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【バグサッカー】きれぼしサッカー【やりまーす】


[162]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 15:01:01 ID:???
陽子「森崎くんだって…いくら諦めないと固く思っていても、一度奪われたゴールを無かった事には出来ないでしょ?
   一度負けた試合はもう勝てないでしょ?ワールドユース本大会の抽選だって勝手に決められるだけじゃない。
   森崎くんにいくら精神力があっても、どうしようも無い事だってあるじゃない」

陽子の瞳は僅かに潤んでおり、頬もアルコールのせいか朱に染まりだしている。
越えようとしても越えられぬ思念の泥沼へと入り込んで、思考は堂々巡りを繰り返していく。
省38

[163]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 15:05:49 ID:???


――――――俺、パルメイラスと契約延長したら指輪を買うんだ…――――――

ドキン。

森崎の返事を聞いて、急に胸が高鳴る。
陽子「(……えっ?)」

思いもよらぬ突然の告白に、一瞬思考が停止する。これまでの陽子の人生の中で初めての感情の直撃を受け、
頭の中は麻痺したような、蕩けたような、陶然とした状態になっていた。

陽子「(え……ゆ、指輪?森崎くん、私のこと、好きなの!?……あっ、いやっ…ど、どうしよう……)」
省39

[164]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 15:08:10 ID:???
陽子「だけど…それはサッカー選手として理想でも、男性としては理想とは言えないわ。
   そういう生き方が出来るのはごく僅かな一握りの人だけよ。
   森崎くんは常にそう言う世界で生きてきたから、そう言う覚悟を決めた人ばかり周りにいたんでしょうけど…
   私も含めて、大抵の人はそこまで強くないわ。何時か頑張る事に疲れちゃうのよ」


できない。私はもう頑張る事もできない。
森崎くんは違う。強い意志を抱いて1人でどこまでも行ける。 省26

[165]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 15:12:00 ID:???
陽子は震えはじめた。体ではない。身体に沈んでいるなにかが、震えている。
震えは段々とひどくなる。それにつれて余裕がなくなり、
とうとう森崎から顔を背けてポツリポツリと呟くだけになってしまった。

陽子「どうして…どうしてそこまで言ってくれるの?そこまで私が好きだって言うの…?」
森崎「ああ。そうじゃなきゃこんな事言わねえよ」

陽子「分からない…今までサッカー一筋だった森崎くんが、私をそこまで好きになる理由なんて、思い当たらないわ」
省49

[166]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 15:16:34 ID:???
陽子の反応は…失笑だった。相変わらず顔は背けていたが。
泣きそうになったかと思えば突如笑い出したりする乙女心の気紛れさに
森崎は怒りも忘れて呆気に取られてしまう。

陽子「あ〜あ、昨日は散々森崎くんを意気地無しだって思っていたのに。これじゃ意気地無しは私じゃない」
森崎「だから、昨日は…その。昨日のままにしておきたくなかったから来たって言っただろうが!」
陽子「うん…だから、今日は私に逃げさせて」
森崎「へ?………あ」

ガタン。
省12

[167]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 15:18:40 ID:???
陽子「でも…有難う。嬉しかった。明日の試合も勝ってね」

その言葉を最後に、陽子は立ち去る。エレベーターのボタンを押して中に入った。
森崎の姿が見えなくなった途端、堰を切ったように両眼から涙が溢れ出た。

陽子「(いいんだ!私も頑張っていけるんだ、森崎くんと一緒に!)」

ゆっくりと瞼を閉じながら、穏やかに微笑みだす陽子。
他人が見れば、まるで泣く事を楽しんでいるかのようにさえ見える表情である。
実際、ある意味ではそうと言えるかもしれない。 省19

[168]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 15:58:24 ID:???


これまでの記憶が頭を飛来するなか、陽子の心がかつてのようによどんでくる。
兄さんは私に夢へ向かうきっかけを与えてくれた。
賀茂さんは私を父から取り戻してくれた。
サッカー協会の人達からも数数え切れない程に教えてもらった。
そして、森崎くんからは再び困難に立ち向かおうとする意志と、もう1つの夢をもらった。
………私はみんなに何ができたんだ?

陽子が少しずつ潰れていく。果ての無い自壊的な慙愧が激しく駆けめぐる。
省11

[169]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 15:59:57 ID:???
陽子「もう、何もかもおしまいよっ!」

突然、陽子の目がカッと開かれ、叫ぶ。

陽子「私のせいで日本のサッカーが消えちゃうんだ!
   わがまま言って逃げ込んでこなければ、私がもっと早く家に戻ってればよかったのよ!」

賀茂「お、おい陽子……」

陽子「私なんか最初からいなければよかった!私のせいで!私のせいで!私のせいでっ!!
   うわあああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」
省15

[170]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/07(日) 16:02:17 ID:???
本日の投稿は以上です。

[171]きれぼしサッカー ◆5qvYBJdbJQ :2013/04/11(木) 22:39:58 ID:???
きらめき高校地下1階特別研究所。備え付けテレビの映像を流しながら、
紐緒結奈は椅子に腰かけて2日前に発明したばかりの、
リモコンほどの大きさの最新型バグ検知器とバグ生成機の最終点検を終えようとしていた。
部品の確認を行いながら、現在までの1年間の犯人探索の総括をする。
  
紐緒「(あれから1年たった、私の設計した「バグマシーン」試作機とその理論をまとめた論文を扱える組織は、そう多くない。 省43


0ch BBS 2007-01-24