キャプテン森崎 Vol. II 〜Super Morisaki!〜
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【花の都の】キャプテン岬2【色物達】

1 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2018/09/09(日) 12:46:00 ID:xc04KWKg
『はじめに』
この物語はフィクションです。
現実世界で実在する人物も登場いたします。また1983年から91年までの史実を踏まえてはいます。
ただ物語の展開上脚色や私的設定付与も多々あり、純然たる歴史的事実からは離れてしまっております。

またキャプテン翼のキャラクターのみならず、非サッカー漫画以外のキャラクターも多く
登場しておりますが、実在人物同様、物語に沿う形での脚色や設定付与が多く、どうかご寛恕を願います。

最後に、この物語の主人公は岬太郎です。
ここの岬君は原作を参考にしたり、本編をチェックしてみたり、自身の願望を当てはめてみたりと、
どれにもピタリとは当てはまらない、大変面妖な様相をとっております。
それでも彼の物語として、読み進め楽しめてもらえれば幸いです。

【前スレまでの簡単なあらすじ】
1983年8月、岬太郎はパリに来仏。
日本人学校の都合により10月1日まで投稿できなくなった岬は、
サッカー部員全員を相手に勝負をしたり、人知れぬ共産趣味的商店に訪れたり、
テレビゲームに目覚めたり、パリ特別市第一書記と会食したり、ぶん投げられてパリの空を舞ったり、
トラックに轢かれそうな男の子を助けたりとパリの夏休みを満喫中。現在は学校で
ナムコの誇るレースゲーム、ポールポジションの3本勝負をしようとしています。

401 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/11(月) 14:57:09 ID:WmYfsMY2
目の前には小さなフランスパンが数切れに、衣とセロリの葉に覆われたカツレツ、
玉ねぎニンジンベーコンに月桂樹の葉1枚がプカリと浮かんだビーフシチューが置かれている。

カツレツは噛むほどに口の中いっぱいに滋味あふれる肉汁がほとばしり、香草の豊かな香りが鼻の中を心地よく刺激する。
お肉の味は鶏とは違うようだ。おそらく仔羊の肉を使っているのだろう。
ビーフシチューの肉は煮込んで柔らかくなっていて脂もよくまわっている。
噛むたびに滋味あふれる肉汁がにじみ出てきて、とてもおいしい。

おいしい料理と女の子達に囲まれて食べる食事だが、今の事態を考えるととても楽しむ気にはなれなかった。
周囲の女の子達も何を話せばいいのか分からないようで、ただモーツァルトの四重奏が流れるままになっている。
曲はすでに最初の所から随分進んだようで、舞い踊った蝶が年老いて打ち沈んだような、憂いる空気が流れていた。

岬「(まいったなあ、こんな空気になったら協力させづらいや。もう一度話しかけた方が良いかな。
   それともここは黙って自分の考えをまとめるか、そうでなければ他の人に別の話題を振って、
   この場の雰囲気とこれからの状況を変えておくのが良いか。どうしよう)」

あれこれ考えた結果、僕はこうすることにした。

402 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/11(月) 14:58:50 ID:WmYfsMY2
A 岬「すいません、やはり今ここで話させてください」(光る勾玉、そしてお告げの事について語ろうとする)
B 岬「僕はこれからどんなお手伝いをすればよろしいですか?」(午後からの予定を尋ねる)
C 岬「早乙女の、お母さん?何か面白そうなものありますか?」(雑誌などのアイテムについて訊いてみる)
D 岬「如月さんorあずみちゃん達がここに聞いてた曲って何?」(千早とあずみが聞いていた曲について尋ねる)
E 岬「如月さん、あれから優君は元気です?」(当事者に最も近い千早になんとかそれとなく察しさせる)
F 岬「あずみちゃん、詳しい事はあとで話すけど……本来君には関係ない事なんだ」
   (一旦こちらから距離を置かせることで断るタイミングを失わせ、
    その後の関係の進展から引き受けるように持って行く)
G 岬「ああ、美味しいね、早乙女さん」
   (頑張った2人について触れるように話を持って行き、和解のきっかけを作る)
H  その他、自由回答(要2票)

1票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。
なお、Dを選択する際は、話しかける相手の名前も記載してください。

403 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/11(月) 15:05:00 ID:WmYfsMY2
用事があるため一旦失礼します。続きが今日のうちに書けるかどうかは今のところ分かりません。

※1:スービト(subito)=ただちに、すぐに。つまりスービト・ピアノは
  「すぐに音の強さをピアノほどにちいさくせよ」との意味。


あと、テクモ版キャプテン翼6を熱望する方が、こんなサイトを作っていました。
とても興味深いので皆様もぜひどうぞ。

「キャプテン翼6 夢のワールドカップ」
https://www65.atwiki.jp/captaintsubasa6/

404 :森崎名無しさん:2019/02/11(月) 15:34:02 ID:++8ZGTlE
G

405 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/11(月) 17:30:19 ID:WmYfsMY2
済みません、今日は投稿できそうにありません。
どうか今しばらくお待ちくださいませ。

406 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/17(日) 14:05:37 ID:7G/ANOe6
G 岬「ああ、美味しいね、早乙女さん」
   (頑張った2人について触れるように話を持って行き、和解のきっかけを作る)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
喜色を浮かべて隣にいる聖薇に話しかける。勾玉騒動があってからピシリと表情が張りつめたばかりでなく、
思いつめているのかこれから先に思案をめぐらせているのか、それとも単に予想外の事が起こって固まっているだけなのか、
光のあたり加減で表情を読み解く能面のような顔つきになっていて、何を考えているのか分からない。

岬「(これじゃあ何を話しても頭に入らない)」

残りの2人も同じようなものだ。どちらもどこか気まずげに食事を口に運ぶだけで、一向に言葉をかける気配が見えない。

岬「(まずは他愛もない会話でもして、この場を何とかしないと)ああ、美味しいね、早乙女さん」
聖薇「えっ、は、はい」

急にナイフが皿の上を滑る。ハッとして生気が戻り、慌て気味に言葉を返す。

聖薇「ええ、とても」
岬「僕だとここまで作れるようになるのに何年かかるだろう。
  みんなが頑張ってくれたから、こんなに美味しくなったんだろうね。そうでしょ、あずみちゃん」
あずみ「あっ?う、うん、そうよ!仔羊焼きも牛肉煮込みも頑張ったんだからね。
    白ワインと鶏のだし汁の匂いを嗅ぎながらパセリとニンニクと生パン粉を混ぜ合わせて……
    面白かったよね千早ちゃん?」
千早「そうね。私はトチモチのところが一番面白かったわ。トチなんて昔話でしか聞いた事なかったから。
   今まで料理はパスタをゆでる位しか出来なかったけど、私も作れるようになれるかも」

ようやくにしてワイワイガヤガヤと話に花が咲きはじめる。
異様な緊張を吹き払おうと、皆が話に乗っかるように積極的に話をはじめてくれた。

407 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/17(日) 14:08:30 ID:7G/ANOe6
岬「(さて、これで委員長さんが偏見をといてくれるといいんだけど)」

話を盛り上げた2つ目の目的は達成されただろうか。実際の頑張りをみて彼女への偏見が解消されたかどうか、
確認のため聖薇の方へ顔を向け、状態を観察してみた。


先着で
★聖薇の反応→! card★
と書き込んで下さい。マークで分岐します。!とcardの間のスペースは埋めてください。

JOKER・ダイヤ→聖薇「あなたが好きだというテレビゲーム、今度私にもおしえてもらえないでしょうか」
           進んで理解しようとする姿勢もみせた
ハート→聖薇「この間は申し訳ありませんでした」 頭を下げこの間の非礼を詫びる
スペード・クラブ→聖薇「ええ、よく頑張ってくれたみたいですね」 特に変化は無かったようだ


一旦用事のため中座いたします。続きを夜に書けるように努力いたしますが、
無理であった場合はその旨報告いたします。

408 :森崎名無しさん:2019/02/17(日) 14:39:02 ID:???
★聖薇の反応→ クラブK

409 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/17(日) 19:53:02 ID:7G/ANOe6
済みません、今日は投稿出来そうにありません。何卒もう少しお待ちください。

410 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/23(土) 20:16:30 ID:pdz/FjeI
★聖薇の反応→ クラブK ★
→聖薇「ええ、よく頑張ってくれたみたいですね」 特に変化は無かったようだ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あずみ「トチノミ結構あったねー、他のはホントに手伝い程度だけど、
    十個や二十個なんてもんじゃなくて、それこそ山盛りはあったんじゃない。
    むき出しの実をを金槌でつぶした後、トーシに通して灰を洗い落として、って」
千早「トーシにとおし……ふふっ、ふふははあははっ!ちょ、ちょっと、あずみっ」
あずみ「やっちゃった。まったく、いつもいつもこんなしょーもないことで笑わないでよ」
千早「だって、それは、不意打ちじゃない」

他愛もない話から思いがけないツボに入ったらしく、如月さんが相好を崩した。
見慣れた光景らしくあずみちゃんはあきれ顔で応対している。
肝心の料理での貢献に話が及ばなかったためだろう。
隣の委員長さんは通り一遍の感想をつぶやいただけで、大きな進展は見られそうにない。

*あずみ・聖薇間の関係改善はありませんでした。


そうして食事は終わり、あずみちゃんと如月さんは早乙女婦人に連れられて食器の後片付けへ向かう。
僕はぼんやりと外を眺めながら椅子に座っていると、ビニールカバーを携えた聖薇がこちらへと向かってくる。
中に白い紙が入っているところを見ると、解答用紙が入っているのだろう。

聖薇「答案を返却します。よく内容を確認して、間違えたところを見直してください」

予想の通り聖薇から紙が渡される。手に取ってばさりと机に広げ、結果を確認する。

聖薇「国語86点、算数86点、理科82点、社会82点、フランス語100点。合格です。
   まだ少し足りないところがありますが、この位なら1人でも大丈夫でしょう」

無事合格ラインの80点を全て突破した。このまま大きく欠伸でもしたい気分だったが、
合格報告もそこそこに相手が手招きをしながら僕を呼び出すので、やむなく向かって行くと両手に
はち切れんばかりに新聞紙が詰まった紙袋を持つ早乙女婦人の姿が見えた。

411 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/23(土) 20:18:07 ID:pdz/FjeI
そして婦人の脚のすぐ後ろには、今時民芸館でしかお目にかかれないような、臼と杵も見える。

早乙女「聖薇、これから外へ出すから、広場まで通る廊下に新聞紙を敷きつめて。階段の段差は厚めにね。
    岬君は悪いけど、このお母さんと一緒に外まで運んでくれない?」


早乙女「そうそうそのまま、まっすぐ、あ、ちょっと右に回って。このままだとドアにぶつかるわ」

要請に従い、臼の縁一点のみを床に着けるようにして、早乙女婦人と共にゴロゴロと臼を転がす。
時折くる指示にそって慎重に運んでいき、階段や曲がり角といった難所を何とか通り抜けていった。

ゆっくり臼を転がしていく中、今この目の前にいる婦人にだけでも、
先の異変について告げるべきではないかとの考えが、ふっと頭に浮かんだ。
この時間からして3少女は全員外に出払っている。そう思って顔を向けたが、


くすっ


そんな「におい」が顔から自分へとしみ入り、言葉が出てこなくなってしまった。

岬「(昔見た映画でこんなシーンがあったな)」

題は忘れてしまったけれど、似た「におい」のする映画を思い出した。
恋仲の新聞記者と王女が止む無く分かれた後、旅行からの帰国に際しての記者会見時の事だ。
ただの記者と王女に戻った会見場で最後に王女が去る場面で、立ち去る時に他の記者達に一言ずつあいさつをするシーンだ。
恋仲の記者と対面する時、目も口も顔の筋肉も動いていなかったのに他とは明らかに違うもの。
あの表情とも空気ともいえない「におい」を目の当たりにして、僕は何も言えなかった。

岬「(やっぱり、ただ者じゃない)」

臼運びを手伝う妙齢の女性を横目にして、ますます僕は疑念を深めていくのだった。

412 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/23(土) 20:20:35 ID:pdz/FjeI
早乙女「さて、これから皆さんには餅つきをしてもらいます。
    杵を持ち上げて突く人と持ち上げている間に餅をこねる人、かなり疲れるから交代でするように。
    くれぐれも岬君が男の子だからって、杵ばかり突かせないようにね。
    私は晩御飯の準備やお餅につける餡や味噌の準備があるから後の詳しい事は聖薇に訊いてね」

新聞紙を敷きつめた広場の上に、ズンと臼と杵が鎮座し、中にはモチ米とすり潰した黄土色のマロニエがたっぷりと入っている。
これを食べられるようにするには5分や10分ではすむまい。
覚悟を決めて説明を聞き役割分担を決めた後、力を込めて思い切り杵を臼へと叩きこんだ。


・休憩時に話しかける相手

A あずみ
B 聖薇
C 千早

1票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

413 :森崎名無しさん:2019/02/23(土) 20:22:32 ID:4IQDcXLM
A

414 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/23(土) 20:59:01 ID:pdz/FjeI
A あずみ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
A 岬「初めてきてみて、どうだった?この店(今日は聖薇との縁ができればいい)」
B 岬「初めて会ってみて、どうだった?風紀委員長ではない聖薇さんは(少しでも仲良くなってくれるといいんだけど)」
C 岬「如月さんとここに聞いてた曲って何?(千早とは仲が良いのかな。そこのところも確かめてみよう)」
D 岬「サッカーの具合はどう?(僕がいない間、ちゃんとやってるかな)」
E 岬「中古の壊れかけたものでもいいからさ、余ったゲーム機ある?(上手い事タダで手に入れられないかな)」
F 岬「お母さんと会ったけど慌てて帰っちゃったんだ。何か知ってる?
   (あれは絶対何かある。何か情報を得られないだろうか)」
G 岬「あずみちゃん、詳しい事はあとで話すけど……本来君には関係ない事なんだ」
(一旦こちらから距離を置かせることで断るタイミングを失わせ、その後の関係の進展から引き受けるように持って行く)
H その他、自由回答(要2票)

1票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。
なお、これら選択肢を選択した後、さらに分岐します。

415 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/23(土) 21:17:14 ID:pdz/FjeI
本日はこれまでにいたします。
なお、最近Twitterを中心に、勝手ながらキャプテン森崎やキャプテン岬に
ついて宣伝しておりますが、もし初めてきたという方がいらっしゃいましたら、
まずは1さん、2さんが投稿したキャプテン森崎をお読みください。質量ともにそちらが優れていますし、
また、こちらは本編を下敷きにして執筆しているので、先に読んでもらえると
説明が少なくて助かるという側面もあります。(笑)

416 :森崎名無しさん:2019/02/23(土) 21:53:04 ID:4IQDcXLM
B

417 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/02/28(木) 19:45:53 ID:???
済みません、仕事の都合により今週は続きを投稿出来そうにありません。
どうか御了承をお願いいたします。

418 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/10(日) 21:20:01 ID:Zm1hGbuI
B 岬「初めて会ってみて、どうだった?風紀委員長ではない聖薇さんは(少しでも仲良くなってくれるといいんだけど)」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
何とか両者和解の糸口はつかめただろうか。そうなる事を願って今回の食事会に2人をくっつくよう話を持っていったのだが。

あずみ「どうだったって。どうだったも何も、あいつ岬君と2人きりだったじゃない。
    たまに出る時も親の所へ行くばっかで、あたしの方には来てないわよ」

交流の機会さえなかった。そうあずみの返事を聞いて、心の中でため息が出た。確かにテスト中は部屋でこもりきりだった。
さらに言えば食事の時も勾玉の件があるにせよ、互いに一言も交そうとしていなかった。
どちらも自分から仲直りしようという意思自体が無い、という事なのだろう。

岬「(これは思った以上に難しそうだ。まいったなあ、これからの為に協力してもらいたいのに)」

関係改善が予想以上に難しいと分かり、頭を抱えたくなる。そんな僕の気持ちなどつゆ知らず、
すぐ隣に座る女の子はブツブツと愚痴をつぶやいてくる。

あずみ「絶対に前世は鬼軍曹よ、教官になったら戦地に立つ前に3人や5人は死んでるよあれ。
    それを聞いた風して聞き流さないとやっていけないこっちの身にもなってみ……」
聖薇「聞こえてます!」
あずみ「うわっ!」

餅をこねていた聖薇が振り向き、苛立だしくあずみを睨みつける。

あずみ「まったく驚かせないでよ、こっちはたまったうっぷんを吐き出してるところなのに。あー、千早今だよ打ち下ろしちゃって」
聖薇「私の手を潰させる気ですか!いえ、それよりも早川さん、今まで私の話を聞き流していたんですか!?
   あれだけ話して少しは頭に残っていると思ったら……」
あずみ「あれ、アンタあたしが聞いてると思ってたの?あんな般若心経みたいな堅苦しい文句、あたしだけじゃなくて他の誰も」
聖薇「早川さん!」

419 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/10(日) 21:21:14 ID:Zm1hGbuI
殴りかかるような語気であずみちゃんを襲う。攻撃を受けた相手はニヤニヤと小馬鹿にした笑みを浮かべて立ち上がる。

あずみ「顔まで般若になったらいよいよ誰も聞きゃしないって。それじゃ岬くん、ちょっとだけエスケープしてくるわ、んじゃ!」
聖薇「こらっ、待ちなさい!」

すっと飛び出すようにあずみちゃんは走り去る。聖薇も慌てて追いかけていき、この場は僕と千早の2人しかいなくなった。

岬「はは、いや、早川さんも早乙女さんも元気だなあ」

思わぬ展開に戸惑いを隠しきれない風に、1人残った千早に語りかけてみる。
こう困った様子を見せれば、何かしらの助け舟を出してくれるだろう。
その読み通り、気まずい空気を流す言葉が、千早の口から出てくれた。

千早「そうね。本当に、2人とも元気ね。もう少し落ち着いてくれるといいのだけど」

すっかり慣れっこになっているのだろう。表情も語調も変わらず、餅つきの役を変え臼の前にかがみこんで、つぶやき続ける。

千早「早乙女さんは完璧主義というか四角四面というか、他人に厳しく自分にはそれ以上に厳しいって人だから、
   良くも悪くも自由奔放な早川さんとは馬が合わないんでしょうね」
岬「そうか、2人とも良い人だし、早く仲直りしてくれるといいんだけど」
千早「大丈夫よ、いつもの事だから。学校でも大抵こんな感じ、トムとジェリーみたいなものよ。
   いつも早乙女さんが早川さんを追いかけ回して、大した事も起こらず終わって、
   しばらくしたら元通り。だから気にしなくて大丈夫よ」

420 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/10(日) 21:22:23 ID:Zm1hGbuI
少々の悶着はあったが、どうにか千早とかわりがわり餅をついてこねくり回し、どうにか次の段階に進められるところまでになった。
つき上がった餅を聖薇の母の所へ持って運ぶと、これからの調理は
テーブルについてからのお楽しみ、という理由で料理の場から遠ざけられる。
重い杵を振り上げ続けた疲れがずしりと襲ってきた事もあり、店内の端にある長椅子に腰かけて一息入れる事にした。

休んでからそう時間がたたないうちにトムとジェリー、もといあずみちゃんと聖薇が現れ僕の座る長椅子へと座りに来た。
あずみちゃんは僕の右隣へドカリと荒々しく座った後、ムスッとした顔をそらして頬杖をついたまま黙りこくっている。
聖薇の方もプイと横を向いたまま、一言も口をきこうとしない。おおかたどこか遠い所で舌戦を繰り広げてきたのだろう。

そんなピリピリした空気などどこ吹く風といった顔で、千早はビニール小袋から
砂糖をまぶしたナッツを取り出し、口の中に摘まみ入れている。
レジの横にいくらか小銭が置いてあるところを見ると、代金は支払っているようだ。

ナッツをポリポリとかじりながら、あちこちに陳列された商品を見回している。レーニンとコーヒー豆が同居したコーヒー缶、
品の良い彩のビンに入った香水やオーデコロン、武骨でクラシックなつくりのカメラと、
多種多様な商品群を通りながらうろうろと歩いていた千早が、あらと小さくおどろいて立ち止まり、銀色の板を手に取った。

421 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/10(日) 21:24:09 ID:Zm1hGbuI
チャンスだ。椅子周りのうっとうしい空気から逃れるべく千早の下へ歩み寄る。

岬「どうしたの」
千早「えっと、ちょっと懐かしいのが目に入ったから」

僕の問いかけに反応する形で、手に持つものを僕の目の前へみせてくれた。
大きさは電卓ほどだが、その他の外見は電卓とは大きく異なっていた。横長の本体の中央には液晶画面が据えつけられているが、
そこには様々なキャラクターや風景が、下絵のようにうっすらと描きこまれている。
画面枠線の外には移動方向を示した矢印とボタンが四方に4つずつついてあり、
画面の下にはキリル文字で「электроника ин 02」と記されていた。

千早「ボタンの配置と絵の感じからして、昔遊んだ『ミッキーマウス』じゃないかしら。
   海外でもゲーム&ウオッチって人気なのね」

言われてみれば、日本にいた頃そんなものを見た気がする。ここにあるのは文字からしてソ連製だろうが、
見れば見るほど昔見た記憶の中のものと重なってくる。

岬「(プライドないんだろうか)」

自然とそんな感想が頭に浮かぶ。キャラクターのウサギとオオカミのバタ臭さも相まって、濃厚なパチモノ感が漂ってくる。
そんな何とも言えない気分になっている間に、千早はもう1つ別のゲーム&ウオッチを取っていた。

422 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/10(日) 21:28:57 ID:Zm1hGbuI
岬「あれ、また別のを。如月さん、それ買うの」
千早「ええ、もうすぐ優の誕生日だから、プレゼントに」
岬「(ふーん、もうすぐ優の誕生日か。僕も参加してみようかな?何しろ優の危険が迫っているんだし、
   それとなく知らせておかないと。命の恩人なんだから、断られる事はないだろうし。
   ただ、予定が後で何かと重なると面倒だから、今は誕生日だけ訊いておこうかな。
   それとも行かないでおこうかな。その分の時間を有効に使えるし。どうしよう)」


A 自分も誕生会に参加できないか尋ねる
B 優の誕生日を尋ねるだけに留める
C 参加しない(当該週の自由行動は消費されなくなります)

1票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。



ゲーム&ウオッチを間に千早との会話を交わしているところで、今日はこれまでと致します。
千早が手に持つパチモノゲーム&ウオッチについては、
『электроника ин 02』と単語を入れて検索してください。
(本当はURLを入れたかったのですが、入れると何故かエラーとなるので、断念しました)


423 :森崎名無しさん:2019/03/11(月) 04:06:50 ID:2UFBe+mQ
A

424 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/16(土) 21:14:27 ID:VuWvlDkE
A 自分も誕生会に参加できないか尋ねる
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
折角の機会だ。凶運の星の下に置かれてしまった男の子の下におもむき、
どうにかして自分の置かれた状況を知ってもらわなければならない。
ゼビウスの絵の事をはじめとした、優自身にも興味がない訳ではない。
何より勾玉が示した優の守護者の1人、千早との関係を進展させて、
何としてでも引き受けさせねばならない。

そんな思いで千早に、弟御の誕生日参加の申し出を行ってみた。申し出を受けた千早の返事は……


先着で
★千早の返事→! card★
と書き込んで下さい。スートで分岐します。!とcardの間のスペースは埋めてください。

JOKER→千早「今度一緒に、プレゼントを探しに行きませんか?」
ダイヤ→千早「今度母さんの代わりにゲーム機買いに行くのだけれど、
       レクチャーしてもらえないかしら」
クラブA→千早「済みません、その日は敵が襲撃するものですから……くっ」
     岬「あっ(まだシャルポワさんと和解してないか)」
それ以外→千早「ええどうぞ、優も喜びます」

425 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/16(土) 21:48:55 ID:VuWvlDkE
本日はこれまでと致します。それにしても如月さんの描写、今は小学校6年生とはいえ、
「らしさ」がなかなか出せている気がしません。もっと精進しなければ。

426 :森崎名無しさん:2019/03/17(日) 00:33:52 ID:???
★千早の返事→ ハート9

427 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/17(日) 09:41:53 ID:hI6TfS7w
おはようございます。少しだけですが投稿させていただきます。
私事により次のレスを投稿しましたら一旦休止いたします。次の投稿は
判定の時間次第で判断し、続きを書けない場合はその旨報告いたします。


★千早の返事→ ハート9 ★⇒それ以外→千早「ええどうぞ、優も喜びます」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
快く出席への許可が得られた。あとは細々とした情報を尋ね、準備を進めるばかりだ。
そう思って千早に幾つかの事を尋ねてみる。聞き出した結果は以下の通りだ。

先着で
★如月優の誕生日 10月! card+! card+! dice日★
と書き込んで下さい。スートで分岐します。!とcard・diceの間のスペースは埋めてください。

日にちは以下の週に割り振られます。
1〜3日→第1週  4〜10日→第2週  11〜17日→第3週
18〜24日→第4週  25〜31日→第5週

第5週となった場合は特別週とみなし、通常の週のような練習時間・自由時間の存在しない、誕生会専用の週となります。
現実の1983年10月のカレンダーとは異なっておりますが、誕生日決定に伴う
便宜上の理由で変更を加えた事を、どうか御理解願います。
なお、合計数が32になった場合、投票者が自由に日にちを設定できるものとします。
その際のトラブルを避けるため、これは「ID欄は空白にして」投稿を行ってください。

428 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/17(日) 09:43:30 ID:hI6TfS7w
先着で(ただし上の誕生日判定の後で)
★誕生会のメンバー ! card★
と書き込んで下さい。スートで分岐します。!とcardの間のスペースは埋めてください。

JOKER→ダイヤ+ トニーニョ
ダイヤ→ハート・スペード+天ケ瀬、こずえ、聖薇
ハート・スペード→クラブ+あずみ、双海姉妹、シャルポワ
クラブ→如月一家4人+岬

429 :森崎名無しさん:2019/03/17(日) 10:38:22 ID:hB7k9y46
★如月優の誕生日 10月 ハートJ + ハートK + 2 日★

430 :森崎名無しさん:2019/03/17(日) 14:45:10 ID:???
★誕生会のメンバー  ハート7

431 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/17(日) 16:06:18 ID:hI6TfS7w
今日はこれ以上投稿出来そうにありません。来週までお待ちください。

432 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/23(土) 21:03:57 ID:kzsdGeLw
申し訳ありませんが、今日は話をまとめられなかったので、続きは
来週までお待ちください。

433 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/03/31(日) 22:14:13 ID:VKCendUQ
1レスだけですが、投稿を行わせていただきます。


★如月優の誕生日 10月 ハートJ + ハートK + 2 日★→10月26日(第5週)
★誕生会のメンバー  ハート7 ★→如月一家4人+岬+あずみ、双海姉妹、シャルポワ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
岬「(10月26日か。これから話す事について、家族に話す時間が1月もある。
   話が重すぎて胸の奥にしまっておくとしても、それだけあれば心の整理もつく。
   万一問題が起こっても十分なフォローができる)」

誕生日の日取りを確認しながら、密かに胸を撫でおろしていた。これだけ時間があれば不測の事態にも対処できるだろう。

岬「そうか。楽しみだなあ賑やかそうで」
千早「そうね、優の友達が来てくれるみたいだから、少なくとも退屈はしないと思うわ。
   早川さんに真美と亜美、それとポワロも」
岬「(ポワロ?ああ、シャルポワの事か。ちょっと言いよどんだり、呼び捨てにしているところをみると、
   わだかまり解けてそうにないなあ。もう少しそこのところ、話を振ってみた方がいいかな。
   いや、まだ勾玉の件も話してないのに、余計な事を抱え込むはめになるかもしれない。さて、どうするかな)」

A 話してみる(さらに分岐)
B 話さない。面倒事は増やしたくない
C 話さない。聴きに徹して情報収集だけにとどめる

1票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

434 :森崎名無しさん:2019/04/01(月) 18:16:32 ID:???
A

435 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/06(土) 21:05:24 ID:gtgTVhYw
今週も1レスしかできません。現在モチベーションが落ちている状態でして、あまり執筆できないでいます。
もちろんこれからも書き続けますが、なにとぞご容赦願います。



A 話してみる(さらに分岐)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
岬「(さて、どうなっているのかな)」

千早の内情を探るべく、急いで思案をめぐらせる。

岬「(胸の事だけで意固地になっているなら笑い話で済むけど、そこまで単純な人だろうか)へえ、色んな人が来るんだね」
千早「ええ、優がゲーム好きになったのは早川さんのおかげだし、真美達が優を引っ張り出してくれなかったら、
   あの子の歓心が外に向かう事も無かった。来てくれるのが楽しみ」

さりげなく千早の人付き合いを尋ねた頃には、千早の言葉は柔らかいものになっていた。

岬「(へえ、あずみちゃんやイタズラっ子達とねえ。目的の情報は引き出せなかったけど、中々面白いな。
   ただ本来訊きたかったシャルポワの事は分からなかった。どうするかな)」


A 優の交友関係について尋ねる(さらに分岐)
B 優の過去について尋ねる
C 本来の目的通り、千早とシャルポワとの間柄について尋ねる
D その他、自由回答(要2票)

1票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

436 :森崎名無しさん:2019/04/06(土) 23:15:30 ID:SrJcSCkM
B

437 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/14(日) 22:40:23 ID:m9q3xldo
          第24話『事が起こってしまった故に』



B 優の過去について尋ねる
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
岬「(どうも引っかかるな)」

千早とやり取りを交わしていて、フッと違和感が差し込む。

岬「(『関心が外に向かう事もなかった』?
   どういう事だ、何かあったのか?それまでは外の世界に興味が無かったという事になる。訊いてみよう)
   そうか、優君は今色んな事に興味があるんだ」
千早「え、ええ」
岬「昔はそうじゃなかったみたいだけど、そのあたりの事について教えてもらえないかな」
千早「あの、それは」
岬「僕は命を賭けて優君を守る」

目の前の少女はハッとした顔になって、僕に見入る。彼女が次の反応を示す前に、語り続ける。

岬「僕は優君の力になりたい。前に間一髪で助かった時、あの子の口から出た言葉が『カセットは大丈夫ですか!?』
  怖がりも泣きもせず第一にそれ、その次に出たのが『ありがとうございます』だった。
  そう言って僕にお辞儀する姿を見て、優君は本当に優しい子なんだって感じたんだ。
  そんな子に2度と危ない目に遭ってほしくないし、優君の事をもっとよく知って友達になりたいと思っている。
  だからお姉さんの如月さんから、優君について訊きたいんだ」

弟と友達になりたい。誠意を込めた申し出を丁寧に、しかし叩きつけるような勢いで千早に告げる。
僕が語る勢いにたじろいだのか、視線をそらして黙り込んでいた。

438 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/14(日) 22:41:45 ID:m9q3xldo
千早「そうよ、岬君は優を助けてくれた。大丈夫よ」

しばらくして、自分に言い聞かせる口調でつぶやいた後、僕に触れるか触れないかの距離まで近づき、そっと袖を引く。

千早「ちょっと外へ出て、人がいない所で」

そう言われてチラリと視線を横に動かしてみる。
あずみちゃんと聖薇はにらみ合いに飽きたのか、2人とも椅子から離れ店内をブラブラしている。

岬「(視線がこっちに向く気配もない。それでも外か、よほどデリケートみたいだ)」

どうもただ事ではなさそうだ。そんな気配を悟られぬよう何気ない具合に2人へ外出すると告げ、外に向かう。
マロニエを横に抜けル・エストと大通りの中間まで来たところで千早が立ち止まり、口を開く。

千早「岬君は、PTSDって知ってる?」

聞き慣れない言葉が耳に飛び込む。PTSD。意味を考える間もなく答えが返ってきた。

千早「日本語で『心的外傷後ストレス障害』。強い精神的ショックが心にダメージを与え、
   その後遺症で強い恐怖や緊張を引き起こす症状よ」

そこまで告げてから視線を僕ではなく大通りへと向ける。騒音こそパリにしては静かだが、
車は欧州屈指の大都市らしく引っ切り無しに行き交っている。そんな車の群れを見てから僕の方に向き直し、告白した。


千早「優は昔、車に轢かれたの」

439 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/14(日) 22:43:53 ID:m9q3xldo
千早「昔、まだ日本にいた頃、私と優の2人でお祭りに出かけた事があった。
   その帰り道に落とし物を拾おうとした優へ、車が飛び込んできた」

そう言った後、千早はギュッと堅く目をつぶった。幼い日の惨劇が脳裏を駆けめぐったのだろう。
嫌な記憶を振りちぎるように頭を振った後、話を続ける。

千早「万一の覚悟を、とまで告げられたほどの大怪我だったけど、何とか命は取りとめた。
   動かなくなった腕もリハビリのおかげで動かせるようになった。でも心は」

そこまで語ったところで千早の口が詰まる。僕は千早の袖を軽くつまみ、もう一方の手で通路路肩を指さし、
促すように自分から縁石に腰を下ろす。一連の仕草から意思を察してくれたらしく、
かすかに頭を下げ僕の隣へ寄り添うように座り、切なげに息をついた後、話を続けた。

千早「撥ねられた時の激痛か生死の境をさまよった体験のせいか。
   退院してからも優は苦しい苦しいとうめき続けて、眠る事もできなかった。
   起きている時も時々、カチカチと歯を鳴らしながら金縛りにあったみたいに体が動かなくなった。
   母さんに連れられてアメリカに渡り、PTSDを診てもらえるお医者さんに出会ってから、
   だんだん落ち着いてきて不眠も金縛りも無くなった。これで大丈夫だと思ったのだけど」

440 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/14(日) 22:46:19 ID:m9q3xldo
千早「フランスに来る少し前、朝早く起きてみると優が自分の部屋で絵を描いていたの。
   尋ねてみると夜から一眠りもせずに描き続けていたって。叱ろうとしたら表情も変えずにこう言ったわ。
  『だってぼく、明日死ぬかもしれないんだよ?1枚でも多く描いて生きてたんだっていうしょうこを残したいんだ』」

岬「明日、死ぬかあ」

あまりの言葉に、ため息と共にうめきに似たつぶやきが出てしまった。

岬「(『雨の予報が出てたから傘持っていくよ』
   そんなレベルで自分の短命を確信してしまっているなんて。これからの事をどうやって伝えれば)」

生還の代償は大きく、僕が背負うべき責任は途方もなく大きいものとなった。だが僕には頭を抱える事すらできなかった。

千早「岬君に優を助けてもらってから、段々怖くなってきたの。
   自分の命なんて長くないからいいやと思って、道路に飛び出したんじゃないかって。
   優にきいたら本当にそう言いそうな気がする。岬君、わたし、どうしよう!怖い、怖い……」

愁声を越えて悲哀極まり、頭を伏し顔を手で覆い震えだす。
そんな千早に対しかける言葉も見つからず、ただ黙って背中をさする事しかできなかった。

441 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/14(日) 22:48:03 ID:m9q3xldo
そうしてしばらく一緒にいて千早の震えも止まった頃に、コホンと1つ、小さな咳が横から聞こえる。
ギョッとして振り向くと、聖薇とあずみが数歩分横に立っていた。
聖薇の顔は憂色深く、あずみは申し訳なさげに顔をそらしている。

聖薇「岬さん、如月さん。料理ができたと母から言伝がありました。一緒に行きましょう」
千早「早乙女さん、早川さん、聞いてたの?」

赤くなった目を2人に向けて、分かり切った事を尋ねる。
聖薇は眼鏡の縁を押さえたまま押し黙る。何と言っていいのか分からないのだ。

呼びかけに答えたのは、あずみだった。

あずみ「あたし達、確かに全部聞いちゃった。でも信じて、あたしは千早の事友達だと思ってる。
    だから私にできる事は何でもするし、悪い事言う奴がいたらブン殴ってやる。
    コイツだってあたしにとってはいけ好かない奴だけど、困っている人がいたら
    その人のためだけに一生懸命頑張ってくれる。だから大丈夫。そうでしょ、聖薇?」

聖薇「はい。私は非力ですが、力があろうがなかろうが苦しむ人悲しむ人を助けるのは
   風紀委員長、いえただの人間としての聖薇として当然のつとめ。痛苦を取り除くのに力を尽くします。
   ですからどうか、私達を信じて、頼ってください」

私心の無いまっすぐな言葉に、千早は目頭を押さえながら体を起こし、ありがとうと小さな声で答え、
2人に連れられてル・エストへと向かって行ったのだった。

442 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/14(日) 22:52:09 ID:m9q3xldo
話が長くなり、選択肢もありませんが、本日はここまでにいたします。

なお、優君の設定については、鈴木貫太郎P様の動画
『【超NovelsM@ster】 ありえたかも知れない未来』の「そのなな」と「そのはち」
での設定を参考にしております。設定利用の許可をくださいました
鈴木貫太郎P様、誠にありがとうございました。

『【超NovelsM@ster】 ありえたかも知れない未来 そのなな』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm17543021

『【超NovelsM@ster】 ありえたかも知れない未来 そのはち』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm17559429

443 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/21(日) 22:16:28 ID:HA8Joy+M
すみません、私事で本日は投稿を休ませてください。
文章自体は書き上がっていますので、こちらの都合により明日か明後日の午後か夜に
投稿いたしますので、何卒もう少しお待ちください。

444 :森崎名無しさん:2019/04/21(日) 23:14:28 ID:HA8Joy+M
すみません、私事で本日は投稿を休ませてください。
文章自体は書き上がっていますので、こちらの都合により明日か明後日の午後か夜に
投稿いたしますので、何卒もう少しお待ちください。

445 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:31:54 ID:4xvP23YM
              第25話『Sub rosa』



洗面所にて身なりを整え食卓に向かいドアを開けると、シャンデリアに赤いバラが爛々と掲げられていた。

あずみ「あっ、バラだ。キレイねー」
千早「いい香り。バラの香りに包まれながらおもちを食べるのも、おいしそう」

あずみちゃんは昼食時に見られなかった、濃いワイン色をたたえた花の色合いに感心している。
千早の方はすっかり元気になったらしく、バラの下で食べる餅の味を思い浮かべているようだ。

聖薇「母さん、これは」

最後の1人は他の2人とは異なり、困惑した顔つきで母親に尋ねる。その母親はくすりとした笑みで問いを受け流し、

早乙女「さあ、皆さんどうぞ」

と、僕達に着席を促していた。あまりにさらりと流され発言の機会を失った聖薇は、
何となく落ち着かない様子で椅子に座らざるを得なくなった。

446 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:32:56 ID:4xvP23YM
席についた僕は、色とりどりに彩られた様々なマロニエ料理を見つめていた。
正面に折り目正しく並ぶ箸を共にして、お椀に餡子が入ったぜんざいが鎮座し、そのぜんざいを要とした扇状に、
焼いてきつね色がかった草焼餅、クルミやジャガイモが入っているまぜ餅、
餅の傍らに醤油、すりおろしたゴマにきな粉が添えられたものが、それぞれ小皿により分けられていた。

これだけの説明だと単に雑然とした、洋式空間にそぐわぬ不調和な配膳というだけで終わる。
けれども、この早乙女の母親が食卓を整えると、まるで清潔な前衛芸術とも言うべきものをそっと用意したような、
さり気なくも目が覚める清新な空間が生み出されていた。

千早「はむ、あむ、はむ」

すっかり和やかな雰囲気の中、心底幸せそうな顔をして、箸に2つも餅をつまみながら頬張っている。

あずみ「アクが強いっていうからどんだけ苦いかと思ったけど、結構イケるわ。そう思うでしょ岬君も」

口にゴマときな粉をまぶしたあずみちゃんが、僕に同意を求めてくる。
栗のような実をつぶし、もち米とこね合わせてできたこの餅、
ほのかに青臭みを感じる他は苦みも渋みも無く、かえって単調なもち米餅にクセを与えてくれている。

岬「うん。いくらでも食べられそうだよ」
早乙女「ふふ、よかった」

447 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:34:45 ID:4xvP23YM
マロニエ餅の味に満足した僕達を見て、母親は満足げだ。その満ち足りた表情で母親は、娘へと話しかける。

早乙女「おもちね、ふふ、懐かしいわ。聖薇は覚えているかしら」
聖薇「覚えている、とは」
早乙女「あら、忘れた?まだ小さかった頃に、初めて聖薇がおもちを口に入れた時の事。
    食べようとしたはいいけど、いつまでたっても噛み切れなくて、泣いちゃったでしょう」

えっ、と聖薇が軽く声を上げた後、ギクリとした顔つきになる。
案の定、僕の隣にいるきな粉まみれの少女は、仇敵の過去の失態を知ってニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべていた。
とうの母親はそんな事は気づいてもいないという風に話を続ける。

早乙女「昔の事を思い出すわ。母さんもその時の聖薇ぐらいの頃は、
    やっぱりおもちを噛んでも噛んでも噛み切れなくて、泣きそうになったの。
    そんな時におばあ様、聖薇にとってはひいおばあ様が、私を膝に乗せて昔話をしてくれたものね」

心なしか語調がうっとりとしたような気がする。聖薇の方はというと
こちらも初耳だったらしく、興味津々といった顔で母に尋ねていた。

聖薇「ひいおばあ様が。どんな話をしてくださったのですか?」

448 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:36:07 ID:4xvP23YM
早乙女「うちの、早乙女家のご先祖様についての話よ。
    昔々、安芸の国、早乙女家が広島の大名だった毛利家に仕えるお侍様だった頃の話。
    関が原で敗者となった毛利家は領地を減らされたうえ、広島から山口へと移るよう命令されたのは知っているわね。
    家来である早乙女家もついていかなければいけなくなった訳だけれども、
    その頃の家中は身分が低く貧しかったから、更に狭くなった見知らぬ領地への移住、
    それ以前にそこまで行くまでの食べ物すらなくて、みんな途方に暮れていたそうね。
    調達の目途もつかず困り果てた一族の当主は、
    早乙女家代々の守り神を祀る鏡山に向かって、これからどうすべきかを伺おうとしたの」

何やら聞き覚えのある地名が耳に入る。既に母親は聖薇だけではなく、僕達全員を見据えるように視点を移していた。

早乙女「巫女の体を借りて現れた神様は当主に、2つの授け物を渡しました。
    1つ目は鎮守の森になる実から作られたトチ餅よ。
    神力のこもった餅を噛み続ける間空腹を感じず、力尽きる事無く歩き続けられると告げられたの。
    お告げに従い一族皆神様の餅を移動中ずっと噛みながら向かったら、
    他の食べ物を一口も入れず1人も欠ける事無く、領地に無事たどり着けたというわ」

聖薇「広島から山口まで。大変だったでしょう」
千早「お餅にそんな力が」
あずみ「あんたのところ、昔は結構苦労してたんだねえ。で、もう1つの授け物って?」
早乙女「ふふふ、それはね」

449 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:37:22 ID:4xvP23YM
友達の家の昔話に、皆すっかり関心が向かっている。母親はニコニコとしながら、再び語り継ぎ始めた。


早乙女「もう1つはこれから一族に試練が訪れる前に、事前に察知し覚悟を固められるようにと渡されたわ。
    玉のように高貴な光沢を放ち、神社の祭具にして生命の象徴、
    そして危機を感ずるや持ち主を照らし出し、覚悟の時を告げる、勾玉をね」



勾玉。



その言葉で僕も皆もハッとした。和気あいあいの空気がピシリと締まる。母親だけは微笑を崩していないが、
その顔から体から、神託時の沙織さんと同じ底知れぬ威圧が発せられていた。

早乙女「岬君」
岬「は、はい」
早乙女「あなたが持っている勾玉について、詳しく教えてください。
    どうしてあなたがこれを持っていたのか、何を告げられたのか、
    そしてあなたがどう行動していきたいかについて」

450 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:39:34 ID:4xvP23YM
僕は勾玉に関わる事全てを、包み隠さず話した。
沙織さんの事、無間神社でのやり取りと下されたお告げ、光る勾玉に込められた意味。
あずみは何度も目を丸くし、千早は何回も顔を蒼ざめ、
聖薇はじっと目をつむり口を堅く締めながら、僕の話を聴きいってくれているようだった。

早乙女「それで、いつまでに行動しなければいけません」
岬「遅くとも1年後というところしか、分かりません。もう1度神社に出向いて伺ってこないと」
早乙女「そう」

この段階に至ってもこの母親は、子供の悪ふざけ話をのぞき聞きでもしているかのような
笑みを崩さぬまま、僕の話を聴いている。

岬「(そのくせこの人を見つめるたびに、息が詰まるような、威力を感じる。こんな事は何でもないというのか?)」
早乙女「岬君」
岬「は、はいっ!」
早乙女「そろそろ訊かせてください。あなたはどうすべきと思うか、そしてどうしたいか」

遂に訊かれた。いつかは誰かに問われると考え、それゆえに何日も1人思い考え悩み、
それでいて決意がつかなかった選択を、遂に決めなくてはいけない。

岬「(僕は……こうする)」

451 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:42:50 ID:4xvP23YM
【WARNING!】【WARNING!】【WARNING!】【WARNING!】
【WARNING!】【WARNING!】【WARNING!】【WARNING!】
                                   
今回の選択で重大な事、優君の生命と岬君の進退を決めなければなりません。
この判断次第で今後の護衛そして交流関連の判定に差が発生します。

ミスとなる判定を選択しましてもその後の選択で十分に取り返しはつきます。
ただ、いかに創作の物語であっても人1人の命と多くの人達の将来に影響を及ぼすものであり、
真剣に考えて選択する事を望んでおります。


A 岬「皆さん、どうか僕に命をください」
B 岬「僕1人でも優君を助け出します」
C 岬「正直、逃げ出したくてたまりません」(判定あり)
D 岬「(じっと黙って、3人の反応を探ってから答えよう)」(判定あり)
E 岬「(ただじっと見つめる事で、答えとするしかない)」(判定あり)
F 岬「皆さんの心の整理がつきましたら、無間神社へ来てください。そこで決心を述べます」
G 岬「警察などに通報すべきではないかと、僕達には手が負えません」
H その他、自由回答(要3票)


2票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。
なお、今回に限り投票開始は平成31年4月23日の午後9時からとなります。
【本日午後9時以前の投票は無効になる】ので、何卒ご了承願います。
議論はそれまでもそれからもよく考え議論して、選択を行ってください。

452 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/04/23(火) 14:46:49 ID:4xvP23YM
人生の岐路に立ったところで、本日はこれまでと致します。
なお、大連休中の投稿については、旅行に出かけるためおそらくは
投稿できないかと思います。文章が書きあがりましたらスマートフォンから
登校したいとは思いますが、どれだけ書き進められるかは分からない以上、
皆様はどうか気にせずに連休を楽しんでいてください。
万一投稿が出来ましたら、Twitterにて報告いたします。
それでは皆様、大連休が良いものとなりますように。

453 :森崎名無しさん:2019/04/24(水) 20:18:59 ID:lLJjOYzg
A

454 :森崎名無しさん:2019/04/24(水) 23:04:28 ID:JQLR6fPw
F

455 :森崎名無しさん:2019/04/26(金) 16:25:14 ID:N+S+9yP2


456 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/02(木) 20:11:15 ID:FNnDkHv+
F 岬「皆さんの心の整理がつきましたら、無間神社へ来てください。そこで決心を述べます」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
岬「(ここで決意表明をするのは簡単だ)」

命を賭けて優君を守ってみせる。
そう宣言してしまえばこの場の雰囲気と、実際にパリの大通りで
トラックから助け出した実績から、見栄や騙りとは思われないだろう。
ひょっとしたら尊敬され、見る目と待遇も良くなるかもしれない。

岬「(でも、今はまだ早い)」

護衛にあたってのパートナーとなる3人をちらりと見回してみる。
あずみ、千早、聖薇。
どの顔も僕からの打ち明け話で表情が重く沈んでしまっている。同時に、僕がどんな事をこれから口にするかという、
緊張と不安もこみあげているようだ。とても喜び勇んで助太刀を申し出てくれる風ではない。

千早「警察に頼んで犯人を捕まえてもらえばいいんじゃないかしら。私達ではとても」
あずみ「な、なによ、こわいの?」
千早「怖いに決まってるじゃない。私だって優を自分の手で守りたい。
   でも話だと相当凶悪な相手、小学生がどうにかできる相手じゃない」

事が重大過ぎるのだろう、実の姉である千早ですら自ら関わり合いになる事を避けようとしている。
あずみの方も虚勢を張るのが精一杯で、とても凶悪犯に立ち向かっていけそうもない様子だった。

457 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/02(木) 20:12:37 ID:FNnDkHv+
早乙女「失礼、少し離れてよろしくて」

あずみと千早の会話にかぶさる形で、母親が離籍を求める発言をする。僕ははいとだけ答え、3人は無言でうなずくと、
後ろを向いて棚の引き出しを開け、何枚かの新聞か雑誌の記事の切り抜きを取り出し、机の上へと広げた。

早乙女「ここ最近のパリで起きた事件の記事よ」

近くに置かれた記事を手に取ってみる。勉強したとはいえ、まだ全ての単語を理解できる訳ではない。
それでも幾つも記事を眺めてみて、知らぬ間にパリのあちこちで起こっていた凄惨な事件の数々に、身震いがする想いだった。

岬「(『日本人男性3人殺害。全員全身を切り刻まれる』
   『女性2人の遺体が相次いで発見される。性的暴行の後ナイフ等の狂気により殺害か』
   『捜査中の警官2名殺害1名重体、犯人は現在も単身逃走中』……警官でも、ダメか!)」

襲い掛かって来るであろう敵の残忍ぶりが目に浮かびそうになる。加えて捕まえるべき犯人に返り討ちにあったばかりか、
ほとんど身辺が明らかになっていないところを見ると、相当に厄介な相手だと考えざるを得なかった。
そう思案に暮れていた時、僕達の頭越しに声が投げかけられた。

早乙女「認めたくないけれど、フランスでも起きているのよ、聖薇」

458 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/02(木) 20:17:54 ID:FNnDkHv+
様子を見ようと振り向き、聖薇の方を向き、驚いた。一目で分かるほどに顔色が失せ、震えだしているじゃないか。
どうフォローすべきかと思いをめぐらせ始めたところで、今度は僕に言葉が降りかかってきた。

早乙女「さあ、そろそろ本題の返事を聞かせてもらえないかしら」

容赦なく回答を迫ってくる。ただでさえ緊迫した状況の中、犯人の凶悪ぶりを細かく伝え娘を追い詰める母の意図は何か。
ともかくここは正直に話し、相手の反応をうかがう他は無い。

岬「皆さんの心の整理がつきましたら、無間神社へ来てください。そこで決心を述べます」

できるだけ動揺を押さえつけ、目の前の相手に挑むようにして答える。僕からの返事を受け取ったその相手は目をつむり、
じっと黙りはじめた。ジリジリと心を削るような沈黙の後、相手は目を開きピンと右人差し指を上げる。

早乙女「ヨーロッパの昔の風習で、秘密の会議や打ち明け話をする際は天井に薔薇を吊るし、
    話の内容を外部に漏らさぬよう互いに誓ったと聞きます。
    ここで交わした話はそれぞれ自分の胸にとどめ、みだりに口外しないように」

バラの背後に神様がいるかのような神妙な面持ちで、他言無用を告げる。指を元に戻した後、目の前の女性は、語った。

459 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/02(木) 20:20:13 ID:FNnDkHv+
早乙女「岬君、如月さん、早川さん、そして聖薇。
    あなた達が悩みぬいた末に出した結論がどのようなものであっても、私は決して否定しません。
    ただ、1人の人生の先輩として、少し言わせてもらいます。
    悩んで悩んで悩みぬいてそれしか考えられなくなった時、ハッと自分の中から出てきた声が、自分の本心です。
    その本心が聞こえたら、絶対にその言葉を守りぬきなさい。
    その為に世間の常識と正義を敵にし、プライドを捨てねばならなくなっても、
    自分の大切なものを守るために戦いなさい。
    それが選択する、いいえ生きるという事です」

どうするにしろ覚悟を決めて戦いぬけ。そう宣言を下されて返す言葉がある筈もなく、ただ黙る他なかった。
ジッと声も殺した沈黙の中、突然ブウンと外から音が聞こえ、思わずビクリとする。

早乙女「ちょうどいいタイミングで来てくれたわ」
岬「ちょうどいい、って」
早乙女「タクシーよ。あなた達が外に出ている間に手配したの。こんな具合では歩いて帰る元気もでないでしょうし。
    お代はこちらで全て出していただきますのでご心配なく」

言われてみて窓の外を見ると、西空に薄っすらと紅色が差し込みはじめていた。
時間がたっていた事を意識した途端急に体が重く、鈍くなる。
重大事の話をした事のストレスが今になって体にのしかかってきたらしい。
ここは好意に甘えておく事にして母親に食事と足の提供、打ち明け話への傾聴に礼を述べた後、ル・エストを後にした。

460 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/02(木) 20:21:28 ID:FNnDkHv+
明かされた話の整理ができていないためか、同乗するあずみも千早も一言も話そうとせず、無言のまま別れる事となった。
そうして最後に1人自宅の前で降ろされ、一息ついて空を見上げると、
建物で狭くなっていたはずのパリの空が、広く高く感じられてしまった。



岬「(これからどうなるんだろう?)」



考えまいとしていた思考が空を眺めて浮かんでしまう。
きりの無い事だと振り切るように顔を向け直し、手すりにつかまって階段を上る。
そうやってドアの前に着き鍵を開けて中に入った途端、糸が切れた人形のようにドアにもたれて倒れこみ、
父が帰るまで1歩も動けずにうずくまっていた。

461 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/02(木) 20:28:38 ID:FNnDkHv+
以上で本日の投稿、そして創作開始から1年半かけて、ようやく、ようやく、プロローグが終わりました!
次回は本編での説明事項や変更点について紹介した後、遅くとも次々回から本編を開始いたします。
岬君、サッカーします!


最後に、3日後の5月5日は我らが主人公岬太郎君の誕生日です。当日に記念イラストを投稿いたしますので、
Twitterにてご鑑賞してくだされば幸いです。

「キャプテン岬の人」
https://twitter.com/sc3loyupbCmTqIC

462 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/05(日) 09:54:05 ID:???
今日5月5日は岬太郎君の誕生日です!誕生日祝いに拙いながらもアタリ2600で
遊ぶ岬君を描いてみました。よろしければこちらからどうぞ。

https://twitter.com/sc3loyupbCmTqIC/status/1124818666619412481

463 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/11(土) 17:12:42 ID:Al7h3fQs
申し訳ありませんが、今週は投稿を休ませてください。5日の岬君誕生日イラストの準備や
10日のアタリ2800発売36周年報告など趣味に走り過ぎて、余力を使い切ってしまいました。
何とか来週の土日に投稿できるよう頑張りますので、どうかもう少しお待ちください。

464 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/17(金) 22:30:30 ID:BJFd4I9w
前回の投稿を終えて、ようやくプロローグである入学待機期間が終わり、岬君が
日本人学校に入学します。この物語の物語の区切りの際に、適当に決めていた
物語の進行システムを整理したく、いくつか変更を申し上げたいと思います。


1.描写方法の一部変更
 これまで主人公の岬君への感情没入を促すため日常会話からサッカー描写まで1人称視点で描写しておりましたが、
筆力の不足によりこれからは試合中の描写は他キャラクターの心情も描写した、1人称+3人称、
つまり他作品と全く同じ形式で描写いたします。

2.感情値
 各キャラクターが岬君に対して抱く信頼・友情等の度合いを示します。この数値は
0〜13までであり、初登場時のキャラクターが岬君に抱く初期感情値は4になります。

0⇒敵対:陰に陽に敵対、サッカーでは妨害や分派工作を引き起こす。指示には極力従わない
1・2⇒不信:サッカー判定で指示に従わない事がある
3・4⇒普通:特になし
5〜9⇒信頼:自分よりの発言やフォローを行ってくれる事がある
10〜12⇒親友:サッカー時に岬に関わる行動で+1補正
13⇒???⇒??????

次レスにてこれまで登場したキャラクターの現在の感情値について紹介します。

465 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/17(金) 22:34:47 ID:BJFd4I9w
天ヶ瀬(+1、つまり4→5)
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1510457921/31

サッカー部員共通(+1、つまり4→5)
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1510457921/31

聖薇(+2、つまり4→6)
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1510457921/79
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1510457921/431

あずみ(+2、つまり4→6)
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1510457921/251
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1510457921/602

直(+1、つまり4→5)
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1510457921/540

千早(+1、つまり4→5)
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1510457921/688

優(+1、つまり4→5)
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1510457921/688

亜美(+1、つまり4→5)
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1536464753/82

真美(+1、つまり4→5)
http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1536464753/139

なお、夕子や絹代、絵理のように特段の変化を記していない人は4です。
あずみや聖薇、千早の母親など同年代以外のキャラクターはカウントしておりません。

466 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/17(金) 22:39:17 ID:BJFd4I9w
3.「倦怠感」の設置
 ドリブル、パス、ブロックなどの各項目それぞれに設けられます。項目につき5つまでカウントされ、
該当項目の練習回数が5つになると、その項目の練習レベルが1下がります。その倦怠感への対策は以下になります。

一、サッカー関連の雑誌を買う
 ル・エストで販売されているソビエツキ・スポルトなど
 サッカー練習の効率を上げる資料を読む事で、下がった練習レベルを戻す事が出来ます。この方法の長短は以下の通り。
長所:読む事で確実にレベルが上がる
短所:所持金が無ければ使えない、雑誌の内容により上げたい練習とズレが生じる恐れあり

二、ゲームセンターで遊ぶ
 アタリフランスもしくはナムコフランスのゲームセンターでプレイする事により、ストレス解消を図り、
倦怠感を解消させます。この方法の長短は以下の通り。
長所:1と違い、その日1日のプレイで全ての練習の倦怠感を解消します。
   また判定により他人と交流できる可能性あり。
   (アタリとナムコでは若干異なりますので、機会を見つけて知ってそうな人に尋ねてください)
短所:プレイ代金がかかります。具体的には2× 50 フラン。

三、友達と遊ぶ
 仲の良い人達と遊ぶ事で、ストレスを解消します。遊びには外で遊ぶ事と家でテレビゲームをする事の2つがあります。
(電話をしてからどちらにするか尋ねられます)

三の一:外遊び
長所:相手との関係進展チャンス、練習項目のうち1つ分の倦怠感が解消される
短所:選択肢によってはマイナスになりうる
三の二:テレビゲーム
長所:相手の得意ジャンル選択により好印象が得やすくなる、また練習項目のうち2つ分の倦怠感が解消される
短所:ゲーム機を持っている家でないと選べない、能力が下がるおそれあり

なお、ゲームソフトはアタリフランスにて1本160フランで購入できます。
(80年代前半のゲームソフト平均価格は20〜30ドルであり、83〜85年の交換レートは1ドル8フランとしているため)

467 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/17(金) 22:44:45 ID:BJFd4I9w
これまでのように物語は1月4週、1週分を最低単位として進んでいきます。
1週間の行動コマンドは以下のように進みます。

学校内⇒練習時間⇒自由時間

3つのフェイズを1つずつ行っていく形になります。練習時間についてはこれまで通りですので、
「学校内」と「自由時間」についての変更を説明いたします。


T.学校内

@自分の教室、A上級生の教室、B下級生の教室 C音楽室、D情報室、E校庭、そして
F誰とも会わずまっすぐ帰宅

のどれかを選ぶ、Fを選んだ場合、2分の1の確率で練習時間か自由時間のどちらかをもう1回多く利用できます。
それ以外の場合は、その場所にいるであろう人と交流を行えます(誰もいない場合もあります)。
場所によって会える人が変わってきますし、複数の箇所で会える人もいます。


468 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/17(金) 22:46:50 ID:BJFd4I9w
U.自由時間

これまでは、
A サッカーの練習に出かける
B パリのどこかに出かける(さらに分岐)
B1 所持品を使う・持ち歩く(さらに分岐)

となっていますが、簡略化の為B1は廃止します。所持品は原則常日頃持ち運ぶものとし、
明らかに持ち運びが不自然なもの(冷蔵庫を持ち運ぶなど)は事前にその旨を伝えます。
そしてBを選んだ後についてですが、

A 日本人学校
B 天ケ瀬家
C ヴォルテール通り
D ル・エスト
E 【アタリフランス(早川家)】
F 【双海家】
G 如月家
H 15・16区周辺を散歩する
I1 15・16区以外の散歩(要行き先の記述。
            これが採用された場合、この週の日常生活は選択できなくなります)
I2 15・16区以外の散歩(要行き先の記述。交通機関(註)を利用します)
J その他、自由回答(要2票)

現状の選択肢のうち、日本人学校とヴォルテール通り、I1とI2の選択肢は廃止いたします。
代わりに「無間神社」と「ナムコフランス」を追加し、如月家は電話での事前確認が可能になるものとします。
(学校に通い担任から連絡表を渡される形でクラスメイトの住所と電話番号が伝えられる)
また、Hは「15・16区周辺を散歩する」から「居住地域周辺を散歩する」に変更します。

469 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/17(金) 22:52:09 ID:BJFd4I9w
変更後の選択肢は以下のようになります。

A 【天ケ瀬家】
B ル・エスト
C 【アタリフランス(早川家)】
D 【双海家】
E 【如月家】
F 無間神社
G ナムコフランス
H 居住地域周辺を散歩する
I その他、自由回答(要2票)


以上で変更内容についての報告を終わります。多くの変更を行ったため、どこかで
齟齬があったり変更内容を忘れてしまうかもしれませんが、その際はどうか遠慮なく
ご指摘をお願いいたします。

それでは次回より、物語を再開いたします。なにとぞもう少しお待ちください。

470 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/25(土) 17:21:30 ID:29osmXDg
設定の追加、83年10月現在のアタリ2600の価格は1200フランとします。
カセット(1本160フラン)と並んで岬君の収入源となりうるものとなりますので、覚えておいてください。
詳細はスレ主によるツイートを御参照願います。

https://twitter.com/sc3loyupbCmTqIC/status/1132197229702180864

あと、これは最近になってようやく気付いたのですが、アナザーカンピオーネの作者様が
物語のネタ帳を公開してくれました。

http://capmori.net/test/read.cgi/morosaki/1398138423/959-983

Twitterでも色々と三杉君に対する思いを綴っていますので、よければこちらもどうぞ。

https://twitter.com/irumi_inoldays

岬君の物語についてはただいま執筆中であり、明日には投稿できるかと思われます。
なにとぞもう少しお待ちください。

471 :森崎名無しさん:2019/05/25(土) 20:22:56 ID:???
三杉「こ、これが特製ブルガリアヨーグルト!」

特製ブルガリアヨーグルトがあれば三杉も大復活!

472 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/26(日) 12:02:44 ID:QYGgiLiY
>>471
一口食べれば心臓病も治り、ZEROシステムの洗脳も解け、
ついでに身長もグングン伸び視力も回復し異性にもモテモテ、
そんな現代の霊薬こと、ブルガリアヨーグルト!……なんてなりそうな勢いですね。
ル・エストあたりで導入した方がいいのかなあ。


さて……


ついに!キャプテン岬本編がはじまりました!
これまでの計1スレ半を費やした展開はほんのプロローグ。
これより本番、岬太郎君の物語が本格的にはじまりまーーーーーーーーーーーーーーーーす!

473 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/26(日) 12:04:57 ID:QYGgiLiY
   第1章 パリ留学編 
     第1部 日本人学校
       第1話「岬太郎の入学、そして入部」



岬「日本からやってきました、岬太郎です。よろしくお願いします」

昭和58年10月3日、ようやくパリ日本人学校へと入学する事ができた。
転校は今まで数え切れない程繰り返してきたが、今度ばかりは違う。
遠い異国の地という事もあるが、これから何年もの間ここが根城になるのだ。絶対にヘマはできない。
幸い、ワイワイガヤガヤと新参者をネタにしゃべるクラスメイト達に、警戒の色は見られない。

夕子「この人が、如月さんの弟君を助けたの」
千早「ええ、私の目の前でね。岬君がいなかったらどうなってたか。感謝してもしきれないわ」
夕子「そうなんだ、男の子ってスゴイんだなあ……」

クラスメイトの一部からは尊敬のまなざしさえ投げかけられている。優を助け出した事はあえて学校には伝えなかった。
上から「偉業」として讃えられるよりも、コミュニティ内の口コミを通した方が
自然に、変な邪推が入る事なく伝わってくれるだろう。
そうして自己紹介も終わって指定された席に座った後、丸山先生が皆へと話しかけてきた。

丸山「さあ、新しく入ってきた岬君への説明も兼ねて、新校舎引っ越しの件について話をするわね。
長い事決まらなかったけど、ようやく決まりました」

丸山春子先生はそう告げた後、黒板の方を向きチョークで描きだし始めた。
この先生はあずみや聖薇、千早の母親と同じか少し若い位の年頃、ふんわりとしたパーマに血色の良い丸顔、
そしてハキハキとした声で、いかにも元気そうだという印象の先生だ。

474 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/26(日) 12:06:50 ID:QYGgiLiY
その先生がカツカツと亀の甲羅のようなパリ市地図を描き、その内の一点にグリグリとチョークを押し付ける。
位置からしてこの日本人学校を指しているのだろう。そこから左下に手を動かして左端の出っ張り、
位置と大きさからみていつも練習に行くブローニュの森だろう。そこを通り抜けてちょうどパリの外へ出た所で再び手を止め、
またもチョークを押し付けて点をつけてから、こちらを向いて話しだした。

丸山「この学校はみんな知っての通り、昔の貴族のお屋敷を手直しして出来たものです。
   ですからここに大勢通うようになってきてからスペースが手狭になってきました。そこで来年4月から
   中学部の皆さん、つまりここにいるあなた達6年生から上は全員、
   ここから引っ越して別の場所に通ってもらう事になります」

引っ越しという言葉を改めて聞いて、周囲はざわつきはじめた。大人はとっくに忘れてしまっただろうが、
僕ら子供は月1度の席替えが少なくとも前後3日はおしゃべりのネタとなり、
年1度のクラス替えでは友達と離れ離れになってしまうと、
学校にベルリンの壁でもできたかのごとく嘆き悲しむ人が出る人種である。
そんな子供人達が一生に一度もないであろう学校替えという一大イベントを前に、心穏やかでいられるはずもなかった。

丸山「はいはい静かに、いよいよお待ちかねの新校舎発表なんだから、うるさくして見逃さないようにね」

パチリと茶目っ気たっぷりにウィンクを飛ばした後、最後に点打ちした場所を指でたたきながら、発表した。

475 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/26(日) 12:08:51 ID:QYGgiLiY
丸山「みんなが気になる引っ越し先はココ!ブローニュの森の隣、パリ市の境にあるシュレンヌのマンションに移りまーす!
   そのマンションの写真がこちら!」

ハイテンションになりながら、机の上に置いたA3程の紙を掲げ、校舎と思われるマンションの姿を皆に見せる。
そこに見えるマンションはお洒落というかなんというか、語彙が足りずに上手く表現できないのがもどかしくなるが、
センスのいい建物、いや建築物だった。

丸山「このマンションの幾つかの部屋を間借りして学校にしますから、皆さん住んでいる人達にお行儀よくしなさいね。
   この新学校は遠い所にありますから、学校への登下校はバスを使う事になります。集合場所は決まり次第また伝えます」

バス通学ときいて再び教室が騒がしくなる。楽が出来ると喜ぶ子や金持ち気分に浸る子で賑わっていたが、
僕は何か引っかかるものを感じて、聖薇の方を向いてみた。

相手の方から見て死角となる位置から眺めていると、聖薇は先生に向かいほんの一瞬、
ざわめきを乱さない程度に軽くであったが、頭を下げる姿が見えた。

岬「(お辞儀、か。母親を通じて、いや母親が働きかけてくれたんだろうか)」

想像の通りならあの母親は相当な有力者という事になり、そうなれば早乙女電子の社長だったという話も
単なるホラ話ではないかもしれないという事になるが、遠くからのぞき見るだけで真相が分かる訳も無く、
引っ越しの話は終わって授業へと移っていくのであった。

476 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/26(日) 12:14:34 ID:QYGgiLiY
*岬による人助けが口づてに伝わっていった事で、岬に対する感情値が以下のように変化しました。
(あずみ、聖薇、千早は既に知っているため変化なし)

天ヶ瀬(5→6)
サッカー部員共通(5→6)
夕子(4→5)
絹代(4→5)
直(5→6)
亜美(5→6)
真美(5→6)



天ヶ瀬「来たか、岬が来るのを今か今かと待ってたぞ!」
あずみ「待ってたぞー!」

放課後、自分が所属する部活動を決めるべく、サッカー部の臨時部室に入ると、
ドアの前で天ケ瀬とあずみちゃん、そしてサッカー部の部員達が大賑わいで出迎えてくれた。

丸山「あらあら、すごい歓迎ぶり。これなら1回位は勝てるかもしれないわね」

後ろでこの光景を微笑ましく見守っているのは、僕らの担任丸山先生。学業終了後に彼女から部活動選択について教わった後、
方向が同じという事でついてきた人だ。この反応を見る限り彼女がサッカー部の顧問なのだろう。
主要人物3人がうっかり八兵衛で成り立っているような部に一抹の不安を覚えたが、
そんな事には気にもかけずに先生は僕達を部屋の奥へと誘導していき、備え付けの黒板の前に立って話し始めた。

丸山「全員集まったところで、岬君への連絡を兼ねて今後の目標を確認するわね。当面の目標は周りの
   同年代フランス人学校のチームと戦って1勝する事。これは岬君の参加と早川さんの復帰で勝ち目が見えてきそうだから」
   置いておく事にして、これから来年の、84年8月の西ドイツはハンブルグで開催される
   日本人学校対抗親善試合大会について話すわ」

477 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/26(日) 12:16:23 ID:QYGgiLiY
岬「(ハンブルグというと、たしか若林が留学に行った場所のはず。もしかしたら会えるかな)」

丸山「このパリの他に今回は5校、ベルギーのブリュッセル校にオランダのアムステルダム校、
   西ドイツのハンブルグ校とデュッセルドルフ校、そしてイギリスのロンドン校とトーナメント形式で戦う事になるわ。
   この中で気を付けるべきはアムステルダムとロンドンの2つ。これはアムステルダムの先生から聞いた話だけど、
   あそこには日本で活躍した子が多数入ってきてるそうで、オランダの同年代の子達ともいい勝負が出来ているというわ。
   そしてロンドンの方だけど、これについては天ケ瀬君」

天ヶ瀬「はい」
丸山「あなたの口から語ってくれた方がいいわね。あなたが直接、脅威を目の当たりにしたんだから」
天ヶ瀬「分かりました」

顧問からの要請に従い、体育座りをしていた天ケ瀬が立ち上がり、先生の代わりに僕らへと向かい合う形で、話し始めた。

天ヶ瀬「親父の仕事の都合で今年の夏休みはイギリス中を巡っていたんだが、ロンドンの公園で見かけたんだ。
    日本人の、岬位の子供が明らかに年長の、高校生ぐらいの年頃とガタイのイギリス人を何人も相手にして、
    ある時は抜き去り、またある時は対格差を物ともせず吹き飛ばしていたんだ。あの切り返しとパワー、
    ひょっとしたら岬よりも強いかもしれない」
岬「(僕よりも?それは相当な相手だな、一体誰……)」

478 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/26(日) 12:19:05 ID:QYGgiLiY
天ヶ瀬「だが、俺の目に止まったのはイギリス人相手に圧倒した奴の表情だった。
    ほほ笑んでいるはずなのに感じられる残忍ぶり、必要とあらば顔色も変えず妊婦の腹を引き裂けるような感じの、
    遠くから眺めて恐怖を感じたのは初めてだった。あの白髪は夢に出てきそうだ……」

岬「(残忍?小次郎なら容赦はないだろうけど、イギリスまで留学できるとは思えないしなあ。
   それに白髪って、誰なんだろ?)」

天ヶ瀬「俺からは以上だ。先生、もう戻ってもいいですか」
丸山「ええ、ありがとう。さて、これで親善試合については終わりだけれども、何か質問はあるかしら」
岬「(質問か、何を訊こうかな)」



A ロンドンの謎の少年について尋ねる
B アムステルダムのチームについて尋ねる
C 周辺のフランス人学校のチームについて尋ねる
D その他、自由回答(要2票)

1票入った選択肢で進行します。メール欄を空白にして、IDを出して投票してください。

479 :森崎名無しさん:2019/05/26(日) 12:23:45 ID:GP1JbSMQ
C

480 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/26(日) 12:29:51 ID:QYGgiLiY
何を聞き出そうか考えているところで、今日はこれまでといたします。
ちなみにこの丸山先生はスレ主創作のオリキャラという訳ではなく、昭和版アニメ『キャプテン翼』にて
翼や石崎達の担任となった、アニメオリジナルキャラクターになります。
埋もれてしまったキャプつばキャラの掘り起こしも、このキャプテン岬の目的の1つでもあります(爆)


Twitterでも彼女について画像付きで記しておりますので、もし興味のある方はこちらをどうぞ。
https://twitter.com/sc3loyupbCmTqIC/status/1124278960894775297

岬君が通う学校や転校先についてもTwitterでつぶやきますので、良ければこちらもどうぞ。
https://twitter.com/sc3loyupbCmTqIC

481 :森崎名無しさん:2019/05/26(日) 13:51:21 ID:???
ということは昭和版アニメ『キャプテン翼』のオリジナルキャラ東一中の小野田も登場するということでしょうか?

482 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/05/26(日) 19:45:40 ID:QYGgiLiY
>>481
恥ずかしながら今こうして指摘されるまで、小野田君の事を知りませんでした。
調べてみると彼についての関心がむくむくと湧いてきたので、彼の登場を前向きに検討したいと思います。
ただ、スレ主の想像や願望も交えたものになるため、皆様のイメージとはずれた人物像になるかもしれませんが、
そこのところは何卒御了承願います。

483 :キャプテン岬 ◆ma4dP58NuI :2019/06/02(日) 21:58:05 ID:JIgFu7NU
今週の投稿はお休みさせてください。

484 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/08(土) 19:31:17 ID:t0TyXqb6
C 周辺のフランス人学校のチームについて尋ねる
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
岬「(親善大会の事は、後で訊こう)」

近隣学校の状況を尋ねる事に決めた。今日明日にでもあるかもしれない現地人との初交流を少しでも有利にしたいという思惑が……

天ヶ瀬「……」

目と目が合う、瞬間ウソをひっこめた。いや確かにそう言う意図もあったが、それ以上に今目の前に見える
天ヶ瀬の表情に目が行く。顔が引きつっていて、とても遠くで見ただけのようには見えない。

岬「(迂闊に話しかけたらとばっちりまで来るかもしれない。気にはなるけどここは話題を変えよう)
   先生、よければ今このあたりの他の学校について、教えてもらえないでしょうか」

丸山「あら、大会に興味が向くかと思ったけれど。まあいいわ、教えてあげます」

そう言って先生は手元に持っているノートを開いた後、ノートと黒板を見比べながら、
チョークでポジションと能力値について書きだしていった。


★フランス人中学校生の平均的フィールダー能力★
ポジション/左から順にドリブル・パス・シュート・タックル・パスカット・ブロック・せりあい値
FW/16、16、14、12、10、10、12、合計90
MF/15、16、13、12、11、11、12、合計90
DF/13、12、12、14、13、13、13、合計90
GK/12(せりあい)、17(パンチング)、15(キャッチ)

丸山「ガッツは全員600、これはうちも同じぐらいね、早川さんは500より少し多いぐらいだけど。
   フランス側の戦力は私が何年もの間サッカー部の顧問やってきて、何十回も観察した結果だから、信用しても大丈夫よ」

485 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/08(土) 19:32:24 ID:t0TyXqb6
丸山「そして、うちのところはこんな感じ」

★我らが日本人学校のフィールダー能力★
●FW
・中江/12、11、13、11、10、8、9、合計74
・秋山/12、11、13、11、10、8、9、合計74
・あずみ/15、11、15、13、9、11、11、合計85
●MF
・渋沢/12、12、11、12、10、8、9、合計74
・黒田/12、12、11、12、10、8、9、合計74
・永井/12、12、11、12、10、8、9、合計74
・天ケ瀬/14、13、15、14、13、14、14、合計97
●DF+GK
・西園寺/10、11、8、12、11、11、11、合計74
・大杉/10、11、8、12、11 、11、11 、合計74
・金子/10、11、8、12、11 、11、11 、合計74
・藤田/10、11、8、12、11 、11、11 、合計74
・塩野/12(せりあい)、13(パンチング)、11(キャッチ)


岬「(うわあ、やっぱり)」

予想はしていたが、周囲との実力差は大きい、2周りも差を付けられているとなると、
天ヶ瀬とあずみちゃんが頑張ったところで勝利できなかったはずだ。

岬「(けど、僕が入れば話は違う。この位なら僕の立ち回り次第で試合をものにする事ができるはずだ)」
丸山「さあ、話はこれで終わり、早速練習に向かうわよ」

486 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/08(土) 19:33:31 ID:t0TyXqb6
             第2話『ならず者蹴球部隊との賭け』


部室で説明を受けてから数十分後、僕達はブローニュの森のシュッセ運動場へと来ている。

丸山「ふーう、ようやくついたわねえ。運動場も空いてるし、今日はちゃんと練習できそう」
岬「(今日は?それに『ちゃんと練習』って)」

これまでに何度か訪れた時のように、運動場には僕達以外の人達が何人もいて、思い思いに体を動かしている。

岬「(人の入り具合で満足に練習もできないって事か。やっかいな……)」
???「おーす、負け犬ども!」

ふと後ろからガラの悪い声が投げつけられる。振りむくと髪は金、瞳は青、こちらの先輩方と同じ年頃のフランス人達が、
どう見ても友好的には見えないニヤケ顔を浮かべてこちらに近づいてくる。

ならず者A「ちゃんとバカンス中にサッカーしてたかあ?2カ月もあれば少しはマシになっただろ?」
ならず者B「いいかげん上手くなってもらわねえと、こっちまで鈍っちまうんだよ。他との試合で負けたらテメエらのせいだな」
ならず者C「ま、今回もムリじゃねえの?最後に試合したときなんか、怖じ気ついて何人もここに来てなかったからな!」

487 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/08(土) 19:35:24 ID:t0TyXqb6
ならず者D「今も女まで呼ばないと人数そろわないみたいだしな、もう戦うまでもないだろ、ハハッ!」
あずみ「なによ!言わせておけば」

殴りかかろうとしたあずみちゃんを、手首を掴んで制止した後、先生の顔を見てみる。
これ程険悪な空気が漂っている中、先生の顔に怒りや怯えといった類の表情にはなっておらず、
先程と変わらぬ平然とした顔で異国のならず者達を見すえていた。

天ヶ瀬とあずみちゃんは憎々しげな顔でならず者達を睨み、それ以外の人達はどこか気圧された自信のない顔つきで、
心持ち視線が下に向きながら押し黙っている。
ともあれ互いに沈黙しながら向かい合う形になった。と思ったのだが、
相手からの天ケ瀬を指して叫んだ爆弾発言で、状況は動き出した。


ならず者E「ハハハハハ!思い出したぞコイツ!ロンドンで恥をさらしたポンコツだぁ!!」
天ヶ瀬「んなっ!」

思わぬ言葉に目を見開いた後、苦虫を噛み潰したような顔へと表情が染まっていく。
相手は天ケ瀬の感情を気に掛けるはずもなく、ペラペラと暴露していく。

ならず者F「マジかよ!そいつぁダッセーな!」
ならず者E「そうそう、マジマジ!それもよ、最後なんかゴール飛び越える位吹っ飛ばされたんだぜ!
      その程度の実力じゃ、また俺達の勝ちは圧勝で決まりよ!」
岬「(年下に吹っ飛ばされた!?これは相当な実力者だ、日本以外にもこれ程のプレーヤーがいるのか)」

488 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/08(土) 19:37:14 ID:t0TyXqb6
天ヶ瀬の醜態が口に出されるにつけ、彼らから楽勝ムードが目に見えそうになる程になっている。
そんな彼らから発せられた言葉が、僕にひらめきをもたらしてくれた。

ならず者G「今日は俺、チョーシいいんだ、ハットトリックいったら100フランな!」
ならず者H「バカ言え、ハットトリック決めるのはオレだ。お前より先にハット決めるのに200賭ける」
ならず者I「今日はDFでも決められそうな気がするぜ!オレが決めたら……」


岬「いいかげんにしろっ!」


反射的に体が突き動いた、ように勢いよく彼らの前に飛び出す。
賭け、それに金額。これら単語からあるアイデアが浮かんできた。

ならず者I「見ねえ顔だな、テメエはだれだ?」
岬「岬太郎、日本人学校のサッカー部員だ!僕達は君達にいつまでも負け続けるだけの存在じゃない!」
ならず者I「ナマいってくれちゃって、新入りらしいから教えてやるよ。
      こいつらはオレらに負けて負けて20連敗、敗北率150%よ!試合が終わって負ける100%に、
      後半はじまる前から負けが見える50%!お前らはせいぜいオレらのカケ用道具がおにあ」
岬「なら今度は僕と賭けろ!」

ノッてきた。敵方の他の仲間も賭けを制止する様子も見られない。
激しい怒りの顔を叩きつけながら、僕は宣言する。

岬「僕の手持ちは400フラン、全財産鍵集めれば1000はある。
  今度勝負して負けたら全部、お前達にくれてやるっ!お前達も口だけじゃないなら賭けてみろ!」
ならず者A「言ってくれるじゃねえか、いいぜ」

489 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/08(土) 19:38:51 ID:t0TyXqb6
集団の後ろにいたならず者が鷹揚に声をかける。周りが異議を唱えないところから見て、この少年がキャプテンだろう。

天ヶ瀬「お、おいみさ」
ならず者A「ただし!せっかく賭けてやるんだ、もっと儲からないとな。1000じゃ1人頭100フランにもなりゃしねえ、
      そうだな、2200出せば相手してやろうじゃねえか。受けなかったら
      お前らの弱虫ぶりケチぶりをパリ中に広がるから覚悟しておけ」
丸山「はいはい、そこまで」

僕と相手との口論を先生がさえぎった。右手には開ききったノートを手の平いっぱいに広げて支えている。
左手は手のひらを地面から見て垂直に立てていて、キリスト教徒が聖書を前に宣誓するような身振りで、僕らに告げる。

丸山「エキサイトするのはサッカーだけにしなさい。あなた達、賭け試合する気ね」
ならず者A「ああ、そうだ。悪いか」

他校とはいえ先生相手に悪びれもせず答えた。この分だとこの手の金のやり取りは慣れっこになっているのだろう。
先生はそんな横柄な態度には全く関心なしといった風らしく、顔色も変えずに言葉を返す。

490 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/08(土) 19:41:00 ID:t0TyXqb6
丸山「約束を守らなければね。守る分には、借りた金を返すため金策に走り回って返済するのも、良い社会勉強になるから」
ならず者A「ほーお、毎日の勉強や勝てないサッカー部の練習だけじゃなく、
      世の中の仕組みまで学ばせるとは、教育熱心な先生ですなあ」
丸山「御託を並べてないでここに書きなさい。あなた達の氏名と学校名、賭ける金額を記す事。
   もし裏切っておかしなマネをしたら、あなた達の先生に伝えるべき事を伝えるだけよ」
ならず者A「へっ、チクってうやむやにしようってか?」
丸山「大丈夫よ、約束を守る限りそんな事はしないわ。それに」

先生は懐に手を入れ、1枚の赤みがかった紙切れを取り出し、ならず者達に見せつける。

丸山「あなた達が勝ったら、私が1人分200フラン、合計2200フラン出しましょう。岬君の分と合わせて3200フラン、
   賭け金が多い人が多くもらうようにしなさい。ま、負けたら関係のないこ」

「3200フラン!」

フランス側メンバーの誰かが叫び、それ以外のメンバーも色めき立つ。無理もない、
フランスでも細々と流通し始めた日本の漫画が何十フランもし、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで
買っていく子供としては、山分けとはいえ3200フランとは山のような大金だ。

491 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/08(土) 19:42:37 ID:t0TyXqb6
ならず者B「言ったな、後悔するなよ!」
丸山「出なかったら学校に訴えるなり警察に行くなり自由にしなさい。
   それより私達がここまで出す以上、あなた達も賭け金はそれなりに持ってこないとね」
ならず者B「当然よ!お前らとは物持ちが違うからな」
ならず者C「どうせ勝つんだ、気前のいいとこ見せてやるぜ!」
ならず者D「みんなわりい、オレハットトリック決めるから、1000フランぐらいもらっちゃうわ」
ならず者E「ちょうど昨日、小遣いが入ったんだ、取り分が増えるぜ!」
丸山「はいはい、受け取りたかったらここに記入しなさいね」

やいのやいの、既に勝って賭け金を受け取ったかのような高揚した様子で、敵方は湧き立ち
喜び勇んでノートに名前と賭け金を記帳していく。どれくらいの額になったかというと……


先着で、
★クレベーユ ! powerフラン
セルビー ! powerフラン
デュイソン ! powerフラン★

★ギュイーズ ! powerフラン
モンモランシー ! powerフラン
テナルディエ ! powerフラン★
(続きます。次のレスを投下するまで投稿は行わないでください)

492 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/08(土) 19:44:25 ID:t0TyXqb6
★ブリュイ ! powerフラン
マルタン ! powerフラン
ピラーグ ! powerフラン
ブーアン ! powerフラン
ギャロス ! powerフラン★

と書き込んで下さい。!とpowerの間のスペースは埋めてください。
投票チャンスを増やすため、投票は1人1項目(★〜★)でお願いします。




岬君が儲けのタネを見つけ、丸山先生が賭け試合を了承したところで、本日はこれまでと致します。
岬君の算段については次回か次々回でもう少し詳しく説明します。
なお、再来週の投稿についてですが、松山光・三杉淳誕生祭の準備と私事により、投稿ができないかもしれません。
投稿できないと確定した時点でお知らせしますので、なにとぞご了承ください。

493 :森崎名無しさん:2019/06/08(土) 20:22:18 ID:???
★クレベーユ  231 フラン
セルビー  454 フラン
デュイソン  13 フラン★

494 :森崎名無しさん:2019/06/08(土) 20:44:31 ID:???
★ギュイーズ  315 フラン
モンモランシー  419 フラン
テナルディエ  358 フラン★

495 :森崎名無しさん:2019/06/08(土) 20:48:26 ID:???
★ブリュイ  742 フラン
マルタン  537 フラン
ピラーグ  813 フラン
ブーアン  432 フラン
ギャロス  409 フラン★

496 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/16(日) 12:28:43 ID:DNkmwWcQ
★クレベーユ  231 フラン
セルビー  454 フラン
デュイソン  13 フラン★
★ギュイーズ  315 フラン
モンモランシー  419 フラン
テナルディエ  358 フラン★
★ブリュイ  742 フラン
マルタン  537 フラン
ピラーグ  813 フラン
ブーアン  432 フラン
ギャロス  409 フラン★
⇒合計4723フラン
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
岬「(……凄い額だ)」

次々と書き入れられる金額が目に入り、ゴクリとつばの音がのどに響く。
周りに聞こえてはいないかと、ヒヤリとさえしてしまった。

岬「(4723フラン。円にすると10万円以上だ。これをそっくり手に入れてしまえば、何年もの間お金に困る事はなくなるだろう。
   巻き上げる前に『ほんのわずかな差で負けてしまった』と感じるように上手く勝てば、
   相手は負けを取り戻そうとムキになって挑戦し続ける。
   後は時々負けてやっていけば、少なくとも半分は手元に残せる、
   そして収益を今以上に増やす事だってできるはずだ。問題は)」

僕の横や後ろで先生とならず者、そして事の発端たる僕をチラリチラリと交互に視線が飛び交っている。

497 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/16(日) 12:30:52 ID:DNkmwWcQ
岬「(『お前のせいで大変な事になった、どうしてくれる』と言いたげな
    この先輩達をやる気にさせないといけないんだよなあ。そしてやる気を出させた後は、
    なるべく少ない分け前で満足してもらわないと。そのためには)」

協力者が必要だ。金儲けのシステムを維持し、自分の存在を分かりづらくする存在が必要となる。

岬「(でもその前に)」

賭け試合の話が一通り決まってからだ。幸い取り決めは先生が滞りなく進めてくれている。

テナルディエ「……っと、これで終わりだ。金の調達もしなきゃならんだろ、5日後の9時か10時、この運動場で試合だ。
       雨が降ったら立ち合いの元、延期するか決める。これでどうだ」
丸山「そうね、こっちも問題ないわ」
テナルディエ「そうか、じゃ、決まりだ。忘れずに来いよ、金づるさんよ、じゃあな!」

試合の取り組みが彼らと先生との間で締結され、彼らは運動場から去っていった。
その先生は残った僕らの方に向いてわざとらしく咳をする。
皆催眠術から覚めたかのようにハッとした顔になり、口々に先生へ苦情を申し立てた。

渋沢「先生、いくらなんでもあんまりですよ!勝手に決めるなんて!」
大杉「俺達あいつらに20連敗してるんですよ!20連敗!」
西園寺「だいたい岬の奴が勝手に……」

パアン!

先生が勢いよくノートを閉じた。予想外の動きに皆がたじろぐ瞬間、語った。

丸山「これで、勝つしかなくなったわね」

498 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/16(日) 12:32:10 ID:DNkmwWcQ
フフンと笑みを浮かべながら、挑発的に言い放つ。

丸山「なあにその顔、そんなに負けたがってるのかな」

煮え切らぬ顔で黙る先輩達に、さらなる挑発を重ねてきた。
そこまで言われてさすがに思う所があるらしく、少しずつ口を開きはじめる。

永井「いや、自分達だって負けたくないですよ。でも」
大杉「いくら練習しても勝てないし、これ以上こっちから恥をさらしたくないです」
西園寺「少し周りより上手いからって、思い上がりもたいがいに……」


天ヶ瀬「いいけげんにしろテメエら!」


ブローニュの森にまたも怒号が響く。公衆の面前で辱めを受けてから沈黙していた天ケ瀬が、沸騰している。

天ヶ瀬「テメエら全員サッカーやめちまえ!頭踏みつけられて当然みたいな顔しやがって!
    俺は1人になっても、アイツらに頭を下げはしないぞ!」
丸山「そこまで」

激昂したサッカー部部長の口に人差し指をそっと当てて制止した後、先生が宣言する。

丸山「騒いでも何しても、約束をした以上試合は行います。
   確かにこれまで負け続けてきた相手ですが、嫌だからといって私達が無様なふるまいをさらすと、
   異国の人達は私達だけではなく、日本や日本人全体をさげずむようになります。
   何より、あなた達は以前に比べ成長しました。臆する事がなければ必ずいい勝負ができると、私は信じています」

そこまで語った後、ことさらに声を張り上げて、さあ練習をはじめましょうと呼びかける。
先輩達の動きは重く、迷いが身体に反映されているのがありありと分かった。

499 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/16(日) 12:33:26 ID:DNkmwWcQ
岬「(いい展開だ)」

練習終了後のクールダウンの体操を行いながら、開始前の展開を振り返っていた。

岬「(先生や天ケ瀬が目立ってくれたおかげで、非難の矛先が僕以外に向かってくれた。
   これで先輩達への手間は少なくなって、その分を協力者の方へ注ぐことができる。)」

練習が終わって全員運動場から去り、ブローニュの森から抜け出て、自宅位置を基にした集団帰宅班を作った後で解散し、
他の人達がいなくなり目当ての相手と2人きりとなったのを見計らい、声をかけた。

岬「あずみちゃん」
あずみ「ひゃっ!な、なによ!」

心ここにあらずだったらしく、呼びかけに驚きすっとんきょうな声を上げていた。

岬「ごめん。ちょっと相談したい事があって」
あずみ「そ、相談?えっとあの」
岬「練習前の、あのこと。僕が意地を張って迷惑をかけちゃったあの事について、思うところがあるんだ」
あずみ「あ、あの、その事だけど、ちょっといい?」

あずみちゃんの方も思うところがあるらしい。僕が本格的に話へ入ろうとする前に、相手の方から
話しかけてきた。協力者候補が話しかけてきた内容は、以下の通りだった。

500 :キャプテン岬の人 ◆ma4dP58NuI :2019/06/16(日) 12:34:46 ID:DNkmwWcQ
先着で
★あずみの発案 ! card★
と書き込んで下さい。スートで分岐します。!とcardの間のスペースは埋めてください。

JORER:ダイヤ・ハート+ あずみ「あ、あの……あの時の岬君、カッコよかったよ……」
ダイヤ・ハート:スペード+あずみ「今度また、一緒に練習しない?あたし、絶対に勝ちたいの」
スペード:クラブ+あずみ「あたし、岬君達の役に立ちたい。明日の夜8時に、うちに来てくれる?」
クラブ:あずみ「あたし、いいお金儲け思いついた!」岬「(おっ、これは話が早く済みそうだ)」



そろそろあずみに協力をという前に相手から話があった、というところで今日はこれまでにいたします。
なお、来週は松山光・三杉淳誕生祭への準備のため、投稿は休ませてください。
何を作ったか見たい方は、こちらのTwitterをどうぞ。

https://twitter.com/sc3loyupbCmTqIC

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