キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【道は】鈴仙奮闘記41【違えど】

1 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2017/11/05(日) 20:32:29 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで世界を救う為に努力する話です。
他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆
【不屈の心は】鈴仙奮闘記40【この胸に】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1500215667/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html

☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠に並ぶ名選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。
彼女は永琳の庇護下で実力を大きく伸ばし、幻想郷中の勢力が集まった大会でMVPを勝ち取った!
しかしその夜鈴仙は、自身の成長は永琳の計画であった事、その計画の副作用で
月に眠る大いなる厄災――「純狐」が八雲紫の身体を乗っ取り目覚めつつある事を明かされる。
そして、鈴仙は永琳に懇願される。「純狐」の純粋なる狂気を止めるべく、
次に紫が計画した大会――『幻想スーパーJr.ユース大会』に優勝し、世界を救って欲しい……と。

鈴仙は戸惑いつつも、永琳の願いを受け入れ、
幻想郷の秩序の変革を狙う新チーム・リトルウイングズの一員として、大会に優勝することを誓った。
その後、修行のため鈴仙は単身ブラジルに渡り、様々な困難や出会いを経験しつつも、
イギリスで闇を乗り越えたさとり達の活躍もあり、リオカップの準決勝・パルメイラスに見事勝利した。

またその頃、イタリアではパチュリーと慧音が、互いにハイレベルな選手を目指すべく研磨を重ねていたが、
些細な事で対立。その時、慧音は一時ではあるが、豊聡耳神子の計画『ハイパーカンピオーネ』の一端に触れ、そして気付く。
これまで第三局として表だった対立を避けていた彼女達の陰謀が、今や決して無視できない物になっていると。
――そうした不安を抱きながらも、鈴仙達はいよいよリオカップの決勝戦、サンパウロとの対決に挑む。
サンパウロを牛耳る選手は、壊れた精神をサッカーで埋め合わせて蘇った怪物・大空翼と、
力を求め続け、ついには鈴仙とは真逆の道を進む事となったかつての親友・魂魄妖夢。
彼らの熾烈な攻撃を掻い潜り、コリンチャンスは前半戦途中で1−0のリードを得ており、一旦優勢ではあるが……?

777 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/08(月) 02:22:08 ID:???

鈴仙「(もしも昔聞いた噂が本当だとしたら、魅魔さんの実力は、先の全幻想郷選抜大会で戦った魔理沙以上。
     もしかしたら、リオカップで戦った、ストラットや妖夢と比べても同格以上の選手って事になるけど……!?)」

魅魔「言っとくけど。助っ人はあたし一人じゃあないよ。あんたらは知ってるようだから言うけれど、
    例えば、外の世界の岡崎夢美――彼女も、この計画に一枚噛んでるんだ。ヤツは間違いなく、出る」

鈴仙「岡崎……? ――ああ。昔、星と一緒に日向小次郎と戦った時に一緒に居た」

星「私は覚えていますよ。特徴的なドリブルが実に厄介でした」

魅魔「流石に日向小次郎は、全日本代表の合宿に参加するとやらで、今回は出ないらしいがね。
    それと、八意永琳も、全幻想郷代表で八雲紫を牽制し続けているから、参加はしない。
    ……ただ、逆に言うと。あたしら側の陣営で、駒落ちになるのはその二人位だ。
    今紹介した岡崎夢美以外にも、大型選手はゴロゴロ居る。プロジェクト・カウンターハクレイの目的のうち、
    ――『弱小妖怪を中心とするチームで』って部分は満たせないけれど、『八雲紫や豊聡耳神子の野望を打ち砕く』
    って部分については、確実に満たせる筈って寸法さ」

魅魔は満足気にそう断言する。確かに、魅魔の発言が事実であるとするならば。
――全魔界ユースなるチームは、全幻想郷代表やハイパーカンピオーネ。
あるいは全日本やブラジル代表と比べても、決して見劣りする事の無い強豪チームであると言える。

魅魔「――とはいえ。あたし達も当然それ相応の調整や強化試合は必要だ。
    それで、開催するのがこの【魔界カップ】ってワケだよ」

778 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/08(月) 02:23:16 ID:???
それから魅魔は、ごく簡単に大会の概要を説明してくれた。
大会は全魔界ユースの他に3チームを招待して行われる勝ち抜きトーナメントであり、
招待されるチームとしては、鈴仙達リトルウイングズを除けば、魔界では最強クラスのクラブチームであるイヌカマッセFC。
加えて、先方の希望によって詳細は明らかにしないが、もう一チームの参加が内定しているという。

鈴仙「……話については、分かりましたけど」

一通りの説明を終えたのを確認した上で、鈴仙は改めて聞く。

鈴仙「全魔界ユースは、自らの強化の為に魔界カップを開催する。そして、私達もその大会に出場しても良い。
    ……でも。それが一体どうして、私達にとっての『最後のチャンス』になるんでしょうか」

魅魔「うむ。期待通りの良い質問だ。それが……なるんだよ。何故ならば、この魔界カップには、優勝賞品があるからだ」

そして、鈴仙の質問への答えこそ、魅魔がここで最も言いたかった事なのだろう。
彼女はますます上機嫌にして、その『優勝賞品』の正体にして、鈴仙達の『最後のチャンス』の全貌を告げた。

魅魔「この魔界カップに優勝した者は――来たる4月に行われる、幻想スーパーJr.ユース大会の出場権を得る。
    つまりは――あたし達を。全魔界ユースを倒す事が出来れば、そいつらはあたし達に代わって、
    全世界の強豪がひしめく一大大会に、チームとして出場する権利が与えられるっていう事さ!」

鈴仙「……!!(つまり。魅魔さん達に勝てれば、私達はもう一度立てる。
    全幻想郷や、ハイパーカンピオーネを相手取った、この戦いに……!!)」

779 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/08(月) 02:24:25 ID:???
***


鈴仙「……と、いうわけなの」

――それから数時間後。
鈴仙は、チームメイトの皆を自身の病室に招き入れて(星と共にメキシコに行っていた、にとりとナズーリンとも合流し)
先刻帰った魅魔から聞いた話を伝えた。
鈴仙達を切り捨てる、プロジェクト・カウンターハクレイの方針。編成された全魔界ユースチーム。
そして、起死回生のチャンスとなる、一カ月後に開催の魔界カップ……。
鈴仙の仲間達は多者多様の反応を示しながら、その話に聞き入って――。

佳歩「そんなの、悩むヒマもありません。鈴仙さま。もう一度戦いましょう……!」

星「鈴仙。貴女の困難は、私が光となって支えます。かつて、貴女が私を助けてくれたように!」

反町「……俺は、やりたいです。キャプテンも辛いでしょうけど、俺は、戦いたいから」

穣子「一樹君が行くなら、私は地獄の果てでも付いていくよっ!」

お燐「え? いやいや。あのサンパウロ戦で最後だったら、あたいの渾名がピンゾロ猫になっちゃうじゃん。そりゃ困るよ」

さとり「私はどっかの方と違って、真っ暗闇の無間地獄でもがき苦しみ続けるような変態趣味はありませんからね。
    どうせもがくのならば、光を掴む為にもがき続けたいものです」

慧音「私はまだ、子ども達の希望になれていない。私の目的は、まだ達せられていないんだ……!」

前向きな反応を示す者もいれば。

780 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/08(月) 02:26:00 ID:???
つかさ「……ごめんなさい。私とした事が、まだ闘志を、取り戻せないで居るんです……」

てゐ「……鈴仙。頑張って、負けて。そいで、目までそんなんになっちゃって。大丈夫? 辛くない?
   無理してない? もし辛いなら……永遠亭に帰ろうよ。帰って、またノンビリ過ごしたって、誰も怒らないよ?」

にとり「ひゅぃぃ……魅魔様のシュートなんて喰らったら、いよいよ私のどてっぱらに風穴が空きそうだよぉ……」

静葉「私達は最初、自分達の信仰を得る為にこのチームに参加した。けれど……実は、悩んでもいたの。
    信仰は大事だけど、その為に、幻想郷を支配する妖怪に楯突いても良いのか。
    そのせいで、このチームで唯一の外来人である反町君にも、危害が加わらないか、って」

ナズーリン「私はご主人にどこまでも着いていきたい。だが、……このまま戦いを続ける事が。
        本当にご主人や、他の皆にとっても良い事なのか、分からないで居るんだ」

アリスさん「(ダメよ、アリス……ここはトモダチと。鈴仙と共に着いて行くってって宣言しないと。
        でも、できない……! サッカーが、怖いんだ……!?)」

パチュリー「(――私は。一体何のために、修行を……。ああ、レミィ。今ごろあんたは嗤っているわね)」

サンパウロ戦の敗戦を引きずる者や、覚悟が定まらずに、後ろ向きな感情を抱く者もいた。
そして、鈴仙を除き14人居る仲間達で、前向きな者と後ろ向きな者の割合はほぼ半々。
故に、鈴仙が大会の存在を告げた後も、場は暫くの間沈黙のまま膠着した。

鈴仙「(……でも)」

沈黙の中で、ふと、鈴仙は思う。
――仲間達ではない。果たして”自分”は、一体どうしたいのだろうか。

鈴仙「(……私には、支えてくれる仲間は確かに居る。だけど、今の私は光を失った。
    仮に魔界カップに出るとしても。私は、その仲間達にずっと、甘え続けなくちゃいけない)」

781 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/08(月) 02:27:54 ID:???
数時間経って包帯を替える時、改めて両目を開こうとしても、世界は暗黒に包まれたままだった。
敗戦や魅魔の来訪等があり、忘れかけていた”失明”という事実が、少しずつ鈴仙にのしかかっていく。
そして、暗く後ろ向きな不安が頭の中にもたげる。……本当に、このままでサッカーを続けられるのか? と。

鈴仙「(確かに、私は普通の人間と違う。妖力を兼ね備えた、妖怪兎だ。
    だから、肉体による視力に頼らなくても、妖力――精神力に依存する気配察知術を活用すれば、
    たぶん、大体今までどおりにサッカーをする事は出来る……と、思う。訓練すれば。
    でも、それはあくまで大体にしか過ぎない。どうしても視力に頼っていた面もあるし、何より。
    ――これまで私を支えていた、『狂気の瞳』が、全く使えなくなっている)」

鈴仙が持つ、『狂気を操る程度の能力』の源泉である瞳が破壊された今、その能力は使えない。
サッカーの試合においても役立つ場面が多く、この能力によって勝利に導いて来た実績があるだけに、
その能力を喪失したという事実は、これまでに積み上げて来た自信が揺らぐ結果に繋がっていた。

鈴仙「(私は最初、魔界カップの存在を皆に教えて。出来れば、皆と一緒にこの大会に賭けたいと思って、
     この病室に皆を呼んだ筈なのに。私が一番後ろ向きになってるかも……)」

もしも鈴仙が、森崎のような根っからの野心家であるならば、敗戦や多少のハンデがあろうとも、
この魔界カップを最高の好機として、自らの天下取りの新たなる礎としてやろうと思えただろう。
また、中山のようなストイックな努力家であるならば、そもそも余計な事は一切考えず、自らの身が滅びるまで、
目の前にある戦いに身を投じ続けられるだろう。鈴仙は、そのどちらでも無かった。

コーチ「……そいで。鈴仙よ。お主は結局、どう思っとるんじゃゾイ?」

――そんな鈴仙の内心を察してか、沈黙が続く状況を見かねてか。
後方で静観していた老コーチが、鈴仙に対して助け船を出した。

鈴仙「――えっと。私は……」

鈴仙の視界は包帯で塞がれており見えない。しかし、仲間達の視線が自分に集中している事は、何となく分かる。
自分は今、何を思っており、どうしたいと考えているのか。
鈴仙自身だけではない。彼女を案じる者達にとっても、それは重要な問題なのだ。

782 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/08(月) 02:30:36 ID:cxfKth2Y

鈴仙「(――魅魔さんは帰り際、『魔界カップに参加せず、幻想郷に帰り、身を休めると言うならば協力しよう』と言ってくれた。
     だから、私には逃げ道はある。……てゐの言う通り、永遠亭に帰って、これまで通りの暮らしを続ける。
     そんな結末だって、確かに存在してるんだ。そして、私にはまだ、前に進める道――魔界カップに参加する――があるのも確か。
     私は、……)私は――!」

何度も言葉を詰まらせながら、しかし鈴仙は、仲間達に向かってこう自分の想いを告げた。

A:「私達の乗った列車は、途中下車できない。何があろうと、道を切り開いて進み続けましょう!」自らを奮い立たせながら。
B:「私は今、とっても不安で、怖い。……でも、前に進みたい。だから、手を貸して」不安を吐露しつつも前向きに。
C:「――中山さんだったら、視力以外の感覚を鍛える大チャンスだって、喜びそうよね」中山の話題を挙げる。
D:「……正直、永遠亭に帰りたい。でも、帰らないよ。私は皆と一緒に居たいから……!」後ろ向きだが強情に。
E:「正直、私なんて居なくても良いよね。魔界カップとかは皆で頑張ってよ。あはは……」闇鈴仙モードに突入。
F:「なんかこうして皆の話聞いたらさ。――わりぃ……やっぱつれぇわ」ちゃんと言う。※BADENDです
G:その他 鈴仙ならこう言いそう、というロールプレイがあれば、書き込みして頂ければ嬉しいです。

*(F以外は)何を選んでも、直接的なデータ上のメリット・デメリットはありません。ロールプレイと思って、選択して頂ければ幸いです。

783 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/08(月) 02:37:30 ID:cxfKth2Y
…と、言ったところで今日の更新はここまでです。
次回(か、次々回)更新から、再びゲームパート(育成・交流パート)に入っていけると思います。
また、スレ容量が500kbに達したので、スレタイを募集したいと思います。
次スレは、魔界カップに向けての育成・交流及び練習試合(相手は未定)がメインとなると思います。
(星一行のメキシコ修行編は、次スレにて成長選択・判定を中心とする、ダイジェストで行う予定です)

【】鈴仙奮闘記42【】

の形で書いて提案して頂ければ大変嬉しいです。
それでは、本日もお疲れ様でした。

784 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/08(月) 02:52:40 ID:???
すみません、>>782で大事な一行が抜けてましたね…(汗)

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

で、お願いします。

785 :森崎名無しさん:2018/01/08(月) 07:16:57 ID:sdnvTg8Q
G
希望の象徴となる私はたかが双眼を失ったぐらいでたじろぐわけにはいかない。
私は、必ず挑戦する。(そうでしょ、妖夢!)

786 :森崎名無しさん:2018/01/08(月) 12:00:43 ID:3TusZnDE
A

787 :森崎名無しさん:2018/01/08(月) 13:00:21 ID:UD0gwatc
A
【泥啜っても】鈴仙奮闘記42【這い上がる】

788 :森崎名無しさん:2018/01/08(月) 13:16:58 ID:K3bBYdf2
【目が見えぬかわりに】鈴仙奮闘記42【心が開いた】

789 :森崎名無しさん:2018/01/08(月) 16:27:05 ID:???
>鈴仙「(もしも昔聞いた噂が本当だとしたら、魅魔さんの実力は、先の全幻想郷選抜大会で戦った魔理沙以上。
     もしかしたら、リオカップで戦った、ストラットや妖夢と比べても同格以上の選手って事になるけど……!?)」

ストラットと妖夢を同格に並べられると んん?ってなるんだがw

790 :森崎名無しさん:2018/01/08(月) 18:54:45 ID:???
失明してるってことは
狂気の瞳スキルだけじゃなくて
各種必殺技の態勢崩しも発動しないと考えるべきか?

791 :森崎名無しさん:2018/01/08(月) 20:36:13 ID:???
遅くなりましたが乙でした。

【目は見えぬが】鈴仙奮闘記42【前は闇ならず】
【闇の先の】鈴仙奮闘記42【光明】
【希望は】鈴仙奮闘記42【魔界より】

792 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/09(火) 00:09:38 ID:???
更新再開します。文章パートがまた嵩んでしまいました…
>>787
参加とスレタイの提案ありがとうございます!
>>788
スレタイの提案ありがとうございます!
>>789
能力値的には妖夢>ストラットなので、本来ストラットの方が格下な筈なんですが、逆に思えますね……(汗)
>>791
乙とスレタイの提案ありがとうございます!

793 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/09(火) 00:12:18 ID:???
>>790
今回封印となるのは狂気の瞳スキルだけとして、必殺シュートについては弱化対象にしない方向です。
あまり弱くなりすぎると、今度は鈴仙がスタメン落ちしてしまいかねないので…。
ただ、バランスについては直前まで検討したい為、変更の可能性はあります。

794 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/09(火) 00:13:36 ID:???
A:「私達の乗った列車は、途中下車できない。何があろうと、道を切り開いて進み続けましょう!」

鈴仙「――私達の乗った列車は、途中下車できない。何があろうと、道を切り開いて進み続けましょう!」

鈴仙は、自らを奮い立たせながら、こう言い切った。
しかし勿論、仲間達はそう言った鈴仙の内心は良く分かっている。

さとり「……鈴仙さん。別に無理はしなくとも良いんですよ。
    私は戦いたいと思っていますし、それを、貴女に強制するつもりはありませんから」

文字通り心を読む能力を持つさとりは、鈴仙の内心に潜む大きな不安を理解しているが故に、そう優しく告げる。

てゐ「……本当にバカだよ、鈴仙。今の自分がボロボロなのにも気づいていないんだ。
   そりゃあ、私だってこのままじゃ悔しいし、もっとこのチームで戦いたい気持ちはあるけどさ。
   それでも、鈴仙が無理しっぱなしじゃ、何の意味なんて無いのに」

能力など無くとも以心伝心の相棒であるてゐもまた、鈴仙のその悲痛さすら感じる決意に異を唱えた。
鈴仙はそんな彼女達の想いを充分に汲んだ上で――、

鈴仙「…………誤解しないで。確かに不安な気持ちは本当だし、お家に帰って休みたい気持ちだってある。
    でも、私は……それでも。このまま、逃げたくはないの。ただ、それだけよ」

繰り返し、そう思いを告げた。

佳歩「鈴仙、さま……」

つかさ「お言葉ですが……!」

鈴仙の言葉を肯定的に捉えて俯いた佳歩に対し、試合中以外は慎み深い性格のつかさは、声を荒げて反論した。

795 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/09(火) 00:15:24 ID:???
つかさ「――鈴仙さまはこれまでも自らの為に。私達の為に、充分に戦いました。
     その中で、負った傷を癒す事すらせずに、破滅するまで戦い続ける事が、本当に正しいのですか……!?」

鈴仙の決意を咎める者は、つかさだけでは無かった。

慧音「私も同感だ。鈴仙。もし君がここで戦いを止め、永遠亭で療養に入ったところで、それを逃げだと受け止める者は、
    このチームの何処にもいない。それに、もしも外で君を脱走兵扱いする者が居たとしたら――。
    その時は、この私がそいつらをなかったことにしてやる」

パチュリー「私達の乗った列車は、途中下車は出来ない。人は皆、それぞれに敷かれた運命という名のレールに従い、
        前に進み続ける事しかできないのだから――。だけど生憎、私も貴女も人じゃないもの。
        列車のガラスを割って、無理やり外に出ても良いし、何なら制御室に潜り込んで、エンジンを停止させてもいい。
        その意志は素晴らしいけれど、ただの無鉄砲であるならば。私は貴女のマスターとして、無理矢理に途中下車して貰うわ」

チームメイトの中でも特に賢く合理的な二人は、鈴仙の非合理的な行動原理を必ずしも肯定的には捉えない。

星「……鈴仙。私も、出来る事なら貴女の光となり、貴女が望む限り、最後まで共に戦い続けたい。
  かつて貴女が、ヒューガーにより困窮した私達を救ってくれた時と同じように。
  ですが、もしも貴女が望まないならば――その時は、私もまた、共に戦いから身を退こうと思っています」

彼女達の正論を前にして、再び場が膠着するよりも先に、星は鈴仙の意思を再度確認するのだが――。

鈴仙「………(あれ? 私……今、そんなに、不安じゃないかも)」

――その時だった。鈴仙が、自分自身の精神が、更なるステージへと進んだのだと自覚したのは。
仲間達の暖かさに触れて、冷静な諫言に触れて、ごちゃごちゃとしていた自分の脳内がクリアになる。

鈴仙「(やっぱり。私は……戦いたいんだ。諦めたくないんだ……!)」

その思いは、かつての自分なら絶対に抱かなかった、ストイックながら純粋な感情。
中山との、パスカルとの出会いから1年を前にして。鈴仙は自分自身が大きく変わっている事をここに自覚できた。

796 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/09(火) 00:16:34 ID:???
鈴仙「(これまでは。私は”がんばって”、”無理をして”、中山さんみたいになろうと思ってた。
    強い選手として、キャプテンとして、皆を引っ張っていく必要があると思ってた。
    でも……今の私って、そんなに、無理してないや)」

不安が全く消えた訳では無い。ただ、それ以上に戦いたい、道を切り開きたい気持ちが強いだけだった。

さとり「(……! 鈴仙さんの思考が、変わった……? いや、これは違う。本来の感情が表出したと言うべきか……)」

好都合な事に、そんな鈴仙の想いを寸分違わず認識し理解できる者も傍にいた。
心を読める覚妖怪のさとりは、鈴仙が表出させた強い感情を前に、驚きを隠せない。

てゐ「……(鈴仙。あのプライドだけはいっちょ前で、泣き虫でヘタレだった奴が、こんな顔するなんてなァ)」

いや。 覚妖怪でなくとも、分かっていた。今の鈴仙は、決して単なるハッタリやカラ元気で、
こんな前向きな発言をしているのではない、と。鍛えられた強靭な精神に基づき、そう断言しているのだ……と。
だからこそ、当初は鈴仙の発言に反発していた者達も、次第にその矛を収めていき――。

パチュリー「……あんたが単なるやすっちい自己犠牲精神や、単純なヒロイン願望でそう言ってる訳じゃないってのは、
        もう充分分かったわ。分かった。私もあんたがそう言うなら、止めない。
        でも、……無理は禁物よ。なんせ、全盲の選手が晴眼者と混じってサッカーをするなんて、
        これまで見たどの文献にも無いんだからさ。何があっても、知らないわよ」

弟子を想う気持ちがある故か、最後まで鈴仙の参戦に反対していたパチュリーもとうとう折れる。

静葉「……相変わらず鈴仙は凄いわね。本当に、強い子になったわ」

にとり「(目が見えないのにサッカーするなんて狂気の沙汰だけど……。
     でも、そんな事が出来るんだったら、どてっぱらに穴が空いたとしても、何とかなる気がしてきた)」

アリスさん「(こ、このままオドオドしてたら、鈴仙に置いて行かれちゃうわ! そうなると私のトモダチ100人計画が……!?)」

ナズーリン「鈴仙。……君は実に馬鹿だよ。あまりに馬鹿すぎるから……様子を見続けないと心配だ」

797 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/09(火) 00:17:39 ID:???
また、かつてないハンディキャップを抱きながらも、純粋な闘志を滾らせる鈴仙を前にして、
戦意を喪失しかけていた仲間達も、次なる戦いについて各々思いを馳せる程の余裕を取り戻していた。

コーチ「――さて。これで決まりじゃの」

……紆余曲折がありながらも、再びチームとして魔界カップを戦い抜く事を決意した鈴仙達。
後ろで黙って話を聞いていた、コリンチャンスのコーチは軽く場を総括すると、

コーチ「……で。お主ら。これからどうするつもりじゃゾイ?
     魔界カップ……とやらに出るのは良いとして。それまでの宿は?
     そもそも魔界ってどこにあるんじゃ? 勿論、ワシゃ知ーらんぞ」

鈴仙「……う」

――これまで敢えて議題に挙げなかった、魔界カップまでの日々をどう過ごすか。
また、この世界とは別の異界である魔界への交通手段はどうするのか……という、
より現実的な課題を提示した。

てゐ「うーん。こういう時こそ、スキマ妖怪――八雲紫みたいな便利な能力持ちが居ればいいのになぁ」

穣子「だよねぇ〜。なんか私も、前々前世は紫さんが運転するバスで、
    フランスやらブラジルやら旅行してた気がするよ」

反町「(どんな便利屋なんだ、八雲紫って言う妖怪は……?)」

幻想郷の管理者達や、それに対立する『プロジェクト・カウンターハクレイ』からも離れた今の鈴仙達は、
完全にアウトローな存在である。故に、自分達以外に資金面・管理面でチームをサポートしてくれる人物は居ない。

お燐「はぁ〜あ。さとり様、ここは地霊殿の主人らしく、ポンっとキャッシュで1億置いたりとかできないんですか?」

さとり「無理ね。地霊殿の管理は、旧都を取り仕切る星熊勇儀さん――本人は全幻想郷代表に選抜されて不在だから、
    部下の鬼族達に委任してあるのだけれど、連絡を取る手段が無いもの」

798 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/09(火) 00:18:50 ID:???
鈴仙達の中で、幻想郷の有力者とも言えるのは、古明地さとり位しか居ないのだが、彼女も即座に現金を用意できる訳ではない。
また、仮に現金があったところで、彼女には境界を操り空間を繋ぐような、便利な能力は持ち合わせていない。
――しかし、この金銭と交通面という切実な諸問題については、意外と簡単に解決しそうだった。

星「そこについては、私達――私と、ナズーリンと、にとりさんの、メキシコ派遣組に準備があります」

星が颯爽と自信に満ちた様子で、そう断言してくれたからだ。

鈴仙「……星。本当なの?」

ナズーリン「あまりにご都合主義で悪いけれど、ご主人の言っている事は本当だよ」

にとり「私の技術力も役に立ってるんだよ! いやぁ、やっぱり時代は文系よりも理系だよねぇ」

そして、星の自信を裏付けるかのように、彼女とメキシコでの修行を共にした二人が頷いている。

星「まず、当面の資産について。詳細はまた、今後語りたいと思いますが……。
  私は、メキシコでちょっとした資産を築き上げました。
  私達が数か月の間サッカーに打ち込んでいても、問題なく生活できる程度のものです」

ナズーリン「メキシコは貧富の差が激しい。その中でサッカーを続ける手段として……。
        私達は、財宝を集めて発見する、自分達の能力を利用したという訳さ」

星もナズーリンも詳しくは語らない為、その資産を得る為にも後ろめたい事情があった事は、容易に想像できる。
しかし、彼女達の意思を汲んで、ここは追及するべきではないと鈴仙は思った。

星「次に、魔界へと至る為の交通手段ですが、……私は、これを持っています。
  もっとも、長年使われていなかった為、暫くの間の修理やメンテナンスは必要となるでしょうが……」

にとり「そこについては、この私が責任をもって監修してるから大丈夫、ってなワケさ。
    河童の発明王とも呼ばれる河城にとり様の監修だからね。期待してくれてて良いよ!」

799 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2018/01/09(火) 00:25:07 ID:???
逆ににとりの方は、何も考えずに胸を張り、皆に対して誇らしげに答える。
その表情を見るに、やはり彼女は技術者が向いているようだ。

鈴仙「財宝が集まるという天性の幸運と、それを見つける従者。
    魔界への移動手段と、それを修理点検できる技術者。……確かに、駒は揃っていたのね」

説明を聞いていく中で、鈴仙も改めて納得した。
鈴仙達は奇跡的にも、諸問題を解決する為の大きなピースを、最初から持ち合わせていたという訳だ。

星「ああ……。ただ、修理やメンテナンスは、機械的な面だけではありません。
  魔法的な術式が掛けられている部分もありますので……」

パチュリー「そこは私達が協力するわ。……良いわね、アリスさん」

アリスさん「……良いけれど。そこまで言うんだったら、教えて欲しいわね」

そんな折、補足的な協力を呼び掛ける傍らでアリスさんが当然の疑問を投げかけた。

アリスさん「幾ら財宝が集まるからと言って、貴女はただの寅の妖怪に過ぎない。
       そんな貴女に所縁があって、かつ、異界である魔界にも移動できるような。
       半ばオーパーツめいたマジックアイテムが、そう簡単にあるのかしら。
       ……協力するよりも先に、教えてくれない? それが、どんな代物なのか」

その質問は完全に興味から発せられているものらしく、口調に棘は無い。
故に、星も勿体ぶる事も覆い隠す事もなく、正直かつ素直に教えてくれた。

星「そうですね……。皆さんには先に、私達のアテが何であるか、お教えしましょうか。それは……」

明日への希望を語るかのように、星は仲間達に向けて晴れやかな表情で言った。

星「――『聖輦船《せいれんせん》』。かつて私が、魔界へと聖を救いに行くために乗った、空飛ぶ船です。
  私は、今一度この船を。……大空への翼を、復活させようと思っているのです」

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0ch BBS 2007-01-24