キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【再会?】ファイアーモリブレム41【再会!】

1 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/19(金) 12:38:05 ID:???
キャプテン森崎のスピンアウト作品です。『ファイアーエムブレム紋章の謎』の世界に
送り込まれた森崎が、マルスたちと共にアカネイア大陸を冒険する物語となっています。
基本は本編と同様に、選択肢の中から第三者(ロムしている人)がどれかひとつを選ぶ事によって進んでいきます。
また必要に応じてトランプを引いてもらったりしてランダムに進行していくこともあります。

【注意】
このスレの物語やキャラの性格は、中の人の都合で原作並びにキャプテン森崎本編とは異なる場合があります。
設定などもストーリーの都合上若干オリジナル要素が含まれていますので、苦手な方はご注意ください。

〜これまでのお話〜

マケドニアの国境を守るのは反乱軍副将であるルーメル将軍。
彼は前大戦であの草原の狼ことハーディンを討ち取り狼騎士団を壊滅させた出世頭だった。
ナイトキラーの異名を持つ彼の槍捌きは凄まじく、アリティア近衛騎士クリスの若い命を呆気無く散らせた。
悲しみにくれる間もなく、マルス達はニーナ王女からリンダの手によって『ファイアーエムブレム』を託される。
異界の英雄という立場を乗っ取り、皇帝として君臨しているラムカーネの暴挙は止めるためにも、
森崎たちは一刻も早くミネルバを救出し、マケドニアの反乱を収めることを決意する。

そしてオランダのアムステルダムの街でも、謎の影の暗躍が見え隠れしている。
人為的に『倍速移動』の力を与える実験のため、怪しい薬品を開発している謎の組織。
仮面の男の正体は?イスラスは暗黒の力から逃れられるのか?そして決起に震えるビクトリーノの意地と誇りの行方は?
『倍速』と言う名の運命に立ち向かう男たちの戦いは、アヤックススタジアムで火蓋を切る。


☆前スレ
【反撃の】ファイアーモリブレム40【狼煙】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1346265701/l50
☆過去スレ
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/44.html

401 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 15:52:01 ID:???
>B 外に探しに出てみよう


森崎「クリスマン、ビクトリーノは外に出たって話だよな」

クリスマン「ああ。夕食後のミーティング後だから…夜の9時過ぎ辺りだったかな?」

マルス「丁度シェスターたちの部屋にいた頃だね。彼はこの大雨の中、いったいどうして外に…?」

森崎「そんなに遠くには行ってないはずだ。あいつが行きそうな場所を片っ端から探してみよう」

レンセンブリンク「待ってください。もしかすればもう帰ってきているかもしれません。
         ここは二手に分かれましょう。森崎くん、君は僕達の中から2人連れて外を探してきてください」

森崎「2人か。それじゃあ…」


☆誰を連れていきますか?

A マーガス
B クリスマン
C レンセンブリンク
D カイザー
E マルス

※上記の中から2名選んでください。
『同じ組み合わせ2票』集まった時点で確定です。メール欄を空白にしてIDを表示して投票してください。

402 :森崎名無しさん:2012/10/30(火) 16:03:47 ID:gPuorcR2
AE

403 :森崎名無しさん:2012/10/30(火) 16:14:42 ID:HfwWt1cg
AE

404 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 17:16:18 ID:???
A マーガス
E マルス
===========
マーガス「げぇっ!せっかくシャワー浴びたばかりだってのにまたずぶ濡れになれと?」

マルス「しっかり雨対策をしてからいこう。風邪を引いて明日の試合に影響が出ると本末転倒だ」

クリスマン「それじゃあ俺たちは寮内を調べるよ。もし見つかったら連絡するぜ」

森崎「ああ、頼んだぜ」

森崎はマーガスとマルスを連れて、外へと出る。
バケツをひっくり返した豪雨は、思わず建物へと引き返したくなる衝動に駆られるが、
それだけビクトリーノへの心配も募ってくる。3人は傘の悲鳴の音を聞きながらビクトリーノを探しまわる。

マーガス「しっかし、このアムステルダムに来てからトラブルに巻き込まれっぱなしだよな俺ら」

マルス「そうなのかい?」

森崎「泥棒を追いかけたり、麻薬偽装のお菓子を見つけたり、イスラスが車に撥ねられそうになったり…
   結局まともに練習できたのって今日の午前中くらいだったなぁ」

マーガス「その練習だってペアを組んでの格闘大会とかだろ?
     ホントならじっくり試合に合わせて調整したいところなんだけど…
     でもまぁ、こういう体験ってのも何だか冒険してるみたいで楽しいかな?」

森崎「へへっ、違いねぇ。この先もきっとハプニングだらけの世界遠征になりそうだぜ」

マルス「(この世界では僕達が生活しているアカネイアでは体験できない色々なことがある。
    僕も彼らのように、この世界の様々な事柄を精一杯楽しもう)」

405 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 17:17:28 ID:???
靴が徐々に濡れ、足元が気持ち悪くなってくるこの一瞬すらも気の合う仲間たちとなら平気だ。
鞄で雨をしのぎつつ家路を急ぐ者や、盛大に水たまりを道路脇へ跳ね飛ばす乗用車。
細長の箱のような見慣れない建物に囲まれるこの街の中心で、
マルスはこの時だけ、アリティアの王子という肩書きを降ろし一人の青年として駆けていく。

森崎「(さて、探すにしても闇雲に探しまわるよりどこか具体的な場所を決めたほうがよさそうだな。)」


☆どこを探しますか?

A おしゃれなカフェ
B 素敵なビーチ
C 広いショッピングモール
D 綺麗な美術館
E のどかな公園
F 騒がしい警察署
G 怪しい廃ビル

2票集まった時点で確定です。メール欄を空白にしてIDを表示して投票してください。

406 :森崎名無しさん:2012/10/30(火) 17:18:40 ID:J1TAN65E
G

407 :森崎名無しさん:2012/10/30(火) 17:27:58 ID:pRgD7Hys
G
マルスがいればなんとか…。

408 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 18:22:00 ID:???
>G 怪しい廃ビル


森崎には一つの不安があった。今日の午後、警察から逃げ出した
例の泥棒が入り込んだ廃ビルの中で聞いた怪しい科学者たちの会話の内容だ。

森崎「(確か奴らは『倍速』で走る人間を探していたはずだ。
   ビクトリーノは誰もが認める俊足選手。倍速ドリブルもお手のものだった)」

もしもビクトリーノが彼らの手に落ちたのならば大変だ。
明日の試合どころか今後のブレーメンのチームにとって大きな損失になるだろう。

森崎「ビクトリーノのいる場所に俺に心当たりがある。
   だが、そこはかなり危険な場所かもしれない。……ついてきてくれるか?」

マーガス「何言ってんだ。ここまで来て引き返せるかっての」

ビクトリーノ「彼はチームメイトというだけでなく大事な友人だ。見過ごす訳にはいかない」

森崎「オーケー。それじゃあ行くぜ」

森崎は、一度は身の危険を感じて引き返した廃ビルに足を踏み入れる。



ここで少し時間は遡る。ビクトリーノは自室で一人、明日の試合の戦術を考えていた。
本格的にOMFとして活躍しだした最近では、シェスターが守備的な動きをするときは彼がボールを支配し指揮をとる。
ウルグアイA代表にFWとしての自分の居場所を確保できない現状、
こうして選手としての引き出しを増やしていくことはプロとして必要なことだった。

ビクトリーノ「……森崎のやつこねぇなぁ。ちっ、アイツにどうしても聞いておきたいことがあったんだが……」

409 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 18:23:42 ID:???
なかなか考えがまとまらないメモ用紙をグシャグシャと丸め、ゴミ箱へと放り投げる。
が、紙くずはゴミ箱の縁にあたりカコンと乾いた音がなる。

ビクトリーノ「へっ、さすがの南米の黒豹様もバスケの才能は無いってか?」

恥ずかしさを言い訳でごまかしつつ、紙くずを拾いに立ち上がる。その途中でふと、窓の外に視線が移る。

ビクトリーノ「あれは……?」

世界最速というプライドを粉々に砕かされた、例の仮面の男がどしゃぶりの雨の中で傘もささずに佇んでいた。
仮面の男はこちらを見つめたまま何をするでもなくただ、立ち尽くしている。
仮面を伝う雨粒がまるで悲しみの涙のように見えたのは、風のように走るあの男の足が動いていないからだろうか。

ビクトリーノ「あの野郎……どういうつもりだ?」



★雨と黒豹と仮面→! card★

!とcardの間のスペースを消してカードを引いてください。カードで分岐します

ダイヤ→放っとけず部屋に入れてあげる
ハート→そこで一体何をしているのか問いただす
スペード→見なかったことにしてカーテンを閉める
クラブ→あの時のリベンジをするべく追いかける
JOKER→仮面の男はおもむろに仮面を取り外す…!

410 :森崎名無しさん:2012/10/30(火) 18:24:55 ID:???
★雨と黒豹と仮面→ ダイヤ9


411 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 22:14:01 ID:???
★雨と黒豹と仮面→ ダイヤ9 ★
>ダイヤ→放っとけず部屋に入れてあげる
===========
ビクトリーノ「(アイツ、この大雨なのにあんな所で何やってるんだ?)」

まったく動く気配もなく、ただこちらの方を見つめる不気味な仮面の男。
このまま放っとくのも気味が悪いし、風邪でも引かれたら忍びない。
自分より足の速い男に興味があったのかもしれない。

ビクトリーノ「入れよ。そのまま濡鼠にでもなりてぇのか」

????「…へへっ……悪いねぇ」

ビクトリーノ「靴の泥はちゃんと落とせよ。あとで掃除が面倒だ」

仮面の男はのそのそと這いずるように窓から部屋に入ってくる。
風のように走っていた姿からは想像できない鈍くさい動きだ。

????「……とりあえず助かった。敷地内に入るまでは簡単だったんだが、
     流石に正面から入るのは厳しかったかったんだよ。
     ロビーは開けてて管理室から丸見えだし、
     スタジアムの地下から入ろうにも警備員がウロウロしてたし」

ひょうひょうと語る男の口ぶりは、まるでこの寮のことを熟知しているようだった。
金髪の坊主頭をタオルでガシガシと擦り、仮面を外さないように器用に水滴を拭きとっていく。

仮面の男「なにより……この足じゃ、まともに走れそうに無いからな……」

ビクトリーノ「……お前、この足……!?」

仮面の男の右足はひどく腫れており、黒いシミのような不気味な模様が浮かび上がっていた。
医療の知識に疎いビクトリーノでも、見るからに酷い怪我をしていることが伺えた。

412 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 22:15:25 ID:???
ビクトリーノ「……それで、そんなズタズタの足でいったいここに何をしに来た?
       言っておくがここは病院じゃないし、俺は医者でもなんでもねぇぞ」

仮面の男「なぁに、変に勘ぐるんじゃねぇよ。忘れ物を取りに来ただけだ。
     お前の鞄に入れておいたお菓子みたいな箱があっただろ?
    『イリュージョンストライク』って名前の奴だ」

ビクトリーノ「……ああ。そいつなら何だか気味が悪いんで警察に持っていったぞ。
       案の定、危険な薬物だったらしく今頃厳重に保管されてると思うぜ」

仮面の男「なにィ!?お、お前……な、な、なんてことを……ぐっ……があああぁぁっ!」

先程よりもどす黒く腫れだした右足を抑え、仮面の男は苦しそうなうめき声をあげる。

ビクトリーノ「お、おい!いきなりどうしたんだよ!」

仮面の男「……は、はは……参ったな。こいつは完全な詰みときたもんだ。
     こいつにはもう頼らねぇ……そう決めてたってのに……」

男は鞄から足のシミと同じ色の黒い塊を取り出すと、足に向かって押し付ける。
塊から湧き上がる黒い煙が足を覆っていき、腫れは徐々に引いていく。

仮面の男「(…………背に腹は変えられねぇ。俺の足はまだ……死なすわけにはいかねぇんだ!)」

しばらくして、痛みが薄れて落ち着いてきた男に、ビクトリーノは恐る恐る訪ねてみる。

ビクトリーノ「……なぁ、聞かせてくれよ。その『イリュージョンストライク』ってのはなんなんだ?
       俺が聞いた話じゃ『併用剤』の『栄養剤』ってことくらいしかわからないんだが」

仮面の男「……お前にも話しておくべきかもしれねぇな。今回の話は、少なくともお前も無関係じゃ無さそうだし」

413 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 22:16:25 ID:???
仮面の男はそう静かに呟くと、仮面に手をかけてゆっくりと外していく。
不気味なデザインの仮面とは全くの真逆の、サルのような愛嬌のある顔が光にさらされる。

マッハー「俺の名はマッハー。以前にこのチームに世話になっていたこともある」

ビクトリーノ「マッハー……そういえば昔どこかで聞いたことがある。
       5年前の世界jrユース大会のポーランド代表にそんな名前の足の速い選手がいたような……」

マッハー「お前のウルグアイとは別リーグだったから知らないのもしかたねぇか。
     ベスト4のお前らとは違って俺たちポーランドjr代表は予選落ちだったし…。
     でも、同じ俊足の選手としてお前のことを密かに応援してたんだぜ。ウシャシャ」

ビクトリーノ「そ、そうかよ。そう言われるとあんまり悪い気はしないな…」

ニカリと白い歯を見せて笑う顔につられて、思わずビクトリーノもはにかんでしまう。
あの鬼のような仮面の下にこんな眩しい表情を隠していたのかと若干拍子抜けだ。

マッハー「俺の足はさっきの通り、酷い障害を患っていてな。小さい頃の事故が原因なんだが……
     まぁその話は置いておくとして、まずは薬のことを話そう」

マッハーは友人への皮膚移植の手術の後遺症で、足の運動機能の多くが失われてしまっていた。
その原因を解明すべく、ポーランドにいるとある名医の元を尋ねた。

マッハー「その医者が言うには、俺が天性的に持っていた常人の『倍』の速度を生み出す
     特別頑丈な筋繊維が皮膚と一緒に抜き取られていたんだと。
     凄まじい弾力のバネを支えるカバーがパッカリと外れたようなものだ。
     そりゃあ俺の足も治るどころかぶっ壊れちまうよな。ナハハ」

ビクトリーノ「それじゃあその薬の効果で、お前の足は以前の力を保てていたってのか?」

414 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 22:17:37 ID:???
マッハー「ああ。だがそもそもその薬はごく最近にとある企業が秘密裏に開発したものだ。
     その薬を手に入れるまでは、俺は別の方法でこの痛みを抑えてきた。それがこの『闇のかけら』だ。
     こいつがあれば大抵の痛みは抑えられるし、内に秘めた多くの力を無理やり引き出すことも出来る」

ビクトリーノ「(森崎の持っている『星のかけら』に似ている。このかけらにも何か不思議な力があるのか?)」

マッハー「こいつを手に入れ、使わせてもらえる代わりに俺はある組織の元に就くことになった。
     ……俺のように足が動かなくなった奴、腰が回らなくなった奴、心に病を患った奴……
     色んな奴がこの『闇のかけら』に縛られて、やりたくもない仕事をやらされるハメになった。
     ……だがな、そんな中で一人、その組織を裏切った奴がいるんだよ。
     その『裏切り者』に俺は興味が湧いて個人的に調べることにした。
     一体どんな男気のある奴なんだ。それともただの大馬鹿野郎かってね」

徐々にテンポを上げて饒舌に語るマッハーを、ビクトリーノは静かに見守る。

マッハー「ソイツは俺のよく知っている奴だった。兄弟同然に育てられ、
     このアヤックスでソイツと俺は無敵のスピードスターコンビだった。
     そしてソイツこそ……俺の『倍』の足の速さを保てる力を……
     このなけなしの皮膚と一緒に移植された『特別な人間』だった」

ビクトリーノ「アヤックスのスピードスター……足の皮膚の移植……まさか、ソイツって!」

マッハー「ソイツのは名前はイスラス。俺の魂の兄弟にして……俺の持ちうる才能の全てを奪っていった男だ」

怒りとも憎しみとも、悲しみとも取れない複雑な顔で、マッハーはイスラスの名を語った。

ビクトリーノ「…にわかには信じられないが、俺の知るとある世界じゃそういう事態も十分考えられる。
       特にアイツは不思議な宝石の力でなけなしの才能をようやく人並みに増幅させてるってらしいし」

マッハー「大層な作り話だと笑われる覚悟はあったんだがな。君って結構理解が早くて助かるぜ」

415 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 22:18:45 ID:???
ビクトリーノ「アンタとイスラスの関係や薬のことも大体分かった。
       ……それで、アンタはイスラスから自分の才能を取り返そうとでもしてるのか?」

マッハー「初めて事実を知った時、そんな考えも頭をよぎった。取り返せるものならば取り返したい。
     ……だが、その例の組織の一員として働いている内に一つの疑問が浮かび上がった。
     俺の『倍速』で走れる筋繊維の移植は皮膚移植の手術と同時に行われた。
     おかしいとは思わないか?あの日偶然、事故で担ぎ込まれた二人の子供がだ。
     これは全て何者かによって仕組まれた事故だったんじゃないかって話だ」

ビクトリーノ「仕組まれた…だって?」

マッハー「考えても見てくれよ。俺の筋繊維は皮膚と一緒にアイツに移植された。
     だが、本当に皮膚移植が必要なほどの事故だったのか?
     俺は骨の数本は折れたとはいえ意識ははっきりしていたし、
     事故に巻き込まれた俺の妹にいたっては頭を軽く打ったくらいだ。
     ……俺は組織の立場を利用して当時の手術を行った医者の居所を探した。
     そしてたどり着いたのさ。この街にある大手の医療企業『ヨハン』にな」

ビクトリーノ「ヨハン……医者とサッカーの二足の草鞋を履いていたオランダの伝説の選手だったよな。
       確かその人の家族が起こした企業で、多くの医療器具の提供もしているっていう……」

マッハー「驚いたのはそれだけじゃねぇ。あそこは医療の皮を被った人体実験場だ。
     人の体に機械をを埋め込み、常人には計り知れないパワーを生み出す……
     俗に言う『サイボーグ』の開発にも積極的に手を出してやがる。
     確か『ヒューガー』とかいう日本の大手企業と提携し、かなりの儲けを出してるって話だ」

ビクトリーノ「それじゃあその『ヨハン』って企業がお前の『倍速』の筋繊維を狙っていたと?」

マッハー「定かじゃねぇがな。少なくとも……ここ数年までは俺のように
    『倍速』で走り、止まれる脚力を持っていたのは俺以外にはいなかった。
     コーチの指導や練習器具のレベルが例年進化した今となっては、
     並外れた努力と、一握りの才能を持つ選手が修得するケースもあるみたいだがな」

416 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 22:19:52 ID:???
そう言ってマッハーはビクトリーノの日焼けした足を羨むように眺める。

ビクトリーノ「……確かに5年前のjrユース時代には、今のようなドリブルはできなかった。
       サルバトーレさんやルーベンさん。何よりダ・シルバの協力があってこそ……
       そうだ。俺からも聞かせてくれ。お前の言う組織って、
       お前みたいな仮面をつけた連中が大勢いるのか?」

マッハー「ああ。そりゃあもう。おもちゃ屋に並べられた人形みたいに同じ顔がズラリとな」

ビクトリーノ「……その中に『ダ・シルバ』って名前のやつはいなかったか?」

一縷の望みをかけて、ビクトリーノはマッハーに、ある日闇の中に消えていった相棒のことを尋ねる。

マッハー「……悪いな。なにしろ四六時中仮面をつけてるんだ。
     任務中は余程のことがない限り互いのことを『ローロー何番』としか呼び合えないし
     まぁ、中には仮面を外して普通に生活できることを許される『幹部』みたいな奴もいたけどな。
     その幹部の連中なら、仮面のメンバーのことも網羅しているかもしれないな」

ビクトリーノ「……そうか。いや、ありがとう。僅かでもアイツへの手がかりが掴めただけでもありがたい。
       (俺がモンテビデオを離れ、ブレーメンに来たのも行方不明になったアイツの足取りを探すため。
       もちろんサルバトーレさんの言いつけ通り、OMFとしての腕を磨くことも忘れてねぇけど)」

マッハー「とにかく、俺は俺とアイツの運命を弄んだ『ヨハン』を野放しにはしておけねぇ。
     ヨハンは俺のような『倍速』で走ることの出来る人間を捕まえて、
     技術化して高額で他国に売りつけるつもりでいやがる。
     きっと奴らはお前にも目をつけているはずだ。そして……イスラス。アイツにも」

ビクトリーノ「イスラスに?だって、アイツの『倍速』はお前の筋繊維のおかげだったんじゃ…」

マッハー「力の出処なんて二の次だ。奴らはとにかく『倍速』で動ける被験体を集めている。
     オランダだけじゃない。ブラジルやイタリア、果ては日本にまで『倍速』の才能を持つ人間を探しているんだ」

417 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 22:21:16 ID:???
ビクトリーノ「どうして奴らはそこまでして『倍速』の才能を求めているんだ?
       いや、その企業の規模からして『倍速』以外の才能にもきっと興味を持っているはず……!」

マッハー「これは俺が掴んだ情報なんだが『ヨハン』を牛耳るとある人物がある計画を立てているらしい。
     パワー、スピード、テクニック。全てが究極の才能で磨かれた『最高の芸術品』のような……
     そんな選手を生み出し量産することを目的とするために、あらゆる手段を行使している」

ビクトリーノ「そんなことがまかり通ったらサッカー界がとんでもないことになるぞ!
       いや、サッカーだけじゃない。あらゆるスポーツという分野が
      『ヨハン』の思うがままになってしまう…!」

マッハー「俺はこれからアムステルダムの『ヨハン』の支部に乗り込みに行く。
    『イリュージョンストライク』が無いのが少し不安だが、まぁなんとかなるだろう。
     ……話を聞いてくれてありがとうな。心の重さだけでも身軽になれたぜ」

ビクトリーノ「待てよ。……勝手なことばかり言いやがって。そこまで聞いて他人事にしちゃおけねぇだろ」

再び窓から外へと出ようとするマッハーを、ビクトリーノが引き止める。

ビクトリーノ「奴らが俺を狙ってるってんならここにいても危険なのは変わりない。
       関係のない奴らにまで迷惑を駆けるくらいなら、こっちから直接乗り込んだほうが手っ取り早い」

マッハー「……いいのか?結構厳しい戦いになるかもしれねぇぜ?下手すりゃ奴らに捕まって体の良いモルモットにされちまう」

ビクトリーノ「ヨハンと仮面の集団がつながっているというのなら、俺は奴らを追いかける。
       それがどんなに危険な道だとしても、俺は相棒を取り戻すためにその道を走り続ける」

マッハー「(飼われることを知らない、野獣の黒豹のような鋭い目。こいつならきっと……)」

ビクトリーノは素早く身支度を整え、外へと飛び出す。
寮の門の外でマッハーと合流すると、降りしきる雨の中廃ビルが立ち並ぶ郊外へと向かった。

418 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 22:22:22 ID:???
場面は再び森崎たちの所へと戻る。侵入に成功した森崎たちは、見張りの目をかいくぐり建物の奥へと忍び込んでいく。

マーガス「本当にこんな危なそうな所にビクトリーノがいるのか?」

森崎「奴らは『倍速』で走れる被験体を探していると確かにこの耳で聞いたんだ。
   もしかしなくても、あいつがこの連中に捕まった可能性は高いはずだ」

マルス「(いざとなればたとえ剣を振るうことになろうとも彼らを守る。それが僕の使命だ)」

3人でうまく合図を取りながら、柱の陰から陰へと移り渡っていく。
何やら怪しい物が詰まった荷物の箱に身を潜めながら、見張りたちの話に耳をそばだてる。

??「先ほど捉えたターゲットは地下3階の部屋に閉じ込めておきました」

??「うむ、ご苦労。逃げられないようにしっかりと見張りをつけておくように」

森崎「地下3階に誰かが捕まっているらしいな。……ビクトリーノのことだろうか?」

マーガス「今俺達がいるのは地下1階。なんとか3階までの階段にまで辿り着かないとな」

マルス「この箱に身を隠しながら進んでいこう。音を立てないように、慎重にね」


★森崎ダッシュ→! card
マーガスダッシュ→! card
マルスダッシュ→! card★

!とcardの間のスペースを消してカードを引いてください。カードで分岐します

※クラブを出したキャラは捕まってしまいます

419 :森崎名無しさん:2012/10/30(火) 22:27:11 ID:???
うーん、菓子の件は失敗だったか。
★森崎ダッシュ→ ダイヤ7
マーガスダッシュ→ JOKER
マルスダッシュ→ スペード5

420 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 22:49:01 ID:???
★森崎ダッシュ→ ダイヤ7
マーガスダッシュ→ JOKER
マルスダッシュ→ スペード5 ★
※マーガスがJOKERボーナスで『柱に擬態』を習得しました!(一度だけクラブを無効)
===========
どちらかと言えば小柄な森崎とマルスは、箱をバリケードにして見張りの目をかいくぐる。
だが、身長190越えのマーガスが体全体を隠せるサイズの箱がどこにも見当たらない。

マーガス「あ〜どうすっぺ〜!このままじゃ見つかっちまう〜!こ、こうなったら!」

案の定曲がり角の向こうから見張りたちが集まってくる。
もはや万事休すと覚悟を決めたマーガスは、角の隅にぴったりと身体をくっつけ硬直する。

見張り「あれ?確かにいま侵入者がいたような気がしたんだが……ただの柱かァ」

マーガス「(そうです。私がただの柱です)」

チーム随一のポストプレイヤーとして活躍する彼だからこそ、柱に擬態することができたのかもしれない。

森崎「いやいやいや、見張りの目が節穴なだけだろ」

マルス「いずれにせよラッキーだったね。もし危なくなったらもう一度柱に擬態するのもいいかもね」

マーガス「勘弁してくれよ〜。今ので絶対俺の寿命5年くらい縮まったから〜!」

地下1階の階段を駆け下りた森崎たちは、先ほどと同様に地下2階の階段を目指して進んでいく。

421 :森崎名無しさん:2012/10/30(火) 22:49:10 ID:???
おーっと、マーガスくんのダイナマイトヘッドが地下三階につながる大穴を開けたー!

422 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/30(火) 22:50:23 ID:???
★森崎ダッシュ→! card
マーガスダッシュ→! card
マルスダッシュ→! card★

!とcardの間のスペースを消してカードを引いてください。カードで分岐します

※クラブを出したキャラは捕まってしまいます
※マーガスはスキル『柱に擬態』で一度だけクラブを無効化できます

423 :森崎名無しさん:2012/10/30(火) 22:59:52 ID:???
★森崎ダッシュ→ スペード5
マーガスダッシュ→ ハート6
マルスダッシュ→ ダイヤ9

424 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 07:59:48 ID:???
★森崎ダッシュ→ スペード5
マーガスダッシュ→ ハート6
マルスダッシュ→ ダイヤ9 ★
===========

マーガス「ちょっとストーップ。この先に見張りが3人くらい居座ってるな。
     こっちの通路から回りこむようにして進んでいこうぜ」

マルス「すごいねマーガス。あんなに遠くの位置にいる人の数が分かるのかい?」

マーガス「俺の自慢はこの背の高さと目の良さだからな。サッカーでも欠かせない俺の大事な武器になる。
     シェスターみたいに器用じゃないし、ビクトリーノみたいに足も速くないけど、
     これだけは絶対に譲れない、俺の胸を張って誇れる長所さ」

マルス「(誰にも負けないと誇れる部分か。僕にもそんな所があればいいんだけれど。
    ……いいや、あったな。僕が誇れる僕の長所。
    それはやはり彼らのような仲間たちに多く巡り会えたことだ)」

メディウスを倒し、暗黒戦争を終結させたマルスはその栄誉を讃えられ英雄王と呼ばれている。
だが、英雄とは一体どの部分を指し手言っているのだろう。
100年前にドルーア帝国を退けた先祖のアンリのような卓越した剣術も自分には無い。
だが、その強さの代わりにマルスは多くの仲間との出会いに恵まれた。
たった一人で幾千の竜を斬り伏せ、突き進んだアンリのような孤独は微塵も感じない。
そしてその出会いは、アカネイア大陸だけでなくこの異界でも同様だ。

運がいいことに見張りの数が少ないのもあり、森崎たちは誰にも見つかることなく先へと進む。
心に余裕が生まれてきたのか、マーガスは今季のブレーメンのことを色々マルスに語りだす。

マーガス「ブローリンが防ぎ森崎が止める。シェスターがフィールドを支配し中里が翻弄する。
     ビクトリーノが前線に切り込み、絶妙のセンタリングをゴール前に放り込む!
     そしてこの俺が豪快にヘッドでを叩き込む!ブレーメンの黄金パターンってやつだ」

425 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 08:00:50 ID:???
森崎「特にシュナイダーのいるバイエルンを完封したあの試合は完璧だったよな」

マルス「頼もしい仲間たちがたくさんいることの心強さ…。君たちの強さの秘訣だね」

マーガス「チームの役割がはっきりしてるから、型にはまればどんなチームにも負けはしない。
     だが、それでも上には上がいるのがプロの世界ってやつなんだ。
     特に今季1位のケルンの連中は不気味な程な強さだったよな。
     キーパーのヘルナンデスは無失点記録を更新したし、ヤスヒコっていうDFも厄介だった」

マルス「ケルン。それがドイツリーグで今もっとも強いチームなのか」

森崎「……俺は3位なんて順位には満足しないぜ。この遠征でもっと力をつけて来季こそ絶対に優勝してやる!」

マーガス「ケルンの何がすごいってやっぱり外せないのがエッフェンベルクさん!
     あの人のポストプレイには森崎も何度も翻弄されてたよなー」

森崎「う、うるせぇ!あの人、俺の渾身のカウンターパンチでも全く動じねぇんだよ!」

マルス「マーガスはそのエッフェンベルク選手のことを尊敬してるんだね」

マーガス「ああ。あの人の高さ、頑丈さ、力強さに追いつくのが今の俺の目標さ。
     ドイツ一のポストプレイヤーの座を、いつかあの人から奪い取ってみせる!」

森崎「そのためにはもう少し足元の技術を磨かねぇとな。それと一本でもいいからミドルシュート。
   PAをガチガチに固められたらお前、まったく仕事をさせてもらえないからな」

マーガス「お前こそもう少しスタミナつけないと。延長戦に突入したらほぼ負け試合ばっかだったじゃん」

森崎「ぐっ……人が気にしてることをズケズケと。心に平気でナイフをつき立てやがって!」

マーガス「お互い様ってやつだ。まぁ、この世界遠征で何かしらの結果を必ず出そうぜ」

426 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 08:01:50 ID:???
マルス「(こうして一つのチームとして世界中を回る旅か。
    ……同じ遠征でも目的が違うだけでこんなにも心が弾むものなのか。
    今回のグルニア遠征が無事に終わったら、
    臣下たちと一緒に世界中を回る旅行を提案してみようかな)」

婚姻の儀を先延ばしにされ、アリティアで待っているであろうシーダもきっと喜んでくれるはず。
そんな希望に満ちたことを考えながら、3人は地下3階への階段へとたどり着く。

森崎「よし、みんなきけ。ここさえ突破できれば例の部屋へとたどり着ける。一気に行くぞ!」


★森崎ラストダッシュ→! card
マーガスラストダッシュ→! card
マルスラストダッシュ→! card★

!とcardの間のスペースを消してカードを引いてください。カードで分岐します

※クラブを出したキャラは捕まってしまいます
※マーガスはスキル『柱に擬態』で一度だけクラブを無効化できます

427 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 08:05:57 ID:???
★森崎ラストダッシュ→ スペード7
マーガスラストダッシュ→ ハートA
マルスラストダッシュ→ ダイヤA

428 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 08:16:35 ID:???
★森崎ラストダッシュ→ スペード7
マーガスラストダッシュ→ ハートA
マルスラストダッシュ→ ダイヤA ★
===========
森崎「俺たちってもしかして潜伏の才能とかあったりするのかな」

マルス「まさか誰も捕まらずにここまでたどり着くことが出来るなんて」

マーガス「『ありゃまどったの』とか用意されてた意地悪なセリフ使わなくて助かったぜ」

森崎たちは謎の組織が捕まえたターゲットを閉じ込めたと言う部屋へとたどり着く。
周囲を確認し、見張りが近くにいないことを確認すると扉へと手を掛ける。


★中にいたのは→! card★

!とcardの間のスペースを消してカードを引いてください。カードで分岐します

ダイヤ→イスラス
ハート→シャル
スペード→ビクトリーノ
クラブ→金髪の坊主頭
JOKER→仮面の男だ。しかし今までの仮面とは何だか違うぞ?

429 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 08:17:23 ID:???
パーフェクトだな

430 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 08:18:27 ID:???
★中にいたのは→ ダイヤ4


431 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 08:27:05 ID:???
これだけ引きがいいのも珍しい

432 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 12:16:36 ID:???
>>429-431
クリスマンのクラブAで厄が吸い取られたのでしょうか?
===========
★中にいたのは→ ダイヤ4 ★
>ダイヤ→イスラス
===========
通気口から漏れる風の音だけが聞こえる無機質で薄暗い部屋。
ガツガツと壁を蹴る音と、人のうめき声が聞こえてくる。

イスラス「……ムガー!ムググー!!」

ロープで縛られ猿轡をされたイスラスが部屋の中央に転がされていた。
ビクトリーノが捕まっていると思っていた森崎は一瞬戸惑ったが、
彼も『倍速』のドリブルを得意としていたことを思い出す。

イスラス「ゲホッゲホッ……悪い、助かった」

マーガス「そういえばクリスマンたちがイスラスもいないって言ってたな。
     やっぱり個々の連中が『倍速』で動ける人間を捕まえようとしてるのは本当だったのか」

森崎「イスラス、どうしてお前がこんな所に?」

イスラス「情けねぇ話だ。俺はまた誰かに助けられて生かされて……クソッ!」

憤りをぶつけるように右足を壁に叩きつける。イスラスはこれまでの経緯を苦々しく森崎たちに語りだす。

433 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 12:17:39 ID:???
イスラス「(足が重い。このままじゃ明日の試合に影響が出そうだな。一度シャルに診てもらうか)」

室内練習場の帰り道。雨を避けるべく軒下を歩いていたイスラスは
この大雨の中、傘もささずに寮を飛び出すシャルの姿を見つける。

イスラス「シャル、そんなに慌ててどこに行く。せめて傘ぐらい…」

シャル「ごめんねイスラス。すぐに戻るから心配しないで!」

ビュンッ!

イスラス「(…なんだ?また何か買い出しの忘れ物でもあったのか?)」

今思い返せば、風のように自分の脇を通り過ぎていく少女の顔は明らかに狼狽していた。
すぐに彼女を引き止めなかったことをここまで後悔することになるなんて。

イスラス「(そろそろ帰ってきた頃だろうか)」

足を面倒そうに引きずりながらシャルの部屋に行く。
扉は大きく開け放たれ、無人の部屋と床に散乱した菓子、
なにより彼女の悲痛な表情が不安を煽る。
イスラスはふとつけっぱなしのパソコンに目をやった。

イスラス「……なんだよ、これ……」

『マッハー』と名乗る人間からのメールを見つける。
そこに書かれていた文を読むに連れ、イスラスの身体は硬直していく。

434 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 12:18:41 ID:???
「俺の足の筋力の減衰について色々と分かったことがあるので連絡する。
 そもそも『倍速』で動くことは常人の倍の速度で走ると同時に倍の負担を足にかけることになる。
 それを支えることの出来る稀な筋肉の持ち主で無い限り、足の寿命はあっという間に尽きていく」

イスラス「(マッハーの足は『倍速』の負担に耐えられなくなっていた?だが俺の足は……)」

「俺はまだ筋肉が発達しきっていない時期に『倍速』で動くことを覚えてしまった。
 その分消耗は激しくなり、もはや以前のように走れる可能性はゼロに等しい。
 だが奴らは、折角の『倍速』の才能を無駄にしたくなかったんだろうな。
 いずれ『倍速』の負担にも耐えられるであろう、
 豊富な才能の人間にその力を『保管』しておくことにしたんだ」

イスラス「(それが俺だってのか?倍速で走れる可能性があるというたったそれだけのために…?)」

「奴らは事故に見せかけて俺の身体から『倍速』で走れる才能を抜き取った。
 最高の芸術品に相応しいスピード。奴らはそれを求め、探し、奪おうとしている。
 イスラスの中に眠る才能。そしてシャル。俺と血を分けたお前にもあるはずの才能。
 奴らはそのどちらかを狙ってくる。たとえどんな手段を使おうとも」

イスラス「(倍速の才能。何者かがそれを探し集めていることは分かった。
     だが……俺は知っている。倍速で走れる人間が…俺の身近にもう一人いたことを)」

マッハーの代わりになりたくて。イスラスの助けになりたくて。
自己満足かもしれないけれど、そのためならばなんだって出来るはず。
逃げることから負けずに、困難に立ち向かう勇気をくれた。アイツが。
だからアイツは外へと飛び出した。自分を危険から遠ざけるために。


「ごめんねイスラス。すぐに戻るから心配しないで!」

435 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 12:19:57 ID:???
イスラス「(ふざけんじゃねぇ。何が心配するなだ。お前は何時だって心配かけていいんだよ!
     むしろ心配をさせてくれ。俺にとってお前はそうする権利があるんだから)」

星の瞬きも月の光も差し込まない、どす黒い雨雲の空の下、
降りしきる豪雨の街をイスラスは必死に走り回る。
そして彼は導かれるように2人の男と合流した。

??????「よぉ、待ってたぜ。ようやく役者が揃い踏みってところか」

????「感動の再会の抱擁でもしたいトコロだが、悪いが先に用事を済ませちまおうぜ」

イスラス「……ああ。シャル。悪いが俺は逃げずに立ち向かうぜ。俺たちの平穏を脅かそうとする下衆共を……」


「「「ぶっ潰す!!!」」」」


『倍速』の才能を生み出した男。
『倍速』の力を与えられた男。
『倍速』の力を得た男。

3つの風は今、先の見えない未来を覆う暗い雲を吹き飛ばすため――1つになる。

436 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 12:21:02 ID:???
森崎「……で、かっこ良くキメてマネージャーの救出に来たけれどあっけなく捕まったと」

イスラス「それを言われると身も蓋もありゃしない。…だが、実際にここの警備は厳重だった」

マーガス「そうか?こんなザル警備、まるでスタミナ切れした森崎みたいだったぞ」

森崎「うぎぎ…言い返せないのが歯がゆい。まぁ、ここにビクトリーノと
   例の仮面の男…マッハーも潜入してるんだろ?」

イスラス「ああ。出来ればアイツらと合流したいところだが
     ここからは俺も同行する。攫われたシャルを救出し、
     人の才能を好き勝手に扱う『ヨハン』を叩きのめしてやる…」

森崎「言わば『連れ去られた王女』の救出ってところだな。
   ……いいぜ、ここまで来たなら協力してやるよ」

自分にとって大事な人が目の前からいなくなる不安。
そんな悲しい思いを他の人に味合わせるなんてもったいない。

イスラス「……ありがとな、森崎。俺はお前に会うことができて幸福だった。
     人と関わり、人と力を合わせる強さを覚え、認めることができた。
     後少しだけ、俺に力を貸してくれ。そして……明日は必ずいい試合にするぞ」

森崎「ああ!」

森崎はイスラスを連れ出して部屋を出ると、再び探索を再開する。
イスラスが掴んだ情報では、地下6階に『倍速』の才能を取り出す実験場があるらしい。

437 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 12:23:02 ID:???
★森崎ダッシュ→! card
マーガスダッシュ→! card
マルスダッシュ→! card
イスラスダッシュ→! card★

!とcardの間のスペースを消してカードを引いてください。カードで分岐します

※クラブを出したキャラは捕まってしまいます
※マーガスはスキル『柱に擬態』で一度だけクラブを無効化できます
※イスラスはスキル『倍速ドリブル』でクラブでも7以上で回避できます
※絵札が二枚以上でビクトリーノが、誰かがJOKERでマッハーが合流します。

438 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 12:24:15 ID:???
★森崎ダッシュ→ ハート9
マーガスダッシュ→ クラブ9
マルスダッシュ→ クラブ9
イスラスダッシュ→ スペードJ


439 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 12:26:49 ID:???
マールースー!w

440 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 12:28:14 ID:???
この方式で地下六階までいくのはきついなw

441 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 12:34:33 ID:???
まあ、【誰か一人がたどり着ければ】方式だとは思うんだけどね…。

442 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 12:40:51 ID:???
マルス「敵は倒す」

443 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 13:57:23 ID:???
>>439-441
全滅したらしたで特殊イベントがあったので、良し悪しですね。
>>442
FEシナリオのような戦闘判定はありませんが、マルスならなんとかしてくれるでしょうw
===========
地下4階へと降りていく階段に近づくに連れ、見張りの数が増えているような気がする。
どうやら侵入者がいると連絡を受け、警備を厳重にすることになったらしい。

森崎「どうする?さすがに階段の真ん前に陣取られてたんじゃ進みようがないぞ」

マーガス「あの位置じゃ柱に擬態してもすぐバレそうだし…困ったな」

イスラス「よし。俺がダッシュで引っ掛け回して混乱させる。その隙にお前たちは…」

マルス「駄目だ!囮作戦なんて駄目だ!」

自分を逃がすために人質となった姉エリス。ドルーア軍の包囲網を引き付けるために影武者となったフレイ。
二人は無事に自分たちの下へと帰ってきてはくれたが、

イスラス「だが、そうでもしないと階段までの道が拓けないぞ」

マルス「……だったらせめて僕にやらせてくれ。こう見えて避けることは得意なんだ」

ダダッ!!

マーガス「マルス!いくらなんでも無茶だ!やめろーーーッ!!」

マーガスの静止を振り切り、見張りたちが大勢いる地帯へと躍り出るマルス。

イスラス「何故だ。アンタはこの世界とは無関係のはず。どうして…!」

444 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 13:59:00 ID:???
マルス「僕には僕の帰りを待っていてくれる大事な人がいる。
    その人がいる限り僕は途中で倒れることはない。そしてそれは君にも言えることだ。
    君にとっての大事な人をその手に取り戻すまで、君は立ち止まっちゃいけない。……行け!」

森崎「……ああ、分かった。俺たちは先に進ませてもらう。マルス、無理だけはするなよ!」

見張りがマルスの方へと流れていくタイミングを見計らい、一気に階段へと走り抜ける。

イスラス「本当に大丈夫なのか森崎」

森崎「大丈夫。アイツ、ああ見えてこのビルぐらいの高さのバケモノを退治したこともあるからさ」

マーガス「はぁ?怪獣映画の見過ぎだぜ。こんな時に冗談言ってる場合かよ」

森崎「冗談でもなんでもないんだよなぁこれが。とにかくマルスの意思を無駄にしないためにも先を急ぐぞ!」

イスラス「…済まない。この借りは、いつか必ず返してみせる。だから……どうか無事でいてくれよ」

階段を駆け下りていく仲間たちの姿を確認し、マルスは安堵の溜息をつく。

マルス「姉上やフレイの気持ちが少しだけ分かった気がするな。
    ……大事なものを守りきったことに満足するのではなく、
    その大事なものと再び出会いたいという希望が生まれてくるんだ……」

マルスは手近にあった棒を手に取ると、体勢を低くして構えを取る。

マルス「さすがにレイピアみたいに器用に振り回せないか。当たりどころに気をつけなくちゃね」

445 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/10/31(水) 14:00:11 ID:???
森崎「マーガス、追手はもう撒いたか?」

マーガス「ああ。振り切ったぜ。一人もついてきていない」

イスラス「……後少し。後少しでたどり着く。急がなくては…!」

森崎たちは先を急ぐ。地下5階へと続く階段はもう目の前だ。


★森崎ダッシュ→! card
マーガスダッシュ→! card
イスラスダッシュ→! card★

!とcardの間のスペースを消してカードを引いてください。カードで分岐します

※クラブを出したキャラは捕まってしまいます
※マーガスはスキル『柱に擬態』で一度だけクラブを無効化できます
※イスラスはスキル『倍速ドリブル』でクラブでも7以上で回避できます
※絵札が二枚以上でビクトリーノが、誰かがJOKERでマッハーが合流します。

446 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 14:09:39 ID:???
★森崎ダッシュ→ ハートA
マーガスダッシュ→ スペードJ
イスラスダッシュ→ スペードK

447 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 14:10:58 ID:???
ビクトリーノktkr!

448 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 14:20:02 ID:???
そして上手い具合にクラブが出ない

449 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 14:26:04 ID:???
16回引いてクラブが1枚、分岐選択ではダイヤ出まくりだから大したもんだ。

450 :森崎名無しさん:2012/10/31(水) 16:22:03 ID:???
というか>>408でビクトリーノがしれっと森崎達に加わっている件


451 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 13:57:01 ID:???
>>447-449
全員捕まることも想定してイベントを組んでましたが、どうやらその必要は無さそうですねw
>>450
これは恥ずかしいミス!上記のビクトリーノの1つ目のセリフはマルスのセリフになります。
===========
★森崎ダッシュ→ ハートA
マーガスダッシュ→ スペードJ
イスラスダッシュ→ スペードK ★
===========
見張り「連絡通りの侵入者を発見した。すぐに確保する」

ザザッ!

地下5階の階段を目の前にして、森崎たちは屈強な男たちに道を塞がれる。

森崎「くそっ、さすがにこの数に囲まれちゃ分が悪いか…!
   (せめて何か武器でもあればな。撮影用のビルなら都合よく落ちてないものかね)」

森崎たちは力を合わせて見張りたちを撃退していくが、
あまりにも多勢に無勢。徐々に通路の奥の方に追いやられ、ついに逃げ場を失ってしまう。

マーガス「ちいっ!せっかくここまで来たってのに、仲良くお縄頂戴かよ〜!」

イスラス「諦めるな!俺は…俺達は立ち止まるわけには…!」

目的を目の前にしての無念の敗北。もはやこれまでと思ったその時!

??????「ヒャッホー!」

突然人影が天井裏から勢い良く飛び出してきた。

イスラス「ん?なんだあの男は!?」

452 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 13:58:20 ID:???
ダダダダダッ!ザザザッ!バッ!

見張り「な、なにィ!?」

謎の男は黒豹のように躍動して見張りに接近する。
そして軽く跳ねると見張りの顔面に強烈なダイビングボレーを叩き込んだ。

見張り「ぶぎゃはぁ!?」

??????「…どうしたんだ森崎。こんな奴にいいようにやられてさ」

イスラス「お、お前は……」

森崎「す、すげぇ…いきなり現れて見張りを蹴り倒しやがった。でもあいつどこかで…」

見張りを蹴り倒した謎の男はへたり込む森崎に手を差し伸べて引き起こす。

??????「ま、こうやって助かったんならそれで良いか〜。
       へへ、このビクトリーノ様がいれば、文字通り勝利は確実だぜ!
       ……何だかずっと前にもこんなことがあったよな。覚えてるか森崎」

森崎「……ああ。あの時はマリクが助けられてたが今度は俺が助けられるとはな」

今から4年前。オレルアンの草原の街で、森崎はこの南米の黒豹とアカネイアで邂逅した。
盗賊に魔法を避けられ、絶体絶命のマリクの危機をビクトリーノが颯爽と現れ救ったことがある。
よもやその時の縁が、今でも続いていることに何かしらの運命を感じてしまうほどだ。

ビクトリーノ「なぁに、お前たちが完全に相手の注意を引きつけてくれたからさ。
       さて、そんじゃまぁ4年前と同じように物色タイムと洒落こみますか〜」

ビクトリーノは昏倒した見張りからなにか役に立ちそうなものは奪えないかと懐を弄り始める。

453 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 13:59:53 ID:???
森崎「確かあの時は盗賊から銀の剣を手に入れてたんだっけな」

ビクトリーノ「そうそう。結局アベルさんに渡すことになったけど、果たして今回は……ん?こ、これは――!?」

ビクトリーノの手がお宝に触れる。なんとその正体は!?


★懐かしき3スレの衝撃→! card★

!とcardの間のスペースを消してカードを引いてください。カードで分岐します

ダイヤ→銀色に輝くカードキーだ。一気に地下6階にたどり着けるぞ!
ハート→銀玉鉄砲だ!見張りをひるませることができそうだぞ!
スペード→銀のエンゼルだ!一枚だけでは意味が無いぞ!
クラブ→銀ではない金の玉だ!ビクトリーノがげんなりしてしまうぞ!
JOKER→銀色に輝くシルバーカードだ!どんなものも半額で買えるぞ!

454 :森崎名無しさん:2012/11/01(木) 14:00:44 ID:???
★懐かしき3スレの衝撃→ ダイヤ9

455 :森崎名無しさん:2012/11/01(木) 14:07:49 ID:???
うまくいきすぎだな

456 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 15:40:33 ID:???
★懐かしき3スレの衝撃→ ダイヤ9 ★
>ダイヤ→銀色に輝くカードキーだ。一気に地下6階にたどり着けるぞ!


ビクトリーノ「おお、こいつは使えそうだぜ。見ろよ!」

ビクトリーノが取り出したのは銀色に輝くカードキーだ。
これを使えば階段の脇に備え付けてあるエレベーターを起動させることができそうだ。

マーガス「これで一気に目的地に辿り着けるな。やったなイスラス!」

イスラス「……つくづく助けられてばかりだな。今は礼を言うことくらいしかできねぇ」

ビクトリーノ「気にすんな。こっちはこっちで事情があるのはお前も知ってるだろ?」

森崎「それに、今回の貸しは後でタップリと利子付きで返してもらうからさ、遠慮なんか要らないぜ?」

イスラス「ハハッ……確かにそうかもな。じゃあ、こっちも遠慮なく力を貸してもらうぞ」

頼もしい仲間を加え、森崎一行はエレベーターに乗り込み一気に地下を下っていく……。

457 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 15:41:58 ID:???
見張り「さぁ、この部屋でおとなしくしてもらおうか!」

ドガッ!

マルス「くっ…!」

一方で囮になり森崎たちを先に進ませたマルスは、健闘むなしく捕まってしまっていた。

マルス「牢獄に捕らえられるなんて、今度はリンダの気持ちにならざるをえないな。はは…」

自分で言っておいてあまり笑えない冗談に引きつった笑いをこぼすマルスは薄暗い部屋を慎重に進む。
壁伝いに歩く内に目も慣れてきたのか、辺り一帯の状況を調べ回る。

マルス「(窓はついてはいるが、それを囲む透明な板が邪魔をして開けるのは難しいか。
    無理やり突破するにも僕の力だけじゃ厳しいな。おとなしく助けを待つしか無いのか…?)」

ドンッ!

???「ひゃあ!」

背中に何かが当たった感触を受ける。慌てて振り向いてみると、
後頭部にお団子状に髪を纏めた金髪の少女が頭を抑えて呻いていた。

シャル「あっ…えっ?だ、誰?もしかして君もここの人たちに捕まったの?」

マルス「(君も?ということはこの娘がイスラスが言っていたシャルという子だろうか?)」

マルスは自分が森崎たちブレーメンの関係者であり、イスラスたちに協力して助けに来たことを伝えた。

マルス「もう暫くの辛抱だ。きっとイスラスたちが助けに来てくれるよ」

シャル「ホント!……ですか」

458 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 15:43:10 ID:???
シャルは一瞬嬉しそうに瞳を輝かせたが、その輝きがすぐに曇っていく。

シャル「……マネージャー失格ですね、わたし。
    選手たちのことを第一に考えなくちゃいけないのに、
    イスラスを、ブレーメンの皆さんにまで迷惑をかけてしまって……」

マルス「だがそれは、ここの組織の者が君たちの『倍速』の才能を狙っていたからだろう?」

シャル「それは……でも……」

いつも、こうだ。都合のいい言い訳がこうして側に転がってきたら、
それに甘えて楽になろうとする自分が大嫌いだった。

シャル「(兄さんは事故にあったのはわたしのせいじゃないと頭を撫でで慰めて。
    イスラスはただの自己満足でチームに迷惑をかけたわたしを追いかけてきてくれて。
    ……そして、今度は二人共わたしが捕まったせいで危険な目に遭っている)」

彼らと同じ『倍速』で走れるにも関わらず、何の助けにもならない。誰の支えにもなってやれない。
ただ足が速いだけの、へっぽこの役立たず。それがわたし。シャル。シャルロートカ。

シャル「(……いっそのこと、こんな才能奪われてしまえばどんなに楽だろう。
    そうすれば、もうあの二人と並ぼうとする気も起きやしないのに)」

自分ならばきっと何かが出来るはず。この『倍速』の才能はそのためにあるはずなのだ。
そう信じてきた自分が彼らのために何をしてきてこれたのだろう。

459 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 15:44:16 ID:???
シャル「(イスラスがチームで孤立していたとき、それを助けたのは研修に来た三杉さんだ)」

それに比べ、自分はイスラスが心をひらいてくれることをただ待ち望んでいただけだった。

シャル「(イスラスが車に撥ねられそうになった時、クライフォートとは危険を承知で体を張ってくれた)」

それに比べ、自分は目の前に迫る惨状を両手で覆い隠すことしかできなかった。

シャル「(そもそもマネージャーになったのだって、選手としてチームにいられなくなったからだった。
    イスラスやアヤックスの皆と離れたくない。そんな自分勝手な気持ちだけでわたしは……)」

今もこうして『連れ去られた王女』として助けを待つことしかできない。
自分で自分を徹底的に詰り、自己嫌悪に浸ることしかできない。
そんな自分が、これからもイスラスを隣で支えていこうとするなんておこがましいにも程が有る。

シャル「(誰かを応援する気持ちがあってこそ。だけど今のわたしじゃ……それすらも……持つ資格はないよ……)」

悔しくて、恥ずかしくて、何より情けなくて。じわりと目尻に涙が浮かんでくる。

マルス「だ、大丈夫かい?どこか怪我でもしてたりは…」

シャル「……ごめんなさい。なんでもないんです。なんでも……ないん、です……」

駄目だ、笑え。サルみたいにひょうきんに笑顔を振りまくんだ。
この人にまで余計な心配をかけようとしているなんて、身勝手にも程が有る。
頭ではそう命令を出しているのに、涙が溢れて止まらない。
今のシャルの弱り切った心では、雨のように溢れ出る涙を両手で押さえることだけえ精一杯だった。

マルス「(……参ったな。何か変なこと言っちゃたのかな)」

460 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 15:45:45 ID:???
初対面の相手。しかも女の子に泣かれてしまえばマルスと言えどもうろたえてしまう。
だが、そんな彼らの気まずい空気に、雨雲を晴らすかのような一筋の光明が差したのだ。

マルス「ん?部屋の奥に誰か……もう一人いる?」


★牢屋の中の光→! card★

!とcardの間のスペースを消してカードを引いてください。カードで分岐します

ダイヤ・ハート→白金に輝く剣を持つ黒装束の男
スペード・クラブ→黄金に輝く長髪の、不思議な瞳を持つ青年
JOKER→どっちもいた

461 :森崎名無しさん:2012/11/01(木) 15:47:03 ID:???
★牢屋の中の光→ ダイヤA
誰だろ?

462 :森崎名無しさん:2012/11/01(木) 15:47:11 ID:???
★牢屋の中の光→ クラブK

463 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 17:20:04 ID:???
★牢屋の中の光→ ダイヤA ★
ダイヤ・ハート→白金に輝く剣を持つ黒装束の男
===========
その気配は本当に『一人』なのだろうか?そもそも本当に『人』なのか?
だが、マルスは不思議とその『影』に不安を抱くことはなかった。
何故ならば、その姿格好は先程シェスターや中里から聞いた
様々な『ニンポー』で悪を討つ『シノビ』の姿に非常に一致していたからだ。

マルス「あなたもこの牢獄に捕らえられたのですか?」

???「……そうだとしたら?」

マルス「よければ脱出するのに協力してもらいたいのです。
    ここの扉を破壊したいのですが、僕一人の力では厳しいのです」

この男が本当に『シノビ』なのだとすれば、こんなに心強い味方はいない。
マルスは丁寧な対応で、黒装束の男に協力を頼み込む。

???「いやだ、と言ったら?」

マルス「えっ…?な、なにか条件が必要であれば用意します。ですからどうか……」

意地悪そうな口調の返答をされ狼狽えるマルスに対し、黒装束の男は愉快そうに笑う。

???「違うな。そういう時はこう返すんだ。『君はそれほど愚かではない筈。違うかね?』とな」

マルス「初対面の相手にそんなにそんなに上からの態度で接することは僕にはできません。
    僕は対等な立場で協力を頼んでいるのです。命令や依頼を出しているのではないのです」

???「フッ、なかなかおもしろいことをいう若者だ。だが、どの世界にも
    『お願い』だけで動く者がいないように『依頼』のみで動く者もいるということだ」

464 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 17:21:19 ID:???
マルス「…………あなたは何者なのですか?その鋭い眼光、研ぎ澄まされた得物。只者ではないはず」

特に男の持つ白金に輝く剣からは不思議な事に、
マルスがドルーア帝国との戦いに終止符を打った『ファルシオン』と同じ波動を感じられた。

???「なかなかいい目をしている。お前も相当な修羅場をくぐり抜けてきたようだな。
    分かった。今回はシノビとしての依頼ではなく、君と対等な立場で協力をすることにしよう。
    俺の名はリュウ・ハヤブサだ。君の名は?」

マルス「僕の名はマルスだ。よろしく、リュウ」

リュウ「なっ…!?」

マルス「!」ゾクッ

リュウの眼光が鋭い刃のように突き刺さる。背後には凄まじいほどの殺気が見え隠れ、マルスは全身で戦慄を感じていた。

リュウ「……いや、驚かせてすまない。俺のよく知る人物と名前が一緒だったものだから。
    さぁ、いい加減早い内にこんな陰気な場所からはおさらばさせてもらおうか」

マルス「(視線だけで身体がズタズタに切り裂かれるような錯覚を受けてしまった。
    ……本当にこの男、只者ではないぞ……)」

マルスは思わず吹き出した汗を拭うと、リュウの協力の下、牢獄の脱出を図る。

465 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 17:22:48 ID:???
チーン。

地下6階にたどり着いた森崎たちは、シャルが捕らえられているであろう実験場へと雪崩れ込む。

イスラス「シャル、いるか!助けに来たぞ!」

????「ふふふ…何事かと思えば、騒がしいネズミ共か」

かなり高齢とみられる白髪の老人が膨大な機械の上から見下ろしていた。
機械の下には人体の腕や足を象ったような様々なパーツが転がっており、
その奥の大きな水溶液の中には、金髪の坊主頭の青年が拘束されている。

ビクトリーノ「マッハー!あいつ、何捕まってやがんだよ!」

マッハー「……め、面目ねぇ。ドジっちまったぜ。ナハハ」

森崎「テメェが『ヨハン』の親玉か?俺たちの努力と汗の結晶を
   私腹のために好き勝手にしようだなんてふざけた連中だ!」

????「ふざけた…か。この実験の素晴らしさが君たちには理解しかねまい」

マーガス「人の才能をいじくりまわすのが素晴らしいだと?」

????「考えても見給え。今現在、彼らのように『倍速』で走れるものは極々わずか。
     こんな素晴らしいスキルを限られた人だけに持たせておくのは惜しいとは思わないかね?」

森崎「惜しい…だと?」

????「どんなに努力を重ねようとも、どんなに練習に励もうとも絶対に身につけることのできないスキル。
     それをごく簡単に覚え、身に付けることが出来るとすれば、それは素晴らしいことじゃないか。
     自分には才能が無いと嘆く必要もなくなる。天才と呼ばれる一部の人間に憎悪を抱くこともない。
     誰もが皆、最高の芸術品のような、完成されたスター選手になれる可能性を、ワシは模索しているのだよ」

466 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 17:23:58 ID:???
森崎「……誰もが皆、スター選手に……?」

????「君のことは良く知っておるよ。ブレーメンの森崎有三君だったね。
     君はキーパーでありながら、ドリブルの技術も優れたものを持っているようだ。
     だが、ここにいるマッハー。そしてイスラスやビクトリーノのような
    『天性的』なトップスピードでドリブル出来る才能は持ちあわせてはいまい」

森崎「……それがどうした!」

????「今ここにいるマッハーの『倍速』で走れる才能を君に与えると言ったら…君はどうするかね?」

森崎「なっ…!?」

????「マッハーは可哀想なことに、まだ筋肉が未発達の段階で『倍速』の才能に目覚めてしまった。
     おかげで足へのダメージは甚大で、とてもプロの世界で戦っていける足を保つことはできないだろう」

マッハー「!」

????「同様に、彼の筋繊維を移植されたイスラス。君もだ。
     今でこそプロでも通用している君の倍速ドリブルだが、後2,3年もすればいずれ限界が訪れる。
     クラブチームでそこそこの活躍を収めるのが精一杯。とても国を背負うA代表を任せられる器ではない」

イスラス「テメェ…何が言いたい?」

????「芸術品とは完成されてこそ芸術品と呼ばれるもののはず。
     ワシは完成された『倍速ドリブル』をこの手で創りあげたいのだよ。
     選手生命を削ることもなく、プロの厳しい世界をも生き残れる素質をな。
     森崎くん。君は元の才能がかけらも存在しなかったゆえに、
     新たな才能を好き勝手に詰め込める、ワシにとっての理想の素材だ」

森崎「俺が…理想の素材だと?」

467 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 17:25:12 ID:???
????「『べじいた』に『超森水』この名前に聞き覚えはないかね?」

森崎「そ、それは…!」

森崎の選手としての実力を大幅に高め、しかし未成熟な身体に大きな負担を与え、
成長をも止めてしまった禁断の秘薬の名前が森崎の耳に突き刺さる。

森崎「(それだけじゃねぇ。その薬はアイツが…ラムカーネが俺の中から生み出された原因にもなっていたんだよな)」

????「名前こそ違えど、これらのような人の才能を無限大に引き出す薬品は
     我々の掲げる研究の結果とよく似ている、言わば模倣品だった。
     今更迷うことはあるまい。君の今の強さも、所詮人の手で組み上げられたモノ。
     そこに新たに我々の研究の結晶『倍速』の才能も重ねてあげようというのだよ?」

老人の甘い誘惑。彼らの行なっていることは間違っていることははっきりと理解できる。
だが。自分は彼らの言うように、初めから恵まれた才能を持って生まれてきたわけではない。
たゆまぬ努力。支えてくれる仲間。鎬を削りあうライバルたち。だが、それ以上に自分の力は誰かの意思により、
本来自分が持ちうる才能の数倍、数十倍、数百倍の能力を得ていることもまた事実なのだ。

????「さぁどうかね?今ならば一つ返事をするだけで君は世界トップクラスのドリブラーの仲間入りだ。
     それと同時に将来のライバルたちの才能も食いつぶすことが出来る。
     プロのいただきを目指す者にとって、これほど素晴らしい条件は他にはあるまいて……」

不気味に手をこまねき、森崎を自分たちの側に引き入れようと画策する老人。
だが、マーガスが二人の間にその長身を割りこませて堂々と言い放つ。

マーガス「……森崎、わかってるよな。奴の言葉に耳なんか貸すなよ。
     確かにお前は他の連中に比べて才能はないかもしれねぇ。
     だがよ、俺はお前がキーパーをしているこのチームで戦うのが楽しいんだよ」

森崎「マーガス…?」

468 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 17:26:35 ID:???
マーガス「俺がどれだけ点をとっても同点にされちまうことに腹をたてることもある。
     それでもな。お前は俺たちブレーメンの正GKなんだ。一緒に悩んで考えて、
     どうすれば点を取られないか、どうすればもっと勝率を上げられるか。
     絶対に無失点に抑えるGKの方が確かに『頼もしい』だろうさ。
     だけど、こんなに一緒に戦って『楽しい』キーパーは他にはいないと思うぜ」

同じくチームメイトとして1年間共にブンデスリーガを戦ってきたビクトリーノが続く。

ビクトリーノ「俺も同感だ。俺はお前の不十分な実力には賞賛も賛同もしねぇよ。
       だけどな、一緒に勝利を目指して戦うことに関しちゃ、
       これほど協力しがいのある仲間はいないってことだ」

イスラス「……森崎。お前もいい仲間に巡り会えたみたいだな」

????「ええーい、煩わしい奴らめ。森崎よよく聞け。真に強さを求める者に
     彼奴らのような者との慣れ合いなど不必要!
     慣れ合いのようなチームワークなど卓越された技術と戦術の上では二の次にすぎない。
     さぁ、ワシに従え。『倍速』の才能を手にし、
     お前も『最高の芸術品』として世界を手にしたくはないか?」


☆どうしますか?

A『倍速』の才能を望む
B『倍速』の才能を望まない

2票集まった時点で確定です。メール欄を空白にしてIDを表示して投票してください。

469 :森崎名無しさん:2012/11/01(木) 17:28:29 ID:TXTPsp2g
B

470 :森崎名無しさん:2012/11/01(木) 17:32:33 ID:aQEPS7Uc
B

471 :森崎名無しさん:2012/11/01(木) 17:39:26 ID:xvtr6OQI
B

472 :森崎名無しさん:2012/11/01(木) 18:33:26 ID:???
クリス一時は一位にもなったのに順位落ちたなァ…

473 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 20:45:34 ID:???
>>472
そんな不憫な彼女を応援するのはあなたの一票からです!
ネタ枠はともかくとして、やはりロストしたことは投票に不利な状態かもしれませんね…。
===========
>B『倍速』の才能を望まない


森崎「……俺は『倍速』の才能なんか望まない。
   そんな力に頼らなくても俺はこのプロの世界で戦っていける」

????「ほほう。本当にいいのかね?オーバーラップをし、自ら得点をも決める
     世界一のGKにもなれるやもしれぬのだぞ?」

森崎「そうだとしても。人の才能を奪って自分の才能にするなんて言語道断だ!
   ……確かに昔の俺はそれに似たこともしてきたかもしれない。
   そして今、その昔の自分の策略で選手生命の危機に貧してもいるさ。
   だからこそ、俺はそんな非道なことを許す訳にはいかない。
   過去の過ちをこの身体で償っていくと俺は……俺は誓ったんだ!」

中山と一緒に押した、首筋に痛々しく広がる『破滅のツボ』を抑えながら森崎は叫ぶ。

????「フフフ……だそうだ。先のある、未来と希望に満ち溢れる選手らしい主張だな。
     しかし、そうではない者もいることを忘れてはいないかね?」

マッハー「…………」

????「選手生命を失いかねない怪我をし、二度とフィールドに
     立てなくなる恐怖と戦い続ける覚悟が君たちにはあるかね?
     もしも逃げ道があるというのなら、どんな手段と言えども
     縋りたくなるのがアスリートとしての性だとワシは思うがね」

ビクトリーノ「あ…マッハーの足が…!」

474 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 20:46:45 ID:???
イスラス「まさか……あの下衆の持っていたかけらの影響なのか!?」

マッハーの右足が黒いシミで覆い尽くされていく。水溶液の中でマッハーは声にならない悲鳴を上げる。
ビクトリーノにはこの現象に見覚えがあった。そして以前に同じ力を使っていたイスラスも。

????「ワシの研究に協力を申し出てくれたある組織にもたらされた力。
     人の持つ心の弱さを糧にし、どんな恐怖や絶望も無に帰す絶対的な自信を身につける。
     その『闇のかけら』に頼ることで、プロ生命を永らえることが出来るというのなら!」

マッハー「くっ……そっ……俺は………俺はイヤだ!二度と走れなくなるなんて絶対イヤだ!
     走るのが大好きなんだ!風と一体になるのがたまらないんだ!
     早い奴と競争するのが!追いつき追い越され、また抜き返すのが!
     俺は……俺は……俺は走りたい。たとえどんな手段だろうと……闇に呑まれても……俺は!!」

黒く染まっていく右足を拒むように何度も壁に叩きつける。痛みで苦しいのか頭を激しくかきむしりながら。

????「誰だって縋りたくなるのだよ!どんな手段を用いようと、己の夢を…望みを叶えるために!」

マッハー「うあああ……ぐあぁぁ……がああああああぁぁぁぁっ!!」

イスラス「…そう、だよな。誰だって……誰だって自分の一番好きなことが出来なくなるなんて…耐えられるわけないんだよな…」

森崎「(俺も、俺も本当に選手生命を失う直前になったらアイツのように発狂してしまうのだろうか…)」

以前にイスラスとカフェで話したことを思い出す。自分の選手生命の火が消えようとするとき、どうするのか。
薬やドーピング。そして今目の前で掲げられている『闇のかけら』に頼ってまで自分の夢を追い続けるのか。
森崎の出した答えはNOだった。自分の夢を引き継いでくれる後継者に全てを託すと結論を出したはずだ。

森崎「(だけど……こうしていざ目の前で、あんな姿を見させられちまったら……)」

475 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 20:47:58 ID:???
本当に最後まで清く正しい心で自分の滅びを受けいられるだろうか?
それは実際に体験してみないとわからないことではある。
だが、少なくともマッハーに限っては全身全霊で拒んでいた。
何度も激しく乱暴に蹴りこまれた水溶液は音を立てて割れ、マッハーは力なく落下する。

ビクトリーノ「マッハー!し、しっかりしろ!
       俺はまだお前にリベンジしてねぇんだ!それを勝手に潰れるなんて許さねぇからな!」

ビクトリーノが素早く助け起こしに行く。だが、黒いシミは右足から全身へと転移しつつある。
マッハーは泡を吹き白目をむき、全ての体力を使い果たしたかのようにグッタリとしている。

????「残念だよ森崎くん。君が素直に彼の『倍速』の才能を受け取っておけば、
     消えたくないと彼の中で暴れることもなかったろうに……」

老人は手元で何か機械を操作したかと思うと、地上へと続くエレベーターを起動させる。

????「この世界のサッカー界で初めて『倍速』で走ることを覚えた者の末路がこれか。
     だが、おかげでワシの求める『スピード』のデータを得ることはできた。
     もうこの場所には用は無い。さらばだ。才能を掴み取れぬ愚か者たちよ」

老人を載せたエレベーターは森崎たちを地下に置き去りにし、地上へと上がっていく。

森崎「ま、待てェ!逃げるのか!」

????「ワシは才能のある選手を求めて世界中を廻っている。縁があればまた会うこともあるだろうな。
     その時までに考えておくがいい。ワシの手で『最高の芸術品』になることをな」

ゴゴゴゴゴ……ズドォッ!!

足元が揺れ、周囲の機械が次々と爆発を巻き起こしていく。
老人は言葉通り、用の無くなったこの施設を破壊するつもりのようだ。

476 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 20:49:08 ID:???
ビクトリーノ「マッハー!マッハー!しっかりしろマッハー!」

イスラス「折角また会えたってのに…なんで、こんな…!」

マッハー「…………お、マエラ……俺、から…離、レ……」

倒れたマッハーを助け起こすビクトリーノとイスラスの足に黒いシミが伝達していく。
その影は体を縛り付ける縄のように食い込み、ビクトリーノとイスラスを離さない。

ビクトリーノ「なっ……か、身体が動かねぇ……!?」

イスラス「ちいっ、いったいどうなってやがる…!」

マーガス「おいおい何やってんだよお前たち!早くここから逃げねぇとやべぇぞ!」

森崎「(この現象…まるでガーネフの使っていた『マフー』そのものじゃねぇか!)」

闇の触手は今度はマーガスと森崎の方にも延びていく。
このままではマッハーの抱える闇の意思に縛り付けられて身動きがとれなくなる。

???「ムンッ!!」

ザシャッ!!ボタボタッ…!

森崎「!? お、お前は…!」

リュウ「話は後だ。お前の仲間は既に脱出を始めている。お前たちも急げ」

以前に中里の屋敷の資料で見たような、オーソドックスな忍び装束を
身につけた男が、白金に輝く剣を振るい、森崎たちを縛り付ける触手を斬り落とす。

マーガス「ははは、こいつはシェスターがいたらきっと鼻血を出して気絶してたかもなァ」

477 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 20:50:17 ID:???
森崎「こんな時に気絶されちゃたまらないっての。とにかく急ぐぞみんな!」

イスラス「明日の試合が待ってるからな。モタモタしてられねぇぜ」

通路の奥に手を振るマルスとシャルの姿が見える。彼らに付いて行けばなんとか無事に脱出できそうだ。

マッハー「………明日……か」

その明日が自分には見えない。この闇の力に覆われた身体ではまともに立つことすらできそうにない。
それなのに。アイツラは希望に満ち溢れた顔を輝かせていやがる。
羨ましい。妬ましい。悲しい。悔しい。どうして。どうして俺は前に進むことを許されない?
もっと走りたかった。風と一体になりたかった。それなのに。それなのに。それなのに。

ドクン!!

マッハー「(や、やめろ!俺は……俺はそんなことは望んじゃいない!)」

本当にそうなのか?もう二度と自分の足で走れないという絶望しかない明日に何の価値がある?
引きずり下ろし、蹴落としちまえよ。自分の前を堂々と走りだそうとしている生意気な連中を。
今のお前になら出来るだろ?なぁ、お前だって本当はそうしたいんだろう?

マッハー「(違う!勝手に俺の意思を決めるな!俺に話しかけてくるな〜〜〜っ!!)」

ドクン!!

マッハーのどす黒く染まった右半身から再び触手が伸びる。
リュウが素早い反応で斬り落とすが、そのたびにマッハーは絶叫を上げる。

イスラス「何しやがる!それ以上斬ったらこいつの神経が持たないぞ!」

悲鳴を上げて血を吐き出し始めたマッハーを見てリュウを諌める。

478 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 20:51:36 ID:???
リュウ「……ならばここで仲良くその男の放つ闇に囚われ爆発に巻き込まれるか?」

イスラス「なっ…!?」

リュウ「このまま背後から伸びる触手を除けながら進んでいては爆発まで間に合わん。
    ならば出来る事はただひとつ。この男のことは諦めるか、もしくは……」

この闇の暴走を止める手段をできるだけ早く見つけ、そして行使することしか無い。

ビクトリーノ「『イリュージョンストライク』……」

森崎「? それって確かお菓子に偽装してたドーピング剤のことか?」

ビクトリーノ「ああ。だが、それだけじゃねぇ。俺は見たんだ。
       マッハーが闇の暴走で苦しんだとき、
       その薬の代わりに闇のかけらを使って痛みを抑えていたのを」

イスラス「じゃあその薬があれば、この闇の触手を消し飛ばすことが出来るんだな?」

マーガス「だけどもう時間がないぞ。早く逃げないと全員で仲良く爆発だ」

イスラス「……間に合う。いや、間に合わせる。そのための『倍速』じゃないのか?」

ビクトリーノ「……ああ。ここまできたらとことん付き合ってやろうじゃん?」

確かに常人の倍の速度で走り回れる能力があれば、薬を探す時間も脱出する時間も取れるかもしれない。

リュウ「ならば、倍速で走れる者はここに残れ。時間ギリギリまで、俺がこの男の側で触手を封じておこう。
    マルス。他の者達の脱出の船頭を任せても構わないな?」

マルス「……ああ。悔しいけどこの状況では僕の足じゃ役に立てない。
    必ず無事に戻ってきてくれ。最後に依頼人から報酬を受け取るまでが、シノビの仕事なのだろう?」

479 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 20:52:50 ID:???
リュウ「無論だ」

マーガス「ほら、森崎もこっちに来いよ。危ないぞ」

森崎「(ぐっ……もしも俺に『倍速』で走れるスキルがあれば手伝ってやれるのに。
   ……いやいや。だからってあのジジイの言葉に乗せられるわけにはいかなかったっての)」

イスラスとビクトリーノはマッハーの暴走を抑える薬を探すため、実験場の棚の周辺へと走りだす。
リュウはマッハーの伸ばす触手に向かいクナイを投げ、すかさず印を結び動きを抑える。
そしてマルスは森崎、マーガス、シャルを連れて脱出の準備をするのだが…

シャル「待って二人共!わたしにも手伝わせて!」

シャルは足場を器用に走り回り、薬の捜索を続ける二人の元へと駆けつける。

ビクトリーノ「おいおい、いくらお嬢ちゃんの足が俺たち並みに速くても危険すぎるっての」

イスラス「お前は森崎たちと一緒に先に戻ってろ。大丈夫だ。必ずマッハーを連れて帰るから」

シャル「……いや!いやだ!わたしだって二人の力になりたいの!
    今まで何の役にも立たなかったこの足で。今度こそマネージャーとして助けになりたいの!」

イスラス「お前を助けるためにアイツは苦労してここに乗り込んできたんだ。その気持を無駄にするな!」

シャル「…………」

シャルはイスラスの言葉を無視し、奥の棚の段ボール箱の中を探し始める。

イスラス「あの馬鹿野郎……俺の気も知らないで……」

480 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 20:54:02 ID:???
ビクトリーノ「イスラス。お前こそお嬢ちゃんの気持ちを分かってやれよ。
       マッハーはあの娘の血を分けた兄貴なんだろ?
       きっと咎められることなんて承知でここにやってきたんだよ」

イスラス「……ビクトリーノ。一つ頼みがある。いざとなったらアイツを連れてお前だけ先に行け」

ビクトリーノ「イスラス……お前……」

ビクトリーノはイスラスの右足に目を落とす。マッハーと同様に、その足にも黒い斑点が浮かび始めていた。

イスラス「俺もさ。一時期だけだがあの力に溺れていた。この力さえあれば
     どんな奴にも負けやしねぇ。俺が世界ナンバーワンのドリブラーだとさえ思い込めた。
     ……だが、この闇のかけらは自分を前に進ませるものじゃない。
     他者をその場に縛り付け引きずり下ろすことに使われるようなものだった」

ビクトリーノ「……そうだったな。お前もあの仮面の組織のメンバーだったっけ。
       この3日間、こうして普通に話したり遊びに出かけたりしてたからつい忘れてたぜ」

イスラス「………だから、さ。もしも薬が見つからなかった場合、最後までアイツの暴走に付き合う奴が必要なんだよ。
     誰よりも先に、誰よりも速く走ることに目覚めた。マッハーのドリブルにな」

ビクトリーノ「…………OK。それがお前の覚悟だってんなら了解した。
       だが、悪いが俺は最後の最後まで諦めねぇぜ。俺の名はビクトリーノ。
       最後にかならず勝利を呼ぶことが義務付けられてるんだからよ。
       明日の試合のブレーメンの勝利も約束されてんだ。お前をぶちぬくことでな」

イスラス「……ああ。楽しみだ。明日の試合が今からどんなものになるか……楽しみでたまらない」

ビクトリーノ「それじゃあおしゃべりはここまでだ。探そうぜ。俺たちの明日を切り開く希望をよ!」

481 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/01(木) 20:56:12 ID:???
★ビクトリーノの意地→! card
イスラスの賭け→! card
シャルの希望→! card★

!とcardの間のスペースを消してカードを引いてください。カードで分岐します

ダイヤ・ハート→薬を見つける!
スペード・クラブ→薬は見つからない!
JOKER→謎の青年が薬を見つけ、手渡してくれる!
※誰か一人でも薬を見つけると…?

482 :森崎名無しさん:2012/11/01(木) 20:56:27 ID:???
★ビクトリーノの意地→ ハート2
イスラスの賭け→ クラブ8
シャルの希望→ スペードJ


483 :森崎名無しさん:2012/11/01(木) 20:56:38 ID:???
★ビクトリーノの意地→ スペードQ
イスラスの賭け→ ハート5
シャルの希望→ クラブ6

484 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/02(金) 05:19:04 ID:???
★ビクトリーノの意地→ ハート2→薬を見つける!
イスラスの賭け→ クラブ8→薬は見つからない!
シャルの希望→ スペードJ→薬は見つからない! ★
===========
ビクトリーノ「あった!あった!あったーーーっ!!」

見た目はグミ状のお菓子だが、強力なドーピング剤でもあるイリュージョンストライク。
しかしこの薬には闇のかけらによる身体への悪影響を抑える効果もあるらしい。

イスラス「でかしたビクトリーノ!」

シャル「よかった……これで兄さんは助かるのね」

3人はすぐさまマッハーの下へと駆けつける。
リュウの術も限界が近く、脂汗を垂らしつつマッハーから印を解く

リュウ「…よくやってくれた。君たちの努力が実ったのだな」

イスラス「よし、俺が飲ませてくる」

薬をマッハーの口に含ませ、鼻を摘み無理やり胃の中に流し込ませる。
マッハーの黒ずんだ顔色は徐々に彼本来の白さを取り戻していく。

マッハー「…………うっ……お、俺は…………」

シャル「リュウさん、兄さんを見守っていてくれてありがとうございました…!」

ビクトリーノ「いよっしゃー!あとは皆で脱出するだけだ!さァ、出口へ急ごうぜ!」

元気よく脱出を促すビクトリーノ。しかし、マッハーに薬を飲ませるために
彼の側に近づいたイスラスが、しゃがんだまま動かない。

485 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/02(金) 05:20:35 ID:???
イスラス「……悪い。どうやらまだ……終わっちゃいねぇみたいだな」

リュウ「馬鹿な…!」

マッハーの右足から伸びた触手は、イスラスの左足にしっかりとこびりつき離れようとしない。
何度か立ち上がろうと足腰に力を入れては見るが、強い力で上から押さえつけられているかのようにビクともしない。

イスラス「ビクトリーノ。頼む」

全てを覚悟したイスラスは、ビクトリーノに先ほど頼んだ約束事を任せる。

ビクトリーノ「なんでだよ!薬も飲ませた。アイツの暴走も収まった!
       だのになんでまだ触手が出てきやがるんだよ!」

マッハー「…言わなかったか?イリュージョンストライクは『併用剤』だって。
     これ単体じゃただの元気になる気付け薬だ。
     …もう、なにもかもオシマイだ。どうしてすぐに俺を見捨てなかったイスラス…!」

イスラス「……多分、お前から預かっていたこの『右足』がそうさせたんだろうさ」

マッハー「…………結局奴ら『ヨハン』の思うがままってか。くそったれ…………」

ビクトリーノ「……まだだ!この薬が併用剤ってんならその薬を探せばいいだけだ!」

リュウ「時間があればそれも出来ただろう。だが……もう待てん」

実験場の地下に闇の力で完全に縛り付けられたイスラスとマッハー。
辺りはいよいよ崩れ始め、もはや一国の猶予もならなかった。

シャル「そんな……こんなのいやだよ……兄さん!イスラス!」

486 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/02(金) 05:22:11 ID:???
二人の隣に立って支える資格が無い今の自分に何ができる?
いや、支えられなくてもいい。自分には多分そこまでの力もないから。
でも、せめて隣に立つことくらいだけはしてあげたい。
彼らと同じ速度で走れる自分にしかできないことがきっとあるはずなのだ。

シャル「くっ……ふんぬぬぬ……」

マッハー「お、おい…何やってんだよ…」

シャルはマッハーを縛り付ける闇の触手を掴むと、それを地面から引き剥がそうと件名に引っ張る。
もちろん彼女の腕力ではびくともせず、そもそも人の手で何とかできそうなシロモノではない。
それでも何かの役に立ちたいというシャルの想いが、触手から彼らの足へと伝わるのが物悲しい。

ビクトリーノ「ちいっ……目の前で女の子があんなに必死になって……見過ごすわけにはいかねぇって!」

リュウ「何をしている!死にたいのか!?」

ビクトリーノ「死にたかねぇよ!だけど俺の足は…アイツに負けたままじゃ死んだも同然なんだ!だから助けに行くんだよ!」

ビクトリーノは揺れ始める地面にしっかり足を食い込ませ、ダッシュでマッハーたちの所に駆けつける。
そしてシャルと同様に、イスラスの足を這い、地面に根付こうとしている闇の触手を握り締める。

イスラス「ビクトリーノ…!」

ビクトリーノ「勘違いすんなよ。俺はお前ともまだ決着をつけちゃいねェんだよ。
       俺とお前。そしてマッハー。いや、まだ俺が知らねぇ世界中のスピードスター。
       ソイツらを全員倒して…俺は堂々と世界最速を名乗りてぇだけだかんな!」

マッハー「……‥…」

グググッ……ズッ……

487 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/02(金) 05:23:38 ID:???
イスラス「(触手が……剥がれていく?)」

その時イスラスの頭の中に一つの仮定が浮かんだ。この闇の呪縛は、
二度と自分の足で走ることのできないこの世界に対しての憎しみ。
まだ走りたい。風になりたいというマッハーの執着心を表しているというのなら。
もしも『併用剤』があるとするならば、それはきっと――

イスラス「……マッハー」

マッハー「どうしたイスラス……」

イスラス「ある男がこんなことを言っていた。もしも志半ばで夢を諦めなくては行けない時がきたら。
     ソイツは次の世代の連中に自分の夢を預けると。自分のすべてを託したいと言っていた」

マッハー「…………」

イスラス「お前の無念。お前の魂。お前の足。……お前の全てを俺に託せ。
     マッハー。お前の足は闇に負けて二度と動かなくなるかもしれない。だけど……」

ガシッ!グググッ……

シャルとビクトリーノ。そしてイスラスの3人はマッハーの触手に全力で力を込める。

イスラス「お前の夢だけは絶対に消えない。絶やさせやしない。俺が歩みを止めない限り、決して。
     俺がお前の分まで走る。お前の分まで風になる。だから……後は俺に任せてくれ」

マッハー「…………」

誰かに夢を託し、託される。自分もそうありたいものだ。
イスラスは願った。そして誓った。自分だけでなく、もう一人分の夢を背負い走り続けていくことを。
その道は決して楽なものではない。いつ自分もマッハーのように限界が訪れるかもわからない。それでも。

488 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/02(金) 05:24:53 ID:???
イスラス「マッハー。俺は今までも、これからもお前と一緒に……走り続けていく!」

ズズッ……ブチンッ!!

シャル「触手が…!?」

ビクトリーノ「ぬ、抜けた!」

地面から引き剥がされた触手は、イスラスの左足へと結びつくように絡みだす。
イスラスはマッハーを左肩で担ぎ、彼の重みを感じながら立ち上がる。

マッハー「……離せよ。俺の中に眠る闇は……結局ずっとお前のことを恨んでいた。
     ポーランドに帰ったのも治療のためじゃない。全力で走れるお前の姿を見たくなかったからだ。
     今でもそうだ。こうしてお前を逃がさないように縛ろうとしている……
     それに、俺の右足はもう動かない。もう……走ることは……できない……」

イスラス「走ることなら、できる」

グイッ。ダダダッ!

マッハー「えっ…?」

マッハーの右足が地面を蹴る。いや、性格には彼の足から伸びた触手に絡むイスラスの『左足』だ。

マッハー「二人三脚ってか?こんな不安定に揺れるところを…無茶すぎるぜ」

イスラス「今の俺ならやれる。お前はずっと俺の『右足』として一緒に走ってきてくれた。
     そして……その足に引きずられるようにずっと走り続けてきた『左足』も」

ガッ……ビュンッ!!

シャル「あれは……!」

489 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/02(金) 05:26:29 ID:???
シャルは思わず息を呑んだ。イスラスは今まで『右足』にのみ重点して倍速移動を行なってきた。
地面を蹴り始めるのも右足から。スピードを抑えるブレーキも右足のみでしかできなかったはず。

ビクトリーノ「自力で覚醒したんだ。誰かの手によるものじゃなく、自らの足で。『倍速』の才能に!」

イスラス「俺だけの足じゃないさ。今まで共に走ってきてくれたこいつの右足。
     そして毎日欠かさず足のケアに尽くしてくれたシャル。お前のおかげだ」

シャル「え…?」

イスラス「これからは右足だけじゃなく左足も診てもらうことが増えそうだからな。
     ……その、なんだ。お前が良いって言うなら……これからも側にいて欲しい。それだけだ」

シャル「…………うん。うんっ!!」

そうか。隣に立つ必要なんか最初から無かったんだ。わたしとイスラスは違う。背の高さも、性別も、国籍も。
当然走るペースだって。同じ『倍速』といえども、歩幅が違えば大きく変わるのが当然なのだ。
隣を一緒に走ることにずっとこだわっていたけどそうじゃなくてもいい。
心はずっと一緒だったことに気がつけたから。だから、これからも一緒に走り続けていこうね。

ビクトリーノ「ヒューヒュー!お熱い事この上ないねチッキショー!
       そうと決まれば早速脱出だぜ!シノビの兄ちゃん、道案内宜しく〜!」

リュウ「(……彼らは今、前に進みだした。彼らにとっての新しい今日が、今始まったのかもしれないな)」

外はもうすぐ日が昇り始める頃だろう。闇が消え、光が溢れる夜明けが彼らを祝福しようと待っている。

490 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/02(金) 05:27:37 ID:???
マーガス「……アイツら、遅いな。本当に大丈夫なのかな……」

マルス「やはり今からでも戻って彼らを助けに行ったほうが!」

森崎「落ち着けよ二人共。大丈夫だ。多分。いや、きっと」

森崎には確信があった。先ほど熱を上げる道具袋を気になり中身を取り出してみた。
イスラスの星のかけらが眩しいほどに光を発していたのだ。
輝きを増していくそのかけらは、以前よりもより大きく、より美しい煌めきを放ち出す。

森崎「(せっかくの才能も、一人で抱え込むだけじゃ腐っちまうものなんだよな。
   ……ああ、分かっているさ。俺だってまだ諦めたわけじゃないんだからよ)」

イスラスのかけらを握りしめ『倍速』で走り抜ける彼らの確かな息遣いを、森崎は感じ取っていた。



シェスター「うぎぎ〜〜〜っ!どうして!何故!今回に限って!
      羨ましいにも程が有る!おいマーガス!写真は、写真とかは撮ってないのか!?」

マーガス「んなもの用意してるかよ。いや〜まさか重度の忍者フリークのお前より先に
     生忍者の生忍法を拝見してしまうとはな。ありゃあ確かに魅力的な世界だわ〜」

リュウ・ハヤブサは森崎たちを無事に送り届けると、その姿を消していた。
マルスから何か報酬を受け取っていたようだが、それが何かは定かではない。

中里「ほほう、シェスター殿に続きマーガス殿までシノビの世界の虜になったとな。
   これは忍の道の将来も安泰かのう。はっはっはっは!
   (伝説の超忍リュウ・ハヤブサ。確かに彼は存在したのだ。
   ならばあの秘伝の巻物の通り、拙者にも白金に輝くチャンスはどこかに必ずあるはず…!)

491 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/02(金) 05:28:51 ID:???
無事に全員で脱出に成功した森崎たちは、ひどく煤けた顔のままアヤックス寮へと帰ってきた。
何事かと出迎えてきた三杉たちに事情を話すと、シェスターは絶望したように地団駄を踏み始める。

三杉「しかし『ヨハン』と言ったか。まさかそんな危険な実験に加担していたとはね」

レンセンブリンク「身内の一人として恥ずかしいですよ。スポーツの権威を利用して
         やっていることはただの人体実験だというのですから…」

クライフォート「(かつて俺の名前に刻まれていた『ヨハン』……一体何を企んでいるというのだ?)」

カイザー「そんでそんで、足の方はもう大丈夫なのか?明日の試合には間に合うのかー?」

イスラス「ああ、俺なら大丈夫だ。脱出にちょっと手間取ってこっちの方はちょっと危ないけどな」

ディック「プッ……くくっ……ギャハハハ!見事なチリチリ頭だな。自慢の黒狼の鬣が台無しじゃんか!」

リブタ「わ、笑っちゃ悪いよぉ。でも……うぷぷぷ……ご、ごめんイスラス……ブフォフォ!」

シャル「美容院の予約を取っておかなくちゃね。なんたってイスラスはアヤックスの看板の一人なんですもの!」

マッハー「俺の分まで走ると決めたんだし、いっそのこと俺と同じ坊主頭にでもしてみるか〜?」

イスラス「そ、それはちょっと勘弁してくれないか…?」

ドールマン「ていうかこの坊主の男は何者だ?」

クリスマン「知らないのかドールマン。かつてアヤックスjrチームを戦闘で引っ張ってきた
      超級のスピードスタードリブラー。ポーランド出身のマッハーだよな」

マッハー「お?俺の残していった足跡はしっかり覚えてもらえてるってことか。くぅ〜泣けるねぇ。
     ちゅーわけで妹のシャル共々、これからテメェらの鈍くさい精神を
     ビッシビシ鍛えてやるからな。そこんとこヨロシクゥ!」

492 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/02(金) 05:30:16 ID:???
マルス「……まだ朝も早い時間帯なのに、こうしてチーム総出で暖かく出迎えてくれる。
    アヤックス。このチームはきっとものすごく手強いよ、森崎」

森崎「ああ。だからこそ戦いがいのある奴らじゃねぇか。いいゲームになりそうだ」



この日の夕方、ブレーメンとアヤックスの親善試合が行われる。
お昼すぎまでタップリと眠り、疲れをとった森崎はこの寮での最後の自由時間を過ごす。

森崎「ふあ〜よく寝たよく寝た。昨日は…ってか今日か。
   いっぱいビルの中を走った割には身体もすっきりしてやがる。
   さて、試合まではまだ結構時間があるし、何をするにしてもまずは誰かを誘いに行くか」


☆下記の中から最大で『3人』同行させたい選手を選択してください

・ブレーメン
【シェスター・マーガス・ビクトリーノ・ブローリン・中里・マルス】

・アヤックス
【三杉・イスラス・リブタ・クライフォート・クリスマン・カイザー
 レンセンブリンク・ディック・ドールマン・シャル・マッハー】

『同じ組み合わせ2票』集まった時点で確定です。メール欄を空白にしてIDを表示して投票してください。

493 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/02(金) 05:32:10 ID:???
ぐおおおお……ストーリーの下地のないオリジナル展開にここまで筆が進まないとは……。
他のスレのGMさんはどうやってあんなに素敵なお話をポンポン展開していけるのでしょう……。
なんとか人気投票の期間中に試合ができそうでホッとしています。
ブレーメン勢とアヤックス勢の票が伸びるかどうかはこれからの展開にかかっている!?


☆第二回アナザーカンピオーネキャラクター人気投票
http://capmori.net/vote/vote2t/bbs.cgi

☆第四回キャプテン霧雨キャラクター人気投票
http://capmori.net/vote/vote2u/bbs.cgi

☆第三回ラインライダー滝キャラクター人気投票
http://capmori.net/vote/vote2v/bbs.cgi

☆第三回TSUBASA DUNKキャラクター人気投票
http://capmori.net/vote/vote2x/bbs.cgi

☆第三回ファイアーモリブレムキャラクター人気投票
http://capmori.net/vote/vote2w/bbs.cgi

たくさんの投票、コメント共に本当に本当に感謝です!
残り僅かとなりましたが、どうかよろしくお願い致しますね〜!

494 :森崎名無しさん:2012/11/02(金) 10:13:30 ID:RXVEUscU
シェスター・中里・マルス

495 :森崎名無しさん:2012/11/02(金) 10:21:52 ID:uFKgjjcQ
マルス・イスラス・マッハー

オランダにいるうちに仮面軍団の正体に近づいておきたいのよ・・。
でも494氏の意図もわかるので、すごい悩んだ。次の人に任せるw

496 :森崎名無しさん:2012/11/02(金) 10:36:29 ID:Oib77BTg
中里、マルス、マッハー

497 :森崎名無しさん:2012/11/02(金) 12:41:51 ID:0B23Lg9E
>>495

498 :森崎名無しさん:2012/11/03(土) 00:15:58 ID:???
ひょっとしたら人気投票、マッハーの項目なし?

499 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/03(土) 17:04:41 ID:???
>>495
選んだキャラの組み合わせで発生するイベントは変わっていきますからね。
>>498
投票したいキャラクターの項目が無ければ、どうぞご自由に追加しちゃってくださいな。
==========
>マルス・イスラス・マッハー


マルス「やぁ森崎。どうやらぐっすりと眠れたようだね」

マルスも森崎が起きる少し前に目を覚ましたらしく、軽いストレッチで体全体をほぐしている。

森崎「ああ。気力体力共にバッチシ充填完了だ。アヤックスでもアレックスでもロドリゲスでもなんでも来いだぜ」

大きく伸びをして体の底に溜まった疲れを絞り出していると、部屋をノックする音が聞こえる。

マッハー「へぇ〜。随分と大した自信じゃないですかァ。こりゃ今日の試合がたのしみだわ」

イスラス「よぉ元気か。どうやらお互いに試合に影響は無かったみたいだな」

森崎の部屋を訪れてきたのは右足に包帯を巻いたマッハーと、深く帽子をかぶったイスラスである。

マルス「二人共、闇のかけらの触手で縛られた箇所は無事だったのかい?」

マッハー「おう。効果てきめんだったぜ。奴らの開発した薬っていうのが憎たらしいトコロだがな」

イリュージョンストライクの併用剤とは。それはおそらくマフーを払うスターライトと原理は同じなのだろう。
人の心を蝕もうとする絶望に絶対に屈しない強き光。そして星のように輝く夢を決して諦めない清き心。
自分の失いかけていた夢をイスラスが引き継いでくれたため、
マッハーは自身の心の闇に踏ん切りがつき、闇の呪縛を切り裂く力を得たのだ。

森崎「……しかし、奴らがアカネイア大陸だけじゃなく俺たちの世界にも手を伸ばしていようとはな」

500 :モリブレム ◆RK7RVcZMX2 :2012/11/03(土) 17:06:27 ID:???
『ヨハン』の人間が語っていた自分たちに技術を提供した者たちとは疑いようもなくガーネフたちのことだろう。
森崎に『星』と『リセット』の力が与えられたように、彼らにもまた異界の不思議な力を手に入れる機会があったのだ。

イスラス「闇の力による身体への負担を中和するために、人の持つ星の輝きを奴らは欲している。
     世界各国の将来有望な若手選手の失踪事件も奴らが関わっているに違いない」

マッハー「仮面を被らされている間はあまり回りの連中のことに気づけなかったが
     多分その予想は当たっていると思う。そして今現在も進行形で、有用な選手が潰されている」

森崎「(そういえばシュナイダーも酷い怪我をしていたな。
   若林も右腕を潰されていたし。……右目を潰してしまったのは俺だけど)」

マルス「こうして2つの世界を行き来できるようになった今、彼らの野望を食い止めるには
    きっと僕達2つの世界の力を合わせなくてはいけないと思う。
    イスラス、マッハー。せっかく闇の呪縛から解き放たれた君たちに、
    また危険が伴いそうなことに関わってもらうのは心苦しいけれど……」

イスラス「今更だぜ。それに俺自身、闇に囚われたままの『アイツら』を放っておくわけにはいかねぇ」

マッハー「俺はこいつに全てを託した身だ。俺自身はあまり手伝えることは無いだろうが、
     その分イスラスのバックアップに全力で当たる。だから遠慮無くこいつの足を使ってやってくれ」

自分の分け与えた『右足』と、彼自身によって鍛え上げられた『左足』。
イスラスはマッハーの分まで、森崎たちの力になることを約束してくれた。

イスラス「言っておくが今日の試合とは別問題な。悪いが全力で点をとりに行かせてもらうぜ」

マッハー「俺と妹の協力体制で積み上げられたアヤックスの猛攻を君はいつまで耐えられるかなァ?」

森崎「へっ、望むところだぜ。なにせこっちには『秘密兵器』がいるんだからな!……な?」

マルス「?」

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