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【新隊長】異邦人モリサキ3【始動】
[25]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/10/30(火) 18:54:03 ID:???
「く……!」
衝撃が殺しきれない。
剣の腹が額を直撃する寸前、森崎が空いた手を剣に添えてようやく棍の軌道を上方へと逸らした。
が、それで終わらぬのが棒術の厄介な点である。
棍を使う者にとってみれば、先端を上に流されるという力は即ち、梃子の要領で棍の尻を
正面へと向ける遠心力に他ならぬ。
するりと持ち手をずらしたサムが、その流れに沿って棍を跳ね上げた。
森崎の腹、更には顎を真下から砕かんとする一撃。
受けは間に合わぬと判断、森崎が思い切りよく真後ろに飛ぶ。
省27
[26]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/10/30(火) 18:55:08 ID:???
「戦災に巻き込まれた哀れな難民でござい、なんてお題目で俺たちの街に巣を作りやがった。
まず掠め取られたのは物乞い共の縄張りとガキの遊び場よ。
雨風をしのいだ連中が次に掻っ攫ったのが、仕事さ」
棍の先は森崎の目から喉を辿り、八の字を描くように胴を嘗め回しながら揺れる。
「俺らじゃあ食うにも困るような安いカネで請負仕事を端から持って行きやがった。
野菜くずと腐れ肉で生きてるような奴らさ。台帳に乗らねえ連中には取り立てられる税もねえ」
省53
[27]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/10/30(火) 18:56:09 ID:???
森崎が慎重に問うのへ直接は答えようとせず、サムが薄笑いを浮かべた。
楽しげな色のどこにも見えぬ、凄惨な笑みだった。
「そりゃあ、俺らだってヤクは扱ってるさ。けどな、仕切るのはアルビア廻りの極上品よ。
そいつを軍の馴染みや金持ちの旦那方にちぃーっとずつ卸してただけでな。
くたばったお袋の麦粥にかけて、見境なく広めるような真似はしてこなかったんだぜ。
……だが、よ」
ふしる、とタイミングの測りづらい呼吸は、やはりのっぺりと冷たい長虫を思い起こさせる。
省52
[28]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/10/30(火) 18:57:11 ID:???
剣は下段、円盾を高く翳しての接近である。
正中線上の急所を庇いつつ間合いを潰す狙いは、サムにとて明らかなことは承知の上だった。
案の定、サムの迎撃は向かって左、盾側に回りつつ森崎の胴を真横に薙ぐ打ち払い。
円の縁を沿うように回ることで距離を確保しながら己が体を軸に遠心力で痛撃を齎さんとする、
淀みのない体捌きである。
厳しい鍛錬によって躰に染みついた、半ば無意識の洗練された動きだっただろうか。
が、その挙動は洗練されていたが故に、いささか淀みがなさすぎた。
省40
[29]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/10/30(火) 18:58:12 ID:???
「おおぉ……ッ!」
漏れる声は、胸郭に響く激痛を、食い縛った奥歯の隙間から吐き出したものである。
振り抜いた腕を、引き戻す。
戻して振り上げ、円盾の鉄で補強された縁取りを、ひしゃげ血を噴くサムの顔面に向けて、叩き落とした。
「―――」
蛇が、沈む。
からりと、棍がその手から離れて転がるのに遅れること、僅か。
膝から崩れ、うつ伏せに倒れたその姿を見やって、審判役の男が片手を上げる。
宣言は、高らかに。
省8
[30]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/10/30(火) 18:59:12 ID:???
******
※称号が『気のいい剣術大会王者』になりました。
スキル『剣術大会優勝』を獲得しました。
種別:特殊
消費ガッツ:-
効果:剣術値を20、評価値を15プラスする。
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※称号が『気のいい傭兵団のエース』になりました。
スキル『赤騎士候補』を獲得しました。
種別:パッシブ
消費ガッツ:-
効果:全人物に対する発言力、全ヒロインの好感度が一段階アップする。
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[31]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/10/30(火) 19:00:13 ID:???
夜の催事場に、篝火は赤々と燃えている。
揺らめく炎に照らされる少女は二人。
一人は瞳に憧れの色を浮かべ、もう一人は視線を合わせようとせずに虚空を睨んでいる。
顔の僅かに赤いのは、指摘すればきっと篝火のせいだと言うのだろう。
楽しげな曲が流れ、笑顔の人々が輪になって踊るその広場の片隅で森崎の眼前に立つのは、
ロリィ・コールウェルとレズリー・ロピカーナである。
「踊っていただけますか?」
「うん!」
「アタシはいい」
省36
[32]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/10/30(火) 19:01:13 ID:???
「じゃあ、ロリィがお手本見せてあげるね。ほら、全然平気でしょ、ってしてあげる!」
「ちょ、ちょっと……」
「それじゃ、お兄ちゃん。お相手お願いしま〜す!」
「おう」
頷いてロリィの手をとった森崎が、そっとその華奢な肩を守るように空いた手を回し、
篝火を囲む輪の中へと入っていく。
「えへへ、ロリィ、踊りは得意なんだよ」
「お、実は俺、こっちの踊りはあんまりよく知らねえんだ。よろしく頼むぜ」
「あ……」
省3
[33]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/10/30(火) 19:02:14 ID:???
「はい、次はお姉ちゃんの番!」
「う……」
満面の笑みで、捧げ持った森崎の手をレズリーへと差し出すロリィ。
困惑と躊躇を絵に描いたように眉尻を下げたレズリーが、差し出された手を見やり、
森崎の方へちらりとだけ目をやって、またロリィへと視線を戻す。
「うぅ……」
「……」
されるがままの森崎は、しかし真っ直ぐにレズリーを見つめている。
言葉は、かけない。
時には沈黙が何よりも強い圧力になると承知していた。
省25
[34]異邦人 ◆ALIENo70zA
:2012/10/30(火) 19:03:16 ID:???
「では、改めて」
「……」
差し出したのは無骨な手。
おずおずと伸びるのは、白くたおやかな指。
「踊っていただけますか、お嬢さん?」
「……あとで、やっぱりやめときゃよかった、なんて泣き言いうなよ」
言葉と共に、手と手が、触れた。
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0ch BBS 2007-01-24