キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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異邦人モリサキ

1 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/01(金) 00:31:21 ID:Hgnh9qno


本作は恋愛SLG『みつめてナイト』を基にした二次創作です。

騎士の時代が終わりつつある南欧は架空の小国、ドルファン王国。
戦火の迫るこの国に傭兵として降り立った東洋人、森崎有三の体験する
波乱万丈の三年間を描きます。


独自要素が強いため、外伝スレを経ずにスレを立てさせていただきました。
ご容赦下さいませ。



201 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/06/05(火) 00:32:51 ID:???
魅力のスキルは獲得出来そうな感じがする。

202 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:12:04 ID:???
>>197-200
皆様、ありがとうございます。
それぞれEP1を進呈いたします。


*D26.4 「流浪の慎重派」森崎
訓練結果

前半(体術)1
53  +  39  +  44 = 成功3
前半(体術)2
60  +  58  +  50 = 成功3

→成功6


後半(魅力)1
37  +  66  +  79 = 成功3
後半(魅力)2
80  +  19  +  96 = 大成功1 成功1 失敗1

→大成功1 成功4 失敗1

203 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:13:49 ID:???
***


「ようっっ……やく、解散かよ……!
 ホントに日が暮れるまで走らせやがった、あの鬼教官……!」

薄暗い野原に弱々しく響くのは、大の字に寝転んだネイのぼやきである。
周囲はネイと同じように息も絶え絶えといった様子で横たわる男たちで溢れていた。

「修練が足りんな、ネイ」
「まったくだぜ」

そんなネイを見下ろすように腕を組んだトニーニョが言うのへ、森崎が同調する。
ある者は横たわり、ある者は地に伏せて胃液をぶち撒け、またある者は泡を吹いて失神している中で
平然と立っているのは二人くらいのものである。

「何でそんなに元気なんだよ、お前ら!?」
「いや……別に元気じゃねえよ、充分疲れてるぜ」
「僕はへとへとだよ、ネイくん。ああ、もうダメかも〜」
「うるさい死ね」

ネイのすぐ脇に寄り添うように倒れ込もうとしたジェトーリオが乱暴に蹴飛ばされるのを見やりながら、
森崎が小さく肩をすくめる。

「鎧も背嚢もナシだってのに息上がってんし、さすがに身体なまってるなって感じだぜ?
 けどまあ、疲れましたもうダメですって顔してたって、的にされるだけだしな」
「モリサキの言う通りだ。疲弊した者、諦めた者、混乱した者……敵はそういう輩から狙ってくる。
 逆に意気軒昂を誇示していれば刃も弾も避けて通るというものだ」

うんうん、と頷き合う二人を寝転んだまま見上げるネイが、その言葉に苦虫を噛み潰したような顔をする。

204 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:14:51 ID:???
「セーシン論かよ。汗臭ぇ〜……」
「経験論だっつーの。ま、サボりたきゃ適当にサボればいいさ」

苦笑しながら森崎が続ける。

「所詮、傭兵なんてのは食い詰め浪人だしよ。キツいツラいで鍛錬から逃げて、
 明日死ぬのが仕事みてえなもんだ。ま、俺ぁ今日鍛えて生き残る方を選ぶ。そんだけよ」
「……」

飄々とした言葉に盛られた毒にネイが口を閉ざす。
代わりに森崎へと話しかけたのはトニーニョだった。

「そういえばモリサキ、お前は東洋人だろう?」
「大雑把な括りだな。まあ、そうだよ」

言う森崎にしても、かつて新大陸と呼ばれていた西洋圏の各国を詳しく知っているわけではない。
お互い様と割りきって頷く。

「そのお前が、何故南欧まで来て傭兵などやっている?」
「……おいおい、トニーニョさんよ」

トニーニョの問いに、森崎が口の端を上げる。
呆れ混じりの苦笑であった。

「昨日までつるんでた連中が次の戦場じゃ敵味方、その逆だっていくらでもあるのがこの渡世だぜ。
 お互い過去の詮索はナシ、ってのは傭兵のイロハのイ……西洋圏じゃ常識が通用しねえのか?」
「……! おい、そんな言い方……!」

露骨なさや当てに反応したのはネイである。
眉尻を上げて身体を起こそうとしたネイを、トニーニョが手で制する。

205 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:15:52 ID:???
「いや、いいんだネイ。今のは確かに俺が悪い」
「……」

それでも不満そうに口を尖らせるネイを見やってから、トニーニョが森崎に向かって軽く頭を下げる。

「気を悪くしたのならすまない、そういうつもりではなかった」
「……まあ、謝ってもらうもんでもねえさ」
「俺が気になったのはモリサキ、お前は随分と年若いように見えるが、それにしては
 かなりの経験を積んでいる風だと思ってな。……気になるとつい口に出る。悪い癖だ」

自嘲気味に呟くトニーニョに、森崎が首を振る。

「いいさ。しっかし……年若いって俺、一体いくつだと思われてるんだ?
 この欧州じゃ実際より若く見られるのにも慣れちまったが……」
「ふむ……そうなると少し上に見積もったとして……俺たちと歳はそう変わらないのか?」

腕を組んだトニーニョが、夜闇の忍び寄る中で値踏みするように森崎を見つめる。
と、足元のネイが、上体だけを起こして言う。

「ちなみに俺たちは二十一だぜ」
「あ、僕は一個上だよ、ネイくん!」
「お前はもう歳とれないようにそこで死ね。つーか生まれてくんな」
「……」

短い間にもはや定番のようになりつつある、褐色の優男と黒人のやり取りを聞きながら森崎が黙り込む。
渋面であった。

206 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:16:56 ID:???
「……? どうした、モリサキ」
「俺……数え十八の時分に国を飛び出して、かれこれ十年……くらいになるんだが」
「そうか。……って、なにィ!?」
「嘘だろぉ!?」
「ふうん」

驚愕する一同を前に、森崎が眉間に皺を寄せたまま肩を落とす。

「はぁ……どっと疲れた。先に帰らせてもらうぜ……」
「あ、おいモリサキ! ちょっと待てって!」
「お、俺たちが悪かった! そ、そうだ! 途中で一緒に飯でも食わないか!」

とぼとぼと歩き出した森崎の背を、トニーニョが慌てたように追う。
疲れた身体に鞭打って起き上がるとその後に続くネイ。
そのネイに影のように寄り添うジェトーリオ。

森崎がこの国で出会った、最初の仲間たちである。


***

207 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:17:58 ID:???
//体術訓練


「走れ! 走れ! 走れ! 基礎体力のない奴にこなせる訓練などない!」

今日も今日とて、広い荒野にヤングの大音声が響き渡る。
三百人の荒くれ者どもがその声に尻を叩かれるようにしながら(そして時折、本当に木剣で尻を叩かれながら)
走り続けて、もう何時間になるだろうか。

「クソッ! 楽しそうだな、あのサド教官! この運動場のだだっ広さときたら、思う存分
 訓練ができるように……じゃなくて、単にあいつのダミ声で近所から苦情が来ないように
 こうなってんじゃないか?」
「ぼやくな、ネイ。無駄に息が上がるだけだ」

前方を走るトニーニョとネイ、そしてそのネイのすぐ後ろに張り付くようにしているジェトーリオの
背を眺めながら、森崎が額にじっとりと浮かぶ汗を拭う。
滝のように流れ出る汗は既に枯れ果てている。
今滲むのは、ほとんど脂と区別のつかない粘性の液体だった。

「……ってあの野郎、昨日はまともな筋力のない奴に拳闘も体捌きもあるか! とか言って
 一日中、重り石を持ち上げさせてたじゃねえかよ! おかげでこっちは全身バッキバキだってのに……」

遠く霞むヤングの姿を恨めしげに見やりながら、森崎がぼそりと漏らした瞬間。
その遠い影が、ぐるりとこちらを向いた。

208 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:18:59 ID:???
「そこ! そんなに気に入ったのなら、今日も石を上げるか!」
「なにィ!?」

よく見えなくとも真っ直ぐ自分に向けられていると分かる雷光のような視線と
強烈な指向性を持った声が、森崎を直撃していた。
恐るべき地獄耳に驚く間もなく、声は森崎めがけて降ってくる。

「モリサキといったか、貴様だけ特別にメニューを追加してやってもいいぞ!」
「……おとなしく走るよ! 走ればいいんだろ!」
「まあそう遠慮するな!」

叫んでペースを上げた森崎を、しかしヤングの笑みを含んだ声は逃がさない。
今、あの男は咎人をいたぶる煉獄の獄吏と同じ顔で笑っていると、森崎は確信する。

「貴様のために今から特訓を組んでやるから、安心して走り込め!
 とはいえ、毎日同じ箇所を鍛えても筋を傷めるだけだからな!
 きっちり責任をもって、昨日とは違う地獄を味あわせてやる!」
「ゲェェー!? ちくしょう、こうなったらネイ、トニーニョ、お前らも……っていねえ!?」

巻き添えを捜す森崎の視界には、既に誰の姿もない。
いち早く逃げおおせたのだと察した森崎を待つのはただ一人、緑なす髪の獄吏であった。


※体術が上がりました。
ガッツが20下がりました。


209 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:20:00 ID:???
//魅力訓練

ふぉん、と風を切る音を立てて刃が走る。
訓練所の荒野では青空の下、傭兵たちが素振りの最中であった。
と、森崎が剣を振るう手を止めて振り返る。

「どうした、モリサキ?」

聞いたトニーニョに、森崎がニカリと笑って言う。

「なあ、どうだ? そっちの角度から見るのが一番カッコよくねえか、俺?」
「……いいから真面目にやれ、また教官にどやされるぞ」

呆れたように眉根を寄せて素振りに戻ったトニーニョに、森崎がなおも言い募る。

「いや、だってよ。毎日むさ苦しい男どもに囲まれて汗に塗れてると、こう、思わねえか?
 たまには黄色い声できゃ〜、とか言われてみてえ、ってよ」
「言われたい、言われたい!」

食いついたのはネイである。
こちらは得意の短槍を突き出す型を止めて、話題に加わってくる。

「街にさえ出られれば、可愛い女のコの五人や六人は朝飯前、昼飯までにもう五人、
 ってなもんなのにさ! こう訓練漬けじゃ、俺の美貌を活かす暇もありゃしないぜ」

言ったネイに、すかさずジェトーリオがまとわりついて甲高い声を上げる。
その姿はさながら美しく花を咲かせた若木に絡みつく蛇である。

「きゃ〜、ネイく〜ん!」
「死ね、今すぐ港から海に飛び込んで二度と浮かんでくるな!」

210 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:21:05 ID:???
短槍の柄でこそげ落とすようにジェトーリオを引き剥がすネイを横目に、
森崎がトニーニョに話しかける。

「で、どうなのよ、トニーニョさんは。切った張ったでいつくたばるかもわからねえ身空、
 たまにゃ剣の鈍色じゃねえ、桃色に囲まれたかねえかって話よ」
「俺は……その、そういうのに興味は……」

ニヤニヤと笑いながら迫る森崎に、珍しくトニーニョが言い淀む。
冷静沈着を旨とするこの男には稀有な反応であった。
森崎が何かを言う前に、後ろから野次を飛ばしたのはネイである。

「興味ありまくりだろ、ムッツリ坊主!」
「今何と言った、ネイ! もう一度言ってみろ!」

気色ばむトニーニョ。
これもまた珍しい光景である。

「え、なにお前、案外イケる口かよ?」
「……」

急に親近感を覚えた森崎が訊ねるが、トニーニョは口を噤んでしまう。

「……」
「……」

周囲に奇妙な静けさが降りていた。
気付けばトニーニョだけでなく、ネイやその足元に転がっていたはずのジェトーリオさえもが
いつの間にか立ち上がって神妙な顔をしている。

211 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:23:00 ID:???
「ん? どうしたお前ら、急におとなしくなりやがって……」
「……お前、女どもに騒がれたいのか、そうかそうか」
「そりゃそうだろ、……って……」

すぐ後ろから響いた、重厚な声に思わず軽口を叩きかけた森崎が、何かに気付いたように
ゆっくりと全身を軋ませながら振り返る。
果たして、そこに立っていたのは

「俺がお前を男前にしてやろう……誰からも一目置かれるような、立派な男前にな……!」
「い、いや、その……」
「まずは素振り、この鉛入りの剣に変えて三百! その後は腹筋からいつものコースを大サービスで三倍だ!
 準備運動の後もまだまだ専用の養成講座が待ってるぞ……始め!」

その日、荒野には日が暮れるまで蛙の潰れるような悲鳴が響いていたという。


※魅力が上がりました。
 ガッツが20下がりました。


***

*D26.4 「流浪の慎重派」森崎
訓練終了

残りガッツ:40

212 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:24:18 ID:???
******


*D26.4
メインイベント
『少女の騎士(後編)』


「っくあぁぁぁーーーー! 全身痛ぇー……」

よく晴れた春の青空の下、大きく伸びをしたのは森崎有三である。
長剣一本をベルトで腰に提げただけの平服で石畳の上を歩いている。

「あの鬼教官、俺を目の敵にしやがって……他の連中の倍はしごかれてんぞ、絶対!」
『すっかり標的だねえ……あれ? でも、この前はズイブン偉そうなこと言ってなかったっけ?
 グズは死ね! 俺は鍛えて生き残る方を選ぶんだぜ! とか何とか』
「キメ顔でそんな嫌なこと言うキャラだったか、俺……」

目の前にふわりと舞い降りた相棒、ピコの小芝居に顔をしかめる森崎。

「つうか、これでもマシな方だぜ? 他の連中なんざ、月に一度の休みだってのに兵舎どころか
 ベッドからも降りられねえようなのがゴロゴロしてんだからよ。あの女好きのネイなんかもな」
『まあねえ……せっかく誘ったのに、一歩も動きたくないって断られたし……』
「だろ? こうして生活物資の買い出しに行けるだけでも俺の頑健頑丈は称えられるべきなんだよ。
 ほれ、苦しゅうないぞ。思う存分、褒め称えるがいい」
『わー、すごーい! キミはエラいよ! カッコいいよ!』
「ふふ、そうだろ?」

ふわふわくるくると、森崎の周りを舞い踊りながら拍手してみせるピコが、一通り踊り終えると
ぴたりと森崎の眼前に静止する。

213 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:25:19 ID:???
『……キミ、空しくない?』
「まあ、ちょっとな……」
『……』
「……」
『さ、バカなことやってないでお買い物済ませちゃお。まず臭くない下着ね!』
「今あるの、旅の間からずっと水洗いだけして履いてるヤツだからな……」

ちらりと自らの体を見下ろして襟元をはだけ、立ち上る異臭に思わず天を仰いで
歩を早めた森崎が、しかしすぐにぴたりと立ち止まって首をひねる。

「あー……っと、で、この手のモンを買うとなると……どこだ?」
『この国に来てから今日まで、ほとんど兵舎と訓練所の往復しかしてなかったからねえ……』
「正直、飯屋以外の店とかよくわかんねえんだよな」
『ま、せっかくだし、一通りぐるっと廻ってみようよ』
「マジか……とっとと片付けて疲れ取りたかったんだが……」

げんなりした顔で言う森崎。

『もう! どうせその内チェックしなきゃならないんだから、今日やっておこうよ!』
「はあ、仕方ねえか……と、まず今、俺たちがいるのは城南区、シーエアー地区だな」
『あたしたちの兵舎がある地区だね』

ドルファン王国の首都である城塞都市ドルファンは、中央に配置された王城をぐるりと囲むように
街が建設され、その更に外側を高い城壁が守るという、オーソドックスなローマンスタイルである。
城下ドルファン地区を中心として、東西南北をそれぞれ区切る形で地区分けが成されている。

『全部で五地区あるんだよね』
「それぞれに個性豊かな特色のある、マルタギニアの真珠。それが首都ドルファンです……か」
『それ、何読んでんの?』

214 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:26:21 ID:???
言ったピコが森崎の手元にふわりと舞い降りる。
森崎が持っていたのは幾つかに折りたたまれた紙片である。

「んあ? こりゃ旅行者向けの地図だ。部屋に備え付けられてたんだよ」
『へえ、便利だねえ』
「傭兵宿舎に観光地図もねえもんだけどな……」
『で、このシーエアー地区の特色は?』

聞いたピコに、森崎が地図を見ずに答える。
さすがに数週間とはいえ、毎日歩いている街並みであった。

「ここは港があって、船乗りや荷揚げ人夫相手の盛り場があって……俺たちみたいな外国人の行き来も多い。
 ま、良く言えば活気がある地区だな」
『悪く言えば?』
「ガラが悪ぃ」

一言で切って捨てる森崎。

「品がなくて、安っぽくて、薄汚ねえ。だからこそ俺ら流れ者には馴染むんだが……。
 坊ちゃん嬢ちゃんネンネちゃんには向かねえ街だな」
『そういえばこの間も、女のコが絡まれたもんねえ』
「あったな、んなこと……ま、そういうことさ」

この国に降り立ったその日に巻き込まれた騒動を思い出して、森崎が肩をすくめる。

「つっても、このシーエアーも東側に出りゃ教会だ墓地だ灯台だ、ってえ辛気臭い代物が
 揃ってるみたいだけどな」
『ふうん。あのコも教会の帰りとかだったのかねえ』
「さあな……お、そういや、港からちょっと歩けばビーチもあるらしいぜ」
『まだ海水浴には早いけどね』

四月の青空に向かってぱたぱたと羽ばたきながら、ピコが言う。

215 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/06(水) 01:29:31 ID:NzJufiKg
『で、どう? 臭くない下着は売ってそう?』
「どうかな……、まあ娼館があるんだから、下着くらいそこらで売ってるかもしれんが……。
 ぐるっと廻るって言い出したのはお前だろ。あんまり寄り道ばっかしてると時間なくなるぞ?」
『うーん、そう言われると……どうしよう?』


*選択

A シーエアー地区(歓楽街)を巡ってみる

B 他を当たる


※選択によりイベントが発生します。
 またこの後の行動回数に影響が出ます。
 寄り道ができるのは全部で三箇所までです。

森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【その選択肢を選んだ理由】を【森崎の視点から】
必ず付記していただくようお願い致します。
期限は『6/6 21:00』です。


***

選択理由にも徐々にロールプレイ要素を加えつつ、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

216 :Q513 ◆RZdXGG2sGw :2012/06/06(水) 07:39:13 ID:???

まずは近所を知っておくことからでしょ

217 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/06/06(水) 10:14:26 ID:???
B ガッツが少ない様に感じるので歓楽街よりも別の所で買い物した方が良いんじゃないかな。

218 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/06/06(水) 11:00:22 ID:???
B 選択理由はガッツが少ない様に感じるので歓楽街よりも別の所で買い物した方が良いんじゃないかな。
森崎視点からはピコの言う通り寄り道も面白いかもなと思うのではないでしょうか。
に訂正します。

219 :◆9OlIjdgJmY :2012/06/06(水) 19:32:38 ID:???

ピコの意向に従って他地区も廻るのなら、下着はそっちで買った方が時間短縮になると考えて。
近所で買ったパンツ持ったまま遠出するのも珍妙だし。

220 :◆W1prVEUMOs :2012/06/06(水) 19:42:17 ID:???

ガラが悪い歓楽街の人間より一般人とお近付きになりたいから
森崎視点からは長く留まるのでピコの言うとおり飯屋以外の店も一通り知っておくのがいいと思ったから

221 :雑魚モブ ◆.xniaLTHMk :2012/06/06(水) 19:58:43 ID:???

どうせその内チェックしなきゃならないなら予定のない今のうちに済ませておきたいから
森崎視点の理由は疲れてる今バーストン兄弟に鉢合わせたくないから

222 :ノータ ◆JvXQ17QPfo :2012/06/06(水) 20:20:35 ID:???
「B」
理由:地元の地理が飯屋と兵舎、訓練所ぐらいしか知らない今の森崎が
   下着を買いに行くのであれば地元でぐるぐる回るより
   商店街のある地区で確実に買える方を選ぶはず。

223 :テトラ ◆yfCGLLZSBA :2012/06/06(水) 20:33:22 ID:???
B
買い物が目的だし歓楽街に行くには時間が早いので

224 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 00:54:26 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>215の選択については……

>>222 ノータ ◆JvXQ17QPfo様の回答を採用させていただきます!
まったくもってその通り、と頷かざるを得ない、簡潔にして合理的な回答でした。
CP3を進呈いたします。


>>216
そうですね。
もし寄り道をしていたらこの街に特有の知己や称号を得られていたことでしょう。
勿論、他の寄り道にも同様のイベントはあるわけですが。

>>218
ガッツが減るような歓楽街の使い方……は、ずばり選択と引き次第で可能でした。
相変わらずの鋭い読みに感服いたします。

>>219
妙な絵面ですよね……まあ、さすがにナマでぶら下げていくわけではないでしょうけどもw

>>220
清濁併せ呑むのが理想……とはいうものの、善人と交わっていればそうなりやすいですし、
悪党との関わりが深ければ自然とそちらに近づいていきますね。

>>221
バーストン兄弟との鉢合わせ……なるほど、もしAの回答が採用されていたら
そのアイデアを頂いてCP進呈、というところでした。

>>223
確かにこの街の本番は夜ですね。
街を巡る順番が逆だったなら、或いは……?

225 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 00:55:34 ID:???
ご回答いただいた方全員にEP1を進呈いたします。

***

B 他を当たる


「……ま、フツーに考えて商店街に出た方がいいよな、買い物するなら」
『そだね』
「正直、あっち側にも興味はあるんだけどな」

言って森崎が覗き込んだ路地の向こうには、桃色やら紫色やらで彩られた独特の店が並んでいる。
曲がりくねった金文字で飾られた看板には『夜の殿堂・黒ネコ亭』『艶笑楼』『通人喫茶・はいたまま』等々、
いかにも、といった風情の屋号が刻まれていた。
独特の空気感を持つそれらの店をちらりと見やったピコが、わざわざ森崎の顔の前へと降りてきては
路地の奥と森崎の目とを見比べて、小さな肩をすくめてみせる。

『……ふーん』
「な、何だよその目は! その街を知るには、その街の女を知るのが一番手っ取り早いんだよ!」
『何さ、知った風なこと言っちゃって』
「痛ぇっ!」

ふわりと飛んだピコが、森崎の耳を引っ張ったものである。

『さ、フツーに考えて次行くんでしょ、次』
「イテテ、だから離せって、おい!」

こうして森崎は小さな相棒に耳たぶを掴まれたまま引きずられていくのであった。


***

226 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 00:56:35 ID:???


「お城は今日も異常なし、っと」
『ま、尖塔の先っぽしか見えないけどね』

城塞都市ドルファンの中央に壮麗な姿で聳え立つのがドルファン王城である。
周囲を城壁と濠とに囲まれた、その旧トルキア様式を受け継ぐ建築美術の粋が衆目に晒されるのは
年に一度、クリスマスの夜だけだった。

「で、この城の周りが城央、ドルファン地区ってわけだな」
『このキャラウェイ通りも、すっかり見慣れたねえ』

キャラウェイ通りは王城の南東に位置する、この城塞都市一の目抜き通りだった。
両手いっぱいに買い物を抱えて家路につく主婦、緊張の面持ちで商談に向かう商人、
人の多さに目を白黒させる異国の男、お使いに走る小僧、連れの男に服をねだる少女、
巡回する地区警備隊の歩哨から、それを警戒しながらカモを見定めようとする悪党まで、
広い通りはあらゆる種類の人間で溢れている。

『毎日毎日、すごい人の数だよね』
「ま、このドルファンは南欧じゃ一番景気のいい国の一つだからな。人は金に寄ってくるもんだ」
『キミもその一人ってわけだね』

マルタギニア海貿易の中継拠点として栄えるドルファン港の富を象徴するような、それは一大商業地である。
シーエアー地区と隣接する南側には比較的安価な品物を扱う雑貨商や食料品を扱う市場があり、
北側、即ち王城に近づくほど高級な店構えが増えてくる。

「実は俺、この先に何があるのかはよく知らねえんだよ」
『そうなの?』
「普段メシ食いに出てくるのはこの辺までだからな」

227 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 00:57:39 ID:???
と、森崎が立ち止まったのはキャラウェイ通りの中心よりも南側、庶民的な店や露店が立ち並ぶ一角である。
傭兵用の兵舎には、飲み水を溜めた瓶はあっても三食を提供するサービスなどは存在しない。
必然、外食となる森崎たちの腹を満たすのがこの界隈であった。

「言ってたら腹減ってきたぜ。とりあえず何か食ってこう」
『さんせーい!』

迷いのない足取りで森崎が向かったのは一軒の食堂である。
華美ではないが落ち着いた装飾の看板には『波間のかもめ亭』と流麗な筆記体で刻まれている。
森崎、行きつけの店だった。
扉をくぐると、野太くも威勢のいい声が森崎を出迎える。

「へいらっしゃい! ……お、モリサキじゃねえか。珍しいなこんな時間に」
「今日は休みでね。街をぶらついてるってわけよ」

既に半分以上が埋まった店内を見渡しながら店主と挨拶を交わすと、勝手知ったるといった様子で
空いた席に腰掛ける森崎。

「何にする? って聞くまでもねえか」
「ああ、いつもので頼む」

禿げ上がった頭をつるりと撫でると、恰幅のいい店主は片手を上げて店の奥へと消えて行く。
そのやり取りで通じるほどに、森崎はこの食堂に通っていた。

228 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 00:58:40 ID:5V+ljkxY
*ドロー

! と food の間のスペースを消して、「いつもの」メニューを決めて下さい。

「いつもの」って何だっけ? → ! food

※まともな食事であればガッツが回復します。
和食であればより大きく回復します。
ゲテモノの場合はガッツは回復しませんが、称号とスキルが手に入ります。

229 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 01:01:30 ID:???
「いつもの」って何だっけ? →  トリュフ

230 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/06/07(木) 01:03:40 ID:???
「いつもの」って何だっけ? →  京風懐石

231 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 01:15:49 ID:???
特に何も書かれていない判定でもコテ必要だから
230の料理が選ばれるんだよな?
かなり良いのが出たなあ

232 :森崎名無しさん:2012/06/07(木) 01:17:37 ID:???
庶民的な店が出す料理じゃないな。

233 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 01:20:39 ID:???
>>230
お見事です。
通常のEPに加え、CP1を進呈いたします。

***


「へいお待ち!」

しばらくの後、店主が大きな盆に幾つもの小皿を乗せて運んでくる。
ことりと静かな音を立てて木製のテーブルに置かれたのは、
ドルファン近辺ではまず見かけない朱塗りの漆器である。
小さな皿の一つ一つには、一口大の野菜や魚が色鮮やかに盛りつけられていた。

「うひょー、これこれ! こいつを食わなきゃ始まらねえ!」

森崎が嬉々として言う。
それもそのはず、森崎の目の前に並んでいたのは他でもない、
彼の遠い故郷の料理だったのである。
手にしている食器もフォークやナイフではない、一膳の塗り箸であった。

「まさか海の向こうで、これほど繊細な都の味わいに会えるとは夢にも思わなかったぜ。
 これを食えただけでも、この国に来た甲斐があったってもんだ。
 給料全部はたいたって惜しくねえ味だぜ、こりゃあ」
「嬉しいことを言ってくれるねえ。ゆっくりしてってくんな」
「いっただっきまーす!」
『……ねえ、キミ』

早速先附の蒸し海老にかぶりつこうとした森崎の鼻先に、
ピコがふわりと舞い降りる。

234 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 01:22:53 ID:???
「んあ? 何だよ」
『買い物のこと、このおじさんに聞いてみたら?』
「あ、ああ……そうだったな」
『キミ、自分が何しに出てきたか完全に忘れてたでしょ』
「んなことねえよ……なあ、オヤジ」

いかにも残念そうに口に運びかけた箸を置くと、森崎が
既に踵を返していた店主を呼び止める。

「ん? どうした、モリサキ。本場の車海老と違うのは勘弁してくれよ」
「いや、そうじゃなくてよ。あんた、この店は長いんだよな」
「おう、ヤマシロでの修行から戻って、もう十年近くになるぜ」

胸を張って答える店主。

「そいつぁ頼もしい。俺ぁこの街、慣れてねえからさ。ちっと買い出しのことで聞きてえんだが」
「へへっ、この界隈のことなら酒屋のジャンの不倫相手だって知ってるぜ」
「……いやそれはいいけどよ、この辺で安くて質のいい下着と、……」

と、森崎が言いかけた、瞬間である。
店主の顔色が、変わった。
いかにも人のいい、豪快な笑顔は何かの間違いであったかのように掻き消えていた。
代わりにそこに浮かんでいたのは、憤怒と侮蔑に満ちた形相である。
それは嫌悪よりも妥協なく、憎悪よりも湿度の高い、どろりと濁り異臭を放つ感情を、形にしたものであった。

「……!?」

一瞬ぎょっとした森崎だったが、すぐにその視線が自分に向けられたものではないことに気づく。
その黒く粘つく表情が向けられているのは、その後ろ。店の入口である。
そこに一つの、小さな影があった。

235 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 01:24:16 ID:???
「テメェ……!! 二度と近寄んなって身体に教えてやっただろうが! まだ足りねえか!?」

つい今しがたまで愛想のいい言葉を紡いでいた口から吐き出されるのは、怒号である。
店中の客が何事かと店主の方に目をやり、それからその怒号の行き先に目をやって、
納得したように視線を戻す。
中には店主と同じ種類の表情を浮かべて店の入口に立つ影を睨みつける者もいた。
そこに立っていたのは、子供である。
薄汚れた襤褸を纏う、物乞いのような姿。
物乞いと違うのは、片手に銅貨らしきものを掴んで差し出しているところであった。
何かを訴えかけようとするその子供の、襤褸の隙間から溢れるくすんだ赤髪と浅黒い肌を見て
森崎が小さく呟く。

「ジタン……か」
『ジタン、って……あの、決まったところに住まずに旅を続けるっていう?』
「……ま、そういう意味じゃ俺らと似たようなもんだがよ」

ぼそりと言った森崎の言葉は、幸いにして店内の誰にも届かない。
絶え間なく響く店主の怒号と罵声に掻き消されていた。
と、ジタンの子供が小銭を片手に店内へと一歩を踏み入れる。

「……ッ!!」
「おかね、あります……。たべもの、売っ……」

子供が、その願いを言い切ることはできなかった。
店主の躊躇ない蹴りが、その腹の辺りへとめり込んでいた。
小さな影が、ひとたまりもなく店外へと飛んだ。

236 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 01:25:17 ID:???
「ふざけんな! 俺の店に病気でもばら撒く気か、この虫喰い野郎!」

怒鳴った店主が、手近なテーブルで片付けられないまま置き去りにされていた陶器のカップを掴み、投げる。
ごす、と。
店の中にいてもわかるほど、鈍い音がした。
何に当たったのかは、考えるまでもなかった。

「消えやがれ! 汚らしい垢まみれが!」

最後にそう言い捨てると、店主が乱暴に扉を閉める。
ふう、とため息をついて振り返った店主の顔には、既に怒りの色はない。
いつもの愛想のいい笑顔が戻っていた。

「……いやあ〜、お騒がせしてすみませんね皆さん。しっかり叩き出してやりましたんで、
 もうここには近寄らないでしょう。さ、安心して続きを召し上がって下さい」

そう言ってから、それぞれのテーブルの客に律儀に頭を下げて回っていた店主が
最後に森崎の方へと近づいてくる。

「ああ、モリサキにも済まんことしたな。話の途中だったのに」
「いや……いいけどよ」

複雑な表情で手を振る森崎。

「やっぱここでもジタンは嫌われてるんだな」
「当たり前だろ?」

怪訝そうな顔をする店主。
まるで太陽は東から登るのかと聞かれたような、何の疑問を差し挟む余地もない即答だった。

237 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 01:27:00 ID:???
「スィーズランドだってどこだって、同じじゃねえのかい?」
「……ま、オヤジの言う通りだよ。少なくとも俺の行った国では全部似たようなもんだった」
「そうだろ」

頷いて腕を組む店主。

「まったく、いつ涌いたのかもわからねえ不吉な余所者だ。
 どっから潜り込んだのか知らんが、ああいうのはお上もしっかり潰してくれねえと困るぜ」

憤懣やるかたないといった様子で渋面を作る店主に、森崎がぼそりと言う。

「ところで、俺も余所者の外国人だぜ」
「なに言ってやがる、あんた、ヒノモトはナンカツの生まれだろうが!」

何かの冗談と思ったか、店主が相好を崩して、バン、と森崎の背中を叩いた。

「あっちの旦那はアラブ人で、あそこの若いのはハンガリア人だ。
 かく言う俺だって、爺さんの爺さんは北欧の出よ!」

他のテーブルの客を見やりながら快活に笑う店主。
その言葉や表情には、一片の邪気もない。

「で、モリサキ。俺に何か聞きたいことがあったんじゃなかったか?」
「ああ、いや……また今度にするよ、忙しそうだしな」
「そうかい? ……へいらっしゃい!」

軽く手を振って席を立つ森崎。
その様子に何かを言いかけた店主が、しかし扉の開く音に振り返って駆け寄っていく。
店主の背を見送った森崎は、しばし無言のまま箸を動かすのであった。


※ガッツが50回復しました。

238 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/07(木) 01:29:43 ID:5V+ljkxY
***

「……ごっそさん。お代はここに置いとくぜ」
「お、すまねえなモリサキ。今後ともよろしく、またどうぞ!」

店主の威勢のいい挨拶を背に店を出る森崎の眼前を、ふわふわとピコが飛ぶ。

『この辺のお店のこと、聞きそびれちゃったね』
「ま、そんな空気でもなくなったしな。……さて、気を取り直して、どうすっかな」


*選択

A せっかくなので高級商店街へ足を伸ばしてみる。

B とりあえず他の地区へ行ってみようか。

※選択によりイベントが発生します。
 またこの後の行動回数に影響が出ます。
 寄り道ができるのは全部で三箇所までです。

森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【その選択肢を選んだ理由】を【森崎の視点から】
必ず付記していただくようお願い致します。
期限は『6/7 21:00』です。

***

地球の裏側にも懐石本舗は存在した、といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

239 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/06/07(木) 14:11:20 ID:???
B高級商店街の連中が流れの傭兵にまともな対応をするとは思えない。他の場所で買い物はした方が良いと森崎なら考えると思う。

240 :◆XgzPoOaLlE :2012/06/07(木) 16:25:25 ID:???
B Aは金が勿体ない。だから他の地区で買い物する方が良い。店主に追い出された子供が近くにいるかどうか見てから移動する。

241 :とやま ◆bz6wYVJDKA :2012/06/07(木) 19:20:29 ID:???
選択:B
理由:下着の購入という目的を第一に行動するにおいて、
並べられているだろう品物の質から高級商店街はまず選択から外れてくる。
また少し不潔な今の格好でうろつき回りにくいかもしれない場所よりも、歩きやすい場所で買い物したいと考えそう。

242 :◆9OlIjdgJmY :2012/06/07(木) 19:20:43 ID:???

ナチュラルに存在する人種差別には森崎もある程度の違和感を感じているようなので
気を取り直すために、ちょっと歩きたい気分になるかなと。

243 :◆W1prVEUMOs :2012/06/07(木) 19:46:33 ID:???

・高級商店街と森崎のイメージが結びつかない

・貧しい人をゴミのように扱うのを見せられて高級商店街に行く気分じゃなくなった
(自分は人種差別というより貧富の差だと思った)

244 :Q513 ◆RZdXGG2sGw :2012/06/07(木) 20:57:47 ID:???
B
是とするわけではないが、止め(あるいは止められ)なかったのも事実。心の持っていき場がない。
少なくとも、ここは場所を変えてみたいところですかね

245 :雑魚モブ ◆.xniaLTHMk :2012/06/07(木) 20:59:57 ID:???

森崎は生まれながら持った才能を凄く妬むので(本編の話だが)同じように
生まれながらの差別などを嫌いそうなので不快感から離れたいと思うと思うから

246 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 01:37:16 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速ですが、>>238の選択については……

>>242 ◆9OlIjdgJmY様、>>244 Q513 ◆RZdXGG2sGw様、
お二方の回答を採用させていただきます!

満場一致でBが選ばれた中、微妙な心情をうまく拾っていただいたお二方には
CP3を進呈いたします。

またそれらの心情に近い回答をいただいた>>243 ◆W1prVEUMOs様、>>245雑魚モブ ◆.xniaLTHMk様にも
それぞれCP1を進呈いたします。


>>239
そうですね、もしAでこの街に向かうことになっていたら、かなり厳しい魅力判定となる予定でした。
勿論まだまだ序盤ですので、失敗してもそれなりのリターンは用意してはありましたが。

>>240
子供は……もう近くに留まってはいないでしょう。
溝が深まるのと同時に、彼らの危機管理意識も高まっていくのかもしれません。

>>241
高級商店街で一式揃えたら森崎の給料は軽く吹っ飛んでしまいそうですね。
出世してしまえばそれなりの格好が求められるので、こういう街にも用が出てきそうですが…。


ご回答いただいた皆様にはそれぞれEP1を進呈いたします。


***

247 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 01:42:41 ID:???
「……」
『……』

店を出た森崎とピコには、しかし会話がない。
何度も見てきた現実ではあった。
あったが、しかし見慣れるものではない。
見慣れていいものでもないと、今の森崎は考えていた。
もう少し自分の中の何かが違えば、店主を止めることもできたのだろうか。
しかしそれは同時に、彼らの常識を真っ向から否定することでもある。
店主は決して悪人ではない。どころか、むしろ善人と呼んで差し支えない男だった。
愛想のいい笑顔と繊細な料理の味を思い出す。
するとしかし、悪鬼のような形相と皿の割れる音がその記憶に重なって融け合い、
何とも言えぬ苦味だけを舌の上に残して消えていくのだった。

「……ミソがついちまったな。河岸を変えるか」
『そうだね。ちょっと歩いたら、もやもやも消えるよ。……さ、レッツ・ゴー!』

しばらくして、ぼそりと呟いた森崎の言葉にピコも同意する。
肩に降りてちょこんと腰掛けた小さな相棒の重みが、この時ばかりは有難かった。


***

248 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 01:43:42 ID:???


『で、歩いてきたはいいけど……ズイブン場違いな感じがするね、この辺も』

きょろきょろと周りを見渡しながらピコが森崎に訊ねるのは、周囲に閑静な、というよりも
ひどく上品かつ繊細な空気に包まれた佇まいが増えつつあったからである。
とある灰白色の高い塀の上には先端の鋭く尖った鉄の柵が備え付けられ、あるいは端正に
手入れをされていると思しき生垣の向こうには豪奢な邸宅が文字通り垣間見える。

「城東区、マリーゴールド地区だ。貴族の別宅や富豪の屋敷が並ぶ……いわゆる高級住宅街ってやつらしい。
 確かに俺たちにゃ場違いな雰囲気だぜ」
『キミなんか、うろついてるだけで不審者として捕まりそうだよね』
「けっ、言ってろ。……否定はできねえけどな」

付近の奇妙な静けさはひと気のなさを示すものではなく、優雅なスペースの使い方と、そして何より
粗雑な音を立てる存在が近辺からしっかりと排除されていることを表していた。
専属の馬車が多く通るのであろう、シーエアー地区とはまるできめ細やかさの違う石畳で舗装された
平らで真っ直ぐな道を足早に通り抜けようとする森崎。

『そもそもお店がないよね、どう見ても』
「まァ……何となく足が向いただけだからな。とっとと通り過ぎちまおう」
『……あ、ねえ、あれ何だろ、向こうの広いとこ』
「ん?」

ふとピコが指さしたのは、豪華な敷地の切れ間から見える、広大な空間である。
背の低い木で仕切られた、風通しの良さそうな大通りがどこまでも続いている。

249 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 01:44:43 ID:???
通りの左右には生垣で整然と区画整理された花壇や庭園が広がり、その向こうには
四阿と思しき屋根も見えた。
果てなく続くようにさえ思えるその濃厚な緑と花々の彩りは幾重にも連なり、
繋がり合って見る者の瞳を捉えて放さない。

「あれは……国立公園だな」
『コクリツコーエン?』

ピコの鸚鵡返しに頷いた森崎が、手元の地図を見やって答える。

「昔は王族専用の屋敷だか馬場だかがあったのを、下賜して誰でも入れるようにしたんだとよ。
 何でもひたすらどデカくて、全部合わせると訓練所の野っ原よりも広いらしいって話だ」
『へえ、太っ腹だねえ。……ね、行ってみようよ!』

目を輝かせて指をさすピコに、森崎が肩をすくめて答える。

「やめとけやめとけ、色々な名所もあるみたいだが、いわゆるデートスポットだ。
 男一人で行ってもつまらんぜ」
『失礼しちゃう! ここに可愛い女の子がいるじゃない!』
「う〜ん……」

しばし悩んだ森崎だったが、やがて仕方ないとばかりに頷く。

「まあ、まだ時間はたっぷりあるしな」
『やった〜!』

嬉しそうに笑ったピコが、ひょいと舞い降りて森崎の腕を掴むや、ぱたぱたと翅を羽ばたかせる。

「おいおい、そう焦んなよ」
『命短し、ってね! 楽しい時間は目一杯遊ばなきゃ!』

250 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 01:46:01 ID:???
***


聞きしに勝る国立公園。
陽を透かしてはためく翅に引きずられるようにして緑の海に足を踏み入れた森崎が
最初に思い浮かべたのは、そんな感想である。
どこまでも続いているように見えた大通りは、本当にどこまでも続いていた。
果てが、見えない。
等間隔に並ぶ街路樹はマロニエ、栃の木であろうか。
整然と並ぶ木を歩きながら数えていた森崎であったが、百を超えたところで諦めた。
狐狸の類に化かされて同じ所を延々と回っているのではないかと思い始めた頃、
急に眼前へと広がったのが大広場であった。
地図によれば中央広場というらしい。

『噴水だ〜! 広場だ〜! 彫像だ〜! すごーい! ひろーい!』
「おい、待てって!」

籠から解き放たれた蝶のようにふわふわと舞い上がっては降り、降りては舞い上がって
あちこちを指さしながらはしゃぎ回るピコ。
森崎はそんなピコを追いかけるのに精一杯である。

『ねえねえ、キミ! ここ、何があるんだっけ?』
「さっき言っただろ!」
『もう一回!』

言いながらピコは紅葉の葉よりも小さな手を一杯に広げると、くるくると回ってみせる。
手に負えないとため息をついた森崎が、眉根を寄せながら口を開く。

251 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 01:47:30 ID:???
「いいか? まず名物はなんといっても『審判の口』と『トレンツの泉』。
 審判の口ってのは、嘘をついた人間が手を入れると食い千切られちまうって伝説を持つ彫刻だ」
『トレンツの泉は?』
「神話を基にした人魚の像が飾られた泉だ。コインを投げ入れると願いが叶うと言われてる。
 まあ、どっちも有名な観光スポットだな。俺でさえ知ってる。……ここにあるとは知らなかったけどな」
『で、他にもあるんだよね!』

付け加えるような森崎の言い訳など、興奮したピコの耳には入っていないようだった。

「ここが王族の邸宅だった頃の名残で、『フラワーガーデン』ってのがあるらしい。
 その名の通り、季節の花だけをひたすら集めた庭園なんだとさ。
 春と秋にしか開放されないらしいが、ちょうど今がその時期だな」
『すご〜い! 見てみたーい!』
「え〜と、ここからだと……右が審判の口。真っ直ぐ行くとトレンツの泉。
 左に曲がっていけばフラワーガーデンがある、らしいぞ」
『で、どれから回ろうか?』

何気なく言ったピコの言葉尻を、森崎の方は聞き逃さない。

「どれから……って、全部は無理だぞ! どれか一つだけ!」
『え〜!』
「えー、じゃない!」

断固として言う森崎。
ピコに負けじと、大きく両手を広げて周りを指し示す。

252 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 01:48:34 ID:???
「つーかこの広さ、見りゃわかるだろ! 下手すりゃ一里四方じゃきかねえぞ?
 目的地に向かって歩いてくだけで一苦労だっての!」

つかの間、二人の視線が真っ向からぶつかり合う。
先に折れたのは、意外なことにピコの方であった。
目を逸らすと、頬を膨らませながら森崎の顔の周りを飛び回る。

『ぶ〜……じゃ、どれに行くかはキミが決めてよ』
「なんで俺が?」
『もう! デートコースは男の子が決めるものだよ!』
「くあ……」

思わず天を仰いだ森崎が、僅かな逡巡の後に決めた答えは―――



253 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 01:49:51 ID:NdY1JNlo
*選択

A 「審判の口だな」 新聞記者とお姫様ごっこである。

B 「トレンツの泉だろ」 幸せが落ちているという噂である。

C 「フラワーガーデンかな」 期間限定である。


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『6/8 21:00』です。


******


恐るべきは森崎のエア充っぷり……! といったところで
本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

254 :雑魚モブ ◆.xniaLTHMk :2012/06/08(金) 06:04:02 ID:???
B
幸せになれるという噂が事実という証拠は無いが自分の近くに非科学的存在(ピコ)がいるので
信憑性が無い噂も信じてみる価値はあると考えると思うから

255 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/06/08(金) 10:40:50 ID:???
C 期間限定だし、ピコの反応が一番良さそうだったから。

256 :◆W1prVEUMOs :2012/06/08(金) 18:18:12 ID:???

ピコが彼女もありなんじゃね?と思ってたので
ピコに喜んでほしい

257 :とやま ◆bz6wYVJDKA :2012/06/08(金) 20:04:55 ID:???
選択:A
理由:なんとなくピコの行きたそうなところはCですが、せっかく選択権が森崎に委ねられているので。
   森崎のリードとして、男女のデート場所といえばここかなと。
   プラスやるイベントが明確、という点もあったりw

258 :Q513 ◆RZdXGG2sGw :2012/06/08(金) 20:55:38 ID:???

色々な植物を見続けていれば手持ち無沙汰になることはなさそう
幸いピコは興味あるみたいだし

259 :テトラ ◆yfCGLLZSBA :2012/06/08(金) 20:59:20 ID:???
B
傭兵なんで縁起の良さそう所に

260 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 23:23:34 ID:???

皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>253の選択については……

>>256 ◆W1prVEUMOs様の回答を採用させていただきます!

恥ずかしい話、ピコに喜んでほしい……という視点は書いていてまったく想定していませんでした。
正に目から鱗、といった状態で森崎の人物像に新たな一面が加わりそうです。
CP3を進呈いたします。

同様の視点を提示いただいた>>255 さら ◆KYCgbi9lqI様、>>258 Q513 ◆RZdXGG2sGw様にも
それぞれCP1を進呈いたします。


>>254
この世界に魔法はありませんが、信じていれば奇跡くらいはどこかにあるかも知れませんね。
ちなみにこの世界のサイエンスは、実際の歴史よりかなり極端にケミカルに傾斜していたりします。

>>257
あの場所でやることは、まあお約束ですよねw
国立公園デートはこの後にも(選択や展開によっては複数回)チャンスがありますので、
試してみる機会はありそうですね。

>>259
確かに傭兵や船乗りといった命懸けの仕事を生業にしている人間は強く験を担ぎますね。
シビアな現実主義の部分と、それだけでは乗り越えられない理不尽に対する防衛心理の
複雑なせめぎ合いは興味深いところです。


261 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 23:24:35 ID:???
***


「……じゃ、フラワーガーデンに行くぞ」
『わ〜い! でも、何で?』
「ぐっ……そ、それは、その……」

無邪気に問い返すピコに見つめられた森崎が、言葉に詰まって目を逸らす。
お前が喜びそうだから、とは気恥ずかしくてとても口にはできなかった。
代わりに出てきたのは、照れ隠しの悪態である。

「い、今しか見られないってのに弱いんだよ! 他に理由なんかねえぞ!」
『ふうん、そう? まあいいや、それじゃフラワーガーデンにレッツ・ゴー!』

言うべき言葉は、これで良かっただろうか。
いつも通りに聞こえただろうか。
僅かに熱を帯びた頬には、気づかれなかっただろうか。
くるりくるりと歓喜を表すように舞う小さな相棒を追いながら、森崎はそんなことを考えていた。



262 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 23:25:58 ID:???
***


『うわぁ……』

そこにあるのは、色彩の海である。
春を告げるミモザの淡黄から菜の花の目の覚めるようなレモンイエローへと渡されたバトンは
橙色を帯びたレンギョウの房へと繋がり、マーガレットの蛍白色と水仙の透き通るような白が受け止める。
その向こうに広がっているのは一面のチューリップだった。
天を仰いで咲き誇る花の群れは五色の衣を纏うようにあらゆる彩りをその身に宿している。
パールゴールドから象牙色に近いカーキ、黄金色を経て橙、朱、緋、赤、紅、薔薇の如きクリムゾン、
マゼンタ、カーマインの先には躑躅色から珊瑚色、石竹色が広がり、桃色から淡い桜色。
唐突に目を刺すディープピンクをすぐ脇のバイオレットが中和し、インディゴから藤色、深紫と
円を成し、壮大な色彩環を形成している。
左右に目をやれば、群青と水色、淡紫と蒼と青とが交じり合っている一角はヒヤシンスとライラック、
ムスカリにクロッカスだろうか。
八重九重に花びらを散りばめて咲くラナンキュラスの絨毯も風に揺れて美しい。

「こりゃ、すげえな……」

森崎も、それきり声を失う。
圧倒的であった。
それは一輪二輪の花という単位ではなく、空間を埋め尽くして咲き誇る群体のようでもあった。
事実、花蜜の甘い匂いは大気に溶けて混じり合い、既にどの花の香りであったかは意味を成さない。
濃密な彩りの波濤は網膜を侵し、花の香は鼻腔の奥で弾けて揺れて、知らず森崎の膝がぐらりと崩れる。

263 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 23:26:59 ID:???
「っ、と……」

慌てて姿勢を立て直す森崎。
その眼前には、花々の海を舞う小さな影がある。
透き通った翅は陽光を反射して時折きらりと煌めき、或いは咲く花の黄や紅や紫を映して
水面のようにゆらゆらと輝いている。
それは誇張なく神話の一幕、夢物語の中を舞う幻想に他ならなかった。
手を伸ばせば崩れて消えてしまいそうな儚さに、森崎は声をかけることもなく小さな相棒の姿を
その視線だけで追っていた。

「―――」

やがて、花々の間を遊ぶ小さな影が次第にこちらへと近づいてきて、
幻想の時間の終わりを告げる。

「もう……いいのか?」
『うん。充分だよ』

訊いた森崎の方が、その終幕を惜しむような顔をしている。
言ったピコは、目を閉じていた。
小さな手は胸の前で組まれ、空の一点に留まっている。
いま見た景色を、抱きしめるように。
刻むように。

『すごく……すごく、楽しかった。……ありがとね』

そっと呟いた顔は、いままでに見たどんな表情とも違っているように、森崎には思えた。
目を開けば、ひとたび翅が羽ばたけば、そこにいるのはきっと、いつもの相棒だろう。
しかし、いまこの時だけは、それはひどく異質で、特別で、そして何より貴いものであるように、思えた。


***

264 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 23:28:01 ID:???

少し歩いて帰ろうかと、どちらからともなく言い出してからしばらくの後。
新緑の中、花の香りの余韻を楽しんでいた森崎の裾を、ピコがつい、と引っ張る。

『……ね、あの人、どうしたんだろ……?』

言われ、その小さな指が示す先を見る森崎。
さわさわと梢が揺れ、木漏れ日が複雑な文様を作り出している、その下に何かがあった。
芝生にうつ伏せのまま動かない影は男、それも肌や髪からは老爺のようである。

「あー……何やら、爺さんが蹲ってる……つーか、倒れてるな」
『の、呑気なこと言ってる場合じゃないよ! どうするの!?』
「まあ……」

ぐいぐいと引かれる裾を直しながら、森崎が選んだ道は―――


*選択

A 「どうした、爺さん」 介抱してやる。
(モラルが上がります。人物称号が変わります)

B 「放っとけ、きっと酔っ払って寝てんだよ」 関わらない。
(モラルが大きく下がります。人物称号が変わります)


森崎の行動としてどれか一つを選択して下さい。
その際【選択理由】を必ず付記していただくようお願いいたします。
期限は『6/9 21:00』です。


265 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/08(金) 23:29:01 ID:NdY1JNlo
******

いい感じ。でも他のお客さんがいたら、一体どう見えてたんでしょう…?
といったところで、本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜分のお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

266 :◆W1prVEUMOs :2012/06/09(土) 08:24:05 ID:???

倒れてる老人を見捨てるようじゃ、ジタンの子供に店主がしたことと変わらないのではないか

267 :Q513 ◆RZdXGG2sGw :2012/06/09(土) 09:10:34 ID:???

情けは他人のためならず

268 :見てる人 ◆S/MUyCtQBg :2012/06/09(土) 10:18:07 ID:???
A 逆に考えるんだ。酔っ払って寝てるとしても、介抱したら吉良監督でキラノートとかもらえるかもしれない。

269 :◆9OlIjdgJmY :2012/06/09(土) 11:21:56 ID:???

自らを犠牲にして人助けするような聖人君子ではないが
たいして手間もかからない人助けくらいはする人物だと思うので。
ここは戦場ってわけでもないし。

270 :傍観者  ◆YtAW.M29KM :2012/06/09(土) 11:29:43 ID:???
A
「でも他のお客さんがいたら、一体どう見えてたんでしょう…?」が気になるんですな。
実はこの爺さんが起きてて見物してて変な噂を流された、は嫌w
あとまあ、ピコとの会話関係はもうちょっと気をつけたほうがいいかも。
魔法のない世界だし、精神病院送りはやっぱり嫌w

271 :さら ◆KYCgbi9lqI :2012/06/09(土) 11:37:17 ID:???
A平穏な時ぐらい人に親切にしておいても損はないと思います。

272 :とやま ◆bz6wYVJDKA :2012/06/09(土) 20:13:00 ID:???
選択:A
理由:見知らぬ少女を助ける、ピコを気遣える。
   そういった今の森崎の人間像ならば、こちらの選択が自然であろうから。

273 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 02:48:47 ID:???
皆様、ご回答ありがとうございます。
それでは早速、>>264の選択については……

>>272 とやま ◆bz6wYVJDKA様の回答を採用させていただきます!
この選択では満場一致でAが選ばれていますが、これによって人物称号が変わりますので
今回のBのように、大きくモラルを下げるような選択肢は出現しなくなります。
簡単に言えば「すごくいい人っぽい選択肢」〜「普通の人っぽい選択肢」が出てくるようになりますね。
CP3を進呈いたします。

>>266 ◆W1prVEUMOs様の回答についても、差別意識と道徳観とはまた別の問題ではあろうかとは
個人的には愚考するものの、今回の展開にも少し絡めさせていただきます。
CP1を進呈いたします。

また>>268 見てる人 ◆S/MUyCtQBg様の回答ですが、そう来たか! というネタ、ありがとうございます。
この後のカードドローに加えさせていただきますので、CP1を進呈いたします。
また、そのドローで見事にヒットした場合は追加でCP3を進呈いたします。


274 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 02:55:39 ID:???
>>267
そうですね。
見ている人は見ている(こともある)、ということを忘れてはいけません。
厄介事を呼び込む場合も、中にはありますが……。

>>269
はい、前述の通り、今回の人物称号変化でその傾向は強くなるでしょう。
礼法値次第でまた変わってくる部分でもありますが。

>>270
原則として……というより、例外なく「見えていない」ですからねw
とはいえまあ、傭兵として生きる限りはそう心配はないでしょう。
殺伐とした生活に心が病んでいる人の多い職種なので……。

>>271
そうですね。
ただ、モラルが上がりすぎると平時でなくても利他的な行動を取る場合がありますし、
方便のための嘘や、大のために小を切るような選択ができなくなりますので、
その点には覚悟か注意が必要になってくるかも知れません。
とはいえ、礼法・モラル共に中央値から離れるほど上がり/下がりづらくなりますので
あまり普段から過敏になることもありませんが。

275 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 02:57:04 ID:???
A 「どうした、爺さん」 介抱してやる。


声をかけたのは、果たして純粋な義侠心や親切心からだったのか、
森崎自身にもそれはわからない。
先ほどの幻想の余韻が、訓練漬けの殺伐とした心を和らげていたのかもしれない。
或いはあの食堂で見た光景やその後の砂のような食事の味や、そういう森崎の中に燻っていたものたちが
今になって背中を押したのかもしれなかった。

(―――この国は、俺の調子を狂わせる)

蹲る人影に向けて踏み出しながら、そんなことを考える。
二歩目、そんな自分も悪くないと思えて、苦笑し、小さく首を振る。
悪いも悪くないも、ない。
いつであれ、どこであれ、見る景色、聞く言葉、それによって紡がれる感情や衝動や、
湧き上がる気持ちや発する声や、そういうものが自分だ。
そういう小さなもの、見えないもの、或いは大きなものや目を逸らせないものの集合が
森崎有三という男なのだと、森崎は考えている。
そうして三歩目を踏み出す前には、そんな風に考えていたことも、綺麗に忘れてしまっていた。

「おい、具合でも悪いのか?」

駆け寄った森崎が声をかけると、老爺は微かに顔を上げた。
白髪に長い白鬚を蓄えた老爺は、見れば身なりも整っている。
シャツの仕立てを間近で見れば、浮浪者や酔漢の類ではないことはすぐに分かった。

276 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 02:58:07 ID:???
「……、……っ、……!」

荒い呼吸に血の気の引いた顔色。
蒼白に近い額にはじっとりとした汗が珠になっている。
震える手が、胸の辺りの生地を破り裂かんばかりに握り締めていた。

(と、すると……癪か、心の臓か)

一目、そう判断を下す森崎。
とはいうものの、医術の心得などあるはずもない。
胸を押さえる病人はそのどちらかであろうと見当をつけただけである。
そんな森崎をほとんど視線だけで見上げた老爺が、不安定な呼吸の中、もごもごと口髭を震わせた。

「……す、り、……」
「え? 何だって、爺さん」

老爺を抱きかかえるようにして耳を寄せた森崎が、その身体の軽さに驚きながら聞き返す。
薄い絹の生地越しに、べったりとした老爺の汗が掌に貼りついていた。

「く、くす、り……を、」
「薬!? 薬持ってんのか、爺さん! どこだ!」

耳元で怒鳴るような森崎の声に、老爺が震える手で指さしたのは胸元に下げられた小さなロケットである。
桃の種ほどの銀細工は、どうやら中が空洞になっている。
脇の留め金を開けると、中からは茶色い丸薬が一粒、転がり出てきた。

「っと……! こいつだな、水はなくても大丈夫か!?」

277 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 02:59:31 ID:???
指先で摘めるほどの丸薬を落とさないように慎重に受け止めた森崎の問いに、
老爺が荒い息をつきながら首肯する。
痙攣と見紛わんばかりであったが、ともあれ森崎は丸薬を老爺の口元へと運ぶと、
薄く開いた唇の隙間へと指先で詰めるように押し込んだ。
呼吸、一つ。

「……、……っ……、……」

二つ、三つ、四つ。
十を超える頃、目に見えて老爺の息が整っていくのがわかった。
青ざめていた頬にも僅かに赤みが差し始める。

『ど、どう……?』
「ああ……とりあえずは、良さそうだ」

いつの間にか舞い降りて、髪を掴んでいたピコに向けて声をかける森崎。
と、その声をどう取ったのか、老爺が薄く目を開ける。

「ぉ、おお……。どこの……どなたかは、知らんが……、済まんかったの……」
「おい爺さん、無理すんな。しばらく寝てろよ」

止めようとする森崎を手で制して、眉間に皺を寄せた老爺が再び目を閉じるときっかり三つ、深呼吸する。
ゆっくりと上体を起こすと、もう一度大きく息をついた。

「いや……もう、大丈夫……。少し休めば、良くなる……」
「そうか? なら、いいけどよ……」

と、なおも心配げに老爺を見守る森崎の耳に、飛び込んでくる声があった。

278 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:00:33 ID:???
「だ・ん・な・さ・ま〜!」

遠くの方で、誰かが大声で叫んでいる。

「おぉ〜い、旦那様ぁ〜! どちらにいらっしゃるんですかぁ〜!」

どうやら人を捜しているようだった。
その声を聞いた老爺が、真っ白な片眉を上げると口を開いた。

「おお、儂を捜しに来た者のようじゃ……」
「そうなのか?」
「散歩の途中で、はぐれてしまっての。済まんがお主、ちと呼んできてもらえぬか」
「そりゃ構わねえが……一人にして大丈夫か?」

気遣う森崎に、老爺が皺だらけの大きな手を振る。

「ああ、ようやく落ち着いてきたわい……もう、心配要らん。
 それにしてもお主、最近の若衆にしては珍しく、気のいい男じゃのう」
「気のいい、って……いや、それほどのことはしてねえよ」

言われた森崎は、照れたように鼻の頭を掻くばかりであった。


***

279 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:02:05 ID:???


※モラルの上昇により、人物称号が『気のいい』に変わりました。
 全回答と判定に影響を及ぼします。

 現在の称号は『気のいい慎重派』です。


***

280 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:03:13 ID:???


『……あの人、でいいんだよね……?』
「ああ、多分な……」

不安げに言うピコと目を見交わした森崎が視線を戻した先。
ぴょこぴょこと跳ねるように辺りを見回しているのは、一人の女性である。
春の陽気にも肌の露出を極力抑えるような黒の長袖にロングスカート。
ヒールの低い編み上げの革靴を履いた足は忙しげにあちらこちらへと歩を運んでいる。
布を巻いた頭の後ろからは一本にまとめた長い髪の束が覗いており、女性がその向きを
変えるたびに馬の尾のように揺れていた。

「旦那様ぁ〜! ……んもう、どーこ行っちゃったのかなー、あのおジイちゃんってば!
 ちょっと水を汲みに行ったらいなくなるんだもん。とうとうボケちゃったかな?」

主を呼ぶ声とほとんど変わらぬ大声で雑言を漏らしたその表情には、
遠目にも不安が浮かんでいるようには見えない。

「……本当にアレだよな?」
『あ、行っちゃうよ!』

声をかけそびれていると、女性は他の場所を探そうというのか、森崎の方から遠ざかっていこうとする。
慌てて呼びかける森崎。

「おい、あんた!」
「ひゃあ!? な、何!?」

それほど大きな声を出したつもりはない。
特に奇抜なことを口走ったわけでもない。
しかし突然背後から声をかけられた女性は大層驚いた様子で、文字通り飛び上がっていた。

281 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:04:14 ID:???
「うお……」
『なんか、スゴい反応だったけど……』

女性は振り返って辺りを見回し、周囲には森崎しかいないと確認するや、血相を変えて猛然と駆けてくる。
思わず逃げ出しそうになる森崎だったが、何のために声をかけたのかを思い出し、
かろうじて自制した。

「ちょっと、そこのアンタ! もう! イタズラなら―――」
「ああ、驚かせちまったんならすまない。ひとつ確認したいんだが……」

眦を決して迫ってくる女性を手振りで制し、用件を伝えようとした森崎だったが、
女性の口から次に飛び出す一言に絶句することになる。

「―――イタズラなら、わたしも混ぜてよね!」
「え? ……混ぜ?」
「で! 次は何やるの!? 落とし穴? 看板の書き換え? トレンツの泉の小銭拾って
 塔みたいに積み上げて、ネコババしようとするヤツを脅かす遊びは先月もやったばっかりだから
 あんまりオススメできないけど、あ、でも逆に……」

女性の目に宿る意気込みは、本気だった。
本気で森崎が自分を驚かせたのだと思い、本気でそれが悪戯だと信じ、そしてまた、
本気で次の悪戯に自分も参加せんとする、それは瞳だった。

『やっぱり、人違いじゃないかな……。何だか、あんまり関わっちゃいけないニオイがするよ……』
「……。や、そうじゃなくてよ」

ピコの囁きに同意しかけた森崎が、一人迎えを待つ老爺の姿を思い出して小さく首を振る。
大きな瞳をキラキラと期待に輝かせる女性に向かって、意を決したように言った。

282 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:05:39 ID:???
「なあ、あんたが捜してるのって、こんな髭生やした爺さんか?」
「え? なんで知ってるの? ……まさか! 誘拐犯!? 身代金目的!?」
「違ぇよ!」

放っておけば際限なく膨らみそうな妄想を一刀のもとに斬って捨てた森崎の言葉に
女性は一瞬だけきょとんとした表情を浮かべると、すぐに真剣な顔つきになり、
そしてすぐに照れたように笑って手を振る。

「じゃあ、まさか! ……新手のナンパ!? やだもう、それならそうと言ってよー!
 うーん……外国人かあ、どうしよっかなあ……ね、じゃあご飯、おごってくれる?
 わたし、キャラウェイ通りに言ってみたいお店があってさ、この間お姉ちゃんが
 友だちと行ってすっごい良かったとか言ってて、」
「爺さんの話はどこ行ったんだよ! ていうか人の話聞けよ!」

一言、二言で済む説明に要した時間は、ゆうに数分を超えたという。


***

283 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:06:40 ID:???

「あ、いたいた! もう、えっらい捜したよ、旦那様〜!
 旦那様に何かあったら大奥様にも家令さんにも、大目玉じゃ済まないんですから〜!」

隙あらば無駄に喋り倒し、何かを見つけては駆け出して余計なことをしようとした挙句、
最後にはほとんど森崎に引きずられるようにしてきた女性が老爺を見つけるや言ったものである。

「おお、キャロル……面倒をかけたな」
「本当にもう、ダメですよ〜。子供じゃないんですから、あっちこっち出歩いちゃ」
「……」
『疲れてるね……』

もはや何を言う気力もない、といった体で首を振った森崎が、しかし女性の言葉に
ふと老爺を見やる。

「旦那様、大奥様に家令……って、そういや爺さん、あんた何者だ?
 やっぱこの近くに住んでる貴族か何かか?」
「おお、そうか。名乗りが遅れたの。儂は……」

老爺が告げた、己の正体とは―――



284 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/10(日) 03:08:18 ID:ioLiSuAo

*ドロー

越後のちりめん問屋? → ! card


※ ! と card の間のスペースを消してカードを引いて下さい。
結果によって展開が分岐します。

スペード・ハート→「しがない隠居の身よ。かつては白騎士などと呼ばれたこともあったがのう」
ダイヤ・クラブ→「……亡国の爺ぃじゃよ。革命の火は儂からすべてを奪っていった……」
JOKER→「この顔を忘れたか、森崎」「ま、まさか、あんた……明和の大虎、吉良耕三……か!?」


***


本当はこの時代にはまだ男性につくのは近侍であって、メイドさんではなかったと思います。
夢物語。といったところで、本日の更新はこれまでとさせていただきます。
夜遅くまでのお付き合い、ありがとうございました。
それではまた、次回更新にて。

285 :森崎名無しさん:2012/06/10(日) 03:10:37 ID:???
越後のちりめん問屋? →  ダイヤ8

286 :Q513 ◆RZdXGG2sGw :2012/06/10(日) 08:34:35 ID:???
越後のちりめん問屋? →  ダイヤ10

287 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/11(月) 01:25:41 ID:???
>>286
ドローありがとうございます。
EP1を進呈いたします。


***


越後のちりめん問屋? →  ダイヤ10


「……儂はアルメイト・オライリー。今となっては何者でもない、亡国の爺ぃじゃよ」

訥々と語る老人の言葉は、聞く者に沈黙を強いるだけの重さで満ちている。

「もう、十数年にもなるかのう……。革命の火は儂からすべてを奪っていった……愛する妻、
 息子たち、美しき我が所領と民……誇りある国の名すら」
「……」
『革命……っていうと……』

呟くピコの声も、独り言じみて低く響き、梢のざわめきに溶けていく。

288 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/11(月) 01:26:42 ID:???
「ボルキアの、亡命貴族……」
「……」

ピコの言葉を引き継ぐように漏らした森崎の言葉にも、老爺はただ目を閉じ、ゆっくりと首を振る。
それはおそらく、森崎の言葉を否定するものではなかった。
肯んじ得ぬ何か、たとえばそれは時であり、世の潮流であり、運命とさえ呼び習わされる
大きな何かへと向けられた、拒絶の意思であった。
再び、沈黙が降りる。
しかし強いられた沈黙など、意にも介さない者がいた。
勿論、老爺を捜していたメイドである。
けらけらと甲高い笑いで静寂の幕を切り払いながら、言う。

「なーに格好つけてるんですか旦那様。あ、この方、昔はベージャ侯爵っていって、
 ボルキアでは結構偉い貴族だったのよ。だからアンタも粗相しちゃダメだかんね!」
「……」
「……」

唖然とする森崎の腕をばんばんと叩いて笑うメイドの言葉に、脇に座る老爺が
脱力したように肩を落とす。
しかしそれは、呆れ果てたのでも弛緩したのでもなく、水槽に溜まった汚水を洗い流すような、
決して悪くない力の抜け方であるように、森崎には見えた。
このメイドの、ある種底抜けの精神は存外老爺にとっての救いであるのかもしれない。
そんなことを考える森崎に、メイドがその大きな目をくるくると回しながら口を開いた。

「あ、名乗ってなかったよね? アタシはキャロル・パレッキー。旦那様の身の回りのお世話してんだ。
 あ、下のお世話はするけどアッチの方はナシの契約だよ! っていっても、旦那様のは
 もう全ッ然、役に立たないけどね! キャハハ!」
「……むぅ……」

キャロルと名乗ったメイドの、あまりにもあけすけな言葉の羅列に、唸り声ともため息ともつかぬ音が
老爺の喉の奥から漏れた。
同情するように眉根を寄せた森崎が、小声で囁く。

289 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/11(月) 01:27:44 ID:???
「爺さん……あんたのとこ、人手が足りねえのか……?」
「これで仕事はよくできるんじゃよ、仕事はの……」
『……この人にできる仕事って、どんな仕事だろ?』

ピコの疑問は森崎にもまったく答えが出せないものであったが、しかし雇い主が言うのであれば
それなりに間違いのないことなのであろうと、肩をすくめる。

「ほら、帰りますよ、旦那様〜! じゃ、そこのアンタも、ありがとね!」

そんな森崎たちの内心など知る由もなく、キャロルは老爺の脇に立つと、肩を担ぐようにして
無理なく立ち上がらせる。
その手際だけをみれば、確かに慣れた仕事のようでもある。

「……おお、そうじゃ、お主。何か困ったことがあったら、儂の名を出してみるといい。
 ただの爺ぃにも、古い友人はおるでな。役に立つこともあるじゃろうて」

去り際、老爺は森崎にそんな言葉を残していった。
こうして国立公園の散歩は、森崎にとって様々な意味で忘れ得ぬものとなったのである。


******

290 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/11(月) 01:29:28 ID:???

称号『亡命貴族の知己』を獲得しました。
効果:評価+10。

現在の称号は「気のいい亡命貴族の知己」です。


※スキル「旧ボルキアの人脈」が一度だけ使えるようになりました。
旧ボルキア亡命貴族はドルファンとの政治的関係が深く、特定の判定に影響を及ぼします。
使用のタイミング、用途は任意に設定できます。
いざというとき、選択への回答に使用する旨を記載して下さい。
回答が採用された場合のみ、使用回数が消費されます。
【チャレンジ】でも使用可能です。その場合も採用時のみ使用回数が消費されます。


***

291 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/11(月) 01:30:58 ID:???

「ここを抜けて、もうちょっと行けば……ぐむむ、広すぎるんだよこの街!」
『まあ、一国の首都だからね……』

老爺とそのメイドと分かれ、しばらくの後。
支給されている簡単な地図を片手に悪戦苦闘していた森崎だったが、
ようやく正しい道を見出したようで、喜びの声を上げる。

「あそこを曲がって……ほら着いたぞ、次の目的地だ!」
『うわあ……』

角を曲がった森崎を出迎えたのは、瀟洒な街並みである。
一本の大きな坂をメインストリートとして左右には多種多様な色彩の店が所狭しと躍動していたが、
よく手入れの行き届いた街路樹が等間隔に配置され、雑然とした印象は与えない。
整備された石畳は落ち着いた色調で計算された景観を演出している。
明るい色調で並ぶ店構えは坂の下から見上げる森崎に近い方から画廊、喫茶店、菓子屋に小物屋、
小洒落た服屋に軽食店。
どれも明るい色調と可愛らしい装飾に彩られ、埃っぽさや胡散臭さとは無縁の佇まいである。

「マリーゴールド地区、ロムロ坂……。若者に人気の通りとは聞いてたが……。
 な、なかなかハイカラじゃねえか……」
『オシャレさんの街だね……』
「つーか、すげえ浮いてんぞ俺……」

292 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/11(月) 01:32:26 ID:???
どんよりとした顔で呟いた森崎は、言葉通り行き交う人々に奇異の視線を向けられている。
坂を登り、あるいは降りてくる人々は皆、垢抜けた身なりとこざっぱりとした流行の髪型で、
そして何より順風の生を謳歌する者たちに特有の、内側から湧き出すような笑みを浮かべている。
薄汚れた格好に殺伐とした顔つきで立ち尽くす森崎は、そんな彼らとはまさに対照的であった。

『仕方ないね……』
「てか、くそ……せめてこっち、見ろよ……」

刺のある視線を突き刺してくるのなら、まだいい。
跳ね返すことも、逆に突き返すこともできる。
しかしこの明るい街を行く者たちは皆、森崎を一顧だにしようとしないのである。
避けるでもなく、意図して無視するわけでもなく、単に目に入らぬというように、
あくまでも自然な様子で森崎を『ないもの』として扱うようであった。
それはいわば、満ち足りた者たちだけが交わす、そうでない者には見えず聞こえない信号が
頭の上を飛び交っているような、どうしようもない座りの悪さを森崎に与えていた。

『で、どうするの?』
「ぐぬぬ……こうなったら……」

しばらく唸っていた森崎が、意を決したように顔を上げる。

「……こうなったら、行くかピコ! 戦略的転し……」
『うん、逃げるんだね』

言いかけたところへさらりと被せられ、森崎の言葉が止まる。

293 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/11(月) 01:33:45 ID:???
「に、逃げ……」
『逃げるんだよね?』
「ぐ、ぬぅ……」

機先を制された森崎が、奇妙な声で呻く。
このとき、彼の中に巣食う天邪鬼が盛大に騒いだのだろうか。
口を開いて出てきた言葉は、心中とは正反対の代物であった。

「……ハン、に、逃げるだって!? この俺が!?
 森崎有三様が若僧どもの街なんぞにビビってるとでも!?」
『……違うの?』
「そんなわけあるか! 平気の平左だぜ!」

ぎぎぎ、と軋みを上げそうな仕草のまま踏み出した森崎の顔は、見事に強張っている。

『あーあ、無理しちゃって……』
「ほら何してんだピコ、迷子になっても捜してやんねえぞ!」
『はいはい……』

自らを奮い立たせるような怒鳴り声を、ぱたぱたと小さな翅が追いかけるのだった。


***

294 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/11(月) 01:39:51 ID:???
といったところで、本日の更新はこれまでとさせていただきます。
連日、選択のないヒキで申し訳ありません。
本来であればロムロ坂にも行く/行かないの選択があったのですが、
既に二回の行動キャンセルがあったため自動選択となっています。

ロムロ坂では国立公園ほどではありませんが小イベントがありますので、
選択を用意できる見込みとなっております。
それではまた、次回更新にて。

295 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:43:17 ID:???
***


ドルファンにおける若者文化の発信地・ロムロ坂で最も多い業種は飲食店である。
昼間は喫茶店、夜にはアルコールを出す類の店が軒を連ね鎬を削り、栄枯盛衰を体現している。
そんな飲食店の次に多いのが、服飾を扱う店舗であった。
男性向けにはワイルド系からスポーティ、クール、シック、ビビッド、女性向けならキュートにファンシー、
ガーリーやらクラシックやらオーソドックスやらフォーマルやらのドレスにインナー、ジャケット、コート、
シャツにパンツにベルトにシューズ、帽子に時計にアクセサリーと、明日のモードを牽引すべく
それぞれの店ごとの特色を前面に押し出して綺羅星の如く並び、覇を競っていた。
無論、森崎にとって、それはさながら異界である。

「……」
『……』

ドレスコードがあるわけではない。
店員が冷たい目で見るでもない。
そもそも、それ以前の問題である。
森崎の行く手を阻むのは、己が心に聳え立つ敷居の高さであった。

「―――」

ごくり、と生唾を飲み込んで一軒目の扉と睨み合うこと二十分。
無理だと悟って二軒目と対峙すること十五分。
駄目だと呟いて向かった三軒目では、十分と保たなかった。

296 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:44:19 ID:???
「やっぱり、俺にはまだ早いんだよ……」
『帰るなら止めないけどね……まあ、よく頑張った方じゃない』

四軒目の、流麗な筆記体で新トルキア語ではない文字が躍る看板を三十秒ほど眺めた森崎が
そう漏らすと、ピコがそよ風を微塵に刻んだような小さな小さなため息をついて、
森崎の背をぽんぽんと叩いた。
その小さな手の感触に押されるように踵を返した森崎が、とぼとぼと坂を下り出した、そのときである。

「あらン? ……ちょっと、そこのお兄さン」

蕩けるような声とともに森崎を包んだのは、くらくらするような甘い香りだった。
鼻腔の奥にまとわりつくように濃密なそれを麝香だと森崎が看破したのは、
かつて幾度か招かれた高級娼館に漂っていた匂いに酷似していたからである。
振り返ると、そこに女がいた。

「―――」

森崎が、息を呑む。
女性の、女性たる所以をその体一つで表現するような、それは女であった。

297 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:45:20 ID:???
波打つ長い髪は陽光に融けてそれ自体が宝飾品であるかのように輝く黄金。
匠が生涯を賭けた一筆に引かれたような切れ長の瞳から真っ直ぐに鼻筋を下ると、
ふっくらと柔らかそうな唇は鮮烈な朱を引かれ、微笑のかたちに囚われている。
細い喉から流れるような肩のラインは青空の下に晒すことが赦されない罪業であるかのように
白くたおやかで、露出した二の腕に填められた大ぶりな黄金の腕輪は、まるでこの女を
誤って天へと登らせぬよう、大地に繋ぎ止めようとする風ですらあった。
ロングノーズの黒いブーツと萌黄色の長い薄布のドレープとに包まれた足は
御簾の向こうにその影だけを映す高貴な姫君のように脚線美だけを浮き上がらせ、
その魅惑の肌を軽々と覗くことを許さない。
衝動に任せて抱けば折れてしまうだろうと思わせる柳腰から視線を上げれば、
そこには楽園が揺れている。
南国の果実の皮を剥いて中からこぼれ出た白く甘い果肉のような、馥郁たる二つの膨らみに、
森崎の目はピンで留められたように固まっていた。
動けない。否、動くことを網膜が、視神経が、それを司る脳髄が、いま視線を動かすことを
徹底的に拒絶していた。
ふわふわと、ふるふると、おそらくは女の呼吸とともに上がり、下がり、揺れるそれを、
森崎の中の男性と呼べるすべてが求めていた。
世界から音が消える。
温度が消え、匂いが消え、色が消え、ただ視覚と触覚だけが残る世界で、森崎が静かに集中を高めていく。
光が、見えた気がした。
その光に向かって手を伸ばそうとした森崎が、

『この……ばかちんがぁ〜っ!!』
「ぐおおっ!?」

盛大に、叩かれた。
突然の衝撃に森崎は受け身も取れず、前のめりに転がる。

298 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:46:21 ID:???
「……そんなに驚かれるとは思わなかったわぁ。ごめんなさいねン」

色も音も戻った世界で、女が眦の下がった目を丸くして森崎を見下ろしていた。

「……転んだだけだぜ。で、俺に何か用かい、お嬢さん」
『倒れたままカッコつけようとしても無駄だと思うよ』

じとりとした半目で腕を組んだまま、ピコが言う。
思わずそちらを睨んでしまう森崎だったが、女は意に介した風もなく口を開いた。

「お兄さン、この辺じゃすごぉく珍しいカッコ、してるわねぇ。
 私、断然お兄さンに興味持っちゃったのよン」

ねっとりと絡みつくような声音は森崎の耳朶に蠱惑的な響きと熱とを残して溶ける。
その言葉に、森崎がガバリと顔を上げた。

「俺に、興味? ……フフ、フハハ! どうだ! 俺のセンス、見てるヤツはいるってことだ!
 ロムロ坂、恐るるに足らずだぜ!」
『……センスって、きったないだけじゃない』

ぽつりと悪態をつくピコ。
まるでその言葉が聞こえているかのように、女が微笑んで、言った。

「センス? 何を言ってるのン」
「……え?」

大輪の花が開いたような、甘い魅惑に満ちた笑み。
唇の間から、白い歯が覗いた。

299 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:47:23 ID:???
「私が興味あるのは、この街をそンなカッコで歩けるお兄さンの度胸よン。
 アナタ、磨き甲斐ありそうだわぁ。私の服で、変身させてあ・げ・る」
「……なにィ!?」

尻餅をついたままの森崎が見上げる先。
女の背後には、陽に映える白い看板に銀細工の文字が輝いている。

『サロン ノエル・アシェッタ』。

それが彼女の店の名であり、ブランド名であり、そして彼女自身の名でもあった。


***

300 :異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/12(火) 03:48:42 ID:???

「……で、俺にこの中から選べってのか」
「そうよン。まずはアナタがいまどこまでやれるのか、試させてもらうわぁ」

麝香の香り漂う室内に、声が響いた。
できる限り外の光を取り込まぬよう工夫された飾り窓の薄明かりが、店内を淡い色調で満たしている。
外界と切り離されたような静かな空間にいるのはノエルと森崎、そしてピコだけであった。
色彩もデザインもまったく統一感のない、かろうじて衣服というカテゴリだけで括ることのできる
生地たちが所狭しと吊り下げられている中、ノエルが森崎の前に並べたのは三種類の服である。

「……これは分かるぜ。ごく普通だ。仕立ても丁寧で悪くねえし、外に出てもまあ恥ずかしくはねえ」

言って森崎が指さしたのは、真ん中に置かれた一群である。
綿の開襟シャツに無地のスラックス。
風合いにも変わった点はない。
森崎がこの店に入って最初に注文した下着もこざっぱりとしたものが用意されている。

「が、こいつは何だ。服か。本当に」
「私としては、そっちがオススメなのよン。……ちょっと初心者にはキツいのが玉に瑕だけどねぇ」

右側に置かれた一群を指さした森崎に、ノエルが平然と答える。

『……ピエロみたいだね』

ぼそりと漏らしたピコがちょこんと座るその布地は、言葉通りサーカスの道化がその身に纏うような、
過剰なまでのフリルやレースに溢れたものであった。
薄暗い店内でもはっきりとわかるような極彩色をふんだんに使ったその珍妙な装束は上着とズボン、
更には帽子と靴までがどうやら一体化されているようで、蝉が脱皮する様を逆回しにするように
背中から体を入れ、丸く開いた穴から顔だけを出すらしい。

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0ch BBS 2007-01-24