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1- レス

異邦人モリサキ


[500]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:47:31 ID:???

「皆様、たいっっへん長らくお待たせいたしましたぁーッ!!」

新緑の薫りも爽やかな青空の下、甲高くもよく通る声が響く。
と、同時。五月祭の催し物が開かれる広場の中でも一際大きく設営された特別会場の舞台に、
目が痛くなるような黄色のモーニングを着込んだ男が飛び出してきた。
声は、男が発したものである。

『あ、あの人!』
「司会だったのかよ、あのオッサン……」

呟く森崎が座るのは、舞台上で喋る男が用意したという席である。 省40

[501]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:48:32 ID:???
うおおおお。
さながら地鳴りを抑える巫女のように袖から現れた二人の女性を見て、しかし森崎は拍子抜けする。

「……大したことねえな、おい」
『うーん……フツー、だね』

思わず漏らした声は周囲の歓声にかき消される。
が、しかし何度見ても舞台上にいるのは実にありふれた容姿の、それも少しばかり歳のいった姉妹である。
身につけるドレスも豪奢というには程遠い、おそらくは先祖代々受け継がれてきたものであろう 省47

[502]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:49:53 ID:???
グオォォォォ―――
突如、地鳴りが山崩れへと変化した。
周囲の男たちが、最早堪え切れぬとばかりに立ち上がる。

「な、何だァ!?」
『この人たち、まだこんなに盛り上がれたんだね……』

目を白黒させる森崎。

「まず最初にお目見えは北欧からの刺客、白き森の守護者、リューリ・ハルティカイネン嬢!!
 ―――どうぞッ!」

しゃん、と。
その蒼白のドレスを纏った女性の、歩を進める音が、森崎の耳に聞こえた。 省43

[503]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:50:54 ID:???
きぃん、と。
氷室から取り出した氷が、外気に触れて罅割れるような音が、聞こえた気がした。
ほんの僅かの間を置いて。
罅の中から漏れ出したのは、歓喜の叫びである。

ウゥゥゥオオオオォォォォォォォ―――

ほとんど涙を流さんばかり、もしも尻尾があれば根本から千切れんばかりの勢いで
ぶんぶんと揺らしているに違いない表情で喜ぶ男たち。

「こ、こいつら……怖ぇ」
『……そういうキミも、どうして立ち上がって手なんて振ってんのさ』
「なにィ!?」
省25

[504]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:52:07 ID:???
「ん〜、チュッ♪」

舞台中央へと走り込むや客席へと投げキッスをしてみせた、その唇はぷるんと厚い。
日に焼けて褐色に近くなった肌に絡むブルネットの髪はどこまでも艶っぽく、そして何より
朱を基調としたベルラインのドレスに包まれた肢体はそれ自体が強烈に男性へのアピールとなる、
破壊力に溢れるものであった。
豊満なバストから視線を下ろせば、引き締まった腰回りから肉感的な骨盤周辺へと張りのある肉が
みっしりとその存在感を主張している。 省55

[505]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:53:09 ID:???
「さあ、さあ、さあ、そしてお次はお待たせしました真打ち登場!!
 皆様御存知、あのご令嬢の出番だッッ! 野郎ども、その名を称える準備はいいか!?」

ごおおおおお。
咆哮をいなし、煽り、自在に操る様はさながらサーカスの獣使いである。

「それじゃあ行くぜッ! 花嫁コンテスト史上、連覇を果たしているのはこの人だけ!
 盤石の体制で狙うか偉業の三連覇! 絶対王者!! その名は―――」

男が、その手を客席に向ける。
声が、揃った。

省15

[506]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:54:10 ID:???
くるくるとした巻き毛に少し眼尻の垂れた、どちらかと言えば愛嬌のある顔立ち。
美人というには華が足りず、さりとて決して不細工でもない。
可愛らしくはあったがそれだけで、プリンセスラインを描く純白のドレスも
確かに花嫁衣裳としては相応しいものであるが、特段に高価そうなわけでも、
驚くような趣向を凝らしてあるわけでもないようだった。
手にしたブーケも、小さな花屋でも用意できそうな種類の大衆的な花を集めたもので、
その姿を何度も見直した森崎が、改めて唸る。
省16

[507]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:55:11 ID:???
「……ッ!?」
『な、何……? 何が起きてるの!?』

轟、と。
地を奔り、空を駆け、文字通りに轟いたそれは、原初の雄叫びであった。
平凡を絵に描いたような女は、そこにはいない。
そこに立つのは、女の生という死屍累々たるいくさ場に舞い降りた、女神である。
小さな花を寄せ集めただけのブーケはその女が持つとき、神話に謳われる宝剣もかくやと煌めいて
向い立つ者すべてをひれ伏させ、ありふれたデザインのウェディングドレスはその気迫に包まれる時、 省32

[508]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:56:12 ID:???

「……」
『……あ、あれ……? ねえ、ちょっと、キミ!』
「……? ここ……どこだ……」

ピコの声で、気がついた。
慌てて見回せば、そこは元通りの会場である。
ぐったりと、力を使い果たしたように椅子に沈む男たちが目に入る。
森崎自身もひどい脱力感に襲われていたが、全身に鞭を入れるようにして身を起こした。

「……あの人、は……!?」

視線を向ける先には、しかし既に誰もいない。 省33

[509]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:58:38 ID:???
「……も、もはや言うことなんざありゃしないッ! 絶対王者に死角なし!
 今年もそのみなぎる気迫には更なる磨きがかけられていました!
 皆様、スー・グラフトン嬢に今一度、盛大な拍手を!」

ぱち、ぱち、と。
会場のそこかしこから断続的な拍手が聞こえる。
男たちのほとんどすべてを吸い尽くした王者に贈られる、それは誇り高き凱旋の唄であった。

「……さあ、それではこのコンテストもいよいよ最後の出場者となりました!」
省35

[510]異邦人 ◆ALIENo70zA :2012/06/28(木) 00:59:47 ID:???
呼び込みの声に応じるように、袖から一歩を踏み出したのは、ソフィアである。
淡い黄色のドレスの、Aラインの裾がふわりと揺れた。
かつ、かつ、と。
不安定なヒールの音が、あまりにも露骨に緊張を物語っている。

「……っ、……」

途中、何度かバランスを崩しそうになりながら、どうにか舞台の中央へと歩み出るソフィア。
ペコリと、一礼。
強張った顔が、会場を見た。

「……っ!」

見て、固まる。
固まって、俯いた。

「……」 省24


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