスカイラブです! 静葉選手が反町選手を土台に、ハイジャンプ!
   岬選手の鋭いパスに向かって、まるで弾丸のように蹴りを放って来ました〜〜!!」

岬「(――なんだって。あの優等生肌な反町が、あの立花兄弟のプレーを……!?)――くそっ、通せッ!」

反町「(岬のあのポーカーフェイスが崩れている……! よし、やはり今の手は、岬達には見抜かれていない。
    ――だけど油断するな。ここで成功させなければ意味が無い。――今度こそ、ボールを奪ってみせる!)」


763 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/13(月) 00:40:36 ID:wCeLH0/M

先着2名様で、

★岬→グリーンカットパス 56 (! card)(! dice + ! dice)=★
★ボッシ→パスカット 48 (! card)(! dice + ! dice)+(人数補正+1)=
 静葉→オータムスカイラブパスカット 57 (! card)(! dice + ! dice)+(人数補正+1)=★

MAX【攻撃側】−MAX【守備側】
≧2→ピエール、パスキャッチ。
=1、0、−1→ボールはこぼれ球に。そして左から順に
(早苗がフォロー)(穣子がフォロー)(アリスがフォロー)
≦−2→レジスタンスボールに。
【補足・補正・備考】
なし。

764 :森崎名無しさん:2016/06/13(月) 00:41:55 ID:???
★岬→グリーンカットパス 56 ( ダイヤJ )( 4 + 2 )=★

765 :森崎名無しさん:2016/06/13(月) 00:49:29 ID:???
★ボッシ→パスカット 48 ( ダイヤ4 )( 6 + 4 )+(人数補正+1)=
 静葉→オータムスカイラブパスカット 57 ( スペード7 )( 1 + 4 )+(人数補正+1)=★

766 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/13(月) 01:06:26 ID:wCeLH0/M
★岬→グリーンカットパス 56 ( ダイヤJ )( 4 + 2 )=62★
★ボッシ→パスカット 48 ( ダイヤ4 )( 6 + 4 )+(人数補正+1)=59
 静葉→オータムスカイラブパスカット 57 ( スペード7 )( 1 + 4 )+(人数補正+1)=63★
=1、0、−1→ボールはこぼれ球に。そしてアリスがフォロー

静葉「私は――もう後悔したくない。全てを、ここで終わらせる!」

バァァァァッ! ガシイイッ! ――ポーンッ!

岬「くっ……!(ここで敵にボールが渡るのはまずいぞ……!?)」

実況「静葉選手、決死の合体パスカットで岬選手のパスを見事零れ球に!
    そしてその零れ球は……アリス選手がフォロー! レジスタンス、見事な連携プレーです!」

アリス「(岬君とピエール君で中盤を分断し、フォロワー兼奇襲要員で早苗を使う生徒会チームの戦術。
     一見隙の無い強力な布陣に見えるけれど――大前提となるこのパスさえつかんでしまえば攻略したも同然。何故なら……!)」

ネール「そ、そんなバカな……岬のパスがあんなに簡単に!?」

モーリス「こんなの、データに載って無かったぞ!?」

アリス「――さあ。ここから先はゴールまで一直線。観念するのよ、生徒会チーム!
     (――何故なら、攻撃にタレント3枚全てを使い切っているんだもの。守備が相当脆くなってるわ!)」

グワァァッ!

アリス「私とボールくんとの友情に酔いしれなさい。『アーティクルサクリファイス』よ!」

――バッ、シュウウウウウウウウウウウウウウ……ッ!

実況「アリス選手、十八番の必殺パスで前線のナポレオン選手へとパスを出しました〜〜!!」


767 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/13(月) 01:07:51 ID:wCeLH0/M
先着2名様で、

★アリス→アーティクルサクリファイス 55 (! card)(! dice + ! dice)=★
★モーリス→パスカット 51 (! card)(! dice + ! dice)+(人数補正+1)=
 ネール→パスカット 51 (! card)(! dice + ! dice)+(人数補正+1)=★

MAX【攻撃側】−MAX【守備側】
≧2→ナポレオン、パスキャッチ。
=1、0、−1→ボールはこぼれ球に。そして左から順に
(ジョルジュがフォロー)(マルシャンがフォロー)(カイエがフォロー)
≦−2→レジスタンスボールに。
【補足・補正・備考】
なし。

768 :森崎名無しさん:2016/06/13(月) 01:11:08 ID:???
★アリス→アーティクルサクリファイス 55 ( スペード5 )( 6 + 3 )=★

769 :森崎名無しさん:2016/06/13(月) 01:11:20 ID:???
★アリス→アーティクルサクリファイス 55 ( ダイヤ7 )( 3 + 4 )=★
そろそろサクッと勝って〜

770 :森崎名無しさん:2016/06/13(月) 01:13:19 ID:???
★モーリス→パスカット 51 ( スペード4 )( 5 + 3 )+(人数補正+1)=
 ネール→パスカット 51 ( ハート7 )( 1 + 2 )+(人数補正+1)=★

771 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/13(月) 01:14:48 ID:???
…と、言った所で今日の更新はここまでにします。
ここでアリスさんが勝てば、後はナポレオン君次第で勝利も見えますね。

最近仕事が忙しくて中々更新できず恐縮ですが、
応援して下さったり気遣って頂いてるコメントにつきましてはいつも感謝しています。
普段は言えないですが、暖かいお言葉は、忙しい中でも楽しく更新しようというモチベーションに繋がります。

それでは、本日も遅くまでお疲れ様でした。

772 :森崎名無しさん:2016/06/13(月) 20:05:26 ID:???
やっぱアリスさんって背番号10って感じだよな

773 :森崎名無しさん:2016/06/13(月) 20:11:04 ID:???
やっぱりアリスさんは、カッコイイよな♪

アリスさんファンクラブ会員より

774 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/14(火) 00:52:42 ID:5nX7YTe2
★アリス→アーティクルサクリファイス 55 ( ダイヤ7 )( 3 + 4 )=62★
★モーリス→パスカット 51 ( スペード4 )( 5 + 3 )+(人数補正+1)=60
 ネール→パスカット 51 ( ハート7 )( 1 + 2 )+(人数補正+1)=55★
≧2→ナポレオン、パスキャッチ。

バシュルルルルル……ポーンッ!

モーリス「くそっ、後少しだったのに!」

ネール「まずいぞ、この後ろにはナポレオンが……!?」

ナポレオン「もう遅いぜ! ここで終わらせてやる!」

バッ! パシッ。

実況「アリス選手の素晴らしいパスで、ボールはとうとうFW・ナポレオン選手の足元へ!
   試合は間もなくロスタイムとなり、正真正銘のクライマックス!
   ようやく、ようやくここまで来ましたレジスタンス! 2点差を追う苦しい展開から、
   チームサッカーでこの絶好最後の大チャンスを掴みました!」

775 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/14(火) 00:53:44 ID:5nX7YTe2
ナポレオン「(『メガキャノンシュート』。この技はまだ未調整だが、威力では間違いなくこの試合最強だ。
        ――失敗なんて怖くねぇ。このシュートは絶対に決まる!)――うおおおおおおっ!!」

グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

ナポレオン「くらえ、『メガキャノンシュート』!」

バギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインッ!
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

実況「ナポレオン選手、シュートを撃った〜〜〜!!」

ナポレオン「ぬおお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!」

中西「……とうとう来なすったなァ。だが、ワイが防いでゲームセットや!」

反町「はぁ、はぁ……!(ナポレオン……! 俺は、お前を信じてるぞ……!!)」

ピエール「…………!!」

776 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/14(火) 00:55:21 ID:5nX7YTe2
先着3名様で、

★ナポレオン→メガキャノンシュート 64 ( ! card )( ! dice + ! dice )=★
★マルシャン→ブロック 52 (! card)(! dice + ! dice)+(人数補正+1)=
 フェルベール→ブロック 52 (! card)(! dice + ! dice)+(人数補正+1)=★
★中西→パンチング 59 (! card)(! dice + ! dice)=★

と書き込んでください。カードやダイスの結果で分岐します。

【シューター】−【ブロッカー】
≧5→シュートは邪魔される事無く放たれた!GKとの勝負へ。
=4〜2→シュートは放たれた。しかしこの数値差の人数分威力が落ちてGKとの勝負へ。
=1、0、−1→ボールはこぼれ球に。そして左から順に
(ボッシがねじ込み)(ボルンがフォロー)(中西がフォロー)
≦−2→レジスタンスボールに。
【シューター】−【キーパー】
≧2→ナポレオンの『メガキャノンシュート』が生徒会ゴールを突き破る!
=1、0、−1→ボールはこぼれ球に。そして左から順に
(ボッシがねじ込み)(レジスタンスのコーナーキック)(ボルンがフォロー)
≦−2→レジスタンスボールに。
【補足・補正・備考】
ナポレオンの『メガキャノンシュート』には吹飛係数2があります。
ナポレオンのマークがクラブの時、『メガキャノンシュート』は失敗し、ポストになります。(更に判定)
中西のマークがダイヤ・ハートで「突っ張りディフェンス(+3)」が発動します。

777 :森崎名無しさん:2016/06/14(火) 00:57:50 ID:???
★ナポレオン→メガキャノンシュート 64 ( スペード5 )( 6 + 6 )=★

778 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/14(火) 01:06:08 ID:???
…と、言った所で今日の更新はここまでにします。
ここでゴールが入った場合は、残りの試合は時間も無いですし、描写のみとしたいと思います。
>>772-773
ここに来てアリスさんの株が急上昇してきましたね…
しかし落ち着いて考えてみて、頭は良いけど寂しがりやで不器用(?)、サッカーは上手くて10番気質となると、
アリスさんは潜在的に主人公力が高いような気がしてきました。

それでは、本日もお疲れ様でした。

779 :森崎名無しさん:2016/06/14(火) 02:13:13 ID:???
★マルシャン→ブロック 52 ( クラブ9 )( 5 + 6 )+(人数補正+1)=
 フェルベール→ブロック 52 ( ダイヤQ )( 3 + 1 )+(人数補正+1)=★

780 :森崎名無しさん:2016/06/14(火) 02:15:09 ID:???
★中西→パンチング 59 ( クラブA )( 2 + 6 )=★

781 :森崎名無しさん:2016/06/14(火) 10:14:24 ID:???
見ごたえあったね。
美鈴とナポレオンのストライカー対決。

782 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/15(水) 00:29:13 ID:???
★ナポレオン→メガキャノンシュート 64 ( スペード5 )( 6 + 6 )=76★
★マルシャン→ブロック 52 ( クラブ9 )( 5 + 6 )+(人数補正+1)=64
 フェルベール→ブロック 52 ( ダイヤQ )( 3 + 1 )+(人数補正+1)=57★
★中西→パンチング 59 ( クラブA )( 2 + 6 )=67★
≧2→ナポレオンの『メガキャノンシュート』が生徒会ゴールを突き破る!


ナポレオンは願った。自分のシュートで全ての因縁にケリを付ける事を。
それは決して、自分自身の為だけではなかった。
これまで不良を気取り、ナイフみたいに尖っては回りを傷つけていたばかりの彼はこの時初めて、
純粋に仲間の為にシュートを撃てた。

ゴオオオオオオッ……!

――だから、その軌道は変に穿たず真っ直ぐだった。
ゴールポストなど絶対にありえず、全ての選手を吹き飛ばして決めるのが当然と、
ナポレオンは確信をもって、この会心のシュートを振り抜いていた。

マルシャン「な、ナポレオンめ……!」

フェルベール「あの野郎、俺達エリートコースの誘いを蹴るだけじゃなく、牙を剥くなんて……!」

ゴオオオオオオオッ……!

ナポレオンのシュートは止まらない。螺旋状の回転を描いて真っ直ぐに突き進むシュートの殺傷力は高く、
マルシャンやフェルベールを弾き飛ばしても全く止まる気配はなかった。
ここでゴールを守る者が二流か三流であれば、間違い無く逃げ出すような、それだけのシュートだと言えた。

中西「な、なにがキャノンや! ワイは幻想郷で、GKが観客席まで吹っ飛ぶシュートや、
    ゴール前にクレーターが出来るシュートを何度も見て来たんや! こんなただ早いだけのシュート……ッ!」

ガシイッ! グググッ、ググググググッ……!

783 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/15(水) 00:30:18 ID:???
中西はこのシュートに対して自信を持って真正面からがぶり寄った。
彼は決して二流や三流のゴールキーパーでは無かった――が、同じく一流では無かった。
このシュートの本質はただ早いだけでは無い。中西はそれを見誤っていた。

ナポレオン「ただ早いだとォ? 違うな。このシュートは早いだけじゃなくて……痛いぜ?」

中西「ア……ガッ……!?」

ナポレオンがそう言うと同時に、中西は思わずうめき声を漏らした。
言う通り、彼はこのシュートが中西の脂肪の壁を越えて内臓を傷つけている事に気付いた。

ナポレオン「ライフリングのついた銃弾の如く、このシュートは敵を抉り取る。
       器用にコースを狙えやしねぇが、GKさえ吹き飛べば、ポストと枠外以外どこに撃ったって一緒だろ?」

生命の危機を訴える中西の全身を、中西の精神は無理やりに押さえつける。
それがこのシュートへの唯一の対処法だと気づいたは良いが、結果として、
中西の精神は所謂超一流の選手と比べて脆弱だった。

中西「もう……耐えれ……へん……!」

ゴオオッ……バタリッ。

――中西は最終的にその場に倒れ伏した。他のDFのように派手に吹き飛びはしなかったが、
ここで立ち上がれなかった中西は、命を賭してまでゴールを守れなかった自分自身の精神の弱さを恨み。


ズバアアアアアアアアアアアアアアアアッ!
   ―――ピピイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

784 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/15(水) 00:31:26 ID:???
実況「決まった〜〜! ゴ〜〜ッル! 後半29分! ナポレオン選手の『メガキャノンシュート』が、
    生徒会チームのゴールを突き破りました〜〜〜!!
    これで試合は4−3、4−3です! レジスタンスチーム、試合終了まで後僅かにして……逆転です!」

観客「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

中西「(……やはり、ワイは勝てんのか。森崎有三。……アイツのようには、なれへんのか……!?)」

ナポレオン「(……決まった。ギリギリの勝負だったが、決めた。――いつもの喧嘩より、余程晴れやかな気分だぜ)」

反町「(――信じて、良かった。俺達が繋いだ勝ちの芽を、ナポレオンが。皆が、育ててくれた……!)」

ゴールを決めたレジスタンスの面々は、これまで絶望と悪夢の底に沈んでいた、
一欠片の希望を――漸く。本当に漸く、手に取る事に成功した。


レジスタンス 4 − 3 生徒会チーム

785 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/15(水) 00:42:26 ID:???
すみません、力尽きたので今日の更新はこれだけです(汗)
アナウンス通り、ここから先は描写のみで進行します。
>>781
秋ジスタを出した反町君の事も思い出してあげてください…
でも枠外とかの事は忘れてあげてください。

本日もお疲れ様でした。

786 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/16(木) 00:15:10 ID:???

ピエール「……俺の、負けだ」

早苗「――? 何を言ってるんです。勝負は最後まで、まだ……!」

ピエール「いや、負けだ」

今のシュートを食い入るように見つめていたピエールは、やがて決然と、
しかし吐き捨てるような口調でそう言い放った。
冷徹な彼の豹変ぶりに早苗は感情的になって詰め寄るが、彼の次の言葉には反論できなかった。

ピエール「奴らはナポレオンがゴールを決める事を信じた。
      一方、俺はナカニシがゴールを守る事を信じられなかった。
      ――その差がある限り、俺達はいつか負ける。そう気づいたのさ」

個々人の実力ならば間違い無く自分達の方が上だ。
戦術と戦略が上手くかみ合えば、今からでも逆転は不可能ではない。
しかし、ピエールは既にこの時点で、自分達の勝利は無いと確信していた。

早苗「……でも、良いんですか。このまま負けたら、貴方の実家の面子は丸つぶれと聞いてますけど」

ピエール「日本資本の協力の下この学校を買って、スポーツ行政界での復権を目指そうとする没落貴族の事か?」
       
かつてのチームでの交流から、ピエールとの関係が深かった早苗は、この試合の裏事情を知っていた。
彼の実家が負債を抱えている事。『友人』の岬太郎の提案から、彼の実家が学校の買収に出た事。
そして、それに楯突く経営陣に対して






787 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/16(木) 00:37:29 ID:???
すみません、間違えて書いてる途中で送信してしまいました(汗)
更新はもう暫くお待ちください。


788 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/16(木) 01:05:06 ID:9jEN4p+g

ピエール「……俺の、負けだ」

早苗「――? 何を言ってるんです。勝負は最後まで、まだ……!」

ピエール「いや、負けだ」

今のシュートを食い入るように見つめていたピエールは、やがて決然と、
しかし吐き捨てるような口調でそう言い放った。
冷徹な彼の豹変ぶりに早苗は感情的になって詰め寄るが、彼の次の言葉には反論できなかった。

ピエール「奴らはナポレオンがゴールを決める事を信じた。
      一方、俺はナカニシがゴールを守る事を信じられなかった。
      ――その差がある限り、俺達はいつか負ける。そう気づいたのさ」

個々人の実力ならば間違い無く自分達の方が上だ。
戦術と戦略が上手くかみ合えば、今からでも逆転は不可能ではない。
しかし、ピエールは既にこの時点で、自分達の勝利は無いと確信していた。

早苗「……でも、良いんですか。このまま負けたら、貴方の実家の面子は丸つぶれと聞いてますけど」

ピエール「日本資本の協力の下この学校を買って、社交界での復権を目指そうとする没落貴族の事か?」
       
かつてのチームでの交流から、ピエールとの関係が深かった早苗は、この試合の裏事情を知っていた。
彼の実家が負債を抱えている事。『友人』の岬太郎の提案から、彼の実家が学校の買収に出た事。
そして、それに楯突く経営陣に対して何らかの『見せしめ』を行う必要があり、一連の騒動を起こした事を。
――しかし、ピエールは早苗の言葉に首を横に振り、真意を初めて零した。


789 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/16(木) 01:06:19 ID:9jEN4p+g
ピエール「……確かに、この結果に新経営陣は納得しないだろうな。
      だけど、そもそも――見せしめを行うにしても、こんな試合を開いたのは、俺の独断だった。
      大人たちは、もう少し穏便な方法での問題解決を意図していたんだ」

早苗「……そうだったんですか。私は、てっきり貴方が大人たちの操り人形になっていたのかと」

ピエール「それは間違ってはいない。事実、大人たちは俺達の勝利を疑っていなかったし、
      勝利すれば、大きな見返りを得る事ができた。
      ノーリスク、とは言えないが、ローリスクハイリターンの次善策として、彼らも支持してくれていた。
      だが……今にして思えば。この時点で俺は、今のような展開になる事を、望んでいたのかもしれない」

早苗「今のような展開――って、つまり。仲間達が信じあって、強大な敵を打ち倒す……みたいな展開のことです?
    私達が強大な敵側なのが、なんだか寂しい気もしますけど」

ピエール「……ああ」

おどけるような早苗の相槌に、ピエールは静かに頷いた。

ピエール「俺は常日頃感じていた。Jr.ユースで一緒に戦った仲間達は、本当に、仲間なのだろうかと。
      心を許し合ったようでいて、単なる打算と利害関係で付き合うだけの、そんな空虚な関係なのではないかと。
      俺を尊敬し、一緒に笑いあってくれる仲間達との関係が深まる程、そうした疑念が膨れ上がって来た。
      だから――俺は一度、試してみたかったのかもしれない。
      俺の仲間達は、何があっても本当に仲間同士信じあえるのか。あの時の笑顔は、涙は。本物なのだろうかと」

790 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/16(木) 01:17:56 ID:9jEN4p+g
早苗「……そんなの、どうやっても分かりっこないですよ。人の本心なんて、さとり妖怪でも無い限り分かりません。
   あるのはただ、仲間同士が互いを信じあえるという、そんな信仰があるだけです。
   知ってますか? 信仰ってのは、決して神様に対してするものだけじゃあ無いんですよ。
   いや、むしろ、空気みたいに常識すぎて、誰も意識していない位だと思います」

ピエール「信仰という行為を神聖化せず、普遍的に捉えるのか、君は。
      ――だったら教えて欲しい。俺は、どうやって彼らを信仰すれば良かった?
      どうすれば俺は、こんな試合を通さずとも、皆を信じられるようになれた?」

早苗は、思い悩むピエールの姿を見て、明るくそう応えた。
かつて幻想郷において、信仰の在り方に思い悩む早苗を支えようとしたピエールは、
今度は逆に、正しき信仰を見つけた少女に助けを求めていた。

早苗「……信仰だなんて言っちゃうと、語弊があるかもしれないですね。
    そうね。仲間同士に生じる、互いに互いを信じあう為の信仰を得る為には……」

そう前置きした上で、早苗はシンプルな答えを導き出した。


早苗「――ピエール君が、フランスの皆ともう一度、『トモダチ』になる事だと思います!」


ピエール「フッ……ハハハ。そうか、そうだったな。社交界の権力だの、利害関係の維持だの、
      そんなどうでも良い事ばかりを並べ立てて。俺は、一番肝心な事を忘れていたみたいだったな……」

ピエールは、初めて年相応の少年らしい笑みを零した。

――今回、フランスのサッカースクールで起きた学園紛争。
それは、少年の人知れぬ孤立が引き起こした、滑稽かつ悲劇的。矮小かつ遠大な信仰の儀式だった。

791 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/16(木) 01:22:24 ID:9jEN4p+g

ピエール「――俺は全て話した。だから、と言う訳では無いが教えて欲しい。
      ……サナエ。君は何故、俺に手を貸してくれた? 君はソリマチの事が……」

最後にピエールは、そう早苗に問いかけた。
実は、ピエールは彼女が何故レジスタンスでは無く、自分達に加担してくれたのか。その真なる理由を知らなかった。
彼女はいつも通りの明るさを保ちながら、そうした当然の疑問を拒絶し続けていたからだ。

早苗「それは……幾らピエール君でも、言えません。だって、それだけ色々考えてたピエール君と違って、
    私がここに参戦した理由なんて、めちゃくちゃショボイし、しかも色々とアレな理由だし」

それは今になっても同じだった。彼女は照れくさそうに指を合わせながら、もじもじと言葉を渋る。
そして、ピエールは少女の秘め事を根掘り葉掘り聞きたいようなタイプの男では無かったため、早苗の秘密は今も尚隠される。

早苗「さ! そんな詰まらない事よりも、私達のキックオフですよ!
    色々語ってスッキリしたんだし、折角だから、この試合を最後まで楽しまないと!」

最後の最後まで自分の本心を隠し、明るく周囲を照らし続けようとする早苗の背中を見て、
ピエールはこうも付け足した。

ピエール「……仕方ないとは言え、彼女のような子を放っておくなんて。――ソリマチの奴は本当に罪な男だな」

その言葉の意図は、紳士的な観点からの感想なのか、あるいは反町に対する少年らしい嫉妬なのか。
――それを知るのはピエールの本心のみだった。

792 :森崎名無しさん:2016/06/16(木) 18:07:56 ID:???
実は真に孤独なのはアリスさんではなくピエールだった
そしてアリスさんは>112におけるピエールの友情論が
実は自分自身すら騙しきれていないうわべだけのものであるとアリスさんは本能で感じ取った!
だからアリスさんはピエールとは友達になれないと思ったんだよ!
結論!YAS!

793 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/17(金) 00:42:06 ID:???
すみません、早苗さんパートの文章を考えていたら思いのほか長くなりそうなので、更新をお休みします。
>>792
ピエールの動機については当初から考えてましたが、>>112は実はそこまで考えず書いてました(汗)
アリスさんとピエールは奇しくも対比的な感じになりましたね。

794 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/18(土) 01:37:19 ID:???
すみません、今日は更新をお休みします(汗)明日は更新したいです。


795 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/20(月) 00:12:42 ID:dNkCd+7+
――ピィイイイイイッ!

早苗「さあさ、試合はまだ最後の一秒まで分かりません! 行きますよ、皆!」

タタタタタッ……ババババッ!

ナポレオン「――チイッ!(……ピエールの奴はすっかり戦意喪失気味だが、コイツは逆に生き生きとして来やがった!)」

実況「生徒会チームのキックオフと同時に、試合はいよいよロスタイム!
    先程猛威を振るったピエール選手は足を休め、代わりに早苗選手が高いドリブル力で突き進みます!」

反町「早苗さん……最後に聞きたい。一体何故、ピエールに加担を……?」

静葉「――貴女の後ろには狡猾な神々が付いている。彼女達の差し金?」

早苗「違います。神奈子様達は確かに、目的の為ならば手段を選ばぬ所もありますが、
    今回については無関係。『折角機会を得たサッカー留学だ、楽しんでおいで』以上には言われてません」

穣子「じゃあ、一体どうして……? 私達、一緒にご飯食べたり、遊んだりしたじゃん。トモダチじゃなかったの……?」

早苗「どうして? ……そんなの、決まってるじゃないですか」

実況「快速ドリブルでナポレオン選手を突破した早苗選手、次は反町選手と静葉選手、
    そして穣子選手の三人と対峙し……」

早苗「(――中学時代からずっと、あなたに憧れてた。寡黙だけど紳士的なプレーを見せたあなたを。
    ……そして、理想を挫かれても尚、自分の信念を貫こうとしたあなたを……!)」

796 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/20(月) 00:13:58 ID:???
〜回想シーン〜

ピィィィ……

実況「……あ。ホイッスルが……鳴りました。後半23分、明和東のキックオフで試合さいか――」

日向「くたばれ、雑魚が!」

バギイイッ! グシャッ!

英武「ひでぶっ!?」

観客「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」「も、もうやめてくれーー!!」「+‘#$%’#!?」
   「血が……臓物が……」「ハハハ、脳ミソってプリンみたいだよなァ、めっちゃ可愛ェ、ハハハ」

実況「……前半に小松選手から交代した英武選手、日向選手の強引なタックルにより吹き飛ばされました。
    全身が奇妙な飴細工のように捩れていますが、試合続行です。これは政府のお達しが理由です。
    ……あ! 日向選手の強引なドリブルに吹っ飛ばされた?仏選手が起き上がれません。
    また背骨が折れでもしたのでしょうか。ですがこれはボール越しのプレーの為、反則ではありません」

反町「(……なんだ。なんだよ。この試合――いや。この文字通りの虐殺は……!)」


早苗(観客席)「外界最後の思い出にと、全国大会に来てみては良いものの……こりゃあ、非常識すぎますね」

――早苗は幻想入りする前、東邦学園の試合を観戦していた。
地元の宿敵・鳴門中学をアッサリと下したチームがどこまで行くのか、純粋な興味があったからだ。
また、幻想入り直前にして、早苗の存在は現実において虚ろだったため、
こうして無銭で試合を観戦するのは容易だったのも理由としてあった。

797 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/20(月) 00:15:16 ID:???

早苗(観客席)「長野県最強GKの渡会君からアッサリゴールを決めちゃった、あの反町君って子も凄いと思ったけど。
          ……こうしてみると、彼ですら全国では最優じゃないのね」

そして、彼女はこの時、狂気的な殺戮現場を前に小市民然とした反町に対し、幾許かの失望を抱いていたのも事実だった。
自分達を打倒したチームを圧倒した、全国有数のチームのエースストライカー。
そんな反町ですら、日向小次郎という圧倒的才能を前にしては単なる雑魚に過ぎない。
現に、反町が堅実に稼いでいた大会5ゴールの記録に、日向は僅か1試合で既に並んでいた。
多くの屍の山と共に、彼は全てを蹂躙していた。そして――。

日向「ククク……次は貴様だっ!」

阿部士「ひ、ひぃぃぃッ!?」

実況「……日向選手、阿部士選手もドリブルで突破に向かいます。
   しかし阿部士選手は先程のプレーで全身を負傷しており、これ以上の続行は危険。
   恐らく、もう一度あの直線的ドリブルを受ければ内臓破裂は必至でしょう。
   ですがそうした些細な事情など気にせず、日向選手は減速せずに、ボール越しで突破へと向かいます!」

早苗(観客席)「(――これは死にますね、あの阿部士って人……。しかし、サッカーで人が死ぬなんて。
         幻想郷だったら、こうした出来事が日常茶飯事になるのかしら……)」

早苗の推察は正しく、堀に代わって明和東のボランチを務める阿部士はこの時死を確信していた。
幾度も無く暴力的プレーを受け、身体はもはや動かない。
しかし、自分に代わる選手はもう居らず、反則のホイッスルが鳴らない以上、
仮に死んだとしても、自分は日向に向かわなければならない。
阿部士はボロボロの全身を辛うじて立たせ、日向に向かってタックルをしようとして――。

798 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/20(月) 00:16:33 ID:???
反町「(これ以上人が死ぬ所は見たくない。でも、日向に逆らって死にたくない。
    だったら……俺にできる事は……)――くっ、頭がふらついて……」

グラッ……バターンッ! ……ドサッ。

阿部士「あべしっ!?」

ピィィィィィッ!

日向「――チッ。反町の馬鹿め。サッカーは格闘技だぞ。リング上で血が流れるのを見て倒れる奴がどこにいる」

実況「おっと、日向選手が阿部士選手を抜くと思いきや、反町選手の転倒によってホイッスルが鳴りました!
    これは反町選手の反則で、明和東にフリーキックが与えられた格好です!」

反町「(日向のボール越しの暴力行為が合法で、俺の転倒が反則を取られるのは少し理不尽な気がするけど……。
    ――でも兎に角、これで少しは彼の寿命が延びたと思えば……)」

――日向が人命までをも奪う事になる直前、反町はすんでの事で彼の命を救った。
偶然の立ちくらみが、安倍士を暴力の魔の手から助けだしていたのだ。
これには日向も機嫌悪そうに舌うちをしたが、流石に人名ともあると『後片付け』が大変だからか。
それとも、単なる気まぐれからか、それ以上の追及は無かった。

日向「……フン。どこかの馬鹿のせいで興が削がれた。おいタケシ、これから後は流すぞ」

沢田「ひゅ、ひゅいいいっ!? わ、分かりましたぁ!? ヒューガーバンザーイ!」

更にこれは思わぬ幸運だったが、反町の反則以降、興を削がれた様子の日向はこれ以上の暴行に走らなかった。
……無論、無数のけが人が今なおフィールドで苦悶の声を上げている現実は変わらないが、
少なくとも反町の行為は、結果としてここにいる11名の生命を守ったのだ。

799 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/20(月) 00:18:11 ID:???
早苗(観客席)「(……今のって、もしかして。身を挺して彼の――阿部士君の命を救ったんじゃないかしら)」

そして、こうした反町のプレーに、早苗は興味を抱いていた。
早苗にとっては反町が、圧倒的な才能により、自分のこれまでの全てを否定され、
しかしそれにも関わらず、出来る限りの精一杯をやろうとしている風に映った。

早苗(観客席)「(私も、頑張らなくちゃ。自分達を倒したチームが全国の場でアッサリ敗北しようとも。
          ……私の才能が足りず、神奈子様と諏訪子様をこの現実の地に留められなくても。
          それでも、できる限りの事をしなくちゃいけない。それが、私の役目である以上は)」

その姿は、自分の才能が井の中の蛙である事を感じていた早苗にとって、勇気付けられる物だった。
例え真実が偶然であったとしても構わない。反町は間違い無く、人の命を救ったのだから。

早苗(観客席)「(……会える事は二度と無いだろうけど。反町君に会えたら、お礼を言わなくちゃいけませんね)」

――試合は6−0で東邦学園が圧勝した。
この試合によって東京〜埼玉間に不仲が生じ、およそ8億もの経済損失が生じた事や、
ヒューガーが大手広告代理店やマスコミ、果ては政府を利用し、若き少年達への暴行をもみ消した事は、
これから日を待たずに幻想入りした早苗にとってはどうでも良かった。

ただ、華々しくも無いどころか反則を取られるような、そんなしょうもないプレーを通じて、
自分に勇気を与えてくれた少年に、一方的な感謝を伝えたかった。
そんな些細な未練を、早苗はこれまでずっと隠し持ち――。


……早苗はいつしか、彼に対し、単なる感謝以上の恋慕を抱いている事に気付いてしまった。

800 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/20(月) 00:23:35 ID:???
……と、言った所で短いですが今日の更新はここまでにします。
(本当は18日土曜日中には更新したかったですが、外出や体調不良もあり更新できませんでした)

早苗さんの描写パートはもうちょっとだけさせて頂いて、その後試合終了+反町の章エンディングイベントをやって、
来週頃を目標に、久しぶりの鈴仙パートに戻る予定でいますが、案の条予定は未定です(汗)
本日もお疲れ様でした。

801 :森崎名無しさん:2016/06/20(月) 00:32:59 ID:???
乙なのです!
反町君は爆発し……いや、それ以外の不幸度考えればこれくらい報われてても釣り合い取れるのか?

802 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/21(火) 00:32:48 ID:???
〜回想シーン終了〜

早苗「(……だけど、私は伝えられなかった。反町君への想いを伝える事が、迷惑だと思った。
    なぜって、私が彼を知った頃にはもう、彼の傍には二人の想い人が居たから……)」

反町「早苗、さん……?」

実況「……早苗選手、ドリブルで突破かと思いきや、周囲を取り囲む反町選手と秋姉妹の二人の間合いを意識し動かない。
   動的なプレーを好む彼女らしからぬ慎重さです!」

早苗「(……反町君が穣子さん達と支え合い、言いたい事をハッキリと言える少年に成長する姿を、
    私はその傍で無関係らしく見守る事しかして来なかった。
    何時の間にか、言いたい事を言えないのは反町君じゃなくて、私だけになっていた。
    ……私の中には、自分自身へのもどかしさと。それだけじゃない、穣子さん達への嫉妬の感情も生まれた。
    そしていつしか私は――反町君に勝つ事で、彼を乗り越えたいと思うようになっていた。
    滑稽な程に一方通行な関係。だけどそんな滑稽な想いが、私がここまでサッカーをやって来れた理由の一つでもある。
    だから……)私は、貴方に勝つ!」

タッ、バッ! シュンッ! ククッ、スパァッ!

反町「(……凄いキレのドリブルだ! こんな実力で、長野県大会レベルに埋もれていたのか!?
    ――俺には彼女がどうしてこんなに強いのかが、分からない……!)」

静葉「早苗お得意の五段ステップフェイント――『グレイソーマタージ』ね!
    『オータムスカイラブタックル』で行けば、奪えたかもしれないけれど……」

穣子「無理だったよ、お姉ちゃん。私達の体力もそろそろきつくなってるし……」

実況「早苗選手、試合も終盤にも関わらず、相変わらずの素晴らしい技巧派ドリブルで中盤を突破します!」

803 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/21(火) 00:33:56 ID:???

アリス「まだよ! 私はあんたみたいな『リアルが充実している人』なんかに負けない!」

ダッ!

早苗「貴女に私のリアルの何が分かるんですかっ!」

バシュンッ! シュパッ!

アリス「『リアルが充実している人』には勝てなかったよ……」

実況「早苗選手、この試合大活躍のアリス選手をも突破しゴール前へ!
    既に疲労困憊の美鈴選手を差し置いて、カイエ選手から高いセンタリングを貰い……!」

早苗「……決まれぇぇぇーーーっ!」

 ――バッ、シィィィ……ン! バギュウウウウウウウウウウウッルルルルルルルルルルッ!

ルスト「な……!? こ、これは……!」

ブラボー「『ドライブシュート』だ。『ドライブシュート』を……オーバーヘッドの体勢で撃っているぞ!」

ドゴール「『ドライブオーバーヘッド』! いや……彼女風に言えば、『ドライブサマーソルト』、と言った所か!」

早苗「(思えば私は、普段は明るく自由であろうとしているけれど。
    その裏では色んな人に対して劣等感を抱いてた。
    中学時代のライバルチームのキャプテンだったり、反町君だったり、霊夢さんだったり、
    静葉さんや穣子さんだったり、ピエール君だったり……。でも、そうやって辛いと思って。
    それでも上を目指そうと思い続けたからこそ、この技が出来た! この技で、もう一度振り出しに戻すんだ!)」


804 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/21(火) 00:35:16 ID:???
早苗が振り出しに戻したかったのは、この試合の趨勢か、霊夢との10番対決か、
それとも――反町を巡る恋模様か。様々な想いが詰まった奇跡のシュートは、
通常のドライブシュートとは反対に、高く空へと舞い上がりながら、レジスタンスのDF達を吹き飛ばし――。

アモロ「君の想いがどれだけ強いか、僕は分からない。でも――僕達だって、君に負けない位苦しんだり悩んだりして、
     この場所に立っているんだ。だから――そう簡単に譲れないんだーーーーーっ!!」

バァァアアアアアアアアアアッ! バギイイイイッ!

アモロ「うわぁぁぁぁぁぁっ……!」

決然と突っ込んだアモロをも吹き飛ばし、シュートはゴールに向かうかと思われたが、
DF達の奮闘、そして最後のアモロの決死の飛び出しにより、僅かに軌道が逸れた。そのため……。

ガッ、シィィィイイイイインッ! ポーンッ!

早苗「あ、あははは……。色々能書き垂れるには、やっぱちょっと早すぎましたかね……」

ボールは勢いよくポストにぶつかり、中盤へと再び零れていった。
ジョルジュが思いっきりボールをクリアするのを見届けた早苗が、恥ずかしそうに顔を赤らめながら頬をぽりぽりと掻く。
すると、これまでこのフィールドに漂っていた重苦しい空気が解けたような気がして――。

……ピッ、ピッ。ピィィィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!

実況「試合終了〜〜〜〜! レジスタンスチーム! 生徒会チームを4−3で下しました〜〜〜!!」

それと同時にホイッスルが高らかに鳴り、実況が試合の終了を宣言した。

805 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/21(火) 00:36:21 ID:???
反町「(……勝った。俺は……俺達は……この試合に、勝ったんだ……。
    まるで何度も何度も負けた上で勝利を掴んだような。そんな達成感すら湧いてくる……。
    それだけに、苦しい勝負だった……)」

ピエール「(……俺は負けた。――が、この結果にどこかホッとしている自分が居る。
       俺が信じ切れなかった仲間との絆は、少なくとも俺以外の間では確かに存在している事が分かった)」

勝利したにも関わらず、反町は苦い顔でこの苦しい試合を乗り切ったという事実を噛みしめる事しかできなかった。
敗北したにも関わらず、ピエールはどこか重荷が外れたような、虚ろながらも爽やかな感情で居られた。
勝者も敗者も痛み分けで。全ての感情を吐き出し切るまで戦い続ける、少年期の喧嘩のような。
そんな、苦しいけれど爽やかな練習試合が――漸く終わったのだ。



レジスタンス 4 − 3 生徒会チーム  試合終了!




806 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/21(火) 00:41:59 ID:???
…と、言った所で今日の更新はここまでにします。
>>801
乙ありがとうございます。
もうちょっと爆発させれば良かったかな、とも思っています。

807 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/21(火) 23:47:07 ID:5xxKxztU

反町「……」

反町は暫くぼうっとしたまま、立ち尽くしていた。
この試合が彼に与えた肉体的・精神的疲労はそれだけに耐えがたいものだった。

ピエール「………」

視界には、恐らくは自分と同じような面持ちで佇むピエールと。

早苗「はぁぁ……。負けちゃった。勝てると思ってたんですけど」

普段通りの様子であっけらかんとした風に見える早苗、そして……。

アリス「(これってユニフォームを交換する的な流れのアレよね……?
     ユニフォーム交換を経て、私達は真のライバル(トモダチ)になるのよね……?)」ワキワキ

反町「(アリスさんは何か楽しそうで羨ましいなぁ……)」

いつでもどこでもユニフォームを脱ぐ準備をしているアリスさん位しか居なかった。
ちなみにこの試合にユニフォームは無いため、果たして彼女が何を交換する気でいるのか不明である。
この中で、反町が一番興味を抱いていたのは――今回の試合の元凶でもあるピエールだった。

反町「(俺は……何も知らない。この試合に隠された思惑も、それに巻き込まれた人の考えも……)」

反町は結局、彼がどんな目的で動き、目的を果たせず敗北した今、どんな事を思っているのかを未だ知らない。
試合前、金持ちは良くないと呟いた意外に、その思いを汲み取れる材料が無い。
だからこそ、彼と一度、話をしてみたいと思った。

808 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/21(火) 23:48:54 ID:5xxKxztU

反町「(けれど、どんな風に話しかければ良いのか、戸惑ってしまうな……)」

そしてそこで、反町自身がピエールと深い付き合いをしていない事に気付く。
どんな風に声を掛けて、どんな事を話せば良いだろうか。
暫く考えたり、周囲の様子を見渡したりもした結果、反町が取った行動は――。


A:「どうだピエール。これが俺達の愛の勝利だ!」愛をアピールする。
B:「良かったら、俺達ともトモダチにならないか?」ピエールとトモダチになる。
C:「…………」敢えて言いたい事を語らない。それでピエールも分かってくれる筈だ。
D:ピエールも大事だが、それより早苗さんと話をしよう!
E:そんな事より、この試合大活躍のアリスさんを胴上げだ!
F:その他 自由選択枠

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

※円滑な進行のため、日を跨いで入った投票についてもカウントします。

809 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/22(水) 00:09:14 ID:???
今日はちょっと疲れたので、投票があっても更新はここまでにします。

810 :森崎名無しさん:2016/06/22(水) 00:23:27 ID:l5o6hXSw
C

811 :森崎名無しさん:2016/06/22(水) 00:56:20 ID:YujgJ59M
B

乙なのです!
今日からお前も友達だ!

812 :森崎名無しさん:2016/06/22(水) 02:11:59 ID:gV8fK69Y
E
見せつけてやるぜお前の見たがってた友情ってやつをよォ!

813 :森崎名無しさん:2016/06/22(水) 09:07:03 ID:CKCNlWlg


814 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/23(木) 00:47:51 ID:3ryHKINg
C:「…………」敢えて言いたい事を語らない。それでピエールも分かってくれる筈だ。

反町「(……いや。雄弁が必ずしも良いとは限らない。俺は、俺らしくいよう)」

反町は言いたい事を言わなかった。

反町「(普通の漫画とか小説の主人公だったら、ここで熱血に、ピエール横っ面を叩いてやったのかもしれない。
    あるいは、仲間と一緒に和解を求めるのかもしれないし、説教をしてみせるのかもしれない。
    ――だけど、それを俺が今ここでやる必要は無い。誰かが、代わりにやってくれる)」

反町が至った境地は、一見してこれまでの小市民然とした事なかれ主義と変わらない。
しかし、その内心において大きく異なる。権力や周囲の雰囲気に萎縮し、やむなく言いたい言葉を封じるのではなく、
今の彼は、確固たる自信の下、言いたい事を敢えて言わない事を『選択』していた。
そして、そんな反町の選択は正しかった。

ナポレオン「テメェ、どの面下げて突っ立ってるんだ、ああん!?」

バシイッ!

ピエール「……ハハ。悪いな、ナポレオン。俺は少し、どうかしていたようだ」

ナポレオン「どうかしていただと? ふざけんなよオイ。お前がちょっと気を違えたくらいで、
       意味不明な試合の片棒を担ぐなんてあり得ねえんだ。どういう事情かは敢えて訊かないでやるがよ。
       もうちょっと仲間に相談でもしたらどうだったんだ!?」

ピエール「だったら。俺が相談していたら助けてくれてたかい、ナポレオン?」

ナポレオン「バーカ。誰がテメエなんて助けるか。悩みなら自分で解決しろ。それが不良の世界の常識だ。
       ――ま。暫く練習に付き合ってやる位なら、したかもしれねえがな」

815 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/23(木) 00:50:12 ID:???
ピエール「ナポレオン……、ありがとう」

ナポレオン「感謝される覚えなんてねぇ! ……が、まぁ。そのツラに免じて、今日の事は水に流してやるよ」

ナポレオンはピエールの横っ面を叩いて、不器用ながらも彼自身の寛大さを見せた。

アモロ「……ピエール、ごめんね。僕が気付いてあげられなかったばっかりに……」

ピエール「アモロ……それに、ボッシとルストも」

ボッシ「そうだ、悪いのはピエール、お前だぞ。せめてどうして、こんな試合を組んだのか。
     その理由を説明してくれない事には納得できないな」

ルスト「ま、折角試合に勝てたんだ。教育方針もこれまで通りってなワケで。
    ……試合後はノーサイド。またトモダチやろうぜ、ピエール」

アモロとボッシ、そしてルストはピエールと近しい間柄から、揃って彼に和解を申し立てた。

アリス「そうよ皆! 全ての人がボールくんとトモダチになるべきなのよ!
    そうすれば皆が仲良しになるの!! ハッ!? それで思いついたんだけど、
    世界中の人が皆でサッカーをすれば争いは無くなり、世界が平和になるのでは……?
    皆! サッカーしましょう! サッカーは自由よ! ヒャッホーーーーッ!!」

ピエール「アモロ、ボッシ、ルスト……皆。ありがとう。俺はこれから、皆に全てを話そうと思う。
      俺の信頼できる、かけがえのないトモダチ、として(後ろの方で何か女性の叫び声が聞こえるな……誰だろうか)」

アリスさんは熱血的な説教を試みていたが若干ピントがずれていた上、
肝心のピエールが今仲間との和解の最中だったため、全く相手にしてくれなかった。
……が。彼女もまた、反町とは別の気付きをこの試合で得たようであり、その表情は何時になく充実していた。

反町「(――ほら。俺はここで、皆を見守っていればいよう。こうする事で、場はきっと柔らかくなる。
    言いたい事を言うのは、また別の時で充分だ)」

816 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/23(木) 00:53:09 ID:???
……と、言った所で今日の更新はここまでにします。
>>811
乙ありがとうございます。最後は皆トモダチになります。
和を大事にするフランスユースの誕生ですね。
>>812
Eだったら分岐でアリスさんがスキル・絶対に自信を喪失しないを覚えていたかもしれませんね。

それでは、本日もお疲れ様でした。

817 :森崎名無しさん:2016/06/23(木) 09:07:11 ID:???
乙でした
今思えば>>227はこの試合がループすることを暗示したものだったのかもしれない……

818 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/24(金) 01:59:08 ID:???
すみません、今日は疲れたので更新をお休みします(汗)
>>817
乙ありがとうございます。8回ループにならなくて良かったです(真顔)

819 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 12:40:00 ID:???
こんにちは、金曜から色々書いてたら1イベントの分量が20kbを超える位の分量になったので、
分けて少しずつ更新します。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


中西「畜生、ここで勝ってれば出世間違い無しやったのに……」

岬「今の日本サッカー協会で出世したって、大した事ないさ」

かつてのフランスJr.ユースメンバーが和解へと向かう中、商機を狙っていた中西は口惜しそうに歯噛みする。
しかし、彼の相棒である岬は普段通りの平然とした様子で試合後のストレッチに取り組んでいた。

中西「ワイらの使命を忘れたのか! ワイらはここで学校事業を成功させて、
    それで日本サッカー協会が抱える資金難を解決。そして、森崎が消えた穴を防ぐという事やったろうが」

岬「分かってるよ。僕達が今推し進めている『ツバサ・ヴァイキング計画』
  ――全日本Jr.ユースの有力〜中堅選手を多数、サッカー先進諸国へと留学させ、
  総合力の底上げを図る次善策には、多額の資金が必要だ。
  そしてそれは、君の興したうどんチェーン店の売り上げだけでは足りない事は明白だった。
  だから、資金確保の為の第二の事業として、サッカースクールに目を付けた。……こういう経緯だったよね」

聖徳ホウリューズを抜け出し、再び全日本メンバーに合流した岬は、もはや素の狡猾で計算高い性格を隠してはいなかった。
笑顔のままに権力を得る彼の計画は、彼を捨てた豊聡耳神子の一派により既に暴露されており、今更取り繕う事は困難だった。
とはいえ、日本サッカー協会の重鎮は岬の素性を知ってなお、いや、ますます彼を参謀役として高く評価したため、
素性を明かして振る舞う事は完全なマイナスばかりでは無い。
現に、彼がこうして中西を部下に付け、フランスのサッカー教育事業に乗り出せたのも、上層部の岬に対する篤い信頼があってこそだった。
そして賢い彼は決して、この商機を逃す事はしない。

820 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 12:41:20 ID:???
岬「――だとしても、資金確保は既に成功しているよ。ほら、見てごらん」

岬は中西に一枚の通帳を渡してみせた。中西が訝りながらそれを開くと、たちまち目を見開いた。

中西「な……なんや。いつの間にか大量にカネが入っとるやないかい!? どうしたんや!?」

岬「詳しくは言わないけれど。僕はこの試合に敗北した時を見据えて色々手を回していた……とだけ言っておこうかな。
  特に手を組んでいた某金持ちの家の当主さんからは、多額のキャッシュをむしり取る事が出来たよ。彼ら、親子そろってカモだね」

中西「色々って……。お前さん、やっぱりワルやな。ワイらの中でも群を抜いてワルや」

岬「そんな事無いさ。だって僕にお金を『寄付』してくれた人も、僕が彼の不法行為を口止めする事を約束したら、
  泣いて喜んでくれたよ。そして僕達もこのお金で笑顔になれる。ついでに、ピエールやその仲間達も笑顔になれる。
  ……ほら。誰ひとり損はしていない。皆笑顔じゃないか。僕のスタンスはこれ。これだけは何も変わりはしないよ」

能面のような笑顔を見せ、岬は全く悪びれずにそう主張する。
所詮は一個の商売人に過ぎない中西は、かつて日本最古の政治家とも肩を並べた事すらある岬太郎の精神に、
ただただ戦慄する事しかできなかった。

821 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 12:42:46 ID:???
美鈴「(……ぽっと出の出番で負けちゃたけれど、ある程度は活躍する事ができた。
    これまでは上にお嬢様とか咲夜さんとかが居たから、何となく萎縮しちゃってたけれど、
    今日の試合のお蔭で、何となく自信がついたかも)」

他との交流が希薄だった美鈴だったが、彼女は彼女なりに、この試合において何かしらの実感を身に着けていた。
個人技が重視されるサッカーにおいて、スクールにすら所属せずあくまで身一つで技を磨いた彼女は、
ある意味ではシャンパンサッカーをこの場で最も体現している人物かもしれなかった。

美鈴「(ハッ!? まさかお嬢様は最初からこうなる事を見越して私をフランスに……!?
    って、そりゃあないか。しかし、他の皆は大丈夫なのかなぁ。陸君とか咲夜さんは大丈夫そうだけど、
    妹様がどう思っているか……)」

マイペースで何も持たない美鈴が、この試合においてそれ以上の深い思いを抱く事はない。
しかし、この試合における成功体験が彼女に大きな成長を促した事だけは確かだった。

822 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 12:44:06 ID:???
早苗「(……さようなら、反町君)」

――そして、早苗は一人残された。
彼女は反町への想いを告げる事なく、勝手に嫉妬し勝手に対立した自分自身を恥じていた。
仕方のない事情があったピエールとは違い、早苗は完全なる自分の意思で反町と対立した。
……そんな自分が、許される筈がない。

早苗「(――今日、この学校を出よう。そして何も変わらぬ笑顔で全幻想郷チームに合流すれば良い。
    そうしたら、私はまたいつもの明るくて楽しい風祝の早苗に戻れる……)」

――この学校での思い出は、きっと無かった事なのだ。
自分は守矢神社に仕える風祝。全幻想郷においては霊夢を補佐する影のゲームメイカー。
それ以上でもそれ以下でも無く、普通の女子高生のような生活をする事など、あり得ない。
だから、早く幻想郷に帰って、いつも通りの自分に戻りたい。早苗はそう思って――。

ガシッ。

アリス「――ほら、あんたも私のブレインメディカルなサッカー理論に聞き惚れるのよ!
    良いかしら? まずあんた、ボールくんは見える? ほら、ここに『いる』んだけど、見える?
    まあ愛が無ければ見えないんだけどね。そもそも私とボールくんとの馴れ初めは……」

早苗「あの、えっと、アリスさん……?」

823 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 12:45:27 ID:???
長い学校生活を経てすっかりキャラ変してしまったアリスさんに捕まった。
早苗はしどろもどろになって捕まったその腕を振りほどこうとするが、アリスさんの瞳は至極真面目だった。
アリスさんは訳知り顔で頷いて、こう静かに言い切った。

アリス「……あんたは、毎日トイレでお弁当を食べてる私を屋上まで案内して、
    ランチに誘ってくれたわ。その恩は、決して忘れるもんですか」

早苗「そ、そうっすか……」

――良い事を言ってるような気はするが、なんかこの場で早苗が求めてるのとは若干違う気がした。
が。……そんなアリスさんの態度に毒気を抜かれたのも確かで。

早苗「(……でも、そうよね。私の想いは結局何も無く終わっちゃったけれど。
   ここには沢山のイイヒトがいる。あんなイイヒト達ばっかりだったら……なんか、私ですら許されちゃう気がするし)」

早苗は、もう暫くこの場所に立ち止まってみる事にした。
肩の力を抜いて見た秋の景色は、これまで以上に美しく見えた。


そして、反町は――。


824 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 12:47:01 ID:???
〜エンディング〜
【そして、秋はまた訪れる】



指導教官「えー。これまで皆と共に学んでいた反町君達に東風谷君だが、
       兼ねてからの計画通り、留学を終えて母国に帰る事となった」

クラスメート「えーっ」「知ってはいたが、やっぱり寂しいよな」「俺達の事忘れるなよなー」

――あの激戦から早数日。平穏だが充実して貴重な日々を過ごした反町達は、
いよいよ留学期間を終え、その実力をそれぞれの場所で活かす事となった。

反町「…………」

穣子「やっぱり、皆とお別れするのは寂しいね……」

静葉「終わりがあるからこそ、新たな始まりが待ち遠しくなる。私は、この終わりを大事にしたいわね」

アリス「皆ー! また一緒にサッカーやりましょうねー! ボールは皆のトモダチよー!」

早苗「私は反町君達とは別の立場ですけど、本当にお世話になりました。ありがとうございます」

指導教官「彼らはわが校のカリキュラムをしっかりとこなし、また、自分自身の課題にしっかりと向き合い、
       そして大きな成果を出してくれた。君たちも見習うようにな」

指導教官が月並みな激励を掛ける中、反町は一人思い出していた。
つい数日前、レジスタンス対生徒会チームとの試合が終わった夜の出来事を。


825 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 12:48:07 ID:???
*****


反町「あの……穣子さん」

穣子「一樹君。……ほんとに来てくれたんだね。良かった……」

――反町は試合終了間際に告げられた言葉に従い、夜の校舎で穣子と一緒に居た。
そよ風が木を撫でる音と虫の鳴き声以外に音が無く、
窓の外から覗かせる月と星以外に光が無い世界にたった二人で、他の人は消えてしまったように思えた。

穣子「今日、勝てて良かったね……」

反町「ええ。そりゃあもう。皆のお蔭だとしか言いようが無いです」

普段の素朴で元気な穣子とは違う様子に内心でどぎまぎしながら、
俺は盛大に外しちゃいましたけどね、と反町は苦笑いしながら答える。
穣子はそんな事ないよ1点決めたじゃん、と笑顔で応じてくれたが、やはりぎこちないと思えた。

反町「…………」

穣子「…………」

やがてやってくる沈黙。
反町がお喋りでない以上、穣子が口を閉ざしてしまったら何の会話も生まれない。
暫く二人は、風や虫の音に耳を澄ませるしかなかった。
が、そんな中で不意に穣子が決然と口を開いた。

穣子「……一樹君。やっぱり、あなたは……私達なんかと、一緒にいるべきじゃないよ」

826 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 12:49:58 ID:???
――と、言った所で一旦ここまでです。

827 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 18:02:36 ID:???

反町「そんな。どう、してそんな事言うんですか。俺達、今まで楽しくやって来たのに……」

だから反町は珍しく感情的になって問いただした。自分は勿論、穣子の事を大切に思っている。
そもそも反町が今ここで修行を続けているのも、穣子と静葉を守りたいという想いがあってこそだ。
だからこそ、反町はそんな自分の想いすら否定しようとする穣子の真意が知りたかった。

穣子「……これまでの学校生活とかさ。今日の試合とかさ、見てて思ったんだよ。
    一樹君は、私達みたいな幻想の住人と一緒じゃなくても、普通の人間として、
    外の世界の人達と仲良くなれる。一緒にサッカーを楽しめるって。
    そして、……その方が、一樹君の人生にとっても良いに決まってるって」

穣子が言わんとする事を、反町は何となく理解できた。
いや、それは穣子が言わずとも反町自身が考えていた事だった。
考えていて、でも今の生活が楽しいから。それで、胸の奥底に閉じ込めていた事だった。

反町「――幻想郷は、現実世界から忘れられた、捨てられた妖怪や人間が住む場所。
    だけど俺は、まだ完全に忘れ去られていない。全日本にも親しい奴がいたし、
    ここフランスでも、多くの仲間に恵まれた。……だから、穣子さんは。
    俺は今の一件が終わったら、外の世界に戻れば良いと。そう思うんですね」

穣子は静かに頷いた。

穣子「元々は私が悪いよ。私が、神様の癖して一樹君の事を好きになっちゃったのが駄目だったよ?
    でも、その時はそれでも良いと思った。一樹君はひとりぼっちだったし、支えてあげたいって思った。
    だけど――フランスに来てから確信したんだ。それは、私の都合の良い思い込みだったんだって。
    一樹君は強いよ。だから、私達がいなくてももう、皆と上手くやっていけるんだって……」

反町「それは……」

828 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 18:03:39 ID:???

反町は穣子を否定できなかった。幻想郷で二人と暮らしている時は実感できなかったが、
彼は今まさに、世界から断絶されようとしているのだ。

幻想郷と外界との往来が激しい現状においてはピンと来ない問題ではあるが、
反町はかつて妖怪の山の天狗達から、現状がイレギュラーである事は再三聞かされている。
八雲紫の――あるいは彼女を利用しようとしている『純狐』の――計略や鈴仙の活躍により、
幻想郷の結界が希薄化・崩壊したため、今だけはこうして容易に幻想郷と外界を行き来できる。
しかし、自分が鈴仙達と共に戦い勝利した場合、結界の崩壊は間違い無く修復され、
幻想郷は再び、現実とは混じりようの無い世界へと戻ってしまうだろう。
もしそうなれば……反町が再び、この現実世界で暮らす事が出来るかは不明だ。

反町「……………」

穣子「――ごめんね。変な事言っちゃって。今すぐに決めて欲しい訳じゃないんだよ?
   でもね。やっぱり一樹君には真面目に考えて欲しかったんだ……」

反町「……………はい」

反町はこれ以上答えられなかった。
何も言わずに彼女を抱き寄せられなかった自分は、臆病なのか賢明なのか。
それすらに分からぬまま、穣子とは何となく疎遠のままに数日が過ぎ――。

829 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 18:04:59 ID:???

*****

指導教官「……と、言う訳だ。間もなく彼らを送るバスが来るから、
      それまで皆は、彼らとの最後の時間を過ごして欲しいと思う」

クラスメート「「「「はーい」」」」

反町「(……何時の間にか話が終わってる。結局、俺はあれから何も言えなかったな……)」

クラスメートの合唱を聞いて、反町は意識を現在に戻した。
あれから穣子とは殆ど口を聞けておらず、偶に話す事があっても、どこかよそよそしくぎこちない。
この事について誰かに相談する事も性格上できず、反町は一人思い悩んでいた。

反町「(――これまで忘れていたけれど、俺はやっぱり、恐れている。
    皆と離れ離れになって、幻想郷で生涯を終える事を……)」

――仮にこのまま反町が新チームに合流し、皆で強敵に打ち勝ち、そしてその先は?
昔ならば、幻想郷で和を大切にするチームを作ってサッカーを楽しもうと。
そう無邪気に思えていたかもしれない。しかし、十年先、二十年先の自分はこの選択に後悔しないのだろうか。

830 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 18:49:02 ID:???

ピエール「ソリマチ、サナエ、秋姉妹の二人、そしてアリスさん。
     俺は君たちに色々教えて貰ったような気がするよ。
     だから、ここで改めて礼を言いたい」

アリス「(感謝されるのは嬉しいけれど、どうしてこの期に及んで私だけさん付けでよそよそしいのぉ……?)」

ルスト「俺は結局、最期まで足手纏いだったな。でも、次にある大会ではこうはいかないぞ?」

穣子「うん。楽しみにしてるね」

ボッシ「ソリマチに伝えてくれ。次に会った時はネオサーブルをも超えるファイナルノワールで、
    お前達からゴールを奪ってみせるってな!」

静葉「分かったわ(最後の黒って、いよいよ意味が分からないわね……)」

アモロ「色々あったけど、僕も皆のお蔭で強くなれたと思うんだ。
    それに、皆凄く仲良しにもなれたし。本当にありがとう。僕、今本当にサッカーが楽しいよ」

早苗「私は何もしてませんよ。ただ、皆さんが互いを信じあう気持ちが強かっただけです。
   でもこれって、何気に凄い奇跡ですから。大事にしてくださいね?」

ナポレオン「ソリマチ。テメェは俺に勝ったんだ。新チームだかリトルウイングズだか知らんが、
      そこで一流のストライカーになってねぇと承知しねえぞ」

反町「ああ……」

仲間達の暖かい言葉すらも、今の反町の心には響かない。
フランスという自由の国で得た仲間も、いつかは幻想の壁に隔絶されてしまうかもしれないと思うと。
また、彼らの絆を繋ぎとめるには愛する神と離別するしかないのだと思うと、全てが虚しく思えた。
そして、僅かばかりの惜別の時はすぐに終わり、反町一行に早苗を含めた五人は、
生徒達に見送られ、玄関に停まったバスに乗り、それぞれの目的地へと彼らを運ぶ空港へと向かう。

831 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/26(日) 18:50:16 ID:???
一旦ここまでです。

832 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/27(月) 00:36:10 ID:???
*****

……気付けば反町は、ひらり、はらりと紅葉の舞う場所に立っていた。
どこかで見た事があるような、しかしどこにも無いような幻想的な空間に独り居るにも関わらず、
不思議と孤独感や不安感は覚えなかった。

??「――ねぇ。キミ、寒くないの?」

そこには気付けば、一人の少女が立っていた。
銀杏を落とした川のように、さらっとして綺麗な金色の髪。
大きな鳶色の瞳は瑞々しい果実で、すらりと伸びた手足は稲の穂のようにしなやかだった。
反町はその少女を知っていた。

反町「穣子さん。……俺は、本当に貴女の事が好きだったのでしょうか……?」

反町が幻想郷で一番最初に親しくなり、そしてそのまま恋仲まで発展した収穫と豊穣の神。
神にも関わらず素性はとても純朴で愛らしい穣子を、今や反町は直視できなかった。

穣子「……大丈夫。あなたは、昔からずうっと私を信じてくれました。
    ありがとう。ずっと、ずっと……会いたかった」

――穣子は、優しく反町に語り掛けた。
普段の子どもっぽい口調とは違う、穏やかで大人びた佇まいは、
本物の女神のような(本物の女神なのだが)を想起させた。

反町「昔から……?」

穣子「ええ。だから、私達は巡り合えた。そして、きっとこれからも……」

穣子はそれだけを言い残すと、秋の色に解けていった。
――決して終わる事の無い紅葉の雨が降り注ぎ、永遠の豊穣を喜ぶ楽園の中。
反町は再び孤独に取り残された。

833 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/27(月) 00:39:23 ID:???
*****

ブロロロロ……

アリス「……フランス紀行も中々悪くなかったわね。
    私としては都会派の象徴・パリに行けなかったのが心残りだけど」

早苗「パリは良いですよ! 何故ってロンドンはどんよりしてるけど、晴れたらパリですし!」

アリス「フフ……その程度の知識、私も知っているわ。カルメンは麺よりもパエリアが好きなのよね?」

早苗「おお、それを先に言われちゃうとは。アリスさんってやっぱり博識ですね! 私、尊敬しちゃいます!」

反町「――あれ。俺、夢を……?」

反町は目を覚ました頃には、空港へと向かう車内での会話は程ほどに盛り上がっていた。
集団生活という名の荒療治を経て、何だかんだで最低限のコミュニケーション能力を身に着けたアリスさんも、
今ではある程度は早苗と馴染んで雑談に興じていた。

静葉「……反町君。もうすぐ空港に着くそうよ」

反町「静葉さん。ありがとうございます。俺、結構眠って……」

静葉「ええ、グッスリと眠っていたわ。最近あまり、眠れていなかったんじゃないかしら?」

反町「はい。まあ……色々悩み事とか、ありまして」

834 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/27(月) 00:40:45 ID:???
5人掛けのコンパートメントで、反町の隣に静葉は座っていた。
向こうには穣子がアリスさんと早苗の隣、反町とは斜め正面の位置で押し黙っている中。
――反町の『悩み事』を知る静葉は、穣子に悟られないような小さい声で、不意にこう囁いた。

静葉「この前の試合を思い出してみて。貴方は、貴方が思っている以上に力を持っている。
   それを正しく認識して使う事が出来るなら。……だから、自分自身を信じて。一樹君」

反町「静葉、さん……?」

静葉「――本当は、私に出る幕なんて無かったもの。貴方は優しいから色々と考えるでしょうけど、
    今だけは考えなくても良い。……だから、フランスを発つまでに、あの子に答えを示してあげて」

反町「静葉さん、待ってください。俺はまだやっぱり分からない。答えって一体……!」

静葉「あ〜。楽しい学校生活ももう終わりかぁ。これからウン十年間も社会の歯車になるくらいなら、
   もう人生終わりにしちゃおうかなぁ〜♪」チャキッ

穣子「え!? お姉ちゃんまた死んじゃうの!? いやー、死なないでぇー!?」

反町が静葉の真意を聞こうにも、これ以上は許さないとカッターナイフを振り回されて分からない。
ただ一つ確かなのは、静葉が反町と穣子との間に抱える問題を知り、理解した上で。
――自らの想いを押し殺してでも、二人が幸せになれる方法を考えてくれているという事だけだった。

835 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/27(月) 00:48:49 ID:efozeoc6
すみません、後半部分を書き直していたら今日中に終わらなかったので、続きはまた今度にします。
ただ、次のパートで反町の章は終わりにして、鈴仙の章に戻る予定です。
また、容量が500kbを越えたので、スレタイも募集させて頂きます。

【】鈴仙奮闘記37【】

の形で書いて提案して頂ければ大変嬉しいです。
次スレは、鈴仙の章に戻って、ザガロ達一行+一部スウェーデンメンバー(ブローリン等)が加わった、
サントス戦が中心になると思います。

それでは、本日も遅くまでお疲れ様でした。

836 :森崎名無しさん:2016/06/27(月) 01:01:17 ID:???
【熱戦烈戦】鈴仙奮闘記37【超激戦】
【ブルーツ波】鈴仙奮闘記37【大放出】
【ポーピー】鈴仙奮闘記37【デデーン】
乙でした

837 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/28(火) 00:44:47 ID:g5cRU4+s
>>836
乙とスレタイ提案ありがとうございます!
反町の章が結構重い感じになっちゃったので、
鈴仙の章Aは割と軽いノリで行きたいと思ってます。

838 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/28(火) 00:46:08 ID:g5cRU4+s
早苗「さて……私は日本に向かいますので、ここで暫しのお別れですね。
   皆さんは確か、これからブラジルに行って、鈴仙さんのリオカップに合流するんでしたっけ?」

静葉「ええ。大会スケジュール的には大体2回戦……サントス戦が始まる前には合流する感じかしらね」

早苗「そうですかぁ。私はこれからあの変なTシャツコーチの変な特訓を受けると思うと、気が重くなりますよ」

アリス「ラズリーと名乗る謎の女コーチだったわね。……今の全幻想郷代表の様子は随分と興味深いわ。
    これまでには無い人物が暗躍して、これまでには無い陰謀が蠢いている。
    ――でも、良かったのかしら? 立場上は敵である私達に、色々と教えてくれたのは有り難いけれど」

早苗「――少しでも、この前の試合の罪滅ぼしになるかもしれないと思いまして。
    ……でも、まぁ。私なんてどうせあのそうそうたるメンバーだったらほんの端役ですし、
    秘密主義の紫さんからはなーんにも情報は入ってこないし。
    多分、この位しゃべっちゃっても全然大丈夫だと思います。……あ、私の飛行機、来ちゃいました」

――そして空港の搭乗口で、反町達一行と早苗は別れた。
待合室でこれからの事を少しだけ語り合い、暫く経って別々の飛行機へと乗る。
早苗は日本。反町達はブラジル。フランスの地で偶然出会った彼らは地球の反対側へと離別する。

早苗「皆さん。こんな私にもフランスで仲良くしてくれて、本当にありがとうございました。
    お蔭で神奈子様達にも沢山、楽しい思い出話が出来ると思います。
    ううん、楽しいだけじゃない。色々な事を、勉強する事が出来ました」

839 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2016/06/28(火) 00:48:10 ID:???
律儀な早苗は、別れ際にメッセージを残してくれた。

早苗「アリスさん。貴女は不器用だけど、トモダチを想う心の熱さだけは本当に凄いと思いました。
   皆で笑顔で幻想郷に帰れた後も、きっとトモダチになって下さいね?」

アリス「さ、さあ。どうかしら。考えてあげるわ(わ、私にもようやく、ボール君以外のトモダチができた……?
     どうしよう。今まで散々トモダチ欲しいって言ってたけど、いざ本当にできそうだとちょっと怖い……)」

早苗「静葉さん。貴女とは妖怪の山の同郷ではあるけれど、ここで色んな側面を知る事が出来ました。
    貴女の高い知識と緻密さは本当に頼りになりました。……主にペーパーテストの時に」

静葉「居眠りは関心しないわ。夜更かししないで、きちんと寝なくちゃ駄目よ?」

早苗「穣子さん。普段は元気一杯だけど、皆の事を沢山考えていますよね。
    だけど、考えるだけで抱え込みすぎちゃあダメですよ?」

穣子「うん……ありがとね、早苗ちゃん」

早苗「反町君……」

反町「……………」

そして、最後に早苗は反町に向き合った。昔からずっと反町を見ていた早苗は、
反町に対して言いたい事が沢山あった。しかし、早苗はここで思わぬ行動を取った。

――ぺしっ。

反町「あいたっ」

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