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【SSです】幻想でない軽業師


[109]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:18:57 ID:???
反町「(フランス国際Jrユース大会では……確かに、俺は得点王が取れた。
    だけど……あの大会には、ブラジルをはじめとして、他の強豪国と呼ばれるチームも参加はしていなかった。
    それに……俺は、森崎から一度もゴールを奪えていない……)」

祝勝会の際、輝夜に対して吐露した心情――森崎有三からゴールを奪えなかった事への、悔しさ。
頂点を掴んだ、掴んだが――それでも、まだ目指すべき場所がある。辿り着きたい境地がある。
省40

[110]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:20:20 ID:???
まず、外の世界へと戻るというもの――強くなる、という一点を考えれば……まずその選択肢は消えた。
『秀才』である反町にはわかっていた。
確かに前回のJrユース大会で、全日本は準優勝という、アジアの島国にしても優秀な成績を収めたと言える。
だが、そもそも世界と日本とのサッカーのレベル差というものは、大きく開いている。
Jrユースレベルならともかく、この先――ユースレベルとなってくるとどうなるのか。
予想をするのは、決して難しい事ではなかった。
省57

[111]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:21:21 ID:???
元々気弱な性格である大妖精。
反町が何人もの守備陣を吹き飛ばし、派手にゴールを決める所を見て最初は頼もしく見ていたものの、
しかし、やがてそれは自分の身に降りかかったらどうしようという恐怖心と成り下がっていた。
当然ながら、そんなシュートを食らう練習を、彼女が付き合ってくれる道理はない。

逆に早苗ならどうだろう、と反町は思う。
彼女も基本的には好戦的なタイプではないが――だからといって、臆病ではない。 省36

[112]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:22:36 ID:???
チームメンバーを集め、キャプテンに就任した時、反町はそう宣言した。
東邦学園とは違う、全日本とも違う、仲間との協調と和を大切にしたチームにしたいと。
……実際の所はともかくとして、少なくとも、反町はそうなるよう努めてきたつもりだったし、
これからもそうしていきたいと思っていた。

反町「その俺が、チームを抜けてどうするんだ? ……神奈子さんの話では、吸収合併でも構わないと言ってたけど」
穣子「それは無理ね。 ……私達が抜けるつもりがないから」
反町「……うん」 省56

[113]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:23:52 ID:???
選択肢を出され、迷い、項垂れていた少年は――女神の後押しを受け、一歩踏み出す事を決意した。
目の前の女神は、いつもの快活な笑みを浮かべている。

穣子「いつか言ったでしょ? あんたには感謝してるって。
   何があっても、私は絶対あんたにご利益を与えてあげるって」

それはいつの事だったか。
ヒューイやリグルを始めとして伸びていく選手たち、新たに加入をした戦力。
それらに押しつぶされそうになった時期が、穣子には確かにあった。 省35

[114]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:25:36 ID:???
それから一言、二言、2人は会話を交わし……穣子は反町の部屋を出た。

穣子「ふぅ……」

部屋を出るなり溜息一つ――それでも、パンパン、と、顔を張ると自分の部屋に戻ろうとして……。

静葉「……一樹くんとは話が出来た?」
穣子「姉さん……」

廊下で、静葉と顔を合わせる。
ぎこちなく首を縦に振る穣子に対し、静葉は無言で自身の部屋を指さし穣子を招き入れ……。
穣子はそれに素直に従い、2人は静葉の部屋で対面をする。

静葉「…………それで?」 省50

[115]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:27:31 ID:???
穣子の言葉を聞きながら、静葉はそう考える。
無論、そういう気持ちも多分にはあるのかもしれない――ただ、揺れ動いていた1番の要因となったのは、
そういった感情ではなく、実利の面だった……というのは、静葉の脳裏にしっかりと刻まれている。
目の前にいる妹は、自分がそう背中を押したのだからかは知らないが、そんな事を考えている由は無いが。

穣子「そしたら……反町は、守矢に行きたいみたいでさ」
静葉「ええ……」 省67

[116]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:29:07 ID:???
静葉「……寂しくなるわね(そしてそれ以上に、チームとしては戦力の大幅ダウンが逃れられない。
   一樹くんだけじゃなく……他の事を考えると)」
穣子「まあね……でもさ、仕方ないじゃない」
静葉「穣子……」

穣子を励ましながらこの先を考えていた静葉は……しかし、視界に映った穣子の顔を見て声を失くす。
彼女は笑っていた。笑いながら――大粒の水滴を、ポロポロとその瞳から流していた。

穣子「あいつは……強くなりたいって、言ってるんだもん。 もっともっと、だってさ。 省41

[117]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:30:54 ID:???
穣子「だけど、あいつは早苗が好きだって言うし、早苗もあいつが好きだし!
   強くなれて、思い人のいる所にいれるなら、それが1番じゃない!」
静葉「……そうね」

しかし、それは叶わない。
いつかの時に静葉が言ったように、少年は成長をする。いつまでも見守るという事は出来ない。
そして、どれだけ絆を結んでも、それは男女の愛にはきっと敵わないのだろう。

穣子「私は、あいつに言ったわ。 いつかあいつに受けた恩は、信仰は、必ず返してやるって」
静葉「………………」 省52

[118]幻想でない軽業師 ◆0RbUzIT0To :2018/01/28(日) 22:32:35 ID:???
穣子「反町と離れるなんて……やだよぉ……」
静葉「………………」

いつしか静葉のやや寂しい胸に顔を埋めながら、嗚咽し、穣子は呟いた。
静葉はやはり、黙ってその頭を撫でてやる。

静葉「よく頑張ったわね、穣子。 本当に……よく頑張ったわ」
穣子「うぅぅ……」
静葉「(ただ……穣子と一樹くんは、神と人としては、あまりにも近すぎた。
    ……結果的には、これが良かったのかもしれない。 ……穣子には、残酷な事かもしれないけれど)」
省35


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