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1- レス

【SSです】幻想でない軽業師


[298]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:16:20 ID:???
さとり「(そう、私はもう十二分に活躍が出来ました……)」

さとりの心中では、まだ、これ以上を望む気持ちは当然ながらある。
何故なら、彼女はまだ反町一樹に一度として勝っていない。
選手個人としても、チームとしても。

幻想郷三大キーパーという称号如何はともかく、ある程度の権威は回復出来たとはいえ――。
未だに彼女自身はリベンジを果たせていないのだ。
本音を言えばそのリベンジの機会が欲しい――その為の、強くなる土壌が欲しい。
ただ、それは出来ない。 省64

[299]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:17:23 ID:???
さとり「……そういえばこいしはどうしたのかしら?」

そう、つい先ほどまで考えていた――最愛の妹、こいしの姿が見えない。
いや、見えないのはいつもの事だ。何せ無意識を操る彼女――完全な視覚外から出てきて驚かせるのは日常茶飯事。
ただ、この場――大事な話があるからと言い聞かせていたにも関わらず、姿を見せないというのは変である。
あの大会から帰ってきてからも、今まで以上に姉妹仲が深まっていた古明地姉妹。 省52

[300]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:18:43 ID:???
呆気らかんと言うこいしに、さとりは思わず眉を潜める。
もう聞いた――つまり、恐らくは、こいしはきっと最初からこの場にいたのだろう。
そしてさとりがサッカー留学の話をすると共に、この部屋を出て行った。
無意識を操るこいしだ。姿を現さないだけでなく、誰にも感づかれず部屋を出て行く事など造作もない。
それ自体は問題では無い。問題は――何故そんな事をしたのか?という事だ。
省53

[301]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:20:03 ID:???
さとり「あ、あのねこいし……貴女、何を考えてるの」
こいし「何ってお姉ちゃんの代わりに地霊殿を管理するんだよ! 大丈夫大丈夫、まっかせて!」
さとり「………………」
おくう「流石こいし様! うにゅう、私もお手伝い頑張ります!!」
お燐「いや、いやいや……ちょっと待ちなよおくう」

簡単に言ってのけるこいしだが、さとりから見てみれば無謀極まりない。
というか、屋敷の管理という仕事を甘く見ているのではないだろうか、と感じてしまう。 省72

[302]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:21:13 ID:???
やらなければならない事は、数えだせばキリが無い。
1つ思いつくとまた1つと仕事を思い出すさとりを横目で見ながら、お燐はこいしを諭すのだが……。

こいし「そだねー、私1人じゃ難しいかも。 でもね」

ガチャッ!!

こいし「みんなが力を貸してくれるって言ってるから、大丈夫だよ!」

言いながら、こいしは自分が入ってきた扉を思い切り開いた。
そこから入ってきた――否、なだれ込んできた一団を見て、一同は目を丸くして驚く。
省5

[303]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:22:35 ID:???
そこにいたのは、地霊殿の誇るぬいぐるみ型ペット――ウサコッツ。
愛らしくとてとてと歩きながらさとりに対して語り掛ける一方、
その後ろからは更に続々とさとりが所有するペット達がさとりに声をかける。

デビルねこ「僕もまだちょっと体の調子が悪いけどさとり様の為に頑張るよ〜」

生活習慣病を患いながらも、健気にさとりの後押しをするデビルねこ。

Pちゃん・改「………………」

何も言わず、無垢な表情でさとりを見つめるPちゃん・改。
省13

[304]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:23:42 ID:???
「俺が本気出したら2人分の穴埋めくらい軽い軽い、マジで」「空姉さん達とも協力してやってきますから安心してください!」
「くっそー、俺もキャスト・オフ(羽化)出来たらなぁ……」

アリジゴク型のペット、セミ(幼虫)型のペット、更には何故か剥かれて調理される寸前のエビ型のペットまで。
他にも多くのペット達が口々にさとりの留学を願い大挙して部屋へと押し入っていた。
これにはさしものさとりも驚いたものの――一番の驚きは、彼らの言っている言葉が心の底からのものであるという事。 省49

[305]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:26:16 ID:???
さとりはニコニコと笑みを浮かべ、さぁ面接の日取りを考えないとと意気込んでいる妹を見やる。
彼女の周囲にはウサコッツを始めとしたペット達が群がり、こいしの指示を待っていた。

おくう「私も頑張るよ! さとり様は何も気にせず外の世界で頑張ってきてください!!」
さとり「おくう……」

あまり頭がいいとは言えないが、純真なおくうは――ここまでずっとさとりの留学を望み、それを発言してきた。
彼女の頭ではやはり理解があまり出来ていないが、 省61

[306]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:28:43 ID:???
さとり「(あのこいしが……まさか、こんな風になるなんて)」

他者とかかわる事を恐れ、瞳を閉じた妹。
ペット達と関わる事はあれど、しかし、やはり彼女は気まぐれで深く繋いだ絆というものは無かった。
それがどうだろう。
今の彼女は、多くの者たちから囲まれ、笑顔で話し合っている。

無論、そこにはさとりに対する想いがあってこそ――全てはさとりを想っての行動。
だが、着実に古明地こいしという少女は人との関わり、他者との関わりに積極的になっている。
省48

[307]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/02/24(土) 00:30:44 ID:???
もはや迷いは無く、憂いも無い。
これだけの事をしてもらい、これだけの想いを貰い、躊躇う理由も無い。
もう挑戦は終わった、この幻想郷に居を移して――リベンジの機会を伺うという消極的な気持ちも消え失せた。

強くなる。ただ強くなるという思いを胸に、さとりは留学を決意した。

さとり「こいしの言うように、幻想郷3大キーパーという称号で満足はしません。
    今度は幻想郷一のキーパーと呼ばれるように――いえ! 世界で一番のキーパーと呼ばれるように――そして」
省45


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