キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【追う蜃気楼は】鈴仙奮闘記39【誰が背か】
1 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/03/04(土) 00:12:29 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで世界を救う為に努力する話です。
他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。
☆前スレ☆
【ウドンゲ春の】鈴仙奮闘記38【天パ祭り】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1477741789/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html
☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠に並ぶ名選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。
彼女は永琳の庇護下で実力を大きく伸ばし、幻想郷中の勢力が集まった大会でMVPを勝ち取った!
しかしその夜鈴仙は、自身の成長は永琳の計画であった事、その計画の副作用で
月に眠る大いなる厄災――「純狐」が八雲紫の身体を乗っ取り目覚めつつある事を明かされる。
そして、鈴仙は永琳に懇願される。「純狐」の純粋なる狂気を止めるべく、
次に紫が計画した大会――『幻想スーパーJr.ユース大会』に優勝し、世界を救って欲しい……と。
鈴仙は戸惑いつつも、永琳の願いを受け入れ、
幻想郷の秩序の変革を狙う新チーム・リトルウイングズの一員として、大会に優勝することを誓った。
その後、修行のため鈴仙は単身ブラジルに渡り、様々な困難や出会いを経験しつつも、
合流した反町一行の助力もあり、ブラジルサッカーの登竜門・リオカップの二回戦、サントスとの戦いに勝利した。
快進撃を続ける鈴仙達の次の相手は優勝候補の名門・フラメンゴ!
「アーサー」に対し謎の執着を見せるカルロスを筆頭とした強豪チームを相手に、
アルゼンチンでの修行を終えた佳歩達の合流があっても苦戦し、前半を1−2の劣勢で終える。
後半戦はてゐの本気、つかさの気合、そして佳歩の知略によって戦況は同点に押し返したものの、
フラメンゴの知将・サンタマリアが奥の手を発揮して……?
そして、カルロスとコリンチャンスのとあるメンバーとの間に隠された大きな秘密の正体は……?
299 :
森崎名無しさん
:2017/06/27(火) 01:21:44 ID:86+ifRpw
B
乙です
300 :
森崎名無しさん
:2017/06/27(火) 10:28:47 ID:y2kd8zy6
A
301 :
森崎名無しさん
:2017/06/27(火) 13:07:50 ID:JGyRcXwE
B
302 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/28(水) 00:02:40 ID:SgxRIZBU
★さとりのせりあい特訓→ 6 + 3 +(ボーナス+1)=10
さとりのセーブ力特訓→ 1 + 3 +(ボーナス+1)=5★
★さとりの最大ガッツ特訓→ 5 + 2 +(ボーナス+1)=8
さとりの必殺セーブ特訓→ 3 + 4 +(ボーナス+1)=8★
「……そうね。とはいえ、体格もあるから、純粋な筋肉はあれ以上付かなかったわ。
だけど、体幹のバランスを整えることと、とびだす時のポジショニングを理論立てて学習出来たのは大きかった。
――これなら、DFの人数が多い時は、自らとびだしてボールを奪う事も選択肢に入りそうです」
「成程。確かに言われてみれば、何となくガッシリしたような気もしますね。今のさとり様ならゴリラの群れに入っても違和感ないですよ」
「だから、なんであんたはいつも表現が大袈裟かつ余計なのよ。
はぁ。紅魔館のメイドはあんなに瀟洒なのに。ウチの従者と来たらいい加減だし、主を敬う気はゼロだし……」
さとり様はわざとらしく溜息を吐く。これが凡百の従者だったらここで謝罪するなり靴を舐めるなりするだろうが、
あたいは別に何も気にしない。……いやいや、あたいが凡百以下のクソ従者って意味じゃないよ。
つまりあたいは、日頃のながーい付き合いのお蔭で、さとり様限定で読心能力を身に着けているという話だ。
「『でも、そんないい加減なお燐が傍に居てくれたからこそ、私は今こうして前を向いて居られるのよね』
……ですか。ふむ……照れますぞ」
「! お……お燐め。……地霊殿に帰ったら、灼熱地獄の燃料にしてやるんだから」
せっかくだから、物真似しながらさとり様の内心を朗読してみた。
(さとり妖怪は心を読むだけじゃなく、その内容を朗読してワンセットと聞いた事がある)
……こんな舐めた態度に対し、妖精レベルの罵詈雑言しか返せない。つまりこれは、やっぱり図星なのだろう。
悔しそうな視線を向けながら、さとり様は雑に練習成果を総括して、会話を強引に終わらせた。
「――話が脱線しましたけど。私はフィジカルを鍛えました。上手くいきました。ほら、これで良いでしょ?」
*さとりのせりあいが+1されました。54→55
*さとりがスキル・飛び出し+5を習得しました。(スキル・飛び出し+2はスポイルされました)
*さとりのセーブ力が+2されました。54→56
*さとりの最大ガッツが+50されました。775→825
*さとりが必殺セーブフラグを習得しました。
303 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/28(水) 00:04:08 ID:SgxRIZBU
「――で。かくいうあんたはどうなのよ。ここまで散々私を弄って来たんですから。
さぞかし有意義なサッカー生活を送って来たんでしょうね」
「ええ、ええ。勿論ですとも。あたいがサッカーそっちのけでイギリス観光を楽しむような、
そんじょそこらのチャラチャラした駄猫に見えますか!?」
「はい」
「むぐ。言いますねぇ、さとり様も」
仕返しだと言わんばかりに嫌味にニヤつくさとり様。だがしかし、この程度で笑顔を凍らせるあたいではない。
死体が微笑むのと同じように、あたいは笑顔を絶やさないのがモットーなのだ。
「じゃあ、こっちも報告しますね。あたいの成長っぷりに、びっくらこかないでくださいよ?」
と、取りあえず(相手が相手なだけに)100%見え見えのハッタリをかましてみたは良いものの。
さて。練習はどんな塩梅だったっけ。サイドバック路線を目指して練習に明け暮れたのは覚えているけれど。
その結果はどうだったかと言うと――。
先着3名様で、
★お燐の特殊スキル特訓→ ! dice + ! dice+(ボーナス+1) =
お燐のタックル特訓→ ! dice + ! dice+(ボーナス+1) =★
★お燐のパスカット特訓→ ! dice + ! dice+(ボーナス+1) =
お燐のブロック特訓→ ! dice + ! dice+(ボーナス+1) =★
★お燐のドリブル特訓→ ! dice + ! dice+(ボーナス+1) =
お燐のパス特訓→ ! dice + ! dice+(ボーナス+1) =
お燐のシュート特訓→ ! dice + ! dice+(ボーナス+1) =★
と書き込んで下さい。カードやダイスの結果で分岐します。
(結果表については次レス参照)
304 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/28(水) 00:06:08 ID:SgxRIZBU
特殊スキル特訓→10以上でスキル・サイドプレイヤーとスキル・サイドディフェンサー習得
5以上でスキル・サイドプレイヤー習得、スキル・サイドディフェンサーのフラグ習得
2以上でスキル・サイドプレイヤー習得
タックル特訓→10以上でタックル+2、「火焔の車輪」の発動率アップ
5以上でタックル+2、「火焔の車輪」の発動率アップ
2以上でタックル+1
パスカット特訓→10以上でパスカット+2、「ゾンビフェアリーカット」の発動率アップ
5以上でパスカット+2、「ゾンビフェアリーカット」の発動率アップ
2以上でパスカット+1
ブロック特訓→10以上でブロック+3、「死体繁華街」習得
5以上でブロック+3、フラグ習得
2以上でブロック+2
ドリブル特訓→10以上でドリブル+2、「キャッツウォーク」の発動率上昇
5以上でドリブル+1、フラグ習得
2以上でドリブル+1
パス特訓→10以上でパス+2、「旧地獄の針山」習得
5以上でパス+1、フラグ習得
2以上でパス+1
シュート特訓→10以上でシュート+2、「食人怨霊」習得
5以上でシュート+1、フラグ習得
2以上でシュート+1
*お燐の成長判定には、推理を当てた事に対する判定ボーナス+1がついています。
305 :
森崎名無しさん
:2017/06/28(水) 00:07:51 ID:???
★お燐の特殊スキル特訓→
5
+
2
+(ボーナス+1) =
お燐のタックル特訓→
6
+
6
+(ボーナス+1) =★
306 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/28(水) 00:11:57 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでにします。
次回でさとりの章は終わりとなり、鈴仙の章もリオカップ準決勝・パルメイラス編に入ります。
>>299
乙ありがとうございます。
307 :
森崎名無しさん
:2017/06/28(水) 00:17:46 ID:???
★お燐のパスカット特訓→
4
+
6
+(ボーナス+1) =
お燐のブロック特訓→
6
+
1
+(ボーナス+1) =★
308 :
森崎名無しさん
:2017/06/28(水) 00:39:51 ID:???
★お燐のドリブル特訓→
2
+
5
+(ボーナス+1) =
お燐のパス特訓→
5
+
2
+(ボーナス+1) =
お燐のシュート特訓→
2
+
2
+(ボーナス+1) =★
309 :
森崎名無しさん
:2017/06/28(水) 00:49:20 ID:???
全部5以上で10以上も2つか
良い結果になったね
310 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/28(水) 01:02:30 ID:???
すみません、寝る前に気付いたのですが、
タックルとパスカットについては5以上の結果と10以上の結果が同じになってました。
これでは勿体無いですので、後付けですが、
「お燐はタックル・パスカットについてそれぞれフラグを習得」という扱いにしたいと思います。
大変失礼しました。
>>309
お燐はそもそも勧誘のきっかけになった特訓イベントでも大成長してますし、持ってますね。
バランス良く成長したお蔭で、ことサイド際においては脅威的な存在になったと思います。
311 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/29(木) 23:16:03 ID:???
★お燐の特殊スキル特訓→ 5 + 2 +(ボーナス+1) =8
お燐のタックル特訓→ 6 + 6 +(ボーナス+1) =13★
★お燐のパスカット特訓→ 4 + 6 +(ボーナス+1) =11
お燐のブロック特訓→ 6 + 1 +(ボーナス+1) =8★
★お燐のドリブル特訓→ 2 + 5 +(ボーナス+1) =8
お燐のパス特訓→ 5 + 2 +(ボーナス+1) =8
お燐のシュート特訓→ 2 + 2 +(ボーナス+1) =5★
「ええっと、どうだったかな。練習のし過ぎで何だか記憶が曖昧でして」
「――いいえ、別に言わなくても良いわ。……よく頑張りましたね、お燐」
いや。聞かれた時点でどうやらさとり様の術中に嵌っていたらしい。
まいったな。あんまり努力とか恥ずかしくて嫌いだったから黙ってようと思ってたけど、
心を読まれちゃあ意味がない。
「――べっつに。あたいは、さとり様に置いてかれたくなかっただけです。
いんや、さとり様だけじゃあない。お空も、こいし様も。みーんな、揃いも揃って凄い人達ばかりだもん。
あたいだけが普通の化け猫だったら、何時の間にか、また誰もいなくなっちゃいそうで……」
だったら、先にクソ恥ずかしい本音を口に出しておいた方が、まだ受けるダメージは少ない。
今の自分の顔がどんな状態かは想像したくもないけれど、あたいは久しぶりに、素直な感情を吐露した。
そしてそれを、さとり様はからかう事も嘲笑う事もしない。
「ふふ……大丈夫です。私は最初から分かっていますよ。貴女が笑顔を絶やさないのも、いつも素直じゃないのも。
……怖いのよね? 他者から拒絶される事が、どうしようも無く。
死体を持ち去る忌み嫌われし妖怪が、そうした感情を持つ事の滑稽さは別として。
貴女は誰より、友人を、仲間を。……そして、主を失う事を、恐れている」
「……………」
312 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/29(木) 23:17:31 ID:???
あたいの脳裏に、あの日の事が蘇る。……今からすると大分前、お空が八咫烏の力に目覚めた、あの日の事だ。
神の力を得て、地上を侵略すると公言して憚らない親友を前に、あたいは二つの恐れを抱いていた。
一つは、調子に乗ったお空の悪事がさとり様にバレ、殺されてしまうこと。
そしてもう一つは……仮にさとり様がお空を許したとしても。
この旧地獄で得たはじめての友達が、自分とは、遠い場所に行ってしまうことだった。
「……お燐」
「ええ」
……さとり様は、嫌が応にも人の感情が流れ込んで来るらしい。望もうとも、望まざろうとも。
そして当然、流れて来るのは望まざる感情が多い。だけど……さとり様は、こうも話した事がある。
「貴女は誰よりも軽薄で傍若無人に見えるけれど、本当は誰よりも繊細で仲間想いな子。
……それを知る事ができたのは、私が嫌われ者の覚妖怪だったから。
だとすると。……人の心を読める事も、存外に悪い事ばかりじゃありません」
「……ええ」
ああ、駄目だ。練習結果を報告しただけなのに、最悪にカッコ悪い顔になっている。
――やっぱり、いくら毒舌と皮肉を磨いても。この人には絶対勝てないなぁ……。
*お燐がスキル・サイドプレイヤー(サイド際でボール所有時、全能力+2)を習得しました。
*更に、お燐がスキル・サイドディフェンサーのフラグを習得しました。
*お燐のタックルが+2されました。51→53
*更に、必殺タックル「火焔の車輪」の発動率が1/2に上昇しました。
*お燐のパスカットが+2されました。53→55
*更に、必殺パスカット「ゾンビフェアリーカット」の発動率が1/2に上昇しました。
*お燐のブロックが+3されました。50→53
*お燐のドリブルが+1されました。53→54
*お燐のパスが+1されました。54→55
*お燐のシュートが+1されました。51→52
*お燐がせりあい以外の能力値について、フラグを習得しました。
313 :
森崎名無しさん
:2017/06/30(金) 00:09:57 ID:???
サイドアタックは元からあったし、かなりえぐいことになりそうだな
サイドプレイにおいては
314 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/30(金) 00:58:25 ID:???
――そんな時だった。コンコンと借り住まいのドアが音を立て、ガチャリと開け放たれる。
あたいが慌てて目をゴシゴシ拭うとそこには、二つの人陰が立っていた。
「やっほー、お姉ちゃん」
「どうも」
その二人は……さとり様が自らの試練を乗り越えた証であるとも言えた。
「あら。こいしと……松山君。よく来てくれたわね」
小柄で儚げで愛らしい、しかし一方で目に見えぬ狂気を湛えた少女。
さとり様が愛するたった一人の愛妹――こいし様が、
同じくイングランドで修練を積んだかつての居候・松山君を引き連れてやって来たのだ。
「あれ、お燐って泣いてる?」
そして、思慮深き姉と違ってこいし様は天真爛漫――悪く言えば空気を読まない。
あたいの事なんて放っておけばいいのに、今に限ってそんな事を言って来るんだから。
「あっ、さとりさん。……そのシルバーのネックレス、似合ってますよ」
「…………」
が。こいし様の幼さ故のKYさとは異なる、大人の善意と真摯さ溢れる、成熟し切ったKYがここにもう一人。
オイオイ松山くん。これ、一人称だからこそ敢えて描写しないでおいてあげたんだよ? さとり様の為にさ。
315 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/30(金) 00:59:30 ID:???
「……ええ。どうもありがとう」
さとり様はにべもなく微笑んでいるが、その内心は計り知れない。
……なんせ、今はもう存在しない、『空想上の友人』に贈りたかったプレゼントを、
さとり様はあの試合の日からずうっと、自分のトレードマークであるがごとく大事に身に着けているのだ。
が、松山光のKYっぷりはこんなものではない。
「やっぱり、さとりさんは兄貴の事を好きだったんじゃ……」
「う、うわぁー。会ってから数秒でそんな突っ込んだ会話、良くできるねー」
これには流石のこいし様も苦笑い。若干ドン引きしながら会話に耳を傾けている。
松山君のキックオフシュートに対して、さとり様はどこぞのラブコメ宜しく耳を真っ赤にして――。
「あ、それはないです」
――たりはせず、完全なる真顔で返してみせた。このお方、安易なツンデレほど嫌いな物はないって公言するだけある。
が。そうは言いつつも穏やかに、
「ですが。本来は貴方の中にしか存在しなかった空想上の友人が、幻想として存在して。
そして……幻想と現実の境界が失われた今となっても、妹の能力を媒介して現れて。
その付き合いの中で……あの人の孤独さに惹かれなかったと言えば、嘘になります」
恐らくさとり様なりの、正直な心情を告白してみせる。
こうしてみると、KYと覚妖怪とは相性がいいのかもしれない。互いにヘンな気疲れせずに、本音トークが出来ている感はある。
「俺達はそろそろ、空港に向かいます。……さとりさん達は?」
「ええ。私達も同じ予定です。目的地はブラジルですが」
「やったー! 私、シュラスコ食べたかったんだよねー」
「……こいしは帰りなさい。紅魔館のメイドが、貴女を幻想郷まで案内してくれると言っていたわ」
「ええーっ」
316 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/30(金) 01:00:36 ID:???
とはいえ、松山君達がここに現れたのは、そんな湿っぽい話をする為だけではなかった。
むしろ現実的。幻想郷と外界という隔てはあれども、あたい達4人はイギリスでは珍しい日本人(たぶん)。
お金やら足やら、ここまでの物語と比べたら超絶せせこましい世話の為だけに、一緒に空港まで行こうと言う話だった。
……もっとも、久しぶりに姉と会えたこいし様的には、すぐの別れに納得いかないようだったが。
「分かって頂戴、こいし。何も知らなかった貴女はともかく、私とお燐はかなりの危険を冒している。
もしも私達の身に何かがあれば、お空は、地霊殿は。そして……旧地獄は、どうなるか分からない。
こいし。家で引き籠っていなさいとは言わない。けれど――あなたには、無事でいて欲しいの」
「でも、そんなのつまんないよ。私もお姉ちゃんと一緒にサッカーしたいよー」
それが姉のエゴである事は、さとり様も重々承知だったろう。
そしてそれで簡単に折れるこいし様でもない。が。そんな少し困った空気を打ち消したのは、
「はぁ。……だったら、お兄ちゃんと一緒に日本まで行こうか?」
「うーん……お兄ちゃんがそう言うなら……」
「!?!!!???!」
――意外過ぎる事に、ここに来て以来空気を読めずにいた松山くんだった。
……というか、様子がおかしい。何故こいし様はこの元地獄少年に懐いているんだ?
確かに矢車が実体化したのは、こいし様の能力の影響が強いとは聞いていたけれど。
え? それが何かアレな影響を与えたとか? というか松山君、彼女いるって聞いたけど大丈夫なのか?
「……松山くん? 貴女、ウチのこいしに何を……?」
あたいはさとり様以外に懐かないこいし様が、松山君に懐いているのを驚いていたけれど。
この中でもっとも様子がおかしいのはさとり様である。いや、様子がおかしい理由は明白だけどさ。
これには流石の松山君も危機を察知したのか、
「い、いや。別に。ただ、前の試合の時! 俺の中で兄貴の人格が抜けたと思ったら、そばにはこの子がいて。
それで、色々と面倒を見ている内になんか懐いて……い、イテテテテ!?」
317 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/30(金) 01:01:36 ID:???
慌てて取り繕っているが、時すでに遅し。
「ウフフ……? 如何に鍛えた人間と言えども、鳩尾を鍛える事は出来ませんからね。
どうですか……恐怖のトラウマで、妹を誑かした事を一生後悔させてあげますよぉ……?」
せりあい力55スキル・飛び出し+5保有者のトラウマ攻撃(物理)が、松山君の痛覚を的確に刺激する。
これはヤバい。心が読めるだけに人が痛みを感じる部分についてヤケに詳しいぞこのお方。
引きこもり読書家やめて、プロレスラーに転向できるんじゃないか?
「ひ、ひいいっ! は、話せばなんとかなります、さとりさん! 俺は貴女に返しきれない恩だって……」
「恩があるからこそ、ですよ? さ、次は爪の間行きますよ……」
「そんなァ。俺はただ、光を掴みたかっただけなのにギャアアアアーー!」
……と、ふざけた感想は置いといてだ。こうしてジャレつく松山くんとさとり様を見て、真面目に思う事だってあるのだ。
覚妖怪とKYはウマが合うという持論を述べたあたいだが、更に……古明地さとりと松山光は、似た者同士なのではないか、と。
どちらも互いに一人のヒーローの影を追い求めた、というのあるけれど。
さとり様も松山君も、不器用で、生きづらさを抱えてて、幻想に閉じこもりがちな所があって。
だけどそれでいて、どうしようもないまでの理想家で、努力家で、暗闇に居ながらも、光を掴みたがっている。
あたいには、その生き方はしんどすぎて、到底真似をする事ができない。今あるものを守るだけで精一杯なんだから。
「でも。そうしないと、貴女が遠くに行っちゃうって言うんだったら。あたいだって掴んでみせますよ。
日陰者や嫌われ者には丁度お手頃な。だけど充分眩しい――『白夜の光』ってヤツをさ」
……さとり様が松山くんをシメる事に夢中になっているのをいいことに。
あたいはとてつも無くクサい事を思いながら、今書いているこの手記の筆を一旦置く事にした。
318 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/30(金) 01:02:47 ID:???
かくして、隠者は光を掴み、死を抱く歯車は自らの在り方を見出した。
だが、それは忌み嫌われし二人にとっては始まりにしか過ぎない。
彼女達は空を越え、海を渡り、大地を跨ぎ――そして、迷える少女を照らす光となるだろう。
幻想の友は失せども、その思いは永遠に消えず。
暗い暗い地獄の夢は今、輝ける楽園への礎となった。
〜さとりの章・完〜
319 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/30(金) 01:09:49 ID:???
*****
〜イングランド・路地裏〜
幽香「想像の3割増しには下らない本だったわね。作者のドヤ顔がチラつく、馴れ馴れしくてうざったい文体が気になったわ」
『サトリピア連続殺人事件』と題された自費出版の古本を投げ捨てながら、
退屈そうに風見幽香は路地裏で倒れる男達を踏みつけるようにして歩く。
彼女は全幻想郷選抜メンバーに選ばれながら、紫や変なTシャツを着る謎のコーチの意向により、
イングランドでのサッカー修行を命ぜられていたのだが、
彼女は編入予定だったリヴァプールの選手を軒並み凌辱し尽くした後、
どこのチームにも所属せず、ストリートサッカーでその嗜虐性を満足させる日々を過ごしていた。
咲夜「――こんなところに居たのね。随分と探したわ」
……そして、同じく全幻想郷選抜メンバーに選ばれていたにも関わらず、
レミリアの独断専行により、先んじてイングランドに潜入していた咲夜の目的の一つ。
それこそが、風見幽香とのコンタクトにあった。
幽香「あら。誰かと思ったら懐かしい顔ね」
咲夜「別にそこまで懐かしくは無いと思いますけれど。……失礼。
どうでしょうか。あの時のお嬢様からのスカウトについて、考え直してくれましたでしょうか」
幽香「……ああ。となると、リグルに声をかけていたのも貴女達だったという訳ね。
――で。結論から言うと……下らないわね」
320 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/30(金) 01:10:56 ID:???
両者ともに緊張を緩めず、互いに牽制する様子を隠さない。
一歩間違えれば殺し合いにすら発展しかねない、そんな危うさが二人を包む。
……が。それはほんの一瞬の事だった。そもそも彼女達の目的は暴力的な物では無い。紳士的な「話し合い」だった。
幽香「下らないけれど……。確かに、今の全幻想郷選抜の方が更に下らないかもしれない。
紫は崇高な理念を唱え、幻想郷と博麗の巫女の尊さを訴えるけれど、私から言わせると、空虚すぎる。
昔のあいつは、あんなんじゃなかったわ。
ま、その時点で疑念はあったんだけど……今回の『選手派遣』で、その疑念は確信に代わったとも言えるわね」
咲夜「……と、言いますと?」
幽香「簡単よ。紫はイチャモンを付けて私達を海外に飛ばして修行と言っているけれど。
これは私のようなアウトローな大妖怪を外に追いやり、あるいは庇護すべき相手を人質に取る作戦にしか見えないわ。
より大きな、そして人道に欠く『何か』を為そうとする前段階として、ね」
咲夜「成程。そうであれば私達……いえ、お嬢様と同じ考えに、貴女も至ったという訳ですね。
私達が今もこうして泳がせられているという、最大の不安要素はありますが」
幽香「あら。不安に思っていたの? 私は凄くウキウキする要素だと思っていたけれど。
だって、これがもしも相手のミスであれば、その隙を突いて凌辱できるし。
これがもしも相手の罠であれば、その罠を打ち砕いて凌辱できるじゃないの。どっちに転んでも最高だわ」
その嗜虐性、残虐性を隠さずに幽香は可愛らしく微笑む。
かつて謎の向日葵仮面として幻想郷を凌辱の恐怖に叩き落とした怪物は、自身を蔑ろにする部外者達の乱入に、
密やかなフラストレーションを溜め込んでいたのかもしれない。だからこそ、この局面において、漸く彼女は頷く。
他者に追従する事を嫌い、暴力と支配を愛する究極嗜虐怪物が、吸血鬼風情の考えた計画に乗ろうと決意した。
幽香「……ええ。良いわ。やっぱりその方が面白そうだもの。私も一枚噛ませて貰うわ、あんた達の計画――いえ。
計画と呼ぶにも烏滸がましい。最高につまらない、一夜限りのお祭りにね」
その計画の全貌は未だ知れぬが、彼女が浮かべた最高の笑顔を見ると、
それが少なくとも人間にとって好ましい計画では無い事は、火を見るよりも明らかだった。
321 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/06/30(金) 01:17:16 ID:INDPpa2s
……と、言ったところで今日の更新はここまでにします。
次回からは、鈴仙の章に入りますが、その前にさとりとお燐の最終能力を載せます。
>>313
サイドに居続ける限りでは、お燐は地味に世界最高クラスのプレーヤーですね。
サイド以外でも悪くは無いですが、パッとはしない感じになると思います。
(ちなみにスキル・サイドアタックはスキル・サイドプレイヤー習得時にスポイルされています。もし勘違いしてたらごめんなさい)
【イギリス派遣メンバー 現時点での能力値】
選手名 ド .パ シ タ カ .ブ せ 総 高/低 ガッツ
さとり 49 48 48 48 48 47 55 343 2 / 2 825 セーブ力56
お燐 ..54 55 52 53 55 53 47 369 1 / 2 730
〜必殺技・スキルリスト〜
さとり
パンチング61、キャッチ58
所持中のフラグ:必殺セーブ
光を掴みます!(1/2でセーブ+3(敵リード時はセーブ+4))
スキル・覚妖怪(PA内のシュートについてセーブ・とびだし・一対一+5、読み違え発生しない)
スキル・とびだし+5
スキル・一対一+3
スキル・想起(相対する選手の知り得る技をコピーして使用可。その技に使用するガッツの1.5倍を消費)
お燐
所持中のフラグ:サイドディフェンサー、ドリブル、パス、シュート、パスカット、タックル、ブロック
キャットランダムウォーク(1/4でドリブル+5)
キャッツウォーク(1/4でドリブル+3)
スプリーンイーター(シュート+5)160消費
火焔の車輪(1/2でタックル+3、吹飛2)
ゾンビフェアリーカット(1/2でパスカット+3)
ゴーストブロック(1/4でブロック+4、コーナーキックの時は+6)100消費、
ゴーストタウン(1/4でブロック+6、コーナーキックの時は+8)150消費を習得しました。
スキル・サイドプレイヤー(ライン際に居る時、全能力+2)
322 :
森崎名無しさん
:2017/06/30(金) 02:13:54 ID:???
乙でした
まあさすがに重複したらドリブルがヤバイことになるからね
323 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/01(土) 16:48:00 ID:???
文章パートのみですが、更新再開します。
>>322
乙ありがとうございます。
重複してない現時点でもお燐はかなり強いですし、これで重複だったら流石にヤバいです(汗)
324 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/01(土) 16:49:12 ID:???
−鈴仙の章C− 〜VS パルメイラス〜
〜回想シーン〜
少年にとって、あの年上の女性は憧れだった。日系を思わせる綺麗な黒髪に、ごく薄く日焼けした肌。
全体的に成熟しきった大人の雰囲気を纏っているのに、その瞳は子供のように、あどけなさと好奇心に光っている。
そして何より――彼女は、少年がサッカーに懸ける人生を歩めるに至った、最大の恩人でもあった。
アヤソフィア「……入団テストに落ちそうなんですか。だったら、一緒に練習しましょうか。
今なら、本物のサッカーボールだってあげちゃいますよ」
カルロス「いいの……?」
――少年の名はカルロス・サンターナ。
彼が後にここフラメンゴで才能を開花させ、引いては南米随一の選手になる事を、
この時はアヤソフィアを含め、誰一人として知らない。
アヤソフィア「勿論ですとも、天狗はウソをつきません。
――ただし。一緒に練習をするには、ひとつだけ交換条件があります」
カルロス「交換条件……僕、お金持ってないよ。ここまで来れたのも、今まで頑張って働いて。
父さんと母さんも応援してくれたからだったし……そ、それなのに……もしダメだったら……ううっ」
現に、今のカルロスは自分で話した通り、名門チームの入団テストを受けに遥々上京したが、
夢儚く散りゆく、どこにでも居るブラジルの平均的な少年の一人に過ぎなかった。
正確にはこの時点でもその才能と実力は抜きんでてはいたが、それでも、
早熟ながらその才能を活かしきれず埋没する少年は掃いて捨てる程いたため、彼は特別ではなかった。
325 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/01(土) 16:50:37 ID:???
アヤソフィア「あ、あややややーっ! 泣かないでください泣かないでなーかーなーいーでっ!?
いたいけな子供から金品をせびろうとする程、私も落ちぶれちゃいませんって!
ひいいっ、回りの大人の目線が痛いーっ!?」
周囲のスタッフがアヤソフィアに怪訝な目を向ける中、それを否定するように彼女は続ける。
アヤソフィア「コホン。……で、交換条件って言っても、お金とかじゃないです。
ズバリ、ええーっと、カルロス……くんですか。胸の名札にそう書いてあります。
キミがこのチームに入団した暁には、私の弟くんのオトモダチになってあげてほしい。
――ただ、それだけの事なんですよ」
カルロス「オトモダチ……? 本当に、それだけでいいの?」
アヤソフィア「ええ、そうですよ。というか今日にしたって、私は弟くんのお迎えのために、
わざわざ仕事を切り上げてここに来た位なんですからね」
外見上の年齢よりも幼さを感じさせる、アヤソフィアの悪戯っぽい笑みを見て、
カルロス少年はその警戒心を幾分か和らげていたようだった。
カルロス「うん! わかったよ。僕、お姉ちゃんの弟くんとトモダチになる!」
アヤソフィア「おやおや……入団した暁には、という話だったのに、もう入団できた前提で話してますね?
それだけ前向きなキミなら大丈夫だ。ようし、お姉ちゃんが人肌脱いじゃいますよ!」
そしてアヤソフィアもまた、打算の無い満面の笑みでカルロスに頷き――練習を開始した。
アヤソフィアが準備しておいたボールをひったくると、カルロスは無邪気に問いかける。
326 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/01(土) 16:55:30 ID:???
カルロス「ねえ、お姉ちゃんはの名前も教えてよ!」
アヤソフィア「ええ。私はしゃめ……じゃなくって、アヤソフィアです。
気軽に『アヤお姉ちゃん』とか呼んでくれて構いませんよ?(だったら本名と同じで楽だし)」
カルロス「アヤソフィ……? 何だか、珍しい名前だね。
アヤソフィ……アヤソファ……わかった、アーサーだ! よろしくね、アーサーお姉ちゃん!」
アヤソフィア「う、うえぇえっ? そりゃあ流石に無理がありませんか? っていうかアーサーって男の名前ですし。
私、これでも花も恥じらう乙女なんですけどっ!?」
カルロス「えっへへー。だってその方が面白いじゃん! それじゃ、一緒にパス練習しよう、アーサーお姉ちゃん!」
ダッ!
アヤソフィア「あやや、話を聞こうともしない。全く、これだから子どもは……ぶつぶつ」
子供特有の理不尽で不条理なあだ名に不満を抱きつつも、その顔は素直な笑みを湛えている。
それは、これまでの長い天狗としての生活でも、未だ日の浅いブラジル人としての生活でもする事のできなかった、
彼女にとって貴重で、大切な感情の一つだった。
アヤソフィア「(……でも。これできっと良くなる。カルロス君もそうだけど。
彼がトモダチになってくれれば、アルツール君だって、これまでよりずっと楽しく、サッカーができるようになる筈。
……きっと、こうした方が良いに決まってるわ)」
――アヤソフィアは満足気に頷き、カルロスを追いかけていった。
……この時、彼女はまだ知らない。
自分自身の善意の数々が、後により多くの悲しみを呼ぶ結果へと繋がってしまう事に。
327 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/01(土) 16:56:42 ID:???
〜回想シーン終了〜
カルロス「……あの時の想い出は、俺にとって何よりも尊く、何よりも掛けがえの無いものだった。
結局あれから行えたのは計画的な『練習』ではなく、『遊び』と呼ぶにふさわしいものだったが。
それでも。アーサーお姉ちゃんは、俺にサッカーボールの感覚を教えてくれただけじゃない。
入団テストに合格するため、結果を出す事に焦っていた俺に、
ボールを通して人と人が繋がり合う面白さ……サッカーの楽しさを、思い出させてくれたんだ」
アヤソフィア「……カルロス君はその後のテストで伸び伸びとしたプレーができ、
その才能を如何無く発揮したそうですな。はてさて、私のきまぐれも、案外大したことあるんですねぇ」
鈴仙達プロジェクト・カウンターハクレイの目指す目標:全幻想郷選抜撃破の為の第一歩でもある、
ブラジルサッカーの登竜門・リオカップ。
その準決勝であるフラメンゴの試合が終わり、観客が帰っていった無人のスタジアム。
そこにカルロスとアヤソフィア――そして鈴仙は立ち尽くしていた。
鈴仙「ちょ、ちょっと待ってよ。アヤソフィア……いや、もう面倒だから本名で聞くけど。射命丸!
あんたは、昔にもブラジルに居た事があるの!?」
アヤソフィア「私の事はアヤソフィアでお願いします、鈴仙さん。
詳細は後述しますが、少なくともこの地において、私は射命丸文としてではなく、
アヤソフィアという名のブラジル人として在りたいと思っているのでね」
アヤソフィア――射命丸文が語った内容。自分はかつて、ブラジルの地に来た事があり、
当時のカルロス・サンターナと出会っていたという事実は、鈴仙を驚かせるに充分だった。
そして、良くも悪くも軽薄に見えた彼女の豹変の理由が、その事実と関連している事は明らかだった。
328 :
森崎名無しさん
:2017/07/01(土) 16:58:01 ID:???
なんだ射命丸って案外大したことあるんだな
329 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/01(土) 16:58:34 ID:???
鈴仙「後述って……一体何があったって言うのよ。あんたとカルロス君。そしてブラジルとの間に。
それて、今のあんたの虚無的な態度にも関係してるの……?」
カルロス「……あなたの素性は一旦置いておくとしても、俺も聞きたい。
俺の入団テストの日から今までに、何があった? 何があなたを変えた?
少なくとも、今のあなたは――俺が知るアーサーお姉ちゃんではない」
だからこそ、鈴仙もカルロスも聞きたかった。彼女は今、何を想い、何を目指しているのか。
決して自分の本心を曝さないアヤソフィアの真意を問いただしたかった。
しかし。真剣な表情の二人に反し、アヤソフィアは残酷に嘲笑い、
アヤソフィア「あやや。何があった? と言われましても、それはごくごく明白ですよ? ねぇ、鈴仙さん。カルロス君?」
そう言い放つのみに過ぎない。とはいえ、これには鈴仙も反撃の準備があった。
鈴仙「勿体ぶって話さずとも。どうせアレでしょ?『射命丸って案外大したことなくね?』って皆に言われ続けて、
そのせいで腐ってブラジルでクダ撒いてただけなんでしょ?」
――そもそも、鈴仙は知っている。今でこそ思わせぶりな態度を見せているアヤソフィアだったが、
その恐らくの理由は、極めて陳腐かつ下らないものである事を。そしてここまでシリアスさをかもし出して来た本人すらも、
アヤソフィア「やめろォ!」
――と、綺麗なまでのお約束をもって、自らの手でシリアスをぶち壊してみせる。
鈴仙「……ほら。どーせそれがトラウマで拗らせただけなんでしょ」
アヤソフィア「う、うぐぐぐ……ま、まあそれも若干は否定できませんが! 若干は! 否定できませんが!!」
330 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/01(土) 16:59:52 ID:???
――アヤソフィア、いや射命丸には悪いが場が白けてしまった気がするも、罪悪感はない。
何故なら、もしそれが原因でアヤソフィアが虚無的思考に陥った所で、それは完全に自己責任なのだから。
むしろ、はたてや椛と言った彼女の盟友達は堕落する射命丸を何度も支えて救っている。
そんな彼女達の想いを知って、一時はサッカーへの意欲を復活した時期すらあるのだから、
ちょっとした気の持ちようで再びネガティブに落ちるのは、ますます迷惑である。
鈴仙「まぁ……気持ちは分からなくはないけれど。
別にそういう相談だったら、私だってしてあげられると思うし――」
結論として、フラメンゴ戦でも目立った活躍ができなかった射命丸がゴネているだけ、と判断しかけた鈴仙は、
試合での疲れを癒すべく。そして何だかんだで引き続き仲間であり続けるであろう射命丸を引き戻す為にも、
一旦この場における話を切り上げようとしたのだが。
カルロス「……まさか」
鈴仙「?」
カルロスは今の鈴仙の話を聞いて、笑う事も納得する事もなく思考を巡らせていたようであり
――そして、気付く。彼女が心に頂いた闇の正体と、その深さを。
鈴仙がそこに居る事すら気に留めず、彼女の胸元近くまで詰め寄って、そして……こう話す。
カルロス「……アーサーお姉ちゃん。もしかしてあなたは、復讐を考えているのか。
『案外大したことない』と喚く暴徒の手により、人生を滅茶苦茶にされた、
あなたの義理の弟であり、俺の親友でもあった……アルツールの!?」
これに対し、アヤソフィアは答える代わりに続きを語り始めた。
彼女がサッカーを憎悪し、復讐を決意する事に至るまでの喜劇と
――その喜劇の裏に隠されていた、悲劇的な真実を。
331 :
森崎名無しさん
:2017/07/01(土) 17:05:33 ID:???
(え、シリアス案件?『射命丸って案外大したことなくね?』ってネタにしずらくなるの?(汗))
332 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/01(土) 17:11:23 ID:???
一旦ここまでにします。続きはできれば夜にやりたいです。
システム的なアナウンスですが、このイベント終了後をもって、
リオカップ序盤の鈴仙を支えてくれていたアヤソフィアがチームから永久離脱します。
ただ、これはJOKERが出る級の何かが起きない限りは規定路線として考えていたイベントのため、ご了承ください。
>>328
流石に本家コインブラ君程ではないですが、
かなり大したことある強さになって鈴仙の前に立ちふさがる予定です。
>>331
詳細はネタバレになるので言えないですが、最終的にはシリアスな雰囲気をしたギャグになると思います。
自分としては、シリアスでも最終的にある程度中和されれば、ネタにしづらくなることは無いと思っていますが
この辺りは受け取り方もあるので微妙かもしれません。
333 :
森崎名無しさん
:2017/07/01(土) 18:10:37 ID:???
コインブラもそういえばオールスターもブラジル戦も思ったほど大した活躍をしていなかったような・・・
334 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:31:06 ID:???
更新再開します。
>>333
言われて読み返しましたが、ブラジル戦はまだボールキープ成功してたり、
若林相手にゴール決めたりしてましたがそれでも意外と勝ってなく、オールスター戦は更に活躍が無かったですね…
(特にオールスター戦は)周囲のレベルも高すぎたので仕方ないかもしれませんが。
そしてリーサルツイン前の回想シーンで、コインブラ君とカルロスの練習シーンが描かれてましたが、
それと比べて随分カルロスを幼く描写してしまったかもしれません(汗)
この辺りについては、同年代の男子では無く、年上の綺麗なお姉さんに声を掛けられて緊張した等、
脳内保管して頂ければと思います。キャプ森本スレは読みこんでるつもりでしたが、まだまだ読み込みが足りませんね…
335 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:32:51 ID:???
〜回想シーン〜
ビュンッ! シュンシュンッ、シュパァッ!
アルツール「へへっ、すげーだろ姉ちゃん! 俺の『高速ドリブル』! これさえあれば、次の試合も俺がMVPだよな!」
アヤソフィア「あややっ、そりゃあ勿論。とはいえ、何時だって弟くんがお姉ちゃん的にはナンバーワンですがね!」
アルツール「や、やめろよー。照れるじゃねーか。あはははっ! ようし、次はシュートの練習だ!
ちゃんと見ててくれよな、アヤお姉ちゃん。この俺の『マッハシュート』!」
アヤソフィア「マッハシュート……ああ、例の新技でしたな。期待してますよ!」
貧富の差が拡大しているブラジル・サンパウロ市内の中でもとりわけ薄汚れた貧民街の一角。
忙しそうな労働者達が疎まし気な視線を送る中、アヤソフィアは少年とのサッカーに興じ、ニコニコとした笑顔を送り続ける。
その笑顔の中――彼女は内心で溜息をついた。
アヤソフィア「(はぁ……半分以上は自業自得とは言え。私、何してるんだろ)」
アヤソフィア――射命丸文は、千年を生きた幻想郷の鴉天狗であるが、
その年齢に反して、少なくとも組織内では順風満帆とは言えなかった。
アヤソフィア「(はぁーあ。ブラジルで政変があった。日本。ひいては幻想郷の経済にも影響を及ぼす可能性がある、よ。
そんなモン、影響あるわけないじゃない! 上の方々は、とりあえず『何かやった感』を出して、
アリバイを作っておく事に必死なんだろうけどさ……)」
336 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:34:28 ID:???
根は生真面目で融通が利かず、組織の和に従ってはいるが上には決して媚びを売らない。
天狗にしては珍しいタイプの彼女は、『特命任務』と称し、必要なのかどうか分からない業務に従事させられる事が多かった。
彼女が今こうして、11歳の少年と戯れているのも、その業務の一環だった。
アヤソフィア「(『アヤソフィア・アントゥーナ・コインブラ。18歳。病気がちの養父と、
未だ幼い弟の生活費を稼ぐために新聞配達とバーのアルバイトをこなす傍ら、
ジャーナリストを目指して写真と記事を編集社に寄稿しては落選している。』
……何なのよ、この設定)」
幻想郷を離れた外の世界には当然、天狗など存在しない。
万一存在したとしても、幻想が科学によって否定されたこの世界において、
幻想郷の内部と同じような神通力を発揮できる訳がない。
このブラジルの地において、誇り高き天狗である射命丸は、その設定通り、
ただの18歳の人間の小娘として、情報を仕入れ大天狗達に報告せざるを得なかった。
アルツール「くらえ、『マッハシュート』!」
グワァァッ! バギュウウウンンッ! キラキラキラッ……シュンッ!
アヤソフィア「なにィ!? ボールがきえた!?」デデデデデン!←2の初マッハシュートの時の演出SE
……そのため、彼女は『設定』に準じる必要がある。そうでなくては怪しまれ、
怪しまれれば自らを守る術はなく、自らを守る術がなくては、他に守ってくれる者もいないからだ。
アヤソフィアは弟思いの姉という設定に忠実に、楽しげに笑いながら弟のサッカー遊びを見守っていた。
337 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:36:59 ID:???
アルツール「……なあ、アヤお姉ちゃん。俺、スーパーストライカーになれるかな。親父が昔そうだったみたいにさ」
アヤソフィア「ええ。勿論できますとも。私が仕込んだ『高速ドリブル』も、『スピードタックル』も。
弟くんはあっという間にモノにしてしまいました。……この年齢で、です。
きっと、10年後……ううん、それよりもっと早くには、間違いなくプロ入りしてるでしょう」
アルツール「あたり前だっての! その位じゃねーと、むしろプロじゃやってけないぜ!」
アヤソフィア「おやおや頼もしい。ですがそれも、きちんとした日々の努力あってこそ、ですよ。
そうでなければ、折角の才能も台無しですから」
アルツール「それも分かってるってば! んもー、お姉ちゃんまで親父と同じ事ばかり言うんだからな!」
幻術をもって、ごく平凡な貧しい家庭に紛れ込んだアヤソフィアだったが、
偶然にも、この家庭が特別なものであった事を悟ったのは暫くしてからだった。
アヤソフィア「(伝説のスーパーストライカー・ジャイロ……そして、その養子アルツール。
彼らのサッカーに関する素養は間違いなく最高であり、天才的。
それこそ、人間の身でありながら鬼や天狗の域にまで達し得る程に)」
アヤソフィアの養父という設定の壮年男性は、現在こそは体調を崩しがちではあるが、
かつては国内きってのストライカーであり。そして、その養子もまた、彼の教えの元で高い基礎能力を有していた。
天狗としての能力の殆どを失いつつも、足の速さには自信のあったアヤソフィアだったが、
それを自慢した数日後、アルツールはその足の速さを活かしたプレーを全て自分の物にしていた。
338 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:38:13 ID:???
アルツール「――俺。アヤお姉ちゃんにはホントに感謝してるんだ」
アヤソフィア「……あや?」
――ある日、強気な彼が珍しくそう漏らした事がある。
この奇妙な姉弟関係が始まってから、恐らく数か月程が経った頃だろうか。
その日は確か、フラメンゴのデンチ・デレイチ部門の入団テストを翌日に控えた日
――つまり、アルツールがフラメンゴのデンチ・デレイチに入団してから、1年が経とうとしていた時だった。
アルツール「……俺、チームに入ってばかりは、全然サッカーが楽しくなかったんだ。
皆、俺がうますぎるからって、化け物を見るような目で見てさ。
友達も一人も出来なかったし、それに、上手くできても誰も褒めてくれなかった。
親父は居たけど、体調を崩しがちだったからグラウンドまでは来てくれなかったし」
アヤソフィア「(そう……でしたね)」
アヤソフィアは良く知っている。この家の養女として彼と初めて出会った時の寂しい瞳を。
望まないにも関わらず他者から疎んじまれ、友人を失い続けて来た、人を信じる事のできない孤独な光を。
そんな彼と、上司から疎まれ閑職を強いられる自分とに、都合の良い共感を覚えただけだったのかもしれないが。
――彼女は、何時の間にか、設定ではなく心から、アルツールを弟として案じるようになっていた。
アルツール「だけど。アヤお姉ちゃんが来てからは変わった。相変わらずチームの皆とは上手くいかないけれど。
でも、サッカーで上手く行ったら、誰よりも喜んでくれたし、上手くいかなかったら一緒になって悲しんでくれた」
アヤソフィア「上手くいかなかったとき……ああ、先月の試合でしたか。確かにあの時は、失敗が多かったですねぇ」
339 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:39:54 ID:???
アルツール「アイツら、その時はもっと酷かった! 普段は俺が上手くて文句を言うくせに、いざ失敗したら馬鹿にしやがる!
『アルツールって案外大したことなくね?』って笑って来やがるんだ! 本当に殴ってやろうかと思った!」
アヤソフィア「でも、それで殴らなかった弟くんは立派でしたよ? 私は腹が立って『やめろォ!』って連呼してましたけど」
アルツール「ハハハ……。でも、俺が殴らなかったのは、そうやってアヤお姉ちゃんが代わりに怒ってくれたからだよ。
自分は一人じゃない。誰かが自分の傍に居てくれるんだって。
……そう思うだけで、サッカーが楽しいって思えるようになれた。本当だよ。
あと、お姉ちゃんが親父の面倒を見てくれるお蔭で、体調も良くなったって言ってたし。
今度の試合があれば、自分も俺の活躍を見に行きたいって言ってくれた!」
アヤソフィア「(本来、この少年と私は関わりあう事は無い。彼は現実に生き、私は幻想に生きる身だから。
もしも、私という幻想が無ければ、彼はきっと潰れていたかもしれない。いや、彼だけじゃない、彼の養父も……。
――だから、これはきっと、良かった事なのよね)」
そして、アルツールもまた、アヤソフィアの影響を受け、本来の真っ直ぐで素直な少年へと戻りつつあった。
彼の才能への妬みからくる陰湿な虐めは続いていたが、それを理由をサッカーを嫌いになり、
力を得る事に対し虚無感を抱くような事態にはならないでいた。
アルツール「明日、入団テストなんだ。……俺と同い年や年下、ひょっとしたら年上の奴が、
新しくチームに入ってくると思う」
アヤソフィア「入団テスト、ですか。弟くんは、去年のテストで合格したから……後輩ができるんですね?」
アルツール「後輩とか、そんなんは関係ないって。実力があるヤツが無いヤツよりも上ってだけで、
年齢は、デンチ・デレイチとかジュベニールとかを分けるだけでしかないし」
アヤソフィア「うーむ。そんなもんなんですねぇ」
アルツール「そんなもんだって。シロートは口突っ込むんじゃねえよ。
そもそもデンチ・デレイチって言っても一言では言えなくてだな……」
340 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:41:10 ID:???
年頃の少年らしい生意気な口調で、アルツールはアヤソフィアにブラジルサッカー界について
講釈を垂れようとしている。本当はアヤソフィアも事前知識として仕入れている情報が多かったのだが、
寡黙だった彼が、熱っぽく好きな事を話している横顔を見ていると、止める気がしなくなっていた。
アルツール「……って事だから、プロって言っても大多数は上手くいかないんだ。
勿論、俺はその中でスーパーストライカーになってみせるけどな」
アヤソフィア「ふふ。……そうですか。期待していますよ
(流石にその頃には、私も任務完了で幻想郷に戻っていると思うけどね……)」
アルツール「お、おう……」
アヤソフィアは少しだけ寂しそうに微笑むが、アルツールは気にしていないようだった。
いや……正確に言えば、これまで色々と話しているのも、気にしている別の『何か』を、意識して隠しているようだった。
そして、これまでの短い姉弟関係からでも、アヤソフィアはそれが何であるかを理解していた。
アヤソフィア「……トモダチ、出来ると良いですね」
アルツール「……んなっ! そ、そんなの何も思ってねーし!!」
――純粋な悪戯心から、その内容を呟いてみる。明らかに顔を真っ赤にした事から、図星のようだった。
341 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:42:43 ID:???
アヤソフィア「あやや、そんなに恥ずかしがる事じゃあないですよ。トモダチってのは大事なモノですから。
共に同じ道を行き、途中で道を違えても互いを尊重し合い。例えぶつかり合う事があろうとも。
最後にはきっと、必ず同じ頂を仰ぎ見る事ができるような。
……そんなトモダチが、弟くんにも出来ればいいなって、お姉ちゃん思いますよ?」
アルツール「できねーよ、そんなモン……」
アヤソフィア「あれあれ? 何を根拠にそう『できない』って決めつけてるんです?
『できない』って決めつけるのはザコの特徴って言ってたのは、どこのどなただったかしら?
ねぇねぇ、未来のスーパーストライカー様はご存じですかー?」
アルツール「……う、うるさいうるさい! 当たり前だ! トモダチの一人や二人くらい、作ってやらぁ!」
大人ぶる事が多いアルツールだったが、やはりこの辺りは年相応の子どもだ。
アヤソフィアは噴き出すのを堪えながら、よしよしとアルツールの頭をくしゃりと撫でてあげて。
アヤソフィア「それなら安心ですな。明日は迎えに来ますから、是非とも紹介してくださいね?
弟くんの、はじめてのオトモダチ」
アルツール「お、おう! そんなの楽勝だっての、いちいち頭撫でんじゃねー!」
強がる弟の幸せを純粋に願いながら、明日の入団テストの会場へと向かうのだった。
新しいオトモダチと一緒に使える、新品のサッカーボールを鞄に詰め込んで。
この日からすぐに、アヤソフィアは知る事になる。彼に初めてのオトモダチが出来た事を。
彼が真に心からサッカーを愛する少年へと生まれ変わった事を。
342 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:43:56 ID:???
そしてアヤソフィアは知らずして、勅命により幻想郷へと戻る事となり。
――奇しくも再び訪れたブラジルの地にて遅れて知る事となった。
彼が、その愛するサッカーにより、奪われてしまったという残酷な事実を。
上司の勅命により、アヤソフィアがブラジルから幻想郷に戻ってから2年後。
政争鳴り止まぬ国内においては日常茶飯事であるため、小さくではあったが、
新聞各社はこのような見出しの記事を書いていた。
「フラメンゴの天才サッカー少年、暴徒に押され交通事故! 重体となり意識回復は絶望的」
343 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:45:44 ID:???
〜回想シーン終了〜
カルロス「……あまりに忌々しい記憶だったから、俺はずっと口に出さないようにしていた。
サンタマリアは勿論、ジェトーリオですらも、この事は話題に上げた事がない。
だが、俺は知っている。……アルツールは――俺の親友は、アーサーお姉ちゃんが言う、
『案外大したことなくね?』というフレーズと共に、奪われたと」
アヤソフィア「――私がそれを知ったのは、つい半年前。二度目の機会としてブラジルに訪れた時の事でした。
6年前、突然の勘当という体で飛び出した私の真意を、ジャイロさんと弟くんは
気付いていたのかもしれない。もしそうなら、もう一度会いに行きたい。
そう願って懐かしのスラム街を抜けた先にあったのは、既に売りに出された廃屋でした」
鈴仙「…………」
アヤソフィア「『あの天才のアルツール君の事だ、きっと既にトッププロ入りして、高級マンションにでも住んでいるに違いない』
『惜しくもサッカーを諦めて、その代わり安定した職を見つけて細々と働いているに違いない』
『もしや、ホームレス寸前の生活をしながら、賭けストリートサッカーと無銭飲食で食いつないでいるのかもしれない』
――調べれば調べる程、私の都合のいい幻想は消え失せていきました。
まず、フラメンゴにもどこのチームにも、アルツール・アンチネス・コインブラという選手は所属していない。
サンパウロ市のどこの企業にも、同名の職員は勤務していない。
浮浪者や好ましくない連中にすら聞いてみましたが、彼という痕跡はどこにも見当たらなかった。
その中で見つけたのが、アルツール君が試合に負けて暴徒化したファンと揉み合いになり、
交通事故に遭ったというニュースでした。……今も、市内の病院で植物人間状態となっています」
カルロス「………………」
その事実を改めて確認し、表情を一層暗くしたのはカルロスだった。
彼は一歩前に躍り出て、半ば懇願するようにアヤソフィアににじり寄り、
カルロス「アーサーお姉ちゃん。もしあなたが弟を失った事への復讐を望んでいるとしたら。それは俺に対してやってくれ!」
344 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:47:49 ID:???
土下座に近いポーズすら取って這い蹲り、カルロスは涙でフィールドを濡らす。
サッカーサイボーグとすら呼ばれ、冷静で大人びた立ち振る舞いが特徴的なカルロス・サンターナらしからぬ、
気弱で、孤独で、自信の持てない平凡な少年のような仕草だった。
アヤソフィア「……記事には、『同年代での1位を決める重要な試合で、エースストライカーの選手がミスを連発。
それに対して『案外大したことない』と煽り立てる一部のファンに対し、アルツール君が『やめろォ』!
と、噛みついた事により、事件が起きた』と書いてあります。――カルロス君。貴方の事だったんですね」
カルロス「そうです! だからアルツールも……アーサーお姉ちゃんも誰も悪くない!
無論、一番悪いのは暴徒と化したファンだったとしても、……失敗をしたのは俺なんです!
だから、もうそんな冷たい瞳をするのは止めてほしい!!」
全てのプライドをかなぐり捨ててでも泣きはらすカルロスに対し、アヤソフィアは――。
アヤソフィア「大丈夫ですよ。カルロス君は何一つ悪くありません。全力を尽くしたって、失敗する時だってありますし。
それで私が、貴方がしくじったせいで弟くんが事故に巻き込まれた、だなんて言う訳がないでしょう?
むしろ、感謝さえしています。
……フラメンゴでずうっと、弟くんの――アルツール君の親友として居続けてくれたのですから」
――と、恐らくは過去に良く見せていたのであろう、柔らかく穏やかな笑みを浮かべた。
想定していなかった反応に対し、カルロスは一旦冷静さを取り戻す。
カルロス「……では、当時のファンを憎んでいる、と? 確かにあの一件がショックとなり、
アルツールの養父も体調を大きく崩し、昨年には亡くなってしまったが……」
アヤソフィア「ファンの方も、仕方ありません。好きな物を全力で応援したい気持ちは分かりますし、
もう既に遺族への謝罪や賠償など、然るべき措置は取られたと記事にもありました。
それ以上、私刑を加える気もありませんよ」
カルロス「……分からない。では一体、アーサーお姉ちゃんは何を恨んでいるんだ?
ずっとブラジルに居れない事情があったとはいえ、どうして今になってさえ、そんな暗い瞳をしているんだ!?」
345 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:49:47 ID:???
鈴仙「………あんた、まさか」
――カルロスとアルツールを巡る過去については何も言えない鈴仙だったが、
会話が核心に近づくにつれ、自分の知る情報と、最近のアヤソフィアの影とが、
これまで提示された過去と組み合わさり、パズルのようにピタリと当てはまる感覚を覚える。
鈴仙「……あんたはこれまで、『案外大したことない』などと馬鹿にするファンの心無い感情を浴び続けて来た。
日本で。幻想郷で。ブラジルで。自分自身に対して。自分以外の人に対して。
マイナスの感情が理不尽に叩き付けられる光景を、何度も見続けて来た!」
アヤソフィア「………」
今度はアヤソフィアが黙る番だった。彼女は小さく頷き、鈴仙に続けるよう促した。
鈴仙「でも、あんた自身に掛けられる声については、あんたは仲間の手を借りながらも乗り越えて来た。
だけど、ブラジルの地で、あんたはこれまでを超える、どうしようも無い理不尽を知った。
辛い目に遭いながらもサッカーを愛し続けた少年が、サッカーが引き起こした感情に殺された事実を知り。
根は生真面目なあんたに、黒い決意を抱かさせるに至った。つまりそれは――」
ここで、アヤソフィアが手を翳して制する。
鈴仙が続けようとした目的の正体を、アヤソフィアは自らの口で語った。
アヤソフィア「……そう。全ての元凶は、『サッカー』というスポーツがあるからこそ起きた。
サッカーさえ無ければ、才能と愛を併せ持つ者が虐げられる事がなく。
そして、理不尽な罵声も、理不尽な暴力からも逃れられるのです。
私は、『サッカー』そのものを憎みます。愛を向ける者に対して唾を吐き、愛無き者への暴力を促すサッカーを。
私は、この手で葬り去ろうと考えているのですよ……!」
346 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 01:54:19 ID:???
射命丸が虚無系ラスボスに良くある「皆死ねば救われる」的な発言をしたところで、今日はここまでにします。
明日には練習の選択肢に入れると思います。文章が長くなってしまいすみませんが、読んで頂ければ幸いです。
(突っ込み所は多々あると思いますが、その辺りは優しく笑って下されば幸いです(汗))
本日もお疲れ様でした。
347 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 10:59:28 ID:???
カルロス「サッカーそのものを、この手で葬り去る……!?」
――傷つきながらもサッカーを愛そうとした少年への仕打ちの原因を、
アヤソフィアは短絡的に特定個人によるものと考えていなかった。
彼女は、サッカーというスポーツ。22人の人間が球を蹴り合うという行為そのものが、
人を狂わせ傷つける全ての元凶であると信じきっていた。
鈴仙「そんなの……狂ってる!」
意味も解らず鈴仙が叫ぶ通り、彼女のそうした思考は狂人のそれであった。
アヤソフィアが、射命丸が体験した出来事については理解したし、そこで抱いたであろう感情も共感できた。
しかし、最後の結論だけが、どうしても理解できない。そんな鈴仙に、アヤソフィアはおどけた態度を取る。
アヤソフィア「あれ? 理解できませんかね? 鈴仙さんだったら、私が言ってることも、
感覚的に理解できると思ったのですが。だって……ホラ。感じませんでした?
リオカップ開会式で、試合後で発生した膨大な数の観衆の狂気を。
単なるスポーツに熱狂し、人生を賭け、そこで散る事すら良しとする少年達の狂気を!
貴女の瞳が、それを『視て』来たのではないですか? 狂気、感じるんでしたよね?」
鈴仙「――そ、それは……!」
しかし、その中で彼女が語る内容は、鈴仙にも心当たりがあった。
リオカップだけではない。先の全幻想郷選抜大会でも、
サッカーによる同じような感情のうねりを――狂気の渦を目の当たりにした。
そしてそれは、鈴仙が捉えきれる範囲すら越え、月の狂気を呼び起こし、
最後には――幻想郷を隔てる結界すら破壊してみせた。
348 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 11:00:37 ID:???
アヤソフィア「貴女が永琳さんからどのような説明を受けてるかは知りませんが。
経験則として、こと人間の狂気程危うく、制御できないものはありません。
そしてサッカーという場は、人間の狂気を殊更に増幅してしまう。
――であれば、こうしたものを放置しておくのもおかしいでしょう?」
カルロス「だ、だが。サッカーを通して救われる人も大勢いる! 俺もそうだった!
そして……あなたが誰よりも愛したアルツール自身がそうだったんじゃないのか!
もしもこの世からサッカーが無くなれば、一番悲しむのはあなたの義弟だ!」
たじろぐ鈴仙に割り込んだのはカルロスだった。彼は狂気の概念は分からないにしても、
少なくとも今のアヤソフィアを見て、アルツールが喜ぶ訳がない事は理解していた。
しかし、そうした呼びかけは彼女としても想定内だったのだろう。
アヤソフィアは少しだけ表情を曇らせつつも、
アヤソフィア「……ええ、そうでしょうね。ですが――もう決めたのです。
彼が悲しもうが、私は、サッカーを滅ぼさなくてはならない、と。
そうでなければ、彼のような悲劇は永遠に繰り返されるでしょうから」
と、改めてその狂った計画に殉ずる事を決意した様子で頷く。
アヤソフィア「――さて。私のお話はこれでおしまいです」
スッ……。
カルロス「ま、待ってくれ! まだ疑問は沢山ある! どうしてそこまで頑なになる必要があるんだ!
そもそもどうやって、サッカーという世界中で流行しているスポーツを滅ぼそうと思っているんだ!
それに、それに……!!」
追いすがるカルロスの手を払いのけ、アヤソフィアは一点だけ答える。
349 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 11:02:08 ID:???
アヤソフィア「前者についての回答はパスで。しかし、後者について。
――私がどのように、サッカーを滅ぼそうとしているのかについては、お答えしましょうか。
……私は次の幻想スーパーJr.ユース大会で、ブラジル代表として出場します。
そして、ブラジル代表を優勝へと導きたいと思っています。
これにより、私はサッカーが滅んでいくものと確信しています」
鈴仙「?? ブラジル代表が優勝すれば……」
カルロス「サッカーが、滅ぶ……? 一体どういう事だ! 俺達をからかっているのですか!?」
アヤソフィア「今お答えできるのはこの程度。
鈴仙さん。今日を機に私はチームを去ります。楽しかったですよ、貴女がたとの友情ごっこ。
カルロス君。同じブラジル代表として、また貴方とサッカーができる日を楽しみにしてますよ。
……あはははっ。あははははははははっ!」
スッ……。
そうして、アヤソフィアは消えた。まるで蜃気楼のように、始めからここに居なかったようにすら思える。
カルロスは彼女のその見えない背中を追うように走り続けて……。
カルロス「どうして……どうして、こうなってしまったんだ……!」
――と、悲しく項垂れる事しかできないでいた。
350 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 11:04:47 ID:5lYnVivE
鈴仙は、そんなカルロスに対し……
A:「カルロス君。……アヤソフィアの野望は、止めないといけないわ」カルロスに奮起を促す。
B:「アイツは……多分まだ迷ってる。そんな気がする」アヤソフィアを案じる。
C:「アルツール君が入院している病院、紹介してくれないかしら」アルツールが気になる。
D:「やれやれ。サッカーで世界を平和にするって、コーチと約束したんだけどなぁ……」自分語りする。
E:「そもそもアイツの能力と性格でブラジル代表ってムリなんじゃ……」正論(?)を言う。
F:その他 鈴仙に言わせたい事があればどうぞ
先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。
*選択肢上、明確なメリット・デメリットはありません。気軽にロールプレイして頂ければ幸いです。
*一旦ここまでです。投票が入っていれば、続きは夕方〜に開始したいです。
351 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 11:11:56 ID:DIDH0ey+
C
えーりんなら治せるかもだし
352 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 11:12:37 ID:z8oHNFjw
C
353 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 12:28:17 ID:m7R/IVps
E
354 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 18:13:05 ID:5lYnVivE
C:「アルツール君が入院している病院、紹介してくれないかしら」アルツールが気になる。
鈴仙「――そうだ」
鈴仙はアヤソフィアが言っていた内容を思い出した。
アルツールは今も市内の病院で植物人間状態――ならば、まだ彼は死んでいない。
鈴仙「ねぇ。良ければアルツール君が入院している病院、紹介してくれないかな?」
カルロス「……え? あ、ああ。構わないが」
思い立った鈴仙は泣きだすカルロスを強引に引っ張り、
スタジアム沿いの道路に停まっていたタクシーを捕まえて案内させる。
鈴仙「状態によっては、だけど。何か治せる方法があるかも……」
カルロス「治せる、だと……? しかしあいつはもうこの方5年以上も目を覚ましすら……」
鈴仙「良いから。……それに、カルロス君だって心配なんでしょ、アルツール君の事も」
カルロス「それは……当然だ。今でもオフの日は見舞いを欠かしていない。しかし何を突然……」
相次ぐ出来事に混乱を隠せないカルロスを尻目に、鈴仙は聞き取った病院名を運転手に告げ、
なけなしのお小遣い全額を押し付ける。リオカップの有力選手二人、しかも男女が同じタクシーに
同乗する事についてスキャンダラスな興味を抱かれる恐れはあったが、
たまたま運転手はサッカーへの興味が薄い老人であった事が幸いし、何の詮索もなく、
鈴仙達は病院へと向かう事ができた。
355 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 18:15:36 ID:5lYnVivE
〜サンパウロ市内・病院〜
その病院の環境は、鈴仙の想像していた以上に劣悪だった。
医療器具の不備不足は勿論、感染管理についても理解が乏しい様子が見受けられ、
病院は病院でも、野戦病院のようだと鈴仙は感じた。
カルロス「……日本では、誰もが安価で高品質な医療が受けられるんだろう?羨ましいよ」
そう呟くカルロス。話を聞くと、アルツールの養父が残した蓄えのお蔭でここまで持ちこたえられたが、
その蓄えも間もなく底を尽きるため、こうした『安い』病院を選ばざるを得ないという。
カルロス「……纏まった金が入ったら、俺がこいつの治療を引き継いでやろうと思っている。
しかし、金があっても、今度は入る病室が無いかもしれない。
ブラジルは経済成長こそ確かだが、一方で医療や福祉の確保はまだまだだからな。
――いずれにせよ。もう、時間が無いのかもしれないな……」
鈴仙「カルロス君……」
ガチャリ。
アルツール「……………」
カルロス「よう、遅い時間に悪かったな」
果たして、間仕切りはおろか窓すら無い、8人部屋の病室の隅っこで、アルツールは眠りに就いていた。
長年日の光を浴びていないからか、肌の色は褐色というよりは青白く。
そして少しでも衝撃を与えれば折れてしまいそうなまでにやつれていた。
鈴仙「バイタルサインは……呼吸のみ、眼球も反応せずか。徐脈は……無く、一応は安定している……」
永琳仕込みの医学知識を呼び起こし、時には無気力な看護師や宿直医師にも問い合わせ、
鈴仙はアルツール少年が置かれた状況を診断しようとする。
356 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 18:16:45 ID:5lYnVivE
カルロス「驚いたな。まさか医師としての知識まであるなんて。
まるでロベルト本郷と同世代で活躍した名FW・ドトールみたいだな、君は」
鈴仙「ありがとう。でも私はまだ研修医扱いだし。それに……アレとは一緒にされたくないし」
カルロス「?」
その様子に改めて目を丸くするカルロスだったが、彼が引き合いに出した相手が、
今やコリンチャンスのセクハラコーチと堕してしまっている事には気付いていないようだった。
鈴仙は若干顔を渋くして。しかし一方で彼の医師としての能力を知るが為に、こう続けた。
鈴仙「――カルロス君。私は二人の名医を知っている。
もっとも、一人の本職は薬剤師で、かつ今すぐには会いにいけないし。
もう一人は今すぐにでも会いにいける……カルロス君の夢を壊すリスクはあるけど。
とにかく。アルツール君の状態が、今のままで安定するようであれば。
……彼が目を覚ます為に何か、できるかもしれないわ」
カルロス「……だ、だが。確かに事情を知ってしまったとはいえ、半ば部外者の君に、
そこまでさせる訳には――」
鈴仙「いいの。私がやりたいんだから。それに……サッカーがきっかけで知り合った私達が、
サッカーを信じ続けて倒れたアルツール君を助ける、ってなったら。
あの謎思想を押し付けて来たアヤソフィアを悔しがらせられるかもしんないし」
カルロス「悔しがらせる……そうだな。それに、俺では力が無くとも、こいつが目を覚ませば、
アヤソフィア……アーサーお姉ちゃんも、正気を取り戻してくれるのかもしれない」
357 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 18:17:49 ID:5lYnVivE
鈴仙の提案は、カルロスにとってその内容はさておき、とても有り難い物だった。
しかし一方で、優等生的な彼は、彼女がここまで尽くしてくれる事について負い目を感じていた。
無論それがサッカーの試合等で左右する事にはならないにせよ、彼としてはその思いに応えたかった。
カルロス「分かった。君のその他者に尽くす精神を尊重しよう。
だが――俺は手放しで誰かの助けを受けたくはない。……そうだ」
もっとも、フラメンゴを離れてコリンチャンスに入る……と言った事まではできないが、と
冗談っぽく笑みを浮かべるカルロスは、確かに鈴仙の想いを受け止め、
そしてアヤソフィアを巡る自身の気持ちを整理する事ができているように見えた。
やがて実直に述べた彼は……思いついたように、病室の机の引き出しを開け放った。
そこには、何度も捲った後で擦り切れた、ボロボロのノートがあった。
カルロス「……これは、俺とアルツールが少年時代、一緒にボロボロになるまで読みふけったノートだ。
アルツールが敬愛して止まなかった養父――ジャイロが、俺達の成長の為にと
効率的な練習メニューやここぞという時の精神論を書き留めてくれたんだ。
これを――君への敬意と友情を記す為に、貸そう」
鈴仙「え……えええっ! ジャイロって……どこかで聞いた事があるけど、確か、
ブラジルの伝説のストライカーだったって話の、アレでしょ!? そんなの、貰えないよっ!?」
カルロス「バカ、誰もあげないよ。……あくまで『貸す』だけだ。俺も昔、アルツールからノートを貸して貰った。
そして内容を全部暗記するまで読みまくってから、返した。それと同じ事をするだけさ。
……もしもアルツールに意識があって、君の事を聞いていたなら、きっとそうするだろうからな」
恐縮する鈴仙に、カルロスは続ける。
358 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 18:19:24 ID:5lYnVivE
カルロス「……それに、少なくとも小さい頃の俺は、アルツールの養父を畏怖なんてしなかった。
だって、そうだろう? サッカーの上手い親友の家のお父さんは、もっとサッカーが上手かった。
それで、俺とアルツールが切磋琢磨して上手くなる姿を、いつもニコニコして眺めてくれていた。
たった、それだけの人だったんだ。だから、俺にとってこのノートは、あの伝説のストライカー・ジャイロの遺品ではなく。
俺とアルツールの、友情の証とその軌跡に過ぎないんだ。それに――ノートを見てごらん、レイセン?」
鈴仙「え、ええ……って、ううー、ん……」
そして、促されるがままにノートを開いてみた鈴仙は……先程は別ベクトルに驚いてしまう。
鈴仙「――この内容。ごくごくフツーの事しか書いてないじゃない。
基礎を怠るな。強い心を持て。サッカーは自由だ。
……てっきり、メチャクチャ凄い必殺シュートの打ち方でも書いてあるかと思ったのに」
カルロス「そうだろう? だけど、このノートには特別な熱意が。そして、息子への愛情があった。
だから俺はこのノートが好きだったんだ」
――それは。ごくごく平凡なサッカー好きの父親が、息子の為に書いた練習ノートと大差が無かった。
強いて違う所をあげるとしたら、それはまさにカルロスが言った通りで。
そのノートには、普通の父親の何倍も何十倍も、息子を愛している事が伝わっているという所だった。
カルロス「体調を崩しがちだった義父さんだったが、俺がフラメンゴに入ったばかりの時期は安定していた。
恐らくは、アーサーお姉ちゃんが相当に健康に気を配っていたからだろう。
アルツールを失い倒れた時も、『倒れるのがもう数年前でもおかしくなかった』と医師は言っていたからな。
だからこそ、俺は、アーサーお姉ちゃんにもう一度、あの時のように戻って欲しいと思う。
そしてお礼を言いたいと思う――できれば、アルツールと二人でだ。
『あなたのお蔭で、サッカーの道を迷わずに歩いていけました』、
『あなたのお蔭で、掛けがえの無い少年時代を過ごす事ができました』……ってな」
359 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 18:20:45 ID:5lYnVivE
鈴仙「…………」
もしもアヤソフィアが居なければ、今の素直で実直なカルロスはいないかもしれない。
もしもアヤソフィアが居なければ、アルツールは父の愛情を充分に受けられなかったかもしれない。
――そう思うと、鈴仙は純粋に彼女を憎めなかった。
カルロス「……さて。ここまで話を出来たのは久しぶりだ。そして、ここまで話をしたからには、
君は俺と同じように、このノートを丸暗記するまで読んで貰う必要がない。そして」
短い身舞いの帰りに、カルロスは鈴仙にこう注文を付けた。
カルロス「――きっと、このノートは返してくれよ? 俺では無い。目を覚ましたアルツールにな。
その後で、4人でサッカーを楽しもう。俺と、君と、アルツールと。……アーサーお姉ちゃんとだ。良いな?」
鈴仙「……うん」
はにかみながらも頷く鈴仙に、カルロスは子供っぽく片目を瞑って応じた。
*友情のノートの効果により、次回基礎練習時の判定時にボーナス(+! card※フラグ開発時は+! dice)が入ります。
360 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 18:24:29 ID:5lYnVivE
<<<鈴仙の章C・基礎練習フェイズその1>>>
鈴仙「……カルロス君が貸してくれたノート。確かに私も好きだったなぁ。
何だか読んでると、暖かい気持ちになれるというか。
私もこれから、もっと頑張ろう! って気持ちにさせてくれたというか。
ようし! 次の試合に向けて伸ばすべき能力は、っと……!」
今回重点的に鍛える能力を選んで下さい。カッコ内は現在の能力値です。
A:ドリブル(55) とても上がりにくい
B:パス(54) 上がりにくい
C:シュート(55) とても上がりにくい
D:タックル(52) 上がりにくい
E:パスカット(52) 上がりにくい
F:ブロック(47) 上がりやすい
G:せりあい(53) 上がりにくい
H:フラグの開発をする。(更に選択)
所持中のフラグ:ドリブル(15/20)、低シュート(10/20)、タックル(10/20)、
スキル・アリスさん操作(特殊)
先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。
*友情のノートの効果により、次回基礎練習時の判定時にボーナス(+! card※フラグ開発時は+! dice)が入ります。
361 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 18:31:18 ID:???
…と、いったところで外出するので一旦ここまでです。
少なくとも練習判定は今日の夜やりたいです。
今回練習にボーナス効果が入りましたが、この選択肢だけが当たりではなく、
他の選択肢を選んでいた場合でも、何かしら同等のプラス要素がある予定でした。
>>351
選択肢を出した当初、永琳の事をあまり考えてませんでした(汗)
Cの場合、治るか否かは今後のストーリー展開のため置いといて、
ここではアルツールとカルロス(&ジャイロ)との絆を重視した描写&イベントとしました。
362 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 18:57:58 ID:1EucIqXA
H
363 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 18:58:03 ID:7fzGgIWw
H
364 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 19:48:52 ID:6kj18eR+
C
365 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 19:58:56 ID:???
鈴仙は試合でフラグ回収しても能力上がらなかったと思うし
補正があるタイミングで上がりにくいシュートをトップクラスにもってくのに挑戦したほうがいいかと思ったんが
確実に効果があるフラグを優先したかな?
366 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 20:07:36 ID:???
低シュートのフラグですけど、38スレ516で14ポイントになりましたけど、何かの理由で減りました?
367 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 20:19:14 ID:???
あっ、ノート補正があるのは今回じゃなくて次回なのか
んじゃ、次回はシュート狙うかな
368 :
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 20:33:08 ID:???
出先ですが取り急ぎ修正を。
補正が入るのは記載ミスで、今回の練習時です。
また、低いシュートフラグは14ポイントが正しいです。
もしも投票変更ありましたら、22時まで受け付けます。
大変失礼いたしました。
369 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 20:53:06 ID:1EucIqXA
Cに変更します
370 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/02(日) 22:02:06 ID:5lYnVivE
C:シュート(55) とても上がりにくい
鈴仙「今なら私もなれる気がする。伝説のスーパーストライカーに……!」
先着1名様で、
★鈴仙のシュート練習→! card+(ボーナス効果+! card)★
と書き込んでください。数値・マークで分岐します。
JOKER→+1&必殺フラグ習得!(フラグがある場合は回収)
10〜13→+1!
1〜9→効果が無かった。
*! cardの値が14以上の場合は、13として扱います。
*ただし、二回目の! cardでJOKERが出た場合は、JOKERを有効として扱います。
371 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 22:07:59 ID:???
★鈴仙のシュート練習→
スペード4
+(ボーナス効果+
ハート5
)★
372 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 22:09:56 ID:???
すまねぇ……すまねぇ……
373 :
森崎名無しさん
:2017/07/02(日) 22:23:22 ID:???
カードやダイスばかりはしょうがない
374 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/03(月) 00:57:49 ID:Bsj7oxKE
★鈴仙のシュート練習→ スペード4 +(ボーナス効果+ ハート5 )=9★
鈴仙「くらえっ、マッハーシューットッ!」
バシュウウッ……ぽすんっ。
鈴仙「あれ、違ったかな。くらえっ、マッパシュートッ!」
バシュルルルル……ぱすんっ。
反町「(鈴仙さんが子どもみたいに必殺シュートの練習してる……見ちゃいけなかったかな)」
鈴仙は童心に帰ってイキイキとサッカーを楽しめたが……イキイキと楽しめただけだった。
*効果がありませんでした。
375 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/03(月) 00:58:50 ID:Bsj7oxKE
*****
鈴仙がコリンチャンスのクラブハウス(という名のボロ酒場)に戻って来たのを迎え入れたのは、
珍しくあまり酔っぱらっていない雰囲気の老コーチ――
先程カルロスも憧れの選手として名前に挙げた往年の名FW・ドトールことヒポクラテス氏だった。
彼にアヤソフィアがチームを離れる事となった経緯を話すと、「そうか。やはりそうじゃったか」と訳知り顔で頷くのみであり。
加えてアルツールの体調管理を依頼しても、鈴仙のお尻を無駄に3回程触っただけで、すぐに快諾してくれた。
アリスさん「しかし解せないわね。この手でサッカーを葬り去る……一体、何を考えてるのかしら」
てゐ「ま、どーせブン屋の事だしキテレツな策だろうね〜」
佳歩「でも、なんか射命丸さん、かわいそう……」
つかさ「強者の成功に嫉妬する事も、失敗を嘲笑する事も、決して良い事ではありませんが。極端すぎます……!」
静葉「サッカーの終焉を願う……これって、終焉を司る神でもある私のシェア食いつぶしに来たのかなぁ〜?」チャキッ
穣子「ブン屋さんってあー見えて子どもとか妖精が好きだからなぁ。大切にしてた子が酷い目にあったからって、
そう考えちゃう気持ちもわかるかも。あとお姉ちゃん死なないでぇー!?」
反町「(射命丸さんか。同じチームだけど、あまり付き合いは無かったな。
――いやでも、穣子さんと付き合ってるって発表した直後だけはしつこかったか)」
鈴仙の仲間達も、アヤソフィア――射命丸文を巡る事情については様々な感想を抱いてはいたが、
とはいえ、そこから自分達が具体的に何が出来るのかも見えて来ない。
もしもここに彼女の親友達――姫海棠はたてや犬走椛が居れば、その心情も推し量れるのだろうが、
それも敵わない事であり、やがて会話は立ち消えに終わった。
376 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/03(月) 01:00:13 ID:Bsj7oxKE
鈴仙「ともかく結局は。私達は次のリオカップの準決勝――パルメイラス戦に備えて無心に準備をするしか無い、ってワケね。
魅魔さんの情報によると、さとりさんとお燐が明日には合流できるって言うし……また、連携を整えていきましょ」
……しかし。鈴仙も歩けばトラブルに当たる。一難去ってまた一難とも言わんばかりに、
鈴仙は今、リオカップともアヤソフィアともプロジェクト・カウンターハクレイとも全く絡まない、
別の新たな問題に巻き込まれていた。それは―――。
*****
〜サンパウロ市内・超高級ホテルの超高級レストラン〜
ネイ「どうしたんだい、仔兎ちゃん? 今日という場は全て、君の笑顔の為にあるんだ。
どの料理もどの酒もお勧めさ。何故なら、俺がこれまで
468
人の女性ファンとデート
……いや事前調査をした結果、この店で喜ばない子なんて居なかったからね」
鈴仙「そ、そうっすか……(――いやいや、なんなのよこのレストラン!?
なんで皆揃ってスーツだのドレスだの着てるのよ! いや私もドレス着せられたけどさ!?
というか何でメニュー表に金額が書いてないのよ!? これじゃワリカンとかできないじゃん!?
馬鹿なの? 死ぬの!??!?!?)」
――鈴仙・優曇華院・イナバ。XX歳。彼氏いない歴=年齢。
彼女は、リオカップ準決勝戦を前にして、人生(兎生?)初のセレブデートを享受するハメになっていた。
377 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/03(月) 01:01:22 ID:Bsj7oxKE
店員「お待たせいたしました。『フランス産フォアグラのテリーヌ トリュフとブッフサレ、
リ・ド・ヴォとレンズ豆のガトー仕立て』でございます」
鈴仙「は?! え、今何って……? え、照り焼き? ブックオフ? ガトーショコラ?」
ネイ「落ち着きな。この位の料理だったら、俺がトッププロに契約出来たら、何時でも食べられるようになるさ。
……そうだ。この日を二人の記念日にするのはどうだい? いや、難しいかな。
君に纏わる事を全て記念日にしていったら、毎日が記念日になっちゃうからさ」
鈴仙「いやいや何勝手に話を進めて……あ、ごめん喉乾いたから水飲むわね。ごくごく…ぷはー」
店員「お、お客様。それはフィンガーボウルでございます……」
鈴仙「え? フィンガーフレアスパークズ? 魔理沙の新技?」
――そして案の定と言うべきか。竹林出身の田舎っぺ鈴仙は、
高級ホテルにおいてテンプレート的に慌てっぷりを見せ、テンプレート的な失敗を繰り返す。
が。鈴仙をこの場所に誘った張本人は決して嫌な顔一つせず、
むしろ純朴な少女を愛らしいと言った視線で見つめ続けている。
ネイ「まさか本当に、君と一緒にこの店に来れるなんて……夢みたいだ。
ああ――心配しないでくれ。君と出会ってから、全てのファンとは関係を切ったよ。
いや……切らざるを得なくなった、というべきだろうか。
何故なら、君のように可愛くてひた向きで真っ直ぐな子が傍に居るのに、
他の軽薄な女に興味を持つなんて、豚や馬に欲情するよりも困難なのだから」
鈴仙「……(こいつのボキャブラリー、凄いわね……ここに来てからずうっと私を口説き続けてるのに、
私が話さない限り、一瞬たりとも言葉を切ろうとしない)」
378 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/03(月) 01:03:41 ID:Bsj7oxKE
――ファビオ・デルネイ・フロレンシオ。愛称はネイ。
パルメイラスでも、いや、ブラジル国内の同年代でも一の女好きとして知られる彼が、
鈴仙を初めて口説こうとした時、それは大多数の美女・美少女のうち一人としてでしか過ぎなかった。
しかし、彼女が必死な表情で自軍の鬼監督に詰め寄ったり、
リオカップで数々の活躍を挙げる姿を見る内に、真剣に鈴仙という女性が好きになった……というのが、
ここに来てから手を替え形を替えで100回は聞かされたフレーズである。
鈴仙「(あーあ。最近は街中で顔を合わせるたびにナンパしてくるモンだから、
つい一回OKしちゃったけど……まさか、初っ端からこんな店に連れられるなんて)」
――無論、鈴仙とて異性からここまでチヤホヤされる経験はなく(中山とパスカルは真面目過ぎた)、
素敵な薄紫色のドレスをコーディネートしてくれたり、ブラジル国内だけでなく、
世界的にも高評価を得ているシェフが居るレストランを案内してくれたりと、
まさしくお姫様待遇をしてくれるのだから、しかもネイは悔しいながら美少年なのだから、
満更では無い気持ちもあるにはあった。しかし、そういう理屈で片づけられる問題ではないのだ。
鈴仙「(もー無理無理無理かたつむり! なんか背中がムズムズするっ!
なんかもう、色んな要素が私にとってハードル高すぎるんだってばー!?)」
結論から言って、鈴仙には経験値が圧倒的に不足していた。
男子から言い寄られる経験も、男子と二人切りで(サッカー以外の)トークする経験も、
高級ホテルで恋の駆け引きをする経験も、全てが足りなさ過ぎた。
ネイ「レイセン……浮かない顔をしてるね。迷惑だったかい?」
鈴仙「え、えーっと……(どうしよう。ネイ君は決して悪いヤツじゃないと思うんだけど。
それでも、いちいち会う度にここまでされるのもむず痒いって言うか……。
何とかならないかなぁ。どうにかして、ご遠慮してくれないかなぁ……)」
379 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/03(月) 01:05:04 ID:Bsj7oxKE
ブラジル中のネイファンが聞けば嫉妬で憤死しかねないような内心を抱きながら、
鈴仙はネイに対して、こう口火を切った。
A:「迷惑じゃないけどさ。何だか、どーしても緊張しちゃって……」とりあえずはぐらかす。
B::「わ、私達。出来ればこれからもずっとオトモダチって事で……」やんわりとフる。
C:「デートに誘うのは良いけど、もっと段階ってのがあるでしょうに……」説教系女子。
D:「迷惑に決まってるでしょ。私はこんなの望んでないってば!」キレる。
E:「ご、ごめんね。私もネイ君と一緒にこんなお店に行けたのが嬉しくて……」謎の求愛。
F:その他 鈴仙に言わせたい事があればどうぞ
先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。
380 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/03(月) 01:13:01 ID:Bsj7oxKE
……と、いったところで今日の更新はここまでです。
今回の選択肢も特段アタリハズレは無いので、気軽に投票して頂ければ幸いです。
今後の予定としては、ネイとのデートイベント(兼鈴仙の成長イベント兼パルメイラスの選手紹介イベント)
を後2〜3回の更新で行い、それが終わってから、いよいよパルメイラス戦のオーダーに入っていく予定です。
>>372-373
確率は上がりましたが、それでも失敗率もそこそこあるので、
この辺りはしょうがないと思うしかないですね。
鈴仙の成長に関するイベントはまだありますので、また引いて頂ければ幸いです。
381 :
森崎名無しさん
:2017/07/03(月) 01:14:11 ID:8SVka/56
A
乙なのです
382 :
森崎名無しさん
:2017/07/03(月) 10:22:09 ID:tUfYpEiA
A
383 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/04(火) 01:04:41 ID:gSZK2rBM
A:「迷惑じゃないけどさ。何だか、どーしても緊張しちゃって……」とりあえずはぐらかす。
――嫌ならハッキリとそう言うか、そうでなくてもやんわりと意思を示せばいいのに。
鈴仙は不器用な事に、そのどちらも出来ない類の少女だった。
鈴仙「い、いやー。迷惑とかじゃないのよ? でもさ。ホラ、私って永らく貧乏暮らしだったから……。
こんなホテルのレストランなんて来た事ないし。どーしても緊張しちゃうって言うか……」
ネイ「なんだ、そうだったのか。ごめんよ俺のシンデレラ。
でも今夜は真夜中の鐘が鳴っても、決して帰しはしないぜ?
――もっとも、そうしたらあの監督にシメられるどころじゃ済まないんだが。
いやでも! 君の為なら俺は死んでも良い!」
鈴仙「(ひいい……なんかますます目が熱くなってる。私はそんなに安い女じゃないのよぉ……・?
――と、兎に角とにかく話題。話題を……共通の話題を見つけないと。……そ、そうだ!!)」
ネイは鈴仙のウブな態度にますます惚れ込んでしまったようで、
発言がますます詩的かつ過激になっていく。これは流石に困った鈴仙は、
鈴仙「そ、そーいえば! ネイ君って、暫くの間あの森崎君と一緒に練習してたのよね!?
どんなんだったか教えて欲しいなぁー……なんて」
384 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/04(火) 01:06:15 ID:gSZK2rBM
咄嗟に浮かんだ話題――かつてネイ達のチームメイトだったらしい森崎の事を聞いてみるが。
ネイ「……………」
――その話題はネイには強すぎたのか、彼は今度は一転して押し黙ってしまった。
だがしかし、落ち着いて考えればそれも仕方がない。
森崎は、高い野心を胸にこの地にやって来て、ネイを始めとするパルメイラスの仲間と交友(?)を深め。
……そして、夢半ばにして失踪してしまったのだから。
森崎と近しかったと聞くネイが気分を損ねてしまう事は仕方がない。
鈴仙「――ご、ごめんなさいっ! 私、緊張してつい、聞いちゃいけない事を……!」
鈴仙は咄嗟にネイに謝った。幾らこちらがデートに辟易していたとはいえ、
それでも少年のデリケートな部分に触れても構わない訳がない。
ネイ「……モリサキ、ね。確かにアイツは、思い出の彼方に消えるような、どうでも良いヤツじゃなかった。
ああ、レイセン。大丈夫さ。それじゃあ……話でもしようか。
ある日突然日本からやって来て、全てを手に入れようとして――結局、途中で消えちまったヤツの話をさ」
しかし、鈴仙の想像に反してネイは強かった。
むしろ、鈴仙への愛の言葉を囁く事以上に、森崎の事を語りたいと思っているようだった。
鈴仙「(もしかして。ネイ君は……ううん、パルメイラスの皆はまだ、乗り越えられていないのかな。
居た期間は短かったとしても、きっと彼らに大きな影響を与えた、森崎君の事を)」
385 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/04(火) 01:08:18 ID:???
ネイ「そうだな。じゃあまずはアレから話すか。突然前監督と交代で赴任して来た鬼監督、エベルトン・レオン!
チームメイト達を牧場の豚扱いするヤツに対し、我らがモリサキはルール3を早速適用!
見事な雷属性の左で監督を血の海に沈め……」
鈴仙「いやいや、血の海って流石にウソでしょ!?」
ネイ「あー、そんな気もするな。じゃあこれはどうだ? 大人気アニメ・ドラゴンスフィアの伝道師!
チーム内の紛争をアニメで解決する、まさしくクールジャパンを体現したモリサキは……。
――おっと、これはウソじゃないぜ? 大マジさ」
鈴仙「へぇー。単なる暴君って訳じゃあなかったんだ……」
幻想郷に居る時、中山はいつでも熱っぽく森崎の破天荒さ、理不尽さ、そしてその魅力について語っていた。
短いブラジル生活で森崎が築き上げた武勇伝を語るネイの姿に、そんな中山の姿が重なる。
鈴仙「(でも。これはネイ君だけじゃない。きっと他のパルメイラスのメンバー達も一緒……)」
ネイやパルメイラスのメンバーは、恐らく、かつての中山や南葛SC・南葛中学のメンバーのように、
森崎の生き方に触れ、そして様々な影響を受けたのだろう。
……その生き方を肯定できるか否かや、その影響が良かったのか悪かったのかについては、
議論の余地が多いに生じ得ることは一旦保留としても。
鈴仙「(このブラジルの生活は、そうした意味では、森崎君の影を追う旅なのかもしれない。
中山さん以上に強い力と強い意志を備え、周囲の世界を想うままに変えていった、『主人公』。
私はそんな風になれる気はしないし、なりたくも無いけれど。
……でも、これもまた、未来の私の力になるような気がする)」
ネイ「まぁ、当然ながら誰もが皆アイツの事が好きな訳じゃない。当然反対の声も挙がる。
しかしヤツは話し合いや融和などしない。入団後も、暴力による実力行使でGKを従えて……」
ネイによる『キャプテン森崎』の物語は続く。
鈴仙は、改めてその大きな流れに身を投じるような気持ちで、彼の勇気と狂気に触れていった。
386 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/04(火) 01:10:16 ID:???
――と、いったところで短いですがここまでです。
次回更新では、何か判定や投票まで出来ると思います。
>>381
乙ありがとうございます。
更新ペースは依然早くない&参加部分少なくすみませんが、
気長に読んだり参加して頂ければ幸いです。
387 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:12:15 ID:???
*****
――そして、楽しかったディナータイムはアッという間に終わり。
鈴仙とネイはサンパウロを流れる心地よい夜風に当たっていた。
ネイ「あー、楽しかった。……どうだった、レイセン?」
鈴仙「え、う、うん。まぁ……後半は悪くなかった、かな」
森崎に纏わる話題を皮切りに、ネイは少しだけ落ち着きを取り戻したようであり、
また鈴仙の方もネイに対する不要な偏見が取り払われたお蔭か、
その後はごく普通にホテルでの会話を楽しむ事が出来ていた。
鈴仙「(ネイ君って、本当にどうしようもないナンパ野郎だと思ってたけど。
意外と頭が良くって話が面白いし。それに、サッカーに対しては、
中山さんやパスカル君にも負けてない位の熱さを感じたし……普通に良いヤツ、なのかも。
――って、ダメダメダメッ! こーやってギャップを見せつけて頭の弱い女子をコロっと落とすのが
チャラ男の常套手段だって姫様がいつも言ってたじゃない!!)わ、私は騙されないわよ……!」
ネイ「え? 何がだい?」
鈴仙「何でもありませんっ!!」
388 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:13:27 ID:???
――が、それを素直に受け止めたら負けだと思った鈴仙は首をブンブンと振って冷静になり、
ネイを睨み付けてやる事で心の均衡を得ようとする。……傍から見ると挙動不審この上無いのだが。
しかし細かい事は気にしないか俺に惚れてるサインとみなすネイは全く悪びれる様子もない。
ネイ「――さ。夜も遅い。今から俺がとっておきの場所を案内するよ」
鈴仙「!? あ、あんた……私をどこに連れてく気なのよ……」
ネイ「? ……とっておきの場所はとっておきの場所さ。――大丈夫、君もきっと気に入るさ」
鈴仙「……それで連れて来た場所がロクでも無い場所だったら、
軍仕込みのマーシャルアーツで背骨折るから。容赦なく」
夜も更ける中、ネイのとっておきの場所とやらはどうみても怪しい。
しかし一方で彼の良い点も見えて来た為に断り辛く、
鈴仙は取りあえずネイが招き入れる場所へと行ってみる事にしたのだ。
その場所は――。
389 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:14:36 ID:???
〜パルメイラス・スタジアム〜
ネイ「さあ、着いたよ」
鈴仙「ここは……パルメイラスの練習場じゃないの」
ネイが案内した場所は確かに怪しくない場所だったが、ある意味ではロクでも無い場所とも言えた。
サンパウロの夜景も見えず、あるのはナイターの光だけの荒涼とした芝の平地。
普通の女子がここに案内されたとして、大舞台に来れたという高揚感こそあれど、
男の魅力無しに、この場所そのものをロマンティックに輝かせる事は困難だろう。
鈴仙「――へぇ。やっぱりサンパウロの名門チームだけあって、良い環境で練習してるのね。
羨ましいわ。私達だなんていっつもスラム街のド真ん中で練習してるから、
怖いお兄さんには睨まれるし、酔っ払いにはゲロを吐かれるし……」
ネイ「(コリンチャンスも、一昔前は名門チームだったんだがな……というか、
別に弱小チームでも普通はそんな劣悪な環境に置かれたりはしないぞ……)」
しかし、これまで短くない間サッカーに情熱を捧げて鈴仙にとっては話が別だ。
ネイなどいなくても、自分自身でこの場所に立つ事の価値を考え、感じる事が出来る。
鈴仙「……ネイ君も、他のメンバーの皆も、この場所で自分達の全てを賭けて戦ってるんだよね」
ネイ「ああそうだ。プロという華やかな舞台に登り詰める事が出来るのは、俺達のほんの一握り。
そして、その華やかな舞台で主役として活躍出来るのは、ほんの一握りの中の、更に一握り。
――いや、一つまみと言った方が良いかな。そんな厳しい世界に生きてるんだ。俺達はさ」
鈴仙「そっか。そう……だったよね」
390 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:15:36 ID:???
勿論、俺は一つまみの方だけどね、と調子良い笑みでネイは重苦しい雰囲気を吹き飛ばす。
しかしそれだけで、ネイは鈴仙の感情を否定したりはしない。
鈴仙「……ごめんね。ちょっと身内で色々あったり、森崎君の話を聞いたりしてたら、
思う所があってね。……なんか、私はまだまだ甘いなぁ、って」
ネイ「良かったら、聞かせてくれるかな? 君の助けになれるなら、俺は何だってやりたい」
鈴仙「――大した話じゃないけど。ただ……このブラジルの地に来て思った事があるのよ。
皆、サッカーに対して命を賭けてるって。サッカーに対して全力で生きてるってさ」
ホテルではあれだけ雄弁だったネイは、今は黙って鈴仙の話を頷いて聞いている。
鈴仙は彼が作り出した心地よい沈黙に甘え、少しずつ言葉を紡ぎ出す。
鈴仙「私が元々住んでた幻想郷では、皆がサッカーを楽しんでいたけれど。
……でも、『楽しんで』いただけだった。サッカーなんてしなくても食べていけるし、
逆に、サッカーだけに生活を賭けてる人なんて、どこにも居なかった」
ネイ「(日本にはプロリーグなんて無いからなァ)……ああ。モリサキから聞いてる。
でも君はその中でサッカーを必死に頑張って。それで、ここにやって来たんだろう?」
鈴仙「うん。皆にバカにされたくない。憧れてる人と肩を並べたい。そんな思いで必死だった。
それで私は上手くなれたけど……でも、それは特別でも何でもない、ごく当たり前の事だって。
ブラジルで一生懸命サッカーをしている皆の姿を見て、気付いたの」
391 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:16:51 ID:???
ネイ「……そうか」
これまでの激しい戦いを前に。倒れ行くライバル達の姿を前に。
サッカーを憎み、滅ぼすとさえ言い放ったかつての仲間の背を前に。
それでもなおサッカーの可能性を信じ、奇跡を信じようとした少年の笑顔を前に。
そして――近くに居ながらも道を違え、全てを拒絶して切り刻もうとする、不器用な親友を前に。
鈴仙は改めて思い悩んでいた。――果たして、自分の覚悟は本物なのか、と。
鈴仙「……師匠は言った。『サッカーで、世界を滅亡から守って欲しい』と。
コーチは言った。『サッカーで、世界を平和にして欲しい』と。
だけど……今の私には、他の皆と比べて特別強い想いは持ち合わせていない。
そんな私が、これから戦えるのかな……って。不安になっちゃって」
ネイは、そんな鈴仙の真剣な悩みに対して……
ネイ「ああ……やっぱり君は俺の考えていた通りの、いや、それ以上に高貴なるプリンセスだっ!」
鈴仙「――は?」
一度は収まった筈の興奮を再び取り戻して、そう熱く宣言してみせるのだった。
ネイ「なんていじらしいんだ。君は誰よりも真面目で勤勉で一生懸命なのに、
そんな自分を常に厳しく律し、より強くなろうとしている。それだけじゃない。
周囲の人間の美点を誰よりも上手く感じ取って、周囲をより良くする為奔走する事ができる。
なのに! 君はその自分自身の良さを誰よりも分かっていない。
……ううっ、いじらし過ぎるよ、レイセン。これじゃ俺が守ってあげないとダメじゃないか!?」
392 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:17:58 ID:???
鈴仙「え、あ、おにょい!?」
――だが、これにはネイも言い分がある。しんみりとした様子となった鈴仙を見て、
一旦は聞き上手にその悩みを聞いてあげようと思ったところ、
彼女のあまりにいじらしい様子に堪らなくなって、狂気に当てられてしまったようにも見える。
ネイ「ああ、ほんっとーにごめんよ! でも、見て居られなかったからさ。
――敢えて言うけど。レイセン。君はやっぱりちょっと、悩み過ぎだと思うぞ」
鈴仙「私……悩み過ぎ? そう、かな?」
しかし、それでもネイは思う。鈴仙は悩み過ぎだと。彼女は確かに真剣に考えているが、
その真剣さが何時でも功を奏すとは思えないと。
ネイ「そうさ。君が言ってる事が的外れってワケじゃない。俺は確かに一生懸命サッカーしてるし、
君にももしかしたら、俺より思いが劣る所があるのかもしれない。
だけどさ。それを気にしてどーすんの? っての!
金だと栄光だの女だのの為に戦ってる奴は、真面目な理由で戦ってる奴よりも弱いかい?
必ずしもそうとは限らないだろう?
結局は。どんな理由であれ、『ここぞという場面で動けるか?』ってのが大事だと思うぜ!」
そのため、彼は鈴仙の心配を、敢えて軽薄な言葉で笑い飛ばす事で拭ってあげようとした。
鈴仙も、重い気持ちが消える訳ではないにせよ、彼の言葉の真意を掴み。
393 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:19:58 ID:???
鈴仙「……そう。そうよね! だってネイ君が私みたいに殊勝な事、考えてるワケないでしょうし。
どーせ女の子にモテる事とかしか考えてないんでしょ?」
ネイ「だからそれはもう昔の話だよ! 今の俺は君だけなんだ、信じてくれよ〜」
鈴仙「ふんだ、誰が信じますか! っていうか、信じたところで私はアンタに靡かないけどね。
私にデレ期はないっ!!」
――と、いつも通りの態度で突っ返してやるのだった。
鈴仙「(私は考えすぎ……か。でも――確かにそうかも。
だって、ネイ君はやりすぎだとしても、マジメマジメだと疲れちゃうし。
そんなんで疲れて、試合で動けないのはもっと最悪だしね)」
ひたすらストイックに自身を省み続けて、傷つきながらも道を切り開き続ける中山。
幅広い視点から全ての可能性を探り出し、ブレずに『誰か』の為に努力し続けるパスカル。
――彼ら二人の背中は間違いなく、鈴仙を大きく成長させる為の礎だった。
では、中山の努力やパスカルの献身すら笑い飛ばし、ただこの瞬間自分がどう在るべきかを追い求めるネイは、
鈴仙にとってどのような影響を与えただろうか?
394 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:22:10 ID:???
鈴仙「(昨日やら今日は色々あったけど……なんだか、ネイ君を見てたらどうでも良くなって来ちゃった)」
夜のスタジアムで、鈴仙は片付けられずに転がっているボールを見つけた。
鈴仙「(『ここぞという場面で動けるか?』――か。私は……どうなんだろ)」
タタタッ、……シュッ。
ネイ「……?」
ドレス姿のまま、おもむろに走り出した鈴仙は――そのボールを足でトラップしてみる。
そこから、何も考えない無心の動きでボールを軽く浮かせてみた上で。
鈴仙「…………」
クルンッ! ――グワァァァァァッ!
そのまま、ボールを遠くまで蹴り出そうとしてみた。
何の感情も無く。ただ、自分がそうしたいと思うがままに。
ネイ「(あのフォームは……もしや!?)」
395 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:23:22 ID:x31yx7A+
そして――。
先着1名様で、
★鈴仙の低シュート練習(特殊)→! dice+(ボーナス+1)★
と書き込んでください。数値の合計が経験点にプラスされます。(現在14ポイント)
*合計点が20ポイントを超えた場合、鈴仙はフラグを回収します。
396 :
森崎名無しさん
:2017/07/05(水) 00:30:13 ID:???
★鈴仙の低シュート練習(特殊)→
3
+(ボーナス+1)★
397 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:42:10 ID:x31yx7A+
★鈴仙の低シュート練習(特殊)→ 3 +(ボーナス+1)=4★
→4ポイント獲得!
バシュッ! ギュルルルルルルルルッ……
鈴仙「あ、あーあ……どっかに飛んでっちゃった……」
ネイ「(ダメだったか。まあ流石に思いつきだけで、俺の『ディレイドスピンボレー』の原理まで
真似されちゃあ、それはただの天才か)……ドンマイ、レイセン。
惜しくも枠外までぶっ飛んじまったけど、今の君のフォームは力が抜けてて良かったぜ?」
――人間気の持ちようとは良く言われども、気の持ちようが変わっただけで即急成長するものではない。
あくまで、日々のちょっとした積み重ねが重要なのは変わりない。
鈴仙「……今日はありがと。森崎くんの事とか、色々考えてた事とか話せて良かった」
だから、鈴仙はネイに感謝をする。今この場で結果こそ出せずとも、
自分の新たな道について自信とひらめきを与えてくれた事に対して。
ネイ「……どうも。次はエンゲージリングを準備しておくから、楽しみにしておいてくれ」
同時に、ネイは鈴仙を理解する。彼女がこれまで抱えて来たものの大きさを。
そしてそれを昇華させたとき、彼女は更にワンランク上の選手となるだろうと。
彼が最後に発した言葉には、普段の単純な色恋とはまた違う、好敵手に対する情愛の念が籠っていた。
*鈴仙の低シュートフラグのポイントが+4されました。(現在14→18/20ポイント)
398 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 00:44:13 ID:x31yx7A+
……と、言ったところで今日の更新はここまでにします。
次回は極力手短にパルメイラス勢の特徴を紹介+基礎練習2回目を更新し、
次々回以降は試合に入りたいと思っています。
本日もお疲れ様でした。
399 :
鈴仙奮闘記
◆85KeWZMVkQ
:2017/07/05(水) 23:43:09 ID:x31yx7A+
*****
??「――フられたな、ネイ」
ネイ「……なんだよー、見てたのか」
鈴仙が帰った(護衛など不要な事を、彼女は自分の洗練された体術で証明してみせた)
後のスタジアムに居たのは、ネイ一人だけではなかった。
トニーニョ「……『よもや夜練習をサボって、女子とデートでもしてないだろうな?』
と思って居た所に、まさかその女子を連れて来るとまでは予想が付かなかったが」
ネイ「あーもー。だから前からずっと言ってるじゃん。レイセンは例外だって!」
トニーニョ「俺は前から聞いているんだがな。……まあ、お前があの子に熱を上げる理由なら、
分からない事もないのだがな」
そこに居たのはネイの親友にしてパルメイラスのキャプテン――アントニオ・コンセイソン。
トニーニョの愛称で親しまれる彼は不愛想なしかめっ面でネイを睨み付ける。
オルヘス「そうだぜ! ま、その位大胆な方がお前らしいけどな」
……いや、居るのはトニーニョだけではなかった。
どうやらネイがスタジアムに来た頃を見計らって、一斉にベンチ裏に隠れていたらしい
彼のチームメイト達は、ぞろぞろとトニーニョの後ろから現れて、ネイに一言ずつ声を掛ける。
素直で直情的な性格のFW・オルヘスが一番先に出て来て。
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