キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【早苗】鈴仙奮闘記28【サッカー好きか?】

1 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/04/12(日) 22:35:12 ID:???
このスレは、キャプテン森崎のスピンアウト作品で、
東方Project(東方サッカー)とのクロスオーバー作品です。
内容は、東方永夜抄の5ボス、鈴仙・優曇華院・イナバがサッカーで師匠を超えるために努力する物語です。

他の森崎板でのスレと被っている要素や、それぞれの原作無視・原作崩壊を起こしている表現。
その他にも誤字脱字や稚拙な状況描写等が多数あるかと思いますが、お目こぼし頂ければ幸いです。

☆前スレ☆
【復活の】鈴仙奮闘記27【N】
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1425474393/
☆過去ログ・攻略ページ(キャプテン森崎まとめ@Wiki内)☆
http://www32.atwiki.jp/morosaki/pages/104.html

☆あらすじ☆
ある日突然幻想郷にやって来た外来人、アラン・パスカルと中山政男との出会いにより、
師匠、八意永琳に並ぶ選手になると決心した鈴仙・優曇華院・イナバ。

全幻想郷代表選抜大会で活躍し、代表メンバーの一員となる事を夢見てきた鈴仙はある日、
自身が『プロジェクト・カウンターハクレイ』のキャプテン候補に選ばれている事を知る。
それは霊夢や紫達幻想郷に敵対し、以て幻想郷の価値観を覆すという壮大な計画だった。

永琳から告げられた計画の壮大さに戸惑う鈴仙。しかしさらに追い打ちを掛けるように、第二の道が示される。
――八雲紫の掲げる狂った計画・『リアル・幻想・セブン』を内部から改革するという道だった。
ヒューガーの科学技術により精神を蝕まれた、幻想郷の管理者・八雲紫を救いつつ、これまで通りの幻想郷をより良くしていきたい。
紫の忠実な式・八雲藍は自らの身の危険をも辞さず、鈴仙にそう理想を語った。

幻想郷を変える為に戦うか、幻想郷を守るために戦うか。そもそも、自分は何の為に戦うのか。
そう思い悩む鈴仙の前に、かつて姿をくらました中山政男が圧倒的な力を手に、再び戻って来た。
新しいヒーローの出現に幻想郷中が湧く中、鈴仙は中山の姿に何を想うのか。

現在は決勝トーナメント第1回戦、守矢みらくるずとの対戦中。
試合はルナティックスが後半22分に3−1と優勢だが――早苗、サッカー好きか?

525 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:37:11 ID:???
こんばんは、更新を再開します。
随分とNPCシーンが長くなってしまい申し訳ないですが、たぶん次回か次々回の更新には終わると思います(汗)
>>524
乙ありがとうございます。ゴールを冥王星は忘れてました(爆)
実際問題、ゴールをブン投げる腕力があれば一人でもかなり凄いGKな気がしますね。

526 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:40:16 ID:???
――ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

そして後半戦のホイッスル。
博麗連合のキックオフから始まる後半戦だったが、
派手好きの魔理沙は『ファイナルスパーク』をのっけからぶちかます……という事はしなかった。
得意の直線的かつ『強引なドリブル』で地霊殿の中盤を突破しつつも、最初に言った作戦通りに、
アリスや針妙丸と言ったサイドの駒にもしっかりと頼り、独断専行はしない。

さとり「(――流石に50メートルもの距離だと不利と踏んだのか。
それとも、単純に体力を温存しているのか。この距離だと心は読めないけれど……何となく不気味ね)」

魔理沙「一旦頼むぜ、アリス!」

バシッ……!

アリス「はっ。ま、魔理沙!? 私の事覚えててくれたのね!」

魔理沙「当たり前だろ。そりゃあ最近、忙しくて冷やかしには来てないけど……でも。
私たち、何だかんだで友達だろ?」

アリス「魔理沙…………それ、って……!?」

そして後半5分、魔理沙は大きく上がってアリスにスルーパスを要求する。
この時アリスはプライベートな事情で舞い上がっていたが、それを邪魔する影もあった。

――タッ。

松山「あにきぃ……こいつ、友達なんかで喜んでるよ? バカだろ? どうせ裏切られるのにさ!」

アリス「――貴女は、何も分かっていない……!」

グワァァッ、バギュン!

527 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:41:36 ID:???
実況「アリス選手パスを出した! これはもしや〜〜〜〜!?」

松山「分かるさ。お前も俺達と一緒に地獄に堕ちる事でしか幸せになれない。
今謝って俺達の仲間になるっていうなら、兄貴の旨い麻婆豆腐を食わせてやるぜ? ……それっ!」

バァァァッァッ!

実況「後半戦、矢車選手から交代した松山選手がパスカットに出た!
この広いスペースを使った上手いパスカットは矢車選手には無い、彼だけの必殺技!
素晴らしい精度を誇りますが……!?」

アリス「――魔理沙がこの先私を裏切ったとしても、裏切る前までは友達で居てくれた。
こんな贅沢な事実に、貴方達兄弟はどうして満足できないのかしらっ!?」

パァァッンッ!

松山「なっ、ボールが更に跳ねた!?(そして……こいつはもしかして。俺達以上の地獄を味わったというのか……!?)」

実況「やはり、やはりアリス選手の二段スピンパス、『アーティクルサクリファイス』には敵わない!
幻想郷でも一級のパサーであるアリス選手のパスは……ペナルティエリア前の魔理沙選手に渡ります!」

魔理沙「いや……別に私は裏切らないからな? 本やらマジックアイテムやらを返す約束は多分裏切るけど。
まぁいいや、折角の得点チャンスだ!!」

グワァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

霊夢「………魔理沙」

魔理沙「……分かってるって。私は理のある勝負を捨てる程バカじゃない。さっきのが特例だ。
だからここで決めてやるよ! 恋符……『マスタースパーク』ッ!」

バッ、ゴオオオオオオオオオンッ!! ――ビイイイイイ………ンン!!

528 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:44:00 ID:???

さとり「(さっきのシュートとは違うけれど、やはり凄い威力……!)――止めます!」

バッ!

魔理沙はここで、霊夢との会話通りに、ペナルティエリア外で『マスタースパーク』を放った。
元々レミリアの『マスターオブレッドサン』にも並ぶと評された威力の元祖必殺シュートは今も衰えず強い。
先程の『ファイナルスパーク』とは比べては大きく劣るが、それでも充分さとりの守るゴールを抜くには充分。
現に、そのシュートはすでにブロックに出ていたこいしやキスメをふっとばし、さとりの鼻先にまで一瞬で近づいて――。

――ドガッ! ……グッ、ググッ……。 バァァァァァァァアッ!

さとり「……と、め……られない……!?(――そんな! 辛うじて防げると思ったのに……!!
これが、追い詰められた主人公の力だと言うの………!?)」

ズバァァッ、ピピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

――そして、全力のパンチングに出たさとりを吹き飛ばして、呆気なく魔理沙は2点目を決めてしまう。
無論、『呆気なく』とは傍目から見た印象であり。
実際にボールを受け止めたさとり達は、それ以上の運命めいた意志の力を感じていたが。


博麗連合2015 3 − 0 地霊殿サブタレイニアンローゼス

529 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:45:24 ID:???

針妙丸「おおーっ。やったね! やっぱり霊夢の言う通りだ!
ちゃーんと頭を使えば、ヘンな新技使わなくってもゴールは充分決められるんだね!!」

魔理沙「………ああ。そうだな」

異変後に博麗神社でお世話になっていたからか、チームの中でも取り分け霊夢派の針妙丸は、
魔理沙のゴールを霊夢の冷静な説得のお蔭だと考えているようだった。
そんな単純な小人の頭を魔理沙はやや雑に撫でつけると、静かな笑顔で仲間達の方へと向かっていく。

霊夢「………………ちょっと、まり」

霊夢は暫く、そんな魔理沙の落ち着いた様子を寂しげに見つめていた。
そのおり、魔理沙が自分に対し手を高くに差し出す――ハイタッチを求めている時に、
霊夢はふと言葉を出そうと声を挙げる。その時だった。

――ドゴオオオオオンッ! バリバリバリバリバリバリッ!!

霊夢「……な、何ごと!?」

大地が真っ二つに裂ける勢いの地響きと、天が落っこちてくるような勢いの雷鳴で、霊夢の小さな声は掻き消された。
代わりに、そのフィールドに巻き起こった台風の目となった背の高い女はこう言った。

勇儀「そうか! やーーーっと思いついたぞ!! ああすれば、あの森崎とやらを殺せるのか!!」

530 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:49:10 ID:???
先程の天変地異は、鬼の四天王たる勇儀が唐突に挙げた叫び声だったようだ。
物語に示されたとおり、鬼は吐息で天を凍てつかせ、怒声で地を砕くのが常識ではあるが、
常識外れの大鬼は、感嘆符一つで天地をひっくり返す事ができるらしい。

萃香「ちょっと勇儀、メーワクだよメーワク。観客さんが百人単位で、ショック死してるじゃないか」

勇儀「なにィ? たったの百人程度誤差だろうに。私らが居なくなったせいで、地球には人間が何人になったと思う?
70億だよ70億。そのうちちょっと死んだところで、世界は変わりゃしないさ。
――あと誤解の無いように言っとくと、観客は気絶しただけで死んでないからな」

ウサギC(観客席)「ガチで死んでたらネタでもシャレにならないからね〜……」

ウサギB(観客席)「誰に対して言ったの、Cちゃん?」

萃香「あれ、そうだっけ? 嘘ついちゃったなー私。たはは」

勇儀「全く、お前さんは昔から嘘を吐くから良く無い。鬼たるもの、嘘を真実にする位やってみせなよ」

萃香「駄目だよ。若島津健は強靭な精神力でスクラップの妖怪として存命してるし、
河城にとりは緊急脱出ポッドで月まで逃げたからたぶん無事だ。この物語で人死には絶対に出ないし出させないよ。
……これだけは、鬼の矜持に従って誓う」

勇儀「全く、萃香も甘くなったモンだねぇ。まあ、それも一興か! 血の溶け込んだ酒は旨く無いからねぇ!」

531 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:50:57 ID:???

霊夢「っていうか。そんな簡単に人を殺しでもしたらマジでボコすからね。
アンタら鬼が軽く騒いだだけでも、こっちとしては大異変だから」

……そして、霊夢の冷静なツッコミがスルーさてしまう程に、鬼達の会話は更に非常識かつ雲上の世界だった。
人間にも分かるように翻訳すると、勇儀は宣言通り森崎を殺し得る新技をたった今思いついたらしい。
そして、この次のキックオフ以降でその技をやる、とのことだった。

森崎「(……まあ、殺すは流石にジョークだと思うが。これだけ大口叩いてる奴のシュートを防いで、
逆にヤツらを嘘つき呼ばわりするのも悪くねぇか……)」

――そして、自分のあずかり知らぬところで、大々的に殺害予告が行われているにも関わらず。
引きながらもこうして挑発文句を既に考え始めている森崎は大物だった。
……もっとも、そんな彼でさえ、『鬼は嘘を吐かない』という基本的な妖怪のルールを失念しており、
そして、星熊勇儀はそんな鬼の中でも最も嘘が嫌いな部類であるという事までは知らなかったようであるが。

勇儀「……早くキックオフしようぜ。もう待ちきれないよ。早くボールを出しとくれ」

静かな殺気を審判に漂わせ、勇儀はキックオフを催促する。
古明地さとりは霧雨魔理沙に敗北した。しかし。星熊勇儀と森崎有三の勝負は、これから始まったばかりだった。

532 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/13(水) 00:54:45 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
勇儀姐さんがかなり物騒な事を言ってますが、スケールのデカい冗談(嘘とは言ってない)という事で大目に見てくれれば幸いです。
多分本人もそこまで殺す気はありません。……たぶん。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

533 :森崎名無しさん:2015/05/13(水) 00:58:11 ID:???
乙です。
とうとう予告殺人シュートの使い手が現れるのか・・・
レヴィンシュートの強化版かな?

534 :森崎名無しさん:2015/05/13(水) 20:44:13 ID:???
ファイナルスパークマイルドの開発を急ごう

535 :森崎名無しさん:2015/05/13(水) 22:01:32 ID:???
>この物語で人死には絶対に出ないし出させないよ
でも中西くんは死んだよね…w

536 :森崎名無しさん:2015/05/14(木) 21:53:47 ID:???
>河城にとりは緊急脱出ポッドで月まで逃げたからたぶん無事だ
ブローリン「どこへいくんだぁ?」
にとり「ひゅいいいいい!!ぶ、ブローリンくんと一緒に避難する準備だよぉ…」
ブローリン「一人用のPODでかあ?」

537 :森崎名無しさん:2015/05/14(木) 23:36:30 ID:???
ファイナルスパーク撃てるようになるまで筋肉をつけよう
そして上位技のマッスルスパークを習得するんだ

538 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:32:22 ID:???
こんばんは、昨日は忙しかったので更新できませんでしたが、
今日は暇が空いたので更新します。今日も文章のみです。明日はちょっと選択を出せるかもです。
>>533
乙ありがとうございます。
そういえばキャプ翼原作の時点で、レヴィンが赤井とかの名前プレートにシュート撃ちこんでましたね…w
シュートは純粋に威力系ですね。
>>534
もうちょっとだけかかりますね。亀仙人的な意味で。
>>535
物語の始まる前に死んでたという事でひとつ…(汗)
鬼はウソ付きじゃない、まちがいをするだけなんです。
>>536
緊急時にまで人間と一緒に避難する準備を整えるにとりは盟友の鑑ですね。

539 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:34:23 ID:???
ピッ、ピリョッ、ピィイィイイイイッ……!

そして、審判は鬼の威圧に怯えながらも勇気を出してホイッスルを鳴らした。

勇儀「どきな、森崎の前座ども! 怪輪「地獄の苦輪」ッ!」

ダッ、ドドドドドドドドッ……!!

魔理沙「誰が前座だ! そっちこそ喰らえっ、魔符・『スターダストレヴァリエ』!!」

ズザアアアアアアーーーッ!

勇儀「やるねぇ、死をも恐れぬその猛進! だけどね――今のアンタじゃ、私には勝てないよ!」

ドッ……ゴオオオオオッ!!

魔理沙「ぐっ……!」

小町「ああっ、魔理沙! くそっ、あたいがフォローでなく、タックルに行ってたら……!?」

衣玖「(最初からスタスタ逃げてたクセに、良くあんな事が言えますね……)」

勇儀は森崎をさっき閃いた新シュートで殺すという、様々な意味で前代未聞の予告通り、
魔理沙の鋭いタックルをかいくぐり(小町がフォローと称してサボってなかったら奪われていただろうが)、
猛然とフィールド中盤を突破していく。

アリス「(――新シュートとやらは、『三歩必殺』のような長距離の踏み出しが不要なのね。厄介そう)」

霊夢「くっ……! 相変わらずの怪力バカね! でもね、その位のドリブルだったら……!!」

勇儀「バカはそっちだよ、巫女! 生憎と私は戦う事も好きだが――勝つことも好きだからねッ!」

540 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:35:41 ID:???

森崎「おいおい……お約束なのか? こういう時にフィールダー連中がこぞって使えないのはよ!」

グッ!

萃香「良かったな、森崎! 勇儀があんなに楽しそうな顔してたの、久しぶりに見たよ。
こりゃあ私もお邪魔になるかな……とか、なんてね。私も仲間に入れてくれよ!!」

バッ!!

天子「あっ。私も仲間外れにしないでよね!」

タッ……!

森崎「ちっ。勝手なヤツラめ。ちょっとは緊張感を持てよ……」

このお燐の突破を前に、残された森崎以外の博麗連合のDF陣も、
来たるべき未知の大型シュートを前に士気を高揚させて各々ブロックへと向かう。
そしてお燐がソツの無いパスで衣玖のパスカットを掻い潜り、勇儀の足元にボールを運ぶと、
周囲の緊張感は爆発的に増した。

勇儀「ようし。これでお膳立ては整ったね」

森崎「何言ってやがる、口でベラベラと。弱いヤツこそ強さを口で説明したがるモンだぜ」

勇儀「あっは。流石は森崎! 良い事を言うじゃないか……!」

ペナルティエリアの手前で森崎と勇儀は対峙する。
萃香や天子のような周囲の優秀なDFすら、その二人を包む異様な闘気に割り入る事ができない。
永遠にも近い一瞬が流れた後、勇儀はその右脚を大きく振り抜いた。

541 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:40:36 ID:???
                    ――――グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!

                   実況「勇儀選手大きく右脚を上げた! これは一見すると、
             燃費と使い勝手はともかく威力は劣る、『大江山嵐』のフォームにも見えますが……!?」

               さとり「(勇儀さんの新技とやらの理屈は、ハッキリ言ってメチャクチャでした。
          あんなのを初見の思いつきで成功させるなんて、彼女じゃなければ妄言としか思えないけれど……)」

                       ――グルウウウウウウウウウンッ!

               さとりを始めとする地霊殿サブタレイニアンローゼスの面々の心配をよそに、
             勇儀は普段通り左脚を軸にして、回し蹴りの要領で右脚をグルンと一周させていく。
                    ここまでは実況の言う通り、『大江山嵐』と全く同じ動き。
            確かに強力なシュートであるが、それで森崎の守りを突破するのは難しいように思える。
                          ――だが、そこからが違った。

                      グァァァッ!――グルウウウウウウウウウンッ!
              ――グルウウウウウウウウウンッ!――グルウウウウウウウウウンッ!
                ………ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

             勇儀は一周の回転を終えた後……シュートに行かず、更に回転を繰り返し始めたのだ。
                     倍速、三倍速、四倍速で、二度、三度、四度――。
                 やがて鬼が繰り出す回転は竜巻となってフィールド上に聳えたった。

542 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:42:06 ID:???

         勇儀「――『三歩必殺』は三歩の踏み出しが必要で、キックオフやフリーキックじゃないと撃てない!
         一方『大江山嵐』は即座の回転からシュートを放つから、そこまで高い威力を出す事はできない!」
                ならば簡単! その二つの利点を総取りすれば良いんだ! 見てな森崎!!」


                                 ド    ン!

                               ド        ン!!


           その後、竜巻に囚われて高空数百メートルに飛んだボールに向かって、勇儀は大きくジャンプ。
           そして発生した上昇気流に乗って勇儀は空気を踏んで一段、二段と大気を踏み固めながら、
                        空気の階段を宇宙に向かって跳んで行く。

                    森崎「……こいつ、何やってるんだ。 バカか? バカなのか?」

     萃香「――成程ね。確かにそれなら誰も邪魔されない上に、威力の減衰も問題にならない。勇儀も中々頭が回るね」

            勇儀の周囲で酸素が燃え、モリヤスタジアムのフィールドの一部に真っ黒な穴が開く。
               そんな中、真っ白い一陣の光の筋が天からゴールに向かって舞い降りた。
                   それは雷というよりは、天からの裁きと表現する方が正確だった。

                 勇儀「これが私の新兵器! 倍速トルネードで竜巻を発生させ、
               横軸ではなく縦軸に向かって三歩を踏み出し蹴り抜いた新・四天王奥義。
                      名付けて……『零歩必殺嵐』だーーーーーーーッ!!」

                           カ              ッ!

543 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:43:16 ID:???


                ドゴオオオオオン! バギュウウウウッ!!ドッゴォ!
          バリバリ!!   バリバ リ!!ドッゴォオオオ オオオオオオオオオオンッ!!
          ドゴォリバグギャ  グ           ギャグギャワワアアアアアアアアン!!!
              グォォ    ォォォォ    ォォオオオオ!!!!!!!
                         リバリバリッ!ゴゴゴッ! グシャアアアアアアア!!!!!
              バシュウウ ゴゴゴゴゴゴウウウウウウウウウウウッ!!バリバリ!!!  
              ュウウウウア!!! ャグギャグギャグギャワワアアアアアアアアン!!!
               ボオオオオオオオオオオン!! チュドォオオオオオオオオオオオオオオオン!!
        ギャアアアアアアアアアアアアアッ! ギュウウウウウウウッ! ドゴオオオオオオオウウウウウ 
          グギャグギャドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
                      ドドドドドドドドドドドドドド
               グギャグギャグギャグギャグギャワワアアアアアアアアン!!!
                  ボオオオオオオオオオオン!! チュドォオオオオオオオオオオオオオオオン!!
                         ウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!バリバリ!!!  
                      ュウウウウウウウウウ       ウウウウウウウウウッ!!
                     グギャグギャグギャグギギャァァァアッ!!

544 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:44:28 ID:???


光が煌めいてから数秒後に、耳をつんざく轟音が走った。
地球上の兵器を全て爆発させたかのような慈悲無き威力のシュートが、狙い違わず森崎の頭上へと落ちて来る。
光の中で、重力波を纏いブラックホールと化したシュートはどす黒い。

天子「ふ、ふん! この程度じゃないと面白く無いわね! この私がブロック……できないっ!?」

萃香「『ミッシングパワー』ーーーッ! ……じゃ、やっぱり力不足か。くそっ!」

ゴゴゴゴゴゴゴッ……! ドオオオオオオン!!

ブロックに向かった博麗連合のDF――天子と萃香は幻想郷でも指折りの実力者であるにも関わらず、
竜巻と熱線と重力波の三重苦が伴う地獄のシュートに全く太刀打ちできなかった。
ブロックを試みるも、その外周で阻まれて大きく吹き飛ばされてしまう。

お燐「(マジで初見の思いつきで、こんなの決めちゃうなんて。やっぱり鬼はヤバイよ……)」

松山「あーあ、いいよなぁ……才能があるヤツは。どぉせ俺なんか……」

小町「いやー、あたいはFWで良かったなァ。あんなシュート御免すぎるよ」

針妙丸「わ、私がブロックに出てればアイツ(勇儀)の目をちくちくして邪魔できたのに〜!?(※反則です)」

地霊殿サブタレイニアンローゼスのメンバー、博麗連合のメンバーともに、
その信じがたい威力のシュートを眼の前に恐れるしかなかった。
太古から人と共にあり、単純にその圧倒的な力のみで人に恐怖を齎して来た鬼の全力は、それほどの物だった。
ただし、例外も三名程居た。

545 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:46:00 ID:???

魔理沙「(……! 私の『ファイナルスパーク』と、大して変わらない威力だ……!
いやむしろ、コンディションによっては私の方が上かも……!!)」

身を滅ぼす危険と引き換えに、勇儀にも負けない超絶的な威力を秘めたシュートを持つ主人公・霧雨魔理沙。

霊夢「(……なんか。止まるような気がする)」

未来予知的な勘により、シュートの行く末を何となく察知してしまった天才・博麗霊夢。
そしてもう一人。

森崎「……よし! ここで止めてあのデカブツ女に恥をかかせてやる!!」

――極めて幼児的な理由だが、しかし油断ならないまでの執念さで、数多のシュートを防いで来た覇王・森崎有三。
辞書にある不可能という文字を黒塗りして唾を吹きかける度胸の持ち主である彼は、今頃この程度のシュートで諦めはしない。
彼は宇宙からボールが降り注ぐまでの三秒間でシュートの最終的な威力を分析し、そして最善手を考え付き実行した。

森崎「(時間が無いから超モリサキにはなれん。だが、良く見たらあのシュートは相当な見かけ倒し!
大気圏で燃え尽きて、地上に来る頃にはボールは真っ黒焦げだから、シュートコースは読みやすい!
威力も大気との摩擦で幾分削られている筈だ! だから威力的には前の『三歩必殺』と互角だろう!
この程度――!)そう何度も。いや、一度たりとも抜かれて堪るか……!」

バンッ!!

森崎は天高く飛んだ。シュートの閃光が森崎の天井にまで来ている。
そのまま両手を大きく伸ばした。彼が得意とする体力を消耗した全力のキャッチ――『がんばりセービング・改』の構えである。
数千度で燃え盛る太陽は熱く、愛用のキーパーグローブを少し焦がしてしまったが――それでも、森崎はめげない。恐れない。
むしろ、代わりに敵の喉笛にでも食らいつかんとする勢いである。
そして、星熊勇儀が世界一のストライカーだとしたら――この森崎有三は世界一の負けず嫌いだった。

546 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:47:52 ID:???
――カッ! バリバリバリッ!!

森崎「何が鬼だ! 何が最強のシュートだ! こんなものは……この俺が、防いでやるッ!!」

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!
      ………メキ、メキメキ……!

森崎「ぐううっ……!(こ――腰が……!)」

空中で最後にひときわ大きな振動音。そしてそのすぐ次の瞬間。

勇儀「……なにィ?」

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
                            ―――ドサッ……ポロリ。

――空中で起きた天変地異は全て雲散霧消し、代わりに森崎が天から落ちて来た。
今やすっかりその威力が喪なわれたボールと同時に。
それはつまり、森崎有三が、星熊勇儀の全力の必殺技を真正面から防いだ事を意味していた。
観客達は暫くその意味に気付けず、ポカンと静まり返っていたが――。

――ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

すぐに、歓声が爆発した。

実況「な……なんとこれは! 凄い! これは……! 防いだ! 防いだ、防いだ〜〜!!
森崎選手がゴールを止めた〜〜〜!!
柔軟な体をバネのようにして、もはや一種の魔法か妖術染みた精神力を使った最強のセービング。
『がんばりセービング・改』により、星熊勇儀選手のシュートは弾かれてしまいました〜〜〜!!」

観客「な、なんだなんだなんだ〜〜!?」「アイツ、人間の分際で……!」「本当に人間か、アイツ!?」
「天才だろうな、少なくとも」「もっりさき! もっりさき!!」「もっりさき! もっりさき!!」

547 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:53:37 ID:???

――森崎は地面に大の字に寝そべって軽口を叩きながら、
暫くは自身に振りかかる声援のシャワーを浴びて、心地よさそうに目を閉じていた。
ボールは自分の忠実な同僚である中里が、しっかりと前方へとクリアしていた。

勇儀「フフ……! 決められなかったのは悔しいが、森崎有三! 私はアンタに惚れ直したみたいだ。
今まで小細工を使って私の全力を防ぎに来た人間は腐るほどいたが、
まさか真正面から破りにいくのはアンタが生まれて初めてだ!
私は嘘は吐かん。だからいつかアンタを殺さなきゃいかんのが辛いが……! でも、とても楽しみになって来たよ!」

森崎「フン、負け犬が良く吼えるぜ。殺すなら今でも俺の首を捻れよ。簡単に殺せるぜ?」

勇儀「馬鹿にしないどくれ。力も才も無いにも関わらず鬼を正面から打ち負かした尊敬すべき相手、そう簡単に殺せるか。
私がアンタを殺る時は、互いに全力を出せる場――サッカーの試合中の攻防の時だけだ」

タッ……。

勇儀はそう森崎に言い残して、守備へと向かっていく。
森崎はそんな潔い勇儀の台詞すら見下すように、寝そべったままフンと鼻で笑ってみせた。
当初の望み通り、勇儀に恥をかかせる事は出来たか微妙ではあるが――それでも、不思議と悪い気はしなかった。

548 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 00:57:53 ID:???
……と、言ったところで今日の更新はここまでです。
明日こそ試合が終わり、聖徳戦にかかるイベントも入れられればと思っています。
>>537
マッスルインフェルノとマッスルリベンジャーも覚えないといけませんね…w
というかヘタしたら筋肉鍛えても心臓病で死にそうです。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

549 :森崎名無しさん:2015/05/15(金) 01:05:28 ID:???
気のせいかもしれませんが、>>539>>540の間に勇儀のパス、お燐の突破あたりの描写があるような気がするのですが
勘違いでしたらすみません

森崎君も勇儀さんも魔理沙さんもすごいな
距離補正なしの三歩必殺、同威力のファイナルスパーク、それを止める超化なし森崎
鈴仙「……主人公、私よね?」

乙なのです!

550 :森崎名無しさん:2015/05/15(金) 08:46:51 ID:???
森崎、モテモテすぎてそのうち刺されるんじゃね?アリスさんあたりに
乙ロット!

551 :森崎名無しさん:2015/05/15(金) 20:54:01 ID:???
ボールを宇宙に出した。ボールをスペース(宇宙)に出した。

552 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 22:54:28 ID:???
こんばんは、今日は少しだけになりますが更新します。
>>549
乙ありがとうございます。
これまで博麗チームについてはラスボスチームであるにも関わらず描写があまりなかったので、
ちょっとくどいかな? と思われても良いからやや多めに書いていますね。

鈴仙のターンはもうすぐ来るのでもう暫くお待ちください。
ちなみに描写からはとても信じられませんが、これでも鈴仙の『インビジブルデューパー』の方が
勇儀や魔理沙のシュートや森崎のセービングより強いです(びっくり)

文章についてはすみません、一部凡調かと思い描写を削った箇所があったのですが、
上手く治ってませんでした。次レスで修正版を投下します。
>>550
乙ロットありがとうございます。異世界ファンタジーによくあるハーレムものですね(違)
いや、ある意味正しいのかもですがw アリスさんが報われる日は来るのでしょうか。
>>551
空いたスペースを大事にするという、近代サッカーの理論を大事にした必殺技でしたね。

553 :>>540修正版@鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 22:56:40 ID:???
グワァァァッ、バコッ!

お燐「ほい来た! そんなら、あたいはあたいの仕事をさせて貰うよっ!」

タッ! クルンッ…! シュババババッ!

アリス「――くっ。全然都会派な動きじゃないわね!」

衣玖「わ、私の『龍魚ドリル』だったら……いや! ボランチの位置だとこれは、ギリギリ届かない……!?」

実況「勇儀選手、霊夢選手からは逃げのパス! 堅実にボールをお燐選手に繋ぎ……!
――そして、自慢のサイド際での必殺ドリブルでアリス選手や衣玖選手を翻弄!
あっという間にバイタルエリア付近へとボールを運びました〜!!」

森崎「おいおい……お約束なのか? こういう時にフィールダー連中がこぞって使えないのはよ!」

グッ!

萃香「良かったな、森崎! 勇儀があんなに楽しそうな顔してたの、久しぶりに見たよ。
こりゃあ私もお邪魔になるかな……とか、なんてね。私も仲間に入れてくれよ!!」

バッ!!

天子「あっ。私も仲間外れにしないでよね!」

タッ……!

森崎「ちっ。勝手なヤツラめ。ちょっとは緊張感を持てよ……」

554 :>>540修正版その2@鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 22:58:24 ID:???
このお燐の突破を前に、残された森崎以外の博麗連合のDF陣も、
来たるべき未知の大型シュートを前に士気を高揚させて各々ブロックへと向かう。
そしてお燐がソツの無いパスで衣玖のパスカットを掻い潜り、勇儀の足元にボールを運ぶと、
周囲の緊張感は爆発的に増した。

勇儀「ようし。これでお膳立ては整ったね」

森崎「何言ってやがる、口でベラベラと。弱いヤツこそ強さを口で説明したがるモンだぜ」

勇儀「あっは。流石は森崎! 良い事を言うじゃないか……!」

ペナルティエリアの手前で森崎と勇儀は対峙する。
萃香や天子のような周囲の優秀なDFすら、その二人を包む異様な闘気に割り入る事ができない。
永遠にも近い一瞬が流れた後、勇儀はその右脚を大きく振り抜いた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
と、言う風に>>540を脳内変更して頂ければ幸いです。(2レスになってしまいましたが)
次レスから、昨日の続きを投下させて頂きます。

555 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:07:21 ID:???
星熊勇儀の豪快な新技は、森崎有三という謎の男のセービングにより破られた。
――そんな衝撃的な幕切れと共に、試合終了を待たずして、互いに矜持を持つ者同士の戦いは終わった。
『どのタイミング・場所からでも撃てる三歩必殺』という破格の新技・『零歩必殺嵐』すら破られた
地霊殿サブタレイニアンローゼスの士気は、口に出さずとも大きく落ちていた。

天子「ふっふーん! このまま『気炎万丈の剣』でバラバラに引き裂いてやるわ!!」

グワァァァッ、ドドドドドドドド、ドゴオオオオンッ!

さとり「……キスメさん、頼みます!」

キスメ「……!!」

ヒュ〜〜〜〜ッ、ガイーーーーンッ!!

天子「ちょ、ちょーーーい! なんで私のシュートが釣瓶落としに防がれるの〜!?」

実況「――後半28分、辛うじて弾かれた針妙丸選手のシュート『輝針剣』に対し、
勝手に後ろで張り付いていた天子選手がねじ込みに向かいましたが……これは通じない!」

――とはいえ、地霊殿もある程度は奮戦した。
確かに、中盤の支配力の差、そして勇儀やお燐、松山等主力選手の疲労もあって、
地霊殿サブタレイニアンローゼスのボール支配率は悲惨な事となっていた。
しかし、ゴールキーパーの古明地さとりは持ち前の精神力とリーダーシップで守備陣を鼓舞しており、
今のようにペナルティエリア外から飛んで来たミドルシュートであっても、仲間と連携して守り失点を回避していた。

556 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:08:55 ID:???

空「勇儀さんのカタキー! くらえっ、『核反応制御不能ヘッド』ォーーーー!」

森崎「無駄だと……言ってるだろうが!!」

バァァァァッ、バシイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

ただし、地霊殿が誇る高火力のFWは、いよいよ顕在した森崎の守備力の高さに依然苦戦していた。
空のシュートとて勇儀には劣るものの、並のチームではエース格の攻撃力を誇るにも関わらず、
森崎はその全力すら出さず、『がんばりダイビング』の多用で容易く切り抜ける。
無論、体力面の不安は各技のあまりの無茶な動きから容易に想像できたが……。

勇儀「もう一度決めてやるよ! この私の『零歩必殺嵐』で……」

萃香「甘いね勇儀!」

ジャラッ、ズザアアアアアアアアアアアッ! ポロッ!

勇儀「――な。これは『鬼縛りの鎖』! くそっ萃香、私にシュートを撃たせんとは卑怯だぞ!」

萃香「何言ってるんだ。こっちは限られたルールの中で全力を尽くしたまで。
誇りを捨てずとも、もうちょいと気楽に行きなよ、勇儀はさ!」

――森崎を支える博麗連合の守備陣もまた優秀。
ブロック一芸だけでなく、最低限以上のタックル技術と技を持つ萃香が勇儀をマークし撃たせず、
空へのセンタリングは中里が『縮地法』『韋駄天の術』などのパスカット技を発揮し通せない。
また、天子も攻めッ気たっぷりな所は玉に傷であるが、優秀なタックラーかつブロッカーである。
故に、手数で森崎を削る事や、一対一を挑む事すらも相成らない。

557 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:11:16 ID:???
中盤は完敗。守備は辛うじて守るが、攻撃が振るわない。
そうしたジリ貧の状況が十分、二十分と続き――そして、後半ロスタイム。

霊夢「――魔理沙! ……お願いね」

バシュッ! ギュルルルルルルルルルルルルッ!

実況「出た〜! 霊夢選手自慢の、受け手に向かって追尾する必殺パス!
その性能から『博麗アミュレット』とも称されるホーミングパスを、魔理沙選手が受け取りました!」 

魔理沙「……もう一発食らえ! これが私の……『マスタースパーク』だ!」

グワァァァッ、ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ! ビイイイイイイ………ンン!!

キスメ「……!」

ドガァァァッ!

ヤマメ「ちぇーっ。またひよったシュート? 最初のヤツでやれよー? ……ま、吹っ飛ぶんだけどさ」

バゴオオオッ!

こいし「ふふふ。あなたの無意識、面白いね!」

バゴオオオオオッ!

さとり「こ、こいし。皆……!(――距離は27メートル程度。私から魔理沙さんの心の声は聞こえない。でも……)」

―――ドゴオオオオオオオオオオオオッ! ズバァァァァァァァッ!!

558 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:38:02 ID:???
魔理沙は霊夢のパスを受け、再度『ファイナルスパーク』ではなく『マスタースパーク』を放った。
この時点で、魔理沙だけで無く針妙丸や天子、
稀に霊夢のミドルシュートを幾度と受けていたさとりは疲労していたため、
今大会全体ではややパッとしない威力の『マスタースパーク』でも、充分有利な勝負という事は明らか。
そのため、運でも気力でも何でもなく、さとりがこうして吹き飛ばされるのは必然だった。

――ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!
ピッ、ピッ。ピィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッ!!

魔理沙「……うん、よし。 ……やったぜぇぇぇぇっ!!」

4点目のゴールと試合の終了を告げるホイッスルが鳴り、
魔理沙は彼女らしからぬ小さな声でそう呟いた後、大きく叫び直した。
その顔は一瞬だけ曇っていたが、すぐにいつも通りの傍若無人で大胆不敵な満面の笑みに変わっていた。
魔理沙のこの微妙な表情の変化は、あまりに一瞬だったが――それに気付かぬ者も居ないでもない。
その一例が、魔理沙のすぐ近くで無表情ながら敗北感を噛みしめていた、覚妖怪の少女だった。
さとりは魔理沙から比較的近くの距離でゴールを守っていたため、彼女の心の一端を読む事ができていた。

さとり「……魔理沙さん。貴女は今ゴールを決めた時、嬉しそうではなかった」

魔理沙「………」

さとりは魔理沙とすれ違いざまにそれだけ伝えた。魔理沙は黙って何も答えなかった。
その明るくも虚ろな目線の先には、先程自分をアシストしてくれた巫女の姿が映っていた。
彼女の姿を見て、この金髪の小柄な少女は何を想ったか。

さとり「(『私は、霊夢と並び立ちたかったのに……』――ですか。
彼女にとってはやはり、あの努力の成果である『ファイナルスパーク』こそが、大きな心の拠り所だったようね……)」

さとりは敢えて、魔理沙が何を想っていたかを口に出すのは避けるようにした。
それを伝えたら、彼女の中の何かが修復不可能なまでに壊れてしまうような気がしたからだ。
そのまま、さとりは敗者に相応しくとぼとぼと自チームの控室へと戻って行った。

559 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:45:59 ID:???
霊夢「(――これで……良かったのよね)」

そして、心を読まずとも魔理沙の心境などお見通しの者は無力だった。
彼女は魔理沙の心の中身を知ってなお。
それとは無関係なごく当然かつ一般的な理を、自分の中で何度も繰り返す事しか出来なかった。


博麗連合2015 4 − 0 地霊殿サブタレイニアンローゼス 試合終了!


大会得点ランキング(表記はメインキャラのみ):
12ゴール レミリア
11ゴール 鈴仙
9ゴール  フランドール、射命丸
8ゴール  魔理沙
7ゴール  勇儀
6ゴール  来生
5ゴール  屠自古、星、諏訪子
4ゴール  森崎、神子、反町、霊夢
3ゴール  早苗、謎の向日葵仮面
2ゴール  神奈子、ピエール、メルラン、天子、赤蛮奇、空、佳歩
1ゴール  妹紅、咲夜、美鈴、サニー、リリーB、ぬえ、響子、永琳
       影狼、藍、幽々子、幽香、針妙丸、パチュリー、小田、椛、岬

大会アシストランキング(表記はメインキャラのみ):
6アシスト パチュリー、霊夢
5アシスト 小町
4アシスト てゐ、神子
3アシスト 早苗、ピエール、小悪魔、マミゾウ
2アシスト 森崎、反町、はたて、岬、空、お燐、ウサギB、レミリア、アリス
1アシスト 鈴仙、影狼、大妖精、橙、諏訪子、
       衣玖、針妙丸、リリーW、ルナサ、ぬえ、永琳、妹紅

560 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/15(金) 23:55:50 ID:???
……と、いったところで今日の更新はここまでです。
皆様、本日もお疲れ様でした。

561 :森崎名無しさん:2015/05/16(土) 09:49:20 ID:???
乙でした。
さすがは主人公チーム。強い(確信)
森崎対策は、シュート連発なんだけど、まず削るのが難しそうだね。

562 :森崎名無しさん:2015/05/16(土) 15:33:17 ID:???
乙なのです
実際総合力は博麗の方が上だし、てゐをマークされて、中盤押し負けて支配されたら
シュートラッシュor一対一で完封+姫様炎上もありそう

563 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 21:44:11 ID:???
こんばんは、今日もほんの少しだけですが更新します。
>>561
乙ありがとうございます。
森崎の弱点については明白なので、そのあたりの対策はしてきますね。
決勝戦はずっと続いて来た第一部のクライマックスですので、それにふさわしい強敵になればと思います。
>>562
乙ありがとうございます。
博麗チームはかなり強いですが、実は中山さん加入+仲間の成長で、総合力的にはほぼトントンだったりします。
なので、サンパウロ戦レベルの引きでもなければ、そう一方的な試合にはならないと思います。

564 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 21:52:18 ID:???
鈴仙「――何と言うか。圧倒的な試合でしたね……」

永琳「そうね。でも……内容を見ると、地霊殿サブタレイニアンローゼスも決して悪くは無かった。
とりわけ、星熊勇儀はこの試合で大きく株を上げたでしょうね。
試合後半に見せたあの新必殺シュートは、霧雨魔理沙は勿論、レミリア・スカーレットにも真似できない。
彼女の全幻想郷選抜でのレギュラーは、ほぼ確定されたものね」

輝夜「あんなシュート、ウチらの試合中に思いつかれてたら今頃死んでたわよねー。ハハハ!」

慧音「笑ってみせるその豪胆さは尊敬するけれど。そんな恐ろしい想像、してくれるなよ……」

佳歩「それよりも、魔理沙さんのあの『ファイナルスパーク』。やっぱりもう使わないのかなぁ……」

ウサギB「もしも使われてたら、決定力は文句なしのSランクだろうけど。
少なくとも、もう無駄撃ちはしないと思うな。あの人間の魔法使い、意外と計算高いから」

中山「う〜む。パルスィさんにマンマークされていたから、
博麗霊夢……さんの出番があまり無かったのが少し残念だったか」

パスカル「にも関わらず、博麗連合は俺達がナカヤマ抜きとは言え3−2と苦戦した
地霊殿サブタレイニアンローゼス相手に、4−0で圧勝してしまったのは恐るべき事実だ」

試合終了後、鈴仙は観客席で永遠亭ルナティックスのメンバーと共に、試合の感想を口々に語り合っていた。
かつて苦戦した地霊殿サブタレイニアンローゼスの大敗は、ある意味では予想通りとはいえ、
メンバーに危機感と博麗連合というチームの強大さを教えるには充分だった。

鈴仙「まあ、とりあえず私達は明後日の準決勝も勝たないといけないんだけどね……」

しかし、博麗連合と対決できる権利を得る為に、鈴仙達はまず明後日の試合に勝利しなくてはならない。
全幻想郷選抜サッカー大会の決勝トーナメント準決勝戦。
謎と野心に満ち溢れた道士・豊聡耳神子率いる、聖徳ホウリューズとの試合の事である。

565 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 21:55:52 ID:???
鈴仙「(パチュリーさんを故意に負傷させたり、来生君を疑惑の反則で退場させたり、
果ては手下を使って、フィールド全体の雰囲気までをも混乱させる、恐るべきデマゴーグの扇動家!
妖夢はそれをも認めて、力の為に彼女達の軍門に落ちたけれど。
やっぱり、私は彼女達のやり方を理解はすれど、納得はできない……!)」

鈴仙とて、過去に軍人として多くの卑怯な兵法を学び、その必要性を学んで来た。
実際に自分が手を下した事もある。しかし、それでも今ここにある聖徳ホウリューズのやり方は納得できないでいた。
そこに明確な論理や理屈は無い。理を学んでも、どうしてもなんとなくそれを割り切れないのが、永琳には無い鈴仙らしさだった。

輝夜「ま! 疲れたし明日の事は明日考えましょ! 今日はもう解散ね!」

鈴仙がそう地面に向かって怖い顔をしていると、輝夜がパンパンと手を叩いて雑に解散を宣言する。
子どもの妖怪ウサギ達はそれを聞くと、真っ先にこぞって人里へと駆けだして行った。
佳歩から前に聞いたところによると、永遠亭のウサギ達は外出時の帰りに、
人里のオシャレな店やおいしい茶店へと寄るのが最上級の至福のひとときであるらしい。

鈴仙「(――もっとも、おこずかいは少ないから専らウインドウショッピングらしいけど。
やっぱりあの位の年の子だったら、ただ刺激があるってだけで楽しいのよねぇ……きっと)
――って、あっ!」

ドシン!

少年「おっと、これは失礼」

鈴仙「いえいえ、こちらからすみません(怖い人じゃなくて良かったなぁ……)」

自分がおらずともたくましく遊ぶウサギ達に何となく寂しい感じを覚えながらも、
鈴仙は未だ人混みの激しいモリヤスタジアムの観客席から出口に向かって歩く。
先程の少年を始めとして、当然の権利のように、鈴仙は道中で他人に三回ほどぶつかった。

566 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 21:58:12 ID:???

てゐ「ぷはー。やーっとこさついた」

つかさ「何回も人にぶつかっちゃいましたね。ひったくりとかが居ても分かりませんわ」

鈴仙「あははっ。つかさったら心配性ね。大丈夫よ、この私がひったくりなんか……に……?」

そうして、辛うじて人ごみを抜けた鈴仙はスタジアムの外で、
つかさの発言を軽く受け流すように、ポケットにポンポンと手を当てるが――。

鈴仙「……あれ。私のサイフが無いんだけど」

てゐ「うわー。やっぱり心配だなぁ、コイツ……」

パスカル「……おいおい。しっかりしてくれよ、レイセン?」

鈴仙「――う、うっさいわね。人が多すぎて、気付かなかったのよ」

鈴仙を白けた表情で見る者が数名。
そんな仲間達の薄情さに対抗するべく鈴仙は言い返すが、語気に力が入らない。
つかさが心配した通りか、それとも単純に道端にでも落としただけなのか。
その理由はともかくとして、今の鈴仙には金が無かった。

鈴仙「ゴメン、ちょっと探してくる!」

バッ!

てゐ「あっ、鈴仙! ……って、行っちゃった」

鈴仙は単身身を翻して、妖怪の山モリヤスタジアムの観客席へと戻って行った。
別に「ふわたり手形」くらいしかない古財布、見逃しても良いんじゃないかなぁ……と思いつつ、
てゐはそんな機転が効かない鈴仙を見送るのだった。

567 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 22:12:35 ID:???
そして結論から言うと、鈴仙の財布は簡単に見つかった。
さっき座っていた観客席に、柔らかい黒髪の、屈託のない少年が鈴仙を待っていてくれていた。
その片手にボロボロになった、人参柄の財布を持って。

少年「――やあ。待っていて良かった。落としていましたよ、これ」

鈴仙「……。待ちなさい。貴方は、いや、あんたは………!!」

その少年はまるで天使のように爽やかに笑う。
先程ぶつかった時は全く印象が無かったが、鈴仙は彼の顔を知っていた。
少年は丁寧に鈴仙の古サイフを差し出して、こう挨拶をした。

岬「既にこの僕――岬太郎の事はご存知のようだね、鈴仙・優曇華院・イナバさん。遭いたかった。
貴女については、妖夢さんから色々と話を聞いているよ」

彼の名は岬太郎。聖徳ホウリューズを率いる豊聡耳神子の片腕として暗躍する、笑顔と策謀のアーティスト。
天性的な詐欺の才能で多くの人間のファンを幻想郷にも作りつつ、
その裏では鈴仙のマスターたるパチュリーを負傷させた張本人。
また、妖夢の才能を見出し、神子が主宰する『ハイパーカンピオーネ』計画のスカウトを行った人物でもある。
そんな彼が今突然、鈴仙の眼前に姿を現したのだった。

鈴仙「……そりゃあどうも。ありがとうございます」

流石の鈴仙も、妖夢やパチュリーの発言から彼の素性を幾らか知っているため、
如何に彼が柔和な姿勢で語り掛けて来たとしても油断はしない。
鈴仙は敢えてぶっきらぼうに応じるが、予想通りの態度だったためか、岬は全く怯まずこう返す。

岬「やあ。そんな怯えた表情をされても困るな。僕は単純に、君の落とした財布を拾っただけなんだから。
……もっとも、ついでに立ち話も出来れば、とは思っていたけどね」

――どう考えても、後者の方が本題である事は明白に思えた。
岬のペースに惑わされぬよう、鈴仙はゴクリと唾を呑みこんで、強く彼を睨む事にした。

568 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/16(土) 22:14:29 ID:???
岬が鈴仙に接触!?
――と、言ったところで今日の更新はここまでです。
今日は布石ということで地味でしたが、明日は久しぶりに鈴仙回になればと思います。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

569 :森崎名無しさん:2015/05/16(土) 22:25:24 ID:???
流石にミサキーヌにだまされたりしないよな?

570 :森崎名無しさん:2015/05/16(土) 22:37:19 ID:???
てゐにも注意されてたし、この前の試合もあるし、大丈夫でしょう、多分
乙なのです!

571 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 00:55:08 ID:???
鈴仙「おまわりさん!あの人に私の財布をすられました!」ミサキーヌ「なにィ!?」

逮捕させて敵の戦力を落としてやる。乙ロット!

572 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 12:35:14 ID:???
コロッとだまされることはないだろうけど、なりふり構わなくなった岬は怖い。
さて、何してくるのか。

準決勝まで自由行動2回。決勝までは6回。

鉢巻を松山に渡すことは確定として

正邪との面会
オフサイドトラップ、フェアプレイ精神、しゃべるボールの完成
つかさ、ウサギBちゃんと特訓狙うか
脳内試合ドイツ(準決勝後推奨)
レミリアのシュート練習

文(追放後どうなった?)
反町(大事なものと引き換えにシュートの才能なんたら)
アリス(森崎に上手く利用されてる? 友達になりたい発言)
あたりと会っておくか

573 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 20:53:18 ID:???
鈴仙「それで何のようなのかしら……」
岬犬「……妖夢さんの行方がわからなくなったんだ。居場所を知りませんか」
鈴仙「え?」


矢車「一緒に歩いて行こう、ゴールのない暗闇の中を」妖夢「にいさぁん」

574 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 22:45:50 ID:???
ふーむ、例え益がなくても吠えヅラを拝みたいな
1. ちょっと脅しをかけて、妖怪との差を分からせる
2. 太子やにゃんにゃんの存在を盾に心配するふりをする
3. 「この人痴漢です」 それでもボクはやってない

575 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 22:48:40 ID:???
・・・なぁ、これ見ようによっては岬がカツアゲされてるようにも見えなくないか?
ちらっと誰かが写真撮ってやっぱ妖怪は最低って話になるんじゃないか?

576 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:22:17 ID:???
吠え面かかせたいなら財布くれてやってなにも話さず逃げればいい
話術の使い手なんだからそもそも交渉のテーブルひっくり返して帰ればいい
そしてたんたんとサッカーで普通に勝てばいい

577 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:24:46 ID:???
こんばんは、今日も更新していきます。
>>569
鈴仙を直接騙したりはしないですね。
>>570
乙ありがとうございます。
花果子念報の記事でも岬の悪行?は出ていますし、
鈴仙もこの前の試合の一連は知っているという体でいます。
>>571
乙ロットありがとうございます。
証拠が無いから逮捕はできない……という理屈で行こうと思いましたが、
テレビとかで、状況証拠のみで痴漢が逮捕されたりって話は聞きますね。
幻想郷では前者の理屈という事でお願いしますw
>>572
計画ありがとうございます。
反町や射命丸がどうなったかについては、別途無判定シーンで補完したいと思います。
>>573
地獄兄弟入りはJOKERでもたぶん無いと思いますねw
>>574-575
確か幻想郷では、人里では妖怪は人間を襲えないというルールがあります。
モリヤスタジアムは妖怪の山ふもとで人里では無いですが、周囲には人間も多いので(という設定)、
あまり良い行動では無いかもですね。

578 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:25:29 ID:???
(そのときふわたりてがたの存在を思い出した)

579 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:26:15 ID:???
>>578 ・・・あ!それや!

580 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:26:43 ID:???
岬「……ところで」

鈴仙「何ですか。またナンパでもするんですか?」

岬「これは手厳しいね」

鈴仙「師匠から、仕事以外で知らない男の人に声を掛けられても相手にするな、って言われてますから」

鈴仙の財布を渡し終わった岬はおもむろに話しだすが、
警戒している鈴仙はそれを真正面から受け取らない。
彼の口の巧さは新聞などの様々な評判や、
何よりあの真面目で一本気な妖夢を籠絡してみせた事実から、鈴仙も良く熟知しているつもりだった。
だから、鈴仙は岬に口を開く暇を与えさせない。
鈴仙は財布をむんずと握って、岬の元から一刻でも早く立ち去ろうとしたが。

岬「――あらら。まあ待ってよ鈴仙さん。僕は決して君にも損にならない情報を持っているんだけどな」

岬は明るい声でそう述べるが、鈴仙はぷいとそっぽを向いたまま振り返らない。
岬の趣旨が仮に鈴仙にとって得な情報であったとしても、その真偽を確かめる方法は無い。
つまり、何を言おうが岬は、鈴仙を惑わせる以上の事をしない。
いくら鈴仙でも、その程度の考えはしっかり整理がついていた。

鈴仙「(多分アイツは私の財布をひったくって、こうやってサシで会話して、
私を混乱させようと目論んだんでしょうけど。 ――アンタの計画は既に割れてるのよ!)」

岬から背を向けた鈴仙は、毅然とした態度で、心の中でそう言い放つ。
――しかし鈴仙は同時に、この時ミスをしていた。
そのミスは通常、ミスとも言えないごく当然な行動だったが――こと岬相手で、それは大きな落ち度だった。
岬は鈴仙のミスに気付き、澄ました声で鈴仙に向かってこう呟いた。


岬「……君は知りたくないのかな。八意永琳の真意を」

581 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:28:01 ID:???
鈴仙「やご……何ですって」

岬は鈴仙の心の琴線に触れ得る言葉を既に知っていた。
それにも関わらず、鈴仙は彼の口を封じもしなければ、自分の耳を塞ぐこともしなかった。
そのごく当然な隙を突かれて、鈴仙は岬の前で足を止め振り返ってしまった。

岬「(僕がわざわざ出向いて来るんだ。全く無為で無謀な行動をする訳が無い。
失敗しない為にもその程度の調査、やっておくに決まってるじゃないか)」

ここで一旦足を止めたならば、こっちのものだ。
蜘蛛の巣に引っかかった蝶へと向かう蜘蛛のように、岬は内心でほくそえんだ。

岬「――やっぱり気になるみたいだね。君のお師匠様。
月の賢者にして地上へ堕ちた裏切り者。永遠亭を実質的に統べる至高の薬剤師にして医師。
八意XX……僕たちの言葉だと、八意永琳のことが」

鈴仙「――良く調べたわね。ウチにスパイでも投げ込んだのかしら?」

岬「さてね。……ところで、君はこの幻想郷に降り立って以来ずっと、
この八意永琳の元で従者として働いているんだったよね?
ああいや、答えなくてもいいよ。答えはイエスと知っているから」

岬は鈴仙に思考させる時間を与えないよう、やや早口で話している。
そうする事で、鈴仙に思考する猶予を与えず――岬はこう、結論を先に言い放った。

岬「――僕は君の為に忠告するよ、鈴仙・優曇華院・イナバ。
……八意永琳は、間違い無く君を利用している。自分自身の計画の成就。ただそれだけの為にね」

鈴仙「――利用、ですって……! そんな事、ある訳ないじゃない!!」

岬の結論は、その真贋を問わずして、鈴仙の耳に重くのしかかった。
永琳の真意については、鈴仙もまた預かり知らぬ事だったのだ。

582 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:31:02 ID:???
岬「――それはどうかな、鈴仙さん。
君はこれまで、色んな人から話を聞いて来たと思うけど――しかし。
その全ては必ずしも真実であるとは限らない。
必ずしも善意で君に全てを教えてくれるとは限らない。
真実とは、様々な語り手から示される情報を基に、自らが構築していくもの――そうは思わないかい?」

鈴仙は既に岬の言葉に釘付けになりつつあった。
それを知った岬は、雄弁に鈴仙に対してこんな提案を持ちかけた。

岬「だから……鈴仙さん。とりあえず、聞いてみたくはないかい?
僕達が調べたところによる、今回の異変における八意永琳の真意を。
それが正しいか間違っているか。その判断は全て君にお任せする。
更に、この内容をもって、僕たちは君に神子様率いる『ハイパーカンピオーネ』計画入りをしてくれ、
……などと頼む気もさらさらないし、恐らく聞いてもならないと思う。
純粋に、僕は君に真実を掴んでもらいたい。そんな意図で、提案をしているんだ」

鈴仙「――そ、そんなの。胡散臭すぎるに決まってるじゃない。目的は何なのよ……!」

鈴仙は辛うじて声をあげた。岬はその質問を想定していたかのように、理路整然と答える。

岬「僕が君に真実を伝える事で、何のメリットがあるか……って事だね。
それなら簡単、僕達は君に気付いて欲しいのさ――八意永琳が必ずしも、君の絶対的な味方では無いという可能性に。
何故なら君は今や、ある意味では中山政男よりも森崎有三よりも、重要な存在となりつつあるんだからね。
そんな凄い君を我々に引き入れるのは……流石に難しいにしても、ある程度の恩は売っておきたいんだ」

鈴仙「……私が重要な存在。それは、『プロジェクト・カウンターハクレイ』のキャプテン候補だからって事?」

岬「……フフ。気になるよね。僕の話を聞くと約束してくれれば、その辺りもサービスとして、詳しく教えてあげようじゃないか。
もっとも、ここは引いて、君の親愛なるお師匠様に問いただす事もアリかもしれない。
流石の八意永琳も、こうして僕達がゆすって来たと知れば、君に幾らか話をしてくれるかもだしね。
――でも、そうなると――どうする、鈴仙さん。君は誰の話を信じる? 怪しいペテン師の僕? それとも、優しいお師匠様?」

583 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:34:18 ID:???
岬はここまで言って、鈴仙の判断を待つ為に沈黙を保った。
永琳の真意は先日、鈴仙が『プロジェクト・カウンターハクレイ』計画を知った際にも明確に教えてくれなかった事。
知りたく無い筈が無い情報であるが――果たして、この岬の発言を信じる価値はあるのだろうか。

鈴仙「(私は必ずしも、ここで岬の発言を聞き入れる価値は無い。
師匠や姫様に問いただしたって、同じように真意を教えてくれる可能性は高い。
そしてそっちの方が、恐らくこの詐欺師の言葉よりも信用出来る筈。だけど――)」

『真実とは、様々な語り手から示される情報を基に、自らが構築していくもの――そうは思わないかい?』
鈴仙には岬のこの台詞が引っかかっていた。彼の指摘にも正しい面はあると思っていた。
確かに、鈴仙は『プロジェクト・カウンターハクレイ』の件について、当事者である永琳と輝夜の話しか聞いていないのだ。
このまま岬から逃げ出して、永琳と輝夜の話のみを信じるのは、真実から逃げ出す行為では無いのか。

鈴仙「(――だけど。それも含めて岬の罠なのかもしれない。私の疑念を加速させて、混乱させるための……)」

鈴仙は冷や汗を拭きながら周囲を見渡す。スタジアムの観客席は既にまばらだが人間も多く残っている。
幻想郷での決まりとして、妖怪は人里で人間を襲ってはいけないというものがある。
そのため、ここで実力差を利用して岬を脅迫する事はもっての外。
(モリヤスタジアムは厳密には人里では無いが、人間の割合が多く、人里のルールを準用する例が多い)
鈴仙はこの場で岬の話を聞くか、それとも逃げ去って永琳の話を聞くかの実質的な二択を強いられていた。

鈴仙「(……たぶん、どう考えてもどっちが正解という事は無い。これは単純に私の在り方の問題。
危険な道を歩んででも、自分の力で真実を掴み取ろうとするか、それとも、
勇気を持って師を信じ、その想いに応えようとするか。
どっちが間違っている訳でも無い。ここは純粋に、私の気持ちで答えるしかないわね……)」

584 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:43:48 ID:XR1qZKnk
鈴仙は目を閉じて、意を決して岬に対してこう答える事にした。

A:「……分かったわ。信じないけれど、話を聞いてやろうじゃない」岬の説明を聞く。
B:「あんたに話を聞く事は師への裏切り。これ以上の話は要らないわ」岬の説明を聞かない。
C:「あんたが本当に『信頼できる』って言うなら、話を聞くけれど?」武力をちらつかせつつ、真実である事を証明させる。
D:「……!」黙って財布を岬の鼻っ柱にぶち当ててから逃げる。

先に2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

*対応が難しいため、申し訳ございませんが今回自由選択はナシでお願いします。
 どうしても何か意図があれば、A〜Dの選択とともにコメント書いて頂ければ、多少は反映できるよう努力します。
*選択肢の中に1つだけ明確なハズレがあります。その根拠は>>580-583に記載されています。

585 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:44:47 ID:fYx4H/mY


586 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:45:29 ID:YwXBkfFY


587 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:45:38 ID:ag6OMCm+


588 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:45:56 ID:Cs7N+1L2


589 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:46:01 ID:F3YkoudQ


590 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:46:21 ID:XvtUKUNQ
D
こんなクズと会話する価値なし
手形を押し付けりゃいい

591 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:48:56 ID:???
うーむ、確実に脅しになりそうなひとことはあったんだが言えなかったか
試合後か試合前にでも言ってみるかな

592 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:53:23 ID:???
詐欺師相手に脅しってのは愚策なんですけどね。

593 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/17(日) 23:54:27 ID:???
Aに決まった! ――と、言ったところで今日の更新はここまでです。
今日は久しぶりに選択が出ましたが、明日もまた文章が長くなるかもです(汗)

一応解説しますと、明確なハズレはCでした。(>>583そのため、ここで実力差を利用して岬を脅迫する事はもっての外。が根拠)
Dは「実力差を利用して脅迫」ではないし、「妖怪が人間を襲う」とも何となく違うので、一応ハズレでは無かったです。
この場合は、基本はBで進行+JOKERで岬が多重債務者になる、
クラブAで鈴仙の負債を利用されて小トラブル発生、という感じを考えていました。


>>576
そもそも話に応じないのが正解っぽいですが、
今回鈴仙が興味を持ちそうなテーマを出す事で、否応なしに話に応じさせてみました。
>>578-579
参考に(?)、Dの選択肢を追加してみました。
>>591
本スレのような岬ならともかく、ここまで堕ちると多少の脅しも利かなさそうな気もしますね。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

594 :森崎名無しさん:2015/05/17(日) 23:57:18 ID:???
>JOKERで岬が多重債務者になる
乙!これ見たかったw

595 :森崎名無しさん:2015/05/18(月) 01:07:22 ID:???
>>592 いや、大丈夫、詐欺師なら引っかかる、というか影響が起きるはずだから

小壱岐一点特化のチームって面倒なんだよなぁ
下手すると博麗より厄介じゃないかって思う(相手の手札的な意味で)

596 :森崎名無しさん:2015/05/18(月) 01:07:32 ID:???
乙なのです
まあ相手がどうあれ、一応会話してきてる以上は言葉で対応しないとね
Dのジョーカー展開も見たかったけど(笑)

しかし岬君もある意味被害者なんだよね、完全に白ではないにしろ
あややもそうだけどここからハッピーエンドはあるのだろうか
藍しゃまは鈴仙さんのサッカーに期待しているみたいだけど、
今のところ鈴仙さんが力になれたのって星とマスターくらい?
鈴仙個人としては、あくまでカウンターハクレイの手駒の一人に過ぎないという状況に見えるけど
藍しゃまといい、岬君、お嬢様とここまで注目する理由はなんだろう
これからの展開で徐々に分かっていくのだろうけど、楽しみにしています。

完全に個人的なものだけど、後二試合でも鈴仙さんが大活躍して、得点王取れたら、
鈴仙さんを幻想郷選抜から外す理由として紫様がどう持ってくるか楽しみ(悪趣味)

597 :森崎名無しさん:2015/05/18(月) 01:36:58 ID:???
乙でしたー
そういえば新作届いたからやってみたけど、やっぱり妹紅可愛すぎるわ
後ゆかりんは冬眠してるの嘘じゃないかもしれん。神霊廟から思ったけど結界の緩みガバガバにしすぎてんよー

598 :森崎名無しさん:2015/05/18(月) 11:37:06 ID:???
E 案外大したことない世界の理でミサキーヌの化けの皮を剥がす

岬犬「やめろぉ!」

599 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/19(火) 01:02:57 ID:???
すみません、今日は仕事が遅くなったのと、深秘録をやっていたら更新できませんでした(爆)
今作はラスボスは勿論ですが、セミファイナルの曲がすごくカッコいいです。
明日は更新しようと思います。

>>594
乙ありがとうございます。出てたら一気にギャグ展開になってましたねw
>>595
聖徳チームは一点特化を踏まえても、能力的には博麗チームに劣りますね。
その上で、嫌らしい印象を残せられればと思います。
>>596
乙ありがとうございます。
鈴仙が注目される理由については、今回の岬の話で明らかになるかもです。
楽しみにして下されば幸いです。
>>597
乙ありがとうございます。私もやってましたが妹紅はまだ出てませんねー。
格ゲー苦手なのでeasyでもヒイヒイ言いながらギリギリでクリアしてます。
>>598
今後、案外簡単にそうなりそうな気もしますw

それでは、皆様、また明日もよろしくお願いいたします。

600 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/20(水) 00:57:26 ID:???
すみません、今日は文章を書いていたのですが、キリの良いとこまで行けなかったので更新をお休みします。
明日には更新できると思いますが、これまで不明だった点を少し明らかにするという事で、
少し書くのに時間を掛けさせて頂ければと思います。

それでは、皆様、またできれば明日、よろしくお願いいたします。

601 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/21(木) 00:50:25 ID:???
今日も更新をお休みします。明日か明後日位には一気に文章を投下できると思います。

602 :森崎名無しさん:2015/05/21(木) 21:38:20 ID:???
この世界でセグウェイドリブルの使い手ってウサギCですか?
ここの来生は熱かったからギャグ技を与えるなら来生よりウサギCと予想

603 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/22(金) 00:43:19 ID:???
こんばんは、何とか途中まで書き上がりましたので更新します。
ただ、推敲してみましたが、どうしてもちょっと分かりづらい感じになってしまいました……。
この辺りについては、説明シーンが終わった後に三行程度で纏めていきたいと思います。
>>602
妖精の力に目覚めた来生がボールに乗ってドリブル……みたいな展開も熱いかなって思ってましたw
実際問題、このスレの来生がセグウェイドリブルまで覚えたらディアス位強くなってしまうのが問題かもです。
Cちゃんは扱いづらい分ポテンシャルは高いと思いますので、セグウェイ位はできそうですね。

604 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/22(金) 00:45:02 ID:???
A:「……分かったわ。信じないけれど、話を聞いてやろうじゃない」岬の説明を聞く。

鈴仙「……分かったわ。話を聞いてやろうじゃないの。別に信じないけどね」

岬「素直じゃないね。……でも、少し意外かな」

岬は澄ました顔のまま薄く笑って頷く。
意外と言いながら、その答えを始めから予期していたようだった。
そんなスカした態度に、鈴仙はむっとした表情をしてみせるが、無視して岬は話し始めた。

岬「さて。今回種を明かすべき事は二つだね。
まず一つ、八意永琳の真意。彼女は何を想って小次郎……ヒューガーに手を貸しており、何を狙っているのか。
そしてもう一つ、鈴仙さん。君が何故、この一連の大異変において中心的な存在となっているのか。
この二つの謎は繋がりの深い問題なのだけれど――そうだね。取りあえず、前者から語っていこうか」

鈴仙「お師匠様の真意……ね。確かに私はそれを知らないかもしんないけど。
どうしてアンタ達がそれを推測できるのかは、大いに気になるわね」

せめてもの抵抗として、鈴仙は岬の弁舌に横槍を入れていく。
確かに岬の語る真実は気になるが、しかしそれでも彼の事がどうしても気に入らない。

岬「――まあ。話を聞くと言った時点で、ある程度は信用してくれたと考えてはいるんだけどね」

岬は鈴仙の頑なな態度にも応えず、むしろそれを最低限の信用の証として満足気に頷く。
そこから一呼吸を置いて、彼はゆっくりと話していく。

岬「――さて。八意永琳の目的が何であるかを指し示す前に……。僕は今から少し、簡単なたとえ話を君にしなくてはならない」

鈴仙「いきなり回りくどいのね」

岬「仕方ないさ。だって僕は今から、今から君が聞いたこともないような、
信じられないような途方もない話をしなくちゃいけないんだから」

605 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/22(金) 00:46:16 ID:???
岬は素直な気持ちで自嘲的な笑みを浮かべつつ、まずは鈴仙にこう問いかけた。

岬「シュレーディンガーの猫の話については、勿論知っているよね」

鈴仙「まあ、その位は。一匹の猫を、50%の確率で致死性の毒ガスが出る装置のついた箱に入れる。
そうなると、私達の誰かがその箱の中を観測するまでは、箱の中の猫は50%生きていて、50%死んでいるような。
そんな重なりあった状態で世界に存在しているとか。そんな感じの話ですよね」

岬「そうそう」

岬はのどかに頷いて、観客席にゆっくりと座りなおした。
岬は鈴仙を見てから、自分の隣の座席を指し示したが、鈴仙はそれを無視して立ち続ける。

岬「……まあ、中学二年生なら誰でも知ってる、量子力学の観測問題の分かり易い問題提起だ。
だけど、今回の話はどっちかと言えば多世界解釈の次元かな」

鈴仙「コペンハーゲン的な話? 世界は一つで無い。波のようにゆらぎながら、観測される数だけ無数に存在する……みたいな。
――それが、師匠の真意とどう関係があるのかしら?」

岬「それについては、……話を箱の中にある猫に戻させて貰おうか。
さっきの話は50%で死ぬ装置を箱に取り付けたという話だったよね。その延長で考えて欲しいんだ。
――もしも、70%で死ぬ装置が、箱に取り付けてあったら?
――もしも、99%で死ぬ装置が、箱に取りつけてあったら?
――もしも、99.999999999999999999999999999999999999999999……%で死ぬ装置だったら?
その場合でも、箱の中の猫は、50:50で存在していると思うかい?」

鈴仙「……まあ、敢えてシュレーディンガーの猫風に言ったら。その箱の中の猫は、
99.999999999999999999999999999999999999999999……%死んでるんじゃないかしら。
殆ど虫の息と言っても良い気がするわね」

岬「そうだよね。だけど事実には虫の息の猫は100%存在しえない。死んだ猫か、元気な猫がいるだけだ。
――さて、ここで問題。もしもこの箱の蓋を開けた時、猫が奇跡的にも生き残っていたら……どうなる?」

606 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/22(金) 00:52:02 ID:???

鈴仙「――どうなる? って言われても。わあ、すごいなぁ……、わあ、珍しいなぁ……って驚いて。
それで終わりなんじゃない?」

鈴仙は岬から一つ空けた隣の席に座った。岬は美味しそうに グレープフルーツジュース を飲んでいたが――。

岬「それだよ」

鈴仙の答えを聞いて、真剣な顔をして頷いた。

岬「雷が当たった、宝くじに当たった、宇宙人に連れ去られた、人間じゃないのに整数シリーズの自機になれた……。
――そんな奇跡が起きた場合、その世界は元の平凡な世界と大きく外れる。
そして、ある世界が別の世界と大きく外れるという事は、世界と世界との間には膨大な位置エネルギーが存在するという事になる。
世界は波のように揺らいでいるとしたら、大きく外れた世界の存在は、無数の可能性の海に生まれた津波だね」

鈴仙「津波……ねぇ。例えば、全裸の妖精が幻想郷を闊歩したり、お燐が突然スミロドン・ドーパントになったり、
私が9と4分の3番線に乗って魔法使いになったりするみたいな。そんな感じの世界があったら、確かにそりゃ衝撃だわ」

鈴仙が不意に思いついた例えを聞いて岬はくつくつと笑う。
しかしあながち的外れな発言では無かったらしく、岬はしきりに頷きながら、説明の核心に触れていく。

岬「そう……そう。要するに、それこそが八意永琳の目的。
箱の中の猫が実は生きていたとか、そんなレベルじゃない大変化が発生するよう誘導して、
それに伴い生じる力の揺らぎを観測し、利用すること。
とても信じられない仮説なんだけど、僕達は彼女の行動の意味をこう解釈しているよ」

607 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/22(金) 00:53:38 ID:???

鈴仙「――とても信じられないわね。仮説を唱えるんだったら、理に適った根拠が欲しい所だけど」

岬「それはごもっとも。だけど、こう考える事でいくつか納得の行く説明が出来る謎があるんだ。
それを以て、この説の正当性を証明させて貰おうかな。そうだね、例えば……」

鈴仙「た、例えば……?」

岬は敢えてここで時間を置いた。様々な手段で会話の主導権を握って離さないよう気を払っているようだった。
そしてこうした駆け引きに不慣れな鈴仙は、岬のこうした一挙手一投足に大きくじらされる。
しかし、そんな中岬が口を開いた内容は、鈴仙にとって少し意外なものだった。

岬「例えば。そうだね……八雲紫が著しく衰弱している理由とか」

鈴仙「八雲紫……? どうしてここで、スキマ妖怪の話が出て来るの?」

鈴仙は藍から教えられた会話の全容を思い出す。
境界を操る八雲紫は今、ヒューガーの高度な技術によって境界を否定され、
その理性をも喪わんばかりに存在が脆弱になっている……。
藍の説明が正しいとすれば、先程の仮説とは何の関係も無い気がするが。

岬「……本当にヒューガーが、この世に存在する全ての境界を否定したと思うのかい?
確かにあの会社のテクノロジーは凄いけれど。でも、千年以上を生きる大妖怪をも殺せる程じゃあないさ。
ヒューガーの派手な動きの影で、境界殺しをやってみせた存在は別に居る。
八意永琳は、様々な可能性を散りばめて、世界と世界との境界を曖昧にしてみせたんだ」

鈴仙「……それって」

岬の説明は曖昧ながらも、これまで様々な出来事を体験して来た鈴仙には直観的に理解出来るような気がした。

608 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/22(金) 00:54:54 ID:???
岬「始めは偶然だったと思う。強烈な個性を持つ平行世界を創る際には、何等かのテコ入れが必要な事は確かだからね。
例えば、日向小次郎を焚き付けたり、中山政男を呼び込んだり、その他様々な外来人を試験的に呼び寄せてみたり。
――いずれにしても、八意永琳は、強烈な個性を持った少年達を幻想郷に放り込んだんだけど……。
その副作用で、世界は大きく揺らぎやすくなった。彼らは内から世界の境界を壊し始めた。
彼らのせいで、幻想郷が描く未来は前以上に大きく揺らいでしまったんだ」

鈴仙「……もしかして。それこそが、中山さんやその影響を受けた私が、八雲紫に警戒された本当の理由なの?」

岬「そうだね。もっとも、彼女自体も『幻想郷のイデオロギーが中山寄りに変革してしまう』という表面上の変化を恐れるのみで、
彼らが本質的に自身の存在を揺るがしているからだ、という事実には気付いていないと思う。
だってまさか、何の妖力も持たない少年が、自身の存在意義を揺るがすだなんて、あまりに信じがたいのだから。
……そんな中、正確に狙いを定めていた時点で、彼女は充分に凄いけどね」

鈴仙は岬の言葉を反芻する。
八意永琳は、途方も無くあり得ない世界を作り出す事で、その世界が持つ膨大なエネルギーを得ようとした。
その過程で、中山や日向のような外界のサッカー少年が幻想郷へと呼ばれた。
しかし、彼ら外界のサッカー少年の存在そのものが、世界と世界との境界を危うい物にしている。
その事実が、境界の妖怪である八雲紫を苦しめて弱らせている。
確かにこの仮説は突拍子も無い事を除けば、それなりに筋が通っているような気がするが――。

鈴仙「……でも、やっぱりおかしいって。
どうして普通のサッカー少年が、世界と世界との境界を危うい物に出来るのよ。
確かに中山さんは引くくらい努力家だし、日向のシュートは人間技とは思えない程恐ろしいけれど。
――でも、その位だったら他にももっと凄いヤツだって外の世界には居る気がするわ。……女子高生の超能力者とか」

609 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/22(金) 01:03:13 ID:???
もしも中山や日向程度の人間の幻想入りで、八雲紫が衰弱する程の異変が起きるのだったら。
それこそ、幻想郷は今頃成り立っていないのではないか。
幾ら幻想郷が危ういシステムの上で成り立っているとはいえ、あまりに脆弱過ぎる。
第一、これまでももっと危ない人間や妖怪だって幻想郷に入っている筈だが、今まで何も起きていない。
一体中山達は他の人妖と何が違うと言うのか。


岬「――そう。流石はあの八意永琳の弟子だ。思ったより頭も悪くないね」

鈴仙「……せっかくだから、頭が良いねって褒めてよ」

勿体ぶった話し方で再び微笑み直す岬。
これまでの彼との会話から、これは話の核心に迫った際に出る癖である事を鈴仙は発見していた。
半分以上本音の軽口を叩きながら、鈴仙は岬の話を促す。

岬「……そう。何故、善良なサッカー少年である中山政男が危険なのか。
何故、野心深い扇動政治家である豊聡耳神子は安全なのか。その理由こそが、まさにそこにある。
あるのだけれど……その辺りについては、今回の話の趣旨じゃない。どうせいずれ分かる事だろうし、今回は説明を省かせて貰うよ。
――兎に角、この話の趣旨。
『八意永琳が世界間のエネルギーを利用しようとしている』と仮定したら、
『永琳の計画により世界間の境界が曖昧になり、境界の妖怪である八雲紫が弱った』……という風に、現状の理由を説明しやすい。
よって、『八意永琳が世界間のエネルギーを利用しようとしている』という仮説はある程度正しいと思われる。
……と、いう事なんだけど。何となく分かってくれたかな?


鈴仙「……まあ、分かったわ。確かに謎は残るけれど……それでも、ある程度は論理的に納得できる話だった気がします」

610 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/22(金) 01:06:16 ID:???
――と、いったところで今日の更新はここまでです。
明日でこの説明パートは終わらせられれば……と、思っています。

今日の話を簡単に言うと、
岬「紫が衰弱したのもヒューガーが台頭したのも中山さんがヒーローなのも、全部永琳の謎計画のせいだ!」
……みたいな感じです。どこまで真実なのかは不明です。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

611 :森崎名無しさん:2015/05/22(金) 01:38:57 ID:???
乙でした
鈴仙が主人公になれたのも永琳って奴のせい…なのか?弟子を活躍させてあげたいだけなのに、
そんなヘソに小宇宙を作って恒星で沸かすようなスケールのデカい事をするとは…師匠は不器用だなあ

612 :森崎名無しさん:2015/05/22(金) 01:46:31 ID:???
乙なのです

ああ、なるほど……ようするに、今まで(紅魔郷〜)の外来の人やら神様や妖怪は
あくまで幻想郷のルール、スペルカードルールに乗っ取った異変を起こしてた
そして、神奈子達のときの異変も、現在進行形の神子達の人間煽動も、幻想郷内ではそれなりにやっかいな問題だけど、
逆に言えば幻想郷内での問題でしかない

それに引き換え、中山さん達外来のサッカー選手を招いて、幻想郷に外界のサッカーの空気を取り込み、
広めていく。
そして感化された幻想郷の人妖が外界のサッカー大会に出場し、外のサッカーを体験し、交流する。
外界で一番ポピュラーなスポーツと言っても過言ではないサッカーにだ。

これは境界の妖怪である紫に堪えないはずがない。
とか言って普通に大外れな気がしてならないですが(汗)

岬の論理は取り合えず筋は通っている……かな?
師匠が何故膨大なエネルギーを欲しているとか
姫様がなによりも大切な師匠が、現在の姫様の生活を壊しかねないことなんでするのかとか
そもそも紫様をなんで弱らせようとしているのかとか

まあ岬君の仮定の論理だから、そう考えれば説明がつく(正しいとは言っていない)
ということでしょうか。

鈴仙「というより、師匠……私が主役になることは、99.9999……9%以上有り得ないと言うことだと思っているんですか?」
岬(妥当じゃないかな。それよりも佳歩、鈴仙よりも点を取るということに長けた元名無しウサギ。
彼女のほうが対象としてより適任のような気がする)

とかだったら泣ける。
師匠はなんだかんだで鈴仙のことも考えているし、最終的にだれかが大きな害を被るようなことはしないはず。
もちろん姫様も……ううむ、やっぱり筋は通っているが結局真相は分からないなあ。


613 :森崎名無しさん:2015/05/22(金) 02:29:50 ID:???
乙です

つーかエネルギーを利用しようとしているっていわれても・・・
なぜ、どうして、どうやってが全く分からないから正直全く信用における話じゃないんだよな
百歩譲って信じられるにしても
岬の話じゃなくて聞いた話を少しいじってるだけだろうし
根本を考えるとなんで太子様がそれをどうやって知ったのかって話になる
下手すると紫すら完全に知ってないことなんだけど
幻想郷なんて人から見たら非常識なことが常識だからなにもかも信じられるし信じられんから
情報の真偽が非常に分かりにくい

まぁ師匠がまぁよほど師匠がとんでもない事考えてない限り従うけどね
(月が世界を管理する、自分があらゆるものを支配できる存在になる
 自在にJOKERなどをだして姫様を楽しめる世界に作り変える
 生きるのに飽きたから自分含めて全世界滅ぼす、LoV3やLoVAにでたいなど)

614 :森崎名無しさん:2015/05/22(金) 19:12:16 ID:???
永琳の計画により世界間の境界が曖昧になり、境界の妖怪である八雲紫が弱った
→現実と夢の世界間の境界も曖昧になり夢試合の登場人物が現実へ
→ブローリンやブルノ達でカグヤ応援団を結成

謎は全て解けた。永琳の計画は姫様のために姫様応援団をつくるのが目的だったんだ
カグーヤ「ダニィ!?いらないょ!」

615 :森崎名無しさん:2015/05/22(金) 19:27:14 ID:???
乙でした。この岬、まさかキバヤシ……!?
あれ、確かどこかの平行世界ではクラブAやJOKERしか出ない
異次元空間を作り上げちゃったチート神様がいたような……。
しかし、永琳や月姫姉妹がいたからって特別何かあるわけではないし、
違う存在が関与していた可能性がある。
やはりブルノ、あいつがキーパーソンか。

616 :森崎名無しさん:2015/05/22(金) 19:43:09 ID:???
MMR ミサキミステリー調査班

617 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/23(土) 02:17:19 ID:???
こんばんは、今日も更新します。漸く深秘録全ストーリー見ましたが、
ラストあたりの展開は、某スレの翼くんが思わず失禁しそうなくらい霊夢がカッコ良かったですね。
>>611
乙ありがとうございます。
鈴仙が主人公になったのも永琳のせいですね。今日はその辺りを書いていければと思います。
>>612
乙ありがとうございます。
神子が案外大した脅威じゃないのはだいたいそんな感じですね。
サッカーがというよりは、中山さん達の存在自体が境界を危うくしている的な感じです。
その辺りはまた後日になるかもですが、詳しく分かりやすく書ければと思っています。
佳歩じゃなくて鈴仙が主役なのにも、理由があります。
>>613
乙ありがとうございます。
何故については永琳に聞かないと分からないですが、どうして、どうやってについてはこれから説明しようと思います。
鈴仙が何故狙われるか、という理由に大きく関わってきますので。
神子がどうやってそれを知ったのかは、結構重要な視点です。
永琳がlov3に出て欲しいとは私は思っていますね(笑)
>>614
その発想は無かったですw
永琳は姫様の事を大事に思っているのは確かですね。
>>615
乙ありがとうございます。
ブルノさんの世界は逆に言うとクラブAかJOKERの2通りしかないので、案外安定しているのではないでしょうかw
>>616
たぶんオカルトボール集めとかしてます。

618 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/23(土) 02:18:23 ID:???
――八意永琳の目的。それは、中山等特定の外来人を呼び寄せる事で世界を揺るがせ、
それによる膨大なエネルギーを採取すること。
八雲紫の衰退・乱心は、永琳の行為に伴う、世界と世界との境界の大きな揺るぎが原因。

岬が鈴仙にここまで言って聞かせた話を要約すると、概ねこうなるだろうか。
確かに彼の話にはまだまだ謎が多すぎるが、単純な理屈で言えば筋が通っているように見える。

岬「……だけど。勿論これだけの説明じゃあ、納得はできないよね?
八意永琳は何故、膨大なエネルギーとやらを欲しがるのか。
そのエネルギーとは一体どんな形で、どうやって手元に集めるのか。
――残念ながら、僕達には彼女がどんな想いで今の行動をしているかは分からない。
だけど、どんな手段を用いて、目的を達成しようとしていたか。それなら解るよ。
そしてそれは、今日君に教えてあげる二つの事のうちのもう一つ。
何故君が、特別な存在として、様々な人妖から注目されているのか――この答えにもなる」

鈴仙「……どういう事よ。勿体ぶってないで、もう少し誰でも分かるように説明してよ」

岬「それもそうだね。――いやあ、説明は本当に難しいよ。
簡潔に話し過ぎたら聞く方に何の印象も残さないし、
だからと言って詩的で気の利いた修辞技法を散りばめると、今度は肝心の要点がピンボケになる。
結論はバランスの問題に落ち着くんだろうけどね」

鈴仙「……早速勿体ぶってるし。あんた、性格悪いでしょ」

岬「それは心外だな。僕だって、本当は誰にも嫌われたくないんだ。ただ必死なんだよ、本当に」

そう溜息を吐いた岬の笑顔に一瞬だけ暗い影がよぎる。
もしかしたら、彼も根は善良で、神子に良いように使われているだけなのかもしれない……。
鈴仙はつい、そんな同情的な想像をしてしまう。
――無論、仮にそうであったとしても、岬は現に妖夢を拐かし、パチュリーを傷つけている。
決して同情すべき相手では無い。鈴仙はそう思い直して毅然と岬を見つめ返すと、
やはり演技だったのか、既に元の平然とした表情に戻っていた。

619 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/23(土) 02:21:03 ID:???
岬「――さて。話を本題に戻そうか。今回の八意永琳の計画において、
なぜ、鈴仙・優曇華院・イナバというそこまで突出していない兎妖怪の存在が必要となるか。
なぜ、八雲紫を始めとする多くの幻想郷の実力者が、君の存在を重く見ているか。
その答えを端的に言ってしまうと――君が居なければ、八意永琳の壮大な計画は、アッサリ破綻してしまうからだ」

鈴仙「………えっ?」

再び謎の中に突き落とされた鈴仙。岬はそんな鈴仙の表情を明らかに楽しんでいる。

岬「――しつこいけれど、おさらいをするよ。僕達の立てた理論によると。
八意永琳の計画とは、中山政男や日向小次郎などの存在を介して、幻想郷という世界の在り方に大きな変化を与え。
……そして、その変化によって生じたエネルギーを採取し、何等かの目的の為に利活用する事だったよね?」

鈴仙「ええ。……そう言ってたわね」

岬「だとするとここで疑問が生ずる。八意永琳が、色々と手回しをしたり、弟子に手を焼いたり、
世界改変の為に『プロジェクト・カウンターハクレイ』の完遂に向けテコ入れを行ったり。
そうした行動を取るのは良いが、その結果世界の在り方に大きな変化を起こした後。
――さて。彼女は一体、どんな観測機を使って、副産物であるエネルギーを採取し、利用しようと思っていたのかな?」

鈴仙「……分からないわよ。私に聞かれても。そんな機械がどっかにあるんじゃないの?」

鈴仙は不機嫌に答える。確かに永琳は弟子である鈴仙に全てを教えてくれない事がある。
だから、本当は自分が知らないだけで永遠亭の地下に実験施設の一つや二つでも、何かあるのかもしれない。
しかし、岬が鈴仙に答えた内容は、そうした鈴仙の思考とは大きくかけ離れていた。

620 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/23(土) 02:29:01 ID:???
岬「…………君だよ」

鈴仙「……えっ?」

岬は気障っぽく人差し指を鈴仙に立てた。鈴仙は始め、それが何の意味を齎しているのか分からなかった。
そんな様子を察したのか、彼は鈴仙を軽く鼻で笑うと、説明を始めた。

岬「前に例で、世界とは様々な可能性が波のように重なって揺らぎながら存在している。そう言ったと思うけど。
アレはたとえ話じゃない。実際に、世界そのものが巨大な一つの波なんだ。
……少なくとも、八意永琳の持つ観測機は、世界をそう表現できる能力を持っていた。
その観測機の『瞳』には、映る全てのものの『波長』を観測し、編集できる能力があった」

岬は鈴仙の赤い瞳を見つめて離さない。鈴仙の『狂気の瞳』に吸い込まれているようだったが、
その実、鈴仙が逆に岬の圧力にやられてしまいそうだった。

岬「――無論、その観測機はまだ未熟で、世界と世界との差が生み出す大きな波長なんかは、
とてもじゃないが今すぐには観測できない。どうしても、その瞳の精度を上げる必要があった。
より強い衝撃に耐えられるよう、より強い精神を持つ必要があった。
より広く世界を見つめられるよう、より高い技術を持つ必要があった。
――そして、要領の良い彼女は、自身の計画を進めながら、観測機の成長を促す方法を思いついた。
それが……」

鈴仙「――それが。八意永琳の計画に必要な、エネルギーの観測機たる『私』を育てるための。
『プロジェクト・カウンターハクレイ』の正体だって言うの……?」

岬は黙って頷いた。それが鈴仙にとって最もきつい仕打ちである事を知った上で。
彼は追い打ちを掛けるように、鈴仙に向かってこう冷酷に言い放った。

岬「――鈴仙さん。君は八意永琳にとって大事な弟子でも何でも無い。単なる観測機にしか過ぎないんだ。
彼女は君の事を、自分の計画の役に立つ道具としてしか見ていない。
そして、そんな彼女にこれまでずっと理由も無く従っていた君は、間違い無く機械だ。
八意永琳の、八意永琳による、八意永琳の為の都合の良い機械。――それが、これまでの君だったんだ」

621 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/23(土) 02:37:40 ID:???
……と、いったところで今日の更新はここまでです。
明日はもうちょっとフォローしきれなかった点を補足しつつ、次の試合でのテーマを散りばめて、
出来れば大会14日目の自由行動に移れればと思っています。

今日の岬の主張を超簡単に纏めると、
『鈴仙が主人公になれたのも永琳って奴のせいなんだ。鈴仙は永琳の計画遂行の為に必要な道具なんだ』
……って感じです。永琳のそもそもの動機は依然不明です。

それでは、皆様、本日もお疲れ様でした。

622 :森崎名無しさん:2015/05/23(土) 02:51:20 ID:???
乙なのです。
初期鈴仙ならともかく、今の鈴仙ならある程度の動揺はあるにしても、大きな精神的ショックはないかなあ。
師匠が最終的にとんでもないこと企んでたり、鈴仙さんが観測機にはなれるけど、命の保証はないとかなら別だけど。

にとり「話は聞かせて貰った! 観測機なんてこのにとり様にかかれば朝飯前だよ! 河童なめんな!」
にとり(つまり主役はこの私だ! 主人公交代だよ鈴仙!)
鈴仙「いつから聞いてたのー!?」
岬「今までの話根底からひっくり返してきた!?」

623 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/23(土) 23:13:16 ID:???
こんばんは、更新していきます。今日はなんと判定があります(白目)

>>622
乙ありがとうございます。
永琳が必ずしも鈴仙の為に動いているとは限らない……というのは重要な点ではありますが、
これだけで鈴仙がどうにかなる訳ではありませんね。

にとり主役で思いついたのは、自分はそこまで強くないけど、日常で素材を集めて機械を作って、
試合では状況に応じて使う機械を変えて乗り切る、SFCのスラップスティック的な話ですね。
……あれ、案外面白そうかも?

624 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/23(土) 23:16:59 ID:???
鈴仙「……そんな、事」

あるわけがない。鈴仙はそう断言しようとしたが、……できなかった。
過去程では無いにせよ、依然少なからず永琳に依存している自分が居る事を、鈴仙は感じていた。

岬「その顔を見ると、多少の自覚はあったようだね。だって、普通じゃ考えられないよ。
何を考えているかを分からぬ相手を盲目的に信じるなんてさ。
君もお師匠様を信じつつも、どこか無意識にでも、不安を覚えていたんじゃないかな」

鈴仙「――そ、そんな事……ないもん……」

岬「たんじゅ……おっと失礼、素直だね、君は。顔に出ているよ」

鈴仙は岬を強く見つめ返す事すら出来なくなっていた。
そして、心理的に弱みを見せた相手に対して岬は容赦しなかった。

岬「――もしかしたら、君がここに来た事自体が、最初っから八意永琳の計画だったのかもしれない。
八意永琳には親しい月の有力者姉妹も居るようだし、そこそこ優秀で御しやすい玉兎を見繕う事もできただろう。
その後、玉兎の通信電波をジャックして、『人間が月に攻めて来る』とかいうガセ情報を送るのも、月の賢者ならば容易だろうし、
それで地上に逃げて来た時優しく保護してやれば、簡単に懐柔できる。
……噂話でも何でもホイホイ信じて突っ走ってしまう、そんな単純な少女が相手だったらなおさらだ」

鈴仙「…………!」

岬は鈴仙の物語をあざ笑う。
月からの逃亡、永遠亭での平穏だが鬱屈した生活、サッカーの流行、パスカルや中山との出会いによる成長。
これまでの鈴仙が体験して来た一連の物語の全てが、もしも永琳によって仕組まれたものだと断じる。
岬の説はこれまでの論理と比べて整合性に欠ける、より推測が強くなっていたが……。
しかし、今の鈴仙は反論できる余裕を失っていた。岬は鈴仙の心理的な不安を的確に突いていたからだ。
これまで自分は永琳から何も聞かされていない。自分はもしかしたら本当に、永琳の道具に過ぎないのかもしれない。
そんな思考は不毛だと思っていても、今の鈴仙は中々それを拭えないでいた。

625 :鈴仙奮闘記 ◆85KeWZMVkQ :2015/05/23(土) 23:18:38 ID:???

岬「人を信じる事は立派さ。しかしそれは、その人が嘘をついているかもしれない。
その人が自分を利用しようとしているのかもしれない。
……そう言ったリスクを負ってでも、尚も突き進もうとした場合にのみ立派と言えるんだ。
そうでも無いのに、ただ単に言われた事を信じて。
それで裏切られた時になって初めて文句を垂れて絶望するのは、子どものする事だ」

これまでの自分を否定されたような気分になった鈴仙を諭すように、岬は語気を和らげた。
そこには神子の手下ではない、岬太郎自身の考えが見え隠れているような気がした。

岬「さて。とにかく僕が君に伝えなければならない事は全て言い終わったんだけれど。
――君にひとつ、宿題をあげよう」

暫くの沈黙が流れた後に、岬は不意にこんな事を呟いた。

鈴仙「……宿題? 悪いけれど師匠や先生はもう間に合っているんだけど」

岬「――なに。至極簡単な宿題だよ。やろうと思えば、幼児でも容易く出来る事さ」

鈴仙「だったら別にやる必要なんてないじゃないの。姫様じゃないけど、ムダなタスクは捨てる化したら?」

永琳に対する不信を押し留めるのに必死な鈴仙だったが、
それでも皮肉を振り絞って、少しでも岬に抗い続けようとした。
次に何を言われても、精神的な動揺を見せてはいけない。
永琳の見えない真意に苦しみながら、鈴仙は岬の発言を待つ。一秒が比喩でも何でもなく長く感じる。
しかしそんな鈴仙の辛抱とは裏腹に――。

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